(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】注射デバイスでの電子機器のスリープ解除
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240805BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61M5/31
A61M5/24
(21)【出願番号】P 2021577939
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067870
(87)【国際公開番号】W WO2021001259
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ガネッシュ・アプサミー・ヴェダチャラム
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ビガルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・アルペルス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ラウシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・バッカロ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/202662(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/202586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(102)であって:
電子機器アセンブリ(105、210)を含むストッパ(107、207)であって、第1のサイズと第2のサイズとの間で移行するように構成されたストッパ(107、207)と;
電子機器アセンブリ(105、210)に電力供給するために起動されるように動作可能な電気機械スイッチ(127、410)とを含み;
ここで、ストッパ(107、207)は、該ストッパ(107、207)が第1のサイズと第2のサイズとの間で移行することにより、電気機械スイッチ(127、410)を起動させるように構成され
、該ストッパ(107、207)は、第1のサイズと第2のサイズとの間で移行し、ストッパ(107、207)に作用する周囲圧力の変化に応答して電気機械スイッチ(127、410)を起動させるように構成され、該注射デバイス(102)は、真空下で封止されており(402)、封止(402)を破ると、周囲圧力の変化が生じる、
前記注射デバイス。
【請求項2】
電気機械スイッチ(127、410)が圧電スイッチを含む、請求項
1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項3】
電気機械スイッチ(127、410)は、ストッパ(107、207)の外面に位置する、請求項1
または2に記載の注射デバイス(102)。
【請求項4】
電気機械スイッチ(127、410)は、ストッパ(107、207)の内側に配設される、請求項1
または2に記載の注射デバイス(102)。
【請求項5】
プランジャヘッド(109)をさらに含み、ここで、ストッパ(107、207)が第1のサイズから第2のサイズに移行するとき、プランジャヘッド(109)は、電気機械スイッチ(127、410)に力を加えて電気機械スイッチ(410)を起動させるように構成される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項6】
プランジャヘッド(109)をさらに含み、ここで、該プランジャヘッド(109)は、注射デバイス(102)内の第1の位置から注射デバイス(102)内の第2の位置に移動して、電気機械スイッチ(410)を起動させるように構成される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項7】
電子機器アセンブリ(105、210)は、無線モジュール(211)および少なくとも1つのセンサ(215、216)を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項8】
電子機器アセンブリ(105、210)は、圧力センサ(215)、力センサ(215)、または位置センサ(216)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)を操作する方法であって:
ストッパ(107、207)に作用する周囲圧力の変化を引き起こす工程を含み;
ここで、周囲圧力の変化により、ストッパ(107、207)が第1のサイズと第2のサイズとの間で移行し;
周囲圧力の変化による第1のサイズと第2のサイズとの間の移行により、電気機械スイッチ(127、410)が起動されて電子機器アセンブリ(105、210)に電力供
給し、
注射デバイス(102)は、真空下で封止されており(402)、封止(402)を破ると、周囲圧力の変化が生じる、
前記方法。
【請求項10】
ストッパ(107、207)に作用する周囲圧力の変化を引き起こすことは、注射デバイス(102)の構成要素(115、118)を注射デバイス(102)に取り付けることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
構成要素(115、118)は、キャップまたはニードルアセンブリである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
注射デバイス(102)はプランジャヘッド(109)を含み、ストッパ(107、207)が第1のサイズから第2のサイズに移行するとき、プランジャヘッド(109)は、電気機械スイッチ(410)に力を加えて電気機械スイッチ(410)を起動させる、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
薬剤注射システム(100)であって:
請求項1~
8のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)と;
該注射デバイス(102)と通信するように構成された外部プロセッサ(132)を含む外部デバイス(130)と、
を含む前記薬剤注射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器のスリープ解除を対象とし、より詳細には、注射デバイスでの電子機器のスリープ解除を対象とする。
【背景技術】
【0002】
電子的に有効にされる注射デバイスは、ユーザが薬剤を安全に投与するのを支援し、医療スタッフへの治療データの送信を可能にすることもできる。電子的に有効にされる注射デバイスは、エネルギー供給を必要とすることが可能な機能である継続的な能動センシングおよび接続特性を提供するように構成された電子構成要素を含む。エネルギー供給源は、電気部品に電力を供給する電池でありうる。電子的に有効にされる注射デバイスの構成は、エネルギー供給源の容量を制限することがあり、これはエネルギー供給源の寿命に影響を及ぼす。
【0003】
電子的に有効にされる注射デバイスの寿命は、そのエネルギー供給源の寿命によって制限されることがある。電子的に有効にされる注射デバイスのなかには、使用される前に長期間保管されているものもある。電子的に有効にされる注射デバイスの従来の構成は、エネルギー供給源のアイドル時漏出(idle drainage)につながる可能性があり、その結果、電子的に有効にされる注射デバイスが使用されていなくても、長い貯蔵期間によりエネルギー供給源の寿命が使い果たされる可能性がある。低バッテリ状態は、デバイスの機能不良、誤った用量、用量の不足につながる可能性があり、または電子構成要素の動作を停止することによって、電子的に有効にされる注射デバイスを使用できなくする可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実装形態は、エネルギー源のアイドル時漏出を防止することによって電子的に有効にされる注射デバイスの寿命を延ばすことができる機構およびシステムを含む。本開示の一態様によれば、電子的に有効にされる注射デバイスが提供される。注射デバイスは、電子機器アセンブリを含むストッパを含む。ストッパは、第1のサイズと第2のサイズとの間で移行するように構成される。注射デバイスは、電子機器アセンブリに電力供給するために起動されるように動作可能な電気機械スイッチを含む。ストッパは、ストッパが第1のサイズと第2のサイズとの間で移行するときに電気機械スイッチを起動させるように構成される。
【0005】
ストッパは、ストッパに作用する周囲圧力の変化に応答して、第1のサイズと第2のサイズとの間で移行するように構成することができる。
【0006】
電気機械スイッチは、圧電スイッチを含むことができる。電気機械スイッチは、ストッパの外面に位置することができる。電気機械スイッチは、ストッパの内側に配設することもできる。
【0007】
注射デバイスは、プランジャヘッドをさらに含むことができる。プランジャヘッドは、ストッパが第1のサイズから第2のサイズに移行するときに、電気機械スイッチに力を加えて電気機械スイッチを起動させるように構成することができる。プランジャヘッドは、注射デバイス内の第1の位置から注射デバイス内の第2の位置に移動して、電気機械スイッチを起動させるように構成することができる。
【0008】
電子機器アセンブリは、ワイヤレスモジュールと少なくとも1つのセンサとを含むことができる。電子機器アセンブリは、圧力センサ、力センサ、または位置センサのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0009】
本開示の少なくとも1つの他の態様では、前述した注射デバイスを操作する方法が提供される。この方法は、ストッパに作用する周囲圧力の変化を引き起こすことを含む。周囲圧力の変化により、ストッパが第1のサイズと第2のサイズとの間で移行され、第1のサイズと第2のサイズとの間での移行により、電気機械スイッチが起動されて電子機器アセンブリに電力供給する。
【0010】
注射デバイスは真空下で封止することができる。注射デバイスが真空下で封止されているとき、ストッパに作用する周囲圧力の変化を引き起こすことは、封止を破ることを含むことがある。ストッパに作用する周囲圧力の変化を引き起こすことは、注射デバイスの構成要素を注射デバイスに取り付けることを含むことができる。構成要素を注射デバイスに取り付けることで、注射デバイス内に真空を生成することができる。
【0011】
注射デバイスは、プランジャヘッドを含むことができる。プランジャヘッドは、ストッパが第1のサイズから第2のサイズに移行するときに、電気機械スイッチに力を加えて電気機械スイッチを起動させることができる。
【0012】
本開示の少なくとも1つの他の態様では、薬剤注射システムが提供される。注射システムは、前述の注射デバイスと外部デバイスとを含む。外部デバイスは、注射デバイスと通信するように構成された外部プロセッサを含む。
【0013】
本開示によるシステムは、本明細書で述べる態様および構成の任意の組合せを含むことができる。すなわち、本開示によるシステムは、本明細書で具体的に述べる態様および構成の組合せに限定されず、提供される態様および構成の任意の組合せも含む。
【0014】
本開示の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細を、添付図面および本明細書で以下に記載する。本開示の他の構成および利点は、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態による薬剤注射システムの分解図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、電子機器アセンブリを有するストッパを示す図である。
【
図3A】本開示の一実施形態による、ストッパに作用する圧力の変化に応答して第1のサイズから第2のサイズに移行するストッパを示す図である。
【
図3B】本開示の一実施形態による、ストッパに作用する圧力の変化に応答して第1のサイズから第2のサイズに移行するストッパを示す図である。
【
図4A】本開示の一実施形態による、ストッパにある電気機械スイッチを起動させるプランジャを示す図である。
【
図4B】本開示の一実施形態による、第1のサイズから第2のサイズに移行して、プランジャヘッドに電気機械スイッチを起動させるストッパを示す図である。
【
図5】本開示の実装形態を実行するために使用することができる例示的なコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0017】
本開示の実装形態は、一般に、エネルギー源のアイドル時漏出を防止するために、注射デバイスのエネルギー源を制御下で起動することを対象とする。より詳細には、本開示の実装形態は、注射デバイスのエネルギー源を起動するための機械的手段を有する注射デバイスを対象とする。
【0018】
電子構成要素を有するいくつかの従来の注射デバイスでは、注射デバイスの意図された使用の前に、誤ったトリガ信号に応答して注射デバイスのエネルギー源が起動されて、エネルギー源のアイドル時漏出を招く可能性がある。したがって、電子注射デバイスの使用が、エネルギー源のアイドル時漏出によって妨げられる可能性がある。いくつかの従来の注射デバイスでは、エネルギー源の起動プロセスは、注射デバイスがプライミングされた後、長時間かかることがある。起動プロセスが長引くと、注射デバイスが実用的でなくなることがある。いくつかの従来の注射デバイスは、注射デバイスの外面に手動ボタンまたはスイッチを含むことができ、これをユーザが(たとえば手動ボタンを押すことによって)操作して、エネルギー源を起動させることができる。これらのボタンまたはスイッチは、薬剤送達用のデバイスを操作するために必要なアクションに加えて、ユーザによる追加のアクションを必要とし、これは負担となることがあり、意図しないトリガにつながることもある。さらに、これらの外部ボタンは、ボタンがエネルギー源と通信することができるように、外部電子配線および注射デバイス内の回路をもたらすことがある。
【0019】
本明細書でさらに詳細に述べるように、本開示の実装形態はこれらの課題に対処する。たとえば、実装形態によれば、電子注射デバイスは、デバイスのユーザが薬物送達のために注射デバイスを操作するためにすでに実施したアクション(たとえば、パッケージを開ける、注射デバイスにニードルアセンブリを取り付ける、プライミング工程を完了するなど)に応答して迅速に(数秒以内に)起動することができ、起動プロセスを簡素化し、エネルギー源のアイドル時漏出を防止する。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態による例示的な薬剤注射システム100の分解図を示す。薬剤注射システム100は、ユーザが流体(たとえば薬剤)を注射するのを支援し、医療データの共有を容易にするように構成することができる。例示的な薬剤注射システム100は、注射デバイス102および外部デバイス130を含む。注射デバイス102は、エネルギー源104のアイドル時漏出を防止するように構成された電子的に有効にされる注射デバイスである。注射デバイス102は、充填済みの使い捨て注射ペンでも、交換可能な薬剤リザーバ106を有する再利用可能な注射ペンでもよい。いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、外部デバイス130と通信することができる。いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、動作データ(たとえば、注射デバイス102の使用開始時間ならびに使用および保管中の注射デバイス102の温度に関連するデータ)および対応する治療データ(たとえば、投薬される薬剤の量、注射デバイス102によって薬剤が投薬される経過時間など)を外部デバイス130に送信することができる。いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、注射デバイス102を一意に識別するために外部デバイス130によって使用される識別子に関連付けることができる。
【0021】
注射デバイス102は、ハウジング110およびニードルアセンブリ115を含む。ハウジング110は、エネルギー源104、電子機器アセンブリ105、薬剤リザーバ106、ストッパ107、プランジャロッド108、プランジャヘッド109、プライミング構成要素(たとえば投与量ノブ)112、投与量窓114、および注射ボタン120を含む。ハウジング110は、熱可塑性ポリマーまたは液晶ポリマーなど医療グレードのプラスチック材料から成形することができる。いくつかの実施形態では、ハウジング110は、投薬メカニクス要素(たとえば投与量ノブ)を収容する本体部分と、薬剤リザーバ106を収容し、ニードルハブを提供するカートリッジホルダ部分とに分割される。いくつかの実装形態では、ストッパ107は、電子機器アセンブリ105またはエネルギー源104のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
薬剤リザーバ106は、流体薬剤を含むように構成される。薬剤リザーバ106は、薬剤や麻酔薬など調製された流体を包装するために使用されるカートリッジまたはシリンジのような、従来の概して円筒形の使い捨て容器でよい。いくつかの実装形態では、薬剤リザーバ106は、一対の端部を備えることができ、一方の端部は、封止係合で針113の内向きの端部を受け入れる穿孔可能な膜を有する。含まれる薬剤の用量は、投与量ノブ112を回すことによって注射デバイス102から排出することができる。選択された用量は、たとえばいわゆる国際単位(IU)の倍数で投与量窓114を通して表示される。ここで、1IUは、約45.5マイクログラム(たとえば1/22mg)の純結晶薬剤の生物学的当量である。投与量窓114に表示される選択された用量の例は、たとえば
図1に示されるように30IUでありうる。いくつかの実装形態では、選択された用量は、たとえば電子ディスプレイによって別の形態で表示する(たとえば、投与量窓114は、電子ディスプレイの形態を取ることができる)。投与量ノブ112を回すことにより、機械的なクリック音が生じて、ユーザへの音響フィードバックの提供を引き起こすことができる。投与量窓114に表示される数字は、ハウジング110に含まれ、プランジャヘッド109と機械的に相互作用するスリーブに印刷することができ、プランジャヘッド109は、プランジャロッド108の端部に固定され、薬剤リザーバ106のストッパ107を押す。
【0023】
プランジャヘッド109(たとえばプランジャロッド108の後端)は、薬剤リザーバ106内のストッパ107を変位させることによって流体の一部を排出するように動作可能であり、ストッパ107の位置は、注射デバイス102内の流体の量に関連付けられる。プランジャロッド108はプランジャヘッド109に取り付けられる。しかし、いくつかの実装形態では、プランジャロッド108とプランジャヘッド109とは別個の構成要素である。いくつかの実施形態では、プランジャヘッド109はストッパ107に取り付けられる。
【0024】
ストッパ107は、ゴム製ストッパなどの可撓性ストッパである。ストッパ107は、ストッパ107を取り囲む剛性部材を含むことができる。いくつかの実装形態では、ストッパ107は、封止構成要素を含む剛性ストッパである。ストッパ107は、エネルギー源104の幾何形状および寸法に一致する外方に突出するリムを有することができる。ストッパ107が可撓性ストッパであるいくつかの実装形態では、ストッパ107は、ストッパ107に作用する圧力の変化に応答して、第1のサイズと第2のサイズとの間で移行することができる。たとえば、ストッパ107は、ストッパが真空状態で封止されているときには収縮状態(第1のサイズ)になり、次いで真空シールが破られてストッパ107が通常大気圧条件を受けるときには伸張状態(第2のサイズ)に移行することができる。ストッパ107は、プランジャヘッド109によって係合されたときにストッパ107が裂けるまたはねじれることがないように十分な長さにすることができる。いくつかの実装形態では、ストッパ107は、以下でより詳細に述べるように、構成要素のなかでもとりわけエネルギー源104および電子機器アセンブリ105を含む。したがって、ストッパ107は、これらの構成要素を収容するのに十分な体積を含むことができる。
【0025】
電子機器アセンブリ105は、1つまたはそれ以上のセンサ128bを含む。いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のセンサ128bは、力センサ、圧力センサ、または位置センサのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、1つまたはそれ以上のセンサ128bが十分に動作できる最低限の電力を提供することができる。いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のセンサ128bは、個別の電源を有する、またはそれら独自の電源を有する。
図2を参照して後でより詳細に論じるように、いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ105は、1つまたはそれ以上のセンサ128bによって生成された信号に基づいて、注射デバイス102から排出された薬剤の量を検出することができる。電子機器アセンブリ105は、電気機械スイッチ127も含む。電気機械スイッチ127は、圧電スイッチなどの電気スイッチであり、スイッチ127に加えられた力に基づいて(すなわちスイッチ127の起動時に)電荷を生成することができる。いくつかの実装形態では、電気機械スイッチ127は、ストッパ107の内面に位置する。他の実装形態では、電気機械スイッチ127は、ストッパ107の外面に位置する。
【0026】
エネルギー源104は、1.5V~5Vの酸化銀もしくはリチウム電池(たとえば、SR626、SR516、SR416)またはスーパーキャパシタなど、使い捨てまたは再充電可能な電池でありうる。いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、複数の電池(たとえば2つの1.5V電池)を含むことができる。エネルギー源104は、電気機械スイッチ127に通信可能に結合される。
図3A~6を参照して後述するように、エネルギー源104は、電気機械スイッチ107によって起動されるように構成される。エネルギー源104は、起動後など特定の条件下で電子機器アセンブリ105にエネルギーを供給するように構成される。
【0027】
電子機器アセンブリ105は、エネルギー源104の起動時に注射デバイス102の1つまたはそれ以上の機能(たとえば薬剤の排出)を実施および/または支援するように構成された1つまたはそれ以上の電子構成要素を含む。たとえば、電子機器アセンブリ105は、1つまたはそれ以上のプロセッサ128a、1つまたはそれ以上のセンサ128b、アンテナ128c、およびモータ128dを含むことができる。いくつかの実装形態では、モータ128dは、特定の量の薬剤を投薬するためにマイクロステップの増分で進むように構成される。いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のセンサ128bは、投薬された薬剤の量または薬剤リザーバ106に残っている薬剤の量に比例する信号(たとえば電圧)を1つまたはそれ以上のプロセッサ128aに提供することができる。
【0028】
いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、マイクロプロセッサを含む。いくつかの実装形態では、マイクロプロセッサはマイクロコントローラであり、たとえば、単一のパッケージに形成されたマイクロプロセッサコンポーネントと他のコンポーネントとの組合せである。マイクロプロセッサは、算術および/または論理ユニットアレイでありうる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、電子機器アセンブリ105の他の電子構成要素(センサ128bなど)から受信された1つまたはそれ以上の信号を処理し、信号をアンテナ128cに送信することができる。たとえば、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、受信されたデータに対して処理を実行して出力データを生成するように構成することができる。いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、少なくとも一部は電気信号に基づいて注射デバイス102内の流体の量を決定し、流体の量に関連する情報を含むデータをアンテナ128cに送信することができ、アンテナ128cは、データを外部デバイス130に送信することができる。
【0029】
アンテナ128cは、Bluetoothまたは近距離無線通信(NFC)アンテナでありうる。アンテナ128cは、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aおよび外部デバイス130に信号を送信することができる。たとえば、アンテナ128cによって送信される信号は、薬剤リザーバ106内の流体の量、1つまたはそれ以上のセンサ128bのそれぞれによって測定された値、および注射デバイス102の識別子を含むことができる。通信フィールド134は、外部デバイス130によって生成されたBluetoothフィールドまたはNFCフィールドでありうる。外部デバイス130は、BluetoothまたはRFモジュール、送信機、受信機、および外部プロセッサ132を含むことができる。外部プロセッサ132は、注射デバイス102によって送信されたデータを処理するように構成することができる。外部デバイス130は、注射デバイス102から受信され、外部プロセッサ132によって処理されたデータを(たとえばグラフィカルユーザインタフェースを介して)表示するように構成することができる。
【0030】
ニードルアセンブリ115は、ハウジング110のニードルハブに取り付けることができる針113を含む。針113は、内側ニードルキャップ116および外側ニードルキャップ117によって覆うことができ、外側ニードルキャップ117はさらにキャップ118によって覆うことができる。針113が患者の皮膚部分に挿入され、次いで注射ボタン120が押されると、投与量窓114に表示された薬剤用量が注射デバイス102から排出される。注射ボタン120が押された後に注射デバイス102の針113が皮膚部分に一定時間留まると、高い割合(たとえば90%を超える)の用量を患者の体内に注射することができる。薬剤用量の排出は、機械的なクリック音を生成することができ、このクリック音は、投与量ノブ112を使用するときに生成される音とは異なるものにすることができる。
【0031】
注射デバイス102は、薬剤リザーバ106が空になる、または注射デバイス102の有効期限(たとえば初回使用から28日後)に達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。注射デバイス102を初めて使用する前に、プライミング操作を実施して、エネルギー源104を電気部品に結合すること、ならびに/または薬剤リザーバ106および針113から空気を除去することが必要となりうる。たとえば、プライミング操作は、2単位の薬剤を選択し、針113を上に向けた状態で注射デバイス102を保持しながら注射ボタン120を押すことを含むことができる。
【0032】
いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ105の電子構成要素は、単一の位置で、または複数の位置で(たとえば、プランジャロッド108内に、またはプランジャロッド108に取り付けられて、およびプランジャヘッド109の空洞に)、ハウジング110内に組み込むことができる。いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ105の1つまたはそれ以上の構成要素がストッパ107内に含まれる。いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ105の1つまたはそれ以上の構成要素がプランジャヘッド109内に含まれる。
【0033】
いくつかの実装形態では、エネルギー源104の位置、または電子機器アセンブリ105の1つもしくはそれ以上の電子構成要素の位置のうちの少なくとも一方は、電子機器アセンブリ105とエネルギー源104との結合とは独立して選択することができる。いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ105の1つもしくはそれ以上の電子構成要素の1つもしくはそれ以上の特性、またはエネルギー源104の1つもしくはそれ以上の特性が、電子機器アセンブリ105をエネルギー源104と結合するおよび/またはエネルギー源104から結合解除するために選択される。
【0034】
いくつかの実装形態では、注射デバイス102のハウジング110は、エネルギー源104へのユーザアクセスを提供するために複数のセグメントに分離または分割されるように構成し、エネルギー源104の個別の廃棄を可能にする。いくつかの実装形態では、注射デバイス102と組立て予定の薬剤リザーバ106は、挿入されたストッパ107を備えて製造され、流体薬剤で充填され、圧着シールで閉じられる。
【0035】
いくつかの実装形態では、薬剤リザーバ106の製造および保管中、および注射デバイス102との組立て前に、エネルギー源104は起動されない。エネルギー源104を停止状態に保つことによって、薬剤リザーバ106の製造および生じうる長期保管中に、エネルギーのアイドル時漏出が生じることはない。注射デバイス104を使用する後続の工程(
図3A~4Bを参照して後でより詳細に述べる)において、注射デバイス102のエネルギー源104が電気機械スイッチ127によって起動されて、電子機器アセンブリ105に電力供給する。いくつかの実装形態では、エネルギー源104が電子機器アセンブリ105に接続されて、起動信号の受信時に注射デバイス102の機能の制御を有効にする。いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、注射デバイス102および電子機器アセンブリ105の適切な動作を確認するために、組立て中に一時的に起動されることがある。製造工程としてのエネルギー源104への接続は、電子機器アセンブリ105をウェイクアップし、適切なシステム機能を確認するフィードバック信号を生成することを可能にする。そのようなインプロセス制御を実施した後、エネルギー源104が再び切断されることがあり、または、エネルギー源104が起動されるまで、エネルギー消費を低減する適切なソフトウェア機能によって電子機器アセンブリ105がスリープモードに設定されることがある。
【0036】
図2は、本開示の一実施形態による、電子機器アセンブリ210を有するストッパ207を示す。いくつかの実装形態では、
図1を参照して上述したストッパ107は、
図2に示されるストッパ207と実質的に同様である。ストッパ207は、伸張可能なゴム材料(たとえば、ネオプレン、M18、シリコーンゴムなど)を含む。ストッパ207は、電子機器アセンブリ210を含む。いくつかの実装形態では、
図1を参照して上述した電子機器アセンブリ105は、
図2に示される電子機器アセンブリ210と実質的に同様である。
【0037】
電子機器アセンブリ210は、圧力または力センサ215、位置センサ216、プロセッサ213、メモリ214、ワイヤレスモジュール211、および電力モジュール211を含む。圧力または力センサ215および位置センサ216は電子機器アセンブリ210に配置されて、電子機器アセンブリ210がストッパ207に配設されたときに、位置センサ216は、感知信号を薬剤リザーバ106の内部体積に送信および受信する、またはストッパ207もしくはプランジャロッド108(もしくはプランジャヘッド109)の位置を検出することができ、圧力または力センサ215は、注射デバイス102のプランジャヘッド109を介してストッパ207(もしくは電子機器アセンブリ210)に加えられた力を測定する、またはプランジャロッド108内の圧力を検出することができる。プロセッサ213は、電子機器アセンブリ210のすべての要素に動作可能に結合され、圧力センサ215、位置センサ216、および無線モジュール211の起動を制御する。メモリ214は、電子機器アセンブリ210の構成要素を動作させる際にプロセッサ213が使用するための命令を記憶している。
【0038】
図2は、電子機器アセンブリ210に一体の圧力または力センサ215を含むストッパ207内の電子機器アセンブリ210を示すが、他の例では、圧力または力センサ215は、電子機器アセンブリ210の外部にある(たとえば、プランジャロッド108による接触点に位置する、プランジャロッド108自体に取り付けられる、など)。
図2は、ストッパ207内の電子機器アセンブリ210を示すが、いくつかの実施形態では、内圧または力センサ215を有することも有さないこともある電子機器アセンブリ210は、圧力または力センサ215から信号を受信することができるように注射デバイス102の他の場所に位置する。
【0039】
無線モジュール211は、電子機器アセンブリ210からの情報を通信するために外部電子デバイスと通信するように構成される。いくつかの実装形態では、無線モジュール211は、
図1を参照して上述したアンテナ128cなどのアンテナ(またはトランシーバ)を含む。電力モジュール212は、
図1を参照して上述したエネルギー源104などのエネルギー源を含み、電子機器アセンブリ210のすべての構成要素に電力を供給するように構成される。電力モジュール212は電気機械スイッチ410も含み、電気機械スイッチ410は、
図1を参照して上述した電気機械スイッチ127と実質的に同様でありうる。電気機械スイッチは、電気機械スイッチ410に対する力の印加後、電力モジュール212を起動させるように構成される。たとえば、電気機械スイッチ410に力が加えられるとき、電気機械スイッチ410が起動されて、電気信号を生成および送信することができ、この電気信号を電力モジュール212によって受信することができる。電力モジュール212は、電気信号を受信すると起動される。起動後、電力モジュール212は、電子機器アセンブリ210の構成要素に電力を供給する。いくつかの実装形態では、電子機器アセンブリ210は、容量性デバイスを含み、容量性デバイスは、電力モジュール210にエネルギーを提供するために、近距離無線通信プロトコル(NFC)信号によってたとえばスマートフォンからワイヤレスで、または他の誘導性負荷手段を含む典型的なワイヤレス充電デバイスによって電力を受信するように構成された容量性回路を含む。
【0040】
図2は、無線モジュール211を含む電子機器アセンブリ210を示しているが、いくつかの例では、無線接続性がなく、注射デバイス102または電子機器アセンブリ210自体が、ユーザに視覚的もしくは聴覚的に警告する、または特定の情報をユーザに提供するように構成されたアラート機構を含む。たとえば、代表的なアラート機構は、感知された圧力または力信号および薬物送達操作の品質の決定された標示に基づいて、ユーザに異なる色を点灯するように配置されたディスプレイまたは一連のLEDライトでありうる。たとえば、青色のライトはデバイスが使用できる状態にあることを示し、オレンジ色のライトは、薬物送達デバイスが薬物送達操作を行っている間に点灯させることができ、緑色または赤色のライトは、薬物送達操作の完了が感知されると、それぞれ送達操作の成功または失敗を示すために点灯することがある。他の例では、アラート機構は、視覚的なアラート機構と同じまたは異なる情報を伝えるために、異なる音またはビープ音を生成することができる。
【0041】
電子機器アセンブリ210は、センサ215、216の使用により、注射デバイス102から排出された薬剤の量を検出することができる。たとえば、位置センサ216の使用により、電子機器アセンブリ210は、薬剤リザーバ106内のストッパ207の位置(または位置の変化)を検出し、この情報に基づいて、排出された薬剤の量を決定することができる。追加としてまたは代替として、電子機器アセンブリ210は、力(または圧力)センサ215を使用して、ストッパ207にどれほどの力が加えられているかを(またはストッパ207に力が加えられている時間の量)を決定して、排出された薬剤の量を決定することができる。
【0042】
簡単に上述したように、いくつかの実装形態では、薬剤を投薬するための注射デバイス102の操作中にユーザがすでに行う機能をユーザが行う(たとえば、プランジャロッド108を操作する、または注射デバイス102を含む封止パッケージを開く)ことによって、スイッチ410を起動して電子機器アセンブリ210に電力供給することができ、それにより、電子機器アセンブリ210に電力供給するために追加の工程(たとえば追加の押しボタンを手動で押す)が必要とされなくなることがある。
【0043】
図3A~3Bは、本開示の一実施形態による、ストッパ207に作用する圧力の変化に応答して第1のサイズから第2のサイズに移行するストッパ207を示す。注射デバイスは、包装402内に真空封止されている。包装402は、注射デバイス102が包装402内に(たとえばぴったりと)収まることができるように、注射デバイス102を収容するようなサイズおよび形状の切抜き部分を有することがある。包装402は、ラッピング(たとえば紙やプラスチックなど)を含むことがあり、ラッピングを取り除かないと包装402を開くことができず、注射デバイス102を取り出すことができない。いくつかの実装形態では、包装402(またはラッピング)は、温度変化に耐性のある材料を含む。たとえば、包装402は、内部の温度を約7℃未満に保っておくことができる。包装402が閉じられ、ラッピングが所定位置にあるとき、注射デバイス102は、7℃未満の温度を保っておくことができる。
【0044】
図3Aを参照すると、注射デバイス102が包装402内で真空封止下にあるとき、ストッパ207は伸張状態(第1のサイズ)にある。図示される実施形態では、電気機械スイッチ410は、ストッパ207の表面207aに近接して、ストッパ207の内側に配設される。スイッチ410は起動されていない。
【0045】
図3Bを参照すると、ユーザが包装402に穿孔402aを生じさせると、真空シールが破られ、注射デバイスは通常大気圧条件を受ける。これにより、ストッパ207が収縮する(第2のサイズ)。ストッパ207が収縮すると、ストッパ207の表面207aが電気機械スイッチ410に力を加え、スイッチ410を起動させる。起動されると、スイッチ410は、エネルギー源104を起動することによって電子機器アセンブリ210に電力供給する。
【0046】
図4Aは、本開示の一実施形態による、ストッパ207にある電気機械スイッチ410を起動させるプランジャを示す。注射デバイス102を操作する際、ユーザは通常、注射デバイス102をプライミングした後、注射デバイス102を使用して薬剤をユーザの体内に送達することができる。注射デバイス102のプライミングは、プランジャロッド108を起動させてプランジャヘッド109をストッパ207に接触させることによって注射デバイス102から空気を除去することを含むことができる。
図4Aに示されるように、いくつかの実装形態では、電気機械スイッチ410は、ユーザが注射デバイス102をプライミングするときにプランジャヘッド109が電気機械スイッチ410に力を加えてスイッチ410を起動させ、したがって電子機器アセンブリ210に電力供給するように、ストッパ207に位置する。
【0047】
図4Aは、電気機械スイッチ410がストッパ207の外面に位置することを示しているが、いくつかの実施形態では、電気機械スイッチ410は、
図3A~3Bに示されるようにストッパ207の外面に位置する。これらの例では、プランジャヘッド109は、電気機械スイッチ410を起動させることができる。たとえば、プランジャヘッド109は、ストッパ207に力を加えて、電気機械スイッチ410に近接するストッパ207の表面を押し下げ、ストッパ207の表面を電気機械スイッチ410に接触させてスイッチ410を起動させることができる。
【0048】
図4Bは、本開示の一実施形態による、第1のサイズから第2のサイズに移行して、プランジャヘッド109に電気機械スイッチ410を起動させるストッパ207を示す。注射デバイス102を操作するとき、ユーザは、注射デバイス102の構成要素を注射デバイス102に取り付けることを要求される。たとえば、ユーザは、ニードルアセンブリ115またはキャップ118を注射デバイス102に取り付けることを要求される。これらの構成要素の取付けは、注射デバイス102内に真空シールを作成することができる。前に示したように、ストッパ207に作用する圧力の変化は、ストッパ207を第1のサイズ(この例では収縮状態)から第2のサイズ(この例では伸張状態)に移行させることができる。
図4Bに示されるように、いくつかの実装形態では、電気機械スイッチ410は、ストッパ207の外面に配置される。プランジャヘッド109は、真空シールが作成されたときにストッパ207が収縮状態から伸張状態に移行されるように、ストッパ207に近接するように配置される。ストッパ207が伸張状態に移行するとき、電気機械スイッチ410がプランジャヘッド109に接触させられる。その結果、プランジャヘッド109は、電気機械スイッチ410に力を加え、スイッチ410を起動させて電子機器アセンブリ210に電力供給する。
【0049】
注射デバイス102をスリープ解除させるための様々な可能な技法を述べてきたが、他の技法も可能である。いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、注射デバイスを直立姿勢で取り付けることができるように構成されたドッキングステーションを含むことがある。注射デバイス102を初めて取付けステーションに配置することで、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことができる。いくつかの実装形態では、ドッキングステーションは、注射デバイス102の電気機器アセンブリ105、および家庭内のWiFiネットワークへの接続機能を含むこともある。いくつかの実装形態では、容量性手段、NFC、磁気スイッチ、または他の技術を実装してエネルギー源104を起動させることができ、そのような対話は、2つのデバイスが対話することを許可されているので容易に実装することができる。
【0050】
いくつかの実装形態では、プルタブがエネルギー源104の近くに位置することがあり、プルタブが所定位置にある状態では、注射デバイス102を通って電力が十分に流れることが防止される。初回使用の前に、ユーザはプルタブを取り除き、それにより注射デバイス102をスリープ状態からスリープ解除させ、完全な機能を実現することができる。
【0051】
いくつかの実装形態では、手動スイッチが注射デバイス102に提供されることがある。初回使用の前に、ユーザはスイッチを押す/フリップすることができ、それにより、起動信号がエネルギー源104に提供され、デバイスをそのスリープ状態からスリープ解除させる。いくつかの実装形態では、スイッチは、タッチボタン(たとえば静電容量式タッチボタン)でありうる。
【0052】
いくつかの実装形態では、別個のデバイス(たとえば
図1の外部デバイス130)を使用して、エネルギー源104をそのスリープ状態からスリープ解除させることができる。たとえば、外部デバイス130は、患者が対話して注射デバイス102をスリープ解除させることができるスマートフォンまたはタブレットでよい。外部デバイスは、アンテナ128cを介して(たとえば、WiFi、NFC、RFIDなどの短距離無線プロトコルを介して)注射デバイスと通信することができる。特に、外部デバイス130は、注射デバイス102との接続を形成することがあり、ユーザは、外部デバイス130と対話して、注射デバイスをスリープ解除させるように外部デバイス130に指示することができ、外部デバイス130は、起動信号を注射デバイス102に提供することができ、次いでユーザは、注射デバイスを初回使用することができる。
【0053】
図5は、例示的なコンピューティングシステム500の概略図を示す。システム500は、本明細書で述べる実装形態に関連して述べる動作に使用することができる。たとえば、システム500は、本明細書で論じるサーバコンポーネントのいずれかまたはすべてに含まれることがある。システム500は、プロセッサ510、メモリ520、記憶デバイス530、および入出力デバイス540を含む。各構成要素510、520、530、および540は、システムバス550を使用して相互接続される。プロセッサ510は、システム500内で実行するために命令を処理することができる。一実装形態では、プロセッサ510はシングルスレッドプロセッサである。別の実装形態では、プロセッサ510はマルチスレッドプロセッサである。プロセッサ510は、メモリ520または記憶デバイス530に記憶された命令を処理して、ユーザインタフェースに関するグラフィック情報を入出力デバイス540に表示することができる。
【0054】
メモリ520は、システム500内に情報を記憶する。一実装形態では、メモリ520はコンピュータ可読媒体である。一実装形態では、メモリ520は揮発性メモリユニットである。別の実装形態では、メモリ520は不揮発性メモリユニットである。記憶デバイス530は、システム500に大容量記憶を提供することができる。一実装形態では、記憶デバイス530はコンピュータ可読媒体である。様々な異なる実装形態では、記憶デバイス530は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスでありうる。入出力デバイス540は、システム500に関する入出力動作を提供する。一実装形態では、入出力デバイス540は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。別の実装形態では、入出力デバイス540は、
図1~4Bを参照して述べたように収集、記憶、および照会された項目に関連するデータにユーザがアクセスできるようにするグラフィカルユーザインタフェースを表示するための表示ユニットを含む。
【0055】
上述した機能は、デジタル電子回路、コンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実装することができる。装置は、プログラム可能なプロセッサによって実行するために、情報キャリア、たとえば機械可読記憶デバイスに有形で具現化されたコンピュータプログラム製品に実装することができる;方法工程は、プログラム可能なプロセッサが命令のプログラムを実行して、入力データを操作して出力を生成することにより上述した実装形態の機能を実施することによって実施することができる。上述した機能は、有利には、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信するため、ならびにそれらにデータおよび命令を送信するために結合された少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能な1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムに実装することができる。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実施するため、または特定の結果をもたらすために、コンピュータで直接または間接的に使用することができる1組の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイル言語または解釈言語を含む任意の形態のプログラミング言語で記述することができ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど任意の形態で展開することができる。
【0056】
命令プログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとの両方、および任意の種類のコンピュータの単一のプロセッサまたは複数のプロセッサのうちの1つを含む。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ、またはそれら両方から命令およびデータを受信する。コンピュータの重要な要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1つまたはそれ以上のメモリである。一般に、コンピュータは、データファイルを記憶するための1つもしくはそれ以上の大容量記憶デバイスも含む、または大容量記憶デバイスと通信するように動作可能に結合される;そのようなデバイスには、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;および光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令およびデータを有形に具現化するのに適した記憶デバイスには、すべての形態の不揮発性メモリが含まれ、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス;内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが挙げられる。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補完する、またはASICに組み込むことができる。
【0057】
ユーザとの対話を可能にするために、ユーザに情報を表示するためのCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイスと、ユーザがコンピュータに入力を提供できるようにするキーボードおよびポインティングデバイス、たとえばマウスやトラックボールとを備えたコンピュータに機能を実装することができる。
【0058】
機能は、データサーバなどのバックエンドコンポーネント、アプリケーションサーバやインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネント、もしくはグラフィカルユーザインタフェースもしくはインターネットブラウザを備えたクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネント、またはそれらの任意の組合せを含むコンピュータシステムに実装することができる。システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどの任意のデジタルデータ通信形式または媒体によって接続することができる。通信ネットワークの例には、たとえば、LAN、WAN、ならびにインターネットを形成するコンピュータおよびネットワークが含まれる。
【0059】
コンピュータシステムは、クライアントとサーバとを含むことができる。クライアントとサーバとは通常、互いに遠隔にあり、典型的には上述したようなものなどネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータで実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有することによって生じる。
【0060】
さらに、図に示されている論理フローは、望ましい結果を実現するために、示されている特定の順番または順序を必要としない。さらに、他の工程が提供されることもあり、または上述したフローから工程がなくされることもあり、上述したシステムに他のコンポーネントが追加される、もしくはシステムからコンポーネントが除去されることもある。したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【0061】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を記述するために使用される。以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つの低分子もしくは高分子またはそれらの組合せを含みうる。例示的な薬学的に活性な化合物としては、低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物も企図される。
【0062】
「注射デバイス」という用語は、ある体積の薬物を人体または動物体に投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを含むものとする。体積は通常、約0.5ml~約10mlの範囲でありうる。限定はしないが、薬物送達デバイスは、シリンジ、針安全システム、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、かん流システム、または薬物の皮下、筋肉内、もしくは血管内送達のために構成された他のデバイスを含むことがある。そのようなデバイスはしばしば針を含み、針は小ゲージ針(たとえば、約24ゲージよりも大きく、27、29、または31ゲージを含む)を含むことができる。
【0063】
特定の薬剤と組み合わせて、本明細書で述べるデバイスは、必要なパラメータ内で、たとえば、特定の期間内(たとえば注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約5分~約60分)、不快感レベルが低いもしくは最小、または人的要因、貯蔵寿命、有効期限、生体適合性、環境への配慮などに関連する特定の条件内で動作するようにカスタマイズすることもできる。そのような変動は、たとえば粘度が約3cPから約50cPの範囲の薬物など、様々な要因により生じる可能性がある。
【0064】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬学的に活性な化合物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-3℃~約3℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、薬物製剤の2つ以上の成分(たとえば、薬物と希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に薬物もしくは薬剤の2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0065】
本発明に記載の注射デバイスおよび薬物は、多くの異なるタイプの障害の治療および/または予防のために使用可能である。例示的な障害としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。
【0066】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のための例示的な薬物としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、もしくはそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「誘導体」という用語は、元の物質と実質的に同様の機能性または活性(たとえば、治療効果)を有するように、構造的に十分同様である任意の物質を指す。
【0067】
例示的なインスリンアナログは、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0068】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストは、たとえば、リキシセナチド/AVE0010/ZP10/リキスミア、エキセナチド/エキセンジン-4/バイエッタ/ビデュリオン/ITCA650/AC-2993(ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド/ビクトーザ、セマグルチド、タスポグルチド、シンクリア/アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0069】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセン/キナムロである。
【0070】
例示的なDPP4阻害剤は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0071】
例示的なホルモンとしては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0072】
例示的な多糖としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20/シンビスク、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0073】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。
【0074】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0075】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0076】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0077】
本明細書に記載の化合物は、(a)化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤に使用可能である。化合物は、1つもしくはそれ以上の他の活性医薬成分を含む医薬製剤、または本化合物もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩が唯一の活性成分である医薬製剤にも使用可能である。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0078】
本明細書に記載のいずれの薬物の薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、もしくはK+、またはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリール基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は当業者には公知である。
【0079】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)もしくはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0080】
本開示の多くの実装形態を述べてきた。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を施すことができることが理解されよう。したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲内にある。