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  • 特許-シリコーン樹脂の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】シリコーン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 79/00 20060101AFI20240802BHJP
   C08G 77/58 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08G79/00
C08G77/58
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021074088
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168548
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊能 博臣
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-009694(JP,A)
【文献】特開平07-238172(JP,A)
【文献】特開平07-286045(JP,A)
【文献】特開平11-193209(JP,A)
【文献】特開2021-138897(JP,A)
【文献】特開平07-216096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)
【化1】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.1~0.7、bは0~0.5、cは0~0.9、dは0.2~0.7、eは0.01~0.3であり、a+b+c+d+eは1.0である。)
で表されるシリコーン樹脂の製造方法であって、
(i)下記一般式(2)及び下記一般式(3)
SiOSiR (2)
SiOH (3)
(式中、Rは前記Rと同じである。)
で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上と、
下記一般式(4)、下記一般式(5)、及び下記一般式(6)
(RO)SiR (4)
(RO)SiR (5)
(RO)Si (6)
(式中、R及びRは前記Rと同じである。Rは独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基である。)
で表されるシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と
を溶媒中において、加水分解・縮合させる工程と、
(ii)得られた加水分解・縮合物を加熱して前記工程(i)で用いた溶媒と、生成したアルコールと、過剰の水とを除去する工程と、
(iii)下記一般式(7)
Ti(OR (7)
(式中、Rは前記と同じである。)
で表されるチタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と前記水を除去した加水分解・縮合物とを縮合させる工程と
を含むことを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記(ii)において、水を除去する前の前記加水分解・縮合物に溶媒を添加することを特徴とする請求項1に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ti含有シリコーン樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーン樹脂は、被膜形成能があり、耐水性、耐汗性、耐皮脂性に優れることから、ファンデーション、口紅、アイシャドー、マスカラ等のメークアップ化粧料、紫外線防御用化粧料、頭髪用化粧料等の化粧品用原料として使用されている。
【0003】
例えば、平均式RSiO4-n/2の単位からなる有機シリコーン樹脂と、揮発性炭化水素油とを含む皮膚化粧料(特許文献1)、RSiO1/2単位とSiO4/2単位からなる樹脂と、揮発性シリコーン油とを含有する皮膚化粧料(特許文献2)、RSiO2/2単位、RSiO3/2単位、SiO4/2単位を2種類以上含み、任意で末端をRSiO1/2単位で封鎖したシリコーン樹脂、揮発性油剤と紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を配合した日焼け防止化粧料(特許文献3)、70モル%以上がRSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなり、かつRSiO1/2単位とSiO4/2単位とのモル比が0.5/1~1.5/1である有機シリコーン樹脂1~70質量%を含有する皮膚化粧料(特許文献4)等が知られており、これらは耐水性に優れる被膜が得られることを開示している。
【0004】
近年では、撥水性、撥油性に優れる異種金属含有有機シリコーン樹脂が開発されている(特許文献5)。しかし、この方法では、チタニウムイソプロポキシドの加水分解速度をコントロールするため、湿度を調整したグローブボックス内で合成し、滴下時間や熟成時間が長く、低収率であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平04-59284号公報
【文献】特公平06-15448号公報
【文献】特開昭62-234012号公報
【文献】特開昭62-298511号公報
【文献】特許第3799171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、簡便で効率の良いTi含有シリコーン樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
下記組成式(1)
【化1】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.1~0.7、bは0~0.5、cは0~0.9、dは0.2~0.7、eは0.01~0.3であり、a+b+c+d+eは1.0である。)
で表されるシリコーン樹脂の製造方法であって、
(i)下記一般式(2)及び下記一般式(3)
SiOSiR (2)
SiOH (3)
(式中、Rは前記Rと同じである。)
で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上と、
下記一般式(4)、下記一般式(5)、及び下記一般式(6)
(RO)SiR (4)
(RO)SiR (5)
(RO)Si (6)
(式中、R及びRは前記Rと同じである。Rは独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基である。)
で表されるシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と
を無溶媒又は溶媒中において、加水分解・縮合させる工程と、
(ii)得られた加水分解・縮合物を加熱して水を除去する工程と、
(iii)下記一般式(7)
Ti(OR (7)
(式中、Rは前記と同じである。)
で表されるチタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と前記水を除去した加水分解・縮合物とを縮合させる工程と
を含むシリコーン樹脂の製造方法を提供する。
【0008】
このようなシリコーン樹脂の製造方法は、工程が簡便で、且つ、収率も向上したTi含有シリコーン樹脂の製造方法である。
【0009】
前記(ii)において、水を除去する前の前記加水分解・縮合物に溶媒を添加することが好ましい。
【0010】
このようなシリコーン樹脂の製造方法であれば、固体のシリコーン樹脂を溶解することができ、上記水を除去した加水分解・縮合物とチタンアルコキシドとの反応を良好に進めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チタンアルコキシドの加水分解速度を滴下や溶媒等で制御する必要はないため、工程が簡便で、且つ、収率も向上したTi含有シリコーン樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例及び比較例で合成したシリコーン樹脂のIRスペクトルの一例である。
図2】実施例及び比較例で合成したシリコーン樹脂のUVスペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、工程が簡便で、且つ、収率も向上したTi含有シリコーン樹脂の製造方法が求められていた。
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を行った結果、一般式(2)、(3)の有機ケイ素化合物と一般式(4)、(5)、(6)のシラン及びその部分加水分解縮合物を酸触媒存在下で加水分解・縮合した後、加熱して過剰な水を除去後、一般式(7)のチタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物を反応させることで高収率でTi含有シリコーン樹脂が得られることを見出し、本発明になすに至ったものである。
【0015】
即ち、本発明は、
下記組成式(1)
【化2】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.1~0.7、bは0~0.5、cは0~0.9、dは0.2~0.7、eは0.01~0.3であり、a+b+c+d+eは1.0である。)
で表されるシリコーン樹脂の製造方法であって、
(i)下記一般式(2)及び下記一般式(3)
SiOSiR (2)
SiOH (3)
(式中、Rは前記Rと同じである。)
で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上と、
下記一般式(4)、下記一般式(5)、及び下記一般式(6)
(RO)SiR (4)
(RO)SiR (5)
(RO)Si (6)
(式中、R及びRは前記Rと同じである。Rは独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基である。)
で表されるシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と
を無溶媒又は溶媒中において、加水分解・縮合させる工程と、
(ii)得られた加水分解・縮合物を加熱して水を除去する工程と、
(iii)下記一般式(7)
Ti(OR (7)
(式中、Rは前記と同じである。)
で表されるチタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と前記水を除去した加水分解・縮合物とを縮合させる工程と
を含むシリコーン樹脂の製造方法である。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
[シリコーン樹脂の製造方法]
本発明の下記組成式(1)で表されるシリコーン樹脂の製造方法は、以下の工程(i)~(iii)を含む。
【化3】
(式中、Rは独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基及び炭素数1~8のフッ素置換アルキル基から選ばれる基であり、aは0.1~0.7、bは0~0.5、cは0~0.9、dは0.2~0.7、eは0.01~0.3であり、a+b+c+d+eは1.0である。)
【0018】
[工程(i)]
工程(i)は、下記一般式(2)及び下記一般式(3)
SiOSiR (2)
SiOH (3)
(式中、Rは前記Rと同じである。)
で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種又は2種以上と、
下記一般式(4)、下記一般式(5)、及び下記一般式(6)
(RO)SiR (4)
(RO)SiR (5)
(RO)Si (6)
(式中、R及びRは前記Rと同じである。Rは独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基である。)
で表されるシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と
を無溶媒又は溶媒中において、加水分解・縮合させる工程である。
【0019】
、R、Rは上記Rと同じであるが、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。Rは独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基であり、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。なお、上記一般式(2)と(3)で表される化合物、上記一般式(4)~(6)で表される化合物はそれぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0020】
工程(i)の加水分解・縮合反応は酸性条件下で行うことが好ましく、触媒として酸性物質を添加することが好ましい。酸性物質としては、塩酸、硫酸、p-トルエンスルフォン酸、メタンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、リン酸、酢酸、クエン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。その使用量は少量でよく、加水分解・縮合反応系全体の0.001~10質量%が好ましい。
【0021】
反応は無溶媒又は溶媒中で行うことができ、溶媒中で行うことが好ましい。この工程(i)で用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、イソパラフィン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、(イソ)プロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1~10の脂肪族アルコール系溶媒が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、炭素数1~10の脂肪族アルコール系溶媒が好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)がより好ましい。溶媒の量は、加水分解・縮合反応系全体の5~50質量%が好ましい。
【0022】
より具体的には、例えば、有機ケイ素化合物と、シラン又はその部分加水分解縮合物と、溶媒とを反応器に仕込み、酸を添加し、撹拌しながら水を滴下する。水を滴下するときの温度は0~60℃、特に0~40℃が好ましく、滴下する水の量は加水分解性基に対してモル比で0.6~2.5の範囲が好ましい。水を滴下した後は、加水分解・縮合反応を行うが、30~100℃、特に50~80℃で、2~8時間加熱することが好ましい。
【0023】
加水分解後は、酸の除去を行うことが好ましい。酸の除去にはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物等で中和する方法や、水洗工程で除去する方法とすることができる。
【0024】
工程(i)の溶媒は、反応終了後留去してもよい。
【0025】
[工程(ii)]
工程(ii)は、得られた加水分解・縮合物を加熱して水を除去する工程である。
【0026】
工程(ii)において、水を除去する前の上記加水分解・縮合物に溶媒を添加してもよく、この場合の溶媒としては、化粧料に使用できる油剤が好ましい。具体的には、シリコーン油、炭化水素油等の有機系の油性成分が挙げられる。特に、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン等の揮発性シロキサン化合物、イソドデカン等の揮発性炭化水素化合物が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。油剤の量は工程(i)で得られた加水分解・縮合物と油剤の合計に対して10~80質量%とすることが好ましい。
【0027】
なお、このような溶媒(油剤)は、上記工程(i)の加水分解・縮合反応時に添加することもできる。工程(i)、(ii)の溶媒(油剤)は、反応終了後留去してもよい。
【0028】
工程(ii)はより具体的には、例えば、上記工程(i)の酸の除去後に、好ましくは溶媒(油剤)を添加し、生成したアルコール類と過剰の水を、常圧又は減圧下で、90~120℃まで加熱して除去するという工程である。
【0029】
[工程(iii)]
工程(iii)は、下記一般式(7)
Ti(OR (7)
(式中、Rは前記と同じである。)
で表されるチタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上と前記水を除去した加水分解・縮合物とを縮合させる工程である。
【0030】
は独立に水素原子又は非置換又は置換一価炭化水素基であり、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0031】
チタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物を工程(i)に該当する最初の仕込み時に添加すると、チタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物の加水分解速度が速いため、白濁の原因となる。この白濁を避けるために、工程(ii)において水を除去してからこの工程(iii)でチタンアルコキシドを添加することが、本発明の特徴である。
【0032】
チタンアルコキシド及びその部分加水分解縮合物の例としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナトチタン、プロパンジオキシチタンビスエチルアセトアセテート及びそれらを部分加水分解したオリゴマーが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0033】
工程(iii)は具体的には、冷却後、上記水を除去した加水分解・縮合物にチタンアルコキシド又はその部分加水分解縮合物を添加して、常圧又は減圧下で、100~150℃で2~5時間加熱して縮合反応を行うことにより、Ti含有シリコーン樹脂溶液を得ることができる。
【0034】
また、本発明の製造方法で得られるシリコーン樹脂は固体である場合があるため、上記工程(iii)の反応終了後に、溶媒(油剤)で希釈した溶液とすることが好ましい。希釈に用いる溶媒(油剤)は、工程(i)の溶媒、工程(ii)の溶媒と同じであっても、異なってもよく、シリコーン油、炭化水素油等の有機系の油性成分等が挙げられ、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカン、パラメトキシケイ皮酸オクチルが好ましい。希釈した場合は、本発明の製造方法で得られるシリコーン樹脂量が30~70質量%の溶媒(油剤)溶液とするとよい。
【実施例
【0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示す。また、(CHSiO1/2単位をM単位、CHSiO3/2単位をT単位、SiO4/2単位をQ単位、TiO4/2単位をTi単位と記載する。
【0036】
[実施例1]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びイソプロピルアルコール(以下、IPA)64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0037】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン(オルトチタン酸テトライソプロピル)3.96gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.52:0.02の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0038】
[実施例2]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0039】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン3.96gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.52:0.02の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0040】
[実施例3]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0041】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン8.08gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.50:0.04の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0042】
[実施例4]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0043】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン8.08gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.46:0.50:0.04の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0044】
[実施例5]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0045】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン12.37gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてデカメチルシクロペンタシロキサンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.45:0.49:0.06の60%シリコーン樹脂デカメチルシクロペンタシロキサン溶液を得た。
【0046】
[実施例6]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0047】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン12.37gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.45:0.49:0.06の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0048】
[実施例7]
ヘキサメチルジシロキサン23.27g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0049】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン15.97gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することによりM単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.41:0.51:0.08の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0050】
[実施例8]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、トリエトキシメチルシラン12.78g、テトラエトキシシラン59.75g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0051】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、90~115℃まで加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタン21.54gを滴下し、2時間攪拌後、130℃で3時間加熱して、生成したIPA及び水を除去した後、冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:T単位:Q単位:Ti単位のモル比率が0.43:0.09:0.38:0.10の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0052】
[比較例1]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、シリコーン樹脂溶液を得た。
【0053】
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液1.03g及び炭酸カルシウム0.13gを加えて酸を中和した後、イソドデカン100gを添加して、130℃で3時間加熱し、生成したエタノール、IPA、過剰な水を除去して冷却した。さらに、減圧留去した後、油剤としてイソドデカンでシリコーン樹脂濃度が60%になるよう希釈調整後、濾過することにより、M単位:Q単位のモル比率が0.47:0.53の60%シリコーン樹脂イソドデカン溶液を得た。
【0054】
[比較例2]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g、テトライソプロポキシチタン7.50g(0.026mol)及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下したところ、白濁し、50~80℃で5時間加熱後も白濁したままであった。
【0055】
[比較例3]
ヘキサメチルジシロキサン26.18g、テトラエトキシシラン74.68g及びIPA64gを反応器に仕込み、メタンスルフォン酸0.64gを添加して10~20℃に冷却し、撹拌しながら水47.54gを滴下した。滴下終了後、50~80℃で5時間加熱して加水分解・縮合反応を行い、冷却した後、テトライソプロポキシチタン7.50g(0.026mol)を攪拌しながら滴下したところ、白濁した。
【0056】
[比較例4]
密閉グローブボックス内に、攪拌子入り500ml茄子型フラスコ、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、メトキシトリメチルシラン、温度計、及びシリカゲルを入れ、12時間かけて前記グローブボックス内を十分に乾燥し、相対湿度を25%にした。
【0057】
充分に乾燥された茄子型フラスコに、テトラメトキシシラン25.00g(0.164mol)、メトキシトリメチルシラン42.78g(0.410mol)、テトライソプロポキシチタン7.50g(0.026mol)を順次投入し、直ちにシリカゲル管、及び滴下ロート付還流冷却器を取り付け、攪拌子を用いて攪拌を開始した。続いて、反応溶液を徐々に加熱し、60℃で45分間加熱攪拌を行った後、この反応溶液に、別途調製したHO(イオン交換水)4重量%のイソプロパノール溶液128.25gを7時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を60℃に保ったまま15時間加熱還流を行った。この後、反応溶液中にメトキシトリメチルシラン109.33g(1.048mol)を15分かけて滴下し、ここで反応溶液温度を70℃とした。次に、別途調製したHO(イオン交換水)20重量%のイソプロパノール溶液122.20gを三等分し、1/3量につき7時間づつかけて滴下を行った。前記イソプロパノール溶液を1/3量滴下する毎に、反応溶液を、70℃において16時間加熱還流した。前記イソプロパノール溶液の滴下が全て終了した後、反応溶液の温度を80℃とし、90時間加熱還流を行い反応を終了した。
【0058】
反応終了後、ロータリーエバポレータを用いて80℃で減圧蒸留を行い、反応混合物から溶媒及び未反応物を減圧留去し、残存する水分をシクロヘキサン250mlと共沸して除去した。前記反応混合物を、更に五酸化燐入りデシケータ中において75℃で減圧乾燥し、高粘性液体のTi含有シリコーン樹脂を得た。
【0059】
上記例で得られた各シリコーン樹脂の収率と工程時間を下記表1に示す。
【表1】
【0060】
実施例1~8では、非常に高い収率かつ短時間でTi含有シリコーン樹脂を得ることができた。比較例1では、収率こそ80%であるがTiを含まないため本発明のTi含有シリコーン樹脂を得るという課題を解決しない。また、比較例2と3は白濁し目的のTi含有シリコーン樹脂を得ることができなかった。比較例2と3で白濁した原因として、テトライソプロポキシチタンの加水分解速度がアルコキシシランよりも速く、テトライソプロポキシチタン同士の加水分解・縮合によって白濁したと考えられる。また、従来のTi含有シリコーン樹脂の製法である比較例4では、収率が悪く時間も長時間かかった。
【0061】
[赤外線吸収特性]
赤外分光光度計Nicolet iS50(Thermo Scientific社製)を用いて、KBrセル上に得られたシリコーン樹脂溶液を塗布してIRスペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。Aは比較例1、Bは実施例4、Cは実施例8のIRスペクトルを示す。
【0062】
チタン原子含有シリコーン樹脂を配合した実施例4と8では、チタン原子を含まないシリコーン樹脂を配合した比較例1では確認できなかったTi-O-Siに由来するピーク(945cm-1付近)を確認した。
【0063】
[紫外線吸収特性]
紫外分光光度計UV-2200(島津製作所製)を用いて、上記で得られたシリコーン樹脂溶液を使用して、シリコーン樹脂濃度が1g/Lのイソプロパノール溶液のUVスペクトルを、厚さ10mmの石英ガラスセルを用いて測定した。測定結果を図2に示す。Aは比較例1、Bは実施例2、Cは実施例4、Dは実施例6、Eは実施例7のUVスペクトルを示す。
【0064】
樹脂中のチタン原子含有量が多いほど紫外線吸収能の増加を確認した。これは本発明の製造方法により得られるTi含有シリコーンの用途である化粧料において好ましい性質である。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2