(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】リサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、およびそれを用いたリサイクルプラスチック、成形品および可塑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 11/16 20060101AFI20240801BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20240801BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08J11/16 CFD
C08J11/24 ZAB
C08G63/183
(21)【出願番号】P 2023518895
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 KR2022010306
(87)【国際公開番号】W WO2023003280
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094470
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094471
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094472
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094473
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、テ-スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョンナム
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チファン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128600(JP,A)
【文献】特表平11-502868(JP,A)
【文献】特開2001-151709(JP,A)
【文献】特開2003-160652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J11/00-11/28
B29B17/00-17/04
C08G63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を含み、
前記テレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下であり、
含水率が30%以下であり、
リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が0.85モル%未満のイソフタル酸をさらに含み、
リサイクルプラスチック合成用単量体組成物はテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項2】
前記テレフタル酸は前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項3】
前記テレフタル酸はリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が99.15モル%超過である、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項4】
前記イソフタル酸は前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする、請求項
1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項5】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体は、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート系共重合体、および熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群より選ばれた1種以上の(共)重合体を含む、請求項1に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物。
【請求項6】
テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する段階;
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階;および
前記洗浄段階の結果物を100℃以下の温度に冷却させる段階;を含み、
前記洗浄段階は、
20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;および
200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を含
み、
前記洗浄段階は、
前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;の後に、
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を行う、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄段階で使用される溶媒は水である、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の後、
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物のpH値が3~4である、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階で、
前記溶媒はテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1重量部に対して5重量部以上55重量部以下で使用される、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項10】
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度と、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度の間の差異値が150℃以上200℃以下である、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項11】
前記洗浄段階の結果物を100℃以下の温度に冷却させる段階で、
冷却速度が1℃/分~10℃/分である、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応は、
テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1モルに対して2.3モル以下の量で塩基を反応させて行うことを特徴とする、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項13】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応は、
アルキレングリコール溶媒下で行うことを特徴とする、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階の前に、
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の酸による中和反応段階;をさらに含む、請求項
6に記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~
5のいずれかに記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含む、リサイクルプラスチック。
【請求項16】
請求項
15に記載のリサイクルプラスチックを含む、成形品。
【請求項17】
請求項1~
5のいずれかに記載のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物およびアルコールの反応生成物を含む、可塑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2021年7月19日付韓国特許出願第10-2021-0094470号、2021年7月19日付韓国特許出願第10-2021-0094471号、2021年7月19日付韓国特許出願第10-2021-0094472号および2021年7月19日付韓国特許出願第10-2021-0094473号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合によりテレフタル酸を回収するとき、含水率が低く、粒子直径が増加し、不純物であるイソフタル酸の含有量が顕著に減少して高純度のテレフタル酸を確保できるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、およびそれを用いたリサイクルプラスチック、成形品および可塑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は熱可塑性(共)重合体であって、優れた透明性、断熱性など優れた特性を有して電線被覆、生活用品、おもちゃ、電気絶縁体、ラジオ、テレビケース、包装材などに広く使用されるプラスチックである。
【0004】
多様な用途に幅広く使用されるポリエチレンテレフタレートであるが、廃処理時の環境と健康に関する懸念は持続的に提起されてきた。現在、物理的なリサイクル方法が行われているが、これは品質低下を伴う問題が発生していて、ポリエチレンテレフタレートの化学的リサイクルに対する研究が進められている。
【0005】
テレフタル酸は広範囲な種類の製品原料として使用される有用な化合物であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル繊維、包装および容器用ポリエステルフィルムの主原料として使用される。
【0006】
エチレングリコールをテレフタル酸と共に縮重合してポリエチレンテレフタレート(PET)を生成することは可逆反応工程であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)を解重合して単量体またはオリゴマーに戻すことができる。
【0007】
ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解して原料になるモノマーを回収する方法としては従来より多様な方法が提案されている。リサイクルプラスチックに再び作るための重縮合反応に用いられる単量体はポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物のアルカリ分解により得ることができる。
【0008】
例えば、塩基性条件でのポリエチレンテレフタレート(PET)分解生成物は、エチレングリコールおよびテレフタル酸の塩を含み、テレフタル酸の塩を強酸による中和反応を追加で進行してテレフタル酸を製造する。
【0009】
しかし、従来の方法により得られたテレフタル酸には通常1~2%のイソフタル酸が不純物として含まれ、PBT/TPEEなどの高付加価値性プラスチックの製造原料として再使用される場合、(共)重合体の物性低下(低い融点、低い引張強度、低い剛性など)の問題が発生する限界があった。
【0010】
したがって、ポリエチレンテレフタレート(PET)をはじめとするテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を分解して原料になるモノマーを回収する過程で、不純物であるイソフタル酸含有量を顕著に減らすことができる方法に対する開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合によりテレフタル酸を回収するとき、含水率が低く、粒子直径が増加し、不純物であるイソフタル酸の含有量が顕著に減少して高純度のテレフタル酸を確保できるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法、そしてリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を利用したリサイクルプラスチック、成形品および可塑剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本明細書では、テレフタル酸を含み、前記テレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下であり、含水率が30%以下であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を提供する。
【0014】
本明細書ではまた、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する段階;前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階;および前記洗浄段階の結果物を100℃以下の温度に冷却させる段階;を含み、前記洗浄段階は、20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;および200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を含むリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法が提供される。
【0015】
本明細書ではまた、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックが提供される。
【0016】
本明細書ではまた、前記リサイクルプラスチックを含む成形品が提供される。
【0017】
本明細書ではまた、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物およびアルコールの反応生成物を含む、可塑剤組成物が提供される。
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態によるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、およびそれを用いたリサイクルプラスチック、成形品および可塑剤組成物についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0020】
本明細書で使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0021】
本明細書で使用される「含む」こと意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0022】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限られない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0023】
本明細書で(共)重合体は重合体または共重合体を両方含む意味であり、前記重合体は単一繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は2種以上の繰り返し単位を含有した複合重合体を意味する。
【0024】
1.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物
発明の一実施形態によれば、テレフタル酸を含み、前記テレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下であり、含水率が30%以下であり、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物はテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物が提供されることができる。
【0025】
本発明者らは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物のように、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたテレフタル酸の粒子サイズを十分に増加させて、組成物の粘度を低くして配管移送効率を上げ、フィルタ工程の時間を短縮して工程効率が向上し、含水率が減少することにより乾燥時間を短縮できることを実験により確認して発明を完成した。
【0026】
また、本発明者らは、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物のように、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたが、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸でないその他単量体であるイソフタル酸の比率がリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が0.85モル%未満にきわめて減少して、これを用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成すると、優れた物性の実現が可能であることを実験により確認して発明を完成した。
【0027】
特に、従来の方法により得られたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたテレフタル酸には通常1~2%のイソフタル酸が不純物として含まれたことに対して、本発明は後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法上の特徴である2次洗浄工程によりイソフタル酸をほぼ完全に除去させることができた。
【0028】
具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物はテレフタル酸を含むことができる。前記テレフタル酸は前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする。
【0029】
すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体で回収を行った結果、テレフタル酸も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体での回収とは別に外部で新規のテレフタル酸を添加させる場合は本願発明のテレフタル酸の範疇に含まれない。
【0030】
具体的には、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたとは、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。
【0031】
例えば、前記塩基性条件下で解重合反応を進行するとき、前記ポリエチレンテレフタレートから一次的にNa2-TPAというテレフタル酸塩とエチレングリコールが生成され、2次強酸中和によりNa2-TPAをTPAに転換してテレフタル酸を回収することができる。
【0032】
すなわち、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたテレフタル酸は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の塩基(アルカリ)分解物、その酸中和物、またはこれらの混合物を含むことができる。具体的には、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の塩基(アルカリ)分解物はNa2-TPAを含むことができ、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の塩基(アルカリ)分解物の酸中和物はテレフタル酸を含むことができる。
【0033】
前記テレフタル酸は、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が99.15モル%超過、または99.5モル%以上、または99.9モル%以上、または99.15モル%超過100モル%以下、または99.5モル%以上100モル%以下、または99.9モル%以上100モル%以下、または99.99モル%以上100モル%以下であり得る。
【0034】
前記テレフタル酸のモル比を測定する方法の例は、大きく限定されるものではなく、例えば、1H NMR、ICP-MS分析、HPLC分析手法などを制限なく使用することができる。前記NMR、ICP-MS、HPLCの具体的な方法、条件、装備などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。
【0035】
前記テレフタル酸のモル比を測定する方法の一例を挙げると、常圧、20℃以上30℃以下条件でリサイクルプラスチック合成用単量体組成物5mg以上20mg以下を試料として採取して1ml DMSO-d6溶媒に溶解させた後、Agilent DD1 500MHz NMR装備により1H NMRスペクトルを得て、分析ソフトウェア(MestReC)を用いてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)など検出されるすべての物質ピークをそれぞれ指定し、積分して、ピーク積分値を基準として前記試料で分析した全体単量体化合物100モル%内に含有されたテレフタル酸のモル比(モル%)を計算した。
【0036】
このように、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸の比率は、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が99.15モル%超過にきわめて増加して、テレフタル酸または不純物単量体(例えば、イソフタル酸)を最小化することによって、これを用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成すると、優れた物性の実現が可能である。
【0037】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が0.85モル%未満のイソフタル酸をさらに含むことができる。
【0038】
前記イソフタル酸は前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の回収に使用されたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする。
【0039】
すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体で回収を行った結果、イソフタル酸も共に得られることを意味する。したがって、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を製造するためにテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体での回収とは別に外部で新規のイソフタル酸を添加させる場合は本願発明のイソフタル酸範疇に含まれない。
【0040】
具体的には、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたとは、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応により得られたことを意味する。前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。
【0041】
前記イソフタル酸は、リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が0.85モル%未満、または0.5モル%以下、または0.1モル%以下、または0モル%以上0.85モル%未満、または0モル%以上0.5モル%以下、または0モル%以上0.1モル%以下、または0モル%以上0.01モル%以下であり得る。
【0042】
前記イソフタル酸のモル比を測定する方法の例は大きく限定されるものではなく、例えば、1H NMR、ICP-MS分析、HPLC分析手法などを制限なく用いることができる。前記NMR、ICP-MS、HPLCの具体的な方法、条件、装備などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。
【0043】
前記イソフタル酸のモル比を測定する方法の一例を挙げると、常圧、20℃以上30℃以下条件でリサイクルプラスチック合成用単量体組成物5mg以上20mg以下を試料として採取して1ml DMSO-d6溶媒に溶解させた後、Agilent DD1 500MHz NMR装備により1H NMRスペクトルを得て、分析ソフトウェア(MestReC)を用いてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)など検出されるすべての物質ピークをそれぞれ指定し、積分して、ピーク積分値を基準として前記試料で分析した全体単量体化合物100モル%内に含有されたイソフタル酸のモル比(モル%)を計算した。
【0044】
このように、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸でない不純物単量体であるイソフタル酸の比率がリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された全体単量体化合物100モル%を基準としてモル比が0.85モル%未満にきわめて減少することによって、これを用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成すると、優れた物性の実現が可能である。
【0045】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたことを特徴とする。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物を得るためにテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体で回収を行った結果、テレフタル酸、イソフタル酸が含有されたリサイクルプラスチック合成用単量体組成物が共に得られることを意味する。
【0046】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体で、前記(共)重合体は重合体または共重合体を両方含む意味であり、単量体の(共)重合反応により得られる反応生成物を総称する。前記(共)重合体は分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0047】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体は、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート系共重合体、および熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群より選ばれた1種以上の(共)重合体を含むことができる。すなわち、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体はポリアルキレンテレフタレート1種、ポリアルキレンテレフタレート系共重合体1種、熱可塑性ポリエステルエラストマー1種、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0048】
前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体は、ポリアルキレンテレフタレートを合成する単量体であるアルキレングリコールとテレフタル酸に基づいて追加的な共単量体をさらに反応させて得られた共重合体を意味する。
【0049】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体はテレフタル酸および共単量体の反応生成物を含むことができる。すなわち、前記テレフタル酸を含む単量体は、テレフタル酸と共に共単量体をさらに含むことができる。
【0050】
前記テレフタル酸と反応できる共単量体の例も、大きく限定されるものではなく、具体的な例としては脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシド、脂肪酸、脂肪酸誘導体またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
前記脂肪族ジオールは一例として数平均分子量(Mn)300g/mol以下のジオール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール(1,4-butane diol、1,4-BG)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cycloheanedimethanol、1,4-CHDM)のうち1種以上を使用することができ、具体的な例として1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0052】
前記ポリアルキレンオキシドはソフトセグメントを構成する単位であって、脂肪族ポリエーテルを構成成分とすることができる。一例としてポリオキシエチレングリコール(polyoxyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene)glycol,PTMEG)、ポリオキシヘキサメチレングリコール(polyoxyhexamethylene glycol)、エチレンオキシド(ethylene oxide)とプロピレンオキシド(propylene oxide)の共重合体、ポリプロピレンオキシドグリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)の共重合体のうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてPTMEGを使用することができ、特に数平均分子量(Mn)が600g/mol~3,000g/mol、1,000g/mol~2,500g/molあるいは1,500g/mol~2,200g/molであるPTMEGを使用することができる。
【0053】
前記脂肪酸は、一例としてテレフタル酸を除いた脂肪族カルボン酸化合物のうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてアジピン酸を使用することができる。前記脂肪酸誘導体は上述した脂肪酸から由来した化合物であって、一例として脂肪酸エステル、脂肪酸塩化物、脂肪酸無水物、脂肪酸アミドのうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてアジピン酸エステルを使用することができる。
【0054】
具体的な例を挙げて説明すると、前記テレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールを使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレートの一種であるポリブチレンテレフタレート(PBT)が得られる。
【0055】
また、前記テレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールであるエチレングリコールを使用すると、テレフタル酸とエチレングリコールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレートの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)が得られる。
【0056】
また、前記テレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールと前記ポリアルキレンオキシドであるPTMEGを共に使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオール、PTMEGの重合反応により熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が得られる。
【0057】
また、前記テレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールと脂肪酸であるアジピン酸を共に使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオール、アジピン酸の重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体の一種であるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が得られる。
【0058】
また、前記テレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールであるエチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジメタノールを共に使用すると、テレフタル酸とエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体の一種であるグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate,PETG)が得られる。
【0059】
具体的な例として、前記ポリアルキレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレートのうち選択された1種以上の(共)重合体を含むことができる。
【0060】
また、具体的な例として、前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate,PETG)のうち選択された1種以上の(共)重合体を含むことができる。
【0061】
なお、前記テレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下、または10μm以上300μm以下、または20μm以上400μm以下、または10μm以上100μm以下、または200μm以上400μm以下であり得る。前記テレフタル酸の粒子直径とは、粒子の重心を通過する直線が粒子境界線と接する二つの地点の間の距離を意味する。
【0062】
前記テレフタル酸の粒子直径を測定する方法の例は大きく限定されるものではなく、例えば、FE-SEMイメージなどを制限なく使用することができる。前記FE-SEMの具体的な方法、条件、装備などは従来より知られている多様な内容を制限なく適用することができる。前記テレフタル酸の粒子直径を測定する方法の一例を挙げると、HITACHI-S4800でFE-SEMイメージにより測定することができる。
【0063】
このように、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下に増加して、組成物の粘度を低くして配管移送の効率を上げてフィルタ工程の時間を短縮して工程効率が向上して、テレフタル酸または不純物単量体(例えば、イソフタル酸)を最小化してテレフタル酸の回収効率を高めることによって、これを用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成すると、優れた物性の実現が可能である。
【0064】
特に、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、テレフタル酸の粒子直径が10μm以上400μm以下に増加するのは、後述するように、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する工程後に行われる前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階;および100℃以下の温度に冷却させる段階;により、解重合反応生成物に含有されたテレフタル酸の溶解度増加により結晶、または結晶の間々に付いていたイソフタル酸などの不純物を極力溶媒で溶解させることができ、溶解したテレフタル酸が不純物に比べて溶解度が悪いので、後に温度を低くしたとき溶解度の差によりテレフタル酸結晶として容易に析出できるからである。
【0065】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、テレフタル酸の粒子直径が10μm未満に減少すると、十分な水準の不純物除去とテレフタル酸の高純度、高収率の確保が難しいので、テレフタル酸の回収工程効率が減少して、回収されたテレフタル酸およびこれから合成された(共)重合体の物性が劣ることがある。
【0066】
なお、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の含水率は、30%以下、または25%以下、または20%以下、または16%以下、または15%以下、または12%以下、または0.1%以上、または1%以上、または0.1%~30%、または0.1%~25%、または0.1%~20%、または0.1%~16%、または0.1%~15%、または0.1%~12%、または1%~30%、または1%~25%、または1%~20%、または1%~16%、または1%~15%、または1%~12%であり得る。
【0067】
前記含水率はある試料が標準状態で低い水分率から水分平衡をなしたときの乾燥前と乾燥後の差を乾燥前の重量で割って百分率として計算されたものを意味する。すなわち、標準状態での試料重量をa、乾燥後の試料重量をbとすると、(a-b)÷a×100=含水率あるいは含水率(%)である。
【0068】
前記含水率測定方法は特に限定されるものではなく、従来の含水率測定方法を制限なく適用することができる。ただし、含水率測定方法の一例を挙げると、加熱乾燥式水分測定機(AND社のMX-50)を用いて140℃で10分間乾燥する過程で水分蒸発による重量減少分を%単位で測定することができる。
【0069】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の含水率が30%以下にきわめて減少することによって、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物を用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成するとき乾燥時間を短縮してエネルギ効率を上げることができる。
【0070】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物で、テレフタル酸でない不純物単量体である有機溶媒の比率がリサイクルプラスチック合成用単量体組成物100重量%を基準として重量比率が10ppm超過に増加すると、テレフタル酸に過量残留する再結晶有機溶媒によって、回収されたテレフタル酸およびそれから合成された(共)重合体の物性が劣ることがある。
【0071】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、一部の少量のその他添加剤、溶媒をさらに含み得、具体的な添加剤や溶媒の種類は大きく限定されず、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合によるテレフタル酸の回収工程で広く使用される多様な物質を制限なく適用することができる。
【0072】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法により得られたものであり得る。すなわち、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応後に、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸のみを高純度で確保するために多様な濾過、精製、洗浄、乾燥工程を経て得られた結果物に該当する。
【0073】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物は、後述する多様なリサイクルプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、グリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate,PETG)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE))の合成に使用される単量体製造原料として適用されるか、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC))の加工に使用されるその他の添加剤(例えば、ジオクチルテレフタレート可塑剤)の製造原料として使用することができる。
【0074】
2.リサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法
発明の他の実施形態によれば、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する段階;前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階;および前記洗浄段階の結果物を100℃以下の温度に冷却させる段階;を含み、前記洗浄段階は、20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;および200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を含むリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法が提供されることができる。
【0075】
本発明者らは、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法のように、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体からテレフタル酸を回収する工程で、温度区間によって区別される2次にわたる多段階の洗浄工程を適用するすることにより、本発明における主な合成目標物質であるテレフタル酸でないその他の単量体であるイソフタル酸の比率がきわめて減少して、これを用いてポリエチレンテレフタレートまたは高付加価値のプラスチック(PBT,TPEE)を合成すると、優れた物性の実現が可能であることを実験により確認して発明を完成した。
【0076】
特に、従来の方法により得られたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体から回収されたテレフタル酸には通常1~2%のイソフタル酸が不純物として含まれたことに対して、本発明は後述するリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法上の特徴である2次洗浄工程によりイソフタル酸をほぼ完全に除去させることができた。
【0077】
これは、前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階で、テレフタル酸の溶解度増加により結晶、または結晶の間々に付いていたイソフタル酸やソジウム(Na)などの不純物を極力溶媒で溶解させて除去できるからである。
【0078】
また、洗浄後の100℃以下の温度に冷却させる段階によりテレフタル酸粒子成長を誘導して組成物粘度とフィルタ工程に適した水準の粒子大きさを有するテレフタル酸を製造することができる。
【0079】
具体的には、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する段階を含むことができる。
【0080】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体は、合成により生産された新規のテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体、再生工程により生産された再生テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体、またはテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体廃棄物など多様な形態、種類に関係なく適用することができる。
【0081】
ただし、必要に応じて、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応を行う前に、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の前処理工程を行い、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体からテレフタル酸を回収する工程の効率を上げることができる。前記前処理工程の例としては洗浄、乾燥、粉砕、グリコール分解などが挙げられ、それぞれの前処理工程の具体的な方法は限定されず、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合によるテレフタル酸の回収工程で広く使用される多様な方法を制限なく適用することができる。
【0082】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応時、前記解重合反応は酸性、中性、塩基性下で行われることができ、特に、塩基性(アルカリ)条件下で解重合反応を行うことができる。より具体的に、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応は、水、またはアルキレングリコール、またはアルコール溶媒下で行うことができる。前記アルキレングリコール溶媒の具体的な例としては、エチレングリコールが挙げられ、前記アルコール溶媒の具体的な例としてはエタノールが挙げられる。
【0083】
また、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応は塩基条件で行うことができる。前記塩基の種類は大きく限定されず、一例として水酸化ナトリウム(NaOH)が挙げられる。
【0084】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応時、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1モルに対して2.3モル以下、または1モル以上2.3モル以下、または1.5モル以上2.3モル以下の含有量で塩基を反応させて行うことができる。
【0085】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応時、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1モルに対して2.3モル超過で塩基を反応させると、イソフタル酸塩の溶解度の減少およびアルカリ塩の発生量増加の影響により主な合成目標物質であるテレフタル酸でない不純物であるイソフタル酸およびソジウム(Na)が増加して、後述する洗浄工程によっても十分に除去されにくいからである。
【0086】
また、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応を行う温度は大きく限定されるものではないが、例えば25℃以上200℃以下、または130℃以上180℃以下で行うことができる。また、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応を行う時間は0分以上3時間以下で行うことができる。
【0087】
一方、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させた後に、ジオール成分を除去することができる。例えば、前記ポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合反応生成物はエチレングリコールおよびテレフタル酸塩を含む。
【0088】
本発明の主な回収目標物質はテレフタル酸であるから、それ以外の副産物は濾過により除去させることができる。濾過された副産物は前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応に分離精製過程を行わずリサイクルするか、必要に応じて通常の蒸留、抽出、吸着方式の分離精製を経てリサイクルすることができる。
【0089】
また、本発明の主な回収目標物質はテレフタル酸であるから、テレフタル酸塩の場合、後述するように追加的な強酸による中和工程によりテレフタル酸に転換させることができる。
【0090】
具体的な一例を挙げると、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応の生成物を50℃以下に冷却した後、真空濾過によりエチレングリコールを除去してテレフタル酸塩を得ることができる。
【0091】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階を含むことができる。
【0092】
前述したように、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物にはエチレングリコールが除去され、テレフタル酸塩の中和により得られたテレフタル酸を含有することができる。ただし、テレフタル酸を得る回収工程中に多様な不純物が残留しているので、これを十分に除去して高純度のテレフタル酸を確保するために洗浄を行うことができる。
【0093】
具体的には、前記洗浄段階は、20℃以上100℃以下、または20℃以上50℃以下、または20℃以上30℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;および200℃以上300℃以下、または200℃以上250℃以下、または200℃以上210℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を含むことができる。前記温度条件は溶媒による洗浄が行われる洗浄容器内部の温度を意味し、常温を外れる高温を維持するために多様な加熱機構を制限なく適用することができる。
【0094】
より具体的には、前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度と、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度の間の差異値が150℃以上200℃以下、または170℃以上200℃以下であり得る。
【0095】
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度と、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度の間の差異値とは、前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度から、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度を引いた値を意味する。
【0096】
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度と、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度の間の差異値が150℃未満で過度に減少すると、主な合成目標物質であるテレフタル酸でない不純物であるイソフタル酸およびソジウム(Na)を十分に除去しにくい。
【0097】
前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度と、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の温度の間の差異値が200℃超過で過度に増加すると、極限の温度条件を維持するために厳しい条件が形成されて工程の効率性が減少し得る。
【0098】
前記洗浄段階は、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を先に行い、200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を後に行うことができる。また、前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を先に行い、20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を後に行うことができる。
【0099】
より好ましくは、前記洗浄段階は、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を先に行い、200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を後に行うことができる。そのため、中和段階後の強酸による反応器の腐食を最小化できる効果が現れる。
【0100】
前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;および200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;はそれぞれ少なくとも1回以上繰り返して行うことができる。
【0101】
また、必要に応じて、20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;あるいは200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階;を行った後には濾過により残留する溶媒を除去する工程を追加で経ることができる。
【0102】
前記洗浄段階で使用される溶媒は水、エタノール、またはエタノール水溶液のうちの一つの溶媒を含むことができる。前記エタノール水溶液は水とエタノールが混合された溶液であり、この時、エタノールの重量比率が5重量%以上40重量%以下であり得る。
【0103】
前記洗浄段階で使用される溶媒は、解重合反応に使用されたテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1重量部を基準として10重量部以上50重量部以下の重量比率で使用することができる。
【0104】
より具体的に、前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は水であり得る。有機溶媒なしに水を利用して洗浄を行うことにより環境への優しさを向上させることができる。また、前記水の代わりにエタノールのような有機溶媒を使用すると、塩(NaCl)を効果的に除去できず、組成物内のソジウム(Na)残留量が増加する問題が発生し得る。そして、この時、前記溶媒はテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1重量部に対して15重量部以上25重量部以下で使用することができる。
【0105】
前記20℃以上100℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の後、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物のpH値(pH value)が3~4であり得る。そのため、中和段階後の強酸による反応器の腐食を最小化できる効果が現れる。
【0106】
また、前記200℃以上300℃以下の温度で溶媒で洗浄する段階の溶媒は水であり得る。そして、この時、前記溶媒は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体1重量部に対して5重量部以上55重量部以下、または5重量部以上50重量部以下、または10重量部以上50重量部以下で使用することができる。そのため、テレフタル酸が水に十分に溶解して、テレフタル酸の溶解度増加により結晶、または結晶の間々に付いていたイソフタル酸などの不純物を極力溶媒で溶解させることができ、溶解したテレフタル酸が不純物に比べて溶解度が悪いので、後に温度を低くしたとき溶解度の差によりテレフタル酸結晶として容易に析出できるからである。
【0107】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記洗浄段階の結果物を100℃以下の温度に冷却させる段階を含むことができる。前記冷却によりテレフタル酸と不純物との溶解度の差により、結晶化されたテレフタル酸を濾過などにより取得し、不純物を溶媒に溶解した状態で除去することができる。具体的な冷却条件は大きく限定されるものではないが、例えば100℃以下、または50℃以上100℃以下、または80℃以上100℃以下の温度に冷却を行うことができる。前記冷却時に使用される具体的な乾燥装備、方法については従来より公知された多様な冷却技術を制限なく適用することができる。
【0108】
前記100℃以下の温度に冷却させる段階で、冷却速度が1℃/分~10℃/分、または1℃/分~5℃/分であり得る。前記冷却速度が10℃/分超過で過度に速い場合、粒子大きさが十分に増加できず組成物の粘度が増加して配管移送が難しく、フィルタによる固液分離効率が減少し得る。反面、前記冷却速度が1℃/分未満で過度に遅い場合、冷却過程が長くなって生産効率性が減少し得る。
【0109】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階の前に、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の酸による中和反応段階;をさらに含むことができる。
【0110】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)アルカリ分解生成物は、エチレングリコールおよびテレフタル酸塩を含むが、本発明の主な回収目標物質はテレフタル酸であるから、前記アルカリ分解により得られたテレフタル酸塩の場合、追加的な強酸による中和工程によりテレフタル酸に転換させることができる。すなわち、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合反応がアルカリ分解である場合、酸による中和反応段階を経ることができる。
【0111】
前記中和反応時に使用される酸は強酸を使用することができ、例えば、塩酸(HCl)が挙げられる。前記強酸による中和反応により、中和反応終了時のpHが4以下、または2以下を満たすことができる。前記中和反応時の温度は25℃以上100℃以下に調節することができる。
【0112】
また、必要に応じて、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の酸による中和反応段階を行った後には濾過により残留する不純物を除去する工程を追加で経ることができる。
【0113】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を解重合反応させて、ジオール成分を除去する段階の後に、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階をさらに含むことができる。
【0114】
前記精製により残留する不純物を除去することができ、具体的な精製条件は大きく限定されるものではなく、具体的な精製装備、方法については従来より公知された多様な精製技術を制限なく適用することができる。
【0115】
具体的な一例を挙げると、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階は、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を溶解して濾過させる段階;および吸着剤による吸着段階;を含むことができる。
【0116】
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を溶解して濾過させる段階で、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を溶解させる溶媒としては水を使用することができ、溶解温度は25℃以上100℃以下で行うことができる。これにより、解重合反応で反応しなかった残留テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体を除去することができる。
【0117】
前記吸着剤による吸着段階で、吸着剤の例としては活性炭、木炭(charcoal)、セライト(celite)、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0118】
必要に応じて、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階で抽出段階、洗浄段階、沈殿段階、再結晶段階、乾燥段階などを制限なく追加で適用することができる。
【0119】
前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階を行う場合、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階後に上述した前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階を行うことができる。
【0120】
また、前述したように解重合反応がアルカリ分解である場合、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階を行うと、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の精製段階後に上述した前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物の酸による中和反応段階を経て前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階を行うことができる。
【0121】
一方、前記他の実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物の製造方法は、前記ジオール成分が除去された解重合反応生成物を洗浄する段階の後に、乾燥段階;をさらに含むことができる。前記乾燥により残留する溶媒を除去することができ、具体的な乾燥条件は大きく限定されるものではないが、例えば100℃以上150℃以下の温度で乾燥を行うことができる。前記乾燥時に使用される具体的な乾燥装備、方法については従来より公知された多様な乾燥技術を制限なく適用することができる。
【0122】
3.リサイクルプラスチック
発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応生成物を含むリサイクルプラスチックが提供されることができる。前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に係る内容は前記一実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0123】
前記リサイクルプラスチックに該当する例は大きく限定されるものではなく、テレフタル酸を単量体として合成される多様なプラスチックを制限なく適用することができ、より具体的な例としてはテレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体が挙げられる。
【0124】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体で、前記(共)重合体は重合体または共重合体を両方含む意味であり、単量体の(共)重合反応により得られる反応生成物を総称する。前記(共)重合体は分子量範囲による低分子化合物、オリゴマー、高分子をすべて含むことができる。
【0125】
前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体は、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート系共重合体、および熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる群より選ばれた1種以上の(共)重合体を含むことができる。すなわち、前記テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体はポリアルキレンテレフタレート1種、ポリアルキレンテレフタレート系共重合体1種、熱可塑性ポリエステルエラストマー1種、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0126】
前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体は、ポリアルキレンテレフタレートを合成する単量体であるアルキレングリコールとテレフタル酸に基づいて追加的な共単量体をさらに反応させて得られた共重合体を意味する。
【0127】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体の例も、大きく限定されるものではなく、具体的な例としては脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシド、脂肪酸、脂肪酸誘導体またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0128】
前記脂肪族ジオールは一例として数平均分子量(Mn)300g/mol以下のジオール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール(1,4-butane diol、1,4-BG)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cycloheanedimethanol、1,4-CHDM)のうち1種以上を使用することができ、具体的な例として1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0129】
前記ポリアルキレンオキシドはソフトセグメントを構成する単位であって、脂肪族ポリエーテルを構成成分とすることができる。一例としてポリオキシエチレングリコール(polyoxyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene)glycol,PTMEG)、ポリオキシヘキサメチレングリコール(polyoxyhexamethylene glycol)、エチレンオキシド(ethylene oxide)とプロピレンオキシド(propylene oxide)の共重合体、ポリプロピレンオキシドグリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)の共重合体のうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてPTMEGを使用することができ、特に数平均分子量(Mn)が600g/mol~3,000g/mol、1,000g/mol~2,500g/molあるいは1,500g/mol~2,200g/molであるPTMEGを使用することができる。
【0130】
前記脂肪酸は一例としてテレフタル酸を除いた脂肪族カルボン酸化合物のうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてアジピン酸を使用することができる。前記脂肪酸誘導体は上述した脂肪酸から由来した化合物であって、一例として脂肪酸エステル、脂肪酸塩化物、脂肪酸無水物、脂肪酸アミドのうち1種以上を使用することができ、具体的な例としてアジピン酸エステルを使用することができる。
【0131】
具体的な例を挙げて説明すると、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールを使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレートの一種であるポリブチレンテレフタレート(PBT)が得られる。
【0132】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールであるエチレングリコールを使用すると、テレフタル酸とエチレングリコールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレートの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)が得られる。
【0133】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールと前記ポリアルキレンオキシドであるPTMEGを共に使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオール、PTMEGの重合反応により熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が得られる。
【0134】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールである1,4-ブタンジオールと脂肪酸であるアジピン酸を共に使用すると、テレフタル酸と1,4-ブタンジオール、アジピン酸の重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体の一種であるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が得られる。
【0135】
また、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有された高純度のテレフタル酸と反応できる共単量体として前記脂肪族ジオールであるエチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジメタノールを共に使用すると、テレフタル酸とエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールの重合反応により前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体の一種であるグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate,PETG)が得られる。
【0136】
具体的な例として、前記ポリアルキレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレートのうち選択された1種以上の(共)重合体を含むことができる。
【0137】
また、具体的な例として、前記ポリアルキレンテレフタレート系共重合体は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびグリコール変性PET樹脂(glycolmodified polyethylene terephthalate,PETG)のうち選択された1種以上の(共)重合体を含むことができる。
【0138】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応方法の例は特に限定されず、従来より知られている多様な方法を制限なく適用することができる。ただし、前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応の具体的な一例として溶融縮重合および固相重合が挙げられる。
【0139】
より具体的な例として、前記リサイクルプラスチックで熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を製造する場合、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシドをチタンブトキシド(titaniumbutoxide,TBT)触媒下に180℃以上250℃以下で30分以上210分以下の間エステル化反応によりBHBT(bis(4-hydroxy)butyl terephthalate)オリゴマーを生成した後にTBT触媒を再投入して溶融重縮合反応を200℃以上270℃以下で20分以上240分以下の間760torrから0.3torrまで段階的に減圧しながら実施することができる。前記溶融重縮合反応の終結後の窒素圧で反応器内で吐出してストランドのペレタイジングによりペレット(pellet)化することができる。
【0140】
その次に前記ペレットを固相重合反応器、あるいは回転可能な真空乾燥器で140℃以上200℃以下の温度範囲で10時間以上24時間以下にわたって高真空下窒素などの不活性気流下に固相重合を行うことができる。
【0141】
また、前記リサイクルプラスチックでポリアルキレンテレフタレートを製造する場合、芳香族ジカルボン酸と数平均分子量(Mn)が300g/mol以下である脂肪族ジオールを溶融重合した後に固相重合したものであり得る。
【0142】
前記ポリアルキレンテレフタレート樹脂は溶融重合により得られた低分子量ペレットを固相重合反応器に入れて上述した熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)の固相重合で提示したように、高真空、不活性状態下で反応させて高分子量の樹脂を得ることができる。
【0143】
前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の反応で、前記ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはポリブチレンアジペートテレフタレートを製造する具体的な方法については特に限定されず、従来の再生プラスチック合成分野に広く知られた多様な工程を制限なく適用することができる。
【0144】
前記リサイクルプラスチックの物性は、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の重量比率によって変わり得、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物および共単量体の重量比率は特に限定されるものではなく、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を基準として一例を挙げると、TPA/(TPA+PTMG)=61.5の重量比率で合成されることができる。
【0145】
4.成形品
発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態のリサイクルプラスチックを含む成形品が提供されることができる。前記リサイクルプラスチックに係る内容は前記他の実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0146】
前記成形品は、前記リサイクルプラスチックを公知された多様なプラスチック成形方法を制限なく適用して得られたものであり得、前記成形方法の一例を挙げると、射出成形、発泡射出成形、ブロー成形、または押出成形が挙げられる。
【0147】
前記成形品の例は大きく限定されるものではなく、プラスチックを使用する多様な成形品に制限なく適用することができる。前記成形品の一例を挙げると、自動車、電機電子製品、通信製品、生活用品が挙げられる。
【0148】
5.可塑剤組成物
発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物およびアルコールの反応生成物を含む可塑剤組成物が提供されることができる。前記リサイクルプラスチック合成用単量体組成物に係る内容は前記一実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0149】
一般に可塑剤は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂と充填材、安定剤、顔料、防曇剤などの様々な添加剤を適宜添加して多様な加工物性を付与して押出成形、射出成形、カレンダリングなどの加工法により電線、パイプ、床材、壁紙、シート、人造皮革、ターポリン、テープおよび食品包装材業種の製品に至るまで多様な製品の素材として使用される。
【0150】
通常、可塑剤はアルコールがフタル酸およびアジピン酸のようなポリカルボン酸と反応してそれに相応するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の国内外の規制を考慮して、テレフタレート系、トリメリテート系、その他高分子系などのフタレート系可塑剤の代わりとなる可塑剤組成物に対する研究が続けられている。
【0151】
前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物およびアルコールの反応生成物はテレフタレート系化合物を含むことができる。具体的には、前記一実施形態のリサイクルプラスチック合成用単量体組成物に含有されたテレフタル酸とアルコールの直接エステル化反応によりテレフタレート系化合物が得られる。
【0152】
前記直接エステル化反応は、アルコールにテレフタル酸を投入した後触媒を添加して窒素雰囲気下で反応させる段階;未反応アルコールを除去して、未反応酸を中和させる段階;および減圧蒸留により脱水および濾過する段階;で準備されることができる。
【0153】
前記テレフタレート系化合物の例は大きく限定されるものではないが、一例を挙げると、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジイソノニルテレフタレート(DINTP)、ジイソデシルテレフタレート(DIDTP)、またはジ(2-プロピルヘプチル)テレフタレート(DPHTP)などが挙げられる。
【0154】
前記テレフタレート系化合物は、オクタノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコールおよび2-プロピルヘプチルアルコールからなる群より選ばれたいずれか一つのアルコールと、テレフタル酸が反応する直接エステル化反応により製造することができる。
【0155】
前記可塑剤組成物は電線、床材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙あるいはチューブの製造に適用することができる。
【発明の効果】
【0156】
本発明によれば、テレフタル酸を含む単量体から合成された(共)重合体の解重合によりテレフタル酸を回収するとき、含水率が低く、粒子直径が増加して、不純物であるイソフタル酸の含有量が顕著に減少して高純度のテレフタル酸を確保できるリサイクルプラスチック合成用単量体組成物、その製造方法、およびそれを用いたリサイクルプラスチック、成形品および可塑剤組成物が提供されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0157】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0158】
<実施例>
(実施例1)
(1)リサイクルテレフタル酸単量体組成物の製造
ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルスクラップ(bottle scrap)300g(1.56mol)、エチレングリコール(EG)1939.69g(31.25mol)、水酸化ナトリウム(NaOH)128.13g(3.20mol)を3L SUS反応器に投入した後、閉じた系状態で180℃で2時間の間攪拌してPET解重合反応を行った。前記解重合反応の生成物を50℃以下に冷却した後、真空濾過によりテレフタル酸ナトリウム塩(Na2-TPA)を得た。
【0159】
前記テレフタル酸ナトリウム塩(Na2-TPA)が含有された濾過物を水3000gに完全に溶解させた後、再び真空濾過により未反応PETを除去した。その後、前記濾過物に対して木炭(charcoal) 15gを投入して1時間攪拌させて吸着により精製した後、濾過により木炭(charcoal)を除去した。
【0160】
その後、6M HCl500~550mlを用いて20~30℃で中和させて、pH2以下に低下したスラリーを再び真空濾過してテレフタル酸(TPA)を得た。
【0161】
中和過程時に発生したNaClを除去するために、使用されたPET質量に対して10倍である水3000gを用いて20~30℃で30分以上1次洗浄して真空濾過した。前記濾過物を、使用されたPET質量に対して10倍である水3000gを用いて205℃温度で1時間の間2次洗浄して、1℃/minの冷却速度で徐冷して80℃~100℃でテレフタル酸(TPA)を回収した。
【0162】
その後、100℃コンベクションオーブンで12時間乾燥してリサイクルされたテレフタル酸(TPA)が回収されたリサイクルテレフタル酸単量体組成物を製造した。
【0163】
(2)リサイクルプラスチックの製造
前記実施例1の(1)で得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物200g、1,4-ブチレングリコール200g、数平均分子量が1,000-2,000g/molであるポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene)glycol,PTMEG)125gをエステル交換(ester interchange)反応器に入れてTBT触媒を0.1wt%加えた。200~240℃を維持しながら120~180分間反応させ、反応率(反応流出物である水量を反応率に換算した値)が90%以上である時点で反応を終結させてオリゴマーを得た。
【0164】
その後、製造されたオリゴマーを重縮合(polycondensation)反応器に移してTBT触媒0.1wt%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.14~0.15wt%、芳香族アミン系酸化防止剤または硫黄系安定剤を0.15~0.2wt%投入して230~250℃を維持させて760torrから0.3torrまで30分間減圧しながら溶融重縮合反応を行った後0.3torr以下の高真空条件で攪拌機にかかるトルク(torque)が所望のトルクに到達するまで溶融重縮合行った。反応を終結して窒素圧を用いて吐出してストランド化、冷却後にペレット(pellet)化して熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)樹脂を製造した。
【0165】
(実施例2)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で2次洗浄時、PET質量に対して20倍である水6000gを使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0166】
(実施例3)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で2次洗浄時、PET質量に対して50倍である水15000gを使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0167】
(実施例4)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で2次洗浄後、冷却速度を5℃/minに変更したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0168】
(実施例5)
(1)リサイクルテレフタル酸単量体組成物の製造
前記実施例1の(1)と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物を製造した。
【0169】
(2)リサイクルプラスチックの製造
前記実施例1の(1)で得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物300g、1,4-ブチレングリコール300gをエステル(esterification)反応器に入れてTBT触媒0.1wt%を加えた。200~240℃を維持しながら120~180分間反応させ、反応率(反応流出物である水量を反応率に換算時)が90%以上である時点で反応を終結させてオリゴマーを得た。
【0170】
その後、製造されたオリゴマーを重縮合(polycondensation)反応器に移して230~260℃を維持しながら760torrから0.3torrまで30分間減圧して溶融重縮合し、攪拌機にかかるトルク(torque)が所望のトルク値に到達するまで0.3torr以下の高真空条件下に溶融重縮合反応を行った。反応を終結して窒素圧を利用、吐出してストランド化し、冷却後にペレット(pellet)化してポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を製造した。
【0171】
<比較例>
(比較例1)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で2次洗浄温度を20~30℃に変更したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0172】
(比較例2)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で1,2次洗浄温度を80℃に変更したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0173】
(比較例3)
下記表1に示すように、前記実施例1の(1)で1,2次洗浄時、PET質量に対して20倍である水6000gを使用したことを除いては、前記 比較例1と同一の方法でリサイクルテレフタル酸単量体組成物およびリサイクルプラスチックを製造した。
【0174】
<実験例>
前記実施例、および比較例から得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物について、下記方法で物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0175】
1.テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)の含有量
常圧、20~30℃条件でリサイクルテレフタル酸単量体組成物5~20mgを試料として採取して1ml DMSO-d6溶媒に溶解させた後、Agilent DD1 500MHz NMR装備により1H NMRスペクトルを得た。分析ソフトウェア(MestReC)を用いてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)など検出されるすべての物質ピークをそれぞれ指定し、積分した。ピーク積分値を基準として前記試料で分析した全体単量体化合物100モル%内に含有されたテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(モル%)を計算した。
【0176】
2.テレフタル酸(TPA)の粒子大きさ
前記実施例および比較例から得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物に含有されたテレフタル酸(TPA)粒子に対して、HITACHI-S4800でFE-SEMイメージにより最大直径と最小直径をそれぞれ測定した。
【0177】
3.含水率
前記実施例および比較例から得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物に対して、加熱乾燥式水分測定機(AND社のMX-50)を用いて140℃で10分間乾燥する過程で水分蒸発による重量減少分を%単位で測定した。
【0178】
【0179】
前記表1に示すように、実施例1~4で得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物に含まれた単量体のうちテレフタル酸が100モル%含有され、不純物であるイソフタル酸が完全に除去されて、高純度のテレフタル酸精製効率を示した。反面、比較例から得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物に含まれた単量体のうち不純物であるイソフタル酸が0.9モル%~1.2モル%で実施例に比べて過量含有されてテレフタル酸精製効率が大きく減少することを確認することができた。
【0180】
一方、実施例で得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物に含まれたテレフタル酸の粒子大きさは20μm~400μmで、1μm未満である比較例より増加したことを確認することができた。
【0181】
また、実施例で得られたリサイクルテレフタル酸単量体組成物の含水率は12%~20%で、54%~57%である比較例より減少したことを確認することができた。