(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2021122392
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日高 康貴
(72)【発明者】
【氏名】小川 紘矢
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-342704(JP,A)
【文献】特開2019-61848(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/32
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部内に配置される下部電極と、
前記下部電極に結合される少なくとも1つのRF電源と、
前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に配置される電磁石ユニットと、
前記基板支持部の上方に配置される上部電極アセンブリと、を備え、
前記上部電極アセンブリは、
プラズマ暴露面を有する絶縁プレートと、
少なくとも1つのガス拡散空間を有するガス拡散プレートと、
前記絶縁プレートと前記ガス拡散プレートとの間に配置される上部電極プレートであり、前記上部電極プレートは、
平面視において前記電磁石ユニットの外側に位置する少なくとも1つの冷媒入口及び少なくとも1つの冷媒出口と、
平面視において前記少なくとも1つの冷媒入口から前記上部電極プレートの略中心の近傍まで径方向に延在する少なくとも1つの冷媒供給流路と、
前記上部電極プレートの略中心の近傍から前記少なくとも1つの冷媒出口まで延在する1又は複数の冷媒戻り流路であり、各冷媒戻り流路は、平面視において周方向に延在する複数の円弧状部分を有する、1又は複数の冷媒戻り流路と、を有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記上部電極プレートは、中央部分と、当該中央部分を囲む環状部分と、を有し、
前記中央部分において前記1又は複数の冷媒戻り流路が占める割合は、前記環状部分おいて前記1又は複数の冷媒戻り流路が占める割合よりも大きい、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記1又は複数の冷媒戻り流路の高さは、前記少なくとも1つの冷媒供給流路の高さと同一である、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの冷媒供給流路の高さは、前記1又は複数の冷媒戻り流路の高さよりも大きい、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記絶縁プレートは石英で形成され、
前記上部電極プレートは第1の導電性材料で形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記ガス拡散プレートは第2の導電性材料で形成される、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1の導電性材料及び前記第2の導電性材料は、アルミニウムである、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記上部電極プレートは、前記少なくとも1つの冷媒供給流路の近傍に形成される1又は複数の断熱部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記上部電極プレートは、前記少なくとも1つの冷媒供給流路の周囲に形成される1又は複数の断熱部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記上部電極プレートは、中央部分と、当該中央部分を囲む環状部分と、を有し、
前記1又は複数の冷媒戻り流路は、前記中央部分内に形成される複数の第1セグメントと、前記環状部分内に形成される複数の第2セグメントとを有し、
前記複数の第1セグメントの各々は、複数の溝を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記複数の第2セグメントの各々には、溝が形成されていない、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャンバ、上部電極及び電磁石アセンブリを備えたプラズマ処理装置の構成が開示されている。上部電極は、チャンバの上部開口を閉じている。電磁石アセンブリは、チャンバの上又は上方に配置され、一つ以上の環状コイルを含み、チャンバ内に磁場を生成するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、上部電極アセンブリのプラズマ暴露面の温度均一性を向上させることで、基板に対するプラズマ処理の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、前記基板支持部内に配置される下部電極と、前記下部電極に結合される少なくとも1つのRF電源と、前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に配置される電磁石ユニットと、前記基板支持部の上方に配置される上部電極アセンブリと、を備え、前記上部電極アセンブリは、プラズマ暴露面を有する絶縁プレートと、少なくとも1つのガス拡散空間を有するガス拡散プレートと、前記絶縁プレートと前記ガス拡散プレートとの間に配置される上部電極プレートであり、前記上部電極プレートは、平面視において前記電磁石ユニットの外側に位置する少なくとも1つの冷媒入口及び少なくとも1つの冷媒出口と、平面視において前記少なくとも1つの冷媒入口から前記上部電極プレートの略中心の近傍まで径方向に延在する少なくとも1つの冷媒供給流路と、前記上部電極プレートの略中心の近傍から前記少なくとも1つの冷媒出口まで延在する1又は複数の冷媒戻り流路であり、各冷媒戻り流路は、平面視において周方向に延在する複数の円弧状部分を有する、1又は複数の冷媒戻り流路と、を有する、プラズマ処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、上部電極アセンブリのプラズマ暴露面の温度均一性を向上させることで、基板に対するプラズマ処理の均一性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プラズマ処理システムの構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】上部電極アセンブリの一部を拡大して示す説明図である。
【
図6B】冷媒流路に断熱部を設けた流路断面図である。
【
図7B】冷媒流路に溝を形成した流路断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態にかかるプラズマ処理装置を備えたプラズマ処理システムついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0009】
<プラズマ処理システム>
先ず、本実施形態にかかるプラズマ処理システムについて説明する。
図1は本実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成の概略を示す縦断面図である。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、上部電極アセンブリ13を含む。上部電極アセンブリ13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理チャンバ10の上部に配置され、天板10b(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の上部又は上方には、内部にコイル15aを有する電磁石ユニット15が配置される。
【0011】
プラズマ処理チャンバ10の内部には、上部電極アセンブリ13(天板10b)、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sが形成される。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。上部電極アセンブリ13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0012】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111の上面は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域111a(基板支持面)と、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111b(リング支持面)とを有する。環状領域111bは、平面視で中央領域111aを囲んでいる。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含み、1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。
【0013】
一実施形態において本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック114は、基台113の上面に配置される。静電チャック114の上面は前述の中央領域111a及び環状領域111bを有する。
【0014】
また、図示は省略するが、基板支持部11は、リングアセンブリ112、静電チャック114及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と静電チャック114の上面との間に伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介して上部電極アセンブリ13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0016】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材(下部電極)及び/又は上部電極アセンブリ13の導電性部材(上部電極)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0017】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極及び/又は上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~160MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極及び/又は上部電極に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0018】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、下部電極に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック114内の吸着用電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0019】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10sの内部圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0021】
<上部電極アセンブリ>
次に、上述した上部電極アセンブリ13、及び当該上部電極アセンブリ13に付随するプラズマ処理装置1の構成要素について、
図1や
図2を用いて説明する。
図2は、上部電極アセンブリ13の一部を拡大して示す説明図である。
【0022】
図2に示すように、上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理チャンバ10の天板10bの一部又は全部を構成し、ガス拡散プレート120、上部電極プレート130、絶縁プレート140を含む。ガス拡散プレート120と絶縁プレート140との間に上部電極プレート130が配置され、これらは垂直方向に積層されている。換言すれば、上部電極アセンブリ13は、上から順にガス拡散プレート120、上部電極プレート130、絶縁プレート140を有している。ガス拡散プレート120には、当該ガス拡散プレート120と上部電極プレート130との間にガス拡散用の空間であるガス拡散空間13bが少なくとも1つ形成されても良い。
【0023】
上部電極プレート130は第1の導電性材料で形成される。ガス拡散プレート120は第2の導電性材料で形成される。第2の導電性材料は、第1の導電性材料と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、第1の導電性材料及び第2の導電性材料はAl(アルミニウム)である。絶縁プレート140は例えば石英等の絶縁材料で形成され、その下面はプラズマ処理空間10sに暴露されるプラズマ暴露面140aとなる。従って、絶縁プレート140は、プラズマ暴露面140aを有する。上部電極プレート130及び絶縁プレート140には、その厚み方向(垂直方向)に貫通して複数のガス導入口13a(
図2では図示せず)が形成されている。ガス導入口13aは、ガス拡散空間13b及びガス供給口13c(
図2では図示せず)を介してガス供給部20に接続されており、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。
【0024】
プラズマ処理チャンバ10の天板10bの上部又は上方には、内部にコイル15aを有する電磁石ユニット15が配置される。一実施形態において、電磁石ユニット15は、平面視で略円形である。電磁石ユニット15は、コイル15aに対し外部の電流源(図示せず)から電流を流すことで、プラズマ処理チャンバ10内に磁場を生成するように構成される。なお、電磁石ユニット15のための電源として
図1に示す電源30を用いても良い。電磁石ユニット15は、種々の構成が適用され得る。例えば特許文献1に記載された構成が電磁石ユニット15に適用されてもよい。
【0025】
上部電極プレート130には、プラズマ入熱に起因して温度が変動する絶縁プレート140をターゲット温度に調節するように構成される少なくとも1つの冷媒流路131を内部に有している。冷媒流路131には、上部電極プレート130の側方(周縁部)において冷媒出入口134(冷媒入口134a、冷媒出口134b)及び供給配管135を介して装置外部のチラー136との間で循環するブライン又はガス等の冷媒(伝熱流体)が流れる。一実施形態において、上部電極プレート130の周縁部には、供給配管135を支持し、供給配管135と冷媒出入口134との接続箇所をシールするシール部材138が配置される。冷媒出入口134は複数設けられても良く、冷媒入口134aと冷媒出口134bは略同じ位置でも良く、あるいは異なる位置に設けられても良い。なお、冷媒流路131の具体的な形状については図面を参照して後述する。
【0026】
ここで、プラズマ処理チャンバ10の天板10bの上部又は上方には、図示のように電磁石ユニット15が配置されている。そのため、冷媒出入口134は、平面視(径方向)において電磁石ユニット15よりも外側の周縁部に配置されるように設計される。なお、
図2では上部電極アセンブリ13の一部を拡大して図示し、冷媒出入口134を1箇所のみ図示しているが、冷媒出入口134は2以上の複数箇所に設けられても良く、例えば、平面視で両端部に2箇所設けられても良い。
【0027】
絶縁プレート140は、プラズマ暴露面140aを有しており、プラズマ処理空間10sからプラズマ暴露面140aへのプラズマ入熱により高温となる。上部電極アセンブリ13の構成上、径方向中央部に比べ周縁部の方が抜熱能力が高いため、絶縁プレート140の温度は周縁部に比べ中央部が高温となる傾向がある。絶縁プレート140は例えば厚さ5mm程度の薄肉部材であり、内部に流路を形成することが難しいため、その上部に位置する上部電極プレート130内に冷媒流路131を形成し、絶縁プレート140の温調を行う構成が採られている。
【0028】
<プラズマ処理装置による基板の処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1における基板Wの処理方法の一例について説明する。なお、プラズマ処理装置1においては、基板Wに対して、エッチング処理、成膜処理、拡散処理などの各種プラズマ処理が行われる。
【0029】
先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wが搬入され、基板支持部11の静電チャック114上に基板Wが載置される。次に、静電チャック114の吸着用電極に電圧が印加され、これにより、静電力によって基板Wが静電チャック114に吸着保持される。
【0030】
静電チャック114に基板Wが吸着保持されると、次に、プラズマ処理チャンバ10の内部が真空環境下まで減圧される。次に、ガス供給部20から上部電極アセンブリ13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給される。また、第1のRF生成部31aからプラズマ生成用のソースRF電力が上部電極又は下部電極に供給され、これにより、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。また、第2のRF生成部31bから下部電極にバイアスRF電力が供給されてもよい。そして、プラズマ処理空間10sにおいて、生成されたプラズマの作用によって、基板Wにプラズマ処理が施される。この時、電磁石ユニット15によりプラズマ処理空間10s内に磁場が生成される。
【0031】
ここで、基板Wのプラズマ処理に際しては、プラズマ処理空間10sに隣接して配置された上部電極アセンブリ13の絶縁プレート140が、プラズマ入熱により温度変動する。
【0032】
そこで本実施形態においては、上部電極プレート130に内包された冷媒流路131により、絶縁プレート140の温度制御を行う。具体的には、例えばプラズマ入熱により絶縁プレート140の温度が上昇した際に冷媒流路131の内部に伝熱流体を通流させることで上部電極プレート130の温度を低下させる。これにより絶縁プレート140から上部電極プレート130への伝熱を促進して絶縁プレート140の温度を低下させる。
【0033】
プラズマ処理を終了する際には、第1のRF生成部31aからのソースRF電力の供給及びガス供給部20からの処理ガスの供給が停止される。プラズマ処理中にバイアスRF電力を供給していた場合には、当該バイアスRF電力の供給も停止される。
【0034】
次いで、静電チャック114による基板Wの吸着保持が停止され、プラズマ処理後の基板W、及び静電チャック114の除電が行われる。その後、基板Wを静電チャック114から脱着し、プラズマ処理装置1から基板Wを搬出する。こうして一連のプラズマ処理が終了する。
【0035】
<冷媒流路>
以下、上述した冷媒流路131の具体的な構成について図面を参照して説明する。
図3は冷媒流路131の構成についての概念図である。
【0036】
プラズマ処理チャンバ10の天板10bの上部又は上方に配置された電磁石ユニット15を含む装置構成においては、電磁石ユニット15を含まない装置構成とは異なり、冷媒出入口134は、上部電極プレート130の周縁部に配置される。即ち、冷媒出入口134は、平面視で電磁石ユニット15の外側に配置される。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係る構成では、冷媒の入口(IN、冷媒入口134a)から供給された冷媒はほぼ最短距離でもって径方向中央に供給され、径方向中央から冷媒の出口(OUT、冷媒出口134b)に向かって流れるように構成される。本実施形態に係る構成では、図示のように、冷媒流路131における往路(冷媒供給流路131a)は平面視で上部電極プレート130の径方向に沿って配置されるような形状を有している。また、冷媒流路131における復路(冷媒戻り流路131b)は平面視で上部電極プレート130の全面にわたって配置されるような形状を有している。即ち、冷媒供給流路131aは平面視で上部電極プレート130の径方向に略直線形状であり最短距離となるような形状を有し、冷媒戻り流路131bは平面視で上部電極プレート130のなるべく広い範囲にわたるような蛇行形状を有している。ここで、「蛇行形状」とは、例えば複数の径の異なる環状流路を互いに繋げた形状である。また、「略直線形状」とは、例えば径方向に直線状に伸びる流路であるが、その一部に多少の曲線部を有しても良い。
【0038】
図4Aは、冷媒流路の流路図である。また、
図4Bはその一部(矩形破線部)拡大図である。
【0039】
一実施形態において、上部電極プレート130は、平面視で円形であり、平面視において電磁石ユニット15の外側に位置する少なくとも1つの冷媒入口134a及び少なくとも1つの冷媒出口134bを有する。
図3及び
図4Aの例では、少なくとも1つの冷媒入口134aは、上部電極プレート130の両側に2つの冷媒入口134a、134aを有し、少なくとも1つの冷媒出口134bは、上部電極プレート130の両側に2つの冷媒出口134b、134bを有する。
【0040】
また、上部電極プレート130は、平面視において少なくとも1つの冷媒入口134aから上部電極プレート130の略中心Cの近傍まで径方向に延在する少なくとも1つの冷媒供給流路131aを有する。冷媒供給流路131aは、略直線状に形成される。
図3及び
図4Aの例では、少なくとも1つの冷媒供給流路131aは、右側の冷媒入口134a及び左側の冷媒入口134aから上部電極プレート130の略中心Cの近傍に向かってそれぞれ延在する2つの冷媒供給流路131a、131aを有する。
【0041】
さらに、上部電極プレート130は、上部電極プレート130の略中心Cの近傍から少なくとも1つの冷媒出口134bまで延在する1又は複数の冷媒戻り流路131bを有する。各冷媒戻り流路131bは、平面視において周方向に延在する複数の円弧状部分131bxと、径方向に隣り合う2つの円弧状部分131bxを接続する複数の折り返し部分131byとを有する。一実施形態において、複数の円弧状部分131bxは、異なる径を有する複数の円の円周上にそれぞれ配置され、折り返し部分131byは、内側の円弧状部分131bxと外側の円弧状部分131bxとを接続する。
【0042】
図3及び
図4Aの例では、複数の冷媒戻り流路131bは、互いに反対方向に向かう2つの冷媒戻り流路131bを有する。
図3及び
図4Aにおいて、左側の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において右側の冷媒供給流路131aに接続され、左側の冷媒出口134bに接続される。また、
図3及び
図4Aにおいて、複数の冷媒戻り流路131bは、互いに反対方向に向かう2つの冷媒戻り流路131bを有する。右側の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において左側の冷媒供給流路131aに接続され、右側の冷媒出口134bに接続される。
【0043】
一実施形態において、複数の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において少なくとも1つの冷媒供給流路131aから分岐して形成される。
図3及び
図4Aの例では、複数の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において左側の冷媒供給流路131aから分岐した2つの左側冷媒戻り流路131b、131bを有する。これら2つの左側冷媒戻り流路131b、131bは、左側の冷媒出口134bの近傍において合流し、左側の冷媒出口134bに接続される。また、
図3及び
図4Aにおいて、複数の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において右側の冷媒供給流路131aから分岐した2つの右側冷媒戻り流路131b、131bを有する。これら2つの右側冷媒戻り流路131b、131bは、右側の冷媒出口134bの近傍において合流し、右側の冷媒出口134bに接続される。従って、複数の冷媒戻り流路131bは、上部電極プレート130の略中心Cの近傍において少なくとも1つの冷媒供給流路131aに接続される。
【0044】
また、
図4Aに示すように、一実施形態において、上部電極プレート130はその中心部近傍の中央部分130aと、中央部分130aの外縁に位置する環状部分130bを有しても良い。即ち、上部電極プレート130は、中央部分130aと、当該中央部分130aを囲む環状部分130bとを有する。一実施形態においては、冷媒流路131の冷媒戻り流路131bは、中央部分130aに位置する流路部分と、環状部分130bに位置する流路部分と、の密度を異なるものとしても良い。即ち、冷媒流路131において、平面視で中央部分130aに対する冷媒流路の割合を、平面視で環状部分130bに対する冷媒流路の割合よりも大きくなるように構成しても良い。また、中央部分130aにおける流路同士の間隔が、環状部分130bにおける流路同士の間隔よりも小さくなるように構成しても良い。
図4Aに示すように、一実施形態において、中央部分130aにおいて複数の冷媒戻り流路131bが占める割合は、環状部分130bにおいて複数の冷媒戻り流路131aが占める割合よりも大きい。
【0045】
なお、上部電極プレート130における中央部分130aと環状部分130bの範囲は任意に設計され、絶縁プレート140のプラズマ暴露面140aに要求される温度分布に応じて任意に設計できる。一例として、絶縁プレート140の温度上昇が顕著な範囲に対応する範囲を略円形状(図中の円形破線部)で規定し、その境界線130cの内側を中央部分130a、外側を環状部分130bとしても良い。
【0046】
また、冷媒流路131において冷媒供給流路131aと冷媒戻り流路131bの高さは任意に設計可能である。
図5は冷媒流路131の概略俯瞰図である。
図5に示すように、冷媒流路131において、1又は複数の冷媒供給流路131aの高さは、少なくとも1つの冷媒戻り流路131bの高さは同一に構成されても良い。あるいは、冷媒流路131において、少なくとも1つの冷媒供給流路131aの高さは、1又は複数の冷媒戻り流路131bの高さよりも大きくなるように構成されても良い。
【0047】
また、一実施形態においては、断面視において冷媒流路131の流路周囲に断熱部を設けた構成を有していても良い。
図6は冷媒流路131の周囲に断熱部を設けた構成の説明図であり、
図6Aが一般的な流路断面図、
図6Bが断熱部を設けた流路断面図を示している。
【0048】
一実施形態において、上部電極プレート130は、少なくとも1つの冷媒供給流路131aの近傍に形成される1又は複数の断熱部150を有する。断熱部150の配置は任意であるが、例えば
図6Bに示す4つの断熱部150のうち、いずれか1つ又は複数の断熱部150を冷媒供給流路131aの近傍に形成しても良い。また、一実施形態において、上部電極プレート130は、少なくとも1つの冷媒供給流路131aの周囲に形成される1又は複数の断熱部150を有する。例えば
図6Bに示すように4つの断熱部150を冷媒供給流路131aの周囲、即ち上下左右を囲うように形成されても良い。あるいは、1つの環状の断熱部150を冷媒供給流路131aの周囲を囲うように形成されても良い。
【0049】
1又は複数の断熱部150は、少なくとも1つの冷媒供給流路131aと上部電極プレート130との間の熱交換を遮断又は低減するように構成されている。断熱部150は、サーマルブレイクとも呼ばれる。一実施形態において、1又は複数の断熱部150は、上部電極プレート130内に形成された1又は複数の空洞である。なお、1又は複数の空洞内に断熱材が配置されてもよい。
【0050】
本実施形態に係る構成では、冷媒流路131の冷媒供給流路131aの近傍あるいは周囲にのみ断熱部150を設け、冷媒戻り流路131bは
図6Aに示す一般的な流路断面としても良い。これにより、冷媒流路131の冷媒供給流路131aにおける冷媒温度の上昇を抑制させることが可能となり、冷媒戻り流路131bにおける冷却効率の向上が図られる。
【0051】
図3、
図4を参照して上述したように、本実施の形態に係る構成では、冷媒流路131の冷媒供給流路131aを上部電極プレート130の径方向中央に向かって略直線形状であり最短距離となるような形状としている。また、冷媒流路131の冷媒戻り流路131bを上部電極プレート130のなるべく広い範囲にわたるような蛇行形状としている。そして、上述した断熱部150を設けて冷媒供給流路131aにおける冷媒温度の上昇を抑制する。これにより、上部電極プレート130の周縁部(例えば
図4Aにおける環状部分130b)に比べ中央部(例えば
図4Aにおける中央部分130a)をより効果的に冷却することが可能となる。また、上部電極プレート130に接触する絶縁プレート140においても同様の冷却分布に冷却を行うことが可能となる。
【0052】
また、一実施形態においては、冷媒流路131の流路断面形状に複数の溝を付与し、その熱交換面積の増加を図る構成を有しても良い。
図7は冷媒流路131の断面に複数の溝を形成した構成の説明図であり、
図7Aが一般的な流路断面図、
図7Bが溝を形成した流路断面図を示している。
【0053】
図4Aに示すように、一実施形態において、複数の冷媒戻り流路131bは、中央部分130a内に形成される複数の第1セグメント131b1と、環状部分130b内に形成される複数の第2セグメント131b2とを有する。複数の第1セグメント131b1の各々は、
図7Bに示す複数の溝152を有する。複数の第2セグメント131b2の各々には、溝が形成されていない。
【0054】
図7Bに示すように、第1セグメント131b1の流路断面には、複数の溝部152が設けられる。
図7Bの例では、複数の溝152は、第1セグメント131b1の上部と下部に設けられているが、これら複数の溝152の配置は任意である。一実施形態に係る構成では、上述したように、複数の第1セグメント131b1の各々は溝152を有し、複数の第2セグメント131b2の各々は
図7Aに示す一般的な流路断面でも良い。これにより、上部電極プレート130の周縁部(例えば
図4Aにおける環状部分130b)に比べ中央部(例えば
図4Aにおける中央部分130a)をより効果的に冷却することができ、絶縁プレート140においても同様の冷却分布に冷却を行うことが可能となる。
【0055】
<本実施形態の作用効果>
以上の実施形態では、上部電極アセンブリ13において、プラズマ入熱に起因して温度が変動する絶縁プレート140を、その温度分布に応じた形状や構成の冷媒流路131を絶縁プレート140に接触する上部電極プレート130の内部に設ける。これにより、絶縁プレート140の表面温度を面内均一化させることができる。
【0056】
特に、電磁石ユニット15を備えたプラズマ処理装置1においては、冷媒出入口134を電磁石ユニット15の外側に設ける場合がある。このような構成であっても、上部電極プレート130の周縁部に比べ中央部をより効果的に冷却することができ、絶縁プレート140においても同様の冷却分布に冷却を行うことができる。
【0057】
即ち、絶縁プレート140を効果的に冷却し、その表面温度を面内均一化させることで、基板に対するプラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 上部電極アセンブリ
15 電磁石ユニット
31 RF電源
120 ガス拡散プレート
130 上部電極プレート
131 冷媒流路
131a 冷媒供給流路
131b 冷媒戻り流路
131bx 円弧状部分
134a 冷媒入口
134b 冷媒出口
140 絶縁プレート
140a プラズマ暴露面
W 基板