(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】分光画像モニタリングのための機械学習システム向けのトレーニングスペクトルの生成
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240805BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240805BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240805BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20240805BHJP
G06N 3/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B24B37/013
B24B49/12
G06N3/08
G06N3/06
(21)【出願番号】P 2020571703
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 US2019038553
(87)【国際公開番号】W WO2020005770
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-14
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェリアン, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ウィズウェル, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】チエン, チュン
(72)【発明者】
【氏名】オスターヘルド, トーマス エイチ.
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101393015(CN,A)
【文献】特表平6-505815(JP,A)
【文献】特開2010-156612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0150052(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0177997(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0094790(US,A1)
【文献】特開平8-31706(JP,A)
【文献】特表2001-525933(JP,A)
【文献】国際公開第2018/134952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/12
G06N 3/08
G06N 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューラルネットワークのトレーニングのためのトレーニングスペクトルを生成する方法であって、
一又は複数のサンプルデバイス基板から、第1の複数のトレーニングスペクトルを測定することと、
トレーニングスペクトルと特性値との組を複数組得るために、前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルにつき、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を測定することと、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルに複数の異なるノイズ成分を加算することによって、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することであって、前記第2の複数のトレーニングスペクトル中には前記第1の複数のトレーニングスペクトル中よりも多数のスペクトルが存在し、前記第2の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を有する、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することとを含む、
方法。
【請求項2】
前記第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することが、前記第1の複数のトレーニングスペクトルのうちの各トレーニングスペクトルに複数の異なるノイズ成分を加算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一又は複数のブランク半導体基板の処理中に複数のダミースペクトルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の異なるノイズ成分を加算することが、前記第1の複数のトレーニングスペクトルと前記複数のダミースペクトルとを組み合わせることによって行われることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特性値が、基板の厚さ、基板の外層の厚さ、又は基板から除去された厚さを示す値であり、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルにつき、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を測定することは、前記第1の複数のトレーニングスペクトルが測定された前記一又は複数のサンプルデバイス基板上の複数の特定の箇所の各々において、該サンプルデバイス基板の厚さ、該サンプルデバイス基板の外層の厚さ、又は該サンプルデバイス基板から除去された厚さを測定することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ニューラルネットワークのトレーニングのためのスペクトルを生成するためのコンピュータプログラム製品であって、非一時的なコンピュータ可読媒体において有形に具現化され、かつプロセッサに、
一又は複数のサンプルデバイス基板から測定された第1の複数のトレーニングスペクトル及び複数の特性値を受信することであって、前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、前記複数の特性値のうちの1つと関連付けられている、第1の複数のトレーニングスペクトル及び複数の特性値を受信することと、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルに複数の異なるノイズ成分を加算することによって、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することであって、前記第2の複数のトレーニングスペクトル中には前記第1の複数のトレーニングスペクトル中よりも多数のスペクトルが存在し、前記第2の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を有する、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することとを、実行させるための命令を含む、
コンピュータプログラム製品。
【請求項7】
前記第2の複数のトレーニングスペクトルを生成するための前記命令が、前記第1の複数のトレーニングスペクトルのうちの各トレーニングスペクトルに複数の異なるノイズ成分を加算するための命令を含む、請求項6に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
一又は複数のブランク半導体基板の処理中に測定されたスペクトルを表わす、複数のダミースペクトルを受信することを含む、請求項6に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
前記複数の異なるノイズ成分を加算するための前記命令が、前記第1の複数のトレーニングスペクトルと前記複数のダミースペクトルとを組み合わせるための命令を含む、請求項8に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
前記複数のダミースペクトルを正規化して複数の正規化ダミースペクトルを生成するための命令を含む、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
前記第1の複数のトレーニングスペクトルと前記複数のダミースペクトルとを組み合わせるための前記命令が、前記複数の正規化ダミースペクトルのうちの各正規化ダミースペクトルについて、前記正規化ダミースペクトルに前記第1の複数のトレーニングスペクトルのうちの1つを乗算して、前記第2の複数のトレーニングスペクトルのうちの1つを生成するための命令を含む、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
前記正規化ダミースペクトルに、前記第1の複数のトレーニングスペクトルのうちのランダムに選択された1つを乗算するための命令を含む、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
前記特性値が、基板の厚さ、基板の外層の厚さ、又は基板から除去された厚さを示す値であり、
前記一又は複数のサンプルデバイス基板から測定された前記複数の特性値の各々は、前記第1の複数のトレーニングスペクトルが測定された前記一又は複数のサンプルデバイス基板上の複数の特定の箇所の各々において測定された、該サンプルデバイス基板の厚さ、該サンプルデバイス基板の外層の厚さ、又は該サンプルデバイス基板から除去された厚さを示す、請求項6から12のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
基板の処理を制御する方法であって、
一又は複数のサンプルデバイス基板から、第1の複数のトレーニングスペクトルを測定することと、
トレーニングスペクトルと特性値との組を複数組得るために、前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルにつき、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を測定することと、
一又は複数のブランク半導体基板の処理中に、
プロセスノイズを含む複数のダミースペクトルを測定することと、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルと前記複数のダミースペクトルとを組み合わせることによって第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することであって、前記第2の複数のトレーニングスペクトル中には前記第1の複数のトレーニングスペクトル中よりも多数のスペクトルが存在し、前記第2の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を有する、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することと、
前記第2の複数のトレーニングスペクトルを使用して、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることであって、前記人工ニューラルネットワークが、複数のスペクトル値のための複数の入力ノードと、前記特性値を出力するための1つの出力ノードと、前記入力ノードと前記出力ノードとを接続する複数の隠れノードとを有する、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることと、
インシトゥの光学モニタリングシステムから、基板の外層の厚さを改変する処理が行われている前記基板からの反射光の測定スペクトルを受信することと、
前記人工ニューラルネットワークに前記測定スペクトルからのスペクトル値を適用することによって、前記測定スペクトルに対応する特性値を出力させることと、
出力された前記特性値に基づいて、前記基板の処理を停止すること又は処理パラメータを調整することの、少なくとも一方を行うこととを含む、
方法。
【請求項15】
前記特性値が、基板の厚さ、基板の外層の厚さ、又は基板から除去された厚さを示す値であり、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルにつき、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を測定することは、前記第1の複数のトレーニングスペクトルが測定された前記一又は複数のサンプルデバイス基板上の複数の特定の箇所の各々において、該サンプルデバイス基板の厚さ、該サンプルデバイス基板の外層の厚さ、又は該サンプルデバイス基板から除去された厚さを測定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非一時的なコンピュータ可読記憶媒体において有形に具現化される、基板の処理を制御するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサに、
一又は複数のサンプルデバイス基板から測定された第1の複数のトレーニングスペクトル及び複数の特性値を受信することであって、前記第1の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、前記複数の特性値のうちの1つと関連付けられている、第1の複数のトレーニングスペクトル及び複数の特性値を受信することと、
一又は複数のブランク半導体基板の処理中に測定された
プロセスノイズを含むスペクトルを表わす、複数のダミースペクトルを受信することと、
前記第1の複数のトレーニングスペクトルと前記複数のダミースペクトルとを組み合わせることによって第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することであって、前記第2の複数のトレーニングスペクトル中には前記第1の複数のトレーニングスペクトル中よりも多数のスペクトルが存在し、前記第2の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、該トレーニングスペクトルと関連付けられた1つの特性値を有する、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することと、
前記第2の複数のトレーニングスペクトルを使用して、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることであって、前記人工ニューラルネットワークが、複数のスペクトル値のための複数の入力ノードと、前記特性値を出力するための1つの出力ノードと、前記入力ノードと前記出力ノードとを接続する複数の隠れノードとを有する、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることと、
インシトゥの光学モニタリングシステムから、基板の外層の厚さを改変する処理が行われている前記基板からの反射光の測定スペクトルを受信することと、
前記人工ニューラルネットワークに前記測定スペクトルからのスペクトル値を適用することによって、前記測定スペクトルに対応する特性値を出力させることと、
出力された前記特性値に基づいて、前記基板の処理を停止すること又は処理パラメータを調整することの、少なくとも一方を行うこととを、実行させるための命令を含む、
コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記特性値が、基板の厚さ、基板の外層の厚さ、又は基板から除去された厚さを示す値であり、
前記一又は複数のサンプルデバイス基板から測定された前記複数の特性値の各々は、前記第1の複数のトレーニングスペクトルが測定された前記一又は複数のサンプルデバイス基板上の複数の特定の箇所の各々において測定された、該サンプルデバイス基板の厚さ、該サンプルデバイス基板の外層の厚さ、又は該サンプルデバイス基板から除去された厚さを示す、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば化学機械研磨といった処理における、基板の光学モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、シリコンウェハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を順次堆積させることによって、基板上に形成される。製造ステップの1つは、非平坦面の上に充填層を堆積させること、及び、この充填層を平坦化することを伴う。一部の応用では、充填層は、パターンニングされた層の上面が露出するまで平坦化される。例えば、パターニングされた絶縁層上に導電性の充填層が堆積されて、この絶縁層のトレンチ又は孔が充填されうる。平坦化の後に、導電層の、絶縁層の盛り上がったパターンの間に残っている部分がビア、プラグ、及びラインを形成し、これらが、基板上の薄膜回路間の導電経路を提供する。その他の応用では、充填層は、下層の上に所定の厚さが残るまで平坦化される。例えば、堆積された誘電体層が、フォトリソグラフィのために平坦化されうる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、認知された平坦化法の1つである。この平坦化法では、典型的には、基板がキャリアヘッドに装着されることが必要になる。基板の露出面は、典型的には、耐久性のある粗面を有する回転研磨パッドに当接して置かれる。キャリアヘッドは、基板に制御可能な負荷を付与して、基板を研磨パッドに押し付ける。典型的には、研磨液(例えば研磨粒子を有するスラリ)が、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
CMPにおける問題の1つは、望ましいプロファイル(例えば、望ましい平坦度若しくは厚さまで平坦化された、又は望ましい量の材料が除去された基板層)を実現するのに適切な研磨速度を使用することである。基板層の初期厚さ、スラリ分布、研磨パッドの状態、研磨パッドと基板との間の相対スピード、及び基板への負荷が変動することにより、基板全体で、又は基板ごとに、材料の除去速度が変動しうる。このような変動は、研磨終点に到達するのに必要な時間、及び除去量の変動の原因となる。したがって、研磨時間の単なる関数として研磨終点を決定すること、又は、単に一定した圧力を印加することによって望ましいプロファイルを実現することが、可能ではないことがある。
【0005】
一部のシステムでは、基板は、例えば光学モニタリングシステムによって、研磨中にインシトゥ(その場)でモニタされる。インシトゥのモニタリングシステムからの厚さ測定値は、基板に印加される圧力を調整して、研磨速度を調整し、かつウエハ内不均一性(WIWNU)を低減するために、使用されうる。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、ニューラルネットワークをトレーニングするためのトレーニングスペクトルを生成する方法は、一又は複数のサンプル基板からの第1の複数のスペクトルを測定することと、複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルの特性値を測定して、各トレーニングスペクトルが1つの関連する特性値を有するように複数の特性値を生成することと、一又は複数のダミー基板の処理中に複数のダミースペクトルを測定することと、第1の複数のトレーニングスペクトルと複数のダミースペクトルとを組み合わせることによって第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することであって、第2の複数のトレーニングスペクトル中には第1の複数のトレーニングスペクトル中よりも多数のスペクトルが存在する、第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することとを、含む。第2の複数のトレーニングスペクトルの各トレーニングスペクトルは、1つの関連する特性値を有する。
【0007】
別の態様では、ニューラルネットワークをトレーニングするためのトレーニングスペクトルを生成する方法は、光学モデルから第1の複数のトレーニングスペクトルを生成することと、第1の複数のトレーニングスペクトルをフィードフォワードニューラルネットワークに送信することと、フィードフォワードニューラルネットワークの出力と実験で(empirically)収集されたスペクトルとを、識別畳み込み(discriminatory convolutional)ニューラルネットワーク()に送信することと、識別畳み込みニューラルネットワークが理論生成されたスペクトルと実験で収集されたスペクトルとを識別しないと判定することと、その後に、フィードフォワードニューラルネットワークから第2の複数のトレーニングスペクトルを生成することとを、含む。
【0008】
別の態様では、基板の処理を制御する方法は、第2の複数のトレーニングスペクトルを使用して、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることと、インシトゥの光学モニタリングシステムから、基板の外層の厚さを改変する処理が行われている基板からの反射光の測定スペクトルを受信することと、 人工ニューラルネットワークに測定スペクトルからのスペクトル値を適用することによって、測定スペクトルの測定された特性値を生成することと、特性値に基づいて基板の処理を停止すること又は処理パラメータを調整することの、少なくとも一方を行うこととを、含む。
【0009】
上記の態様は、非一時的なコンピュータ可読媒体で有形に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、プロセッサに動作を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品において、又は、動作を実行するためのコントローラを有する処理システム(例えば研磨システム)において、具現化されうる。
【0010】
これらの態様のうちのどの態様の実行形態も、以下の特徴のうちの一又は複数を含みうる。
【0011】
複数の正規化ダミースペクトルを生成するために、複数のダミースペクトルが正規化されうる。第1の複数のトレーニングスペクトルと複数のダミースペクトルとを組み合わせることは、複数の正規化ダミースペクトルのうちの各正規化ダミースペクトルについて、正規化ダミースペクトルに第1の複数のトレーニングスペクトルのうちの1つを乗算して、第2の複数のトレーニングスペクトルのうちの1つを生成することを含みうる。第1の複数のトレーニングスペクトルのうちのこの1つは、ランダムに選択されてよい。ダミー基板はブランク半導体基板でありうる。
【0012】
処理は化学機械研磨を含みうる。特性値は、基板の最外層の厚さでありうる。
【0013】
人工ニューラルネットワークは、複数のスペクトル値のための複数の入力ノードと、特性値を出力するための1つの出力ノードと、入力ノードと出力ノードとを接続する複数の隠れノードとを有しうる。第2の複数のトレーニングスペクトルの次元数は、複数のスペクトルトレーニング値を生成するために削減されてよく、第2の複数のトレーニングスペクトルに関連するスペクトルトレーニング値及び特性値は、人工ニューラルネットワークをトレーニングするために、人工ニューラルネットワークに適用されうる。測定スペクトルの次元数は、特性値を生成するのに使用されるスペクトル値を生成するために削減されうる。
【0014】
ある種の実行形態は、以下の利点のうちの一又は複数を有しうる。機械学習システム(例えばニューラルネットワーク)を予測性能要件を満たすようトレーニングするのに必要な、実験研磨データの数量(例えば、種々のデバイスウエハからのスペクトルの数)が低減されうる。基板上の層の厚さが、より正確にかつ/又はより迅速に測定されうる。ウエハの厚さにおける不均一性及びウエハ間の厚さの不均一性(WIWNU及びWTWNU)が低減され、望ましい処理終点を検出するための終点システムの信頼性が向上しうる。
【0015】
一又は複数の実施形態の詳細について、添付図面及び以下の説明に明記している。その他の特徴、態様、及び利点も、説明、図面、及び特許請求の範囲から自明となろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】複数のゾーンを有する基板の概略上面図を示す。
【
図3】第1基板上のインシトゥ測定が行われる箇所を示す、概略上面図である。
【
図4】研磨装置のコントローラの一部として使用されるニューラルネットワークを示す。
【
図5】トレーニングスペクトルを生成するために使用される構成要素の概略図である。
【
図6】制御システムによって時間の関数として出力される特性値のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面における類似した参照番号及び記号表示は、類似した要素を示している。
【0018】
モニタリング技法の1つは、研磨されている基板からの反射光のスペクトルを測定することである。測定スペクトルから特性値(例えば、研磨されている層の厚さ)を特定するための、多種多様な技法が提案されてきた。実現可能な一技法は、サンプルデバイス基板からのトレーニングスペクトル、及びかかるサンプル基板の測定された特性値に基づいて、ニューラルネットワークをトレーニングすることである。トレーニング後の通常稼働中に、デバイス基板からの測定スペクトルがニューラルネットワークに入力されてよく、ニューラルネットワークは、特性値(例えば、計算された基板の最上層の厚さ)を出力しうる。ニューラルネットワークを使用する動機付けとなるのは、計算された最上層の厚さに対する下層の膜厚の影響を除去する可能性があることである。
【0019】
この文脈における、ニューラルネットワークのトレーニングに伴う問題の1つは、集積回路の製造に使用可能になるのに十分な信頼性を伴って入力されたスペクトルから厚さ値を生成するのに足るように、予測ニューラルネットワークをトレーニングするためには、実用的ではないほどに大きなデータセットが必要になりうることである。トレーニングセットが小さいと、測定スペクトル中のノイズに基づいてニューラルネットワークがトレーニングされるリスクがある。トレーニングセットが十分に大きければ、特性値を特定するための別の技法と同様か、それよりも優れた性能の提供が可能になるが、顧客がかかるデータセットを取得することは無理でありうる。具体的には、デバイス基板は非常に高価であり、トレーニングを実施するのに十分な数の「予備の(spare)」デバイス基板を提供することは、商業的に実際的ではない。
【0020】
上記の問題に対処可能な技法の1つは、サンプルデバイス基板からのトレーニングスペクトルにプロセスノイズを加算することである。
【0021】
それらの問題に対処することが可能な別の技法は、モデルからトレーニングスペクトルを生成することである。
【0022】
図1は、研磨装置20の一例を示している。研磨装置20は、回転可能な円盤状のプラテン22であって、その上に研磨パッド30が配置される、プラテン22を含みうる。プラテンは、軸23を中心に回転するよう動作可能である。例えばモータ24が、ドライブシャフト26を回して、プラテン22を回転させうる。研磨パッド30が、例えば接着剤の層によって、プラテン22に取り外し可能に固定されうる。研磨パッド30は、外側の研磨層32と、より軟性のバッキング層34とを有する、二層研磨パッドでありうる。
【0023】
研磨装置20は、研磨パッド30の上に研磨液42(研磨スラリなど)を分注するための、研磨液供給ポート40を含みうる。研磨装置20は、研磨パッド30を一定した研磨状態に維持するために研磨パッド30を磨く、研磨パッドコンディショナーも含みうる。
【0024】
キャリアヘッド50は、基板10を研磨パッド30に当接するように保持するよう、動作可能である。各キャリアヘッド50は、個別に制御可能かつ与圧可能な複数の室(例えば3つの室52a~52c)も含み、これらの室は、基板10上の関連するゾーン12a~12c(
図2参照)に、個別に制御可能な圧力を印加しうる。
図2を参照するに、中心ゾーン12aは実質的に円形であってよく、残りのゾーン12b~12cは、中心ゾーン12aの周囲の同心環状ゾーンでありうる。
【0025】
図1を再度参照するに、室52a~52cは、基板10が装着される底面を有する、可撓膜54によって画定されうる。キャリアヘッド50は、可撓膜54の下に基板10を保持するための保持リング56も含みうる。簡潔に示すために、
図1及び
図2には3つの室のみを図示しているが、2つの室、又は4つ以上の室(例えば5つの室)が存在することもある。加えて、キャリアヘッド50では、基板に印加される圧力を調整するための他の機構(圧電アクチュエータなど)も使用されることがある。
【0026】
各キャリアヘッド50が、支持構造物60(カルーセルや軌道など)から懸架され、かつ、ドライブシャフト62によってキャリアヘッド回転モータ64に接続されることにより、キャリアヘッドは軸51を中心に回転しうる。オプションでは、各キャリアヘッド50は、例えば、カルーセルのスライダ上で、軌道に沿った運動によって、又はカルーセル自体の回転揺動によって、横方向に揺動しうる。稼働中、プラテン22はその中心軸23を中心に回転し、キャリアヘッド50は、その中心軸51の周りで回転しつつ、研磨パッド30の上面全体を横方向に平行移動する。
【0027】
研磨装置は、研磨パラメータ(例えば、室52a~52cのうちの一又は複数に印加される圧力)を制御して、ゾーン12a~12cのうちの一又は複数の研磨速度を制御するために使用されうる、インシトゥのモニタリングシステム70も含む。インシトゥのモニタリングシステム70は、ゾーン12a~12cの各々における研磨されている層の厚さを表示する信号を生成する。インシトゥのモニタリングシステムは、光学モニタリングシステム(例えば分光モニタリングシステム)でありうる。
【0028】
光学モニタリングシステム70は、光源72、光検出器74、及び、コントローラ90(コンピュータなど)と光源72及び光検出器74との間で信号を送受信するための回路76を、含みうる。光源72から研磨パッド30のウインドウ36に光を伝送するため、及び、基板10からの反射光を検出器74に送信するために、一又は複数の光ファイバが使用されうる。例えば、光を光源62から基板10に、かつ検出器74に戻るように伝送するために、分岐型光ファイバ78が使用されうる。分光システムである場合には、光源72は白色光を放出するよう動作可能であってよく、検出器74は分光計でありうる。
【0029】
回路76の出力はデジタル電子信号であってよく、このデジタル電子信号は、ドライブシャフト26の回転カプラ28(スリップリングなど)を通過して、コントローラ90に至る。あるいは、回路76は、無線信号によってコントローラ90と通信可能である。コントローラ90は、マイクロプロセッサ、メモリ、及び入出力回路を含むコンピューティングデバイス(プログラマブルコンピュータなど)でありうる。コントローラ90は、単一のブロックで図示されているが、複数のコンピュータに機能が分散されている、ネットワーク化されたシステムであってもよい。
【0030】
一部の実行形態では、インシトゥのモニタリングシステム70は、プラテン22内に設置され、かつプラテン22と共に回転する、センサ80を含む。例えば、センサ80は、光ファイバ78の端部であることもある。プラテン22の運動により、センサ80は、基板全体をスキャンすることになる。
図3に示しているように、プラテンの回転(矢印38で示している)により、センサ80がキャリアヘッドの下を通る際に、インシトゥのモニタリングシステムは、あるサンプリング頻度で測定を行う。その結果として、基板10を横切って弧を描く複数の箇所14において、測定値が得られる(点の数は例示であり、サンプリング頻度に応じて、図示しているよりも多い又は少ない数の測定値を得ることが可能である)。
【0031】
プラテンの一回転で、基板10の種々の位置からスペクトルが取得される。具体的には、一部のスペクトルは基板10の中心に近い箇所から、別のスペクトルはエッジに近い箇所から、取得されうる。コントローラ90は、時間に基づくスキャン、モータエンコーダ情報、プラテンの回転若しくは位置のセンサデータ、並びに/又は、基板及び/若しくは保持リングのエッジの光学検出から、各測定の(基板10の中心に対する)径方向位置を計算するよう、設定されうる。ゆえに、コントローラは、様々な測定値と様々なゾーン12a~12c(
図2参照)とを関連付けうる。一部の実行形態では、径方向位置の正確な計算のための代替物として、測定時間が使用されうる。
【0032】
図1を再度参照するに、コントローラ90は、インシトゥのモニタリングシステムからの信号に基づいて、基板の各ゾーンの特性値を導出しうる。具体的には、コントローラ90は、研磨が進行するにつれて、特性値の経時的数列を生成する。コントローラ90は、基板10の下のセンサがスキャンを行うごとに、各ゾーンにつき少なくとも1つの特性値を生成しうるか、又は、例えば、センサが基板全体をスキャンするわけではない研磨システムでは、ある測定頻度(サンプリング頻度と同じである必要はない)で、各ゾーンの特性値を生成しうる。一部の実行形態では、1回のスキャンにつき単一の特性値が生成される(例えば、特性値を生成するために複数の測定値が合成されうる)。一部の実行形態では、1つの特性値を生成するために各測定値が使用されうる。
【0033】
特性値は、典型的には外層の厚さであるが、関連特性(除去された厚さなど)であってもよい。加えて、特性値は、研磨プロセスを経る基板の進捗をより一般的に表現するもの(例えば、既定の進捗に従った研磨プロセスにおいて測定が観測されることが予期される時点又はプラテンの回転数を表わす指標値)でありうる。
【0034】
コントローラ90では、二段階プロセスを使用して、インシトゥの分光モニタリングシステム70からの測定スペクトルにより特性値が生成されうる。最初に、測定スペクトルの次元数が削減される。次いで、削減後の次元数のデータが人工ニューラルネットワークに入力され、人工ニューラルネットワークは特性値を出力する。各測定スペクトルについてこのプロセスを実施することによって、人工ニューラルネットワークは特性値の数列を生成しうる。この数列は、例えばセンサ80が基板の下を通ると仮定すると、基板上の種々の径方向箇所の特性値を含みうる。
【0035】
インシトゥの分光モニタリングシステム70とコントローラ90とを組み合わせることで、終点及び/又は研磨均一性を制御するシステム100が提供されうる。つまり、コントローラ90は、一連の特性値に基づいて、研磨不均一性を低減するために、研磨プロセスにおいて、研磨終点を検出すること、及び、研磨を停止しかつ/又は研磨圧力を調整することが、可能である。
【0036】
図4は、コントローラ90によって実装される機能ブロックを示しており、これらのブロックは、次元削減を実行する次元削減モジュール110と、ニューラルネットワーク120と、研磨プロセスを調整するため(例えば、一連の特性値に基づいて、研磨不均一性を低減するために、研磨プロセスにおいて、研磨終点を検出するため、及び、研磨を停止しかつ/又は研磨圧力を調整するため)のプロセス制御システム130とを含む。上述したように、これらの機能ブロックは、複数のコンピュータに分散されうる。
【0037】
ニューラルネットワーク120は、主成分の各々のための複数の入力ノード122と、複数の隠れノード124(下記では「中間ノード」とも称される)と、特性値を生成する1つの出力ノード126とを含む。隠れノードの単一層を有するニューラルネットワークでは、各隠れノード124が各入力ノード122に連結されてよく、出力ノード126は各隠れノード220に連結されうる。一部の実行形態では、複数の出力ノードが存在し、そのうちの1つが特性値を提供する。
【0038】
通常、隠れノード124は、この隠れノードが接続されている入力ノード122からの値の加重和の非線形関数である値を出力する。
【0039】
例えば、ある隠れノード124(ノードkとする)の出力は、次のように表わされうる。
tanh(0.5*ak1(I1)+ak2(I2)+…+akM(IM)+bk) 方程式1
ここで、tanhは双曲線正接であり、akxはk番目の中間ノードと(M個の入力ノードのうちの)x番目の入力ノードとの間の接続の重みであり、かつ、IMはM番目の入力ノードの値である。しかし、tanhの代わりに他の非線形関数(例えば、正規化線形ユニット(ReLU)関数及びその変種)も使用されうる。
【0040】
次元削減モジュール110は、成分値がより少ない数(例えばL個の成分値)になるよう、測定スペクトルを削減する。ニューラルネットワーク120は、スペクトルがそこまで削減される数の成分の各々のための、入力ノード122を含む。例えば、モジュール110がL個の成分値を生成するには、ニューラルネットワーク120は少なくとも入力ノードN1,N2…NLを含むことになる。
【0041】
ゆえに、入力ノードの数が、測定スペクトルがそこまで削減される成分の数に対応している場合(すなわちL=M)、ある隠れノード124(ノードk)の出力Hkは次のように表わされうる。
Hk=tanh(0.5*ak1(I1)+ak2(I2)+…+akL(IL)+bk)
【0042】
測定スペクトルSが列行列(i1,i2,…,in)によって表わされると仮定すると、ある中間ノード124(ノードk)の出力は、次のように表わされうる。
Hk=tanh(0.5*ak1(V1・S)+ak2(V2・S)+…+akL(VL・S)+bk) 方程式2
ここで、Vxは、測定スペクトルを削減後の次元数のデータの(L個の成分のうちの)x番目の成分の値へと変換させる、行行列(v1,v2,…,vn)である。例えば、Vxは、後述する行列W又はW’の(L個の列のうちの)x番目の列によって提供されうる。すなわち、VxはWTのx番目の行である。ゆえに、Wxは、次元削減行列のx番目の固有ベクトルを表わしうる。
【0043】
出力ノード126は、隠れノードの出力の加重和である、特性値CVを生成しうる。例えば、これは次のように表わされうる。
CV=C1*H1+C2*H2+…+CL*HL
ここで、Ckはk番目の隠れノードの出力の重みである。
【0044】
しかし、ニューラルネットワーク120は、オプションで、別のデータを受信するための一又は複数の他の入力ノード(例えばノード122a)を含みうる。この別のデータとは、インシトゥのモニタリングシステムによって基板の先行測定から得られたもの(例えば、以前の基板処理において先行基板の測定から収集されたスペクトル、例えば、研磨システムの別のセンサから別の基板の処理中に収集されたスペクトル、例えば、研磨システムを制御するのに使用されるコントローラに記憶されている研磨レシピの、温度センサによるパッド又は基板の温度の測定値、例えば、コントローラによって追跡される変数から得られる、基板を研磨するために使用されるキャリアヘッド圧力やプラテン回転速度といった研磨パラメータ、例えば、パッド交換以降の、又は研磨システムの一部ではないセンサから得られる基板の数、例えば、計測ステーションによる下層膜の厚さの測定値)でありうる。これにより、ニューラルネットワーク120が、特性値の計算において、かかるその他の処理変数又は環境変数を勘案することが可能になる。
【0045】
次元削減モジュール110及びニューラルネットワーク112は、例えばデバイスウエハに使用される前に、設定される必要がある。
【0046】
次元削減モジュール110の設定手順の一部として、コントローラ90は、複数のトレーニングスペクトル及び1つの特性値(例えば、複数のトレーニングスペクトルの各々に関連付けられた厚さ)を受信しうる。例えば、トレーニングスペクトルが、一又は複数のサンプルデバイス基板上の複数の特定の箇所で測定されうる。加えて、計測器材(接触プロフィロメータやエリプソメータなど)を用いて、これらの特定の箇所で厚さの測定が実施されうる。ゆえに、厚さ測定値は、サンプルデバイス基板上の同じ箇所からのトレーニングスペクトルに関連付けられうる。複数のトレーニングスペクトルは、例えば5~100のトレーニングスペクトルを含みうる。
【0047】
設定手順の別の部分として、一又は複数の裸のダミー半導体基板(例えば裸のシリコンウエハ)の研磨中に複数のダミースペクトルが測定されうる。複数のダミースペクトルは、例えば50~1000のダミースペクトルを含みうる。これらのダミースペクトルは、同じ半導体材料(例えばシリコン)の基板では、例えば各ダミースペクトルを参照スペクトルで除することによって、正規化されうる。正規化ダミースペクトルの各々には次いで、複数のトレーニングスペクトラムからランダムに選択されたトレーニングスペクトラムが乗算されうる。これにより、拡張されたトレーニングスペクトルのセットが生成される。
【0048】
このプロセスは、ダミー基板の研磨ラン(polishing run)全体にわたって収集された純粋なプロセスノイズを、トレーニングセットに加算する効果を有する。拡張されたトレーニングスペクトルのセットは、ニューラルネットワークを適切にトレーニングするのに十分なほど大きなトレーニングセットを提供しうる。その一方で、拡張されたトレーニングセット全体にわたってプロセスノイズをランダムに分配することで、ニューラルネットワークがそのプロセスノイズの変化にしたがってトレーニングされることが防止されるはずである。
【0049】
サンプルデバイス基板からのスペクトル(及びダミー半導体基板からのダミースペクトル)を測定することの代替として、トレーニングスペクトルは、例えばフィードフォワードニューラルネットワークと併せて、光学モデルからも生成されうる。具体的には、
図5を参照するに、製品ウエハの膜積層体におけるランダム化された厚さに基づいて、理論生成された初期スペクトルを生成するために、第1原理の理論的光学モデル150が使用されうる。つまり、モデル150によって一連のスペクトルの各々が生成されるために、モデル内に表現されているフィルムスタックにおける一又は複数の層の各々に、モデル150によって厚さがランダムに割り当てられうる。どの特定の層でも、この厚さのランダムな割り当ては、最小厚さ値と最大厚さ値との間の線形分布又はベルカーブ分布(オペレータによって設定されうる)に基づきうる。
【0050】
かかる理論生成された初期スペクトルは、フィードフォワードニューラルネットワーク(FFN)152を介して送信されうる。フィードフォワードニューラルネットワーク152は、理論生成されたスペクトルにノイズ成分を加算して改変後の理論生成されたスペクトルを生成することによって、理論生成されたスペクトルの各々を改変するよう設定される。この改変後の理論生成されたスペクトルは、トレーニングスペクトル(又は潜在的トレーニングスペクトル)としての役割を果たしうる。これにより、トレーニングスペクトル(又は潜在的トレーニングスペクトル)としての役割を果たしうる、複数の改変後の理論生成されたスペクトルが生成される。例えば、同一のトレーニングスペクトルがFNN152に複数回供給される(ただし異なるノイズ成分が使用される)場合、理論生成されたスペクトルよりも多数の潜在的トレーニングスペクトルが存在することになりうる。
【0051】
トレーニングモードでは、次いで、フィードフォワードニューラルネットワーク152の出力(例えば、第1の複数のトレーニングスペクトルを提供する、改変後の理論生成されたトレーニングスペクトル)が、識別畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)154に送信されうる。フィードフォワードニューラルネットワーク152及び識別畳み込みニューラルネットワーク154は、実際には、フィードフォワードニューラルネットワーク152をトレーニングするための敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)として機能する。
【0052】
具体的には、実験で収集されたスペクトルには、FFN152によって生成される複数の潜在的トレーニングスペクトルが入り混じりうる。実験で収集されたスペクトルは、計測システム156(例えば分光計)から受信されうる。識別畳み込みニューラルネットワーク154は、スペクトルが理論生成されたのか、それとも実験で検出されたのかの判定を試行する。DCNN154の精度レベルは、FNN152のトレーニングのために、FNN152への入力として使用されうる。DCNN154の精度の低下は、FFN152による改善を示す。識別畳み込みニューラルネットワーク154が、実験によるスペクトルと理論生成されたスペクトルとを、実質的に偶然性(例えば、スペクトルの半分が実験で生成されたと仮定すると、実験で生成されたスペクトルを正しく識別する偶然性は55%未満又は51%未満である)よりも有意に高い確率で識別できなくなれば、FFN152はトレーニングされたことになる。次いで、フィードフォワードニューラルネットワーク152は、厚さ予測モデル(例えばニューラルネットワーク112)のためのトレーニングスペクトルの任意的に大きなセット(これが第2の複数のトレーニングスペクトルを提供する)を生成するために使用されうる。
【0053】
次元削減モジュール110の設定手順の更なる一部として、コントローラ90は、トレーニングスペクトルのデータセットの共分散行列について、固有ベクトルの群を生成しうる。この固有ベクトルの群は、生成されてからランク付けされてよく、大きい方の固有値を有する事前設定された数の(例えば、8つのうち上位4つの)固有ベクトルが保持されうる。
【0054】
固有ベクトルを、これに関連する固有値によってランク付けすることで、データセットが最も大きく変動する方向が示される。高位の方にランク付けされた固有ベクトルに測定スペクトルを射影することにより、大幅削減ベースで初期(original)ベクトルの有効な表現がもたらされる。
【0055】
解説すると、各トレーニングスペクトルは、次の行列によって表わされうる。
R=(i1,i2,…,in)
ここで、ijは、全部でn個の波長のうちのj番目の波長における光強度を表わす。スペクトルは、例えば、200~500の強度測定値を含みうる(nは200~500でありうる)。
【0056】
m個のトレーニングスペクトルが生成されると仮定すると、m個の行列Rが合成されて、次の行列を形成しうる。
ここで、i
jkは、j番目のトレーニングスペクトルのk番目の波長における光強度を表わす。行列Aの各行は、トレーニングスペクトル(例えば、基板上のある1つの箇所における測定値)を表わす。
【0057】
次元削減プロセス(主成分解析(PCA)など)が、行列Aに適用される。PCAにより、A行列(m x n次元)内のデータを新たな座標系に変換する、直交線形変換が実施される。これにより、データのいかなる射影によっても、最大平方偏差(variance)が第1座標(第1主成分と称される)上に来ることになり、2番目に大きな平方偏差は第2座標上に来ることになり、以下同様である。数学的には、この変換は、行列Aのm-次元行ベクトルAiの各々を、主成分得点ti=(tk1,tk2,…,tip)の新たなベクトルにマッピングする、重みwk=(wk1,wk2,…,wkp)のp-次元ベクトルのセットによって、規定される。ここで、tkiは、
tki=Ai・wk
である。
【0058】
各ベクトルwkは、ユニットベクトルに制限される。その結果として、tiの個々の変数は、行列Aから、可能な限り最大の平方偏差を継承する。行列Aの分解は、次のように表記されうる。
T=AW
ここで、Wはn×p行列であり、その列はATAの固有ベクトルである。
【0059】
PCAの詳細については、James Ramsay及びB.W. Silvermanによる「関数型データ解析(Functional Data Analysis)」(Springer:第2版2005年7月1日)、並びに、I.T. Jolliffeによる「主成分解析(Principal Component Analysis)」 (Springer:第2版2002年10月2日)にも記載されている。
【0060】
コントローラは、PCAの代わりに、トレーニングスペクトルのデータセットの一般化された固有分解であるSVD(特異値分解)、又は、事前に特定された数の統計的に独立な信号であって、それらの加法合成によりトレーニングスペクトルのデータセットが生じる信号が見いだされる、ICA(独立成分解析)を、使用することも可能である。
【0061】
次に、高位の方にランク付けされた固有ベクトルだけを保持することによって、次元数が削減されうる。具体的には、p個の主成分の代わりに、L個の主成分(Lは0~p、例としては3~10の整数である)の全部が保持されうる。例えば、T行列は、例としてはT行列の左端からL個の列を使用し続けることによって、m x Lの行列T’に削減されうる。同様に、W行列は、例えばW行列の左端からL個の列を保持することによって、n x Lの行列W’に削減されうる。
【0062】
別の例としては、非線形次元数削減法(例えばオートエンコーディング)が使用されることもある。使用されるオートエンコーダは、初期入力(Nという次元数を有しうる)が多重層を通過するようにさせることによって初期入力の再構築を試行する、ニューラルネットワークとして実装されうる。中間層のうちの1つでは、隠れニューロンの数が削減される。このネットワークは、出力層と入力層との間の差を最小化することによって、トレーニングされる。このような場合、隠れニューロンの値が削減後の次元数のスペクトルになると見なされうる。この技法は、次元数削減がもはや線形プロセスではなくなるという事実により、PCA及び他の類似の技法を凌駕する利点をもたらしうる。
【0063】
ニューラルネットワーク120の設定手順の際に、ニューラルネットワーク120は、各トレーニングスペクトルの成分値及び特性値を使用してトレーニングされる。
【0064】
行列T’の各行は、トレーニングスペクトルのうちの1つに対応し、ひいては特性値に関連付けられる。ニューラルネットワーク120がトレーニングモード(逆伝搬モードなど)で動作している時、ある特定の行に沿った値(t1、t2、…,tL)が主成分に対応する各入力ノードN1、N2…NLに供給されると共に、この行の特性値Vは出力ノード126に供給される。各行についてこれが繰り返されうる。これにより、上記の方程式1又は方程式2におけるak1の値などが設定される。
【0065】
例えばPCA、SVD、ICAなどによる主成分の決定は、ニューラルネットワークのトレーニングに使用されるデータセットよりも大きなデータを使用して実施されうる。つまり、主成分の決定に使用されるスペクトルの数は、トレーニングに使用される既知の特性値を有するスペクトルの数よりも大きくなりうる。
【0066】
システムは、この時点で動作する準備が整っている。インシトゥの分光モニタリングシステム70を使用して、研磨中に、基板からのスペクトルが測定される。測定スペクトルは、列行列S=(i1,i2,…,in)によって表わされうる。ここで、ijは全部でn個の波長のうちのj番目の波長における光強度を表わす。列行列Sは、列行列を生成するためにW’行列で乗算される。すなわち、S・W’=Pであり、ここで、P=(P1,P2,…,PL)であり、Piは、i番目の主成分の成分値を表わしている。
【0067】
ニューラルネットワーク120が推定モードで使用されている時、これらの値(P1,P2,….PL)が、対応する各入力ノードN1,N2,…NLに、入力として供給される。その結果として、ニューラルネットワーク120は、出力ノード126において特性値(厚さなど)を生成する。
【0068】
特性値CVを生成するために次元削減モジュール110及びニューラルネットワーク120によって実施される合成計算は、次のように表わされうる。
CV=C1*tanh(0.5(N1・S)+0.5b1)+C2*tanh(0.5(N2・S)+0.5b2)+…+CL*tanh(0.5(NL・S)+0.5bL)
ここで、Nk=(ak1V1・+ak2V2・+…+akLVL)であり、重みakiは、ニューラルネットワーク120によって設定された重みであり、ベクトルViは次元削減モジュール110によって決定された固有ベクトルである。
【0069】
ニューラルネットワーク120のアーキテクチャは、深度と幅が変動しうる。例えば、ニューラルネットワーク120は、中間ノード124の単一列を伴って図示されているが、複数の列を含むこともある。中間ノード124の数は、入力ノード122の数と等しいことも、それよりも多いこともある。
【0070】
上述したように、コントローラ90は、様々な測定スペクトルと、基板10上の種々のゾーン12a~12c(
図2参照)とを関連付けうる。各ニューラルネットワーク120の出力は、スペクトルが測定された時点における基板10上のセンサの位置に基づいて、ゾーンのうちの1つに属するものとして分類されうる。これにより、コントローラ90が、各ゾーンについて別個の特性値の数列を生成することが可能になる。
【0071】
特性値はプロセス制御モジュール130に供給される。次いで、例えば、各ゾーンの特性値は、基板全体の不均一性を低減するようプロセスパラメータを調整するためかつ/又は研磨終点を検出するために、プロセス制御モジュール130によって使用されうる。
【0072】
算出された特性値の信頼性は、スペクトルを再構築することと、次いで、再構築されたスペクトルと初期測定スペクトルとの間の差を特定することによって、評価されうる。例えば、主成分値(P1,P2,…,PL)が計算されると、再構築されたスペクトルQが、
P・W’T=Q
によって生成されうる。次いで、例えば差の平方の和を使用して、PとSとの間の差が計算されうる。この差が大きい場合、プロセスモジュール130は関連する特性値を無視しうる。
【0073】
例えば、
図6を参照するに、第1関数204は、第1ゾーンの特性値202の数列200にフィットしてよく、第2関数214は、第2ゾーンの特性値212の数列210にフィットしうる。プロセスコントローラは、第1と第2の関数が射影されてターゲット値Vに到達する時点T1及びT2を計算し、かつ、調整後の処理パラメータ(例えば調整後のキャリアヘッド圧力)を計算しうる。この調整後の処理パラメータにより、複数のゾーンがほぼ同時にターゲットに到達するように、ゾーンのうちの1つが修正後の速度(線220で示している)で研磨されることになる。
【0074】
研磨終点は、特性値がターゲット値Vに到達することを関数が示している時点において、プロセスコントローラ130によってトリガされうる。
【0075】
本発明の実施形態、及び、この明細書に記載の機能的動作の全ては、この明細書で開示されている構造手段及びその構造的等価物を含む、デジタル電子回路において、又はコンピュータのソフトウェア、ファームウェア、若しくはハードウェアにおいて、又はこれらの組合せにおいて、実装されうる。本発明の実施形態は、一又は複数のコンピュータプログラム製品(すなわち、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータといったデータ処理装置によって実行される、又はかかるデータ処理装置の動作を制御するための機械可読記憶媒体において有形に具現化される一又は複数のコンピュータプログラム)として、実装されうる。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても既知である)は、コンパイル型言語又はインタプリタ型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書かれてよく、かつ、スタンドアローンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境での使用に適するその他のユニットとしてのものを含む、任意の形態でデプロイされうる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応しているわけではない。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部分に、当該プログラム専用の単一のファイルに、又は、複数の連携ファイル(例えば、一又は複数のモジュール、サブプログラム、若しくはコードの一部分を記憶する複数のファイル)に、記憶されうる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータで若しくは一箇所にある複数のコンピュータで実行されるようデプロイされても、複数箇所にわたって分散配置されて通信ネットワークによって相互接続されてもよい。
【0076】
この明細書に記載のプロセス及び論理フローは、入力データで動作しかつ出力を生成することによって機能を実施するために一又は複数のコンピュータプログラムを実行する、一又は複数のプログラマブルプロセッサによって実施されうる。これらのプロセス及び論理フローは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)といった特殊用途向け論理回路によって実施されてもよく、装置が、かかる特殊用途向け論理回路として実装されることも可能である。
【0077】
上述した研磨装置及び研磨方法は、多種多様な研磨システムに適用されうる。研磨パッドとキャリアヘッドのいずれか又は両方が、研磨面と基板との間に相対運動を起こすよう動きうる。例えば、プラテンは、回転するのではなく軌道周回しうる。研磨パッドは、プラテンに固定された円形の(又は他の何らかの形状の)パッドでありうる。研磨システムは、例えば、研磨パッドが連続的であるか、又は線形に動くリールツーリールベルトである、線形研磨システムでありうる。研磨層は、標準的な(例えば、フィラーを伴う又は伴わないポリウレタンの)研磨材料、軟性材料、又は固定研磨材料(fixed-abrasive material)でありうる。相対的な位置付けという語は、構成要素同士の相対的な配向又は位置付けに使用されている。研磨面及び基板は、重力に関して垂直配向で又は他の何らかの配向で保持されうることを、理解すべきである。
【0078】
上記では化学機械研磨を中心に説明してきたが、制御システムは、その他の半導体処理技法(例えば、エッチングや化学気相堆積などの堆積)にも適合しうる。加えて、この技法は、インシトゥのモニタリングではなく、インラインの又はスタンドアローンの計測システムにも適用されうる。
【0079】
本発明の特定の実施形態について説明してきた。その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲に含まれる。