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特許7531471リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池 図2
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  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240802BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240802BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240802BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021176656
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2019199978の分割
【原出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2022017425
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133787
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】洪 淳基
(72)【発明者】
【氏名】金 榮基
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ジュン▼浚
(72)【発明者】
【氏名】李 淳律
(72)【発明者】
【氏名】蔡 榮周
(72)【発明者】
【氏名】崔 益圭
(72)【発明者】
【氏名】洪 明子
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-072092(JP,A)
【文献】特開2009-193686(JP,A)
【文献】特開2011-086603(JP,A)
【文献】特開2006-073482(JP,A)
【文献】特開2018-014208(JP,A)
【文献】特開2009-266433(JP,A)
【文献】特表2018-523899(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057078(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含む複数の1次粒子が凝集した2次粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記2次粒子は、コアおよびコアを取り囲む表面層を含み、
前記2次粒子のコアは複数の1次粒子を含み、
前記2次粒子の表面層は、複数の1次粒子を含み、前記表面層は、前記1次粒子の間にコバルト系リチウム遷移金属酸化物を含み、
前記2次粒子の表面層は、前記2次粒子の表面から200nmの深さに該当する領域であり、
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物は、前記2次粒子の表面層にのみ存在し、
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である、リチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Li Co 1-x
(前記化学式1中、0.9≦a≦1.05、0.8≦x≦1.0、Mは、Ni、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【請求項2】
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物の含有量は、正極活物質の総量100重量%を基準にして5~15重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池の微分容量(dQ/dV)-電圧の充電曲線は、3.8V~4.0Vの範囲でピーク値を持たない、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式2]
LiNiCo
(前記化学式2中、0.9≦a≦1.05、0.4≦x≦0.95、0.1≦y≦0.3、0.1≦z≦0.3、x+y+z=1、Mは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【請求項5】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物である、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式2]
LiNiCo
(前記化学式2中、0.9≦a≦1.05、0.4≦x≦0.95、0.1≦y≦0.3、0.1≦z≦0.3、x+y+z=1、Mは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【請求項6】
前記正極活物質は、表面層上に存在するコバルト系リチウム遷移金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
ニッケル系遷移金属水酸化物およびリチウム塩を混合して第1混合物を製造し;
前記第1混合物を4℃/min~6℃/minの急速昇温条件で800℃~1000℃で1次熱処理して残留リチウムを含有する第1焼成物を製造し;
前記第1焼成物にコバルト系遷移金属水酸化物を混合して750℃~950℃で2次熱処理して、
請求項1に記載の正極活物質を得る、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記第1混合物でLi/(Ni+Co+Mn)のモル比は0.99以上である、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記急速昇温条件は、25℃~100℃から1次熱処理の反応温度である800℃~1000℃まで昇温する工程を含む、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記1次熱処理は、空気雰囲気または酸化性ガス雰囲気で1時間~4時間行われる、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記コバルト系遷移金属水酸化物はCo(OH)である、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記リチウム塩は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウムおよび硝酸リチウムの中から選択される少なくとも一つである、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;および
電解質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の小型化、高性能化に符合するためにリチウム二次電池の小型化、軽量化以外に高エネルギー密度化が重要になっている。また、電気自動車(Electric Vehicle)などの分野に適用されるため、リチウム二次電池の高容量および高温、高電圧での安定性が重要になっている。
【0003】
前記用途に符合するリチウム二次電池を実現するため、多様な正極活物質が検討されている。
【0004】
Ni、Co、Mnなどを全て含むニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、従来のLiCoOに比べて単位重量当たりの高い放電容量を提供するが、低い充填密度によって単位体積当たりの容量および放電容量は、相対的に低い。また、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、高電圧での駆動時に安全性が低下することがある。
【0005】
そこで、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の充填密度および熱安定性を向上させ、かつ正極極板の合剤密度も増加させることができる方案が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態は、充放電容量、効率、およびサイクル寿命に優れた正極活物質を提供する。
【0007】
本発明の他の一実施形態は、前記正極活物質の製造方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、複数の1次粒子が凝集した2次粒子を含むニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含み、前記2次粒子は、コアおよびコアを取り囲む表面層を含み、前記表面層は、複数の1次粒子および前記1次粒子の間にナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物を含む、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0010】
前記2次粒子は、平均粒径D50が2μm~5μmである小粒径の2次粒子と平均粒径が15μm~20μmである大粒径の2次粒子とを含むことができる。
【0011】
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物の平均粒径は、100nm~200nmであり得る。
【0012】
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物の含有量は、正極活物質の総量100重量%を基準にして5~15重量%であり得る。
【0013】
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である:
[化学式1]
LiCo1-x
(前記化学式1中、0.9≦a≦1.05、0.8≦x≦1.0、Mは、Ni、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【0014】
前記表面層は、前記正極活物質表面から150nm~200nm深さに該当する領域であり得る。
【0015】
前記リチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池の微分容量(dQ/dV)-電圧の充電曲線は、3.8V~4.0Vの範囲でピーク値を持たないものであり得る。
【0016】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物である:
[化学式2]
LiNiCo
(前記化学式2中、0.9≦a≦1.05、0.4≦x≦0.95、0.1≦y≦0.3、0.1≦z≦0.3、x+y+z=1、Mは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【0017】
前記大粒径の2次粒子と小粒径の2次粒子との混合比は、90:10~50:50の重量比であり得る。
【0018】
前記小粒径の2次粒子は、針状型、板状型またはこれらの組み合わせの形態を有し得る。
【0019】
前記正極活物質は、表面層上に存在するコバルト系リチウム遷移金属酸化物をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の他の一実施形態は、ニッケル系遷移金属水酸化物およびリチウム塩を混合して第1混合物を製造し;前記第1混合物を急速昇温条件で800°C~1000°Cで1次熱処理して、残留リチウムを含有する第1焼成物を製造し;前記第1焼成物にコバルト系遷移金属水酸化物を混合して750°C~950°Cで2次熱処理して、前記正極活物質を得る、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0021】
前記ニッケル系遷移金属水酸化物は、平均粒径が15μm~20μmである大粒径の2次粒子と平均粒径が2μm~5μmである小粒径の2次粒子とを90:10~50:50の重量比で混合することができる。
【0022】
前記第1混合物でLi/(Ni+Co+Mn)のモル比は、0.99以上であり得る。
【0023】
前記急速昇温条件は4℃/min~6℃/minで、25℃~100℃から1次熱処理の反応温度である800℃~1000℃まで昇温する工程を含むことができる。
【0024】
前記1次熱処理は、空気雰囲気または酸化性ガス雰囲気で1時間~4時間行うことができる。
【0025】
前記コバルト系遷移金属水酸化物は、Co(OH)であり得る。
【0026】
前記コバルト系遷移金属水酸化物の平均粒径は、100nm~200nmであり得る。
【0027】
前記リチウム塩は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、および硝酸リチウムの中から選択される少なくとも一つ以上であり得る。
【0028】
前記小粒径の2次粒子は、針状型、板状型またはこれらの組み合わせの形態を有し得る。
【0029】
本発明のさらに他の一実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0030】
正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。
【0031】
コバルト系リチウム遷移金属酸化物を含み、高温高電圧に有利なリチウム二次電池を得ることができる。
【0032】
高電圧でのガス発生量が減少して、高温寿命特性および充放電効率が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施例1で製造された正極活物質の断面をEDS(energy dispersive spectroscopy)で分析してコバルト(Co)元素の分布を示す写真である。
図3a】実施例1、実施例2および比較例1~3によるリチウム二次電池の微分容量(dQ/dV)-電圧の充電曲線を示すグラフである。
図3b図3aを拡大したグラフである。
図4】実施例1、実施例2、および比較例1~3で製造された半電池の高温サイクル寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これにより本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇により定義されるだけである。
【0035】
本明細書で特別な言及がない限り、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるというとき、これは他の部分の“直上に”ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0036】
本発明の一実施形態は、複数の1次粒子が凝集した2次粒子を含むニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含む。
【0037】
前記2次粒子は、平均粒径D50が2μm~5μmである小粒径の2次粒子と平均粒径が15μm~20μmである大粒径の2次粒子の中から選択される少なくとも一つを含むことができる。つまり、前記2次粒子は、小粒径の2次粒子、大粒径の2次粒子またはこれらの混合物であり得、例えば、小粒径の2次粒子の平均粒径は2μm~3μm、大粒径の2次粒子の平均粒径は17μm~20μmであり得る。前記2次粒子の平均粒径が前記範囲に含まれると、正極活物質粉末のペレット密度と正極の合剤密度を向上させることができ、後述するナノサイズの平均粒径を有するコバルト系リチウム遷移金属酸化物が前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面層に良好に吸収され得る。
【0038】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物が大粒径の2次粒子と小粒径の2次粒子との混合物からなる場合、これらの混合比は90:10~50:50、例えば90:10~70:30、または80:20であり得る。前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の混合比が前記範囲を満足すると、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。
【0039】
前記2次粒子は、コアおよびコアを取り囲む表面層を含み、前記表面層は、複数の1次粒子および前記1次粒子の間にナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物を含む。前記ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物が前記表面層に存在する1次粒子の間に含まれる場合、例えば、前記2次粒子の表面層に吸収される方式で含まれる場合には、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。また、コバルト系リチウム遷移金属酸化物は、高温高電圧に有利な特性を有するため、高電圧でのガス発生量が減少して、高温寿命特性および充放電効率が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【0040】
前記リチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池の微分容量(dQ/dV)-電圧の充電曲線は、3.8V~4.0Vの電圧範囲でピーク値を持たないことがある。前記電圧範囲で前記ピーク値が現れない場合、ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物が前記2次粒子の表面層に吸収される方式で存在することを意味する。これにより、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができ、特に、コバルト系リチウム遷移金属酸化物は高温高電圧に有利な特性を有するため、高電圧でのガス発生量が減少して、高温寿命特性および充放電効率が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【0041】
また、前記表面層は、前記正極活物質表面から150nm~200nm深さに該当する領域であり得る。この時、表面は正極活物質の最外郭面を意味する。
【0042】
前記ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である。
[化学式1]
LiCo1-x
(前記化学式1中、0.9≦a≦1.05、0.8≦x≦1.0、Mは、Ni、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【0043】
本発明の一実施形態で、前記ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiCoOであり得る。
【0044】
前記ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物は1μm未満、例えば、100nm~800nm、100nm~600nm、100nm~400nm、100nm~200nm、100nm~180nm、100nm~160nm、100nm~140nm、または100nm~120nmの平均粒径を有し得る。コバルトリチウム遷移金属酸化物の平均粒径が前記範囲に含まれると、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができ、前記ナノサイズの平均粒径を有するコバルト系リチウム遷移金属酸化物は、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面層に良好に吸収され得る。
【0045】
前記コバルト系リチウム遷移金属酸化物の含有量は、正極活物質の総量100重量%を基準にして5重量%~15重量%、例えば5重量%~10重量%、5重量%~9重量%、または5重量%~7重量%であり得る。コバルト系リチウム遷移金属酸化物の含有量が前記範囲に含まれると、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。
【0046】
前記正極活物質でニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物である。
[化学式2]
LiNiCo
(前記化学式2中、0.9≦a≦1.05、0.4≦x≦0.95、0.1≦y≦0.3、0.1≦z≦0.3、x+y+z=1、Mは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、およびCeより選択される少なくとも一つの金属元素である。)
【0047】
Niモル比を示すxは0.4~0.95、0.45~0.80、0.45~0.70、0.45~0.65、0.50~0.60、例えば0.53~0.57であり得る。つまり、Niは、正極活物質のリチウムを除いた金属全体100at%に対して40at%~95at%、45at%~80at%、45at%~70at%、45at%~65at%、50at%~60at%、例えば、53at%~57at%で含まれる。これにより、充放電効率および寿命特性が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【0048】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の小粒径の2次粒子は、針状型、板状型またはこれらの組み合わせの形態を有し得る。前記小粒径の2次粒子が前記形態を有する場合、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。
【0049】
前記正極活物質は、表面層上に存在するコバルト系リチウム遷移金属酸化物をさらに含むことができる。前記表面層上に存在するコバルト系リチウム遷移金属酸化物は、均一な層状または不均一な島状に存在することがあり、これらの厚みは80nm~120nmであり得る。これにより、高電圧でのガス発生量が減少して、高温寿命特性および充放電効率が向上したリチウム二次電池を得ることができる。
【0050】
本発明の他の実施形態は、前記正極活物質の製造方法を提供する。以下、前記製造方法について詳しく説明する。
【0051】
ニッケル系遷移金属水酸化物およびリチウム塩を混合して第1混合物を製造し;前記 第1混合物を急速昇温条件で800°C~1000°Cで1次熱処理して未反応の残留リチウムを含有する第1焼成物を製造する。
【0052】
前記ニッケル系遷移金属水酸化物は、平均粒径が15μm~20μmである大粒径の2次粒子と平均粒径が2μm~5μmである小粒径の2次粒子とを90:10~50:50の重量比で混合することができる。
【0053】
前記第1混合物においてLi/(Ni+Co+Mn)のモル比は0.99以上、例えば、1.00~1.25の範囲で調節することができる。混合物においてLi/(Ni+Co+Mn)のモル比が前記範囲に含まれると、1次熱処理で製造される第1焼成物のうちニッケル系リチウム遷移金属酸化物の表面に多量のリチウムを残留させることができる。このような残留リチウムは、2次熱処理段階でコバルト系遷移金属水酸化物と反応して正極活物質を製造するのに用いられる。
【0054】
前記急速昇温条件は、第1混合物を4℃/min~6℃/minの昇温速度で、25℃~100℃から1次熱処理の反応温度である800℃~1000℃まで昇温する工程を含むことができる。このような工程により陽イオン混合(cation mixing)を防止し、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の表面に多量の未反応の残留リチウムを発生させることができる。
【0055】
前記1次熱処理は、空気雰囲気または酸化性ガス雰囲気において、反応温度である800℃~1000℃で1~4時間行うことができる。前記1次熱処理は、高温(800℃~1000℃)、および空気雰囲気または酸化性ガス雰囲気で短時間(1~4時間)熱処理することによって、反応に参加しないニッケル系遷移金属水酸化物が多量に存在することになる。したがって、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の表面に多量の未反応の残留リチウムが含まれ、NiのNi2+への変化を抑制しLiサイトにNi2+の移動を抑制して陽イオン混合を改善することができる。
【0056】
一方、酸化性ガス雰囲気は、空気に酸素をさらに含む気体雰囲気をいう。
【0057】
酸化性ガス雰囲気での酸素の含有量は、20体積%~40体積%であり得る。
【0058】
前記1次熱処理工程は、装入高さを5cm以上、例えば5cm~8cmとすることができる。このように熱処理工程を、混合物を熱処理設備に5cm以上の高さから投入しながら実施すれば、生産量が増加して生産コストに比べて経済的であり、第1焼成物の表面に残留する未反応のリチウム量が増加して、以後の2次熱処理過程で正極活物質を良好に形成できる。
【0059】
前記第1焼成物にコバルト系遷移金属水酸化物を混合し、750°C~950°Cで2次熱処理を行う。
【0060】
前記2次熱処理は、5℃/min~10℃/minで25℃~100℃から2次熱処理の反応温度である750℃~950℃まで昇温し、750℃~950℃で10時間~15時間維持した後、5℃/min~10℃/minで25℃~100℃まで減温する条件で行うことができる。
【0061】
前記2次熱処理工程は、酸素の含有量が40体積%~100体積%の酸素雰囲気で行うことができる。
【0062】
前記コバルト系遷移金属水酸化物は、Co(OH)であり得る。
【0063】
前記コバルト系遷移金属水酸化物は、平均粒径が100nm~200nmであり得る。
【0064】
前記平均粒径範囲に該当するコバルト系遷移金属水酸化物を使用する場合、2次熱処理過程で製造されるリチウムコバルト系遷移金属酸化物は、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子表面に単純にコーティングされるのではなく、前記2次粒子の表面層の1次粒子の間に吸収される方式で含まれる。
【0065】
前記コバルト系遷移金属水酸化物は、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にして、ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物が5~15重量%で含まれるように調節して投入することができる。
【0066】
コバルト系遷移金属水酸化物の含有量が前記範囲に該当する場合、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。
【0067】
前記リチウム塩は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、および硝酸リチウムの中から選択される少なくとも一つであり得る。
【0068】
前記小粒径のニッケル系遷移金属水酸化物の2次粒子は、針状型、板状型、またはこれらの組み合わせの形態を有し得る。前記正極活物質の製造方法で製造された小粒径のニッケル系遷移金属酸化物の2次粒子は、針状型、板状型、またはこれらの組み合わせの形態をそのまま維持できる。これにより、正極活物質粉末のペレット密度および正極の合剤密度を向上させることができる。これに対し、大粒径のニッケル系遷移金属酸化物の2次粒子と小粒径のニッケル系遷移金属酸化物の2次粒子をそれぞれ別途製造した後、これを混合し熱処理して正極活物質を製造する場合、最終生成物での小粒径のニッケル系遷移金属酸化物の2次粒子は球状であり得る。このような場合、前記ペレット密度および合剤密度の改善効果は現れないことがある。
【0069】
前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法により、前記一実施形態による複数の1次粒子が凝集した2次粒子を含むニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含み、前記2次粒子は、コアおよびコアを取り囲む表面層を含み、前記表面層は、複数の1次粒子および前記1次粒子の間にナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物を含む、リチウム二次電池用正極活物質を製造することができる。
【0070】
本発明の他の一実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;前記正極と負極との間に介するセパレータ;および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0071】
前記正極は、電流集電体および前記電流集電体に形成され、正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0072】
前記正極活物質層で、前記正極活物質の含有量は、正極活物質層の総量に対して90重量%~98重量%であり得る。また、前記正極活物質層は、バインダーおよび導電剤をさらに含むことができる。前記バインダーおよび前記導電剤の含有量は、正極活物質層の総量に対して、それぞれ1重量%~5重量%であり得る。
【0073】
前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレイテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
前記導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0075】
前記電流集電体としては、アルミ箔(foil)、ニッケル箔、またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記負極は、電流集電体および前記電流集電体に形成される負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0077】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質または遷移金属酸化物を含む。
【0078】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素物質であって、リチウムイオン二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質であれば如何なるものでも使用可能であり、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0079】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnより選択される金属の合金を使用することができる。
【0080】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせから選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせから選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうち少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせから選択されるものを使用することができる。
【0081】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物またはリチウムチタン酸化物などが挙げられる。
【0082】
前記負極活物質層において、負極活物質の含有量は、負極活物質層の総量に対して95重量%~99重量%であり得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質層はバインダーを含み、選択的に導電剤をさらに含むこともできる。前記負極活物質層において、バインダーの含有量は、負極活物質層の総量に対して1重量%~5重量%であり得る。また、導電剤をさらに含む場合、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電剤を1重量%~5重量%使用することができる。
【0084】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0085】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、エチレンプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
前記水溶性バインダーとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリレイテッドスチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0087】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量%に対して0.1重量%~3重量%であり得る。
【0088】
前記導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0089】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせから選択されるものを使用することができる。
【0090】
前記電解質は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0091】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質としての役割をする。
【0092】
前記非水性有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバルロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、Rは、二重結合方向環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0093】
前記有機溶媒は、単独または一つ以上を混合して使用することができ、一つ以上を混合して使用する場合、混合比率は目的とする電池性能に応じて適切に調節することができ、これは当業者には広く理解され得る。
【0094】
また、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレンまたはこれらの組み合わせから選択されるものである。
【0095】
前記電解質は、ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0096】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、またはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0097】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割をする物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato)borate:LiBOB)より選択される一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用するとよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンを効果的に移動させることができる。
【0098】
リチウム二次電池の種類に応じて、正極と負極との間にセパレータが存在することもできる。前記セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0099】
図1に、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示す。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、角型を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、円筒型、パウチ型、ボタン型、コイン型など多様な形態の電池に適用され得る。
【0100】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極10と負極20との間にセパレータ30を介して巻き取られた電極組立体40、および前記電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。前記正極10、前記負極20および前記セパレータ30は、電解液(図示せず)に含浸されている。
【実施例
【0101】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。ただし、下記実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明は下記実施例に限定されない。
【0102】
実施例1
(正極活物質製造)
リチウムカーボネート(LiCO)およびニッケル系遷移金属水酸化物であるNi0.55Co0.25Mn0.20(OH)を、Li:(Ni+Co+Mn)が1.01:1.00のモル比になるように混合して第1混合物を製造した。この時、Ni0.55Co0.25Mn0.20(OH)は、組成が同一で互いに異なる粒径を有する大粒径のニッケル系リチウム遷移金属水酸化物および小粒径のニッケル系リチウム遷移金属水酸化物を8:2の重量比で混合したものである。
【0103】
前記第1混合物を5℃/minで25℃から900℃まで昇温し、900℃で2時間維持した後、5℃/minで25℃まで減温する条件で1次熱処理して、Li1.01Ni0.55Co0.25Mn0.20で表される大粒径、およびLi1.01Ni0.55Co0.25Mn0.20で表される小粒径のニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含む第1焼成物を製造した。一方、前記1次熱処理工程は、装入高さを5cmとし、大気雰囲気で行った。
【0104】
第1焼成物にCo(OH)を、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にしてナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物が5重量%で含まれるように調節して混合した。次に、5℃/minで25℃から850℃まで昇温し、850℃で10時間維持した後、5℃/minで25℃まで減温する条件で2次熱処理して、LiNi0.55Co0.25Mn0.20で表される大粒径のニッケル系リチウム遷移金属酸化物、およびLiNi0.55Co0.25Mn0.20で表される小粒径のニッケル系リチウム遷移金属酸化物を8:2の重量比で混合し、前記大粒径および小粒径のニッケル系リチウム遷移金属酸化物の表面層にLiCoOを含む正極活物質を製造した。一方、前記2次熱処理は、酸素(O)雰囲気で行った。
【0105】
この時、前記大粒径のニッケル系リチウム遷移金属水酸化物Ni0.55Co0.25Mn0.20(OH)の平均粒径D50は19.5μmであり、前記小粒径のニッケル系リチウム遷移金属水酸化物Ni0.55Co0.25Mn0.20(OH)の平均粒径D50は2.6μmであり、前記Co(OH)の平均粒径D50は100nmであった。
【0106】
(正極の製造)
前記正極活物質94重量%、ケッチェンブラック3重量%、およびポリフッ化ビニリデン3重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをAl箔にコーティング、乾燥および圧延して正極を製造した。
【0107】
(半電池の製造)
製造された正極、リチウム金属対極および電解質を使用し、通常の方法で2032型の半電池を製造した。前記電解質としては、1.0M LiPFが溶解されたエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(50:50の体積比)を使用した。
【0108】
実施例2
第1焼成物にCo(OH)を、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にして、ナノサイズのコバルト系リチウム遷移金属酸化物が10重量%で含まれるように調節して混合したことを除いては、実施例1と同様にして正極活物質を製造し、このように製造された正極活物質を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、正極および半電池を製造した。
【0109】
比較例1
商品名NCM622(LiNi0.6Co0.2Mn0.2、ユミコア社製)を正極活物質として使用したことを除いては、実施例1と同様にして、正極および半電池を製造した。
【0110】
比較例2
第1焼成物にCo(OH)の代わりに平均粒径D50が4.5μmであるCoを、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にしてコバルト酸化物が5重量%で含まれるように調節して混合し、これを20L Powder Mixerに入れて2400rpmで5分間混合して乾式コーティングしたことを除いては、実施例1と同様にして正極活物質を製造し、このように製造された正極活物質を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、正極および半電池を製造した。
【0111】
比較例3
第1焼成物にCo(OH)の代わりに平均粒径D50が4.5μmであるCoを、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にしてコバルト酸化物が10重量%で含まれるように調節して混合し、これを20L Powder Mixerに入れて2400rpmで5分間混合して乾式コーティングしたことを除いては、実施例1と同様にして正極活物質を製造し、このように製造された正極活物質を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、正極および半電池を製造した。
【0112】
参考例1
Co(OH)を、最終生成物である正極活物質の総量100重量%を基準にしてコバルト系リチウム遷移金属酸化物が15重量%で含まれるように調節して混合したことを除いては、実施例1と同様にして、正極活物質、正極および半電池を製造した。
【0113】
参考例2
Ni0.55Co0.25Mn0.20(OH)として、小粒径ではなく大粒径の2次粒子のみを使用したことを除いては、実施例1と同様にして、正極活物質、正極および半電池を製造した。
【0114】
評価例1:ペレット密度および極板合剤密度の測定
実施例1、2、比較例1~比較例3、参考例1および2で製造された正極活物質および正極を使用して、正極活物質のペレット密度および極板合剤密度を測定して下記表1に示す。
【0115】
ここで、ペレット密度は、前記正極活物質3.0000g(誤差範囲±0.0004g)の範囲内で測定して記録し、前記正極活物質を13mmサイズのKBr Pellet Dieを用いて、プレッサー4tonで30秒間維持して高さの減少分を測定した後、体積当たりの重量を測定した。
【0116】
また、極板合剤密度は“極板合剤重量”を“極板合剤厚み”で割って測定し、前記“極板合剤重量”は“単位面積当たりの極板重量”から“単位面積当たりの基材重量”を引いて計算し、前記“極板合剤厚み”は“極板厚み”から“基材厚み”を引いて計算した。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例1および2で製造された正極活物質のペレット密度は、比較例1~3で製造された正極活物質に比べて増加し、極板合剤密度も同様の結果を示した。
【0119】
評価例2:コバルト系リチウム遷移金属酸化物コーティング層の評価
EDS(Energy dispersive x-ray spectroscopy)測定写真
実施例1で製造された正極活物質の断面をEDSで分析して、正極活物質の内部(コア)および表面(表面層)にNi、Co、Mnが良好に分布していることを確認し、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の各地点(spot)の原子(atomic)mol%を測定した。そのうちCo元素が分布している正極活物質の断面のEDS写真を測定して図2に示す。
【0120】
図2に示したように、Co元素は、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子内部に全体的に分布していることを確認でき、特に、2次粒子の表面から約200nm深さに該当する表面層領域にCo原子が高い密度で存在していることが分かるが、これはCo(OH)と、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面に存在する残留リチウムとが反応して、ナノサイズのLiCoOを形成するためであると考えられる。
【0121】
微分容量(dQ/dV)-電圧充電曲線分析
実施例1、2および比較例1~3で製造された半電池を0.2Cで1回充放電した後、同様の方法で2回充放電した。図3aは、1回微分容量(dQ/dV)-電圧充電曲線を測定して示す図であり、図3bは、前記1回微分容量(dQ/dV)-電圧充電曲線を電圧範囲3.8~4.0Vの部分だけを拡大して示すグラフである。
【0122】
図3aにおいて電圧範囲3.8~4.0Vの部分に現れるピークは、LCO(LiCoO)の存在を意味する。実施例1と比較例2で、それぞれ製造された正極活物質はニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面に異なる条件でコバルト化合物をコーティングしたが、図3bを確認した結果、実施例1では前記ピークが現れないが、比較例2では前記ピークが明確に現れることを確認できた。そこで、本発明者は実施例1で正極活物質の製造時に互いに異なる平均粒径を有するバイモーダル(bimodal)な2次粒子のニッケル系リチウム遷移金属酸化物を使用し、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の表面に存在する残留リチウムがナノサイズのコバルト系遷移金属水酸化物と反応することによって、LCOがニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面層に吸収されて存在していることを確認できた。反面、比較例2で正極活物質の製造時には、前記実施例1での条件を満たさないため、たとえ実施例1と同じ含有量のコバルト化合物をコーティングしても、LCOがニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面に島状(island type)に存在するか、またはニッケル系リチウム遷移金属酸化物と単純に混合した形態で存在すると理解され得る。
【0123】
また、実施例2では実施例1と同じ条件でCo(OH)の投入含有量をより増加させることによって、LCOのピークが少しずつ現れることを確認できた。このような結果により、実施例2の場合、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の2次粒子の表面層にLCOが吸収されて存在するとともに、2次粒子の表面にもLCOが形成されていることが分かった。
【0124】
評価例3:初期充放電容量および充放電効率評価
実施例1、2、比較例1~比較例3、参考例1および2で製造された半電池を0.2Cで1回充放電して、充電容量、放電容量および充放電効率を求めた。この結果を下記表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
上記表2に示すように、実施例1および2で製造された半電池の充放電効率は、比較例1~3に比べて、さらに優れていることが分かる。
【0127】
評価例4:高温サイクル寿命特性評価
実施例1、2、比較例1~比較例3、参考例1および2で製造された半電池を高温(45℃)、定電流-定電圧条件で1.0C(1C=160mAh/g)、4.3Vカット-オフおよび4.3V、0.05Cカット-オフで充電し、定電流条件で1.0C、3.0Vカット-オフで放電することを1サイクルとした。総100サイクルの充放電を実施して、サイクルごとに放電容量を測定した。下記数式1により計算された100thサイクルでの容量維持率を下記表3に示し、高温サイクル寿命のグラフを図4に示す。
[数式1]
100thサイクルでの容量維持率[%]=[100thサイクルでの放電容量/1stサイクルでの放電容量]×100
【0128】
【表3】
【0129】
上記表3に示すように、実施例で製造された半電池の高温放電容量維持率は、比較例で製造された半電池に比べて優れていることが分かる。また、図4に示したように、実施例1および2で製造された半電池の高温サイクル寿命特性が、比較例1~3に比べて向上したことを確認できる。
【0130】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施可能であり、これもなお本発明の範囲に属することはもちろんである。
【符号の説明】
【0131】
10:正極
20:負極
30:セパレータ
40:電極組立体
50:電池ケース
100:リチウム二次電池
図1
図2
図3a
図3b
図4