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特許7531589CHO細胞由来のタンパク質分泌因子及びそれを含む発現ベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】CHO細胞由来のタンパク質分泌因子及びそれを含む発現ベクター
(51)【国際特許分類】
   C07K 9/00 20060101AFI20240802BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240802BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240802BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240802BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240802BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240802BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240802BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C07K9/00 ZNA
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022532844
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2020017413
(87)【国際公開番号】W WO2021112540
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0158447
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ウン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・サム・パク
(72)【発明者】
【氏名】セム・ジュン
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513511(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03323826(EP,A1)
【文献】cathepsin B [Cricetulus griseus], Acc. XP_003498026.1, 2018, retrieved from the Internet on 2023.05.31, <URL;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/354471594?sat=48&satkey=90977903>
【文献】Comparative Biochemistry and Physiology Part B Biochemistry & Molecular Biology, 2018, Vol. 225, pp. 21-28
【文献】procollagen C-endopeptidase enhancer 1 [Cricetulus griseus], Acc. XP_003510679.1, 2018, retrieved from the Internet on 2023.05.31, <URL;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/354497139?sat=48&satkey=91055834>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 9/00
C07K 14/00-14/825
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00-21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、または配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子。
【請求項2】
前記タンパク質が、内在タンパク質または外来タンパク質である、請求項1に記載のタンパク質分泌因子。
【請求項3】
配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセット。
【請求項4】
前記目的タンパク質が、抗体、抗体断片(FabまたはScFv)、融合タンパク質(Fusion Protein)、足場タンパク質(Protein Scaffold)、ヒト成長ホルモン、血清タンパク質、免疫グロブリン、サイトカイン、α- 、β-またはγ-インターフェロン、コロニー刺激因子(GM-CSF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、インスリン、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子、ホルモン、カルシトニン(calcitonin)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene Related Peptide、CGRP)、エンケファリン(enkephalin)、ソマトメジン、エリスロポエチン、視床下部分泌因子、成長分化因子(Growth differentiation factor)、細胞接着タンパク質(Cell adhesion protein)、プロラクチン、慢性ゴナドトロピン、組織プラスミノーゲン活性化剤、成長ホルモン分泌ペプチド(growth hormone releasing peptide;GHPR)、胸腺体液性因子(thymic humoral factor;THF)、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ及びグルコロニダーゼからなる群から選択される、請求項3に記載の発現カセット。
【請求項5】
前記配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列が、配列番号11、配列番号12、または配列番号15である、請求項3に記載の発現カセット。
【請求項6】
前記発現カセットが、細胞内で発現される時、分泌因子をコード化する核酸配列が除去された付加的アミノ酸が追加されていない目的タンパク質のまま発現するものである、請求項3に記載の発現カセット。
【請求項7】
配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む、目的タンパク質分泌用発現ベクター。
【請求項8】
前記目的タンパク質が、抗体、抗体断片(FabまたはScFv)、融合タンパク質(Fusion Protein)、足場タンパク質(Protein Scaffold)、ヒト成長ホルモン、血清タンパク質、免疫グロブリン、サイトカイン、α- 、β-またはγ-インターフェロン、コロニー刺激因子(GM-CSF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、インスリン、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子、ホルモン、カルシトニン(calcitonin)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene Related Peptide、CGRP)、エンケファリン(enkephalin)、ソマトメジン、エリスロポエチン、視床下部分泌因子、成長分化因子(Growth differentiation factor)、細胞接着タンパク質(Cell adhesion protein)、プロラクチン、慢性ゴナドトロピン、組織プラスミノーゲン活性化剤、成長ホルモン分泌ペプチド(growth hormone releasing peptide;GHPR)、胸腺体液性因子(thymic humoral factor;THF)、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ及びグルコロニダーゼからなる群から選択されるものである、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列が、配列番号11、配列番号12、または配列番号15の核酸配列からなる、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記発現ベクターが、細胞内で発現される時、分泌因子をコード化する核酸配列が除去された付加的アミノ酸が追加されていない目的タンパク質のまま発現するものである、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の発現ベクターが宿主細胞に導入された形質転換体細胞であって、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)である、形質転換体細胞。
【請求項12】
i)配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む、目的タンパク質分泌用発現ベクターを含む形質転換体チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を培養する段階;及び
ii)前記培養された細胞の培養物または培養上清液から目的タンパク質を回収する段階を含む、目的タンパク質を生産する方法。
【請求項13】
前記回収した目的タンパク質を精製する段階をさらに含むものである、請求項12に記載の目的タンパク質を生産する方法。
【請求項14】
前記配列番号1、配列番号2、または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子が、前記目的タンパク質のN末端の切断部位で切断されるものである、請求項12に記載の目的タンパク質を生産する方法。
【請求項15】
前記目的タンパク質が、タンパク質分泌因子をコード化する核酸配列が除去された付加的アミノ酸が付加されていない目的タンパク質自体である、請求項12に記載の目的タンパク質を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CHO細胞由来のタンパク質分泌因子、前記タンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセット、前記発現カセットを含む発現ベクター、前記発現ベクターが導入された形質転換体細胞及び前記形質転換体細胞を用いて目的タンパク質を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えタンパク質は、生体内で収得されにくい有用なタンパク質成分を遺伝子組換え技術を介して微生物または動物細胞システムを用いて大量生産することができる。組換えタンパク質は細胞内で発現させるか、または細胞外に分泌されるように調節することができる。ただし、細胞内発現は不溶性の塊でタンパク質が蓄積することが多く、分離精製の難しさにより生産性が低下する欠点がある。一方、細胞外分泌は、正確なタンパク質折り畳みを有する可溶性タンパク質を容易に収得することができる。したがって、タンパク質の生産収率及び品質管理においてより適合した細胞外分泌のために、最適化された組換えタンパク質発現システムが重要である。
【0003】
組換えタンパク質生産のために、宿主細胞、目的遺伝子、発現ベクター、選択マーカー、プロモーター、シグナルペプチド配列などの構成要素が必須的に要求される。前記構成要素の選択により、組換えタンパク質の品質及び生産性が異なる。
【0004】
シグナルペプチドの場合、生産しようとする組換えタンパク質のN末端部位に位置して、組換えタンパク質の発現量に関与し、また細胞外に分泌されるようにする構成要素である。どのシグナルペプチドを使用するかによって発現量の差が見られ、またシグナルペプチドが誤切断(mis-cleavage)されてタンパク質のN末端にシグナルペプチド配列が一部残って、組換えタンパク質の品質に影響を与えることがある。
【0005】
したがって、誤切断(mis-cleavage)が起こらず、高発現を誘導することができるシグナルペプチドを選定することが重要である。
【0006】
一方、従来のシグナルペプチドは、主にヒト由来のシグナルペプチドを用い、発現宿主細胞として主にCHO細胞を使用している。宿主細胞間シグナルペプチドを併用して用いてもかまわないが、品質の面で問題が生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1038126号
【文献】韓国公開特許10-2015-0125402A
【非特許文献】
【0008】
【文献】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【文献】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【文献】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【文献】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【文献】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【文献】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【文献】[Carillo et al.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【文献】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358(1979)
【文献】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【文献】J.S Lee et al., 2015, "Site-Specific integration in CHO cells mediated by CRISPR/Cas9 and homology-directed DNA repair pathway", Sci. Rep., 5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、CHO細胞において、発現量を高め、誤切断(mis-cleavage)の問題を解決するために鋭意努力した結果、新規なCHO細胞由来の17~31個のアミノ酸配列からなるポリペプチドであるシグナルペプチドを開発し、前記シグナルペプチドは、顕著に増加した発現量と切断部位(cleavage site)で100%切断されて誤切断を防止することを確認することによって、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む、目的タンパク質分泌用発現ベクターを提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、前記発現ベクターが宿主細胞に導入された形質転換体細胞を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む目的タンパク質分泌用発現ベクターを含む形質転換体細胞を培養する段階;及びii)前記培養された細胞の培養物または培養上清液から目的タンパク質を回収する段階を含む、目的タンパク質を生産する方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタンパク質分泌因子、すなわちシグナルペプチドは、高発現を通じて組換えタンパク質の生産性を著しく増大させることができ、切断部位(cleavage site)で100%切断されることにより、従来のシグナルペプチドの誤切断(mis-cleavage)問題を解決する強力な遺伝子ツールとして用いられると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1b】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1c】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1d】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1e】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1f】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1g】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1h】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1i】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図1j】SignalP4.1を用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)を予測した図である。
図2】仮発現を介したシグナルペプチド(Signal Peptide)-mCherryの発現量を確認した図である。
図3】位置特異的(Site Specific)Integration用ベクターマップ(Vector Map)を示した図である。
図4】位置特異的に組み込まれた(Site Specific Integration)細胞におけるmCherryの発現量を比較した図である。
図5a】SP7.2とClus fusionされたanti-PD-1抗体の切断を確認したMassデータを示した図である。
図5b】SP7.2とClus fusionされたanti-PD-1抗体の切断を確認したMassデータを示した図である。
図5c】SP7.2とClus fusionされたanti-PD-1抗体の切断を確認したMassデータを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これを具体的に説明すると次の通りである。一方、本発明で開示された各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。すなわち、本発明で開示された様々な要素の全ての組み合わせが本出願のカテゴリに属する。また、下記記載される具体的な記述によって本出願のカテゴリが制限されると見ることはできない。
【0018】
さらに、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて本発明に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知または確認することができる。また、そのような等価物は本発明に含まれることが意図される。
【0019】
前記目的を達成するための本発明の1つの様態は、CHO細胞由来の新規なタンパク質分泌因子を提供する。具体的には、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子を提供する。より具体的には、配列番号1、配列番号2、または配列番号3であってもよいが、これに制限されない。
【0020】
本発明の「タンパク質分泌因子」は、目的タンパク質と連結されて目的タンパク質が細胞外に分泌されるように誘導する因子を意味し、ポリペプチドからなっていてもよい。前記タンパク質分泌因子は、目的タンパク質、すなわち内在タンパク質及び/または外来タンパク質の分泌を促進するものであってもよく、特に抗体の軽鎖及び/または重鎖の細胞外分泌を促進させるものであってもよいが、これに制限されない。
【0021】
本発明で前記タンパク質分泌因子は、「シグナル配列」または「シグナルペプチド( signal peptide;SP)」と混用してもよい。
【0022】
本発明のタンパク質分泌因子は、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を有するものであってもよいが、これに制限されない。また、本発明のタンパク質分泌因子は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をさらに含んでもよいが、これに制限されない。
【0023】
本発明の具体的な一具現例で、前記タンパク質分泌因子はCHO細胞由来であってもよいが、これに制限されない。本発明の「CHO細胞」は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)細胞であり、当業界で通常に用いられる形質転換用宿主細胞であってもよい。また、宿主細胞であるCHO細胞で発現量を高めるために、CHO細胞由来のタンパク質分泌因子を選定してもよい。
【0024】
本発明で配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、カテプシンB(Cathepsin B;Cat)であってもよく、本発明でCat分泌配列と混用してもよい。配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、C-Cモチーフケモカイン(C-C motif chemokine;CC)であってもよく、本発明でCC分泌配列と混用してもよい。配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、ヌクレオビンジン-2(Nucleobindin-2;Nuc)であってよく、本発明でNuc分泌配列と混用してもよい。
【0025】
さらに、本発明の配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、クルステリン(Clusterin;Clus)であってもよく、本発明でClus分泌配列と混用してもよい。配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、色素上皮誘導因子(Pigment epithelium-derived factor;Pig)であってもよく、本発明でPig分泌配列と混用してもよい。配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、プロコラーゲンC-エンドペプチダーゼエンハンサー1(Procollagen C-endopeptidase enhancer 1;Proco)であってもよく、本発明でProco分泌配列と混用してもよい。配列番号7のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、スルフヒドリルオキシダーゼ(Sulfhydryl oxidase;Sulf)であってもよく、本発明でSulf分泌配列と混用してもよい。配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、脂質タンパク質リパーゼ(Lipoprotein lipase;Lip)であってもよく、本発明でLip分泌配列と混用してもよい。配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、ニドゲン-1(Nidogen-1;Nid)であってもよく、本発明でNid分泌配列と混用してもよい。配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(Protein disulfide-isomerase;Pro)であってもよく、本発明でPro分泌配列と混用してもよい。
【0026】
前記配列番号1のアミノ酸配列からなるカテプシンB(Cathepsin B)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号11のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号2のアミノ酸配列からなるC-Cモチーフケモカイン(C-C motif chemokine)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号12のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号3のアミノ酸配列からなるヌクレオビンジン-2(Nucleobindin-2)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号13のポリヌクレオチド配列であってもよい。
【0027】
また、前記配列番号4のアミノ酸配列からなるクルステリン(Clusterin)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号14のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号5のアミノ酸配列からなる色素上皮誘導因子(Pigment epithelium-derived factor;Pig) シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号15のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号6のアミノ酸配列からなるプロコラーゲンC-エンドペプチダーゼエンハンサー1(Procollagen C-endopeptidase enhancer 1;Proco)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号16のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号7のアミノ酸配列からなるスルフヒドリルオキシダーゼ(Sulfhydryl oxidase;Sulf)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号17のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号8のアミノ酸配列からなる脂質タンパク質リパーゼ(Lipoprotein lipase;Lip)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号18のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号9のアミノ酸配列からなるニドゲン-1(Nidogen-1;Nid)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号19のポリヌクレオチド配列であってもよく、配列番号10のアミノ酸配列からなるプロテインジスルフィドイソメラーゼ(Protein disulfide-isomerase;Pro)シグナルペプチドをコード化する核酸配列は、配列番号20のポリヌクレオチド配列であってもよい。
【0028】
本発明のタンパク質分泌因子は、「特定配列で構成された分泌因子」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなる分泌因子と同一または相応する活性を有する場合であれば、当該配列の前後の無意味な配列の追加または自然的に起こり得る突然変異、あるいはそのサイレント変異(silent mutation)を除外するものではなく、そのような配列の追加または突然変異を有する場合であっても、本願の範囲に属することは自明である。
【0029】
その例として、前記ポリヌクレオチドからなる核酸分子と同一または相応にシグナルペプチドとして作用することができれば、前記配列と85%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には98%以上、よりさらに具体的には99%以上の相同性及び/または同一性を示す塩基配列も制限なく含んでもよい。また、その相同性を有する塩基配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加された塩基配列も本発明の範囲内に含まれることは自明である。
【0030】
本発明の「相同性」または「同一性」は2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と互いに関連する程度を意味し、百分率として表してもよい。前記用語、相同性及び同一性はしばしば相互交換的に用いられてもよい。
【0031】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は標準配列アルゴリズムによって決定され、使用されるプログラムによって確立されたデフォルトギャップペナルティが一緒に用いられてもよい。実質的に、相同性を有するか(homologous)または同一の(identical)配列は、一般的に配列全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%に沿った中間または高い厳しい条件(stringent conditions)でハイブリダイズしてもよい。ハイブリダイズ化は、ポリヌクレオチドでコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0032】
任意の2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、非特許文献1と同じデフォルトのパラメータを用いて「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定してもよい。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、非特許文献2)(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で実行されるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献3)を用いて決定してもよい。(GCGプログラムパッケージ(非特許文献4)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献5~7を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定してもよい。
【0033】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、非特許文献8に公知されたように、例えば、非特許文献3のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することによって決定してもよい。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち、より短いものからのシンボルの全体数で同様の配列されたシンボル(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値として定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法の比較マトリックス(同一性のための1及び非同一性のための0の値を含有する)及び非特許文献9に開示されたように、非特許文献10の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップの各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含んでもよい。したがって、本願で使用されるものとして、用語、「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0034】
本発明のまた他の様態は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを提供する。
【0035】
本発明の「タンパク質分泌因子」は前記記載の通りである。
【0036】
本発明の「目的タンパク質」は、宿主細胞に内在的に発現されるタンパク質であるか、または外来で導入された遺伝子によって発現されるタンパク質であってもよく、本発明のシグナルペプチド配列により細胞外分泌効率が増進される限り、制限されない。
【0037】
前記目的タンパク質は、抗体、抗体断片(FabまたはScFv)、融合タンパク質(Fusion Protein)、足場タンパク質(Protein Scaffold)、ヒト成長ホルモン、血清タンパク質、免疫グロブリン、サイトカイン、α- 、β-またはγ-インターフェロン、コロニー刺激因子(GM-CSF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、インスリン、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子、ホルモン、カルシトニン(calcitonin)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene Related Peptide、CGRP)、エンケファリン(enkephalin)、ソマトメジン、エリスロポエチン、視床下部分泌因子、成長分化因子(Growth differentiation factor)、細胞接着タンパク質(Cell adhesion protein)、プロラクチン、慢性ゴナドトロピン、組織プラスミノーゲン活性化剤、成長ホルモン分泌ペプチド(growth hormone releasing peptide;GHPR)、胸腺体液性因子(thymic humoral factor;THF)、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ及びグルコロニダーゼであってもよく、具体的には、抗体の重鎖または軽鎖タンパク質であってもよいが、これに制限されない。
【0038】
本発明の「作動可能に連結」は、本発明のタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列及びプロモーター配列が目的タンパク質をコードする遺伝子の転写を開始及び媒介するように、前記遺伝子配列とプロモーター配列及びシグナルペプチド配列が 機能的に連結されていることを意味する。作動可能な連結は、当業界の公知の遺伝子組換え技術を用いて製造してもよく、位置特異的DNA連結は当業界の連結酵素などを用いて製作してもよいが、これに制限されない。
【0039】
本発明の「発現カセット」は、1つ以上の遺伝子及びそれらの発現を調節する配列、例えば様々なcis作用転写調節要素の任意の組み合わせを含む核酸配列を意味する。本発明の発現カセットには、タンパク質分泌因子及び目的タンパク質をコード化する核酸配列だけではなく、発現調節に必要であると当業界で認められる様々な要素、例えば、プロモーター、エンハンサーなどの核酸配列をさらに含むものであってもよい。遺伝子の発現、すなわち、その転写及びその転写生産物の発現を調節する配列は、通常、調節ユニット(unit)と称する。調節ユニットの大部分は、目的遺伝子のコード配列の上流に作動可能に連結されて位置する。さらに、前記発現カセットは、3’末端にポリアデニル化(poly-adenylation)部位を含む3’非翻訳領域(3' non-transcriptional region )を含んでもよい。
【0040】
本発明の発現カセットは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結されて、宿主細胞で目的タンパク質を細胞外に分泌発現するポリヌクレオチドの組み合わせであってもよい。
【0041】
本発明のまた他の様態は、タンパク質分泌因子をコード化する核酸配列である配列番号11~配列番号20からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを提供する。
【0042】
本発明の「タンパク質分泌因子」、「目的タンパク質」、「作動可能に連結」及び「発現カセット」は、前記記載の通りである。
【0043】
本発明で配列番号11のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、カテプシンB(Cathepsin B;Cat)であってもよく、配列番号12のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、C-Cモチーフケモカイン(C-C motif chemokine;CC)であってもよく、配列番号13のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、ヌクレオビンジン-2(Nucleobindin-2;Nuc)であってよく、配列番号14のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、クルステリン(Clusterin;Clus)であってもよく、配列番号15のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、色素上皮誘導因子(Pigment epithelium-derived factor;Pig)であってもよく、配列番号16のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、プロコラーゲンC-エンドペプチダーゼエンハンサー1(Procollagen C-endopeptidase enhancer 1;Proco)であってもよく、配列番号17のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、スルフヒドリルオキシダーゼ(Sulfhydryl oxidase;Sulf)であってもよく、配列番号18のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、脂質タンパク質リパーゼ(Lipoprotein lipase;Lip)であってもよく、配列番号19のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、ニドゲン-1(Nidogen-1;Nid)であってもよく、配列番号20のポリヌクレオチド配列でコード化されるタンパク質分泌因子は、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(Protein disulfide-isomerase;Pro)であってもよい。
【0044】
本発明のまた他の様態は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む、目的タンパク質分泌用発現ベクターを提供する。
【0045】
本発明の「タンパク質分泌因子」、「目的タンパク質」、「作動可能に連結」及び「発現カセット」は、前記記載の通りである。
【0046】
本発明の「目的タンパク質分泌用発現ベクター」は、タンパク質分泌因子と目的タンパク質をコード化する遺伝子が作動可能に連結され、当該ベクターを宿主細胞に導入した後、発現する時に目的タンパク質の細胞外分泌を誘導する発現ベクターを意味する。
【0047】
本発明の「発現ベクター」は、目的タンパク質をコード化するDNA(目的DNA)の断片が挿入されたキャリア(Carrier)として、一般的に二本鎖のDNA断片を意味する。当業界でタンパク質を発現するために用いられる発現ベクターは、制限なく用いてもよい。前記発現ベクターは、宿主細胞内にあれば、宿主染色体のDNAとは無関係に複製することができ、挿入された目的DNAが発現されることができる。宿主細胞で形質感染遺伝子の発現レベルを高めるためには、当該遺伝子が選択された発現宿主細胞内で機能を発揮する転写及び解読調節配列に作動可能に連結されなければならない。
【0048】
本出願で用いられる発現ベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを用いてもよい。通常用いられるベクターの例としては、天然の状態であるか、組換えされた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、λMBL3、λMBL4、λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いてもよく、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを用いてもよく、具体的には、pTZ系ベクターであってもよいが、これに制限されない 。
【0049】
本発明の具体的な一具現例で、pTz-D1G1ベクタ―(特許文献1のプロモーターを含む変形体)に基づいて、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列と生産しようとする目的タンパク質をコード化する遺伝子とを作動可能に連結して、目的タンパク質分泌用発現ベクターを製造した(実施例4)。
【0050】
前記発現ベクターは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列をさらに含んでもよい。
【0051】
本発明のまた他の様態は、前記発現ベクターが宿主細胞に導入された形質転換体細胞を提供する。
【0052】
本発明の「発現ベクター」は前記記載の通りである。
【0053】
本発明の「形質転換」は、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現できるようにすることをいう。
【0054】
形質転換されたポリヌクレオチドは宿主細胞内で発現することさえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入され位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、これらすべてを含む。また、前記ポリヌクレオチドは目的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、あらゆる形態で導入されるものであっても構わない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含む。
【0055】
本出願のベクターを形質転換する方法は、核酸を細胞内に導入するあらゆる方法も含まれており、宿主細胞に応じて当該分野で公知のように適合した標準技術を選択して行ってもよい。例えば、パーティクルガン(particle bombardment)、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿、 塩化カルシウム(CaCl)沈殿、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、 DEAEデキストラン法、陽イオンリポソーム法、及び酢酸リチウムDMSO法であってもよく、具体的には、電気穿孔法(electroporation)であってもよいが、これに制限されない。
【0056】
本発明の「宿主細胞」は、本発明のタンパク質分泌因子の活性を有する核酸分子が導入されてシグナルペプチドで作動することができる真核細胞をいう。前記宿主細胞は、例えば、酵母などの周知の真核宿主であってもよく、スポドプテラ・フルギペルダなどの昆虫細胞、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10などの動物細胞などであってもよいが、これに制限されない。
【0057】
本発明において宿主細胞は、その例として動物宿主細胞であってもよく、具体的には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese Hamster Ovary cell、CHO細胞)であってもよいが、これに制限されない。
【0058】
本発明の具体的な一具現例では、前記宿主細胞として組換えタンパク質生産に広く用いられているCHO細胞を用いた(実施例4)。
【0059】
本発明の「形質転換体」は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるシグナルペプチド及び目的タンパク質を含む発現ベクターを前記宿主細胞であるCHO細胞内に導入して形質転換された動物細胞をいう。
【0060】
本発明の具体的な一具現例で、前記形質転換体は目的タンパク質の抗体であるペムブロリズマブ(pembrolizumab)の軽鎖及び重鎖の発現量が増大することを確認した(実施例4)。
【0061】
本発明のまた他の様態は、i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子をコード化する核酸配列;及び目的タンパク質をコード化する遺伝子;が作動可能に連結された発現カセットを含む目的タンパク質分泌用発現ベクターを含む形質転換体細胞を培養する段階;及びii)前記培養された細胞の培養物または培養上清液から目的タンパク質を回収する段階を含む、目的タンパク質を生産する方法を提供する。
【0062】
本発明の「タンパク質分泌因子」、「目的タンパク質」、「作動可能に連結」、「発現カセット」、「目的タンパク質分泌用発現ベクター」、「宿主細胞」及び「形質転換体」は、前記記載の通りである。
【0063】
本出願の「培養」は、前記形質転換体細胞を適当に人工的に調節した環境条件で生育させることを意味する。本発明でCHO細胞を宿主細胞として用いて目的タンパク質を製造する方法は、当業界に周知の方法を用いて行ってもよい。具体的には、前記培養は、バッチ工程、注入バッチまたは繰り返し注入バッチ工程(fed batch or repeated fed batch process)で連続式に培養してもよいが、これに制限されない。
【0064】
本発明の培養に用いられる培地は適切な方法で特定菌株の要件を果たさなければならない。用いられる糖源としては、グルコース、スクロース、ラクトース、フラクトース、マルトース、デンプン、セルロースなどの糖及び炭水化物、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油及び脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸などの脂肪酸、グリセロール、エタノールなどのアルコール、グルコン酸、酢酸、ピルビン酸などの有機酸が含まれてもよいが、これに制限されない。これらの物質は個別にまたは混合物として用いてもよい。
【0065】
用いられる窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、肉汁、麦芽エキス、トウモロコシ浸漬液、大豆ミール及び尿素または無機化合物、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムが含まれてもよいが、これに制限されるものではない。窒素源も個別にまたは混合物として用いてもよい。
【0066】
用いられるリン源としては、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは相応するナトリウム含有塩が含まれてもよいが、これに制限されるものではない。また、培養培地は、成長に必要な硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄などの金属塩を含有してもよい。最後に、前記物質に加えて、アミノ酸及びビタミンなどの必須成長物質が用いられてもよい。また、培養培地に適切な前駆体を用いてもよい。前記の原料は、培養過程で培養物に適切な方法により、回分式または連続式で添加されてもよい。
【0067】
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの基礎化合物またはリン酸または硫酸などの酸化合物を適切な方法で培養物のpHを調節してもよい。また、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよい。好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入してもよい。培養物の温度は、普通、20℃~45℃、具体的には、25℃~40℃であってもよいが、条件に応じて変更可能であるが、これに制限されない。
【0068】
本発明の具体的な一具現例では、組換え発現ベクターpCB-SP7.2-Pem、pCB-Clus-Pem、pCB-Pig-Pem及びpCB-CC-Pemを宿主細胞であるCHO細胞(ExpiCHO-S(登録商標)細胞)に導入し、ExpiCHO Expression Medium(CHO発現培地)30mLで12日間バッチ工程(Fed-Batch culture)で培養した(実施例4)。
【0069】
本発明の目的タンパク質を製造する方法は、培養物から目的タンパク質を回収する段階を含んでもよい。本発明の「回収」は、培養物から目的タンパク質を収得することであり、当業界に知られている方法、例えば、遠心分離、ろ過、アニオン交換クロマトグラフィー、結晶化及びHPLCなどが用いられてもよいが、これに制限されない。
【0070】
前記回収段階は精製工程を含んでもよく、当業者は公知のいくつかの精製工程の中から必要に応じて選択して活用してもよい。例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、受容体親和性クロマトグラフィー、疎水性作用クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、カチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)及び逆相HPLCなどを含む従来のクロマトグラフィー方法によって宿主細胞の培養物または培養上清液から分離してもよい。また、所望のタンパク質が特異的タグ、ラベルまたはキレート部分を有する融合タンパク質である場合、特異的結合パートナーまたは製剤によって精製する方法がある。精製されたタンパク質は、分泌因子などが除去されるなど、所望のタンパク質部分に切断されるか、またはそれ自体のままで残っていてもよい。融合タンパク質の切断による切断過程で追加のアミノ酸を有する所望のタンパク質形態が作られてもよい。
【0071】
本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質分泌因子は、目的タンパク質のN末端切断部位で正確に切断される分泌因子であってもよい。
【0072】
シグナルペプチドは、生産したい組換えタンパク質のN末端部位に位置し、目的タンパク質が分泌(translocation)されると、シグナルペプチド分解酵素(signal peptidase)によって分解される。しかしながら、既存のタンパク質分泌因子は、しばしば誤切断(mis-cleavage)問題のために目的タンパク質の品質(quality)を低下させる可能性がある。前記「誤切断」は、シグナルペプチドが正確な位置で完全に分解されず、目的タンパク質のN末端にシグナルペプチド配列が一部残っていることをいう。
【0073】
本発明の具体的な一具現例で、精製された目的タンパク質をQ-TOF MS質量分析計を用いてタンパク質分泌因子(Signal Peptide)の切断の有無を確認した。その結果、予測した切断部位(Cleavage Site)で100%切断(cleavage)されることを確認した。
【0074】
したがって、本発明のタンパク質分泌因子(Signal Peptide;シグナルペプチド)を含む発現ベクターは、組換えタンパク質の効率的な発現及び分泌を介して目的タンパク質の生産性を増大させ、誤切断(mis-cleavage)問題を解決する強力な遺伝子ツールになりうる。
【0075】
以下、実施例を通じてより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例1.CHO細胞由来の新規シグナルペプチド配列の製造
1-1. CHO HCP Mass分析
トリプシン(trypsin)処理したCHO細胞(DXB11)培養液に、次のように4種類(ADH、BSA、PHO、ENL)のMassPREPTM Protein Digest Standardを入れた。4種類のMassPREPTM Protein Digest Standardのうち、PHOを各HCP(Host Cell Protein)の濃度を計算するための内部標準物質(Internal Standard)として用いた。各試料は、2D LC(high pH RP/Low pH RP)-Q-TOF(UDMSe)方法により宿主細胞タンパク質(Host cell protein;HCP)を分析した。
【0077】
2DカラムからQ-TOF MSに直接注入(injection)し、各フラクションごとにMSデータ(UDMSe)を収得した。前記方法で収得した10個のフラクションのMSデータ(UDMSe)は、ProteinLynx Global SERVER(PLGS、Vr. 3.0.2)ソフトウェアを用いて1つのデータにmergeした。その後、各試料のmergedデータとチャイニーズハムスタータンパク質データベースを用いてHCPをIDし、PHOを内部標準物質として用いて各HCPの濃度を求めた。
【0078】
1-2. CHO HCPデータからシグナルペプチドの選定
HCP濃度が高い順に配列し、各タンパク質のアミノ酸配列をCHOゲノムデータベース(http://chogenome.org)で確認した。得られたアミノ酸配列をSignalP4.1サーバ(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)に入力し、分泌タンパク質(Secretion Protein)の有無及びシグナルペプチド(Signal Peptide)配列を予測した(表1、図1及び表4)。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例2.仮発現によるCHO由来の高効率シグナルペプチド(Signal Peptide)の選定
2-1. 仮発現用組換えタンパク質発現ベクターの製作
実施例1で選定された10種のシグナルペプチド(Signal Peptide)が汎用の分泌因子として利用できるかどうかを確認するために、目的タンパク質としてmCherry(pmCherry Vector, Clontech, 632522)タンパク質を選定した。
【0081】
前記mCherryタンパク質をコードする遺伝子のポリヌクレオチドの配列は表2の通りである。
【0082】
【表2】
【0083】
前記mCherryタンパク質をコードする遺伝子を基づいて、CHO HCP Massデータから確認したシグナルペプチド(Signal Peptide)配列とKpnI/XhoIが含まれたプライマー(Primer)でそれぞれPCRして、前記10種類のシグナルペプチド(Signal Peptide)配列によって発現されるmCherryを製作した。
【0084】
シグナルペプチド(Signal Peptide)の長さが長い場合には、プライマー(Primer)を2つに分けて2回にわたってPCRを行った。前記10種類のシグナルペプチド(Signal Peptide)配列が含まれたmCherry PCR産物をKpnIとXhoIで切断(Cut)してpcDNA3.1(+)(Invitrogen, Cat. No. V790-20)にクローニング(Cloning)して、発現ベクターを製作した。
【0085】
また、陽性対照群 (Positive Control)として用いるために、既存の公知の分泌因子であるSP7.2シグナルペプチド(特許文献2)が融合されたmCherryタンパク質発現ベクターを同様の方法で製造した。前記SP7.2シグナルペプチドの配列は表3の通りである。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【0088】
2-2.仮発現
10種類のシグナルペプチド(Signal Peptide)から発現されるmCherry発現ベクターのそれぞれを、CHO-S細胞株Amaxa 4D-Nucleofector Protocolに従ってトランスフェクション(1mL)を進行した。その後、2日目と6日目に細胞内蛍光と培養液から分泌された蛍光タンパク質の蛍光値を測定した(図)。
【0089】
細胞内蛍光の場合、FACS(Accuri)を用いて陰性対照群(Negative control;共ベクター、pMaxGFP)より高い部分のヒストグラムで平均値で測定した。
【0090】
培養液に分泌された蛍光タンパク質の蛍光値の場合は、2日目と6日目に100ulをサンプリングした後、遠心分離(centrifugation)して上清液(supernatant)のみを収得し、Fluorescence 587/610nmでマルチ分析機(Multiple Reader)を用いて測定した。
【0091】
前記培養液で測定された蛍光値の高いシグナルペプチド(Signal Peptide)は、Cat、CC、Nuc、Clus、Pigであることを確認し、陽性対照群SP7.2より高い発現を示した分泌因子4種類(Clus、Pig、Nuc、CC)と陽性対照群(positive control)として用いられるSP7.2との細胞内で蛍光値の高いシグナルペプチド1種類(Proco)を陰性対照群(negative control)に選定した。
【0092】
実施例3. 位置特異的に組み込み(Site-Specific Integration)による発現の比較
3-1. 位置特異的に組み込みのための発現ベクターの製作
前記実施例2で選定された5種類のシグナルペプチド(Clus、Pig、Nuc、CC、Proco)及び対照群であるSP7.2を含むmCherry配列をCHOゲノムの特定位置に同一に挿入して定量的に発現量を比較した(図及び図)。
【0093】
挿入位置はHprt Siteと定められ、非特許文献11を参照して、ホモロジーアーム(Homology Arm)配列及びsgRNA配列を設計した。
【0094】
5’ホモロジーアームの場合、CHO-Sゲノムを鋳型(Template)としてBg1IIとNruIEnzyme Siteが含まれたプライマー(Primer)を用いてPCRした後、Bg1II/NruIでDigestionしたpcDNA3.1(+)ベクター(Vector)にクローニング(Cloning)した。
【0095】
3’ホモロジーアームの場合、同様にCHO-Sゲノムを鋳型(Template)としてSalI Siteがそれぞれ含まれたプライマー(Primer)でPCRした後、5’ホモロジーアームが挿入されたベクター(Vector)とともにSalIシングルカット(Single Cut)し、NeoR遺伝子下流(NeoR Gene Downstream)側にクローニングした(pcDNA3.1_hprt)。
【0096】
相同組換え(Homology Recombination)されてゲノム上に挿入されたものだけを確認するために、二重選択のため5’ホモロジーアーム上流(5'Homology Arm Upstream)部分にCmy-GFP-BHG pAフラグメントを製作し、SpeIとBg1IIで挿入した(pcDNA3.1_G_hprt)。
【0097】
GFPフラグメントの場合、まずpcDNA3.1(+)ベクターにNcoI/XbaIでMCSに挿入した後、SpeIとBg1II制限部位が含まれたプライマー(Primer)を用いてPCRした後、ホモロジーが含まれたベクター(pcDNA_hprt)にSpeIとBg1IISiteを用いて挿入した。
【0098】
完成したpcDNA3.1_G_hprtベクターを用いてシグナルペプチド(Signal Peptide)配列が含まれたmCherry遺伝子配列をKpnIとXhoIで切断(Cut)してMCS部分に挿入した。
【0099】
その結果、CMV-EGFP-pA-5’Hprtホモロジーアーム-CMV-シグナルペプチド候補-mCherry-BGH pA-NeoR 選択マーカーカセット-3’Hprtホモロジーアーム形態の発現カセットが含まれたpcDNA3.1ベースの発現ベクターを製作した。
【0100】
3-2.位置特異的(Site-Specific) 組み込み
前記で製作した6種類の位置特異的組み込み用ベクターをCHO-Sゲノム内のHprt Siteに挿入するために、CRISPR-Cas9を用いてノックイン(Knock In)した。sgRNA 240ng、cas9タンパク質 1250ng、ドナーベクター1μgをNucleofector溶液と混合して、50μlの混合物(Mixture)をそれぞれ製造した。
【0101】
CHO-S 1×10細胞をNucleofector 50μlに入れて先に製作した混合物と混ぜた後、最終100μlを電気穿孔法(Electrophoration)を進行した。
【0102】
電気穿孔法(Electrophoration)を行った後、0.5ml培地と混ぜた後、2.5ml培地に添加し、6ウェルプレート(well plate)で36.5℃、CO 5%の条件で培養した。
【0103】
2日後、Zeneticin(0.5mg/L)が含まれたCD CHO培地でセレクション(Selection)を行った後、生存率(Viability)が90%回復するまで継代培養を行った。
【0104】
生存率90%回復後、3×10 cells/mLでセル濃度を合わせて6ウェルにそれぞれ4mLをDuplicateで培養し、2~3日間隔でVi-Cell測定及び培地蛍光値(587nm/610nm)を測定した(図)。
【0105】
その結果、CC、Clus、Pig分泌配列が対照群であるSP7.2より高く発現されることを確認した。
【0106】
実施例4.Anti PD-1 Antibody発現及びMass分析
4-1. Anti PD1抗体生産のための発現ベクターの製作
位置特異的組み込み(Site Specific Integration)を介してシグナルペプチド(Signal Peptide)の発現能を比較した後、発現の高いCC、Clus、Pigを含む4種類のシグナルペプチド(Signal Peptide;(CC、Pig、Clus、SP7.2))が融合したAnti-PD-1抗体を発現させた。目的タンパク質としては、Pembrolisumab(Keytruda(登録商標))抗体配列を用いた。
【0107】
軽鎖(Light Chain)と重鎖(Heavy Chain)のアミノ酸配列と一致するDNA配列を合成した後、オーバーラップPCRにより各シグナルペプチド(Signal Peptide)配列と融合した形態の配列を製作した。
【0108】
前記軽鎖(Light Chain)の場合はBamHIとXhoIで、重鎖(Heavy Chain)の場合はAscIとNotIで制限酵素切断した後、pcDNA3.1(+)の変異体であるpTz-D1G1ベクター (特許文献1のプロモーターを含む)に挿入した。
【0109】
pCB_SP7.2_Pem
’(N末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号33)-Pem軽鎖(配列番号58)-XhoI制限部位]-(C末端)’/’(N末端)-[AscI制限部位-シグナルペプチド(配列番号33) - Pem重鎖(配列番号59)-NotI制限部位]-(C末端)’
【0110】
pCB_Clus_Pem
’(N末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号4)-Pem軽鎖(配列番号58)-XhoI制限部位]-(C末端)’/’(N末端)-[AscI制限部位-シグナルペプチド(配列番号4)-Pem重鎖(配列番号59)-NotI制限部位]-(C末端)’
【0111】
pCB_CC_Pem
’(N末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号2)-Pem軽鎖(配列番号58)-XhoI制限部位]-(C末端)’/’(N末端)-[AscI制限部位-シグナルペプチド(配列番号2)-Pem重鎖(配列番号59)-NotI制限部位]-(C末端)’
【0112】
pCB_Pig_Pem
’(N末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号5)-Pem軽鎖(配列番号58)-XhoI制限部位]-(C末端)’/’(N末端)-[AscI制限部位-シグナルペプチド(配列番号5)-Pem重鎖(配列番号59)-NotI制限部位]-(C末端)’
【0113】
4-2. Anti-PD1抗体の発現
前記準備した組換え発現ベクターpCB-SP7.2-Pem、pCB-Clus-Pem、pCB-Pig-Pem及びpCB-CC-PemをExpiCHO-S(登録商標)細胞(Thermo Fisher Scientific)に導入し、ExpiCHO発現培地(Thermo Fisher Scientific;30mL)で12日間培養(Fed-Batch Culture;Day 1&Day 5添加)して、前記融合ポリペプチドPembrolisumabを発現させた。
【0114】
4-3. Anti-PD1抗体の精製及びMass分析
前記組換えベクター発現によって生産された融合ポリペプチドをProteinA精製した。具体的には、回収した培養液は0.22μmフィルターでろ過した後、ProteinAレジンがパッキングされているカラム(Hitrap MSS, GE Healthcare, 11-0034-93)をAKTA(登録商標) Avant25(GE Healthcare Life Sciences)に装着し、PBSバッファーを流して、カラム(colum)を平衡化した。
【0115】
前記ろ過した培養液をカラム(colum)に注入した後、再びPBSバッファーを流し、カラム(colum)を洗浄した。前記カラム(colum)の洗浄作業が終了した後、溶出バッファー(Citrate Buffer、pH 3.5)をカラム(colum)に流して目的タンパク質を溶出させた。溶出液はAmicon Ultra Filter Device(MWCO 30K、Merck)と遠心分離機を用いて濃縮を行った後、PBSでバッファー交換を行った。
【0116】
融合ポリペプチドの定量分析は、UV Spectrophotometer(G113A、Agilent Technologies)で280nm及び340nmの吸光度を測定し、下記計算式により行った。各物質の吸光係数は、アミノ酸配列を用いて理論的に計算された値(1.404)を用いた。
【数1】
(*Extinction Coefficient(0.1%):タンパク質の濃度が0.1%(1g/L)であり、Primary Sequence上のすべてのシステイン(Cysteine)が酸化されてジスルフィド結合(Disulfide bond)を形成すると仮定する時、280nmでの理論的な吸光度である。ProtParam tool(https://web.expasy.org/protparam/)により計算された。)
【0117】
精製された目的タンパク質は、Q-TOF MSを用いて、タンパク質のN Term部分でシグナルペプチド(Signal Peptide)の誤切断(mis-cleavage)を確認した(図)。1mg/mLの濃度に希釈した後、PNGaseFを処理し、6M グアニジンとDTTを処理した後、Q-TOF MS(RMM-MT-001:ACQUITY UPLC+Q-TOF SYNAPT G2(Waters))にロードした。
【0118】
その結果、予測された切断部位(cleavage site)で100%切断(cleavage)されることを確認した。
【0119】
これにより、本発明のCHO細胞由来タンパク質分泌因子であるシグナルペプチドは、組換えタンパク質の発現量を増加させて生産性を向上させ、質量(Mass)分析を通じて予測した切断部位(cleavage site)で100%切断(cleavage)されることを確認することで、既存のタンパク質分泌因子の問題である誤切断(mis-cleavage)を解決することができる強力な遺伝子ツールになりうることを示唆する。
【0120】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、制限的なものではないと理解するべきである。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図1i
図1j
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
【配列表】
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