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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】流体の冷却設備
(51)【国際特許分類】
   F28B 9/04 20060101AFI20240805BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240805BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20240805BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20240805BHJP
【FI】
F28B9/04
C02F1/50 510E
C02F1/50 520F
C02F1/50 531M
C02F1/50 550C
C02F1/50 550L
C02F1/70 Z
C02F1/76 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020182828
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073061
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓也
(72)【発明者】
【氏名】古田 岳志
(72)【発明者】
【氏名】野方 靖行
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-104638(JP,A)
【文献】特開2018-151263(JP,A)
【文献】特開2012-007969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 1/00 - 11/00
C02F 1/50 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部から冷却媒体が流入すると共に、被冷却体を冷却した冷却媒体が出口部から放水路を介して排出される冷却装置と、
生物系付着物を防除するための薬剤を前記冷却装置の前記入口部の前記冷却媒体に供給する薬剤供給手段と、
前記冷却装置の前記出口部の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を低下させる緩和剤を前記放水路内に供給する緩和剤供給手段と、
前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を検出する薬剤濃度検出手段と、
前記薬剤濃度検出手段で検出された薬剤の濃度の情報が入力され、入力情報に基づいて前記緩和剤供給手段からの前記緩和剤の供給を制御する供給制御手段と
を備え
前記供給制御手段は、
前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度が基準となる基準値よりも高い場合に、前記緩和剤供給手段からの前記緩和剤の供給を増加させる機能、及び、
前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度が前記基準値よりも高い値の第2基準値よりも高い場合に、前記薬剤供給手段からの薬剤の供給を減少させる機能を有している
ことを特徴とする流体の冷却設備。
【請求項2】
請求項1に記載の流体の冷却設備において、
前記供給制御手段は、前記薬剤供給手段からの前記薬剤の供給を制御する
ことを特徴とする流体の冷却設備。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の流体の冷却設備において、
前記供給制御手段は、
前記緩和剤供給手段の上流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を検出し、薬剤の濃度の検出情報に基づいて前記薬剤供給手段からの前記薬剤の供給を調整する薬剤供給調整機能を有する
ことを特徴とする流体の冷却設備。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体の冷却設備において、
前記冷却媒体は海水であり、
前記薬剤は塩素であり、
前記緩和剤は残留する塩素の濃度を低下させる手段である
ことを特徴とする流体の冷却設備。
【請求項5】
請求項4に記載の流体の冷却設備において、
前記冷却装置は復水器であり、
前記被冷却体は発電機を駆動する蒸気タービンの排気蒸気である
ことを特徴とする流体の冷却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の冷却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却設備、例えば、蒸気タービンの排気蒸気(流体)を冷却する復水器には海水が取水されて冷却水(冷却媒体)として用いられている。復水器の冷却水(海水)の水路の内部に海生生物が付着・繁殖すると、配管の閉塞や冷却効率の低下が生じる虞があるため、復水器の水路や配管等に海生生物が付着・繁殖することを抑制する(生物系付着物を防除する)必要がある。海生生物が付着・繁殖することを抑制する場合、薬剤(酸化性薬剤:例えば、次亜塩素酸:以下塩素)を冷却水に注入することが有効である。
【0003】
復水器で冷却に用いられた海水は、冷却後に海に放出されるため、冷却用の海水に塩素を注入した場合、塩素の残留量を管理して、環境に塩素が排出されないようにする必要がある。このため、従来から、復水器の冷却排水(海水)中に残留する塩素(残留塩素:次亜塩素酸の残留物と酸化力を有する反応生成物をあわせたもの)の濃度を正確に測定することが実施されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、塩素が注入される前の取水口の塩素濃度と、放水口の塩素濃度とを測定し、濃度差から残留塩素の濃度を求めるようになっている。このため、予め海水に含まれる塩素として反応する物質の影響を排除して、復水器から排出される海水の残留塩素の濃度を正確に測定することができる。
【0005】
酸化性薬剤は、反応性が高いので海水に存在することで自然に分解したり、海水の物質と反応したりして濃度が低下する。復水器の水路や配管等に海生生物が付着・繁殖することを確実に抑制するためには、酸化性薬剤の濃度を一定以上の濃度に保つ必要がある。逆に、環境中に冷却排水を放出する際には、残留する薬剤の濃度の上限値(規制値)が存在し、酸化性薬剤の濃度が高すぎる場合、海に放出することができなくなってしまう。
【0006】
上述した状況から、復水器の水路や配管等に海生生物が付着・繁殖することを抑制するために、酸化性薬剤(例えば、塩素)を冷却水に注入する場合、残留する酸化性薬剤の濃度を、環境に対する上限値に近い状態に維持することが望まれているのが現状である。
【0007】
特許文献1に開示された技術を始めとした従来の技術は、復水器から排出される海水の残留塩素の濃度を正確に測定することはできるものの、残留塩素の濃度を最適に維持する技術にはなっていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-186111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、冷却用の冷却媒体に注入される薬剤の濃度を環境に対する許容範囲の状態にして、海生生物が付着・繁殖することを確実に抑制することができる状態に維持することができる流体の冷却設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の流体の冷却設備は、入口部から冷却媒体が流入すると共に、被冷却体を冷却した冷却媒体が出口部から放水路を介して排出される冷却装置と、生物系付着物を防除するための薬剤を前記冷却装置の前記入口部の前記冷却媒体に供給する薬剤供給手段と、前記冷却装置の前記出口部の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を低下させる緩和剤を前記放水路内に供給する緩和剤供給手段と、前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を検出する薬剤濃度検出手段と、前記薬剤濃度検出手段で検出された薬剤の濃度の情報が入力され、入力情報に基づいて前記緩和剤供給手段からの前記緩和剤の供給を制御する供給制御手段とを備え、前記供給制御手段は、前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度が基準となる基準値よりも高い場合に、前記緩和剤供給手段からの前記緩和剤の供給を増加させる機能、及び、前記緩和剤供給手段の下流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度が前記基準値よりも高い値の第2基準値よりも高い場合に、前記薬剤供給手段からの薬剤の供給を減少させる機能を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る本発明では、冷却装置の入口部の冷却媒体に薬剤(酸化性薬剤)が供給されて、水路の内部に海生生物が付着・繁殖することが抑制され、配管の閉塞や冷却効率の低下が生じる虞がなくなる。被冷却体を冷却した冷却媒体に対し、薬剤の濃度を低下させる緩和剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム)が緩和剤供給手段から供給され、放水路から放出される冷却媒体に残留する薬剤の濃度が低下される。放水路内の冷却媒体に残留する薬剤の濃度が薬剤濃度検出手段で検出され、放水路から放出される冷却媒体に残留する薬剤の濃度が所定の濃度になるように、例えば、許容される濃度の範囲になるように、供給制御手段により、緩和剤供給手段による緩和剤の供給が制御される。
また、残留する薬剤の濃度が基準値よりも高い場合に、緩和剤供給手段からの緩和剤の供給を増加させて、放水路から放出される冷却媒体に残留する薬剤の濃度を更に低下させて許容範囲に収めることができる。
また、残留する薬剤の濃度が基準値よりも高い値の第2基準値よりも高い場合、例えば、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を抑制することができる十分な濃度以上になる状態に薬剤が供給されていると判断された場合、薬剤供給手段からの薬剤の供給を減少させて必要以上の量の薬剤の供給を抑制することができる。
【0012】
このため、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を抑制することができる十分な濃度の薬剤を供給して(高い濃度になるように薬剤を供給して)、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を確実に抑制することができると共に、放水路から放出される冷却媒体に残留する薬剤の濃度を許容範囲になるように低下させることが可能になる。
【0013】
従って、冷却用の冷却媒体に注入された薬剤の濃度を環境に対する許容範囲の状態にして、海生生物が付着・繁殖することを確実に抑制することができる状態に維持することが可能になる。
【0014】
因みに、特開2019-76813号公報には、冷却装置の出口側の残留塩素を電解除去する技術が開示されている。特開2019-76813号公報に開示された技術は、出口管の塩素の濃度を低下させた後の処理に関しては何ら開示されておらず、請求項1に係る本願発明の技術とは相違している。
【0015】
そして、請求項2に係る本発明の流体の冷却設備が、請求項1に記載の流体の冷却設備において、前記供給制御手段は、前記薬剤供給手段からの前記薬剤の供給を更に制御することを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る本発明では、薬剤濃度検出手段で検出された放水路に残留する薬剤の濃度が所定の濃度になるように、薬剤の供給を制御(停止)することができる。
【0017】
また、請求項3に係る本発明の流体の冷却設備は、請求項1もしくは請求項2に記載の流体の冷却設備において、前記供給制御手段は、前記緩和剤供給手段の上流側における前記放水路内の前記冷却媒体に残留する薬剤の濃度を検出し、薬剤の濃度の検出情報に基づいて前記薬剤供給手段からの前記薬剤の供給を調整する薬剤供給調整機能を有することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る本発明では、緩和剤供給手段の上流側における残留薬剤の濃度に基づいて薬剤の供給を調整することができる。即ち、生物系付着物を除去することが必要な冷却装置内の冷却媒体内に残留する薬剤の濃度が検出され、冷却装置内の冷却媒体内に在留する薬剤の濃度が防除に必要な濃度に維持できるように薬剤の供給が調整される。
【0023】
また、請求項4に係る本発明の流体の冷却設備は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体の冷却設備において、前記冷却媒体は海水であり、前記薬剤は塩素であり、前記緩和剤は残留する塩素の濃度を低下させる手段であることを特徴とする。
【0024】
請求項4に係る本発明では、冷却装置の入口部で海水に塩素が注入されて水路の内部に海生生物が付着・繁殖することが抑制される。
【0025】
また、請求項5に係る本発明の流体の冷却設備は、請求項4に記載の流体の冷却設備において、前記冷却装置は復水器であり、前記被冷却媒体は発電機を駆動する蒸気タービンの排気蒸気であることを特徴とする。
【0026】
請求項5に係る本発明では、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮する復水器の冷却用の海水の塩素濃度を管理することができる。
【0027】
冷却媒体として海水を適用し、薬剤(酸化性薬剤)として塩素を適用した場合、海水に次亜塩素酸や海水の電解によって生成される電解塩素を注入すると、次亜塩素酸が海水中の臭化物イオンを酸化して次亜臭素酸が生成される。遊離残留塩素である次亜塩素酸と次亜臭素酸は、アンモニウムイオンと反応することで、結合残留塩素であるクロラミンやブロマミンに変化する。
【0028】
薬剤濃度検出手段として、N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩(DPD)を試薬として発色を分析する手段を適用した場合、遊離残留塩素(酸化性薬剤)、及び、ブロマミンと直接的に反応すると共に、ヨウ化カリウムを加えることによるヨウ化物イオンの酸化反応を利用して、間接的に結合残留塩素(酸化性薬剤)とも反応する。即ち、遊離残留塩素、及び、結合残留塩素の全ての残留する塩素(酸化性薬剤)を測定することができる。
【0029】
薬剤濃度の検出方法として、電極間に一定の電圧を印加して濃度を測定する電気化学的方法(ポーラログラフ法)を適用した場合、直接的に有利残留塩素、及び、全塩素を測定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の流体の冷却設備は、冷却用の冷却媒体に注入される薬剤の濃度を環境に対する許容範囲の状態にして、海生生物が付着・繁殖することを抑制することができる状態に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例に係る流体の冷却設備を説明する概念図である。
図2】供給制御手段の動作の一例を説明するフローチャートである。
図3】残留塩素濃度の経時変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、冷却媒体(媒体)である海水等が供給される冷却装置(例えば、復水器)の内部に、生物系付着物(海生生物、貝類等)が付着、繁殖することを防止し、同時に、排出される薬剤の濃度を環境に対する許容範囲の状態にして、冷却効率の低下を抑制するために考えられたものである。
【0033】
即ち、冷却装置の取水路に、生物系付着物(貝類等)が付着しない濃度の薬剤(酸化性薬剤:次亜塩素酸:以下、塩素、オゾン等)を添加して、水路の内部に海生生物が付着・繁殖することを抑制し、薬剤の濃度を低下させる緩和剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム)を緩和剤供給手段から供給し、放水路から放出される媒体に残留する薬剤の濃度を低下させるようにしたものである。
【0034】
図1に基づいて流体の冷却設備の概略を説明する。
図1には本発明の一実施例に係る流体の冷却設備の概略系統を示してある。
【0035】
図に示すように、冷却媒体である海水等(冷却水)が供給される(流入する)冷却装置1(例えば、排気蒸気を冷却する復水器)の取水路2(入口部)には、薬剤供給手段としての塩素供給手段3が備えられ、塩素供給手段3から薬剤として塩素が供給(混合)される。冷却装置1の放水路4(出口部)には、冷却水に残留する塩素の濃度を低下させる緩和剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム)を放水路4の内部に供給する緩和剤供給手段5が設けられている。
【0036】
緩和剤供給手段5の下流側における放水路4内の冷却水に残留する塩素(次亜塩素酸の残留物と酸化力を有する生物をあわせたもの:以下残留塩素)の濃度を検出する薬剤濃度検出手段6が備えられている。そして、薬剤濃度検出手段6で検出された塩素の濃度の情報が入力される供給制御手段7が備えられている。供給制御手段7からは、薬剤濃度検出手段6あるいは後述する出口薬剤濃度検出手段8によって検出される塩素の濃度の情報に基づいて緩和剤供給手段5からの緩和剤の供給の制御の指令が出力される。また、供給制御手段7からは、塩素の濃度の情報に基づいて塩素供給手段3からの塩素の供給が制御される。
【0037】
尚、図中の符号で8は、冷却装置1の出口直後の残留塩素の濃度を検出する出口薬剤濃度検出手段であり、出口薬剤濃度検出手段8の検出情報に基づいて、生物付着物の付着を確実に防ぐことのできる所定の濃度になるように、塩素供給手段3からの塩素の供給が供給制御手段7で調整される。
【0038】
また、出口薬剤濃度検出手段8の検出情報に基づいて、放水管9内の冷却水の残留塩素の濃度が緩和剤供給手段5によって低下させることのできる最大濃度を超えないように、塩素供給手段3からの塩素の供給が供給制御手段7で調整される(薬剤供給調整機能)。
【0039】
冷却装置1の取水路2の海水(冷却水)に塩素が供給されることで、水路の内部に海生生物が付着・繁殖することが抑制され、配管の閉塞や冷却効率の低下が生じる虞がなくなる。薬剤濃度検出手段6により検出された濃度情報(残留塩素濃度)に基づいて、被冷却体である排気蒸気を冷却した冷却水に対し、塩素の濃度を低下させる緩和剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム)が緩和剤供給手段5から供給されることで、放水路4から放出される冷却水に残留する残留塩素の濃度が低下される。
【0040】
つまり、放水路4から放出される冷却水の残留塩素の濃度が所定の濃度になるように、例えば、許容される濃度の範囲になるように、緩和剤供給手段5による緩和剤の供給が制御される。
【0041】
具体的には、供給制御手段7は、残留塩素の濃度が基準となる基準値よりも高い場合に、緩和剤供給手段5からの緩和剤の供給を増加させる機能を有している。更に、供給制御手段7は、残留塩素の濃度が基準値よりも高い値の第2基準値よりも高い場合に、塩素供給手段からの塩素の供給を減少させる機能を有している。
【0042】
図2に基づいて(図1の部材を参照して)供給制御手段7の動作の一例を説明する。
図2には供給制御手段の動作の一例を説明するフローチャートを示してある。
【0043】
図に示すように、処理がスタートすると、ステップS1で塩素供給手段3から塩素が供給され、ステップS2で緩和剤供給手段5から緩和剤が供給される。
【0044】
ステップS1で塩素供給手段3から塩素が供給された後、ステップS3で出口薬剤濃度検出手段8により残留塩素の濃度Aが測定され、ステップS4で残留塩素の濃度Aが基準値を超えているか否かが判断される。ステップS4で残留塩素の濃度Aが基準値を超えていないと判断された場合、ステップS5で塩素供給手段3からの塩素の供給が増加され、ステップS3の処理に移行する。
【0045】
ステップS4で残留塩素の濃度Aが基準値を超えていると判断された場合、ステップS6で残留塩素の濃度Aが第2基準値(第2基準値>基準値)よりも低いか否かが判断される。ステップS6で残留塩素の濃度Aが第2基準値よりも低い、即ち、残留塩素の濃度Aが基準値と第2基準値の間にあると判断された場合、ステップS7で塩素供給手段3からの塩素の供給が維持されてリターンとなる。
【0046】
ステップS6で残留塩素の濃度Aが第2基準値よりも低くない、即ち、残留塩素の濃度Aが第2基準値以上であると判断された場合、ステップS8で塩素供給手段3からの塩素の供給が停止されてリターンとなる。
【0047】
一方、ステップS2で緩和剤供給手段5から緩和剤が供給された後、ステップS10で薬剤濃度検出手段6により塩素の濃度Cが測定され、ステップS11で塩素の濃度Cが基準値を超えているか否かが判断される。ステップS11で塩素の濃度Cが基準値を超えていないと判断された場合、ステップS12で緩和剤の供給が維持されてリターンとなる。
【0048】
ステップS11で塩素の濃度Cが基準値を超えていると判断された場合、ステップS13で塩素の濃度Cが第2基準値(第2基準値>基準値)を超えているか否かが判断される。ステップS13で塩素の濃度Cが第2基準値を超えていると判断された場合、塩素の供給量が十分に足りていると判断され、ステップS8で塩素供給手段3からの塩素の供給が停止されてリターンとなる。
【0049】
ステップS13で塩素の濃度Cが第2基準値を超えていないと判断された場合、ステップS14で緩和剤供給手段5から緩和剤の供給が増加され、ステップS10の処理に移行する。
【0050】
このため、塩素の濃度が高くなった場合、緩和剤が増加されて放水路4から放出される冷却水に残留する塩素の濃度を低下させることができる。そして、塩素の濃度が海生生物の付着・繁殖を抑制することができる十分な濃度以上になっている場合に、塩素の供給を停止することができる。
【0051】
また、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を抑制することができる十分な濃度になるように塩素を供給して(高い濃度になるように塩素を供給して)、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を確実に抑制することができると共に、放水路4から放出される冷却水に残留する塩素の濃度を許容範囲になるように低下させることが可能になる。
【0052】
更に、水路の内部への海生生物の付着・繁殖を抑制することができる十分な濃度以上になる状態に薬剤が供給されていると判断された場合、塩素供給手段3からの塩素の供給を停止(減少)して必要以上の量の塩素の供給を抑制することができる。
【0053】
従って、上述した流体の冷却設備は、冷却用の冷却水に注入され塩素の濃度を環境に対する許容範囲の状態にして、海生生物が付着・繁殖することを抑制することができる状態に維持することが可能になる。また、必要以上の量の塩素の供給を抑制することが可能になる。
【0054】
図3に基づいて、緩和剤供給手段5から供給される緩和剤として、アスコルビン酸を適用する場合の残留塩素濃度の低下の状況を説明する。
【0055】
図3には、アスコルビン酸の複数種類の添加量における残留塩素濃度の経時変化を表すグラフを示してある。
【0056】
残留塩素濃度0.5mg/Lに調整した人工海水に、異なる4種類の量(相対値で1.0、0.8、0.6、0.4)のアスコルビン酸を添加して、残留塩素濃度の低下量、低下時間を求めた。アスコルビン酸の量が、相対値で0.4(×印)、0.6(△印)、0.8(□印)1.0(〇印)のそれぞれで、添加後に残留塩素濃度が低下していることが確認された。
【0057】
アスコルビン酸は、残留塩素と直ちに反応するため、所定量を添加することで、残留塩素濃度を必要濃度以下に低下させることができることが確認されている。反応は極めて急激に進み、通常の温度範囲では、温度による反応速度の変化は認められなかった。
【0058】
添加量が多いほど(相対値0.8(□印)、1.0(〇印))、残留塩素濃度は、相対値で0.1程度まで低下し、相対値で0.4(×印)、0.6(△印)の添加量では、残留塩素濃度は、それぞれ添加量に応じて、相対値で0.5程度に低下していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、流体の冷却設備の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 冷却装置
2 取水路
3 塩素供給手段
4 放水路
5 緩和剤供給手段
6 薬剤濃度検出手段
7 供給制御手段
8 出口薬剤濃度検出手段
9 放水管

図1
図2
図3