(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置、および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240802BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/302 105A
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/44 A
(21)【出願番号】P 2020152825
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019205415
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭恵
(72)【発明者】
【氏名】久松 亨
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌伸
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050038(JP,A)
【文献】特開2019-153711(JP,A)
【文献】特開2014-143416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/3065
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記
パターンの表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記
パターンの表面に膜を形成する工程と、
c)
前記基板に対して、前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含む基板処理方法。
【請求項2】
前記a)において、前記チャンバ内に導入する前記第1の反応種の量を制御することにより、前記b)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を変える、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記a)において、前記チャンバ内に導入する前記第1の反応種の希釈度を制御することにより、前記b)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を変える、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記a)は、
a1)前記チャンバ内に前記第1の反応種を導入する工程と、
a2)前記チャンバから前記第1の反応種
の一部をパージする工程と、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記a2)においてパージする前記第1の反応種の量を制御することにより、前記b)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を変える、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の表面に膜を形成する工程と、
c)前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含み、
前記a)は、
a1)前記チャンバ内に前記第1の反応種を導入する工程と、
a2)前記チャンバから前記第1の反応種の少なくとも一部をパージする工程と、
を含み、
前記a2)において
、前記チャンバ内の圧力、処理時間、パージガスの流量のうち少なくとも1つを変えることにより
、パージする前記第1の反応種の量を制御し、前記b)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を変える
、基板処理方法。
【請求項7】
前記a)またはb)を、前記基板の表面での反応が飽和する前に終了する、請求項1から6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の表面に膜を形成する工程と、
c)前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含み、
前記パターンの上部に形成される膜の厚みが、前記パターンの下部に形成される膜の厚みよりも厚くなるように、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を制御する
、基板処理方法。
【請求項9】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の表面に膜を形成する工程と、
c)前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含み、
前記パターンの上部に形成される膜の厚みが、前記パターンの下部に形成される膜の厚みに近くなるように、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を制御する
、基板処理方法。
【請求項10】
d)前記c)により形成された膜をマスクとして前記基板をエッチングする工程をさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の表面に膜を形成する工程と、
c)前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
d)前記c)により形成された膜をマスクとして前記基板をエッチングする工程と、
e)前記c)と前記d)とを含む処理を2回以上繰り返す工程
と、
を含む、基板処理方法。
【請求項12】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の表面に膜を形成する工程と、
c)前記a)と前記b)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含み、
前記a)を実行する前に前記基板の表面の前記パターンの形状を示す値を測定する工程と、
測定された値に基づき処理条件を選択する工程と、
をさらに含み、
前記a)、前記b)、及び前記c)は、選択された前記処理条件で実行される
、基板処理方法。
【請求項13】
前記c)を所定回数実行した後に前記基板の表面の前記パターンの形状を示す値を測定する工程と、
前記a)を実行する前に測定した値と、前記c)を所定回数実行した後に測定した値との差分に基づき、次に実行する処理の処理条件を選択する工程と、
をさらに含む請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
f)前記基板の表面の前記パターンの形状を示す値を測定する工程と、
g)前記値と、予め定められた第1の閾値および前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値とを比較する工程と、
h)前記比較した結果に基づいて成膜処理を選択する工程と、
i)前記選択した成膜処理で、前記基板の表面に膜を形成する工程と
を含み、
前記h)は、
前記値が前記第1の閾値以下の場合には、前記成膜処理としてCVD(Chemical Vapor Deposition)を選択し、
前記値が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記第2の閾値未満の場合には、前記成膜処理として請求項1から9のいずれか1項に記載の基板処理方法を選択し、
前記値が前記第2の閾値以上の場合には、前記成膜処理としてALD(Atomic Layer Deposition)を選択する基板処理方法。
【請求項15】
前記c)は、前記パターンの形状が予め定めた条件を満足するまで繰り返し実行される、請求項1から10のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記c)は、同一チャンバ内で実行される、請求項1から11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記c)は、前記チャンバ内の圧力を約10から約200mTorrに設定して実行される、請求項1から12のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記
パターンの表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記
パターンの表面に膜を形成する工程と、
c)
前記基板に対して、前記a)及びb)とを含む処理を、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程と、
を含む処理であって、前記c)において、前記b)の開始時における第1の反応種の滞留量が互いに異なる複数の処理を選択する選択部と、
前記選択部が選択した複数の処理の前記チャンバ内での実行を指示する指示部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項19】
ガス入口及びガス出口を含むチャンバと、
前記チャンバ内でプラズマを生成するプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の前記表面に吸着させる工程と、
b)前記チャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の前記表面に膜を形成する工程と、
を含み、
前記b)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を調整することにより、前記膜のカバレッジを制御する、
処理を実行するように構成される、基板処理装置。
【請求項20】
ガス入口及びガス出口を含む第1のチャンバと、
前記第1のチャンバ内でプラズマを生成する第1のプラズマ生成部と、
ガス入口及びガス出口を含む第2のチャンバと、
前記第2のチャンバ内でプラズマを生成する第2のプラズマ生成部と、
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で基板を搬送可能に構成された搬送チャンバと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
a)前記第1のチャンバ内に、表面にパターンが形成された基板を配置する工程と、
b)前記第1のチャンバ内で、前記基板を第1の反応種に晒して、前記第1の反応種を前記基板の前記表面に吸着させる工程と、
c)前記第1のチャンバ内で、前記基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、前記基板の前記表面に膜を形成する工程と、
d)前記b)及び前記c)を含むサイクルを1回以上実施した後、前記基板を前記第1のチャンバから搬送し、前記第2のチャンバ内に配置する工程と、
e)前記第2のチャンバ内で、前記c)により形成された前記膜をマスクとして前記基板をエッチングする工程と、
を含み、
前記c)の開始時における前記第1の反応種の滞留量を調整することにより、前記膜のカバレッジを制御する、
処理を実行するように構成される、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、基板処理方法、基板処理装置、および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において利用される技術の一つとして、原子層堆積(Atomic Layer Deposition: ALD)が知られている。ALDは化学蒸着(Chemical Vapor Deposition: CVD)の一つに分類される。CVDは、チャンバ内に基板を配置してから、形成したい膜の成分を含むガスをチャンバに導入し、基板の表面上または気相で化学反応を生じさせることで基板上に膜を形成する手法である。ALDはCVDとは異なり、複数の反応ガスを一度にチャンバ内に導入しない。まず、第1の反応ガス(プリカーサ)をチャンバに導入して基板上に吸着させ、吸着しなかった第1の反応ガスをチャンバから排出する。次に第2の反応ガスをチャンバに導入し、基板上に吸着した第1の反応ガスの成分と反応させて膜を形成する。ALDは、自己制御性を利用して原子層レベルで膜厚を制御できることから緻密な成膜に活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2005/70041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による、基板処理装置が実現する基板処理方法は、a)チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、第1の反応種を基板の表面に吸着させる工程を含む。また、基板処理方法は、b)チャンバ内で、基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、基板の表面に膜を形成する工程を含む。また、基板処理方法は、c)工程a)と工程b)とを含む処理を、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る基板処理方法により実行される処理例1の流れを示すフローチャートである。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係る基板処理方法により実行される処理例2の流れを示すフローチャートである。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施形態に係る基板処理方法により実行される処理例3の流れを示すフローチャートである。
【
図2D】
図2Dは、第1の実施形態に係る基板処理方法により実行される処理例4の流れを示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、成膜手法とカバレッジとの関係について説明するための図である。
【
図4】
図4は、化学蒸着について説明するための図である。
【
図5】
図5は、原子層堆積について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態におけるミックスモードについて説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る基板処理装置に記憶される処理条件の一例について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る基板処理装置に記憶される処理の一例について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る基板処理方法に基づく処理の実験結果を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、対応記憶部に記憶される情報の構成の一例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、基板上に形成されたパターンの低周波ラフネスの一例を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、基板上に形成されたパターンを測定して得られる電力スペクトル密度の一例を示す図である。
【
図14C】
図14Cは、基板上に形成されたパターンの高周波ラフネスの一例を示す図である。
【
図14D】
図14Dは、基板上に形成されたパターンを測定して得られる電力スペクトル密度の他の例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第1、第2の実施形態における基板処理が実行される処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、第1、第2の実施形態における基板処理の実施に用いることが可能な処理システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は限定的なものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を付する。
【0009】
なお、以下の説明において、「上方」は、処理装置の天井方向すなわち、処理装置内に配置された基板の表面方向を指す。また、「下方」は、処理装置の床方向すなわち、処理装置内に配置された基板の裏面方向を指す。また、基板上に形成されたパターンの部分を示すために、「上」「下」というときは、「上」は基板表面側すなわち成膜やエッチング等の処理対象となる側を意味し、「下」は基板裏面側すなわち成膜やエッチング等の処理対象ではない側を意味する。また、基板の厚み方向を縦方向、基板表面と平行な方向を横方向とも呼ぶ。
【0010】
また、以下の説明において、「反応種」は、反応種を含有するガスを含む。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。第1の実施形態に係る基板処理方法は、たとえば、エッチング、成膜、クリーニング等の処理が実行される処理装置(たとえばチャンバ)を制御する基板処理装置により実行される。
【0012】
まず、基板処理装置は、基板(たとえば、シリコンで形成された半導体基板)に対して連続して実行される1以上の処理を選択する(ステップS11)。次に、基板処理装置は、選択した処理を、処理装置に実行させる(ステップS12)。実行が完了すると、処理は終了する。
【0013】
ここで、「処理」とは、基板に対して実行する1以上の処理を含む。1以上の処理はたとえば、成膜処理、エッチング処理、洗浄処理、温調処理等である。また、「処理」は、1以上の処理の実行順序の情報を含む。
【0014】
図2A~
図2Dは各々、第1の実施形態に係る基板処理方法により実行される処理例1~4の流れを示すフローチャートである。
【0015】
図2Aに示す処理例1は、CVDによる成膜処理である。まず、基板処理装置は、チャンバ内で第1の反応種と第2の反応種とを反応させて基板の表面に膜を形成する(ステップSA1)。そして、基板処理装置は処理を終了する。
【0016】
図2Bに示す処理例2は、ALD(後述する「ミックスモード」を含む。)による成膜処理である。処理例1の処理は、工程a)と工程b)とを含む。工程a)において、基板処理装置は、チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、第1の反応種を基板の表面に吸着させる(ステップSB1)。次に、工程b)において、基板処理装置は、チャンバ内で、基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、基板の表面に膜を形成する(ステップSB2)。基板処理装置は、所定数のサイクルを実行したか否かを判定する(ステップSB3)。所定数のサイクルを実行していないと判定した場合(ステップSB3、No)、基板処理装置は、ステップSB1に戻って処理を繰り返す。他方、所定数のサイクルを実行したと判定した場合(ステップSB3、Yes)、基板処理装置は処理を終了する。
【0017】
なお、
図2Bに示すように、工程aは、第1の反応種を基板に吸着させる工程a1と、チャンバから第1の反応種の少なくとも一部をパージする工程a2と、を含んでもよい。同様に、工程bは、第2の反応種をチャンバに導入してプラズマを形成して成膜する工程b1と、チャンバから第2の反応種の少なくとも一部をパージする工程b2と、を含んでもよい。
【0018】
図2Cに示す処理例3は、エッチング処理である。まず、基板処理装置は、エッチングを実行する(ステップSC1)。そして、基板処理装置は処理を終了する。
【0019】
図2Dに示す処理例4は、異なる条件の成膜処理とエッチングとを組み合わせた処理である。処理例4は、処理例1と、処理例2と、処理例3の処理を順番に実行する処理である。基板処理装置はまず処理例1を実行する(ステップSD1)。次に基板処理装置は処理例2を実行する(ステップSD2)。続けて基板処理装置は処理例3を実行する(ステップSD3)。そして基板処理装置は処理を終了する。
【0020】
また、「処理」は、各処理の処理条件の情報を含む。処理条件の情報はたとえば、チャンバ内圧力、プラズマ生成のために印加する高周波(Radio Frequency)の周波数および電力、ガスの種類および流量、処理時間、チャンバ各部の温度等を含む。また、「処理」は、各処理を実行する回数、および、複数の処理を予め定められた順序で繰り返す回数の情報を含む。たとえば、
図2A~
図2Dに示す処理例2において複数サイクルを実行する場合、各サイクルに異なる処理条件を設定できる。第1の実施形態に係る基板処理方法において実行する「処理」はたとえば、基板に形成された高低差を有するパターンに対して、異なるカバレッジでの成膜を実現する1以上の処理を含む。
【0021】
ここで、「カバレッジ」とは、基板上に形成された高低差を有するパターンの上部に形成される膜と下部に形成される膜との比を意味する。カバレッジはたとえば、基板に形成されたホールの内周上部に形成される膜の膜厚と、下部に形成される膜の膜厚との比を意味する。またたとえば、カバレッジは、基板表面と、基板に形成されたホールの底面と、に形成される膜の膜厚の比を意味する。たとえば、CVDを用いた成膜処理では、主にパターンの上部に成膜される。これに対して、ALDを用いた成膜処理では、パターンの高低差にかかわらず、基板の表面に一様に成膜される。このように、カバレッジは成膜処理の手法に応じて変化する。
【0022】
図3Aは、成膜手法とカバレッジとの関係について説明するための図である。
図3Aのグラフの横軸は基板上に形成されたパターンたとえばホール内の縦方向位置(ここではアスペクト比とも呼ぶ。)を示す。また、縦軸は、パターン上に形成される膜の膜厚を示す。たとえば、(1)は、低アスペクト比の位置すなわちパターンの上部に形成される膜の膜厚が大きく、高アスペクト比の位置すなわちパターンの下部に膜が形成されていない状態を示す。また、(2)~(4)は、パターンの上部から下部にかけて徐々に形成される膜の膜厚が減少していく状態を示す。また、(5)は、パターンの上部から下部にかけて形成される膜の膜厚が略均一である状態を示す。
【0023】
図3Bは、
図3Aの(1)~(5)に対応するパターンの概略縦断面図である。
図3Bの(1)はパターンPの頂部Topのみに膜Fを形成した状態である。
図3Bの(2)~(4)は、パターンPの頂部Topから側壁SW上部、側壁SW下部にかけて成膜量が徐々に変化している状態である。
図3Bの(5)は、パターンPの頂部Top、側壁SW上部、側壁SW下部、底部Bottomのいずれにおいても略均一な厚みの膜Fが形成された状態である。
図3Bの(1)~(5)はそれぞれ
図3Aの(1)~(5)に概ね対応する。
【0024】
次に、
図3Aおよび
図3Bの(1)~(5)のカバレッジを実現するための各手法について説明する。
【0025】
図4は、CVDについて説明するための図である。CVDでは、基板が配置されたチャンバ内に相互に反応して膜を形成する成分を含むガスを導入し、反応によって基板上に膜を形成する。
図4の例では、基板Sub(
図4の(A))が配置されたチャンバにガスAと、ガスBとが同時に導入される。導入されたガスA中の反応種とガスB中の反応種とが反応して、基板Sub上に膜を形成する(
図4の(B))。気相状態で反応した膜の成分が上方から堆積するため、基板上に高低差を有するパターンがある場合、CVDにより形成される膜のカバレッジはパターンの上部から下部に向けて減少する状態となる(
図4A,
図4Bの(1)参照)。
【0026】
図5は、ALDについて説明するための図である。ALDでは、基板が配置されたチャンバ内に第1の反応種と第2の反応種とを順番に導入して成膜する。
図5の例では、基板Sub(
図5の(A))が配置されたチャンバにまずガスA(第1の反応種)を導入する(
図5の(B))。ガスA中の分子は基板Subの表面に吸着する(
図5の(C))。吸着するサイトがなくなると分子はそれ以上基板Sub上に堆積しない。チャンバ内に残留したガスAはパージされる。次に、ガスB(第2の反応種)をチャンバ内に導入する(
図5の(D))。このときガスBからプラズマを生成して反応を促進してもよい。ガスB中の分子またはラジカルは、基板Sub上に吸着した分子と反応して膜を形成する。このとき、基板Sub上のガスAの分子すべてとガスB中の分子とが反応してしまうと、残ったガスB中の分子は気相のままチャンバ内に滞留する。そして滞留したガスBはパージされる(
図5の(E))。このように、ALDでは、吸着、パージ、反応(たとえば酸化)、パージの4つの工程を実行して膜を形成する。ALDは自己制御的に成膜を実現するため、ALDにより形成される膜のカバレッジはパターン上部から下部にかけて略一定の膜厚となる(
図3A,
図3Bの(5)参照)。
【0027】
図6は、第1の実施形態におけるミックスモードについて説明するための図である。第1の実施形態における「ミックスモード」とは、ALDと同様の処理の流れを利用しつつ、CVDと同様に第1の反応種Aと第2の反応種Bとの気相状態での反応を生じさせる、いわばALDとCVDとを混合した成膜手法である。
【0028】
図6の例では、まず、基板Sub(
図6の(A))が配置されたチャンバ内にガスA(第1の反応種)を導入する。導入されたガスA中の分子は基板Sub上に吸着する(
図6の(B))。ミックスモードにおいては、分子が基板Subに吸着した後、チャンバからガスAを完全にパージしない(
図6の(C))。そして、チャンバ内にガスAが残存した状態のまま、ガスB(第2の反応種)をチャンバ内に導入する(
図6の(D))。ガスB中の分子は、基板Sub上に吸着したガスAの分子と反応すると同時に、チャンバ内に気相で存在するガスAの分子とも反応して膜を形成する。このため、ALDの自己制御的な成膜に加えてCVDと同様のカバレッジを持った膜が形成される(
図6の(E))。なお、ガスAはたとえば、シリコン含有ガスである。また、ガスBはたとえば、酸素含有ガスである。このほか、ガスAとしては、たとえば炭素含有ガスなどを使用することができる。また、ガスBとしては、たとえば窒素含有ガスなどを使用することができる。
【0029】
ミックスモードによる成膜では、第2の反応種をチャンバに導入するときにチャンバ内に残存する第1の反応種の量(以下、滞留量とも呼ぶ。)を調整することにより、カバレッジを変えることができる。ミックスモードにおけるカバレッジは以下の処理条件により調整できる。
(1)第1の反応種のパージ工程(
図6の工程(C))の処理時間
(2)第1の反応種のパージ工程におけるチャンバ内の圧力
(3)第1の反応種のパージ工程で用いるパージガスの流量
(4)第1の反応種の希釈度(
図6の工程(B))
【0030】
ここで、チャンバ内のガスを置換するために必要な時間(以下、レジデンスタイムとも呼ぶ。)は、以下の式(1)で表わすことができる。
T=(P×V)/(Q) ・・・(1)
式中、Tは、レジデンスタイム(秒)すなわちガスが処理空間(チャンバ)内に滞留する時間を示す。Pは、処理空間内の圧力(Torr)を示す。Vは、処理空間の容積(リットル)を示す。Qは、ガスの流量(sccm)を示す。式(1)から分かるように、レジデンスタイムTは、処理空間の容積と処理空間の圧力に比例し、ガスの流量に反比例する。したがって、処理空間の容積が大きく圧力が高いほどレジデンスタイムは長くなり、ガスの流量が多いほどレジデンスタイムは短くなる。
【0031】
したがって、第2の反応種をチャンバに導入するときにチャンバ内に残存する第1の反応種の量は、処理条件を以下のように調整することで増加させることができる。
(1)第1の反応種のパージ工程の処理時間を短くする(たとえばレジデンスタイムよりも短くする)。
(2)第1の反応種のパージ工程におけるチャンバ内の圧力を高くする。
(3)第1の反応種のパージ工程で用いるパージガスの流量を少なくする。
【0032】
また、第1の反応種のパージ工程における処理条件を変えない場合は、第1の反応種の希釈度(上記処理条件(4))を多くして基板に吸着せず滞留する反応分子の量を増やすことでも、第1の反応種の滞留量を増加させることができる。また、パージ工程を設けないことでも第1の反応種の滞留量を維持することができる。
【0033】
このように、第1の実施形態に係る基板処理方法では、異なるカバレッジを実現する成膜処理を組み合わせることで、連続的なカバレッジ制御を実現する。
【0034】
(基板処理装置の構成の一例)
図7は、第1の実施形態に係る基板処理装置100の構成の一例を示す図である。基板処理装置100は、たとえば、パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置で構成できる。基板処理装置100は、ネットワークNWを介して、処理装置200と接続される。
【0035】
ネットワークNWはたとえば、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワークまたはそれらの組み合わせであってよい。また、ネットワークNWは、有線ネットワーク、無線ネットワークまたはその組み合わせであってよい。
【0036】
処理装置200は、基板に対する処理が実行される処理空間(チャンバ)を備え、基板の処理を実行する。処理装置200の詳細は後述する。ただし、処理装置200の構成および種類は特に限定されない。処理装置200はたとえば、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合型プラズマ(ICP: Inductively Coupled Plasma)、マイクロ波プラズマ等任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置であってもよい。処理装置200は、原子層堆積(ALD: Atomic Layer Deposition)、化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)等の成膜処理、エッチング処理等を実行する。処理装置200は、基板に対する処理においてプラズマを使用する装置であってもプラズマを使用しない装置であってもよい。
【0037】
基板処理装置100は、記憶部110と、制御部120と、入力部130と、出力部140と、通信部150と、を備える。
【0038】
記憶部110は、基板処理装置100における処理に使用される情報および処理の結果生成される情報を記憶する。記憶部110はたとえば、フラッシュメモリ(flash memor y)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、光学記憶装置などを含む。
【0039】
制御部120は、基板処理装置100の動作および機能を制御する。制御部120はたとえば、集積回路または電子回路である。制御部120はたとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等を含む。
【0040】
入力部130は、基板処理装置100への外部からの情報の入力を受ける。入力部130はたとえば、タッチパネル、マウス、キーボード、マイクロフォン、およびそれらの周辺回路を含む。
【0041】
出力部140は、基板処理装置100から情報を出力する。出力部140はたとえば、スクリーン、スピーカ、プリンタ、およびそれらの周辺回路を含む。
【0042】
通信部150は、ネットワークNWを介した他の装置との通信を実現する。通信部150はたとえば、モデム、ポート、ルータ、スイッチを含む。
【0043】
(記憶部110に記憶される情報)
記憶部110は、処理条件記憶部111と、処理記憶部112と、を含む。
【0044】
処理条件記憶部111は、処理装置200において実行する基板に対する処理、たとえば、成膜、エッチング等の処理の処理条件を記憶する。
【0045】
図8は、第1の実施形態に係る基板処理装置100に記憶される処理条件の一例について説明するための図である。処理条件はたとえば、
図4乃至
図6を参照して説明した各成膜処理の処理条件である。処理条件はたとえば、CVDであれば、チャンバ内圧力、プラズマ生成時に印加する高周波(HP)の周波数および電力、チャンバに導入するガスの種類、ガスの流量(比)等を含む。処理条件はまた、処理時間、チャンバ各部の設定温度を含む。また、処理条件は、ALDおよびミックスモードの場合、第1の反応種の吸着工程(工程a1)、第1の反応種のパージ工程(工程a2)、第2の反応種の反応工程(工程b1)および第2の反応種のパージ工程(工程b2)の各々について設定してもよい。(工程a1)、(工程a2)、(工程b1)、および(工程b2)は、
図2Bに図示されている。
【0046】
図8の例では、処理条件は、「条件ID(Identifier)」、「ステップ番号」、「圧力」、「高周波(HP)」、「ガス」、「流量」、「処理時間」および「温度」を含む。「条件ID」は各処理条件を一意に特定する識別子である。「ステップ番号」は、一つの処理が複数の工程を含む場合に各工程を識別する番号である。「圧力」は当該処理におけるチャンバ内の圧力値である。「高周波(HP)」は、当該処理においてチャンバ内の電極に印加する高周波の周波数および電力である。「ガス」は、当該処理においてチャンバ内に導入するガスを特定する情報である。「流量」は、対応するガスの流量である。「処理時間」は、当該処理の時間を示す。「温度」は、当該処理を実行する際に設定されるチャンバの所定部の温度である。
【0047】
たとえば、
図8中、「条件ID:P100」で識別される処理条件として、ステップ番号「1」~「4」が記憶されている。これは、条件ID「P100」で特定される処理条件は4つの工程を含むことを示す。また、「ステップ番号、1」に対応付けて、「圧力、XXmT」、「ガス、X/Y」、「流量、R1/R2」、「処理時間、2sec」、「温度、T1/T2/T3」が記憶されている。これは、条件ID「P100」の処理条件において、ステップ番号「1」で特定される工程では、チャンバの圧力はXXmTに設定されることを示す。また、当該工程では、Xガス(ここでは不特定のガスを意味する。)とYガスをR1sccm対R2sccmの流量比でチャンバ内に供給することを示す。また、当該工程の処理時間は2秒であることを示す。また、当該工程の実行中、チャンバ所定部の温度は摂氏T1度、摂氏T2度、摂氏T3度に設定されることを示す。
【0048】
なお、
図8中、条件ID「P100」で示す処理条件はALDに対応する。条件ID「P100」の処理条件中、ステップ番号「1」は吸着工程(工程a1)の処理条件であり、ステップ番号「2」は吸着工程後のパージ工程(工程a2)の処理条件である。また、ステップ番号「3」は反応工程(工程b1)の処理条件であり、ステップ番号「4」は反応工程後のパージ工程(工程b2)の処理条件である。また、
図8中、条件ID「P200」で示す処理条件はCVD(
図2A、ステップSA1参照)に対応する。条件ID「P200」の処理は工程が1つであるため、ステップ番号「1」の処理条件のみが記憶されている。また、
図8中、条件ID「P301」~「P303」で示す処理条件はミックスモードに対応する。条件ID「P301」~「P303」の処理条件は、条件ID「P100」の処理条件とほぼ同様であるが、ステップ番号「2」の「処理時間」が異なる。これは、条件ID「P301」~「P303」の処理条件はミックスモードを実現するためにパージ工程(工程a2)の処理時間を短く設定しているためである。
【0049】
処理記憶部112は、処理条件記憶部111に記憶される処理条件の組み合わせである、処理を記憶する。
【0050】
図9は、第1の実施形態に係る基板処理装置100に記憶される処理の一例について説明するための図である。
図9の例では、処理は、「処理ID」、「サイクル数」、「条件ID/順序」を含む。「処理ID」は、処理を一意に特定する識別子である。「サイクル数」は、当該処理において対応する処理条件に基づき処理を実行する回数である。「条件ID/順序」は、当該処理において実行する処理の処理条件と、複数の処理を実行する場合に当該処理を実行する順序である。なお、「条件ID/順序」は、条件IDと順序ではなく処理IDと順序の情報であってもよい。
【0051】
たとえば、
図9の例では、「処理ID、S001」に対応付けて、「サイクル数、1」、「条件ID/順序、P200」が記憶される。これは、処理ID「S001」で特定される処理においては、条件ID「P200」で特定される処理条件に基づく処理を1回実行することを示す。条件ID「P200」で特定される処理条件は、処理条件記憶部111に記憶されている。すなわち、条件ID「P200」の処理条件は、チャンバ圧力「XXmT」、高周波(HP)「Z1MHz/Z2W」、ガス「X/Y」、流量、R1/R2」、である。また、処理時間「10sec」、温度「T1/T2/T3」である。
【0052】
またたとえば、
図9の例では、処理ID「S500」に対応付けて「サイクル数、5」、「条件ID/順序、S001⇒S003⇒S100」が記憶されている。これは、処理ID「S500」で特定される処理は、処理ID「S001」、「S003」、「S100」各々により特定される処理をこの順番に実行することを示す。また、3つの処理を順に5回繰り返して実行することを示す。処理ID「S001」で特定される処理はCVD、処理ID「S003」で特定される処理はミックスモードである(
図8参照)。処理ID「S100」で特定される処理がエッチングである場合、処理ID「S001」は、CVD、ALD、エッチングを続けて5回繰り返し実行することを意味する。
【0053】
(制御部120の構成および機能)
図7に戻り、制御部120の構成および機能について説明する。制御部120は、選択部121と、指示部122と、を含む。
【0054】
選択部121は、入力部130または通信部150を介して入力される指示を受信する。そして、選択部121は、受信した指示に対応する1以上の処理を記憶部110から選択する(
図1、ステップS11)。選択部121は、選択した処理を指示部122に渡す。
【0055】
指示部122は、選択部121が選択した処理に基づく処理の実行を処理装置200に指示し、実行させる(
図1、ステップS12)。
【0056】
(実験例)
図10は、第1の実施形態に係る基板処理方法に基づく処理の実験結果を示す図である。
図10の(A)は、処理ID「S001」(
図8、
図9参照)に基づきCVDを10秒間、1回実行した場合に得られたカバレッジを示している。
図10の(B)は、処理ID「S002」(
図8、
図9参照)に基づき、ミックスモードにおいてパージ時間を0.5秒に設定した処理を40回実行した場合に得られたカバレッジを示している。
図10の(C)は、処理ID「S003」(
図8、
図9参照)に基づき、ミックスモードにおいてパージ時間を0.7秒に設定した処理を70回実行した場合に得られたカバレッジを示している。
図10の(D)は、処理ID「S004」(
図8、
図9参照)に基づき、ミックスモードにおいてパージ時間を1秒に設定した処理を105回実行した場合に得られたカバレッジを示している。
図10の(E)は、処理ID「S005」(
図8、
図9参照)に基づき、ALDを200回実行した場合に得られたカバレッジを示している。
【0057】
なお、条件ID「P301」、「P302」、「P303」、「P100」の各処理条件の違いは、第1の反応種のパージ時間の長さのみである。
図10の(B)はパージ時間が0.5秒、(C)は0.7秒、(D)は1秒、(E)は10秒であり、(B)から(E)にかけて徐々にパージ時間を長くしている。このため、第2の反応種(
図10の例では酸素含有ガス)がチャンバに導入されるときの第1の反応種(
図10の例ではX含有ガス)の滞留量は、(B)から(E)に向けて減少している。このため、(B)においてはCVDの態様での成膜量が最も多く、(C)から(D)に向けてCVDの態様での成膜量は減少していると考えられる。また、(E)ではALDの態様で成膜が行われていると考えられる。
【0058】
図10の(A)の例では、膜は概ねパターンの上部に形成され、下部にはほとんど成膜されていない。つまり、
図10の(A)の処理条件においては
図3Bの(1)に相当するカバレッジが実現されている。
【0059】
図10の(B)の例では、パターンの上部から下部に向けて徐々に膜厚が減少し、パターン下部の成膜はほとんどない。つまり、
図10の(B)の処理条件においては
図3Bの(2)に概ね対応するカバレッジが実現されている。
【0060】
図10の(C)の例では、形成される膜の膜厚は全体として(B)よりも増加しつつ、(B)と同様、上部から下部にむけて膜厚が減少している。つまり、
図10の(C)は概ね
図3Bの(3)に対応するカバレッジと言える。
【0061】
図10の(D)の例では、形成される膜の膜厚は(C)よりもさらに増加し、パターンの底部にも成膜が認められる。
図10の(D)は概ね
図3Bの(4)に対応するカバレッジと言える。
【0062】
図10の(E)の例では、形成される膜の膜厚は、パターン上部と下部との間で差がほぼなくなり、略一様な成膜が実現されている。つまり、
図10の(E)の処理条件においては
図3Bの(5)に相当するカバレッジが実現されている。
【0063】
なお、
図10のグラフ中「Depth」は側壁に形成された膜の上端から下端までの距離(寸法)を意味する。すなわち、「Depth」は頂部および底部を含まない寸法である(
図10中、D1で示す寸法に相当)。また、「D/A」は側壁に形成された膜の厚さを意味する。
【0064】
図11は、
図10に示す実験結果を正規化したグラフである。
図11から分かるように、(A)~(E)の間で徐々にカバレッジが変化し、CVDとALDの中間的な成膜態様が実現されている。このように、第1の実施形態に係る基板処理方法によれば、カバレッジを連続的に変化させて所望のカバレッジの成膜を実現できる。
【0065】
なお、ALDは必ずしもコンフォーマルな膜を形成しなくてもよい。たとえば、第1の反応種の吸着位置をパターン上部に限定してパターン上部のみに成膜してもよい。また、第2の反応種がパターン底部まで行き渡る前に処理を終了することで、パターン上部のみに成膜してもよい。サブコンフォーマルALDを利用することで、カバレッジをさらに柔軟に制御できる。
【0066】
(第1の実施形態の効果)
上記のように、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a)、工程b)、及び工程c)を含む。工程a)は、チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、第1の反応種を基板の表面に吸着させる工程である。工程b)は、チャンバ内で、基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、基板の表面に膜を形成する工程である。工程c)は、工程a)と工程b)とを含む処理を、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程である。このため、第1の実施形態に係る基板処理方法によれば、基板上に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる。たとえば、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量が多いほど、パターン上部に形成される膜の厚みがパターン下部に形成される膜の厚みよりも厚くなる。他方、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量が少ないほど、パターン上部に形成される膜の厚みとパターン下部に形成される膜の厚みが近くなる。このため、第1の実施形態に係る基板処理方法によれば、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量に応じて、基板上に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる。
【0067】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a)において、チャンバ内に導入する第1の反応種の量を制御することにより、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えてもよい。また、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a)において、チャンバ内に導入する第1の反応種の希釈度を制御することにより、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えてもよい。このため、第1の実施形態によれば、第1の反応種の量や希釈度の調整によって、基板上に形成する膜のカバレッジを容易に制御できる。
【0068】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a)は、a1)チャンバ内に第1の反応種を導入する工程と、a2)チャンバから第1の反応種の少なくとも一部をパージする工程を含んでもよい。そして、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a2)においてパージする第1の反応種の量を制御することにより、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えてもよい。このため、第1の実施形態によればさらに、チャンバ内の第1の反応種の量をパージする工程において調整することができる。このため、第1の実施形態によれば、処理条件の簡易な調整によって基板上に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる。また、第1の実施形態によれば、パージ工程の処理条件を変えることで、ALDとCVDとの中間的な成膜態様を容易に実現できる。
【0069】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法は、工程a2)においてパージする第1の反応種の量を、チャンバ内の圧力、処理時間、パージガスの流量のうち少なくとも1つを変えることで変化させて、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えてもよい。このため、第1の実施形態によれば、複数の処理条件から制御容易な条件を選択して調整することにより、基板上に形成する膜のカバレッジを制御できる。
【0070】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法において、工程a)または工程b)を、基板表面での反応が飽和する前に終了してもよい。このため、第1の実施形態に係る基板処理方法は、サブコンフォーマルALDを利用して、基板上に形成する膜のカバレッジをさらに微細に調整できる。
【0071】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法において、d)工程c)の実行後に工程c)により形成された膜をマスクとして基板をエッチングする工程をさらに含んでもよい。また、第1の実施形態に係る基板処理方法において、工程c)は、パターンの形状が予め定めた条件を満足するまで繰り返し実行してもよい。さらに、e)工程c)と工程d)とを含む処理を2回以上繰り返し実行する工程を含んでもよい。このため、第1の実施形態によれば、カバレッジを連続的に制御してマスクの形状を補正した後にエッチングを実行できる。このため、第1の実施形態によれば、エッチング精度を向上させることができる。また、第1の実施形態によれば、マスクの形状を補正しつつエッチングを実行できる。
【0072】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法において、工程c)は、同一チャンバ内で実行されてもよい。このため、第1の実施形態によれば、処理のスループットをさらに向上させることができる。また、第1の実施形態に係る基板処理方法が、工程d)を含む場合、工程c)と工程d)とは、同一チャンバ内で実施されてもよく、異なるチャンバで実施されてもよい。このため、第1の実施形態によれば、成膜時間とエッチング時間のバランスをとりながら、基板処理全体を最適化することができる。
【0073】
また、第1の実施形態に係る基板処理方法において、工程c)は、チャンバ内の圧力を約10~約200mTorrに設定して実行されてもよい。圧力を低く設定するとレジデンスタイムは短くなるが、他の処理条件を調整することで第1の実施形態に係るミックスモードを実現できる。このため、第1の実施形態によれば、処理時間の増加を抑制して基板処理のスループットを向上させることができる。
【0074】
また、第1の実施形態に係る基板処理装置は、選択部と指示部とを備える。選択部は、複数の処理を選択する。処理はたとえば、工程a)、工程b)、及び工程c)を含む。工程a)は、チャンバ内で、表面にパターンが形成された基板を第1の反応種に晒して、第1の反応種を基板の表面に吸着させる工程である。工程b)は、チャンバ内で、基板を第2の反応種から形成したプラズマに晒して、基板の表面に膜を形成する工程である。工程c)は、工程a)と工程b)とを含む処理を、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量を変えて2回以上繰り返す工程である。工程c)において、選択部が選択する複数の処理は、工程b)の開始時における第1の反応種の滞留量が互いに異なる。指示部は、選択部が選択した複数の処理のチャンバ内での実行を指示する。このため、第1の実施形態に係る基板処理装置によれば、基板上に形成する膜のカバレッジを連続的に制御できる。
【0075】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る基板処理装置は、予め処理条件を設定して、達成したいカバレッジに合わせて処理の処理を選択した。さらに、第2の実施形態に係る基板処理装置は、基板上のパターンの状態にあわせて処理を選択して実行する。第2の実施形態に係る基板処理方法は、たとえば基板上のパターンのラフネスの程度に応じて処理を選択して実行する。
【0076】
図12は、第2の実施形態に係る基板処理装置100Aの構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る基板処理装置100Aの構成は概ね、第1の実施形態に係る基板処理装置100と同様である。ただし、基板処理装置100Aは、対応記憶部113および取得部123を有する点で基板処理装置100と異なる。また、基板処理装置100Aは、ネットワークNWを介して測定装置300と通信可能に接続される点で基板処理装置100と異なる。基板処理装置100Aの構成のうち、基板処理装置100と共通する構成は説明を省略し、相違する構成について以下に説明する。
【0077】
基板処理装置100Aは、ネットワークNWを介して、処理装置200および測定装置300と通信可能に接続される。ネットワークNWおよび処理装置200は、第1の実施形態のネットワークNWおよび処理装置200と同様である(
図7参照)。
【0078】
測定装置300は、基板上に形成されたパターンの形状を測定して、当該形状を示す値を出力する。測定装置300が出力する値を、以下、測定値とも呼ぶ。測定装置300が出力する測定値の種類は特に限定されない。測定値はたとえば、基板上に形成されたパターンのアスペクト比であってもよい。また、測定値はたとえば、基板上に形成されたパターンの凹凸を表す信号波形の標準偏差であってもよい。また、測定値はたとえば、基板上に形成されたパターンの凹凸を表す信号波形の電力スペクトル密度(Power Spectral Density: PSD)であってもよい。なお、標準偏差は凹凸の周期が全く異なる場合であっても同一となることがあるため、電力スペクトル密度を測定値として用いることが測定精度向上のため好ましい(Chris A. Mack, “Reducing roughness in extreme ultraviolet lithography” in Journal of Micro/Nanolithography, MEMS, and MOEMS, 17(4), 041006 (2018)参照)。第2の実施形態においては、測定値は、少なくともアスペクト比と電力スペクトル密度を含むことが好ましい。
【0079】
たとえば、測定装置300は、基板上に形成されたパターンを走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)により分析して得られる情報、画像に基づき、パターンの形状の標準偏差、電力スペクトル密度等を導出する装置であってもよい。なお、
図12の例では、基板処理装置100Aと測定装置300とはネットワークNWにより接続されるものとする。ただし、測定装置300を基板処理装置100Aと非接続として、オペレータ等が別途導出した測定値を基板処理装置100Aに入力する構成としてもよい。
【0080】
基板処理装置100Aは、記憶部110A、制御部120A、入力部130、出力部140および通信部150を備える。
【0081】
記憶部110Aは、第1の実施形態と同様の処理条件記憶部111および処理記憶部112に加えて、対応記憶部113を有する。対応記憶部113は、測定装置300から入力される測定値と、処理と、の対応を記憶する。
【0082】
図13は、対応記憶部113に記憶される情報の構成の一例を示す図である。
図13の例では、対応記憶部113は、「デバイスID」、「測定値、アスペクト比、PSD」、「処理ID」を記憶する。「デバイスID」は処理によって形成するデバイスを特定する情報である。また、「デバイスID」は、アスペクト比およびPSDの目標値を示す情報であってもよい。「測定値、アスペクト比」は、基板上に形成されたパターンの測定により得られた当該パターンのアスペクト比を示す。「測定値、PSD」は、基板上に形成されたパターンの測定により得られた当該パターンの電力スペクトル密度を示す。「処理ID」は、対応する「デバイスID」を達成するため、対応する「測定値」のパターンに対して適用する処理を示す。
【0083】
図14A乃至
図14Dは、電力スペクトル密度とパターン形状との関係について説明するための図である。
図14Aは、基板上に形成されたパターンの低周波ラフネスの一例を示す図である。
図14Bは、基板上に形成されたパターンを測定して得られる電力スペクトル密度の一例を示す図である。
【0084】
ここで、低周波ラフネスとは、高周波ラフネスと比較して相対的に大きな周期で現れるラフネスすなわち凹凸をいい、高周波ラフネスとは、低周波ラフネスと比較して相対的に小さな周期で現れるラフネスをいう。
【0085】
図14Aの(1)は、本来直線状に形成すべきラインアンドスペースのパターンに凹凸が生じて波打った形状となっている状態を示す。
図14Aは、パターンを上から下に見た状態である。
図14Aの(1)の例では、ラインとラインの間隔がX1とX2とで異なっている。
図14Aの(1)のパターンを測定して得られる電力スペクトル密度は
図14Bの(1)のように表わすことができる。
図14Bのグラフの横軸は周波数(単位・ナノメートル[nm])を示し、縦軸は電力スペクトル密度(単位・nm3)いわば、各周波数帯におけるエネルギーの大きさを示す。
図14Bのグラフ中、横軸右方ほど小さな周期で生じるラフネスすなわち高周波ラフネスの多さを示し、左方ほど大きな周期で生じるラフネスすなわち低周波ラフネスの多さを示す。
【0086】
ここで、
図14Aの(1)のパターンのラフネスを改善して凹凸を平坦に均す(
図14Aの(2))。
図14Aの(2)の例では、ラインとラインの間隔が均されて、(1)でX1だった部分が他の部分とほぼ同一の間隔X3となっている。すると、電力スペクトル密度のグラフの形状も変化する。
図14Bの(2)は、ラフネスが改善されたパターンを測定して得られる電力スペクトル密度の一例である。
図14Bの(2)では、低周波ラフネス、つまり大きな周期で現れるラフネスが改善されてパターン表面が平坦化していることが示されている。
【0087】
図14Cは、基板上に形成されたパターンの高周波ラフネスの一例を示す図である。
図14Dは、基板上に形成されたパターンを測定して得られる電力スペクトル密度の他の例を示す図である。
【0088】
図14Cの(1)に示す高周波ラフネスを有するパターンを電子スペクトル密度を用いて表すと、
図14Dの(1)のようになる。このとき、
図14Cの(1)のパターンのラフネスを改善して凹凸を平坦に均す(
図14Cの(2))。すると、
図14Dの(2)のようにグラフの形状が変化する。
図14Dの(2)では、低周波ラフネスよりも高周波ラフネスが改善されて、パターン表面が平坦化していることが分かる。
【0089】
図14Bに示す低周波ラフネスは、たとえばCVDにより平坦化することができる。CVDにより形成される膜は相対的に大きな空隙部分に堆積する傾向を持つため、低周波ラフネスの相対的に大きな凹部を埋め込む。
【0090】
他方、
図14Dに示す高周波ラフネスは、パターン全体から見てラフネスを生じている凹部の大きさが相対的に小さい。このため、CVDによる成膜では凹部を優先的に埋め込むことができない。このため、高周波ラフネスの改善には、ALDとCVDとを組み合わせたミックスモードを用いることが好ましい。
【0091】
第2の実施形態に係る基板処理方法では、処理を実行する前に、処理対象である基板上のパターンのラフネス等の形状を測定し、測定値に応じて採用する処理条件すなわち処理を選択する。このため、基板上のパターンに生じている形状異常に応じて処理を選択でき、パターン形状を補正することができる。
【0092】
上記では、基板上のパターンのラフネスに応じて、CVDとミックスモードのいずれかを選択する例が示されたが、第2の実施形態に係る基板処理方法は、これに限定されない。たとえば、処理対象である基板上のパターンのラフネス等の形状に対応して、予め第1の閾値と、第1の閾値よりも大きい第2の閾値とを設定する。一例では、第1の閾値は、基板上のパターンのラフネスをCVDにより平坦化可能な上限値に設定され、第2の閾値は、基板上のパターンのラフネスをALDにより平坦化可能な下限値に設定される。次に、処理が実行される前、又は、所定回数の処理が実行された後に、処理対象である基板上のパターンのラフネス等の形状が測定され、測定値と、第1の閾値及び第2の閾値とが比較される。測定値が第1の閾値以下の場合には、成膜処理としてCVDが選択される。また、測定値が第1の閾値より大きく、かつ、第2の閾値未満の場合には、成膜処理として上述したミックスモードが選択される。また、測定値が第2の閾値以上の場合には、成膜処理としてALDが選択される。そして、選択された成膜処理により基板上のパターンのラフネスが改善される。
【0093】
図12に戻り、第2の実施形態に係る基板処理装置100Aの説明を続ける。制御部120Aは、第1の実施形態と同様の選択部121および指示部122に加えて、取得部123を有する。
【0094】
取得部123は、測定装置300等から入力部130および/または通信部150を介して測定値を取得する。取得部123が取得する測定値は上述のアスペクト比および電力スペクトル密度を含む。
【0095】
図15は、第2の実施形態に係る基板処理方法の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取得部123は、処理対象である基板上に形成されたパターンの測定値を取得する(ステップS21)。また、取得部123は、処理対象である基板上に形成すべきパターンの目標値たとえばデバイスIDを取得する。次に、選択部121は、対応記憶部113を参照し、取得した目標値および測定値に対応する処理を選択する(ステップS22)。選択部121は、選択した処理を指示部122に送る。指示部122は、選択部121から受信した処理に基づく処理の実行を処理装置200に指示し実行させる(ステップS23)。これで処理が終了する。
【0096】
なお、基板処理装置100,100Aは、一つの基板に対して繰り返し上記処理を実行してもよい。たとえば、基板処理装置100,100Aは、処理の実行が完了するごとに、次の処理を選択して実行してもよい。
【0097】
なお、第2の実施形態において対応記憶部113に記憶される対応表は、処理装置200における処理結果に応じて適宜更新してもよい。たとえば、測定装置300において、処理前後の基板上のパターン形状を示す測定値を取得してもよい。たとえば、測定装置300は、処理装置200における処理が終了するごとに基板上のパターンの状態を測定して基板処理装置100Aに送信してもよい。そして、基板処理装置100Aは、処理後の測定値と目標値との差分に応じて対応表を更新してもよい。また、基板処理装置100Aは、処理実行前後の基板上のパターンの測定値と目標値とに基づく機械学習により対応表を生成してもよい。
【0098】
(第2の実施形態の効果)
上記のように、第2の実施形態に係る基板処理方法は、処理を実行する前に基板表面のパターンの形状を示す値を測定する工程と、測定された値に基づき処理条件を選択する工程と、をさらに含む。また、処理は、選択された処理条件で実行される。たとえば、基板処理装置は、パージする工程を、選択された処理条件で実行する。このため、第2の実施形態によれば、基板処理装置は、基板上のパターンの形状に応じて実行する処理を選択できる。このため、基板処理装置は、基板上のパターンの状態に応じたカバレッジを実現する処理を選択して実行できる。
【0099】
また、第2の実施形態に係る基板処理方法は、処理を所定回数実行した後に基板表面のパターンの形状を示す値を測定する工程を含んでもよい。また、第2の実施形態に係る基板処理方法は、処理を実行する前に測定した値と、処理を所定回数実行した後に測定した値との差分に基づき、次に実行する処理の処理条件を選択する工程を含んでもよい。このため、第2の実施形態によれば、処理性能を評価した上で、次の処理を選択できる。
【0100】
なお、第2の実施形態の基板処理方法においても、基板の表面に形成された膜をマスクとして基板をエッチングする工程がさらに含まれてもよく、膜の形成とエッチングとが2回以上繰り返し実行されてもよい。この場合、膜の形成とエッチングとは同一のチャンバ内で実施されてもよく、異なるチャンバで実施されてもよい。
【0101】
(一実施形態に係る処理装置200の一例)
図16は、第1、第2の実施形態における基板処理が実行される処理装置200の構成の一例を示す図である。
図16は、処理装置200の概略断面を示している。なお、
図16に示す処理装置200は、平行平板型のプラズマ処理装置である。ただし、第1、第2の実施形態における基板処理を実行できる処理装置は、図示するものに限定されない。
【0102】
処理装置200は、気密に構成されたチャンバ12を備えている。チャンバ12は、略円筒形状を有しており、その内部空間として、プラズマが生成される処理空間Sを画成している。処理装置200は、チャンバ12内に、載置台13を備える。載置台13の上面は、被処理体であるウエハWが載置される載置面54dとして形成されている。本実施形態においては、載置台13は、基台14及び静電チャック50を有する。基台14は、略円板形状を有しており、処理空間Sの下方に設けられている。基台14は、例えばアルミニウム製であり、下部電極としての機能を有する。
【0103】
静電チャック50は、基台14の上面に設けられている。静電チャック50は、上面が平坦な円盤状とされ、当該上面がウエハWの載置される載置面54dに相当する。静電チャック50は、電極54a及び絶縁体54bを有している。電極54aは、絶縁体54bの内部に設けられており、電極54aには、スイッチSWを介して直流電源56が接続されている。直流電源56から電極54aに直流電圧が与えられることにより、クーロン力が発生し、当該クーロン力によってウエハWが静電チャック50上に吸着保持される。また、静電チャック50は、絶縁体54bの内部にヒータ54cを有している。ヒータ54cは、図示しない給電機構から電力が供給されることにより、静電チャック50を加熱する。これにより、載置台13及びウエハWの温度が制御される。
【0104】
本実施形態においては、処理装置200は、筒状保持部16及び筒状支持部17を更に備えている。筒状保持部16は、基台14の側面及び底面の縁部に接して、基台14を保持している。筒状支持部17は、チャンバ12の底部から垂直方向に延在し、筒状保持部16を介して基台14を支持している。
【0105】
基台14の周縁部分の上面には、フォーカスリング18が設けられている。フォーカスリング18は、ウエハWの処理精度の面内均一性を改善するための部材である。フォーカスリング18は、略環形状を有する板状部材であり、例えば、シリコン、石英、又はシリコンカーバイドから構成される。
【0106】
本実施形態においては、チャンバ12の側壁と筒状支持部17との間には、排気路20が形成されている。排気路20の入口又はその途中には、バッフル板22が取り付けられている。また、排気路20の底部には、排気口24が設けられている。排気口24は、チャンバ12の底部に嵌め込まれた排気管28によって画成されている。この排気管28には、排気装置26が接続されている。排気装置26は、真空ポンプを有しており、真空ポンプを作動させることによりチャンバ12内の処理空間Sを所定の真空度まで減圧することができる。これにより、チャンバ12内の処理空間Sは、真空雰囲気に保たれる。処理空間Sは、真空空間の一例である。チャンバ12の側壁には、ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0107】
基台14には、高周波電源32が整合器34を介して電気的に接続されている。高周波電源32は、プラズマ生成用の電源であり、所定の高周波数(例えば13MHz)の高周波電力を下部電極、即ち、基台14に印加する。また、基台14の内部には、図示しない冷媒流路が形成されており、処理装置200は、冷媒流路に冷媒を循環させることによって、載置台13を冷却する。これにより、載置台13及びウエハWの温度が制御される。
【0108】
処理装置200は、更に、チャンバ12内にシャワーヘッド38を備えている。シャワーヘッド38は、処理空間Sの上方に設けられている。シャワーヘッド38は、電極板40及び電極支持体42を含んでいる。
【0109】
電極板40は、略円板形状を有する導電性の板であり、上部電極を構成している。電極板40には、高周波電源35が整合器36を介して電気的に接続されている。高周波電源35は、プラズマ生成用の電源であり、所定の高周波数(例えば60MHz)の高周波電力を電極板40に印加する。高周波電源32及び高周波電源35によって基台14及び電極板40に高周波電力がそれぞれ与えられると、基台14と電極板40との間の空間、即ち、処理空間Sには高周波電界が形成され、プラズマが生成される。
【0110】
電極板40には、複数のガス通気孔40hが形成されている。電極板40は、電極支持体42によって着脱可能に支持されている。電極支持体42の内部には、バッファ室42aが設けられている。処理装置200は、ガス供給部44を更に備えており、バッファ室42aのガス導入口25にはガス供給導管46を介してガス供給部44が接続されている。ガス供給部44は、処理空間Sに処理ガスを供給する。この処理ガスは、例えば、エッチング用の処理ガスであってもよく、又は、成膜用の処理ガスであってもよい。電極支持体42には、複数のガス通気孔40hにそれぞれ連続する複数の孔が形成されており、当該複数の孔はバッファ室42aに連通している。ガス供給部44から供給されるガスは、バッファ室42a、ガス通気孔40hを経由して、処理空間Sに供給される。
【0111】
本実施形態においては、チャンバ12の天井部に、環状又は同心状に延在する磁場形成機構48が設けられている。この磁場形成機構48は、処理空間Sにおける高周波放電の開始(プラズマ着火)を容易にして放電を安定に維持するよう機能する。
【0112】
本実施形態においては、処理装置200は、ガス供給ライン58、及び、伝熱ガス供給部62を更に備えている。伝熱ガス供給部62は、ガス供給ライン58に接続されている。このガス供給ライン58は、静電チャック50の上面まで延びて、当該上面において環状に延在している。伝熱ガス供給部62は、例えばHeガスといった伝熱ガスを、静電チャック50の上面とウエハWとの間に供給する。
【0113】
上記構成の処理装置200は、制御部90によって、その動作が統括的に制御される。この制御部90には、CPU(Central Processing Unit)を備え処理装置200の各部を制御するプロセスコントローラ91と、ユーザインターフェース92と、記憶部93とが設けられている。本実施形態においては、制御部90は、基板処理装置100,100A内に設けられてもよい。
【0114】
ユーザインターフェース92は、工程管理者が処理装置200を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、処理装置200の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0115】
記憶部93には、処理装置200で実行される各種処理をプロセスコントローラ91の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース92からの指示等にて任意のレシピを記憶部93から呼び出してプロセスコントローラ91に実行させることで、プロセスコントローラ91の制御下で、処理装置200での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したりすることも可能である。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで使用したりすることも可能である。
【0116】
図17は、第1、第2の実施形態における基板処理の実施に用いることが可能な処理システムの一例を示す図である。
【0117】
図17に示す処理システム1000は、制御部Cnt、台1122a、台1122b、台1122c、台1122d、収容容器1124a、収容容器1124b、収容容器1124c、収容容器1124d、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1、ロードロックチャンバLL2、トランスファーチャンバ1121、プラズマ処理装置1010を備えている。プラズマ処理装置1010はたとえば、
図16に示す処理装置200であってもよい。
【0118】
制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、処理システム1000の後述する各部を制御する。制御部Cntは、搬送ロボットRb1、搬送ロボットRb2、光学観察装置OC、プラズマ処理装置1010等に接続されている。制御部Cntは、
図7および
図12に示す基板処理装置100、100Aの制御部120、120A、および、
図16に示す処理装置200の制御部90を兼ねてもよい。また、制御部Cntは、基板処理装置100、100Aであってもよい。
【0119】
制御部Cntは、処理システム1000の各部を制御するためのコンピュータプログラム(入力されたレシピに基づくプログラム)に従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号により、処理システム1000の各部、例えば、搬送ロボットRb1,Rb2、光学観察装置OC、および、プラズマ処理装置1010の各部を制御する。プラズマ処理装置1010では、制御部Cntからの制御信号により、ガス供給部44からのガスの選択および流量、排気装置26の排気、高周波電源32、35からの電力供給、ヒータ54cへの電力供給、冷媒流量および冷媒温度を制御することが可能である。なお、上記第1、第2の実施形態に係る基板処理方法の各工程は、制御部Cntによる制御によって処理システム1000の各部を動作させることによって実行され得る。制御部Cntの記憶部には、上記第1、第2の実施形態に係る基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラム、および、実行に用いられる各種のデータが、読出し自在に格納されている。
【0120】
台1122a~1122dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。台1122a~1122dのそれぞれの上には、収容容器1124a~1124dがそれぞれ設けられている。収容容器1124a~1124d内には、ウエハWが収容され得る。
【0121】
ローダモジュールLM内には、搬送ロボットRb1が設けられている。搬送ロボットRb1は、収容容器1124a~1124dの何れかに収容されているウエハWを取り出して、ウエハWを、ロードロックチャンバLL1またはLL2に搬送する。
【0122】
ロードロックチャンバLL1およびLL2は、ローダモジュールLMの別の一縁に沿って設けられており、ローダモジュールLMに接続されている。ロードロックチャンバLL1およびLL2は、予備減圧室を構成している。ロードロックチャンバLL1およびLL2は、トランスファーチャンバ1121にそれぞれ接続されている。
【0123】
トランスファーチャンバ1121は、減圧可能なチャンバであり、トランスファーチャンバ1121内には搬送ロボットRb2が設けられている。トランスファーチャンバ1121には、プラズマ処理装置1010が接続されている。搬送ロボットRb2は、ロードロックチャンバLL1またはロードロックチャンバLL2からウエハWを取り出して、当該ウエハWをプラズマ処理装置1010に搬送する。
【0124】
処理システム1000は、光学観察装置OCを備える。ウエハWは、搬送ロボットRb1および搬送ロボットRb2によって、光学観察装置OCとプラズマ処理装置1010との間で移動され得る。搬送ロボットRb1によってウエハWが光学観察装置OC内に収容され、光学観察装置OC内においてウエハWの位置合わせが行われた後に、光学観察装置OCは、ウエハWのマスク等のパターンの溝幅を測定し、測定結果を制御部Cntに送信する。光学観察装置OCでは、ウエハW表面の複数の領域に形成されたマスク等のパターンの溝幅が測定され得る。光学観察装置OCによる測定結果は、たとえば、第2の実施形態における「測定値」(
図15参照)として使用される。
【0125】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0126】
100,100A 基板処理装置
110,110A 記憶部
111 処理条件記憶部
112 処理記憶部
113 対応記憶部
120,120A 制御部
121 選択部
122 指示部
123 取得部
130 入力部
140 出力部
150 通信部
200 処理装置
300 測定装置
NW ネットワーク