(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置および試料の解析方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20240802BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240802BHJP
H01J 37/252 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/20 A
H01J37/20 B
H01J37/252 A
H01J37/20 C
(21)【出願番号】P 2023537810
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027878
(87)【国際公開番号】W WO2023007608
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中村 邦康
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-091652(JP,A)
【文献】特開2019-008982(JP,A)
【文献】特開2020-057514(JP,A)
【文献】特開平9-283071(JP,A)
【文献】特開平6-232238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00 - 37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、
電子線を照射可能であり、且つ、前記鏡筒の内部に設けられた電子銃と、
前記鏡筒の内部に設けられたステージと、
前記鏡筒の外部から内部または前記鏡筒の内部から外部へ、試料が搭載された試料台を搬送するために、前記鏡筒に設けられた搬送口と、
X線を検出可能であり、且つ、前記鏡筒の内部に設けられた複数のX線検出器と、
を備え、
前記ステージは、前記試料台を搭載するために設けられ、且つ、前記鏡筒の内部において前記電子銃の下方に設けられた搭載部を有し、
前記搭載部は、少なくとも光軸上を開口する開口部を有し、
前記試料台が前記搭載部に搭載された場合、前記試料は、前記光軸上に位置するように前記開口部の内部に位置し、
前記複数のX線検出器のうち、前記搬送口に最も近い第1X線検出器には、移動機構が電気的に接続され、
前記第1X線検出器は、前記移動機構によって、前記搭載部に近づく方向または前記搭載部から遠ざかる方向へ移動でき、
前記第1X線検出器を前記搭載部に最も近づけた際における前記第1X線検出器の位置は、平面視において、前記試料台が前記搬送口から前記搭載部まで通過する搬送経路に重なる、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記鏡筒の外部から内部または前記鏡筒の内部から外部への前記試料台の搬送は、前記第1X線検出器が前記搭載部から遠ざけられた状態で行われる、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記試料の解析は、前記第1X線検出器が前記搭載部に近づけられた状態で、前記電子銃から前記光軸に沿って前記電子線を照射し、前記電子線が照射された前記試料から発生する特性X線を前記複数のX線検出器によって検出することで行われる、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数のX線検出器の各々は、前記試料の上面側から発生する前記特性X線を検出するための第1センサと、前記試料の下面側から発生する前記特性X線を検出するための第2センサとを有する、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記ステージは、その平面形状が円環状である周辺部と、前記周辺部から前記搭載部へ向かって延在する支持部と、を更に有し、
前記周辺部は、前記鏡筒に接続され、
前記支持部の一方の端部は、前記周辺部に接続され、
前記支持部の他方の端部は、前記搭載部に接続されている、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数のX線検出器は、平面視において前記搭載部および前記支持部に重ならない位置に設けられている、荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
平面視における前記搭載部の外周形状は、多角形状であり、
前記複数のX線検出器の各々の先端部は、平面視における前記搭載部の各辺に対向し、
前記支持部の他方の端部は、平面視における前記搭載部の何れかの角部を支持している、荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数のX線検出器の数は、平面視における前記搭載部の辺の数と同じである、荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
平面視における前記搭載部の何れかの角部が、前記搬送口に対向している、荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数のX線検出器のうち、前記第1X線検出器よりも前記搬送口から遠くに位置する第2X線検出器の位置は、固定され、
前記第2X線検出器の先端部と前記搭載部との間の距離は、前記第1X線検出器が前記搭載部に最も近づいた際における前記第1X線検出器の先端部と前記搭載部との間の距離と同じである、荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数のX線検出器のうち、前記第1X線検出器よりも前記搬送口から遠くに位置する第2X線検出器にも、前記移動機構が電気的に接続され、
前記第2X線検出器は、前記移動機構によって、前記搭載部に近づく方向または前記搭載部から遠ざかる方向へ移動できる、荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項1に記載の荷電粒子線装置を用いて行われる試料の解析方法であって、
(a)前記試料が搭載された前記試料台と、搬送棒とを用意する工程、
(b)前記(a)工程の後、前記搬送棒に、前記試料台を載置する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記第1X線検出器が前記搭載部から遠ざけられた状態で、前記搬送口を介して、前記鏡筒の外部から内部へ前記搬送棒を挿入する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記試料が前記光軸上に位置するように、前記搭載部に前記試料台を搭載する工程、
(e)前記(d)工程の後、前記試料台から前記搬送棒を分離し、前記X線検出器と干渉しない位置まで前記搬送棒を退避させる工程、
(f)前記(e)工程の後、前記搭載部に前記第1X線検出器を近づける工程、
を有し、
(g)前記(f)工程の後、前記電子銃から前記光軸に沿って前記電子線を照射する工程、
(h)前記(g)工程の後、前記電子線が前記試料に照射された際に前記試料から発生する特性X線を、前記複数のX線検出器によって検出する工程、
を有する、試料の解析方法。
【請求項13】
請求項12に記載の試料の解析方法において、
前記(e)工程と前記(f)工程との間において、前記試料のスクリーニングが行われ、
前記スクリーニングの判定で合格とされた前記試料に対してのみ、前記(f)工程、前記(g)工程および前記(h)工程が行われる、試料の解析方法。
【請求項14】
請求項12に記載の試料の解析方法において、
前記複数のX線検出器のうち全部には、前記移動機構が電気的に接続され、
前記複数のX線検出器のうち全部は、前記移動機構によって、前記光軸に近づける方向または前記光軸から遠ざける方向へ移動でき、
前記試料に前記電子線を照射することで行われる解析工程のうち、前記特性X線を検出する工程以外は、前記複数のX線検出器のうち全部が前記搭載部から遠ざけられた状態で行われる、試料の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および試料の解析方法に関し、特に、複数のX線検出器を備えた荷電粒子線装置と、その荷電粒子線装置を用いた試料の解析方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化が進んでいる。特に、立体構造を有する半導体デバイスでは、積層技術と組み合わせることで、高集積化および大容量化が飛躍的に進んでいる。このような半導体デバイスの解析を行うための荷電粒子線装置として、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)および走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)などが用いられている。これらの装置で解析を行う場合、解析対象となる試料を上部対物レンズと下部対物レンズとの間に設ける必要がある。
【0003】
また、試料に含まれる元素を分析する手法として、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectrometry:EDX)が知られている。この手法では、試料へ電子線を照射することで、試料から発生する特性X線をX線検出器により検出し、検出された特性X線から試料の組成分析が行われる。上記荷電粒子線装置には、そのようなX線検出器も備えられている。
【0004】
一方で、上記荷電粒子線装置のうちTEMでは、サイドエントリー方式が一般的に用いられている。この方式では、試料が試料ホルダの先端に載置され、試料ホルダが、鏡筒の内部へ挿入される。これにより、試料が、光軸に対して垂直方向から上部対物レンズと下部対物レンズとの間に設けられる。そして、大気側(鏡筒の外部)に設けられたステージ用の駆動機構を用いて分析される視野を決定し、EDX分析を実施する。
【0005】
特許文献1には、サイドエントリー方式のTEMが開示され、このTEMには、複数のX線検出器が備えられている。また、複数のX線検出器は、それぞれ試料に近づく方向または試料から遠ざかる方向へ移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドエントリー方式では、試料ホルダは荷電粒子線装置の鏡筒に挿入されるので、試料ホルダには、真空側の部分および大気圧側の部分が存在する。従って、大気圧側の部分は気圧変動および音波などを受け易いので、それらの影響によって、視野の位置ずれが生じる恐れがある。そのため、試料ホルダには、ある程度の剛性が求められるので、試料ホルダの小型化を行うことが困難であった。
【0008】
一方で、EDX分析には、高速、高分解能および高感度などの性能が求められている。そのため、X線検出器に設けられた検出素子(センサ)を大面積化する技術、および、X線検出器に複数のセンサを搭載する技術などが開発されている。ここで、サイドエントリー方式では、分析される視野の移動を行うために、試料ホルダも用いられる。従って、試料ホルダが存在する空間では、X線をEDX分析に使用することができない。すなわち、試料ホルダが存在する空間に、X線検出器を設けることができないので、X線検出器の数を増やす、または、X線検出器を試料に接近させるなどの手法が行い難い場合がある。
【0009】
本願の主な目的は、高速、高分解能および高感度などのような、X線の検出に必要とされる性能を向上させることである。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
一実施の形態における荷電粒子線装置は、鏡筒と、電子線を照射可能であり、且つ、前記鏡筒の内部に設けられた電子銃と、前記鏡筒の内部に設けられたステージと、前記鏡筒の外部から内部または前記鏡筒の内部から外部へ、試料が搭載された試料台を搬送するために、前記鏡筒に設けられた搬送口と、X線を検出可能であり、且つ、前記鏡筒の内部に設けられた複数のX線検出器と、を備える。前記ステージは、前記試料台を搭載するために設けられ、且つ、前記鏡筒の内部において前記電子銃の下方に設けられた搭載部を有し、前記搭載部は、少なくとも光軸上を開口する開口部を有し、前記試料台が前記搭載部に搭載された場合、前記試料は、前記光軸上に位置するように前記開口部の内部に位置し、前記複数のX線検出器のうち、前記搬送口に最も近い第1X線検出器には、移動機構が電気的に接続され、前記第1X線検出器は、前記移動機構によって、前記搭載部に近づく方向または前記搭載部から遠ざかる方向へ移動でき、前記第1X線検出器を前記搭載部に最も近づけた際における前記第1X線検出器の位置は、平面視において、前記試料台が前記搬送口から前記搭載部まで通過する搬送経路に重なる、荷電粒子線装置。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、X線の検出に必要とされる性能を向上させた荷電粒子線装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1における荷電粒子線装置の一例を示す模式図である。
【
図2】実施の形態1におけるステージおよび複数のX線検出器を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1におけるステージを示す平面図である。
【
図4A】実施の形態1におけるステージを示す断面図である。
【
図4B】実施の形態1における対物レンズの詳細を示す断面図である。
【
図4C】実施の形態1におけるステージの変形例を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1におけるX線検出器を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1における試料の解析方法の一部を示す平面図である。
【
図7】
図6に続く試料の解析方法を示す平面図である。
【
図8】
図7に続く試料の解析方法を示す平面図である。
【
図9】変形例1におけるステージおよび複数のX線検出器を示す平面図である。
【
図10】変形例2におけるステージおよび複数のX線検出器を示す平面図である。
【
図11】実施の形態1における試料の解析方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。また、この「平面」は、荷電粒子線装置1の光軸OAに対して垂直な面であるとも言える。
【0016】
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置1の構造>
以下に
図1を用いて、実施の形態1における荷電粒子線装置1について説明する。実施の形態1では、荷電粒子線装置1の一例として、サイドエントリー方式の透過電子顕微鏡(TEM)が示されている。なお、荷電粒子線装置1は、走査型透過型電子顕微鏡(STEM)であってもよく、光軸OAに出し入れ可能なSTEM検出器18を備えていてもよい。
【0017】
荷電粒子線装置1は、円筒形状の鏡筒2を備えている。鏡筒2の内部には、主に、電子線(荷電粒子線)EB1を照射可能な電子銃3、電子光学系8、検出器12、蛍光板14、カメラ15、ステージ40およびX線検出器50が備えられている。
【0018】
なお、鏡筒2の内部は、図示されていない真空排気手段を用いることで、真空状態に維持できる。本願で説明される「真空状態」は、鏡筒2の内部が大気圧よりも低い圧力にされた状態を意味し、例えば1×10-2Pa以下である。
【0019】
電子銃3は、電子線EB1の放出源となる電子源4、抑制電極5、引出電極6および陽極7を含む。電子光学系8は、集束レンズ9、偏向レンズ10、上磁極11a、下磁極11b、対物レンズコイル11cおよび結像系13を含む。ステージ40は、電子銃3の下方に設けられ、上磁極11aと下磁極11bとの間に設けられ、鏡筒2に接続されている。結像系13は、透過電子EB3を結像させるための投射レンズなどによって構成される。対物レンズ11を構成する上磁極11a、下磁極11bおよび対物レンズコイル11cの関係の詳細は
図4Bで後述する。
【0020】
また、鏡筒2には、搬送口20と、試料交換室22と、開閉動作を行うゲートバルブ21とが設けられている。搬送口20は、鏡筒2の外部から内部または鏡筒2の内部から外部へ、試料SAMが搭載された試料台30を搬送するために設けられている。
【0021】
試料SAMの解析時には、鏡筒2の内部は真空状態となっている。試料台30は、鏡筒2の外部において搬送棒31に載置される。試料台30および搬送棒31が試料交換室22の内部に挿入された後、試料交換室22の内部を、図示しない真空排気手段を用いることで、真空状態とする。その後、ゲートバルブ21を開き、試料台30および搬送棒31を、搬送口20を介して鏡筒2の内部へ搬送する。搬送された試料台30は、ステージ40に搭載される。その後、搬送棒31は、試料台30から分離し、鏡筒2の外部へ退避する。
【0022】
電子銃3から放出された電子線EB1は、抑制電極5、引出電極6および陽極7によって引出、収束および加速を受け、光軸OAの方向に沿って照射される。電子銃3から照射された電子線EB1は、集束レンズ9、偏向レンズ10、上磁極11aおよび下磁極11bの対物レンズ11によって拡大、縮小および偏向などを受け、照射領域を制限され、試料台30に搭載された試料SAMに照射される。
【0023】
電子線EB1が照射された試料SAMからは信号電子EB2が発生する。発生した信号電子EB2は、検出器12によって検出される。なお、信号電子EB2は、例えば二次電子または反射電子である。
【0024】
試料SAMに照射された電子線EB1の一部は、透過電子EB3として試料SAMを透過する。透過電子EB3は、結像系13によって縮小および拡大を受け、蛍光板14に照射される。透過電子EB3が照射された蛍光板14からは蛍光FLが発生する。発生した蛍光FLは、カメラ15によって検出される。
【0025】
X線検出器50は、X線を検出可能であり、電子線EB1が照射された試料SAMから発生する特性X線XLを検出できる。検出された特性X線XLを基にしてエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いることで、試料SAMの元素分析が行われる。後で詳細に説明するが、実施の形態1では、複数のX線検出器50が設けられている。
【0026】
荷電粒子線装置1は、総合制御部C0を備える。総合制御部C0は、電子源制御部C1、電子光学系制御部C2、ステージ制御部C3、信号制御部C4および元素分析制御部C5に電気的に接続され、これらの制御部C1~C5を統括する。それ故、本願では、各制御部C1~C5によって行われる制御を、総合制御部C0が行うと説明する場合もある。また、各制御部C1~C5を含む総合制御部C0を一つの制御ユニットと見做し、総合制御部C0を単に「制御部」と称する場合もある。
【0027】
また、総合制御部C0は、マウスまたはキーボードなどの入力装置16と、モニタ17とに電気的に接続されている。ユーザは、入力装置16を用いて総合制御部C0に指示を入力でき、モニタ17において総合制御部C0が行う各作業を確認できる。
【0028】
電子源制御部C1は、電子源4に電気的に接続され、総合制御部C0からの指示に基づいて、電子源4の動作を制御する。
【0029】
電子光学系制御部C2は、抑制電極5、引出電極6、集束レンズ9、偏向レンズ10、対物レンズ11の対物レンズコイル11cおよび結像系13に電気的に接続され、総合制御部C0からの指示に基づいて、これらの動作を制御する。
【0030】
ステージ制御部C3は、駆動機構41を介してステージ40に電気的に接続され、総合制御部C0からの指示に基づいて、ステージ40の動作を制御する。
【0031】
信号制御部C4は、検出器12およびカメラ15に電気的に接続され、総合制御部C0からの指示に基づいて、これらの動作を制御する。信号制御部C4は、検出器12によって検出された信号電子EB2、および、カメラ15によって検出された蛍光FLを電子情報として処理できる。これらの電子情報は、撮影像として画像データに変換され、変換された画像データは、モニタ17で確認でき、総合制御部C0に備えられた記録装置に記録される。
【0032】
元素分析制御部C5は、X線検出器50に電気的に接続され、総合制御部C0からの指示に基づいて、X線検出器50の動作を制御する。元素分析制御部C5は、試料SAMから発生する特性X線XLを検出し、特性X線XLを基にして試料SAMの元素分析を行う。元素分析の情報は、モニタ17で確認でき、総合制御部C0に備えられた記録装置に記録される。また、元素分析制御部C5は、X線検出器50の移動を行うための移動機構51にも電気的に接続され、移動機構51の動作を制御する。
【0033】
なお、実施の形態1における試料SAMは、半導体ウェハの一部から取得された薄片試料である。半導体ウェハは、p型またはn型の不純物領域が形成された半導体基板、上記半導体基板上に形成されたトランジスタなどの半導体素子、および、上記半導体素子上に形成された配線層などで構成されている。また、半導体ウェハの状態は、半導体基板のみの場合も含むし、上記半導体基板上に上記半導体素子および上記配線層などが完成されている場合も含むし、これらが製造途中である場合も含む。試料SAMは半導体ウェハの一部から取得された薄片であるので、試料SAMは、上記半導体基板、上記半導体素子および上記配線層のうち全部または一部を含んでいる。また、試料SAMは、半導体技術以外で用いられる構造体であってもよい。
【0034】
<ステージ40およびX線検出器50の構成>
以下に
図2~
図5を用いて、ステージ40およびX線検出器50の詳細な構造について説明する。
図2は、ステージ40と、ステージ40の周囲に設けられた複数のX線検出器50を示す平面図である。
図3は、
図2のうちステージ40のみを示す平面図である。
図4Aは、
図2および
図3に示されるA-A線に沿った断面図であり、ステージ40の断面図である。
図4Bは、
図2および
図3に示されるA-A線に沿った断面図であり、対物レンズ11の詳細を示す断面図である。なお、
図5は、
図2に示されるB-B線に沿った断面図であり、2つのX線検出器50の断面図である。
【0035】
図2、
図3および
図4Aに示されるように、ステージ40は、周辺部40aと、支持部40bと、搭載部40cとを有する。周辺部40aは、駆動機構41を介して鏡筒2に接続されている。また、周辺部40aの平面形状は、円環状であり、周辺部40aの円環の中心は、光軸OAとほぼ一致している。なお、本願で説明される「円環」は、数学的な円環とほぼ同じであればよく、数学的な円環と完全に同じである必要は無い。例えば、外径または内径の一部に切り欠きを有する円環も、本願の「円環」に含まれる。
【0036】
搭載部40cは、試料台30を搭載するために設けられ、且つ、鏡筒2の内部において電子銃3の下方に設けられている。搭載部40cは、少なくとも光軸OA上を開口する開口部OPを有する。開口部OPの近傍において、搭載部40cは、試料台30の外周を挟み込むように、試料台30を保持している。なお、実施の形態1の試料台30にも開口部が設けられ、この開口部の近傍において、試料台30は、試料SAMの外周を挟み込むように、試料SAMを保持している。
【0037】
試料台30が搭載部40cに搭載された場合、試料SAMは、光軸OA上に位置するように開口部OPの内部に位置する。このため、電子銃3から光軸OAに沿って電子線EB1が照射されると、試料SAMから信号電子EB2が発生すると共に、電子線EB1の一部が透過電子EB3として試料SAMを透過する。
【0038】
支持部40bは、周辺部40aから搭載部40cへ向かって延在している。支持部40bの一方の端部は、周辺部40aに接続され、支持部40bの他方の端部は、搭載部40cに接続されている。
【0039】
なお、ここでは、複数の支持部40bが設けられ、例えば4つの支持部40bが設けられている場合を図示している。しかし、搭載部40cが安定して支持されていればよいので、支持部40bの数は、適宜変更でき、1つ以上であればよい。例えば、搬送口20に最も近い支持部40bを無くし、他の3つの支持部40bで搭載部40cを支持してもよい。また、図中の左右に存在している2つの支持部40bで搭載部40cを支持してもよい。
【0040】
駆動機構41は、主に4つの駆動機構からなり、ここでは、X軸微動機構41x、Y軸微動機構41y、Z軸微動機構41zおよび傾斜機構41tを有する。X軸微動機構41xは、周辺部40aおよび鏡筒2に接続され、X方向に周辺部40aを移動させるために用いられる。Y軸微動機構41yは、周辺部40aおよび鏡筒2に接続され、Y方向に周辺部40aを移動させるために用いられる。試料SAMの解析時に、X軸微動機構41xおよびY軸微動機構41yを駆動することで、試料SAMの観察視野を変更できる。
【0041】
Z軸微動機構41zは、周辺部40aに接続され、Z方向に周辺部40aを移動させるために用いられる。試料SAMの解析時に、Z軸微動機構41zを駆動することで、フォーカス合わせまたは試料SAMとのワークディスタンスの調整を行える。傾斜機構41tは、搭載部40cに内蔵され、試料台30を傾斜させるために用いられる。試料SAMの解析時に、傾斜機構41tを駆動することで、試料SAMに対する電子線EB1の入射角度を変更できる。
【0042】
実施の形態1では、複数のX線検出器50が設けられ、4つのX線検出器50が設けられている。複数のX線検出器50は、EDX分析を実施できる。EDX分析では、試料SAMに電子線EB1を照射した際に、試料SAMから発生する特性X線XLを検出し、検出された特性X線XLから試料SAMの組成分析を行う。
【0043】
複数のX線検出器50のうち、搬送口20に最も近いX線検出器50aには、移動機構51が電気的に接続されている。X線検出器50aは、移動機構51によって、搭載部40c(光軸OA)に近づく方向または搭載部40c(光軸OA)から遠ざかる方向へ移動できる。
【0044】
また、複数のX線検出器50のうち、X線検出器50aよりも搬送口20から遠くに位置するX線検出器50bの位置は、固定されている。すなわち、X線検出器50bには、移動機構51が電気的に接続されていない。ここでは、2つのX線検出器50aと、2つのX線検出器50bとが設けられている場合を例示している。
【0045】
複数のX線検出器50a、50bの各々は、ステージ40とは独立して、鏡筒2に取り付けられている。なお、
図2に示されるように、平面視において複数のX線検出器50a、50bと、ステージ40の周辺部40aとが交差する箇所がある。すなわち、断面視において複数のX線検出器50a、50bが周辺部40aを覆っている箇所がある。詳細に図示はしていないが、周辺部40aの一部には、複数のX線検出器50a、50bが通過可能となるような、孔または切り欠きなどの通路が設けられている。
【0046】
複数のX線検出器50a、50bがこのような構造となっているので、ステージ40の支持部40bは、複数のX線検出器50a、50bが設けられていない空間に配置されている。すなわち、複数のX線検出器50a、50bは、平面視において搭載部40cおよび支持部40bに重ならない位置に設けられている。
【0047】
ところで、
図4Aおよび
図5に示されるように、試料台30および搭載部40cの断面形状は、略三角形状となっており、試料台30および搭載部40cの厚さは、試料SAMから離れるに連れて厚くなっている。このような形状によって、試料SAMから発生する特性X線XLが、試料台30および搭載部40cに遮蔽され難くなり、複数のX線検出器50a、50bによって検出され易くなる。
【0048】
しかしながら、
図5に示されるように、複数のX線検出器50a、50bには、特性X線XLの検出が困難となる被遮蔽領域52が存在するので、被遮蔽領域52以外の領域で、特性X線XLを高感度に検出する必要がある。従って、複数のX線検出器50a、50bの各々は、試料SAMの上面側から発生する特性X線XLを検出するための上側センサ53と、試料SAMの下面側から発生する特性X線XLを検出するための下側センサ54とを有する。電子線EB1の入射側および透過側の両方から特性X線XLを検出できるので、検出感度を高めることができる。
【0049】
試料SAMの厚さが厚い場合など、試料SAMの下面側から発生する特性X線XLが少ない場合もある。そのため、上側センサ53および下側センサ54のうち、少なくとも上側センサ53が設けられていることが好ましい。また、ここでは、複数のX線検出器50a、50bがステージ40の周辺部40aを覆うように設けられている場合を例示しているが、複数のX線検出器50a、50bは、周辺部40aに干渉することなく、ステージ40の上方のみに設けられていてもよい。これにより、少なくとも試料SAMの上面側から発生する特性X線XLを検出することができる。
【0050】
図4Bは、対物レンズ11の詳細を示す断面図である。上磁極11aと下磁極11bとが磁路42で接続され、下部に設けられた対物レンズコイル11cは、磁路42で囲まれている。これにより、上磁極11aと下磁極11bとの間で磁場が形成されている。磁路42、ステージ40およびX線検出器50は、互いに干渉しないように配置され、それぞれ鏡筒2などに支持または接続されている。
【0051】
図4Cは、ステージ40の変形例を示す断面図であり、ステージ40の傾斜機構を2軸化とした説明図である。
図4Aでは、搭載部40cに設けられた傾斜機構41tによって傾斜機構が1軸となっている。
図4Cは、この傾斜機構を2軸化とした変形例である。
図4Cのステージ40は、傾斜機構41tと、回転機構41aとを備える。
図4Aの搭載部40cに設けられた傾斜機構41tは、回転機構41aへ変更されている。回転機構41aは、試料SAMを水平面で回転させ、方位角(azimuth angle)を変更する。
図4Cの支持部40bの根本に傾斜機構41tが設けられ、傾斜機構41tは、モーター等によって支持部40bを回転させる。傾斜機構41tは、試料SAMを光軸OAに対して傾斜させ、傾斜角(tilt angle)を変更する。
【0052】
図6~
図8は、試料SAMの解析方法の一部として、試料SAMを鏡筒2の外部から内部へ搬送する場合の搬送方法を示している。なお、
図6~
図8では、図面を見易くするために、ステージ40に関する部材のうち、周辺部40aおよび搭載部40cのみを図示している。
【0053】
図6に示されるように、まず、試料SAMが搭載された試料台30を、搬送棒31に載置する。次に、搬送口20を介して、鏡筒2の外部から内部へ搬送棒31を挿入する。ここで、搬送口20の近くに位置するX線検出器50aは、搭載部40cから遠ざけられている。次に、
図7に示されるように、搬送棒31を更に挿入することで、試料台30が搭載部40cに搭載される。次に、
図8に示されるように、搬送棒31を試料台30から分離し、搬送口20を介して、鏡筒2の内部から外部へ搬送棒31を退避させる。
【0054】
その後、X線検出器50aを搭載部40cに近づける。試料SAMの解析は、X線検出器50aが搭載部40cに近づけられた状態で、電子銃3から光軸OAに沿って電子線EB1を照射し、電子線EB1が照射された試料SAMから発生する特性X線XLを複数のX線検出器50a、50bによって検出することで行われる。
【0055】
試料SAMの解析が終了し、試料SAMを鏡筒2の内部から外部へ搬送する場合には、逆の手順を行えばよい。すなわち、まず、X線検出器50aを搭載部40cから遠ざける。次に、搬送口20を介して、鏡筒2の外部から内部へ搬送棒31を挿入する。次に、試料SAMが搭載された試料台30を、搬送棒31に載置する。次に、搬送口20を介して、鏡筒2の内部から外部へ搬送棒31を退避させる。
【0056】
<実施の形態1における主な効果>
図6~
図8に示される搬送経路32は、試料台30が搬送口20から搭載部40cまで通過する経路となっている。ここで、
図8に示されるように、X線検出器50aを搭載部40cに最も近づけた際におけるX線検出器50aの位置は、平面視において、搬送経路32に重なっている。
【0057】
上述の課題の欄で説明したように、従来技術では鏡筒に挿入された試料ホルダを用いていたので、試料ホルダが存在する空間に、X線検出器を設けることができないという問題があった。それ故、X線検出器の数を増やす、または、X線検出器を試料に接近させるなどの手法を用いて、X線の検出感度を向上させることが困難であった。
【0058】
これに対して実施の形態1では、試料ホルダが用いられておらず、試料台30の搬送時には、X線検出器50aが、搭載部40cから遠ざけられている。そして、試料SAMの解析時には、X線検出器50aは、搬送経路32に重なる位置にまで近づけられる。言い換えれば、従来では試料ホルダが存在していた空間に、X線検出器50aを設けることができる。従って、実施の形態1では、高感度にX線を検出することができる。
【0059】
なお、搬送口20から遠くに位置するX線検出器50bは、元々、搭載部40cの近くに位置している。試料SAMの解析時には、X線検出器50aも、X線検出器50bと同程度に搭載部40cの近くに位置する。すなわち、X線検出器50bの先端部と搭載部40cとの間の距離は、X線検出器50aが搭載部40cに最も近づいた際におけるX線検出器50aの先端部と搭載部40cとの間の距離と同じである。従って、複数のX線検出器50a、50bによって、高感度にX線を検出することができる。
【0060】
また、従来技術では、試料ホルダの大気圧側の部分が気圧変動および音波などの影響を受け、それによって、視野の位置ずれが生じる恐れがあった。これに対して実施の形態1では、試料SAMの解析時に、試料台30は常に鏡筒2の内部(真空側)に配置され、大気圧側の部分が存在していない。従って、上述のような視野の位置ずれなどの問題が発生しないので、試料SAMの解析の安定性および精度を向上できる。
【0061】
ところで、平面視における搭載部40cの外周形状は、多角形状であり、実施の形態1では四角形状である。複数のX線検出器50a、50bの各々の先端部は、平面視における搭載部40cの各辺に対向している。搭載部40cの各辺に対向する位置が、搭載部40cに最も近づけられる位置であるので、このように複数のX線検出器50a、50bを配置することで、X線を検出するための感度を更に高めることができる。なお、複数のX線検出器50a、50bの数は、平面視における搭載部40cの辺の数と同じである。また、支持部40bの他方の端部は、複数のX線検出器50a、50bの配置を阻害しないように、平面視における搭載部40cの何れかの角部を支持している。
【0062】
また、平面視における搭載部40cの何れかの角部が、搬送口20に対向していることが好ましい。仮に、搭載部40cのある辺が搬送口20に対向していると、その辺に対向する位置にX線検出器50を配置し難くなる。そうすると、X線検出器50の数を減らすことになり、X線を検出するための感度が低下する恐れがあるからである。
【0063】
なお、実施の形態1では、搬送口20に対して線対称に2つのX線検出器50aと、2つのX線検出器50bとが設けられているが、複数のX線検出器50の配置位置は、これらに限られない。例えば
図2で説明すると、搬送口20が右のX線検出器50aの近くに設けられていてもよい。その場合、搬送口20に最も近い右のX線検出器50aには、移動機構51が電気的に接続されるが、搬送口20に2番目に近い左のX線検出器50aにも、必要に応じて、移動機構51が電気的に接続されていてもよい。言い換えれば、平面視において搬送経路32に重なる可能性のあるX線検出器50には、移動機構51が電気的に接続される。
【0064】
また、複数の支持部40bのうち、搬送口20側に配置される支持部40bが、平面図において搬送経路32と干渉する場合には、縦断面において、支持部40bを搬送経路32の下部で周辺部40aへ接続し、搭載部40cを下から支持するようにすればよい。また、搬送口20近くの支持部40bが、平面図において搬送経路32に重ならないように、ずらして配置されていてもよい。
【0065】
(変形例1)
以下に
図9を用いて、変形例1における荷電粒子線装置1を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明し、実施の形態1と重複する点についての説明を省略する。
【0066】
実施の形態1では、X線検出器50bの位置が固定されていた。
図9に示されるように、変形例1では、X線検出器50bにも移動機構51が電気的に接続され、X線検出器50bの位置を変更できる。X線検出器50bは、移動機構51によって、搭載部40cに近づく方向または搭載部40cから遠ざかる方向へ移動できる。
【0067】
全ての複数のX線検出器50が移動可能になることで、例えば、X線を用いた分析が不要な解析工程において、複数のX線検出器50を電子線EB1の近くから退避させることができる。それによって、上側センサ53および下側センサ54などが、信号電子EB2(二次電子、反射電子)などに晒される時間を短縮できるので、センサの交換などのようなメンテナンスの頻度を下げることができる。
【0068】
(変形例2)
以下に
図10を用いて、変形例2における荷電粒子線装置1を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明し、実施の形態1と重複する点についての説明を省略する。
【0069】
図10に示されるように、変形例2では、2つのX線検出器50aと、4つのX線検出器50bとが設けられている。X線検出器50の数が増えることで、X線を検出するための感度を更に高めることができる。
【0070】
また、平面視における搭載部40cの外周形状は、多角形状であり、変形例2では六角形状である。変形例2でも、複数のX線検出器50a、50bの各々の先端部は、平面視における搭載部40cの各辺に対向し、複数のX線検出器50a、50bの数は、平面視における搭載部40cの辺の数と同じである。
【0071】
このように、複数のX線検出器50の数は、特に限られないが、少なくとも3つ以上であることが好ましい。なお、変形例2の場合でも、変形例1のように、全てのX線検出器50に移動機構51を接続させてもよい。
【0072】
<試料の解析方法>
以下に、
図11のフローチャートと、
図6~
図8とを用いて、実施の形態1、変形例1および変形例2における試料SAMの解析方法について説明する。
【0073】
まず、ステップS1では、試料SAMが搭載された試料台30と、搬送棒31とを用意する。次に、搬送棒31に試料台30を載置する。このとき、鏡筒2の内部を真空状態にしておく。
【0074】
ステップS2では、X線検出器50aが搭載部40cから遠ざけられた状態で、搬送口20を介して、鏡筒2の外部から内部へ、試料台30が載置された搬送棒31を挿入する。まず、搬送棒31および試料台30を、鏡筒2の外部から試料交換室22の内部へ挿入する。次に、試料交換室22の内部を、鏡筒2の内部と同程度の真空状態とする。次に、ゲートバルブ21を開き、搬送口20を介して、試料交換室22の内部から鏡筒2の内部へ搬送棒31を挿入する。
【0075】
ステップS3では、試料SAMが光軸OA上に位置するように、搭載部40cに試料台30を搭載する。
【0076】
ステップS4では、試料台30から搬送棒31を分離し、搬送口20を介して、鏡筒2の内部から外部へ搬送棒31を退避させる。なお、搬送棒31の退避は、鏡筒2の外部でもよいが、搬送棒31がX線検出器50と干渉しない位置まで退避できれば、搬送棒31は、鏡筒2の内部に一部残っていてもよい。その後、ステップS5が行われるが、ステップS5の前に、試料SAMのスクリーニングを行ってもよい。
【0077】
例えば、電子線EB1を試料SAMに照射し、試料SAMから発生する信号電子EB2を検出器12によって検出し、信号電子EB2を基に作成された撮影像を観察する。または、試料SAMから発生する特性X線XLをX線検出器50bによって検出し、試料SAMの元素分析を行う。この時点で、試料SAMに大きな破損がある場合、または、想定される元素とは明らかに異なる元素が検出された場合には、スクリーニングの判定を不合格とする。不合格となった試料SAMは廃棄され、他の試料SAMが新しく鏡筒2の内部へ搬送される。一方で、スクリーニングの判定で合格とされた試料SAMに対してのみ、ステップS5以降が行われる。
【0078】
ステップS5では、搭載部40cにX線検出器50aを近づける。これにより、全てのX線検出器50a、50bが搭載部40cの近くに配置されるので、試料SAMの特性X線XLを高感度に検出することができる。
【0079】
ステップS6では、電子銃3から光軸OAに沿って電子線EB1を照射する。電子線EB1が試料SAMに照射された際に試料SAMから発生する特性X線XLを、複数のX線検出器50a、50bによって検出する。これにより、試料SAMの元素分析が行われる。
【0080】
その他、試料SAMに電子線EB1を照射することで行われる解析工程を実施してもよい。例えば、検出器12によって信号電子EB2を検出し、カメラ15によって蛍光FLを検出し、これらを信号制御部C4によって電子情報として処理し、これらの電子情報を基にして画像データを取得してもよい。
【0081】
ここで、変形例1のように、全てのX線検出器50a、50bに移動機構51が電気的に接続されている場合、上記解析工程のような、特性X線XLを検出する工程以外は、複数のX線検出器50a、50bのうち全部が搭載部40cから遠ざけられた状態で行われる。
【0082】
試料SAMの解析が終了したら、試料SAMを鏡筒2の内部から外部へ搬送する。まず、X線検出器50aを搭載部40cから遠ざける。次に、搬送口20を介して、鏡筒2の外部から内部へ搬送棒31を挿入する。次に、試料SAMが搭載された試料台30を、搬送棒31に載置する。次に、搬送口20を介して、鏡筒2の内部から外部へ搬送棒31を退避させる。
【0083】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、特性X線XLの分析に、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いる場合について説明したが、特性X線XLの分析には、波長分散型X線分光法(WDX)が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 荷電粒子線装置
2 鏡筒
3 電子銃
4 電子源
5 抑制電極
6 引出電極
7 陽極
8 電子光学系
9 集束レンズ
10 偏向レンズ
11 対物レンズ
11a 上磁極
11b 下磁極
11c 対物レンズコイル
12 検出器
13 結像系
14 蛍光板
15 カメラ
16 入力装置
17 モニタ
18 STEM検出器
20 搬送口
21 ゲートバルブ
22 試料交換室
30 試料台
31 搬送棒
32 搬送経路
40 ステージ
40a 周辺部
40b 支持部
40c 搭載部
41 駆動機構
41a 回転機構
41t 傾斜機構
41x X軸微動機構
41y Y軸微動機構
41z Z軸微動機構
42 磁路
50、50a、50b X線検出器
51 移動機構
52 被遮蔽領域
53 上側センサ
54 下側センサ
C0 総合制御部(制御部)
C1 電子源制御部
C2 電子光学系制御部
C3 ステージ制御部
C4 信号制御部
C5 元素分析制御部
EB1 電子線
EB2 信号電子
EB3 透過電子
FL 蛍光
OA 光軸
OP 開口部
SAM 試料
XL 特性X線