(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】レーザ溶着装置及びレーザ溶着方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20240805BHJP
F16L 13/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B29C65/16
F16L13/02
(21)【出願番号】P 2020012698
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-12-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「Tmレーザによる異種透明樹脂部品の高強度・高速接合技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 幸男
(72)【発明者】
【氏名】中山 祐正
(72)【発明者】
【氏名】山本 元道
(72)【発明者】
【氏名】門 格史
(72)【発明者】
【氏名】大石 郁
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋治
(72)【発明者】
【氏名】田所 英記
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬史
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267384(JP,A)
【文献】特開2013-208647(JP,A)
【文献】特開平11-033747(JP,A)
【文献】特開2005-305985(JP,A)
【文献】特開2011-125928(JP,A)
【文献】特開平11-348123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00- 65/82
B23K 26/00- 26/70
F16L 1/00-101/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内側筒状樹脂成形体と筒状の外側筒状樹脂成形体とをレーザによって溶着するレーザ溶着装置であって、
前記レーザ溶着装置には、前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部が前記外側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置されることで、前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部と前記外側筒状樹脂成形体の少なくとも一部とが径方向に重なった状態で配置されており、
前記内側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置され、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に延びる芯状部材と、
前記外側筒状樹脂成形体の外面に当接又は近接して配置される押さえ部材と、
前記外側筒状樹脂成形体の径方向の外側から、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重なった部分にレーザ光を照射するレーザ照射機構部と、
前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体を、一体的に、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の中心軸を中心に回転させる回転部と、を備え、
前記芯状部材は、前記内側筒状樹脂成形体の内面に当接すると共に軸方向の一側から他側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜して形成されるテーパ外面を有し、
前記押さえ部材は、前記外側筒状樹脂成形体の外面に当接すると共に軸方向の他側から一側に向かうに従って径が小さくなるように前記テーパ外面とは軸方向に対して逆向きに傾斜して形成されるテーパ内面を有し、
前記レーザ照射機構部は、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重った部分に対して、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に沿ってレーザ光を所定幅で往復して照射し、
前記レーザ照射機構部から照射されるレーザ光において、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体との接合界面のレーザ光のビーム径dsは、レーザ光の振動ピッチPsよりも大きい、レーザ溶着装置。
【請求項2】
前記押さえ部材は、前記レーザ照射機構部からのレーザ光を透過す
る請求項
1に記載のレーザ溶着装置。
【請求項3】
筒状の内側筒状樹脂成形体と筒状の外側筒状樹脂成形体とをレーザによって溶着するレーザ溶着方法であって、
前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部を前記外側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置することで、前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部と前記外側筒状樹脂成形体の少なくとも一部とを径方向に重ねた状態で配置する樹脂成形体配置工程と、
前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に延びる芯状部材
であって軸方向の一側から他側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜して形成されるテーパ外面を有する芯状部材を、前記内側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置する芯状部材配置工程と、
前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体を、一体的に、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の中心軸を中心に回転させる回転工程と、
前記外側筒状樹脂成形体の径方向の外側から、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重なった部分にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
レーザ光を透過する押さえ部材であって軸方向の他側から一側に向かうに従って径が小さくなるように前記テーパ外面とは軸方向に対して逆向きに傾斜して形成されるテーパ内面を有する押さえ部材を、前記外側筒状樹脂成形体の外面に当接又は近接させて配置する押さえ部材配置工程と、を含み、
前記レーザ光照射工程は、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重った部分に対して、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に沿ってレーザ光を所定幅で往復して照射し、
前記レーザ光照射工程において照射されるレーザ光において、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体との接合界面のレーザ光のビーム径dsは、レーザ光の振動ピッチPsよりも大きい、レーザ溶着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側筒状樹脂成形体と外側筒状樹脂成形体とをレーザによって溶着するレーザ溶着装置及びレーザ溶着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野や自動車分野などにおいて、2つの筒状の筒状樹脂成形体をレーザによって溶着する溶着方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の溶着方法は、内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部が外側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置されることで径方向に重なって配置された状態において、外側筒状樹脂成形体の径方向の外側から、外側筒状樹脂成形体と内側筒状樹脂成形体とが重なった部分にレーザ光を照射することで、レーザにより溶着する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの筒状樹脂成形体を接合する場合に、例えば、2つの筒状樹脂成形体の接合部の加圧が困難であるため接合強度が不足したりすることで、2つの筒状樹脂成形体の接合状態が良好でないことがある。
【0005】
本発明は、2つの筒状樹脂成形体を良好に接合できるレーザ溶着装置及びレーザ溶着方法を提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状の内側筒状樹脂成形体と筒状の外側筒状樹脂成形体とをレーザによって溶着するレーザ溶着装置であって、前記レーザ溶着装置には、前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部が前記外側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置されることで、前記内側筒状樹脂成形体の少なくとも一部と前記外側筒状樹脂成形体の少なくとも一部とが径方向に重なった状態で配置されており、前記内側筒状樹脂成形体の内側の空間に配置され、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に延びる芯状部材と、前記外側筒状樹脂成形体の径方向の外側から、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重なった部分にレーザ光を照射するレーザ照射機構部と、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体を、一体的に、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の中心軸を中心に回転させる回転部と、を備えるレーザ溶着装置に関する。
【0007】
また、前記芯状部材は、前記内側筒状樹脂成形体の内面に当接すると共に軸方向において径が小さくなるように傾斜して形成されるテーパ外面を有することが好ましい。
【0008】
また、前記外側筒状樹脂成形体の外面に当接又は近接して配置されると共に前記レーザ照射機構部からのレーザ光を透過する押さえ部材を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記押さえ部材は、前記外側筒状樹脂成形体の外面に当接すると共に軸方向において径が小さくなるように傾斜して形成されるテーパ内面を有することが好ましい。
【0010】
また、前記レーザ照射機構部は、前記外側筒状樹脂成形体と前記内側筒状樹脂成形体とが重った部分に対して、前記内側筒状樹脂成形体及び前記外側筒状樹脂成形体の軸方向に沿ってレーザ光を所定幅で往復して照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2つの筒状樹脂成形体を良好に接合できるレーザ溶着装置及びレーザ溶着方法を提供とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ溶着装置の全体構成を示す図である。
【
図2】芯状部材及びテーパガラス管を内側筒状樹脂成形体及び外側筒状樹脂成形体に着脱する状態を示す図である。
【
図3A】レーザ光の揺動条件の幾何学的関係を説明するための図であって、溶着ビードが十分な溶着強度を得ることができる場合を示す図である。
【
図3B】レーザ光の揺動条件の幾何学的関係を説明するための図であって、溶着ビードが十分な溶着強度を得ることできない場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のレーザ溶着装置1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明のレーザ溶着装置1は、筒状の内側筒状樹脂成形体11と筒状の外側筒状樹脂成形体12とが装着された状態で、内側筒状樹脂成形体11と外側筒状樹脂成形体12とをレーザによって溶着する装置である。なお、本実施形態においては、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12が延びる方向をX方向といい、X方向において、回転機構部6が配置される側(
図1における左側)をX1側といい、軸方向押圧機構部7が配置される側(
図1における右側)をX2側という。
【0014】
図1に示すように、レーザ溶着装置1は、ベース板2と、芯状部材3と、テーパガラス管4(押さえ部材)と、ガラス管保持部材5と、回転機構部6(回転部)と、軸方向押圧機構部7と、レーザ照射機構部8と、を備える。ベース板2は、X方向に水平に延びる板状に形成される。ベース板2上には、回転機構部6及び軸方向押圧機構部7がX方向に離間した状態で固定される。回転機構部6と軸方向押圧機構部7との間には、内側筒状樹脂成形体11の一部及び外側筒状樹脂成形体12の一部が径方向に重なった状態で配置される。
【0015】
内側筒状樹脂成形体11と外側筒状樹脂成形体12とがレーザ溶着装置1に装着された状態において、内側筒状樹脂成形体11のX方向のX2側の部分は、外側筒状樹脂成形体12のX方向のX1側の部分の内側の空間に配置される。これにより、内側筒状樹脂成形体11の一部と外側筒状樹脂成形体12の一部とは、径方向に重なって配置される。
【0016】
内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、いずれも、テーパ状の部分を有し、軸方向Aに延びる筒状に形成される。本実施形態においては、軸方向AとX方向とは一致している。内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、中心軸J1を中心に回転方向Rに回転可能に配置される。内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、樹脂材料で形成された成形体である。内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を形成する樹脂材料は、同じ種類の樹脂材料でもよく、異なる種類の樹脂材料でもよい。内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂材料を挙げることができる。
【0017】
内側筒状樹脂成形体11は、
図1に示すように、テーパ状の部分を有する筒状に形成される。内側筒状樹脂成形体11は、X方向のX1側に配置される内側X1側円筒部111と、X方向のX2側に配置される内側X2側テーパ部112と、を有する。
【0018】
内側X1側円筒部111は、軸方向Aに同径で延びる円筒状に形成される。内側X1側円筒部111のX方向のX1側の端部は、後述する回転機構部6の接続治具部材63に接続される。内側筒状樹脂成形体11は、内側X1側円筒部111に接続された接続治具部材63を介して、回転機構部6により発生される回転駆動力により、中心軸J1を中心に回転方向Rに回転可能である。
【0019】
内側X2側テーパ部112は、内側X1側円筒部111のX2側の端部からX2側に軸方向Aに延びており、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径方向の厚みが小さくなる円筒状に形成される。内側X2側テーパ部112の内側の空間には、後述する芯状部材3のX方向のX1側の部分が配置される。また、内側X2側テーパ部112のX方向のX2側の部分は、外側筒状樹脂成形体12のX方向のX1側の部分の内側の空間に配置される。
【0020】
内側X2側テーパ部112は、内面に形成される内側テーパ内面112aと、外面に形成される内側テーパ外面112bと、を有する。内側X2側テーパ部112は、内側テーパ内面112aと内側テーパ外面112bとが軸方向Aに対して互いが逆向きに傾斜することで、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径方向の厚みが小さくなるように形成される。
【0021】
内側テーパ内面112aは、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径が大きくなるように傾斜するテーパ状に形成される。内側テーパ内面112aには、芯状部材3の芯状部材X1側テーパ部31の芯状部材テーパ外面311(後述)に当接する。
【0022】
内側テーパ外面112bは、内側テーパ内面112aとは軸方向Aに対して逆向きに傾斜して形成され、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜するテーパ状に形成される。内側テーパ外面112bは、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ内面12a(後述)のX1側の部分に当接する。
【0023】
外側筒状樹脂成形体12は、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径方向の厚みが僅かに小さくなる円筒状に形成される。外側筒状樹脂成形体12のX方向のX1側の内側の空間には、内側筒状樹脂成形体11のX方向のX2側の部分が配置される。また、外側筒状樹脂成形体12のX方向のX2側の部分は、後述するテーパガラス管4のX方向のX1側の部分の内側の空間に配置される。
【0024】
外側筒状樹脂成形体12は、内面に形成される外側テーパ内面12aと、外面に形成される外側テーパ外面12bと、を有する。外側テーパ内面12a及び外側テーパ外面12bは、いずれも、X方向のX1側からX2側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜するテーパ状に形成される。外側テーパ内面12aの軸方向Aに対する傾斜角度は、外側テーパ外面12bの軸方向Aに対する傾斜角度よりも僅かに小さく形成されている。外側テーパ内面12aは、内側筒状樹脂成形体11の内側X2側テーパ部112の内側テーパ外面112bに当接する。外側テーパ外面12bは、テーパガラス管4のガラステーパ内面41(後述)のX1側の部分に当接する。
【0025】
なお、本実施形態においては、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、テーパ状の部分を有するが、これに限定されない。内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、樹脂材料で形成されているため、内側筒状樹脂成形体11の一部が外側筒状樹脂成形体12の内側の空間に挿入されることや、芯状部材3とテーパガラス管4とに挟み込まれたりすることで、変形する。そのため、レーザ溶着装置1への装着前には、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12には、テーパ状の部分が形成されておらず、レーザ溶着装置1への装着後に、樹脂材料が変形されて、テーパ状の部分が形成されていてもよい。また、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12がテーパ状の部分を有する場合においても、装着前と装着後とにおいて、テーパ状の部分の形状が同じであってもよいし、樹脂材料が変形されることで、テーパ状の部分の形状が異なっていてもよい。
【0026】
また、本実施形態においては、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、テーパ状の部分を有するが、これに限定されず、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12が円筒形状に形成され、芯状部材3が僅かに突出する突起を有し、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の外側に配置されるガラス管も円筒状に形成されていてもよい。この場合、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、芯状部材3の突起により、樹脂材料が膨らむことで、円筒状のガラス管に接触して加圧される。
内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12が太径の場合には、芯状部材3を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の内部で膨らむバルーンにより構成してもよい。
【0027】
芯状部材3は、軸方向Aに延びる棒状に形成される。芯状部材3は、内側筒状樹脂成形体11の一部及び外側筒状樹脂成形体12の一部が径方向に重なった接合部分において、内側筒状樹脂成形体11の径方向の内側の空間に配置される。芯状部材3を構成する材料としては、例えば、金属材料、ガラス、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12よりも高融点の高融点樹脂、セラミックス等が挙げられる。
また、芯状部材3は、必要に応じて、レーザ光を吸収しにくい材料で形成することが好ましい。レーザ光を吸収しにくい材料で芯状部材3を形成することで、内側筒状樹脂成形体11の内面が芯状部材3に溶着されたり、芯状部材3の外部が溶融することを防げるためである。
芯状部材3は、X方向のX1側に配置される芯状部材X1側テーパ部31と、X方向のX2側に配置される芯状部材X2側円柱部32と、を有する。
【0028】
芯状部材X1側テーパ部31は、内側筒状樹脂成形体11の内側X2側テーパ部112の内側の空間に配置される。芯状部材X1側テーパ部31は、外面に形成される芯状部材テーパ外面311(テーパ外面)を有する。芯状部材テーパ外面311は、軸方向Aにおいて径が小さくなるように傾斜するテーパ状に形成され、X方向(軸方向)のX2側(一側)からX1側(他側)に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。芯状部材テーパ外面311は、内側筒状樹脂成形体11の内側X2側テーパ部112の内側テーパ内面112aに当接する。
芯状部材X2側円柱部32は、芯状部材X1側テーパ部31のX2側の端部の径と同じ径で、芯状部材X1側テーパ部31のX2側の端部からX2側に延びる。
【0029】
テーパガラス管4は、内側筒状樹脂成形体11の一部及び外側筒状樹脂成形体12の一部が径方向に重なった接合部分において、X1側の部分が、外側筒状樹脂成形体12の径方向の外側に配置される。テーパガラス管4は、後述するレーザ照射機構部8から照射されるレーザ光LBを透過する透過材料(例えばガラス材料)により形成される。
【0030】
テーパガラス管4は、ガラステーパ内面41(テーパ内面)と、ガラステーパ外面42と、を有する。ガラステーパ内面41及びガラステーパ外面42は、いずれも、軸方向Aにおいて径が小さくなるように傾斜するテーパ状に形成される。ガラステーパ内面41及びガラステーパ外面42は、軸方向Aに対する傾斜角度が同じ傾斜角度で形成され、X方向(軸方向A)のX1側(他側)からX2側(一側)に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。ガラステーパ内面41のX1側の部分は、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12b(外面)に当接又は近接する。ガラステーパ内面41は、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311とは軸方向Aに対して逆向きに傾斜して形成される。
【0031】
テーパガラス管4を外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに当接又は近接させて配置させる場合、テーパガラス管4は、レーザ照射機構部8がレーザ光LBを照射する初期においては、必ずしも、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bの全周に亘って当接する必要はなく、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bとの間に僅かな隙間を有して近接していてもよい。テーパガラス管4は、レーザ光LBを照射する初期において、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに近接して配置されていても、レーザ光LBの照射で熱膨張することなどにより外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに当接することで、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部を加圧できればよい。
【0032】
以上の芯状部材3及びテーパガラス管4を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12に装着する場合には、
図2に示すように、外側筒状樹脂成形体12のX1側の内側の空間に、内側筒状樹脂成形体11のX2側の端部をX1側から挿入して配置した状態で、芯状部材3をX2側からX1側に移動させて内側筒状樹脂成形体11のX2側の内側の空間に挿入すると共に、テーパガラス管4をX2側からX1側に移動させて外側筒状樹脂成形体12のX2側の外側に配置する。一方、芯状部材3及びテーパガラス管4を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12から取り外す場合には、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12に装着された芯状部材3及びテーパガラス管4を、X1側からX2側に移動させる。このようにして、芯状部材3及びテーパガラス管4を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12に着脱できる。
【0033】
図1に示すように、ガラス管保持部材5は、テーパガラス管4のX方向のX2側の端部を保持する。ガラス管保持部材5は、軸方向Aにおいて、テーパガラス管4側が開放すると共に、テーパガラス管4と反対側の端部には閉鎖部52が形成される。ガラス管保持部材5の開放側の端部の板厚部分における径方向の内側には、切り欠き部51が形成される。ガラス管保持部材5は、切り欠き部51において、テーパガラス管4のX方向のX2側の端部を保持する。閉鎖部52におけるX1側を向く内側面52aには、芯状部材3のX方向のX2側の端面が当接する。閉鎖部52におけるX2側を向く端面52bは、後述する押圧機構71の押圧突起712によりX1側に押圧される。
【0034】
回転機構部6は、
図1に示すように、ベース板2のX1側の端部側において、ベース板2の上部に配置される。回転機構部6は、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を、一体的に、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の中心軸J1を中心に回転方向Rに回転させる。回転機構部6は、モータ本体61と、駆動軸部材62と、接続治具部材63と、モータ支持壁64と、を備える。
【0035】
モータ本体61は、モータ支持壁64に支持される。モータ本体61は、例えば、減速機付モータ等を有して構成され、回転駆動力を発生させて、回転駆動力を駆動軸部材62に伝達する。
【0036】
駆動軸部材62は、モータ本体61からX方向のX2側に延びる。駆動軸部材62は、モータ本体61により伝達された回転駆動力により、軸方向Aに延びる回転軸J2を中心に回転方向Rに回転する。駆動軸部材62の回転軸J2は、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の中心軸J1と同一直線上に延びる。
【0037】
接続治具部材63は、駆動軸部材62と内側筒状樹脂成形体11とを接続する。接続治具部材63は、駆動軸部材62により伝達された回転駆動力を内側筒状樹脂成形体11に伝達することで、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を、一体的に、中心軸J1を中心に回転方向Rに回転させる。
【0038】
軸方向押圧機構部7は、ベース板2のX2側の端部側において、ベース板2の上部に配置される。軸方向押圧機構部7は、ガラス管保持部材5をX1側に押圧することにより、芯状部材3、テーパガラス管4、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を、X方向のX2側からX1側に向けて押圧する。軸方向押圧機構部7は、押圧機構71と、軸方向移動部72と、押圧機構支持壁73と、を備える。
【0039】
押圧機構71は、押圧部711を有し、押圧機構支持壁73に支持される。押圧部711は、例えば、ベアリング付きのスプリンク機構(図示せず)を有して構成され、テーパガラス管4をX方向のX1側に押圧すると共に回転可能に構成される。押圧部711は、X方向のX1側に突出する押圧突起712を有する。
【0040】
押圧突起712は、スプリンク機構のバネ部材(図示せず)により付勢され、ガラス管保持部材5をX1側に押圧することにより、ガラス管保持部材5を介して、芯状部材3、テーパガラス管4、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を、X方向のX2側からX1側に向けて押圧する。これにより、芯状部材3、テーパガラス管4、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12は、X方向において、押圧された状態で、回転機構部6と軸方向押圧機構部7との間に挟み込まれる。
【0041】
軸方向移動部72は、軸方向移動アクチュエータ721と、軸方向駆動軸部材722と、を有する。軸方向移動アクチュエータ721は、軸方向Aに直線駆動力を発生させて、発生させた直線駆動力を、軸方向駆動軸部材722に伝達する。軸方向駆動軸部材722のX2側の先端には、押圧機構支持壁73が接続されている。軸方向駆動軸部材722を軸方向Aに移動させることで、押圧機構支持壁73は、軸方向Aに移動される。
【0042】
以上のように構成される軸方向押圧機構部7は、軸方向移動アクチュエータ721により発生された直線駆動力により、軸方向駆動軸部材722を介して押圧機構支持壁73を軸方向Aに移動させる。これにより、押圧機構支持壁73に支持された押圧機構71の押圧突起712は、ガラス管保持部材5をX方向のX2側からX1側に向けて押圧することで、芯状部材3及びテーパガラス管4をX2側からX1側に向けて押圧する。
【0043】
ここで、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311は、X方向(軸方向)のX2側からX1側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。また、テーパガラス管4のガラステーパ内面41は、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311とは軸方向Aに対して逆向きに傾斜して形成され、X方向(軸方向A)のX1側からX2側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。これにより、芯状部材3及びテーパガラス管4をX2側からX1側に向けて押圧することで、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311が内側筒状樹脂成形体11を径方向の外側に押圧できると共に、テーパガラス管4のガラステーパ内面41が外側筒状樹脂成形体12を径方向の内側に押圧できる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を密着させるように径方向に押圧することができる。
【0044】
レーザ照射機構部8は、レーザ照射機器81と、走査ミラー部82と、集光レンズ83と、を備える。
【0045】
レーザ照射機器81は、レーザ発信器やコリメータ等を含んで構成される。レーザ照射機器81は、外側筒状樹脂成形体12の径方向の外側から、外側筒状樹脂成形体12一部と内側筒状樹脂成形体11の一部とが重なった接合部分にレーザ光LBを照射する。レーザ照射機器81としては、近赤外領域や中赤外領域の波長(700~4000nm)のレーザ光LBを出射するものを利用でき、例えば、1200~2500nmの波長のレーザ光LBを出射するものが好ましい。例えば、レーザ光LBとして、樹脂材料への吸収性を考慮して、適度な吸収性を有するTmレーザ(ツリウムレーザ、波長:2000nm)を用いることができる。
【0046】
レーザ照射機器81は、外側筒状樹脂成形体12の一部と内側筒状樹脂成形体11の一部とが重った接合部分に対して、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の軸方向Aに沿ってレーザ光LBを揺動幅Ws(所定幅)で往復して照射する。レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBは、走査ミラー部82により揺動幅Ws(所定幅)で往復して走査されることで、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部に照射される。
【0047】
レーザ照射機器81は、所定のビーム径ds(
図3A参照)を有するレーザ光LBを出射する。
図1に示すように、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBの光路上には、レーザ照射機器81から内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部までの間に、レーザ照射機器81、走査ミラー部82、集光レンズ83、テーパガラス管4、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部が、この順に配置されている。
【0048】
走査ミラー部82は、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBの光路上において、レーザ照射機器81と内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部との間に配置される。走査ミラー部82は、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBを内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部に向けて反射させると共に、所定速度で往復するように回動軸を中心に回動することで、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBを軸方向Aに揺動幅Wsで走査する。走査ミラー部82は、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBを、レーザ光LBの揺動幅Wsの範囲において、軸方向Aに沿って所定速度で往復して揺動することで高速走査(高速スキャニング)を実行する。走査ミラー部82として、例えば、ガルバノミラーを用いることができる。
【0049】
以上の走査ミラー部82により、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12が回転方向Rに回転された状態で、軸方向Aにおける揺動幅Wsの範囲で、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部にレーザ光LBが高速走査されることにより、
図2に示すように、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部には、互いの樹脂材料が溶融して、揺動幅Wsに比例した幅を有する連続的な溶着ビードBが形成される。溶着ビードBが狙い通りのビード幅を有することで,想定される外力に耐えられる十分な溶着強度を得ることができ、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12が良好な状態で溶着されて接合される。
【0050】
溶着ビードBが十分な溶着強度を得るためには、下記の式(1)の関係が成立することが必要となる。
振動ピッチPs<接合界面のビーム径ds・・・(1)
【0051】
溶着ビードBが十分な溶着強度を得るためには、レーザ光LBが揺動幅Wsの範囲で揺動する場合に、
図3Aに示すように、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の回転方向Rにおいて、往復するレーザ光LBのビーム径dsの少なくとも一部が重複している(分離していない)ことが必要であり、上記の式(1)の関係が成立することが必要となる。なお、本実施形態においては、揺動幅Ws>接合界面におけるビーム径dsである。
【0052】
上記の式(1)を満たす場合には、
図3Aに示すように、レーザ光LBは、揺動幅Wsの範囲において、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の回転方向Rにおいて往復するレーザ光LBの接合界面のビーム径dsとレーザ光の振動ピッチPsとが重複して、レーザ光LBが面状の軌跡を描くことができる。これにより、上記の式(1)を満足する場合には、揺動幅Wsの範囲において、レーザ光LBを面状に揺動させることで、十分な溶着強度を得ることできる。
【0053】
一方、上記の式(1)を満たさない場合には、十分な溶着強度を得ることができない。より具体的には、上記の式(1)を満たさない場合とは、レーザ光LBの振動ピッチPsが接合界面のビーム径dsよりも大きい場合(振動ピッチPs>接合界面のビーム径ds)であって、例えば、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の回転方向Rの周速度VBが速すぎる場合である。例えば、レーザ光LBが揺動幅Wsの範囲で揺動する場合に、
図3Bに示すように、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の回転方向Rにおいて、往復するレーザ光LBのビーム径dsが重複しない(分離している)場合である。この場合には、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の回転方向Rにおいて往復するレーザ光LBの接合界面のビーム径dsとレーザ光の振動ピッチPsとが重複せずに、揺動幅Wsの範囲において、レーザ光LBが往復する線状の軌跡を描くことになる。そのため、上記の式(1)を満足さない場合には、
図3Bに示すように、レーザ光LBを線状に揺動させることになり、溶着強度が低下しやすくなる傾向となり、十分な溶着強度を得ることができない。
【0054】
言い換えると、レーザ光LBの走査速度が内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の溶着部分の周速度VBに対して遅いときは、
図3Bに示すように、溶着ビードBは折れ線状になるが、レーザ光LBの走査速度が内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の溶着部分の周速度VBに対して高速のときは、
図3Aに示すように、溶着ビードB同士が重なり合って、全体として連続した幅広の溶着ビードBが形成されるという効果がある。また、レーザ光LBの走査速度が内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の溶着部分の周速度VBに対して遅いときは,熱源移動速度が遅くなり、
図3Bの折れ線状の溶着ビードBにより局所的に過大な入熱がされた状態となり、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部が焦げたり劣化したりする不具合が発生する。これに対して、レーザ光LBの走査速度が内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の溶着部分の周速度VBに対して速いときは,
図3Aの連続した幅広の溶着ビードBにより分散して入熱がされた状態となり、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合状態が良好でないという課題を解決して、内側筒状樹脂成形体11と外側筒状樹脂成形体12とを良好に接合できる。
【0055】
ここで、振動ピッチPs=接合界面の周速度VB/振動周波数Fsという関係式が成り立つため、上記の式(1)に当てはめると、振動ピッチPs=接合界面の周速度VB/振動周波数Fs<接合界面のビーム径dsとなる。この関係式を整理することにより、下記の式(2)が得られる。よって、溶着ビードBが十分な溶着強度を得るためには、下記の式(2)の関係を満たすことが好ましい。
振動周波数Fs>接合界面の周速度VB/接合界面のビーム径ds・・・(2)
【0056】
集光レンズ83は、
図1に示すように、レーザ照射機器81から出射されるレーザ光LBの光路上において、走査ミラー部82と内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部との間に配置される。集光レンズ83は、走査ミラー部82に反射されたレーザ光LBを集光して、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部にレーザ光LBを照射する。集光レンズ83として、例えば、シリンドリカルレンズを用いることができる。
【0057】
集光レンズ83としては、例えば、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部の界面において、エネルギー密度が高くなる集光条件となるものを利用できる。例えば、レーザとしてTmレーザを用いて、集光レンズ83の集光条件を適正化することにより、接合界面において表面の2倍以上のエネルギー密度を得ることができ、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の樹脂全体におけるレーザ照射による劣化(焦げ、蒸発に至らなくても低分子化による樹脂自身の強度低下など)を低減させることが可能となる。
【0058】
以上のように構成されたレーザ照射機構部8は、回転方向Rに回転する内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12に対して、レーザ照射機器81から出射されたレーザ光LBを走査ミラー部82により揺動幅Wsで揺動して走査すると共に、集光条件を適正化した集光レンズ83により集光する。これにより、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部を、揺動幅Wsの幅で周方向に溶着できるため、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合強度を向上できる。
【0059】
次に、本発明のレーザ溶着方法について説明する。本実施形態のレーザ溶着方法は、筒状の内側筒状樹脂成形体11と筒状の外側筒状樹脂成形体12とをレーザによって溶着する溶着方法である。
【0060】
まず、内側筒状樹脂成形体11の少なくとも一部を外側筒状樹脂成形体12の内側の空間に配置することで、内側筒状樹脂成形体11の少なくとも一部と外側筒状樹脂成形体12の少なくとも一部とを径方向に重ねた状態で配置する(樹脂成形体配置工程)。
【0061】
続けて、芯状部材3及びテーパガラス管4を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12に装着する。この場合には、
図2に示すように、外側筒状樹脂成形体12のX1側の内側の空間に、内側筒状樹脂成形体11のX2側の端部をX1側から挿入して配置した状態で、芯状部材3をX2側からX1側に移動させて内側筒状樹脂成形体11のX2側の内側の空間に挿入して配置する(芯状部材配置工程)と共に、テーパガラス管4をX2側からX1側に移動させて外側筒状樹脂成形体12のX2側の外側テーパ外面12bに当接又は近接させて配置する(押さえ部材配置工程)。
【0062】
テーパガラス管4を外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに当接又は近接させて配置させる場合、テーパガラス管4は、レーザ照射機構部8がレーザ光LBを照射する初期においては、必ずしも、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bの全周に亘って当接する必要はなく、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bとの間に僅かな隙間を有して近接していてもよい。テーパガラス管4は、レーザ光LBを照射する初期において、外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに近接して配置されていても、レーザ光LBの照射で熱膨張することなどにより外側筒状樹脂成形体12の外側テーパ外面12bに当接することで、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部を加圧できればよい。
【0063】
次に、軸方向押圧機構部7により、テーパガラス管4を保持するガラス管保持部材5をX方向のX2側からX1側に向けて押圧することで、芯状部材3及びテーパガラス管4をX2側からX1側に向けて押圧する。
【0064】
ここで、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311は、X方向(軸方向)のX2側からX1側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。また、テーパガラス管4のガラステーパ内面41は、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311とは軸方向Aに対して逆向きに傾斜して形成され、X方向(軸方向A)のX1側からX2側に向かうに従って径が小さくなるように傾斜する。これにより、芯状部材3及びテーパガラス管4をX2側からX1側に向けて押圧することで、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311が内側筒状樹脂成形体11を径方向の外側に押圧できると共に、テーパガラス管4のガラステーパ内面41が外側筒状樹脂成形体12を径方向の内側に押圧できる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を密着させるように径方向に押圧することができる。
【0065】
次に、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を、一体的に、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の中心軸を中心に回転させる(回転工程)。
続けて、外側筒状樹脂成形体12の径方向の外側から、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重なった部分にレーザ光を照射する(レーザ光照射工程)。より具体的には、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重なった部分にレーザ光を照射する際に、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重った部分に対して、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の軸方向に沿ってレーザ光を揺動幅Ws(所定幅)で往復して照射する。
【0066】
これにより、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部を、揺動幅Wsの幅で周方向に溶着できるため、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合強度を向上できる。よって、内側筒状樹脂成形体11と外側筒状樹脂成形体12とを良好に接合できる。
【0067】
以上説明した本実施形態のレーザ溶着装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0068】
本実施形態のレーザ溶着装置1を、内側筒状樹脂成形体11の少なくとも一部が外側筒状樹脂成形体12の内側の空間に配置された状態で、内側筒状樹脂成形体11の内側の空間に配置され内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の軸方向に延びる芯状部材3と、外側筒状樹脂成形体12の径方向の外側から、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重なった部分にレーザ光LBを照射するレーザ照射機構部8と、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を一体的に中心軸J1を中心に回転させる回転機構部6と、を備えて構成した。
【0069】
ここで、内側筒状樹脂成形体11の内側の空間に何も配置しないと、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重なった部分において、内側筒状樹脂成形体11の内面は、溶着時の加熱により、塑性変形し易く、内側筒状樹脂成形体11の内径を狭めて(断面積を減少させて)、内側筒状樹脂成形体11の内部を通る物質の輸送機能を低下させたり、液溜りを形成して、衛生上の課題となるケースもある。さらに、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11との接合部の加圧が不足すると、樹脂界面同士の密着状態が良好でなくなり、接合強度が低下するという課題がある。特に、外側筒状樹脂成形体12及び内側筒状樹脂成形体11が異種の樹脂材料で形成される場合には、外側筒状樹脂成形体12及び内側筒状樹脂成形体11を接合させる場合に、樹脂材料が相互に混ざり合いにくいため、この課題が顕著になる。
これに対して、本発明においては、芯状部材3を内側筒状樹脂成形体11の内側の空間に配置したため、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合部において、接合強度を向上できると共に、膨張変形を抑制できる。よって、内側筒状樹脂成形体11と外側筒状樹脂成形体12とを良好に接合できる。
【0070】
また、本実施形態においては、芯状部材3を、内側筒状樹脂成形体11の内面に当接すると共に軸方向Aにおいて径が小さくなるように傾斜して形成される芯状部材テーパ外面311を有して構成した。これにより、芯状部材3を軸方向Aに移動させることで、芯状部材テーパ外面311が径方向の外側に配置される内側筒状樹脂成形体11の内面に押圧力を作用させることができるため、芯状部材テーパ外面311が内側筒状樹脂成形体11の内面を容易に押圧できる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の密着性を一層向上できる。また、内側筒状樹脂成形体11から芯状部材3を取り外す際において、芯状部材3を軸方向Aに移動させるだけで、内側筒状樹脂成形体11から芯状部材3を容易に取り外すことができる。
【0071】
また、本実施形態においては、外側筒状樹脂成形体12の外面に当接又は近接して配置されると共にレーザ照射機構部8からのレーザ光LBを透過するテーパガラス管4を更に備えて構成した。
【0072】
ここで、外側筒状樹脂成形体12の外面に何も当接させないと、外側筒状樹脂成形体12の外面は、レーザ光の集中により加熱されて、レーザ光の周辺では蒸発反力で溶着ビードが盛り上がり、中心部は深く窪み、美観上好ましくない状態になりやすい。また、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の局所的な肉厚が減少して、接合強度が低下した溶着ビードが形成されやすい。また、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の溶融時に、外側筒状樹脂成形体12の外面の加圧が不十分な場合は、局所的に、溶着ビードの一部が窪んで、美観上好ましくない状態や、肉厚不足で接合強度が低下することがある。
これに対して、本発明においては、外側筒状樹脂成形体12の外面に当接又は近接して配置されるテーパガラス管4を配置したため、外側筒状樹脂成形体12を径方向の外側から押さえることができる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合強度を一層向上できる。また、外側筒状樹脂成形体12の外観を、美観上、良好に形成できる。
【0073】
また、本実施形態においては、テーパガラス管4を、外側筒状樹脂成形体12の外面に当接すると共に軸方向Aにおいて径が小さくなるように傾斜して形成されるガラステーパ内面41を有して構成した。これにより、外側筒状樹脂成形体12を外側において軸方向Aに移動させることで、外側筒状樹脂成形体12が径方向の内側に配置される外側筒状樹脂成形体12の外面に押圧力を作用させることができるため、ガラステーパ内面41が外側筒状樹脂成形体12の外面を容易に押圧できる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の密着性を一層向上できる。また、外側筒状樹脂成形体12からテーパガラス管4を取り外す際において、外側筒状樹脂成形体12を軸方向Aに移動させるだけで、外側筒状樹脂成形体12からテーパガラス管4を容易に取り外すことができる。
【0074】
また、本実施形態においては、テーパガラス管4のガラステーパ内面41を、芯状部材3の芯状部材テーパ外面311とは軸方向Aに対して逆向きに傾斜させて形成した。これにより、ガラステーパ内面41と芯状部材テーパ外面311との間における逆向きに傾斜した部分において、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を挟み込むことができる。よって、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を径方向に押圧するため、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の密着性を一層向上できる。
【0075】
また、本実施形態においては、レーザ照射機構部8を、外側筒状樹脂成形体12と内側筒状樹脂成形体11とが重った部分に対して、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の軸方向Aに沿ってレーザ光LBを揺動幅Wsで往復して照射するように構成した。
ここで、レーザ光は集光性が良いため、照射対象部(接合部)では局所的に極めて高密度のエネルギーが投与され、樹脂材料のように低融点(低分解温度)の材料の場合には、接合部の温度が上昇しすぎ、焦げの発生や強度劣化が生じる問題がある。これに対し、単純にデフオーカスでエネルギー密度を下げる場合やレーザ熱源の移動速度調整だけでは、接合に適した分布は得にくい問題があり、レーザ光のエネルギーの分布を適正に制御することが肝要となる。
これに対して、本発明においては、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12を揺動幅Wsの範囲で周方向に溶着できる。よって、揺動幅Wsの範囲で周方向に溶着できるため、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の接合強度を一層向上できる。
【0076】
以上、本発明のレーザ溶着装置1の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、芯状部材3の外面にテーパ状の部分を有して構成したが、これに限定されない。例えば、芯状部材3を同径で軸方向に延びる円柱状に構成することで、芯状部材3の外面を軸方向に平行に形成してもよい。
【0077】
また、前記実施形態においては、テーパガラス管4(押さえ部材)の内面をテーパ状に形成したが、これに限定されない。例えば、押さえ部材を同径で軸方向に延びる円筒状に構成することで、押さえ部材の内面を軸方向に平行に形成してもよい。
【0078】
また、前記実施形態においては、テーパガラス管4のガラステーパ内面41(テーパ内面)は、軸方向Aに対して芯状部材3の芯状部材テーパ外面311(テーパ外面)とは逆向きに傾斜して形成したが、これに限定されず、互いを平行に形成してもよい。
【0079】
また、前記実施形態においては、レーザ照射機構部8を、内側筒状樹脂成形体11及び外側筒状樹脂成形体12の軸方向に沿って所定幅で往復するレーザ光により照射するように構成したが、これに限定されない。レーザ照射機構部8を、円運動するレーザ光により照射するように構成してもよいし、幅広のレーザ光により照射するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 レーザ溶着装置
3 芯状部材
4 テーパガラス管(押さえ部材)
6 回転機構部(回転部)
8 レーザ照射機構部
11 内側筒状樹脂成形体
12 外側筒状樹脂成形体
41 ガラステーパ内面(テーパ内面)
311 芯状部材テーパ外面(テーパ外面)
A 軸方向
J1 中心軸
LB レーザ光
Ws 揺動幅(所定幅)