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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置および試料の解析方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/18 20060101AFI20240801BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01J37/18
H01J37/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023512590
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014821
(87)【国際公開番号】W WO2022215212
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正義
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北山 真也
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020649(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/166825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/16-37/18
H01J 37/28
H01J 37/30-37/305
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1排気口を有する観察室と、
前記観察室に取り付けられた第1鏡筒と、
前記第1鏡筒の内部に設けられ、且つ、第1荷電粒子ビームを照射可能な第1荷電粒子源と、
前記観察室の内部において前記第1荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、試料を保持した試料ホルダを設置可能な第1ステージと、
ゲートバルブを介して前記観察室に接続され、且つ、第2排気口を有する前処理室と、
前記前処理室に取り付けられた第2鏡筒と、
前記第2鏡筒の内部に設けられ、且つ、第2荷電粒子ビームを照射可能な第2荷電粒子源と、
前記前処理室の内部において前記第2荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、前記試料を保持した前記試料ホルダを設置可能な第2ステージと、
第1吸気口および第2吸気口を有する第1真空ポンプと、
前記第1吸気口および前記第1排気口に接続された第1排気管と、
前記第2吸気口および前記第2排気口に接続された第2排気管と、
前記第1排気管の途中に設けられた第1バルブと、
前記第2排気管の途中に設けられた第2バルブと、
前記第1荷電粒子源、前記第1ステージ、前記第2荷電粒子源および前記第2ステージの各々の動作を制御し、前記第1真空ポンプの駆動を制御し、且つ、前記ゲートバルブ、前記第1バルブおよび前記第2バルブの各々の開閉状態を制御するコントローラと、
前記試料を保持した前記試料ホルダが前記第2ステージ上に設置された際に、前記コントローラによって実行される解析手段と、
を備え、
前記第1吸気口および前記第1排気口の各々の口径は、前記第2吸気口および前記第2排気口の各々の口径よりも大きく、
前記解析手段は、
(a)前記ゲートバルブを開状態にし、前記第1バルブを開状態にし、前記第2バルブを閉状態にし、且つ、前記第1真空ポンプを駆動することで、前記観察室および前記前処理室の各々の真空度を高くするステップ、
(b)前記ステップ(a)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、且つ、前記第2バルブを開状態にするステップ、
(c)前記ステップ(b)の後、前記第1真空ポンプによって前記前処理室の真空排気を行いながら、前記第2荷電粒子源から前記試料へ前記第2荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の加工を行うステップ、
を有する、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記前処理室に設けられた第3排気口と、
第3吸気口を有し、且つ、達成できる真空度が前記第1真空ポンプよりも低い第2真空ポンプと、
前記第3吸気口および前記第3排気口に接続された第3排気管と、
前記第3排気管の途中に設けられた第3バルブと、
を更に備え、
前記コントローラは、前記第2真空ポンプの駆動を制御し、且つ、前記第3バルブの開閉状態を制御し、
前記解析手段は、
(d)前記ステップ(a)の前に、前記ゲートバルブを閉状態にし、前記第1バルブを開状態にし、前記第2バルブを閉状態にし、前記第3バルブを開状態にし、且つ、前記第2真空ポンプを駆動することで、前記前処理室の真空度を高くするステップ、
を更に有し、
前記ステップ(a)は、前記第3バルブを閉状態にして行われ、
前記ステップ(a)では、前記観察室および前記前処理室の各々の真空度は、前記ステップ(d)の真空度よりも高くなる、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記前処理室の内部に設けられ、且つ、前記観察室と前記前処理室との間で前記試料ホルダを移動するための試料交換棒と、
を更に備え、
前記解析手段は、
(e)前記ステップ(c)の後、前記ゲートバルブを開状態にするステップ、
(f)前記ステップ(e)の後、ユーザによる前記試料交換棒の操作によって、前記試料を保持した前記試料ホルダを前記第2ステージから前記第1ステージへ移動するステップ、
(g)前記ステップ(f)の後、前記ゲートバルブを閉状態にするステップ、
(h)前記ステップ(g)の後、前記第1真空ポンプによって前記観察室の真空排気を行いながら、前記第1荷電粒子源から前記試料へ前記第1荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の観察を行うステップ、
を更に有する、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
前記前処理室は、互いに着脱可能な第1ユニット、第2ユニットおよび第3ユニットによって構成され、
前記第1ユニットには、前記第2鏡筒、前記第2荷電粒子源、前記第2ステージおよび第2排気口が設けられ、
前記第2ユニットには、前記ゲートバルブおよび第3排気口が設けられ、
前記第3ユニットには、前記試料交換棒が設けられている、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
前記第1真空ポンプに設けられた第4排気口と、
前記第2真空ポンプに設けられた第4吸気口と、
前記第4吸気口および前記第4排気口に接続された第4排気管と、
前記第4排気管の途中に設けられた第4バルブと、
を更に備え、
前記コントローラは、前記第4バルブの開閉状態を制御し、
前記第4バルブは、前記ステップ(d)では閉状態であり、前記ステップ(a)~前記ステップ(h)では開状態である、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第1荷電粒子源は、電子源であり、
前記第1荷電粒子ビームは、電子ビームであり、
前記第2荷電粒子源は、イオン源であり、
前記第2荷電粒子ビームは、イオンビームである、荷電粒子線装置。
【請求項7】
第1排気口を有する観察室と、
前記観察室に取り付けられた第1鏡筒と、
前記第1鏡筒の内部に設けられ、且つ、第1荷電粒子ビームを照射可能な第1荷電粒子源と、
前記観察室の内部において前記第1荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、試料を保持した試料ホルダを設置可能な第1ステージと、
ゲートバルブを介して前記観察室に接続され、且つ、第2排気口および第3排気口を有する前処理室と、
前記前処理室に取り付けられた第2鏡筒と、
前記第2鏡筒の内部に設けられ、且つ、第2荷電粒子ビームを照射可能な第2荷電粒子源と、
前記前処理室の内部において前記第2荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、前記試料を保持した前記試料ホルダを設置可能な第2ステージと、
前記前処理室の内部に設けられ、且つ、前記観察室と前記前処理室との間で前記試料ホルダを移動するための試料交換棒と、
第1吸気口および第2吸気口を有する第1真空ポンプと、
第3吸気口を有し、且つ、達成できる真空度が前記第1真空ポンプよりも低い第2真空ポンプと、
前記第1吸気口および前記第1排気口に接続された第1排気管と、
前記第2吸気口および前記第2排気口に接続された第2排気管と、
前記第3吸気口および前記第3排気口に接続された第3排気管と、
前記第1排気管の途中に設けられた第1バルブと、
前記第2排気管の途中に設けられた第2バルブと、
前記第3排気管の途中に設けられた第3バルブと、
を備えた荷電粒子線装置を用いて行われる試料の解析方法であって、
(a)前記試料を保持した前記試料ホルダを、前記第2ステージ上に設置するステップ、
(b)前記ステップ(a)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、前記第1バルブを開状態にし、前記第2バルブを閉状態にし、前記第3バルブを開状態にし、且つ、前記第2真空ポンプを駆動することで、前記観察室および前記前処理室の各々の真空度を高くするステップ、
(c)前記ステップ(b)の後、前記ゲートバルブを開状態にし、前記第3バルブを閉状態にし、且つ、前記第1真空ポンプを駆動することで、前記前処理室の真空度を、前記ステップ(b)の真空度よりも高い真空度にするステップ、
(d)前記ステップ(c)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、且つ、前記第2バルブを開状態にするステップ、
(e)前記ステップ(d)の後、前記第1真空ポンプによって前記前処理室の真空排気を行いながら、前記第2荷電粒子源から前記試料へ前記第2荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の加工を行うステップ、
(f)前記ステップ(e)の後、前記ゲートバルブを開状態にするステップ、
(g)前記ステップ(f)の後、前記試料交換棒を用いて、前記試料を保持した前記試料ホルダを前記第2ステージから前記第1ステージへ移動するステップ、
(h)前記ステップ(g)の後、前記ゲートバルブを閉状態にするステップ、
(i)前記ステップ(h)の後、前記第1真空ポンプによって前記観察室の真空排気を行いながら、前記第1荷電粒子源から前記試料へ前記第1荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の観察を行うステップ、
を有し、
前記第1吸気口および前記第1排気口の各々の口径は、前記第2吸気口および前記第2排気口の各々の口径よりも大きい、試料の解析方法。
【請求項8】
請求項に記載の試料の解析方法において、
前記第1荷電粒子源は、電子源であり、
前記第1荷電粒子ビームは、電子ビームであり、
前記第2荷電粒子源は、イオン源であり、
前記第2荷電粒子ビームは、イオンビームである、試料の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および試料の解析方法に関し、特に、観察室および前処理室を備えた荷電粒子線装置と、その荷電粒子線装置を用いて行われる試料の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化が進んでいる。特に、立体構造を有する半導体デバイスでは、積層技術と組み合わせることで、高集積化および大容量化が飛躍的に進んでいる。このような半導体デバイスの解析を行うための荷電粒子線装置として、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)および走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)などが用いられている。
【0003】
一方で、イオンビームを用いた平面試料作製方法(イオンリミング)が一般的に用いられている。平面ミリング法は、例えばアルゴンイオンビームを試料の表面に対して斜めに照射し、アルゴンイオンビームの中心と、試料回転の中心とを偏心させることによって広範囲を加工する手法である。イオンビームの照射角度を試料の加工面に対して平行に近づけた場合、結晶方位または組成のエッチングレート差による凹凸の形成を低減した加工面を形成できる。イオンビームの照射角度を試料の加工面に対して垂直に近づけた場合、エッチングレート差を利用することで、凹凸を強調した加工が可能となる。
【0004】
例えば、特許文献1では、荷電粒子線装置の観察室に、バルブを介してイオンミリング用の前処理室が接続されている。そして、上記バルブを閉じた状態で、前処理室を真空ポンプにより所定の真空度まで真空排気し、試料に対してイオンミリングを実施する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、SEM観察用の観察室と、バルブを介して観察室に接続されたイオンミリング用の前処理室とを備えた荷電粒子線装置が開示されている。そして、ロータリーポンプ相当品の真空ポンプおよびターボ分子ポンプ相当品の真空ポンプをダンデム構造として接続し、ターボ分子ポンプの2つの吸気口を観察室および前処理室に接続することで、観察室および前処理室の真空排気が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-195460号公報
【文献】国際公開第2018/020649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らの検討によれば、荷電粒子線装置の内部において、イオンミリングのような高真空環境を要する前処理を行う場合、粗引ポンプによる真空排気のみでは、前処理に必要な真空度を満たせないことが判った。更に、近年の半導体市場では、スループットの向上が求められている。そのため、前処理に必要な真空度に到達する時間を短縮化する必要がある。そこで、本願発明者らは、SEM観察用の観察室とイオンミリング用の前処理室とをそれぞれ分け、観察室および前処理室を接続した荷電粒子線装置に関して検討を行った。
【0008】
特許文献1に開示されている技術では、前処理室に、SEM観察用の観察室とは異なる真空ポンプが必要となる。それ故、新たに真空ポンプを設置する必要があり、設置場所の増加、設置コストの増加および真空排気時に発生する振動が課題となる。
【0009】
特許文献2では、観察室および前処理室の真空排気に関して、具体的なシーケンスが明示されておらず、前処理室の真空排気に多くの時間を要する可能性がある。
【0010】
本願の主な目的は、観察室、前処理室および真空ポンプの接続関係を簡便にした荷電粒子線装置を提供することにある。また、そのような荷電粒子線装置を用いて、前処理室の真空排気を短時間で行える解析方法(解析手段)を提供することにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
一実施の形態における荷電粒子線装置は、第1排気口を有する観察室と、前記観察室に取り付けられた第1鏡筒と、前記第1鏡筒の内部に設けられ、且つ、第1荷電粒子ビームを照射可能な第1荷電粒子源と、前記観察室の内部において前記第1荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、試料を保持した試料ホルダを設置可能な第1ステージと、ゲートバルブを介して前記観察室に接続され、且つ、第2排気口を有する前処理室と、前記前処理室に取り付けられた第2鏡筒と、前記第2鏡筒の内部に設けられ、且つ、第2荷電粒子ビームを照射可能な第2荷電粒子源と、前記前処理室の内部において前記第2荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、前記試料を保持した前記試料ホルダを設置可能な第2ステージと、第1吸気口および第2吸気口を有する第1真空ポンプと、前記第1吸気口および前記第1排気口に接続された第1排気管と、前記第2吸気口および前記第2排気口に接続された第2排気管と、前記第1排気管の途中に設けられた第1バルブと、前記第2排気管の途中に設けられた第2バルブと、前記第1荷電粒子源、前記第1ステージ、前記第2荷電粒子源および前記第2ステージの各々の動作を制御し、前記第1真空ポンプの駆動を制御し、且つ、前記ゲートバルブ、前記第1バルブおよび前記第2バルブの各々の開閉状態を制御するコントローラと、前記試料を保持した前記試料ホルダが前記第2ステージ上に設置された際に、前記コントローラによって実行される解析手段と、を備える。ここで、前記第1吸気口および前記第1排気口の各々の口径は、前記第2吸気口および前記第2排気口の各々の口径よりも大きい。また、前記解析手段は、(a)前記ゲートバルブを開状態にし、前記第1バルブを開状態にし、前記第2バルブを閉状態にし、且つ、前記第1真空ポンプを駆動することで、前記観察室および前記前処理室の各々の真空度を高くするステップ、(b)前記ステップ(a)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、且つ、前記第2バルブを開状態にするステップ、(c)前記ステップ(b)の後、前記第1真空ポンプによって前記前処理室の真空排気を行いながら、前記第2荷電粒子源から前記試料へ前記第2荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の加工を行うステップ、を有する。
【0013】
一実施の形態における荷電粒子線装置は、観察室と、前記観察室に取り付けられた第1鏡筒と、前記第1鏡筒の内部に設けられ、且つ、第1荷電粒子ビームを照射可能な第1荷電粒子源と、前記観察室の内部において前記第1荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、試料を保持した試料ホルダを設置可能な第1ステージと、ゲートバルブを介して前記観察室に接続された前処理室と、前記前処理室の内部に設けられ、且つ、前記観察室と前記前処理室との間で前記試料ホルダを移動するための試料交換棒と、を備える。ここで、前記前処理室は、互いに着脱可能な第2ユニットおよび第3ユニットによって構成され、前記第2ユニットには、前記ゲートバルブが設けられ、前記第3ユニットには、前記試料交換棒が設けられている。
【0014】
一実施の形態における試料の解析方法は、第1排気口を有する観察室と、前記観察室に取り付けられた第1鏡筒と、前記第1鏡筒の内部に設けられ、且つ、第1荷電粒子ビームを照射可能な第1荷電粒子源と、前記観察室の内部において前記第1荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、試料を保持した試料ホルダを設置可能な第1ステージと、ゲートバルブを介して前記観察室に接続され、且つ、第2排気口および第3排気口を有する前処理室と、前記前処理室に取り付けられた第2鏡筒と、前記第2鏡筒の内部に設けられ、且つ、第2荷電粒子ビームを照射可能な第2荷電粒子源と、前記前処理室の内部において前記第2荷電粒子源の下方に設けられ、且つ、前記試料を保持した前記試料ホルダを設置可能な第2ステージと、前記前処理室の内部に設けられ、且つ、前記観察室と前記前処理室との間で前記試料ホルダを移動するための試料交換棒と、第1吸気口および第2吸気口を有する第1真空ポンプと、第3吸気口を有し、且つ、達成できる真空度が前記第1真空ポンプよりも低い第2真空ポンプと、前記第1吸気口および前記第1排気口に接続された第1排気管と、前記第2吸気口および前記第2排気口に接続された第2排気管と、前記第3吸気口および前記第3排気口に接続された第3排気管と、前記第1排気管の途中に設けられた第1バルブと、前記第2排気管の途中に設けられた第2バルブと、前記第3排気管の途中に設けられた第3バルブと、を備えた荷電粒子線装置を用いて行われる。また、試料の解析方法は、(a)前記試料を保持した前記試料ホルダを、前記第2ステージ上に設置するステップ、(b)前記ステップ(a)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、前記第1バルブを開状態にし、前記第2バルブを閉状態にし、前記第3バルブを開状態にし、且つ、前記第2真空ポンプを駆動することで、前記観察室および前記前処理室の各々の真空度を高くするステップ、(c)前記ステップ(b)の後、前記ゲートバルブを開状態にし、前記第3バルブを閉状態にし、且つ、前記第1真空ポンプを駆動することで、前記前処理室の真空度を、前記ステップ(b)の真空度よりも高い真空度にするステップ、(d)前記ステップ(c)の後、前記ゲートバルブを閉状態にし、且つ、前記第2バルブを開状態にするステップ、(e)前記ステップ(d)の後、前記第1真空ポンプによって前記前処理室の真空排気を行いながら、前記第2荷電粒子源から前記試料へ前記第2荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の加工を行うステップ、(f)前記ステップ(e)の後、前記ゲートバルブを開状態にするステップ、(g)前記ステップ(f)の後、前記試料交換棒を用いて、前記試料を保持した前記試料ホルダを前記第2ステージから前記第1ステージへ移動するステップ、(h)前記ステップ(g)の後、前記ゲートバルブを閉状態にするステップ、(i)前記ステップ(h)の後、前記第1真空ポンプによって前記観察室の真空排気を行いながら、前記第1荷電粒子源から前記試料へ前記第1荷電粒子ビームを照射することで、前記試料の観察を行うステップ、を有する。ここで、前記第1吸気口および前記第1排気口の各々の口径は、前記第2吸気口および前記第2排気口の各々の口径よりも大きい。
【発明の効果】
【0015】
一実施の形態によれば、観察室、前処理室および真空ポンプの接続関係を簡便にした荷電粒子線装置を提供できる。また、そのような荷電粒子線装置を用いて、前処理室の真空排気を短時間で行える解析方法(解析手段)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1における荷電粒子線装置を示す模式図である。
図2】実施の形態1における荷電粒子線装置の一部を拡大した要部模式図である。
図3】実施の形態1における前処理室の第1ユニットを示す側面図である。
図4】実施の形態1における荷電粒子線装置のシステム構成を示す模式図である。
図5】実施の形態1における試料の解析方法(解析手段)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。
【0019】
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置1の構成>
以下に図1図3を用いて、実施の形態1における荷電粒子線装置1について説明する。実施の形態1では、荷電粒子線装置1として走査型電子顕微鏡(SEM)を例示する。
【0020】
図1に示されるように、荷電粒子線装置1は、観察室10と、観察室10に取り付けられた鏡筒11と、前処理室20と、前処理室20に取り付けられた鏡筒21とを備える。
また、荷電粒子線装置1は、観察室10の内部の真空度を計測するための真空計14と、前処理室20の内部の真空度を計測するための真空計24とを備える。
【0021】
鏡筒11の内部には、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EBを照射可能な電子源(荷電粒子源)12、電子ビームEBを集束するためのコンデンサレンズ15、および、対物レンズ16などが設けられている。観察室10の内部において電子源12の下方には、試料SAMを保持する試料ホルダHLを設置可能なステージ13が設けられている。
【0022】
なお、図1では図示を省略しているが、鏡筒11には、コンデンサレンズ15、対物レンズ16、偏向レンズおよび走査レンズなどの電子光学系、および、鏡筒11内を高真空にする真空ポンプ(イオンポンプ相当品)などが設けられている。また、観察室10には
、二次電子などを検出するための検出器、および、二次電子などの信号から画像データ化するための画像処理部が設けられている。
【0023】
試料SAMの観察時に、電子源12からステージ13上の試料SAMへ電子ビームEBが照射されると、電子ビームEBと、試料SAM上に形成されている微小パターンとの相互作用によって、二次電子などの信号電子が発生する。発生した信号電子は、検出器によって検出され、画像処理部によって画像データ化される。この画像データによって、試料SAMの観察が行える。
【0024】
鏡筒21の内部には、イオンビーム(荷電粒子ビーム)IBを照射可能なイオン源(荷電粒子源)22などが設けられている。前処理室20の内部においてイオン源22の下方には、試料SAMを保持する試料ホルダHLを設置するためのステージ23が設けられている。また、前処理室20の内部には、観察室10と前処理室20との間で試料ホルダHLを移動するための試料交換棒25が設けられている。また、前処理室20には、搬送口26が設けられ、搬送口26を開くことで、前処理室20の外部から内部へ、または、前処理室20の内部から外部へ、試料SAMを保持する試料ホルダHLを搬送できる。
【0025】
前処理室20では、イオンミリングによる前処理が行われる。試料SAMの加工時には、イオン源22からステージ23上の試料SAMへイオンビームIBが照射され、試料SAMが加工されて、ミリング面が得られる。
【0026】
図3に示されるように、鏡筒21は、試料SAMの回転軸に対してイオンビームIBが傾斜して照射されるように、前処理室20に傾斜した状態で取り付けられている。ステージ23は、少なくとも回転機構を有する。ステージ23を回転させながら試料SAMへイオンビームIBを照射することで、イオンミリングによって試料SAMに均一な平面が形成される。
【0027】
また、鏡筒21を外付けの移動機構によりY方向に駆動させることで、試料SAMの回転中心とイオンビーム中心とを偏心させることができる。これにより、加工範囲が広げられ、加工の自由度を持たせることができる。これは、ステージ23にY方向の移動軸を持たせた場合と同様になる。ステージ23をY方向に駆動させた場合、試料ホルダHLは試料交換棒25の移動軸とずれてしまうので、前処理室20から観察室10へ試料ホルダHLを移動する際に、偏心機構を初期状態に戻すような安全機構の搭載が必要となる。
【0028】
実施の形態1における荷電粒子線装置1では、試料SAMの加工および観察のためのスループットを向上させる目的で、SEM観察用の観察室10とイオンミリング用の前処理室20とが、ゲートバルブVL5を介して接続されている。
【0029】
ゲートバルブVL5を開状態にするためには、図面の下方向へゲートバルブVL5を移動する。ゲートバルブVL5が開状態である場合、観察室10の内部と前処理室20の内部とが、同一空間として物理的に繋がる。これにより、試料ホルダHLを搭載した試料交換棒25が、観察室10と前処理室20との間を移動可能となる。
【0030】
ゲートバルブVL5を閉状態にするためには、図面の上方向へゲートバルブVL5を移動する。ゲートバルブVL5が閉状態である場合、観察室10の内部と前処理室20の内部とが、ゲートバルブVL5によって物理的に隔離される。これにより、観察室10の内部で試料SAMの観察を独立して行うことができ、前処理室20の内部で試料SAMの加工を独立して行うことができる。
【0031】
図2は、図1の荷電粒子線装置1のうち、観察室10、前処理室20および各真空ポンプの周辺構造を示している。
【0032】
なお、実施の形態1において、「真空度が高くなる」および「高真空にする」などという表現は、「圧力が低くなる」ということを意味し、「真空度が低くなる」および「低真空にする」などという表現は、「圧力が高くなる」ということを意味する。また、大気圧は103525Paであり、「大気開放する」という表現は、「その空間の圧力を大気圧にする」ということを意味する。
【0033】
図2に示されるように、荷電粒子線装置1は、高真空ポンプ(真空ポンプ)40および粗引ポンプ(真空ポンプ)41を備える。高真空ポンプ40は、例えばターボ分子ポンプであり、主吸気口である吸気口31aおよび吸気口32aを有する。粗引ポンプ41は、例えばドライポンプである。
【0034】
高真空ポンプ40は、例えば10-2~10-5Paの真空度を達成できる。粗引ポンプ41が達成できる真空度は、高真空ポンプ40よりも低く、例えば数Pa~100Pa程度である。
【0035】
排気管31は、高真空ポンプ40の吸気口31aおよび観察室10の排気口31bに接続されている。排気管32は、高真空ポンプ40の吸気口32aおよび前処理室20の排気口32bに接続されている。
【0036】
吸気口31aおよび排気口31bの各々の口径は、吸気口32aおよび排気口32bの各々の口径より大きい。それ故、排気管31の排気速度は、排気管32の排気速度よりも速くなる。従って、高真空ポンプ40を駆動させると、前処理室20の真空度は、観察室10の真空度よりも、一時的に低くなる。言い換えると、高真空ポンプ40では、吸気口31aが相対的に高い真空度となり、吸気口32aが吸気口31aよりも低い真空度となる。
【0037】
排気管33は、粗引ポンプ41の吸気口33aおよび前処理室20の排気口33bに接続されている。排気管34は、粗引ポンプ41の吸気口34aおよび高真空ポンプ40の排気口34bに接続されている。
【0038】
排気管31の途中にはバルブVL1が設けられている。排気管32の途中にはバルブVL2が設けられている。排気管33の途中にはバルブVL3が設けられている。排気管34の途中にはバルブVL4が設けられている。バルブVL1~VL4の開閉状態を操作することで、排気管31~34を介して行われる排気動作が制御される。
【0039】
排気管34の途中であり、且つ、粗引ポンプ41とバルブVL4との間には、リークバルブVL6が設けられている。また、排気管33の途中であり、且つ、前処理室20とバルブVL3との間には、リークバルブVL7が設けられている。リークバルブVL6を開状態にすることで、高真空ポンプ40の背圧側が大気開放される。リークバルブVL7を開状態にすることで、前処理室20の内部が大気開放される。
【0040】
図4は、荷電粒子線装置1のシステム構成を示す模式図である。図4に示されるように、荷電粒子線装置1は、コントローラC0および制御部C1~C7を備えている。
【0041】
制御部C1~C4は、それぞれ、鏡筒11、観察室10、鏡筒21および前処理室20に含まれる各構成の動作を制御する。すなわち、制御部C1は、電子源12、コンデンサレンズ15および対物レンズ16などの動作を制御し、制御部C2は、ステージ13および真空計14などの動作を制御する。制御部C3は、イオン源22などの動作を制御し、制御部C4は、ステージ23および真空計24などの動作を制御する。なお、試料交換棒25の移動動作および搬送口26の開閉動作は、ユーザによって操作される。
【0042】
制御部C5は、バルブVL1~VL4、ゲートバルブVL5、リークバルブVL6およびリークバルブVL7の各々の開閉状態を制御する。制御部C6は、高真空ポンプ40の駆動を制御し、制御部C7は、粗引ポンプ41の駆動を制御する。
【0043】
コントローラC0は、制御部C1~C7の各々と互いに通信可能であり、入力デバイス50によるユーザからの指示または予め設定された条件に従って、荷電粒子線装置1の全体を制御する。また、コントローラC0は、制御部C1~C7から取得された情報等を記憶するための記憶部(図示せず)を備える。
【0044】
なお、コントローラC0は制御部C1~C7を統括するものである。従って、実施の形態1では、コントローラC0および制御部C1~C7を1つのユニットとして見做せ、制御部C1~C7が行う制御を、コントローラC0が制御すると見做せる。
【0045】
入力デバイス50は、例えば、解析対象の情報の入力、電子ビームEBおよびイオンビームIBの照射条件の変更、並びに、ステージ位置の変更などのような様々な指示を、ユーザが入力するためのデバイスである。なお、ゲートバルブVL5の開閉状態の制御については、ユーザが入力デバイス50を用いて行うこともできる。入力デバイス50は、例えばキーボードまたはマウスなどである。モニタ51には、GUI画面52などが表示される。ユーザは、入力デバイス50によってGUI画面52に上記指示を入力でき、上記指示がコントローラC0に送信される。
【0046】
なお、入力デバイス50およびモニタ51は、荷電粒子線装置1の内部に備えられていてもよいし、荷電粒子線装置1の外部に外部機器として備えられていてもよい。
【0047】
ところで、図2に示されるように、前処理室20は、複数のユニットに分断され、互いに着脱可能な第1ユニット20A、第2ユニット20Bおよび第3ユニット20Cによって構成されている。
【0048】
第1ユニット20Aは、イオンミリング機能を備え、鏡筒21、イオン源22、ステージ23、および、高真空ポンプ40に接続される排気口32bを含む。第2ユニット20Bは、ゲートバルブVL5、および、粗引ポンプ41に接続される排気口33bを含む。第3ユニット20Cは、試料交換棒25および搬送口26を含む。
【0049】
なお、図2では、排気口33bが第2ユニット20Bに備えられているが、排気口33bは、第1ユニット20Aまたは第3ユニット20Cに備えられていてもよい。
【0050】
第1ユニット20A~第3ユニット20Cが互いに着脱可能であることで、前処理室20に必要とされる機能を変更することが可能となる。第1ユニット20Aはイオンミリング機能を備えているが、第1ユニット20Aの代わりに、例えば、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)機能などを備えた他のユニットを用意し、この他のユニット、第2ユニット20Bおよび第3ユニット20Cによって、前処理室20を構成することもできる。また、第1ユニット20Aを適用せず、第2ユニット20Bおよび第3ユニット20Cのみによって前処理室20を構成し、前処理室20を単なる試料交換室とすることもできる。
【0051】
このように、実施の形態1における荷電粒子線装置1では、前処理室20で行いたい作業に応じて、複数のユニットを組み換えることができる。
【0052】
<試料SAMの解析方法(解析手段)>
上述のように、試料SAMをイオンミリングするためには、イオンビームIBが効率よく試料SAMの表面上に照射される必要がある。そのため、イオンビームIBの平均自由工程が十分に長くなるように、イオンミリングが行われる前処理室20の真空度を、高い真空度へ調整し、且つ、短時間で調整することが望ましい。
【0053】
しかし、高い真空度を得るために、バルブVL1を開状態にしてイオンミリングを行うと、イオンミリングで発生するスパッタ粒子によって、観察室10が汚染されてしまうという問題がある。更に、イオンミリングのイオン源22から発生するArガスが、SEM機能の低下の要因となる。
【0054】
以下に、そのような問題を解消し、且つ、前処理室の真空排気を短時間で行うための解析方法について説明する。なお、この解析方法は、荷電粒子線装置1を用いて行われる。また、下記ステップS2で、試料SAMを保持した試料ホルダHLがステージ23上に設置された際に、下記ステップS3~S13は、ユーザによる試料交換棒25の操作を除き、コントローラC0によって実行される。従って、荷電粒子線装置1は、その一部がユーザによる操作を含むものの、概ねコントローラC0によって実行される解析手段(下記ステップS3~S13)を備えているとも言える。
【0055】
図5は、実施の形態1における試料SAMの解析方法を示すフローチャートである。
【0056】
まず、図5の「開始」では、試料SAMを保持する試料ホルダHLを用意する。例えば、荷電粒子線装置1と異なる他の装置において、試料SAMを作成し、試料SAMを試料ホルダHLに搭載する。その後、以降のステップS1~13が行われる。
【0057】
試料SAMは、例えばFIB装置によって、ウェハの一部を加工することで事前に取得された薄片である。上記半導体ウェハは、p型またはn型の不純物領域が形成された半導体基板、上記半導体基板上に形成されたトランジスタなどの半導体素子、および、上記半導体素子上に形成された配線層などで構成されている。従って、試料SAMは、上記半導体基板、上記半導体素子および上記配線層のうち全部または一部を含んでいる。なお、試料SAMは半導体ウェハの一部に限られず、半導体技術以外で用いられる構造体でもよい。
【0058】
ステップS1では、制御部C5によって、ゲートバルブVL5、バルブVL2、バルブVL3およびリークバルブVL6を閉状態にし、バルブVL1、バルブVL4およびリークバルブVL7を開状態にする。そして、制御部C6によって、高真空ポンプ40を駆動する。これにより、観察室10は高い真空度に保たれ、前処理室20は大気開放される。
【0059】
ステップS2では、前処理室20のステージ23上に、試料SAMを保持する試料ホルダHLを設置する。前処理室20が大気圧と同圧以上になると、第3ユニット20Cの搬送口26が開くようになり、搬送口26を介して、試料SAMを保持する試料ホルダHLの入れ替えができる。
【0060】
ステップS3では、制御部C5によって、バルブVL4およびリークバルブVL7を閉状態にし、バルブVL3を開状態にする。そして、制御部C7によって、粗引ポンプ41を駆動し、前処理室20の粗引排気を開始し、前処理室20の真空度を高くする。このとき、バルブVL4が閉状態であることで、高真空ポンプ40の背圧の悪化を防止できる。
【0061】
ステップS4では、真空計24および制御部C4によって、前処理室20内の圧力が20Pa以下であるか否かを判定する。圧力が20Pa以下である場合(YES)、次のステップは、ステップS5になる。圧力が20Paよりも大きい場合(NO)、前処理室20内の圧力が20Pa以下になるまで、粗引ポンプ41からの粗引排気が継続される。
【0062】
なお、ここでは、粗引排気後の圧力の判定値が20Paに設定されているが、圧力の判定値は20Paに限らず、前処理室20の圧力が、高真空ポンプ40の負荷許容値よりも低くなっていればよい。
【0063】
なお、高真空ポンプ40が達成できる真空度は、粗引ポンプ41よりも高いが、大気圧から数Pa~100Pa程度の圧力になるように排気するという点では、粗引ポンプ41の方が高真空ポンプ40よりも適正が高い。従って、大気圧から数Pa~100Pa程度の圧力へ変更する際には、粗引ポンプ41を使用し、数Pa~100Pa程度の圧力から10-2~10-5Pa程度の圧力へ変更する際には、高真空ポンプ40を使用する。これにより、総合的な排気時間の短縮を図れる。
【0064】
ステップS5では、制御部C5によって、バルブVL3を閉状態にし、バルブVL4およびゲートバルブVL5を開状態にする。前処理室20に対して粗引排気した後、高真空ポンプ40の吸気口31aから、排気管31および排気口31bを介して、観察室10および前処理室20の両方に対して真空排気を開始する。これにより、前処理室20の真空度を、ステップS3(ステップS4)の真空度よりも高い真空度にする。
【0065】
ここでは、観察室10の圧力が10-3Paオーダーになるまで待機し、観察室10および前処理室20の圧力が同程度となるまで待機することが望ましい。なお、10-3Paオーダーは一例であり、観察室10の圧力がより低くなるまで待機してもよい。
【0066】
ここで、仮に、1つの吸気口を有する高真空ポンプを用いて、観察室10および前処理室20を同時に真空排気すると、前処理室20から観察室10へガス分子の逆流が発生してしまう。これに対して、実施の形態1では、高真空ポンプ40に吸気口31aおよび吸気口32aが設けられているので、ガス分子の逆流を抑制できる。
【0067】
また、ステップS5では、相対的に口径の大きな吸気口31aによって、観察室10および前処理室20の真空排気を実施している。従って、相対的に口径の小さな吸気口32aによって真空排気を実施する場合と比較して、真空排気の時間を短縮することが可能となっている。
【0068】
ステップS6では、制御部C5によって、ゲートバルブVL5を閉状態にし、バルブVL2を開状態にする。高真空ポンプ40の吸気口32aから前処理室20を真空排気する。
【0069】
ゲートバルブVL5を閉状態にすると、前処理室20を真空排気するポンプが無くなるので、観察室10に比べて、前処理室20の真空度が悪くなる。吸気口31aの排気速度および吸気口32aの排気速度を比較すると、吸気口31aの方が吸気口32aよりも排気速度が大きい。それ故、観察室10に比べて、前処理室20の真空度は一時的に更に悪くなるので、ゲートバルブVL5を閉めた後、直ちにバルブVL2を開く必要がある。
【0070】
ここで、ステップS3(ステップS4)の粗引排気の完了後、ゲートバルブVL5を閉状態に維持し、バルブVL2を開状態にし、吸気口32aから前処理室20の真空排気を行うことも考えられる。
【0071】
しかし、ステップS5のように、排気速度の速い吸気口31aを用いて前処理室20の真空度を高くした状態で、ステップS6のように、吸気口32aから前処理室20の真空排気を行う方が、イオンミリングの開始に必要な真空度に到達するまでの総合時間を短縮することができる。
【0072】
ステップS7では、前処理室20において、試料SAMに対してイオンミリングを行う。すなわち、高真空ポンプ40によって前処理室20の真空排気を行いながら、制御部C3によって、イオン源22から試料SAMへイオンビームIBを照射することで、試料SAMの加工を行う。
【0073】
また、イオンミリング中では、ゲートバルブVL5が閉状態になっている。従って、イオンミリングで発生するスパッタ粒子によって、観察室10が汚染されてしまうという問題、および、イオン源22から発生するArガスがSEM機能の低下の要因となるという問題を解消できる。
【0074】
ステップS8では、イオンミリングが終了した後、制御部C5によって、ゲートバルブVL5を開状態にする。
【0075】
ステップS9では、ユーザが、試料交換棒25を、試料SAMを保持する試料ホルダHLに挿入し、試料ホルダHLを、前処理室20のステージ23から観察室10のステージ13へ移動する。
【0076】
ステップS10では、試料ホルダHLの移動が完了した後、制御部C4によって、試料交換棒25を初期位置に戻し、制御部C5によって、ゲートバルブVL5を閉状態にする。その後、高真空ポンプ40によって観察室10の真空排気を行いながら、制御部C1によって、電子源12から試料SAMへ電子ビームEBを照射することで、試料SAMの観察を行う。
【0077】
ステップS11では、試料SAMの観察が終了した後、制御部C5によって、ゲートバルブVL5を開状態にする。
【0078】
ステップS12では、ユーザが、試料交換棒25を、試料SAMを保持する試料ホルダHLに挿入し、試料ホルダHLを、観察室10のステージ13から前処理室20のステージ23へ移動する。ステップS10において、所望の観察が行えていた場合、観察作業は終了となる。所望の観察が行えず、例えばイオンミリングが不足していた場合、ステップS6へ戻り、前処理室20の真空排気を行った後、試料SAMのイオンミリングをやり直す。
【0079】
ステップS13では、ユーザが試料交換棒25を初期位置に戻した後、制御部C5によって、ゲートバルブVL5およびバルブVL2を閉状態にする。そして、制御部C5によって、リークバルブVL7を開状態にし、前処理室20の大気開放を行う。その後、搬送口26を介して、試料SAMを保持する試料ホルダHLを、前処理室20から取り出す。
【0080】
以上で、試料SAMの解析方法(解析手段)は終了となる。
【0081】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 荷電粒子線装置
10 観察室
11 鏡筒
12 電子源
13 ステージ
14 真空計
15 コンデンサレンズ
16 対物レンズ
20 前処理室
20A~20C 第1~第3ユニット
21 鏡筒
22 イオン源
23 ステージ
24 真空計
25 試料交換棒
26 搬送口
31~34 排気管
31a~34a 吸気口
31b~34b 排気口
40 高真空ポンプ(真空ポンプ、ターボ分子ポンプ)
41 粗引ポンプ(真空ポンプ、ドライポンプ)
50 入力デバイス
51 モニタ
52 GUI画面
C0 コントローラ
C1~C7 制御部
EB 電子ビーム
HL ホルダ
IB イオンビーム
SAM 試料
VL1~VL4 バルブ
VL5 ゲートバルブ
VL6、VL7 リークバルブ
図1
図2
図3
図4
図5