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特許7532533シリコン結晶を製造するための石英ガラス坩堝および石英ガラス坩堝の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】シリコン結晶を製造するための石英ガラス坩堝および石英ガラス坩堝の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240805BHJP
   C30B 15/10 20060101ALI20240805BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/10
C01B33/12 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022547136
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051798
(87)【国際公開番号】W WO2021156114
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102020000701.5
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,トーニ
(72)【発明者】
【氏名】ツェンケ,ディルク
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-060152(JP,A)
【文献】特開平09-110590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/10
C01B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー技術に従ってシリコンの単結晶を引き上げるための溶融石英坩堝であって、
表面を形成する溶融石英の内側層が位置する内側を有し、
前記内側層は結晶化促進剤と、合成により得られたSiO と、天然に得られるSiO とを含み、前記結晶化促進剤は、結晶引上げにおいて、指定された使用の状況で前記溶融石英坩堝が加熱されると、溶融石英の結晶化をもたらしてβ-クリストバライトを形成し、
前記表面から距離dにおける前記合成により得られたSiOの前記内側層における濃度Cは、前記表面から距離d2における前記合成により得られたSiOの前記内側層における濃度よりも大きく、d2はdよりも大きいこと、および
前記距離dの関数としての前記合成により得られたSiOの濃度Cは、以下の関係:C[%]≦100-(d[mm]-0.25)×30、および
C[%]≧100-(d[mm]+0.25)×80
に従うことを特徴とする、溶融石英坩堝。
【請求項2】
前記結晶化促進剤はバリウムまたはストロンチウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の溶融石英坩堝。
【請求項3】
前記表面までの前記距離dが0.4mm未満であるとき、前記合成により得られたSiOの濃度Cは90%より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の溶融石英坩堝。
【請求項4】
前記距離dの関数としての前記合成により得られたSiOの濃度Cは、以下の関係:C[%]≦100-(d[mm]+0.1)×80、および
C[%]≧100-(d[mm]-0.05)×36
に従うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶融石英坩堝。
【請求項5】
前記結晶促進剤の濃度は、前記溶融石英坩堝中のシリコンを基準として1ppba未満かつ0.05ppba超であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶融石英坩堝。
【請求項6】
前記結晶促進剤はバリウムを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の溶融石英坩堝。
【請求項7】
結晶化促進剤を含む溶融石英坩堝の製造方法であって、
内側を有し、天然に得られるSiO前記内側に含む坩堝基体を製造することと、
合成により得られたSiOを含む層で前記内側をコーティングすることとを含み、前記合成により得られたSiOの濃度Cは、前記合成により得られたSiO を含むの増加と共に増加し、
前記コーティングのために意図された前記合成により得られたSiOと前記天然に得られるSiOが、分離を防止するために混合容器内で連続的に混合され、前記混合容器における前記合成により得られたSiOおよび前記天然に得られるSiOの割合は経時的に変化することを特徴とする、溶融石英坩堝の製造方法。
【請求項8】
前記結晶化促進剤は、前記坩堝基体の製造中に添加されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内側の前記コーティング中に、結晶化促進剤が添加されることを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングに続いて、前記坩堝はポリシリコンで充填され、前記ポリシリコンを溶融させるために1400°C超に加熱されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリシリコンは、前記ポリシリコンに対して0.5ppba超かつ10ppba未満の濃度を有する結晶化促進剤と追加的に混合されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化促進剤はバリウムを含むことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の溶融石英坩堝を用いて結晶引上げユニットでインゴットを引上げ、前記インゴットをワイヤソーでウェハに切断し、前記ウェハを研磨し、選択的にエピタキシーを行うことを特徴とする、半導体ウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坩堝壁を有する結晶引き上げ用溶融石英坩堝に関する。本発明はさらに、この坩堝を用いてチョクラルスキー法により結晶を引き上げる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融石英坩堝は、例えばチョクラルスキープロセスとして知られるプロセスに従って単結晶を引き上げる際に金属融液を保持するために使用される。このプロセスでは、所定の配向を有する種結晶が融液中に浸漬され、次いでゆっくりと上方に引き上げられる。この手順の間、種結晶と融液とは反対方向に回転する。種結晶と融液との間の表面張力の結果として、融液も種結晶と共に引き離され、この融液は徐々に冷却されて固化し、連続的にさらに成長する単結晶を形成する。
【0003】
引き上げられたインゴットは、例えばワイヤソーなどの機械的方法によって半導体ウェハに切断するために使用することができる。その後の研磨の後、このようにして得られたウェハは、任意選択のエピタキシーのステップの後、電子部品の製造に使用することができる。
【0004】
結晶引上げ操作の過程において、溶融石英坩堝は、数時間にわたって、大きな塑性変形なしに耐えなければならない高い機械的、化学的、および熱的負荷にさらされる。坩堝が大きければ大きいほど、したがって、坩堝内に収容される融液の体積が大きいほど、一般に、溶融時間は長くなる。
【0005】
溶融石英坩堝の熱安定性を高めるために、EP 07 48 885 A1において、前記坩堝にクリストバライトの表面層を設けることが提案されている。クリストバライトの融点は、約1720°Cにおいて、典型的な半導体材料の融点(シリコン融液の場合、例えば、溶融温度は約1420°Cである)を著しく上回る。クリストバライト表面層を生成するために、気泡を含む不透明な溶融石英の標準的な市販の坩堝のガラス状外壁を、溶融石英の失透を促進する物質を含む化学溶液で処理して、クリストバライト(「結晶化促進剤」)を形成する。推奨される結晶化促進剤は、本質的にホウ素、アルカリ土類金属およびリンの化合物であり;水酸化バリウムを使用することが好ましい。溶融石英坩堝が、例えば結晶引き上げ操作における使用中に1420°Cより高い温度に加熱されると、前処理された坩堝壁は、表面結晶化を経てクリストバライトを形成し、これは、溶融石英坩堝の部分における、より大きな機械的および熱的強度に寄与する。
【0006】
明細書EP 1 497 484 A1は、不透明な溶融石英の外側層と、内側層とを含む坩堝壁を有する結晶引き上げ用の溶融石英坩堝を記載しており、外側層は、内部領域と外部領域とを有し、外部領域は、溶融石英坩堝が結晶引き上げにおけるその指定使用の過程で加熱されると溶融石英の結晶化を生じさせてクリストバライトを形成する結晶化促進剤を設けられる。前記結晶化促進剤は、シリコンに加えて、溶融石英中でネットワーク形成剤として作用する、および/または溶融石英中でネットワーク改質剤として作用する第1の成分と、溶融石英中で分離点形成剤として作用し、アルカリ金属を含まない第2の成分とを含む。
【0007】
特許明細書US2019 145 019 A1には、結晶化促進剤含有塗膜の厚さが0.3~100μmであることが好ましいと記載されている。したがって、それに適用されるバリウム濃度は、結晶化促進剤含有塗膜の膜厚を変化させることによって制御される。なお、結晶化促進剤として作用し得る元素は、溶融石英坩堝本体に意図的に添加されるものではなく、例えば、坩堝本体が天然石英粉からなる場合には、バリウム濃度が0.10ppm未満、マグネシウム濃度が0.10ppm未満、およびカルシウム濃度が2.0ppm未満であることが好ましい。坩堝本体の内面の原料として合成石英粉を用いる場合、坩堝本体中のマグネシウムおよびカルシウムの濃度は、いずれも0.02ppm未満が好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、現在の技術水準に従って製造された坩堝の使用が欠点によって影響を受け続けることを認識した。特に、坩堝から多数の結晶を引き上げることは、損害を被ることが多く、なぜならば、結晶の転位率が増大し、したがって、半導体産業に使用できないか、または部分的にしか使用できないからである。本発明者らはまた、坩堝が高温にさらされる長い時間が転位につながることを認識した。これは、特に大きい直径および大きい重量入力の場合である。しかしながら、正確にこのような条件下では、上記の欠点を示さなかった坩堝を使用できることは、経済的観点から特に魅力的である。
【0009】
さらに、坩堝から連続的に引き上げられた結晶は、品質の著しい差を示すことが見出されている。例えば、坩堝から既に引き上げられた結晶の数が増加するにつれて、結晶の少数電荷キャリアの特徴的な平均自由行程長は低下する。坩堝から既に引き上げられた結晶の数による品質のこれらの差は、半導体産業にとって許容できない。
【0010】
記載された問題は、本発明の目的の基礎、すなわち、結晶引上げにおいて、記載された欠点を発生させない石英坩堝を提供することであった。さらなる目的は、好適な石英坩堝を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、特許請求の範囲に記載の方法および製品によって達成される。
本発明の方法の上記詳細な実施形態に関して述べた特徴は、本発明による製品に対応して転用することができる。逆に、本発明による製品の上記詳細な実施形態に関して述べた特徴は、本発明の方法に対応して転用することができる。本発明の実施形態のこれらおよび他の特徴は、図面の説明および特許請求の範囲において明らかにされる。個々の特徴は、本発明の実施形態として別々にまたは組み合わせて実現されてもよい。加えて、それらは、独立して保護可能な有利な実現例を記述してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による合成により得られたSiOの最小および最大濃度Cを、石英坩堝の内面からの距離dの関数として示す。
図2】坩堝から多数の結晶(横軸)を引き上げたときの測定結果を示すグラフである。
図3】坩堝から多数の結晶(横軸)を引き上げたときの測定結果を示すグラフである。
図4】坩堝から多数の結晶(横軸)を引き上げたときの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による合成により得られたSiOの最小および最大濃度Cを、石英坩堝の内面からの距離dの関数として示す。好ましい濃度プロファイルは、曲線1と曲線2との間に位置し、特に好ましい濃度プロファイルは、曲線3と曲線4との間に位置する。
【0014】
それぞれの限界についての経験的画像化プロトコルを実験データから開発した。
したがって、曲線1および曲線2は、それぞれ以下の画像化プロトコルで数学的に記述することができる。
C[%]≦100-(d[mm]-0.25)×30
C[%]≧100-(d[mm]+0.25)×80
本発明者らは、曲線3と曲線4との間の領域においてさらに大きな効果が見出され得ることを認識した。これらの曲線3および4は、それぞれ、数学的プロトコルC[%]≧100-(d[mm]-0.05)×36およびC[%]≦100-(d[mm]+0.1)×80を用いて充分に記述することができる。
【0015】
図2図3および図4のグラフは、坩堝から多数の結晶(横軸)を引き上げたときの測定結果を示している。
【0016】
「SPV」と指定される縦軸は、最大値に基づく相対単位で、それぞれの結晶(横軸)の少数電荷キャリア(SPV)の特徴的な平均自由行程長を示す。
【0017】
「L」と指定される縦軸は、それぞれの結晶(横軸)の無転位部分の長さを示す。
図2aおよび図2bにデータが示されている結晶は、先行技術に記載されているように、天然に得られたSiOから製造され、その内部がバリウム含有成分でコーティングされた坩堝を使用して引き上げられた。
【0018】
結晶の無転位部分の長さは高いままであることが分かっているが、それにもかかわらず、平均自由行程長の著しい低下が明らかである。次いで、平均自由行程長は、平均して初期値の70%まで低下する。したがって、坩堝を用いて均一な品質の結晶を製造することができるという保証はない。
【0019】
図3aおよび図3bにデータが示されている結晶は、先行技術に記載されているように、合成により得られたSiOから製造され、その内部がバリウム含有成分でコーティングされた坩堝を使用して引上げられた。
【0020】
自由行程長の正規化値(図3a)は、著しく増加した散乱を示す。使用した坩堝からの第1の結晶でさえ、平均10%小さい平均自由行程長を示す。この品質の結晶は、半導体産業にとって不適切である。結晶の無転位部分の長さも(図3b)許容できない散乱を呈し、対応する経済的損害をもたらすであろう。
【0021】
図4aおよび図4bは、本発明に従って製造された坩堝で引き上げられた結晶の結果を示す。
【0022】
平均自由行程長(図4a)だけでなく、結晶の無転位長の部分(図4b)も最小(ゼロ)散乱を超えないことが明らかである。品質および経済性の両方の観点から、本発明の坩堝は最適である。
【0023】
発明の例示的実施形態の詳細な説明
チョクラルスキー引上げ法を用いて坩堝からそれぞれ複数の結晶を引上げ、少数電荷キャリアの平均自由行程長(SPV)および非転位結晶の長さの両方を測定した。結晶の非転位部分の長さを、理論的に達成可能な全長に対して配置した。
【0024】
同様に、少数電荷キャリアの特徴的な平均自由行程長を、測定された最大平均自由行程長に対して配置した。この統計は、結晶中に存在し得、シリコン上に後で製造される構成要素に悪影響を及ぼす任意の不純物についての品質基準として以下で使用される。理論的には、結晶の品質に対して他の統計値を使用することも可能であろう。このような例としては、μPCD寿命測定またはICP-MSによる得られたシリコンの化学分析が挙げられる。ここで、いくつかの好適な方法が当業者に利用可能である。
【0025】
本発明者らは、上記の測定技術が最も好適であり、特に容易にアクセス可能であると特定した。
【0026】
本発明者らは、ここで、先行技術に従って製造された坩堝の使用は、坩堝がチョクラルスキー技術に従って連続して多数の結晶を引き上げるために使用される場合、顕著な欠点を有することを認識した。さらに、結晶引き上げは、引き上げプロセスが長く続くほど困難であるように見えた。
【0027】
研究の結果を図2および図3に示す。
図2aおよび図2bにデータが示されている結晶は、先行技術に記載されているように、天然に得られたSiOから製造され、その内部がバリウム含有成分でコーティングされた坩堝を使用して引き上げられた。
【0028】
結晶の無転位部分の長さは高いままであることが分かっているが、それにもかかわらず、平均自由行程長の著しい低下が明らかである。次いで、平均自由行程長は、平均して初期値の70%まで低下する。したがって、坩堝を用いて均一な品質の結晶を製造することができるという保証はない。
【0029】
図3aおよび図3bにデータが示されている結晶は、先行技術に記載されているように、合成により得られたSiOから製造され、その内部がバリウム含有成分でコーティングされた坩堝を使用して引上げられた。
【0030】
自由行程長の正規化値(図3a)は、著しく増加した散乱を示す。使用した坩堝からの第1の結晶でさえ、平均10%小さい平均自由行程長を示す。この品質の結晶は、半導体産業にとって不適切である。結晶の無転位部分の長さも(図3b)許容できない散乱を呈し、対応する経済的損害をもたらすであろう。
【0031】
本発明者らは、測定された欠陥の原因として坩堝材料を特定し、欠陥を排除するために広範な試行を行った。
【0032】
β-クリストバライトは石英よりも高い溶融温度を有することが文献から知られている。また、時にβ-クリストバライトの生成に有利に働く特定の結晶化促進剤が存在することも知られている。
【0033】
別の知見は、合成により得られたSiOから作製された石英坩堝は、天然に得られたSiOから作製された石英坩堝とは特性が異なることである。実験の結果を、例えば図2および図3に示す。
【0034】
驚くべきことに、本発明者らは、表面を形成する溶融石英の内側層であって、結晶化促進剤を設けられる内側層が内側にある溶融石英坩堝は、坩堝からの結晶の複数回の引き上げに関して、具体的には、表面からある距離における合成により得られたSiOの濃度Cが、表面から別の距離における合成により得られたSiOの濃度よりも大きい場合に、肯定的な特性を示すことを見出した。
【0035】
特に好ましくは、バリウムまたはストロンチウムが結晶化促進剤として作用し、バリウムが特に好ましい。
【0036】
本発明者らは、表面までの距離が0.4mm未満である場合、合成により得られたSiOの濃度Cが90%より大きければ好ましいことを認識した。
【0037】
さらなる試験は、予想外にも、距離dの関数として合成により得られたSiOの濃度は以下の関係に従うことを明らかにした:
C[%]≦100-(d[mm]-0.25)×30、および
C[%]≧100-(d[mm]+0.25)×80
結晶の品質(SPV)および無転位長の部分の両方に関して利点がある。上述した範囲は図1に示されており、曲線1と曲線2との間の陰影領域に関する。
【0038】
結果を、例えば、図4aおよび図4bに示す。
本発明者らは、さらなる実験を通してその領域をいくらか狭めることができ、距離dの関数として合成により得られたSiOの濃度が以下の関係に従うことを見出した。
C[%]≦100-(d[mm]+0.1)×80、および
C[%]≧100-(d[mm]-0.05)×36
結晶の品質(SPV)および無転位長の部分の両方に関してさらなる利点がある。
【0039】
説明されるこの領域は、図1にも示されており、曲線3と曲線4との間の陰影領域に関する。
【0040】
特に好ましくは、結晶促進剤の濃度は、ケイ素に基づいて、1ppba未満かつ0.05ppba超である。
【0041】
結晶化促進剤を含む本発明の溶融石英坩堝を製造するために好ましいのは、内側を有し、天然に得られるSiOを含む坩堝基体を製造することと、合成により得られるSiOを含む層でその内側をコーティングすることとを含み、合成により得られるSiOの濃度Cは、層厚の増加と共に増加する、方法である。
【0042】
ここで特に好ましいのは、結晶化促進剤が坩堝基体の実際の製造中に添加される場合である。
【0043】
この方法の場合、コーティングを目的とする材料は、分離を防止するために混合容器内で連続的に混合されることが好ましい。ここでの混合容器中の合成により得られたSiOと天然に得られたSiOの割合は、経時的に変化する。同時に、コーティングのための材料が混合容器から取り出される。容器内の合成により得られた材料の割合は、理想的には経時的に増加する。
【0044】
内側を実際にコーティングしている間に結晶化促進剤を添加することが特に有利であることが判明している。
【0045】
コーティングに続いて、坩堝をポリシリコンで満たし、ポリシリコンを溶融させるために1400°C超に加熱するのが特に好ましい。
【0046】
好ましくはバリウムを含有し、ポリシリコンに対して0.5ppbaより大きく10ppba未満の濃度を有する結晶化促進剤を、ポリシリコンに追加的に混合することが特に好ましい。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b