(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉とその製造方法、およびボンド磁石とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/11 20060101AFI20240802BHJP
H01F 1/113 20060101ALI20240802BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240802BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01F1/11
H01F1/113
H01F41/02 G
C01G49/00 C
C01G49/00 D
(21)【出願番号】P 2020196390
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595156333
【氏名又は名称】DOWAエフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 智也
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】越湖 将貴
(72)【発明者】
【氏名】坪井 禅
(72)【発明者】
【氏名】山田 進一
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-115715(JP,A)
【文献】特開2016-072634(JP,A)
【文献】特開2010-263201(JP,A)
【文献】特開2008-277792(JP,A)
【文献】特開2000-331813(JP,A)
【文献】特開2002-313618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/00-49/08
H01F 1/00- 1/117
H01F 1/40- 1/42
H01F 7/00- 7/02
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(Sr
1-xLa
x)(Fe
1-yZn
y)
nO
19-z(ただし、0.01≦x≦0.50、0.010≦y≦0.040、10.00≦n≦12.50、z=19-[2(1-x)+3x+n{3(1-y)+2y}]/2)で表され、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が
27体積%以上
32体積%以下であり、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が
50体積%以上65体積%以下であり、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上
15体積%以下であ
り、前記粒径1μm未満の粒子の体積割合(a)と前記粒径5μm以上の粒子の体積割合(b)との比a/bの値が2.0以上3.5以下である、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項2】
前記ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉92.0質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂6.6質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混練物をメルトインデクサーに入れて、前記混練物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された質量に換算することにより求められる、前記混練物の流動度MFRAが、100g/10min以上である、請求項1に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項3】
前記ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm
2の圧力で圧縮した成形体の圧縮密度が3.60g/cm
3以上である、請求項1または2に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項4】
組成式(Sr
1-x1La
x1)(Fe
1-y1Zn
y1)
n1O
19-z1(ただし、0.01≦x1≦0.50、0.010≦y1≦0.040、10.00≦n1≦12.50、z1=19-[2(1-x1)+3x1+n1{3(1-y1)+2y1}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の粗粉を得る工程と、
組成式(Sr
1-x2La
x2)(Fe
1-y2Zn
y2)
n2O
19-z2(ただし、0≦x2≦0.50、0≦y2≦0.040、10.00≦n2≦12.50、z2=19-[2(1-x2)+3x2+n2{3(1-y2)+2y2}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度よりも低い第二の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の微粉を得る工程と、
前記粗粉と前記微粉とを、前記粗粉と前記微粉の合計質量に対する前記粗粉の質量割合が60質量%以上90質量%以下となる比率で混合粉砕して、粉砕処理した混合粉を得る工程と、
前記粉砕処理した混合粉をアニールする工程と、
を含
み、
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した体積基準での粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が27体積%以上32体積%以下であり、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が50体積%以上65体積%以下であり、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上15体積%以下であり、前記粒径1μm未満の粒子の体積割合(a)と前記粒径5μm以上の粒子の体積割合(b)との比a/bの値が2.0以上3.5以下である、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項5】
前記微粉を得る工程が、前記原料となる粉末を混合した後に第二の温度で焼成してから粉砕処理することを含み、前記粉砕処理を、前記微粉10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm
2の圧力で圧縮した成形体の圧縮密度が3.00g/cm
3以上4.00g/cm
3以下になるように行う、請求項
4に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項6】
前記第一の温度が1220℃以上1400℃以下である、請求項
4または
5に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項7】
前記第二の温度が900℃以上1000℃以下である、請求項
4~
6のいずれか一項に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項8】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉および樹脂を含む、ボンド磁石。
【請求項9】
請求項
4~
7のいずれか一項に記載の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いる、ボンド磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉とその製造方法、およびボンド磁石とその製造方法に関し、特に、六方晶フェライト磁性粉の粗粉と微粉を含むボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータや、複写機のマグネットロールなどに使用される磁石のような高磁力の磁石として、フェライト系焼結磁石が使用されている。しかし、フェライト系焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なために生産性に劣るという問題があることに加えて、複雑な形状への加工が困難であるという問題がある。そのため、近年では、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータなどの高磁力の磁石として、希土類磁石のボンド磁石が使用されている。しかし、希土類磁石はフェライト系焼結磁石の約20倍のコストがかかり、また錆びやすいという問題があるため、フェライト系焼結磁石の代わりにフェライト系ボンド磁石を使用することが望まれている。
【0003】
このようなボンド磁石用フェライト粉末として特許文献1には、組成が(Sr1-xAx)O・n[(Fe1-yBy)2O3](但し、AはLa、La-Nd、La-Pr又はLa-Nd-Pr、BはZn又はZn-Co、n=5.80~6.10、x=0.10~0.50、y=0.0083~0.042)であって、飽和磁化値σsが73Am2/kg(73emu/g)以上である平均粒径が1~3μmのマグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末であり、且つ、前記マグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末中に板状粒子を個数割合で60%以上含んでいるストロンチウムフェライト粒子粉末が開示されている。また、実施例1および2には、前記組成式においてAがLaであり、BがZnである、SrLaZnフェライト粉末が開示されている。また、ストロンチウムフェライト粒子粉末の製造方法として、ストロンチウムフェライト粒子粉末の原料となる粉末を混合し、焼成し、粉砕した後にアニールする、製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、高配向と高充填とを指向して開発されたものであったが、その圧縮密度は3.4g/cm3程度にとどまり、またその磁性粉を用いて製造されたボンド磁石の残留磁束密度Brは3000G程度にとどまっており、ボンド磁石としてより高い残留磁束密度Brを達成することができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉が求められている。
本発明は、ボンド磁石に用いた際に高い残留磁束密度Brを得ることができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉とその製造方法、および高い残留磁束密度Brを持つボンド磁石とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための本発明は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉であって、組成式(Sr1-xLax)(Fe1-yZny)nO19-z(ただし、0.01≦x≦0.50、0.010≦y≦0.040、10.00≦n≦12.50、z=19-[2(1-x)+3x+n{3(1-y)+2y}]/2)で表され、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布(以下、単に「粒度分布」という)において、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上40体積%以下であり、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が30体積%以上65体積%以下であり、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上30体積%以下であることを特徴とする。
【0007】
このボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉92.0質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂6.6質量部とをミキサーに充填して混練し、得られた混練物をメルトインデクサーに入れて、混練物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された質量に換算することにより求められる、混練物の流動度が、100g/10min以上であることが好ましい。
【0008】
また、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm3の圧力で圧縮した成形体の圧縮密度が3.60g/cm3以上であることが好ましく、粒度分布において、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が50体積%以上65体積%以下であり、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上20体積%以下であってもよい。
【0009】
また、別観点での本発明は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法であって、組成式(Sr1-x1Lax1)(Fe1-y1Zny1)n1O19-z1(ただし、0.01≦x1≦0.50、0.010≦y1≦0.040、10.00≦n1≦12.50、z1=19-[2(1-x1)+3x1+n1{3(1-y1)+2y1}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度で焼成して六方晶フェライトの粗粉を得る工程と、組成式(Sr1-x2Lax2)(Fe1-y2Zny2)n2O19-z2(ただし、0≦x2≦0.50、0≦y2≦0.040、10.00≦n2≦12.50、z2=19-[2(1-x2)+3x2+n2{3(1-y2)+2y2}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度よりも低い第二の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の微粉を得る工程と、前記粗粉と前記微粉とを、前記粗粉と前記微粉の合計質量に対する前記粗粉の質量割合が60質量%以上90質量%以下となる比率で混合粉砕して、粉砕処理した混合粉を得る工程と、前記粉砕処理した混合粉をアニールする工程と、を含むことを特徴とする。
この製造方法において、微粉の圧縮密度が3.00g/cm3以上4.00g/cm3以下になるように微粉を得る工程において粉砕処理を行うのが好ましい。
また、この製造方法において、第一の温度が1220℃以上1400℃以下であることが好ましく、第二の温度が900℃以上1000℃以下であることが好ましい。
【0010】
また、さらに別観点での本発明は、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉および樹脂を含む、ボンド磁石である。
また、さらに別観点での本発明は、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いる、ボンド磁石の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボンド磁石に用いた際に高い残留磁束密度Brを得ることができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉が提供される。また、ボンド磁石に用いた際に高い残留磁束密度Brを得ることができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法、高い残留磁束密度Brを持つボンド磁石を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1および比較例1のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、組成式(Sr1-xLax)(Fe1-yZny)nO19-z(ただし、0.01≦x≦0.50、0.010≦y≦0.040、10.00≦n≦12.50、z=19-[2(1-x)+3x+n{3(1-y)+2y}]/2)で表され、粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上40体積%以下であり、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が30体積%以上65体積%以下であり、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上30体積%以下であることを特徴とする。以下で、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成、粒度分布等の態様について説明する。
【0014】
[組成]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、組成式(Sr1-xLax)(Fe1-yZny)nO19-z(ただし、0.01≦x≦0.50、0.010≦y≦0.040、10.00≦n≦12.50、z=19-[2(1-x)+3x+n{3(1-y)+2y}]/2)で表され、Sr、LaおよびZnを必須元素として含むマグネトプランバイト型の結晶構造を有する六方晶フェライト磁性粉である。
ここで、Sr系の六方晶フェライト磁性粉の結晶構造においてSrサイトをLaで、FeサイトをZnで置換することにより、Sr系の六方晶フェライト磁性粉よりも高い磁力の六方晶フェライト磁性粉を得ることができる。磁力向上の効果を得るため、上記組成式におけるxの値を0.01以上とし、yの値を0.010以上とする。一方、LaおよびZnのそれぞれの添加が過剰になると結晶構造の維持が困難となるため、上記組成式におけるxの値を0.50以下とし、yの値を0.040以下とする。xの数値範囲は0.07以上0.50以下であることが好ましく、0.15以上0.40以下であることがさらに好ましい。yの数値範囲は0.005以上0.050以下であることが好ましく、0.015以上0.030以下であることがさらに好ましい。マグネトプランバイト型の結晶構造を有する六方晶フェライト磁性粉を得るため、上記組成式におけるnの値は、10.00以上12.50以下とする。焼成後の未反応物の残量を抑制する点から、nの値は、11.00以上12.00以下であることが好ましい。
zの値は、上記組成式においてSrの価数を+2、Laの価数を+3、Feの価数を+3、Znの価数を+2、Oの価数を-2として、組成式の価数の合計が0(ゼロ)になるように算出することができ、z=19-[2(1-x)+3x+n{3(1-y)+2y}]/2と示すことができる。
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉には、原料に含まれる不純物や製造設備に由来する不純物等の不可避的な成分が含まれ得る。このような成分としては、例えばMn及びBa等の各酸化物が挙げられる。これらの含有量は、0.4質量%以下に抑制することが好ましい。上記の組成式は、不可避的な成分を除いた組成式である。
【0015】
[粒度分布]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、高い充填性を得るため、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上40体積%以下、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が30体積%以上65体積%以下、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上30体積%以下であることを特徴とし、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上35体積%以下、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が40体積%以上65体積%以下、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上20体積%以下であることが好ましく、粒径1μm未満の粒子の割合が27体積%以上32体積%以下、粒径1μm以上5μm未満の粒子の割合が50体積%以上65体積%以下、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上15体積%以下であることがさらに好ましい。
その中でも最大の特徴点は、粒径1μm未満の粒子と5μm以上の粒子とをそれぞれ一定量以上の割合で含む点である。特許文献1のような従来のSrLaZn系六方晶フェライト磁性粉では、粒度分布の揃ったものが指向されており、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のように粒度分布が広く、粒径1μm未満の粒子と5μm以上の粒子とをそれぞれ一定量以上の割合で含む磁性粉という技術思想は従来には無かった。
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上であり、かつ粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上であることにより初めてボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の高い充填性を得ることができる。もし、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%未満であるか、粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%未満である場合には、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の高い充填性を達成することができず、本発明の効果を得ることはできない。
高い充填性を得る点から、粒径1μm未満の粒子の体積割合(a)と粒径5μm以上の粒子の体積割合(b)との比a/bの値が2.0以上3.5以下であることが好ましい。
【0016】
[圧縮密度]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、前述したように高い充填性を備えている。この充填性は、上記のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm2の圧力で圧縮した成形体の密度で評価することができる。本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、この圧縮密度が3.60g/cm3以上であることが好ましく、3.60g/cm3以上3.80g/cm3以下であることがより好ましい。圧縮密度が高いほど、当該ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いてボンド磁石を製造した際に、高い残留磁束密度Brが得られやすい。
【0017】
[平均粒径および比表面積]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、空気透過法により測定した平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上2.5μm以下であることがより好ましい。また、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、比表面積が1.0m2/g以上3.0m2/g以下であることが好ましく、1.5m2/g以上3.0m2/g以下であることがより好ましい。
【0018】
[フェライト濃度92.0質量%とした際の流動度(MFRA)]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、当該ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉92.0質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂6.6質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混練物をメルトインデクサーに入れて、JISK7210-1:2014に準拠して、前記混練物が270℃、荷重10kgで溶融して押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された質量に換算することにより求められる、フェライト濃度92.0質量%とした際の混練物の流動度(本明細書中でMFRAと呼ぶ)が、90g/10min以上であることが好ましく、100g/10min以上200g/10min以下であることがより好ましい。MFRAを100g/10min以上とすることで、当該磁性粉を用いたボンド磁石として高い残留磁束密度Brを有するボンド磁石を得ることができる。また、流動性が高すぎることによる成形性が劣るといった事態を回避するため、200g/10min以下であることが好ましい。
なお、微粉製造の際に、圧縮密度が高くなるように粉砕処理の条件を制御することにより、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉において高い流動性を実現することができる。
【0019】
[ボンド磁石Aの磁気特性]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、ボンド磁石用フェライト磁性粉92.0質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂6.6質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混練物から平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mm2で射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石Aを作製することができる。
ボンド磁石Aの残留磁束密度Brおよび最大エネルギー積BHmaxは、測定磁場10kOeで測定することができ、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を使用することで、残留磁束密度Brが3200G以上となるボンド磁石Aを得ることができる。さらに本発明のより好ましい態様によれば、3240G以上3400G以下のボンド磁石Aを得ることができる。また本発明により、最大エネルギー積BHmaxが2.50MGOe以上のボンド磁石Aを得ることができ、本発明のより好ましい態様によれば2.55MGOe以上2.70MGOe以下のボンド磁石Aを得ることができる。
【0020】
[フェライト濃度93.5質量%とした際の流動度(MFRB)]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、当該ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉93.5質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂5.1質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混練物をメルトインデクサーに入れて、JISK7210-1:2014に準拠して、前記混練物が270℃、荷重10kgで溶融して押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された質量に換算することにより求められる、フェライト濃度93.5質量%とした際の混練物の流動度(本明細書中でMFRBと呼ぶ)が、25g/10min以上であることが好ましく、40g/10min以上であることがより好ましく、40g/10min以上110g/10min以下であることがさらに好ましい。このMFRBを40g/10min以上とすることで、当該磁性粉を用いたボンド磁石として高い残留磁束密度Brを有するボンド磁石を得ることができる。
なお、微粉製造の際に、圧縮密度が高くなるように粉砕条件を制御することにより、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉において高い流動性を実現することができる。
【0021】
[ボンド磁石Bの磁気特性]
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、ボンド磁石用フェライト磁性粉93.5質量部と、シランカップリング剤0.6質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂6.6質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混錬物から平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mm2で射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石Bを作製することができる。
ボンド磁石Bの残留磁束密度Brおよび最大エネルギー積BHmaxは、測定磁場10kOeで測定することができ、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を使用することで、残留磁束密度Brが3300G以上となるボンド磁石Bを得ることができる。さらに本発明のより好ましい態様によれば、3350G以上3500G以下のボンド磁石Bを得ることができる。また本発明により、最大エネルギー積BHmaxが2.60MGOe以上のボンド磁石Bを得ることができ、本発明のより好ましい態様によれば2.70MGOe以上2.95MGOe以下のボンド磁石Bを得ることができる。
【0022】
(ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法は、組成式(Sr1-x1Lax1)(Fe1-y1Zny1)n1O19-z1(ただし、0.01≦x1≦0.50、0.010≦y1≦0.040、10.00≦n1≦12.50、z1=19-[2(1-x1)+3x1+n1{3(1-y1)+2y1}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の粗粉を得る工程と、組成式(Sr1-x2Lax2)(Fe1-y2Zny2)n2O19-z2(ただし、0≦x2≦0.50、0≦y2≦0.040、10.00≦n2≦12.50、z2=19-[2(1-x2)+3x2+n2{3(1-y2)+2y2}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度よりも低い第二の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の微粉を得る工程と、前記粗粉と前記微粉とを、粗粉と微粉の合計質量に対する粗粉の質量割合が60質量%以上90質量%以下となる比率で混合粉砕して、粉砕処理した混合粉を得る工程と、前記粉砕処理した混合粉をアニールする工程とを備える。粗粉を得る際の焼成温度である第一の温度よりも低い第二の温度で焼成した微粉を用いることで、得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の充填性を高めることができ、その結果、当該磁性粉を使用してボンド磁石を製造した際に残留磁束密度Brが高いボンド磁石を得ることができる。ここで、粗粉の比表面積は、通常、微粉の比表面積よりも小さい。以下で、各工程を詳細に説明する。
【0023】
[粗粉の製造工程]
組成式(Sr1-x1Lax1)(Fe1-y1Zny1)n1O19-z1(ただし、0.01≦x1≦0.50、0.010≦y1≦0.040、10.00≦n1≦12.50、z1=19-[2(1-x1)+3x1+n{3(1-y1)+2y1}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の粗粉を得る工程である。
六方晶フェライト磁性粉の粗粉の原料となる粉末としては、構成元素であるSr、La、FeおよびZnの各化合物を用いることができ、例えば、Sr化合物としては炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、La化合物としては酸化ランタン、水酸化ランタン、硫酸ランタンを、Fe化合物としては酸化鉄(ヘマタイト、マグネタイト)、塩化鉄、硫酸鉄、好ましくはヘマタイトを、Zn化合物としては酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛を、それぞれ用いることができる。
粗粉の磁力向上の効果を得るため、上記組成式におけるx1の値を0.01以上とし、y1の値を0.01以上とする。また、LaおよびZnのそれぞれの添加が過剰になると六方晶フェライト結晶構造の維持が困難となるため、x1の値を0.50以下とし、y1の値を0.04以下とする。x1の数値範囲は0.07以上0.50以下であることが好ましく、0.15以上0.40以下であることがさらに好ましい。y1の数値範囲は0.005以上0.050以下であることが好ましく、0.015以上0.030以下であることがさらに好ましい。
また、マグネトプランバイト型の結晶構造を有する六方晶フェライト磁性粉を得るため、上記組成式におけるn1の値は、10.00以上12.50以下とする。焼成後の未反応物の残留を抑制する点から、n1の値は、11.00以上12.00以下であることが好ましい。
z1の値の算出方法は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成式におけるzの場合と同様である。
粗粉には、原料に含まれる不純物や製造設備に由来する不純物等の不可避的な成分が含まれ得る。このような成分としては、例えばMn及びBa等の各酸化物が挙げられる。これらの含有量は、0.4質量%以下に抑制することが好ましい。上記の組成式は、不可避的な成分を除いた組成式である。
【0024】
粗粉の製造工程における焼成温度である第一の温度は、1220℃以上1400℃以下が好ましく、1220℃以上1300℃以下がより好ましい。第一の温度を1220℃以上とすることで、最終的に得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布において、粒径5μm以上の粒子の割合を容易に7体積%以上にすることができる。
粗粉の製造工程においては、原料の粉末の混合物を造粒して焼成してもよい。焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気が好ましく、大気雰囲気がより好ましい。また、焼成後に粉砕処理をすることが好ましい。粉砕処理の方法は、特に限定されず、ローラーミル等を用いる公知の方法が挙げられる。
【0025】
粗粉は、BET一点法で測定した比表面積が0.2m2/g以上0.6m2/g以下であることが好ましく、0.3m2/g以上0.5m2/g以下であることがより好ましい。
【0026】
[微粉の製造工程]
組成式(Sr1-x2Lax2)(Fe1-y2Zny2)n2O19-z2(ただし、0≦x2≦0.50、0≦y2≦0.040、10.00≦n2≦12.50、z2=19-[2(1-x2)+3x2+n2{3(1-y2)+2y2}]/2)で表される六方晶フェライト磁性粉の微粉の原料となる粉末を混合した後に第一の温度よりも低い第二の温度で焼成して六方晶フェライト磁性粉の微粉を得る工程である。
六方晶フェライト磁性粉の微粉の原料となる粉末としては、構成元素であるSr、La、FeおよびZnの各化合物を用いることができ、例えば、Sr化合物としては炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、La化合物としては酸化ランタン、水酸化ランタン、硫酸ランタンを、Fe化合物としては酸化鉄(ヘマタイト、マグネタイト)、塩化鉄、硫酸鉄、好ましくはヘマタイトを、Zn化合物としては酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛を、それぞれ用いることができる。
六方晶フェライト結晶構造の維持が困難となるため、組成式においてx2の値を0.50以下とし、y2の値を0.040以下とする。x2の数値範囲は0.00以上0.50以下であることが好ましく、0以上0.30以下であることがさらに好ましい。y2の数値範囲は0以上0.030以下であることが好ましく、0以上0.015以下であることがさらに好ましい。
また、マグネトプランバイト型の結晶構造を有する六方晶フェライト磁性粉を得るため、上記組成式におけるn2の値は、10.00以上12.50以下とする。焼成後の未反応物の残留を抑制する点から、n2の値は、10.50以上12.00以下であることが好ましい。
z2の値の算出方法は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成式におけるzの場合と同様である。
一方、上記組成式は、x2=0および/またはy2=0の場合を含んでおり、本工程で得られる微粉は六方晶SrLaフェライト、六方晶SrZnフェライトおよび六方晶Srフェライトのいずれかであってもよく、六方晶Srフェライトが好ましい。
ここで、粗粉としてSrLaZnフェライトを用いるのに対し、微粉としてLa、Znで置換されていない、未置換のSrフェライトを用いた際に、ボンド磁石は極めて優れた磁気特性を発現することが分かった。微粉は粗粉に比べ大きな保磁力を持つため、より保磁力に優れるSrフェライトを微粉に用いることで、飽和磁束密度の特性に優れるSrLaZnフェライトとの組合せにおいて、結果的に磁気特性のバランスに優れたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉が得られたものと推定される。
微粉には、原料に含まれる不純物や製造設備に由来する不可避的な成分が含まれ得る。このような成分としては、例えばMn(マンガン)及びV(バナジウム)等の各酸化物が挙げられる。これらの含有量は、0.4質量%以下に抑制することが好しい。上記組成式は、不可避な成分を除いた組成式である。
【0027】
微粉の製造工程における焼成温度である第二の温度は、900℃以上1000℃以下が好ましく、950℃以上1000℃以下がより好ましい。第二の温度を900℃以上とすることで、六方晶フェライト結晶構造をもつ微粉が得られやすくなる。また、第二の温度を1000℃以下とすることで、最終的に得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準での粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合を容易に25体積%以上とすることができる。
微粉の製造工程においては、原料粉末の混合物を造粒して焼成してもよい。焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気が好ましく、大気雰囲気がより好ましい。また、焼成後に粉砕処理をすることが好ましい。粉砕処理は、ローラーミル等を用いる公知の方法により実施することができるが、湿式粉砕処理を行うことが好ましい。ローラーミル等の乾式粉砕処理と湿式粉砕処理を組み合わせてもよい。
【0028】
湿式粉砕処理は、回転式の攪拌羽根による攪拌機構を有する湿式粉砕機を用いることができ、攪拌羽根の周速は0.5m/s以上2.5m/s以下が好ましく、1.0m/s以上2.0m/s以下がより好ましい。ここで、攪拌羽根の周速とは、攪拌羽根の回転軸からの距離が最も離れた箇所の速度を指し、湿式粉砕機における粉砕の強度を表す指標となる。このように攪拌羽根の周速を0.5m/s以上2.5m/s以下とすることにより、粉砕後の微粉10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm3の圧力で圧縮した成形体の圧縮密度が2.80g/cm3以上4.00g/cm3以下となるように粉砕することできる。これにより、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いて作製された混練物の流動度を高めることができる。そして、その結果得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いて製造されたボンド磁石の残留磁束密度Brを高めることができる。
このように粉砕後の微粉の成形体の圧縮密度が2.80g/cm3以上4.00g/cm3以下とすることで最終的に得られるボンド磁石の残留磁束密度Brを高めることができるメカニズムは明らかではないが、圧縮密度の高さは粒子形状が均整化される一方で、過剰な粉砕による、粒度分布測定に反映されない極微小な粒子の発生が抑制されていることを反映していると考えられる。特に、比表面積を増加させ、コンパウンド化時に流動性を著しく低下させる極微小な粒子が少ないことは高充填時には好適である。結果として高充填に適した微粉が得られ、微粉と粗粉とを混合してボンド磁石を製造した際に、微粉および粗粉の粒子の配向性の向上につながったことによるものと推定される。
攪拌羽根による攪拌機構を有する湿式粉砕機としてはアトライターを用いることが好ましく、溶媒としては水を用いることが好ましく、メディア径は2mm以上15mm以下とすることが好ましい。
【0029】
微粉は、BET一点法で測定した比表面積は、4m2/g以上20m2/g以下であることが好ましく、5m2/g以上15m2/g以下であることがより好ましい。
【0030】
[混合粉砕工程]
別々に得られた粗粉と微粉とを、粗粉と微粉の合計質量に対する粗粉の質量割合が60質量%以上90質量%以下となる比率で混合粉砕して、粉砕処理した混合粉を得る工程である。混合時の粗粉の質量割合を60質量%以上とすることで、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布において、粒径5μm以上の粒子の割合を7体積%以上とすることができる。また、混合時の粗粉の質量割合を90質量%以下(すなわち微粉の質量割合を10質量%以上)とすることで、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合を25体積%以上とすることができる。
混合には湿式粉砕装置を用いることが好ましく、アトライターを用いることがより好ましく、攪拌羽根の周速は1.5m/s以上3.5m/s以下が好ましい。
また、混合後の粉砕には振動ボールミルを用いることが好ましく、振動ボールミルによる粉砕処理においては媒体径5mm以上20mm以下のボールを用いることが好ましく、1段目として媒体径10mm以上20mm以下のボールを用いて粉砕処理を実施した後に2段目として媒体径5mm以上10mm以下のボールを用いて粉砕処理を実施することが好ましい。振動ボールミルを用いることによって、アトライターでは粉砕できなかった粗大粒子を粉砕することができる。
【0031】
[アニール工程]
混合粉砕工程で得られた、混合粉砕処理した混合粉をアニールして、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得る工程である。アニール条件は、特に限定されず、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法として公知の条件にて実施することができる。アニールの温度は900℃以上1000℃以下が好ましく、930℃以上980℃以下がより好ましい。また、アニール時の雰囲気は酸化性雰囲気が好ましく、大気雰囲気がより好ましい。
【0032】
(ボンド磁石とその製造方法)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉と、樹脂と滑剤等を混合し、混練した後に磁場中成形することで、ボンド磁石を得ることができる。ここで、ボンド磁石の製造方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる、
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明によるボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法について詳細に説明する。
【0034】
実施例における評価は以下のようにして行った。
[平均粒径測定]
平均粒径(APD)は、比表面積測定装置(株式会社島津製作所製のSS-100)を用いて空気浸透法により測定した。
【0035】
[比表面積測定]
比表面積は比表面積測定装置(カンタクローム社製のモノソーブ)によりBET一点法で測定した。
【0036】
[組成分析]
組成分析は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のZSX100e)を使用して、ファンダメンタル・パラメータ法(FP法)により、各元素の成分量を算出することにより行った。この組成分析では、測定対象の粉末を測定用セルに詰め、10トン/cm2の圧力を20秒間加えて成型し、測定モードをEZスキャンモード、測定径を30mm、試料形態を酸化物、測定時間を標準時間とし、真空雰囲気中において定性分析を行った後に、検出された構成元素に対して定量分析を行った。
【0037】
[圧縮密度測定]
圧縮密度は、測定対象の粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm2の圧力で圧縮した成形体の密度を圧縮密度(CD)として測定した。
【0038】
[粒度分布測定]
粒度分布は、乾式レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製:HELOS&RODOS)を使用して、焦点距離20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarで体積基準の粒度分布を測定した。
【0039】
[磁気特性測定]
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の圧粉体の磁気特性は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製のP-レジン)0.4cm3を乳鉢中で混練し、得られた混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2トン/cm2の圧力で60秒間圧縮して得られた成形品を金型から抜き取り、150℃で30分間乾燥させて圧粉体を得て、圧粉体の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して、測定磁場10kOeで圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁束密度Brを測定した。
【0040】
[MFRAの測定]
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉92.0質量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ-6094N)0.6質量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN-212P)0.8質量部と、バインダとして粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP-1011F)6.6質量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混錬物から平均径2mmの混練ペレットを得た。
得られた混練ペレットをメルトインデクサー(株式会社東洋精機製作所製のメルトインデクサーC-5059D2)に入れて、前記混練物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された量に換算することにより、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のMFRAを求めた。
【0041】
[ボンド磁石Aの磁気特性測定]
MFRAの測定において記載した方法で得られた混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mm2で射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石A(F.C.92.0質量%、9.7kOe)を得た。このボンド磁石AをBHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して磁気特性を測定した。
【0042】
[MFRBの測定]
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉93.5質量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ-6094N)0.6質量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN-212P)0.8質量部と、バインダとして粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP-1011F)5.1質量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して混練物を作製し、得られた混錬物から平均径2mmの混練ペレットを得た。
得られた混練ペレットをメルトインデクサー(株式会社東洋精機製作所製のメルトインデクサーC-5059D2)に入れて、前記混練物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された量に換算することにより、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のMFRBを求めた。
【0043】
[ボンド磁石Bの磁気特性測定]
MFRBの測定において記載した方法で得られた混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mm2で射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石B(F.C.93.5質量%、9.7kOe)を得た。このボンド磁石BをBHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して磁気特性を測定した。
【0044】
(実施例1)
1.実施例1に係る六方晶フェライト磁性粉の製造
(1)粗粉の製造工程
酸化鉄を83.2質量部、炭酸ストロンチウムを9.4質量部、水酸化ランタンを5.2質量部および酸化亜鉛を2.2質量部となるように秤量した。当該秤量物に対して、0.18質量%のホウ酸、および2.45質量%の塩化カリウムを加えて混合後、水を加えて直径3~10mmの球状に造粒した。
【0045】
得られた造粒物をロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、第一の温度として1250℃で20分間焼成し、得られた焼成物をローラーミルで処理することで、粗粉を得た。
【0046】
得られた粗粉の平均粒径を測定したところ、1.20μmであった。
得られた粗粉のBET比表面積を測定したところ、0.4m2/gであった。
得られた粗粉の組成分析を行い、Sr、La、Fe、Znの分析値から、粗粉の組成式を(Sr1-x1Lax1)(Fe1-y1Zny1)n1O19-z1と表記した場合のx1、y1、n1、z1を算出したところ、x1=0.32、y1=0.021、n1=11.23、z1=1.11という結果であった。
【0047】
(2)微粉の製造工程
酸化鉄85.5質量部と炭酸ストロンチウム14.5質量部を秤量および混合した後、水を加えて直径3~10mmの球状に造粒した。
【0048】
得られた造粒物を、ロータリーキルン中において大気の流通雰囲気下、第二の温度として970℃で20分間焼成し、得られた焼成物をローラーミルで処理することで微粉を得た。得られた微粉に水を加えて、微粉の濃度が40質量%となるようにスラリー化したのち、直径5.56mmのスチール製ボールとともにアトライターに投入して120分間(粉砕処理時間)攪拌して粉砕処理することにより、湿式粉砕後の微粉を含むスラリーを得た。ここで、攪拌羽根の回転速度は、攪拌羽根の周速が3.2m/sとなるように調整した。得られた湿式粉砕後の微粉をスラリーからサンプリングし、ろ過により固液分離した後乾燥をすることで評価用の微粉サンプルを得た。
【0049】
得られた微粉サンプルのBET比表面積を測定したところ13.7m2/gであった。
得られた微粉の圧縮密度を測定したところ2.87g/cm3であった。
微粉サンプルの組成分析を行い、Sr、Feの分析値から、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成式を(Sr1-x2Lax2)(Fe1-y2Zny)n2O19-z2と表記した場合のx2、y2、n2、z2を算出したところ、x2=0、y2=0、n2=10.80、z2=1.80という結果であった。
結果を表1に示す。
【0050】
(3)混合粉砕工程
アトライターの粉砕容器内に入っている、得られた湿式粉砕後の微粉を含むスラリーに、微粉:粗粉の割合が30:70となるように(1)の粗粉製造工程で得られた粗粉を追加し、アトライターによりさらに20分間の混合粉砕処理を行った。ここで攪拌羽根の回転数は、攪拌羽根の周速が3.2m/sとなるよう制御した。そして、当該スラリーをろ過して固液分離した後に、大気中150℃で10時間乾燥させて乾燥ケーキを得た。当該乾燥ケーキを解砕処理することで混合粉を得た。得られた混合粉を、振動ボールミル(村上精機製作所製:Uras Vibrator KEC-8-YH)で粉砕処理することにより、粉砕処理した混合粉を得た。粉砕処理条件としては、媒体径12mmのスチール製ボールを用い、回転数1800rpm、振幅8mmの条件で28分間実施し、得られた粉砕粉に対してさらに、媒体径8mmのスチール製ボールを用いて回転数1800rpm、振幅8mmの条件で粉砕処理を28分間実施した。
【0051】
(4)アニール工程
粉砕処理した混合粉を大気中970℃で30分間アニールして、実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
【0052】
(5)ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の評価
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉について、粉末X線回折装置(株式会社リガク製のMiniflex600)を使用して、管電圧を40kV、管電流を15mA、測定範囲を15°~60°、スキャン速度を1°/分、スキャン幅を0.02°として、粉末X線回折法(XRD)による測定を行った。その結果、すべてのピークがSrFe12O19と同じ位置に観測され、本実施例のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉がマグネトプランバイト型の結晶構造を有することが確認された。この結果は、以下に説明する実施例2~4および比較例1~5でも同様であった。
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成分析を行い、Sr、La、Fe、Znの分析値から、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成式を(Sr1-xLax)(Fe1-yZny)nO19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.21、y=0.014、z=0.90、n=11.38であった。
【0053】
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布を測定したところ、1μm未満の粒子の割合は29.1体積%であり、1μm以上5μm未満の粒子の割合は61.4体積%であり、5μm以上の粒子の割合は9.5体積%であった。
【0054】
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉について、圧縮密度を測定したところ3.67g/cm3であり、比表面積を測定したところ2.51m2/gであり、平均粒径を測定したところ、1.20μmであった。
【0055】
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の圧粉体の磁気特性を測定したところ、圧粉体の保磁力p-iHcは2390Oe、圧粉体の残留磁束密度p-Brは1990Gであった。
【0056】
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のMFRAは、91.0g/10minであった。
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いたボンド磁石Aの磁気特性を測定したところ、保磁力iHcは2355Oe、残留磁束密度Brは3211G、最大エネルギー積BHmaxは2.52MGOeであった。
【0057】
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のMFRBは、28.2g/10minであった。
実施例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いたボンド磁石Bの磁気特性を測定したところ、保磁力iHcは2467Oe、残留磁束密度Brは3320G、最大エネルギー積BHmaxは2.69MGOeであった。
【0058】
(実施例2)
微粉を湿式粉砕する際および粉砕混合を行う際の攪拌羽根の回転数を、攪拌羽根の周速が1.6m/sとなるように調整したこと、ならびに微粉の湿式粉砕の粉砕処理時間を60分としたこと以外は、実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
【0059】
(実施例3)
微粉を湿式粉砕する際および粉砕混合を行う際の攪拌羽根の回転数を、攪拌羽根の周速が1.6m/sとなるように調整したこと、ならびに微粉の製造工程において微粉の濃度が20質量%となるようにスラリー化したこと以外は、実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
【0060】
(実施例4)
微粉を湿式粉砕する際および粉砕混合を行う際の攪拌羽根の回転数を、攪拌羽根の周速が1.6m/sとなるように調整したこと、微粉の製造工程において微粉の濃度が20質量%となるようにスラリー化したこと、ならびに媒体径8mmのスチール製ボールを用いての粉砕処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例1と同じ条件で評価した。
【0061】
(実施例5)
微粉を湿式粉砕する際および粉砕混合を行う際の湿式粉砕の粉砕処理時間を60分としたこと以外は、実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例1と同じ条件で評価した。
【0062】
(実施例6)
微粉を湿式粉砕する際および粉砕混合を行う際の湿式粉砕の粉砕処理時間を30分としたこと以外は、実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例1と同じ条件で評価した。
【0063】
(比較例1)
実施例1の(1)粗粉の製造工程と同様の操作により粗粉を得た。得られた粗粉に水を加えて粗粉の濃度が40質量%となるようにスラリー化したのち、直径5.56mmのスチール製ボールとともにアトライターに投入して20分間粉砕処理することにより、粗粉の湿式粉砕後粉を含むスラリーを得た。ここで、攪拌羽根の周速は3.2m/sとなるように調整した。そして、当該スラリーをろ過し、大気中150℃で10時間乾燥させて乾燥ケーキを得た。当該乾燥ケーキを解砕処理した後に、振動ボールミル(村上精機製作所製:Uras Vibrator KEC-8-YH)で乾式粉砕処理した。乾式粉砕処理条件としては、媒体径12mmのスチール製ボールを用い、回転数1800rpm、振幅8mmの条件で28分間実施し、得られた粉砕粉に対してさらに、媒体径8mmのスチール製ボールを用いて回転数1800rpm、振幅8mmの条件で粉砕処理を28分間実施した。乾式粉砕処理で得られた粉末を大気中970℃で30分間アニールして、比較例1に係るボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
ここで、実施例1と同様の手順でボンド磁石Bの製造を試みたところ、混合物を混練して得られた混練物が流動せず、MFRBの測定およびボンド磁石Bの製造を実施することができなかった。
【0064】
(比較例2)
粗粉の製造工程における第一の温度を1300℃としたこと、媒体径8mmのスチールボールを用いての粉砕処理を実施しなかったこと以外は、比較例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
ここで、実施例1と同様の手順でボンド磁石Bの製造を試みたところ、混合物を混練して得られた混練物が流動せず、MFRBの測定およびボンド磁石Bの製造を実施することができなかった。
【0065】
(比較例3)
粗粉の製造工程における第一の温度を1250℃としたこと、媒体径8mmのスチールボールを用いての粉砕処理を実施しなかったこと以外は、比較例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
ここで、実施例1と同様の手順でボンド磁石Bの製造を試みたところ、混合物を混練して得られた混練物が流動せず、MFRBの測定およびボンド磁石Bの製造を実施することができなかった。
【0066】
(比較例4)
粗粉の製造工程における第一の温度を1200℃としたこと、媒体径8mmのスチールボールを用いての粉砕処理を実施しなかったこと以外は、比較例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
ここで、実施例1と同様の手順でボンド磁石Bの製造を試みたところ、混合物を混練して得られた混練物が流動せず、MFRBの測定およびボンド磁石Bの製造を実施することができなかった。
【0067】
(比較例5)
粗粉の製造工程における第一の温度を1150℃としたこと、媒体径8mmのスチールボールを用いての粉砕処理を実施しなかったこと以外は、比較例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を作製し、実施例と同じ条件で評価した。
また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉に対して、実施例1と同様の手順でボンド磁石Aおよびボンド磁石Bの製造を試みたところ、いずれの場合も混合物を混練して得られた混練物が流動せず、MFRAおよびMFRBの測定、ならびにボンド磁石Aおよびボンド磁石Bの製造を実施することができなかった。
【0068】
以上の結果を表1~3に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
実施例1および比較例1の結果から、粗粉を得る際の焼成温度である第一の温度より低い第二の温度で焼成することにより得られた微粉を、粗粉と混合粉砕してアニールすることにより、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉として、粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合を25体積%以上、かつ粒径5μm以上の粒子の割合を7体積%以上とすることができ、圧縮密度が3.60g/cm3以上である磁性粉を得ることができ、さらに得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いてボンド磁石を製造した際の残留磁束密度Brが高いボンド磁石を得られることが分かる。
また、実施例1および実施例2~4の結果からは、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法において、微粉を攪拌羽根の周速を0.5m/s以上2.5m/s以下に制御して行う湿式ビーズミルによる粉砕処理に供した後に、前記微粉と前記粗粉とを混合することで、得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のMFRAを100g/10min以上とすることができ、さらに得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いてボンド磁石を製造した際の残留磁束密度Brが高いボンド磁石を得られることが分かる。
そして、実施例2と6との比較及び実施例3と5との比較からは、微粉の比表面積がほぼ同等であるにも関わらず、実施例2及び3の微粉の圧縮密度は、実施例6及び5の圧縮密度と比べて大きく、ボンド磁石の特性も優れている。これは、湿式粉砕時の撹拌羽の周速を落とすことにより、高充填に適した微粉が得られ、微粉と粗粉とを混合してボンド磁石を製造した際に、微粉および粗粉の粒子の配向性が向上したためと考えることができる。
比較例2~5の結果から、従来のSrLaZn系の六方晶フェライト磁性粉の製造方法では、粒度分布において、粒径1μm未満の粒子の割合が25体積%以上、かつ粒径5μm以上の粒子の割合が7体積%以上である六方晶フェライト磁性粉を得ることはできず、結果としてその六方晶フェライト磁性粉のMFRAは90g/10min未満と小さく、当該六方晶フェライト磁性粉を用いてボンド磁石を製造しても残留磁束密度Brが低いボンド磁石しか得られないことが分かった。