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特許7532641シンチレータアレイ、およびそれを用いた放射線検出器、放射線検査装置
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  • 特許-シンチレータアレイ、およびそれを用いた放射線検出器、放射線検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】シンチレータアレイ、およびそれを用いた放射線検出器、放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20240805BHJP
   G21K 4/00 20060101ALI20240805BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240805BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G21K4/00 B
C08L101/00
C08K3/22
C08L101/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023505588
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010117
(87)【国際公開番号】W WO2022191214
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021037199
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】林 誠
(72)【発明者】
【氏名】森本 一光
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181444(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0153462(US,A1)
【文献】国際公開第2014/162717(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G21K 4/00
C08L 101/00
C08K 3/22
C08L 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体からなる少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備え、前記第一の反射層は、C=O結合を有する樹脂と、前記樹脂中に分散された反射粒子とを含む、シンチレータアレイ。
【請求項2】
前記第一の反射層は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレート、エポキシ変性シリコーン、グリシジルエーテルのうち、少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項3】
前記樹脂は、エステル基、カルボキシル基、ケト基のうち、少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項4】
前記第一の反射層は、前記2つのシンチレータセグメントの間を埋め尽くすように設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項5】
前記第一の反射層は、前記2つのシンチレータセグメントの間に充填して設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項6】
前記第一の反射層の前記反射粒子は、酸化チタン、酸化アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム,酸化シリコン、気泡のうち、少なくともいずれか一つを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項7】
前記2つのシンチレータセグメント上及び前記第一の反射層上に設けられ、前記第一の反射層と同じ樹脂を含む第二の反射層と、を更に備える、請求項1~のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項8】
前記シンチレータセグメントの前記焼結体は、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体、もしくはガーネット構造酸化物蛍光体の焼結体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項9】
少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備え、前記第一の反射層は、赤外分光により1490cm-1~1750cm-1の波数域1と2500cm-1~2990cm-1の波数域2に吸収ピークを有し、波数域2に対する波数域1のピークの面積比が0.01~4である、シンチレータアレイ。
【請求項10】
前記波数域2に対する前記波数域1のピークの面積比が3.6以下である、請求項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項11】
前記2つのシンチレータセグメント上及び前記第一の反射層上に設けられ、前記第一の反射層と同じ樹脂を含む第二の反射層と、を更に備える、請求項または10に記載のシンチレータアレイ。
【請求項12】
前記シンチレータセグメントは、希土類酸硫化物蛍光体、もしくはガーネット構造酸化物蛍光体を含む、請求項11のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項13】
請求項1~1のいずれか1項に記載のシンチレータアレイを具備する放射線検出器。
【請求項14】
請求項1に記載の放射線検出器を具備する放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シンチレータアレイとそれを用いた放射線検出器、および放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断や工業用非破壊検査等の分野においては、X線断層写真撮影装置(以下、X線CT装置と記す)のような放射線検査装置を用いた検査が行なわれている。X線CT装置は、扇状のファンビームX線を照射するX線管(X線源)と、多数のX線検出素子が組込まれたX線検出器とを、被検査体の断層面を中央として対向配置して構成される。X線CT装置においては、被検査体に対して回転させながらX線管からファンビームX線を照射し、被検査体を透過したX線吸収データをX線検出器で収集する。この後、X線吸収データをコンピュータで解析することによって、断層像が再生される。X線CT装置の放射線検出器には、固体シンチレータを用いた検出素子が広く使用されている。固体シンチレータを用いた検出素子を具備する放射線検出器では、検出素子を小型化してチャンネル数を増やすことが容易であることから、X線CT装置等の解像度をより一層高めることができる。
【0003】
X線CT装置等の放射線検査装置は、医療用や工業用等の様々な分野に用いられている。X線CT装置としては、例えばフォトダイオード等の検出素子を縦横に2次元的に並べ、その上にシンチレータアレイを搭載したマルチスライス型の装置が知られている。マルチスライス型とすることによって、輪切り画像を重ねることができ、これによりCT画像を立体的に示すことができる。放射線検査装置に搭載される放射線検出器は、縦横複数列に並べられた検出素子を備え、検出素子1個ずつにシンチレータセグメントが設けられている。シンチレータセグメントに入射したX線が可視光に変換され、可視光を検出素子で電気信号に変換して画像化する。近年は、高解像度を得るために検出素子を小型化し、さらに隣り合う検出素子間のピッチを狭くしている。これらに伴って、シンチレータセグメントのサイズも小さくなっている。
【0004】
上述したようなシンチレータセグメントに使用される各種のシンチレータ材料のうち、希土類酸硫化物系の蛍光体セラミックは、発光効率が高く、シンチレータセグメントに使用するために好適な特性を有している。このため、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体セラミックの焼結体(インゴット)から切り出し加工または溝切り加工等により加工されたセラミックシンチレータセグメントと、検出素子としてのフォトダイオードとを組み合せた放射線検出器が普及しつつある。
【0005】
蛍光体セラミックを用いたシンチレータとしては、例えばガドリニウム酸硫化物蛍光体の焼結体からなるセラミックシンチレータが知られている。セラミックシンチレータアレイは、例えば以下のようにして作製される。まず、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体粉末を適当な形状に成形し、これを焼結して焼結体(インゴット)とする。このシンチレータ材料の焼結体から、形成するシンチレータアレイより一回り大きい板に切り出し,溝切り加工等の切断加工を施して、複数の検出素子に対応するシンチレータセグメントを形成する。さらに、これらシンチレータセグメント間に反射層を形成、一体化してシンチレータアレイを作製する。
上述したシンチレータセグメント間の反射層としては、モリブデンなどの金属が用いられることもあるが、現在では一般に、酸化チタンに代表されるような白色顔料を透明樹脂に分散したスラリーをセグメント間に充填、硬化して形成されるようになっている。このような反射層に対しては、シンチレータ同様、長期間、X線照射にさらされるため、それらがX線によって劣化しにくいことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特許第6419692号公報
【文献】国際公開2017/082337号
【文献】日本国特開2020-173226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線CTなどに用いられるシンチレータはX線によって生じた光を、反射層を利用し画素内に閉じ込めて、フォトダイオード側に効率的に取り出す構造となっている。反射層としては、シンチレータセグメント間を埋め尽くすように形成された反射層、また場合によっては、さらにX線の入射面側に、シンチレータアレイを覆うように形成された反射層(天板反射層ともいう)を有するのが一般的である。X線により発光したシンチレータの光は、直接またこうした反射層を介して効率よくフォトダイオードに導かれる。
反射材の透明樹脂としてはエポキシ樹脂と酸化チタンを混練したものを使用することが多い。エポキシ樹脂は長期のX線照射によって着色(黄変)する傾向があり、その時、シンチレータにて変換された光を吸収し、光出力が低下する。反射材は特許文献1に記載されるように、画素間ピッチの寸法精度と取扱いしやすさから、アミンを用いたエポキシ樹脂に白色顔料を混練した樹脂が広く用いられてきた。エポキシ樹脂は耐候性が一般的に低く、X線照射により着色し、反射率が低下してしまうため、シンチレータの光出力が低下するという問題があった。
特許文献2では、シンチレータアレイの製造および使用時におけるアレイの寸法精度を向上するため、反射層に用いる透明樹脂のガラス転移点、さらに熱膨張係数を一定の範囲の物とする技術が開示されている。また、こうした条件を満足し、X線照射による透明樹脂の黄変が、少ないものとして、透明樹脂がその分子構造内に、C=C結合を有しないものが好ましいことが記載されている。
特許文献3では、やはりシンチレータアレイにおいて、X線照射による反射層の着色に起因する出力低下の対策として、特定のエポキシ樹脂や硬化剤などの使用が有効であることが記載されている。特許文献1~3にかかる方法により、シンチレータアレイ反射層のX線照射による着色に伴う劣化は、ある程度改善されてきたと思われるが、医療用機器における診断精度の向上に対する要求は常にあり、より性能の良いものが、常に求められる状況にあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のシンチレータセグメント間を埋め尽くすように形成された反射層の反射材を構成する透明樹脂として、その分子構造にC=C結合を持たず、C=O結合をもつ樹脂を用い,樹脂と屈折率の異なる顔料または気泡を混練し,白色にしたものを用いる。前記樹脂が備えるべき特徴として、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による吸収スペクトルの分析において、波数範囲1490cm-1~1750cm-1における吸収強度と、波数範囲2500cm-1~2990cm-1における吸収強度の比率が特定の範囲の値を有する樹脂を用いるものである。
【0009】
本発明の実施形態によれば、少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備えるシンチレータアレイが提供される。第一の反射層は、C=O結合を有する樹脂と、樹脂中に分散された反射粒子とを含む。少なくとも2つのシンチレータセグメントは焼結体からなる。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備えるシンチレータアレイが提供される。第一の反射層は、赤外分光により1490cm-1~1750cm-1の波数域1と2500cm-1~2990cm-1の波数域2に吸収ピークを有する。波数域2に対する波数域1のピークの面積比が0.01~4である。
【発明の効果】
【0011】
このように、シンチレータアレイの反射層に含まれる樹脂を特定のものとすることによりX線照射により発生する着色を大幅に低減できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はシンチレータアレイを示した説明図である。(天板反射層(第二の反射層)は省略)
図2a】本発明のシンチレータアレイの断面図を示したものである。
図2b】本発明のシンチレータアレイの断面図を示したものである。
図2c】本発明のシンチレータアレイの断面図を示したものである。
図3図3は本発明の反射層に係るフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による吸収スペクトルを示す図である。
図4図4は本発明の放射線検出器を示す図である。
図5図5は本発明の放射線検査装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のシンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置を実施するための形態について説明する。
(セラミックシンチレータアレイ)
図1は実施形態のセラミックシンチレータアレイを示す平面図である。これらの図において、1はシンチレータアレイ、2はシンチレータセグメント、3は第一の反射層である。シンチレータアレイ1は複数のシンチレータセグメント2を有している。隣接するシンチレータセグメント2間には、第一の反射層3が介在している。第一の反射層3は隣接するシンチレータセグメント2に対してそれぞれ接着されている。複数のシンチレータセグメント2は、それらに接着された第一の反射層3で一体化されている。すなわち、シンチレータアレイ1は複数のシンチレータセグメント2を第一の反射層3で一体化した構造を有している。また、個々のシンチレータセグメント全体を覆うように第二の反射層が形成される(図1では省略されている)。
図2a~図2cは、本発明のシンチレータアレイの断面図の構成を3種類示したものである。図2aは各シンチレータセグメント間に介在する第一の反射層3とシンチレータアレイ全体を覆うように、X線入射側に配置された第二の反射層4が示されている。この場合、第二の反射層は、反射材を塗布し、さらに硬化したものである。図2bは図2aと類似のものであるが、さらにシンチレータセグメント間に介在する第一の反射層3の一部が第二の反射層4の内部に食い込む構成となっている。構成の詳細を説明する。第一の反射層3は、アレイ上面から第二の反射層4に向かう方向へ突き出た形状、すなわち、第二の反射層4側へ向けて凸部を有する。凸部のアレイ上面から第二の反射層4の上面までの距離(厚み)は、第二の反射層4の最大厚みより小さい。こうした構成とすることにより、シンチレータアレイからの第二の反射層の剥離を低減できる。図2cは予め反射粒子を含む樹脂でシート状に成型された第二の反射層4を、接着層5を介して張り合わせたものであるが、図2bと同様にシンチレータセグメント間に介在する第一の反射層3の一部が接着層5を通して第二の反射層4の内部に食い込む構成となっている。構成の詳細を説明する。第一の反射層3は、アレイ上面から第二の反射層4に向かう方向へ突き出た形状、すなわち、第二の反射層4側へ向けて凸部を有する。接着層5は、第二の反射層4の下面に形成され、第一の反射層3の凸部の上端付近と接している。凸部のアレイ上面から第二の反射層4の上面までの距離(厚み)は、第二の反射層4の最大厚みより小さい。図2bと図2cの構造により、第二の反射層の剥離をさらに低減でき、より好ましいものとなる。X線入射側と反対側には、シンチレータによりX線から可視光に変換された光を検出するフォトダイオードアレイが張り合わされ、本発明の放射線検出器となる。
【0014】
シンチレータアレイ1は、複数のシンチレータセグメント2を一列に並べた構造、もしくは図1に示すように複数のシンチレータセグメント2を縦方向および横方向に所定の個数ずつ2次元的に並べた構造のいずれを有していてもよい。複数のシンチレータセグメント2を2次元的に配列した場合、縦方向および横方向のシンチレータセグメント2間にそれぞれ第一の反射層3が設けられる。シンチレータセグメント2の個数は、X線検出器等の放射線検出器の構造や解像度等に応じて適宜に設定される。
【0015】
シンチレータセグメント2は、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体やガーネット構造酸化物の焼結体等からなるものである。シンチレータセグメント2は、1種類の焼結体または2種類以上の焼結体から形成される。希土類酸硫化物蛍光体セラミックとしては、付活剤としてプラセオジム(Pr)を含有する希土類酸硫化物蛍光体が例示される。蛍光体セラミックを構成する希土類酸硫化物としては、例えばイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素の酸硫化物が挙げられる。ガーネット構造酸化物の例として、ガドリニウム・ガリウム・アルミニウム・ガーネット(GGAG)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)、ルテチウム・ガリウム・アルミニウム・ガーネット(LuGAG)、ガドリニウム・アルミニウム・ガーネット(GdAG)、ガドリニウム・ガリウム・アルミニウム・ガーネット(GdGAG)などが挙げられる。ルテチウム・ガリウム・アルミニウム・ガーネット(LuGAG)が望ましい。
【0016】
実施形態のセラミックシンチレータアレイ1において、シンチレータセグメント2は、
一般式:RE22S:Pr …(1)
(式中、REはY、Gd、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示す)
で表される組成を有する希土類酸硫化物蛍光体セラミック(シンチレータ材料)で構成されることが好ましい。
【0017】
上述した希土類元素のうち、特にGdはX線吸収係数が大きく、セラミックシンチレータアレイ1の光出力の向上に寄与する。従って、実施形態のシンチレータセグメント2には、Gd22S:Pr蛍光体を使用することがさらに好ましい。なお、Gdの一部は他の希土類元素で置換してもよい。この際、他の希土類元素によるGdの置換量は10モル%以下とすることが好ましい。
【0018】
すなわち、実施形態のセラミックシンチレータアレイ1においては、
一般式:(Gd1-X,REX22S:Pr …(2)
(式中、REはY、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示し、Xは0≦X≦0.1を満足する数(原子比)である)で実質的に表される希土類酸硫化物蛍光体セラミックを、シンチレータセグメント2に使用することが望ましい。
【0019】
実施形態のセラミックシンチレータアレイ1においては、希土類酸硫化物蛍光体セラミックス(シンチレータ材料)の光出力を増大させる付活剤として、プラセオジム(Pr)を使用している。Prはさらに他の付活剤に比べてアフターグローの低減等を図ることができる。従って、付活剤としてPrを含有する希土類酸硫化物蛍光体セラミック(シンチレータ材料)は、放射線検出器の蛍光発生手段として有効である。
【0020】
希土類酸硫化物蛍光体セラミックにおけるPrの含有量は、蛍光体母体(例えばGd22SのようなRE22S)に対して0.001~10モル%の範囲とすることが好ましい。Prの含有量が10モル%を超えると、逆に光出力の低下を招くことになる。Prの含有量が0.001モル%未満では、主付活剤としての効果を十分に得ることができない。Prの含有量は0.01~1モル%の範囲であることがより好ましい。
【0021】
実施形態で使用する希土類酸硫化物蛍光体セラミックにおいては、主付活剤としてのPrに加えて、Ce、Zr、およびPからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を共付活剤として微量含有させてもよい。これらの元素は曝射劣化の抑制、アフターグローの抑制等に対して効果を示す。これら共付活剤の含有量は総量として、蛍光体母体に対して0.00001~0.1モル%の範囲とすることが好ましい。
【0022】
さらに、実施形態のシンチレータセグメント2を形成するシンチレータ焼結体は、高純度の希土類酸硫化物系蛍光体セラミック(シンチレータ材料)からなることが好ましい。不純物はシンチレータの感度の低下要因となるため、できるだけ不純物量は低減することが好ましい。特に、燐酸根(PO4)は感度の低下原因となるため、その含有量は100ppm以下とすることが好ましい。フッ化物等を焼結助剤として使用して高密度化した場合、焼結助剤が不純物として残留するため、感度の低下をもたらすことになる。
【0023】
シンチレータセグメント2は、立方体形状または直方体形状の焼結体からなる。シンチレータセグメント2の体積は1mm以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2を小型化することによって、検出される画像を高精細化することができる。シンチレータセグメント2の縦(L)、横(S)、厚さ(T)の各サイズは必ずしも限定されるものではないが、それぞれ1mm以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2の体積を1mm以下と小型化した場合、第一の反射層3の幅(W)は100μm以下、さらには50μm以下と薄型化することも可能である。但し40μm未満とする場合は、製造プロセスが代わり煩雑となるため、第一の反射層3の幅(W)は40μm以上が好ましい。
実施形態のセラミックシンチレータアレイ1において、複数のシンチレータセグメント2を一体化する第一の反射層3は、透明樹脂と、透明樹脂中に分散された反射粒子とを含有する。透明樹脂としては、少なくともエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレート、エポキシ変性シリコーン、グリシジルエーテルのいずれかひとつを含み、反射粒子として気泡もしくは顔料として酸化チタン、酸化アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム,酸化シリコンのいずれか一つを含む、樹脂中に含まれる気泡も反射粒子としての役割を果たすことがある。セラミックシンチレータアレイ1を覆う反射層4は第一の反射層3と同様の透明樹脂及び反射粒子を用いることが出来る。なお、エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン、グリシジルエーテルは、それぞれ、酸無水硬化剤を使用して硬化させた硬化物がC=O結合を含む。これら以外の樹脂、すなわち、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレートは、それぞれ、C=O結合を含むものである。
酸無水硬化剤の例として、水素化メチルナジック酸無水、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水酸、無水トリメリット酸、ドデセニル無水コハク酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、3or4-メチル1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3or4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、脂肪族二塩基酸ポリ無水物等が挙げられる。使用する酸無水硬化剤の種類は1種または2種以上にすることができる。
X線によって一般的に樹脂は着色(黄変)する傾向があり、その着色によってシンチレータ内で発生した光は吸収されてしまい,光出力が低下してしまう。しかし,樹脂の骨格によって黄変の度合いが異なる。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により、1490cm-1~1750cm-1の帯域(波数域1)はエステル基、カルボキシル基、ケト基(ケトン基)などのC=Oに起因する吸収が現れる。また、2500cm-1~2990cm-1の帯域(波数域2)にはC―H結合による吸収が見受けられる。多くの実験結果を通し、反射材のX線による変色が小さいものは、波数域1に於ける吸収ピーク面積の、波数域2に於ける吸収ピーク面積に対する比率、すなわちピーク面積比が、一定の範囲にあるものが好ましいことが分かった。
図3は本発明のシンチレータアレイの反射層について、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による赤外吸収スペクトルを示したものである。1490cm-1~1750cm-1の帯域(波数域1)、2500cm-1~2990cm-1の帯域(波数域2)にそれぞれ吸収ピークが認められ、これらは含まれる顔料ではなく樹脂に起因するものである。吸収ピーク面積とは、図3に点線で示されたベースラインから上の面積を意味する。本発明では、それぞれの吸収ピーク面積の波数域1の波数域2に対する比率が0.01~4の範囲の値を有するものである。上記比率は3.6以下が好ましい。より好ましくは0.1~2.5の範囲である。図3に示されたような赤外吸収スペクトルは、シンチレータアレイから、反射層を剥離させる、また一部を削り取るなどして容易に測定することが可能である。
【0024】
第一の反射層3および第二の反射層4を形成する透明樹脂と反射粒子の割合は、透明樹脂の質量比が15~60%、反射粒子の質量比が40~85%(透明樹脂の質量比+反射粒子の質量比=100%とする)であることが好ましい。反射粒子の質量比が40%未満では、反射層の反射効率が低下し、波長512nmの光に対する反射層の反射効率が90%より低くなりやすい。反射粒子の質量比が85%を超えると、反射層の反射効率は変わらないが、透明樹脂の質量比が相対的に減るために、反射層の安定した固体化が難しくなる。
実施形態のセラミックシンチレータアレイ1に、予め作製された第二の反射層を張り合わせた構成とする場合には、接着層としては少なくともエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂を含み、光、熱、湿気のいずれかにより硬化する樹脂を用いる。接着層は透明樹脂でもよいが、接着層に気泡もしくは顔料として酸化チタン、酸化アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム,酸化シリコンのいずれか一つを含んでいても良い。
本発明のシンチレータアレイは次のように製造される。好ましい構成である図2cの場合を例にとって説明する。第1工程では、白色反射材を含むエポキシ等の樹脂で白色シートを形成し、所定の大きさのものを用意する。白色シートには、反射粒子と透明樹脂との混合物やラッカー系塗料等が用いられる。反射粒子と透明樹脂との混合物は、シンチレータセグメント間の反射層と同様な構成を有していることが好ましい。白色シートは白色PETフィルムなど市販のものを用いても良い。白色シートはシンチレータアレイの第二の反射層になるもので、その厚さは50~500μmの範囲である。第二の反射層の厚さが50μm未満であると、反射効率の向上効果を十分に得ることができない。第二の反射層の厚さが250μmを超えると、透過するX線量が低下して検出感度が低下する。また別に希土類酸硫化物系蛍光体セラミック等のシンチレータ材料を所定の大きさの薄板(厚さ0.5~2mm)として切り出し、前記白色シートに貼り合わせる。薄板は一枚のセラミック板あるいは複数のセラミック板を端面同士で突き合わせて,白色シートにエポキシ樹脂や熱可塑性接着剤等で接着する。突き合わせた際の境界部の隙間の幅は工程2での溝加工の幅より小さいことが好ましい。
第2工程ではダイシングによる溝加工を施す。溝の幅は40~200μmの範囲である。溝はセラミックシンチレータ材の方から形成し、セラミックシンチレータ材料、接着層、さらに白色シート内に達するものである。溝加工する位置は,前記複数のセラミック板を突き合わせた境界面が溝部になるように調整する.白色シート内の溝を埋めるように、セグメント間の反射層(第一反射層)の一部が設けられ、そのアンカー効果により、天板反射層(第二の反射層)の剥離を防止することができる。第3工程は第2工程で形成された溝に反射層を設ける工程である。
まず、反射粒子と透明樹脂を構成する未硬化状態の樹脂組成物(透明樹脂の未硬化物)とを用意し、その混合物を、シンチレータセグメント間の溝に充填する。未硬化状態の樹脂組成物は、0.2~1Pa・s(200~1000cps)の粘度を有することが好ましい。樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s未満では流動性が高く、シンチレータセグメント間への充填作業性が低下する。樹脂組成物の粘度が1Pa・sを超えると、流動性が低下し、そのため塗布性または充填性が低下する。また、透明樹脂の全光線透過率は85%以上であることが好ましい。透明樹脂の全光線透過率が85%未満であると、反射層の反射効率が低下しやすくなる。
【0025】
複数のシンチレータセグメント間に反射粒子と未硬化状態の樹脂組成物との混合物を充填した後、混合物中の樹脂組成物を硬化させて反射層を形成する。混合物の硬化処理は、未硬化状態の樹脂組成物や硬化剤の種類等に応じて適宜に設定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物の場合には、熱処理することにより硬化反応を進行させる。2液型のエポキシ樹脂のような樹脂組成物として、室温下で放置することにより硬化反応を進行させる場合もある。次に工程4では、外周の不要分を取り除く外周加工、さらに研磨をすることにより本発明のシンチレータアレイが完成する。
(放射線検出器)
実施形態の放射線検出器は、上述した実施形態のセラミックシンチレータアレイ1を、入射した放射線に応じて光を放射する蛍光発生手段として具備し、さらに蛍光発生手段からの光を受け、光の出力を電気的出力に変換する光電変換手段を具備する。図4は実施形態の放射線検出器の一例であるX線検出器を示している。図4に示すX線検出器6は、蛍光発生手段としてセラミックシンチレータアレイ1と、光電変換手段としてフォトダイオードのような光電変換素子7とを具備している。セラミックシンチレータアレイ1の構成は、図2cを参照して説明したものと同様である。そのため、図2cと同符号を付して説明を省略する。
【0026】
セラミックシンチレータアレイ1はX線入射面を有し、X線入射面とは反対側の面には光電変換素子7が一体的に設置されている。光電変換素子7としては、例えばフォトダイオードが使用される。光電変換素子7は、セラミックシンチレータアレイ1を構成する複数のシンチレータセグメント2のそれぞれに対応するように配置されている。これらによって、放射線検出器が構成されている。
(放射線検査装置)
実施形態の放射線検査装置は、被検査体に向けて放射線を照射する放射線源と、被検査体を透過した放射線を検出する放射線検出器とを具備する。放射線検出器には、上述した実施形態の放射線検出器が用いられる。図5は実施形態の放射線検査装置の一例であるX線CT装置10を示している。図5において、10はX線CT装置、11は被検体、12はX線管、13はコンピュータ、14はディスプレイ、15は被検体画像である。X線CT装置10は、実施形態のX線検出器6を備えている。X線検出器6は、例えば被検体11の撮像部位が配置される円筒の内壁面に貼り付けられている。X線検出器6が貼り付けられた円筒の円弧の略中心には、X線を出射するX線管12が設置されている。X線検出器6とX線管12との間には被検体11が配置される。X線検出器6のX線入射面側には、図示しないコリメータが設けられている。
【0027】
X線検出器6およびX線管12は、被検体11を中心にしてX線による撮影を行いながら回転するように構成されている。被検体11の画像情報が異なる角度から立体的に集められる。X線撮影により得られた信号(光電変換素子により変換された電気信号)はコンピュータ13で処理され、ディスプレイ14上に被検体画像15として表示される。被検体画像15は、例えば被検体11の断層像である。図1に示すように、シンチレータセグメント2を2次元的に配置したシンチレータアレイ1を用いることによって、マルチ断層像タイプのX線CT装置10を構成することも可能である。この場合、被検体11の断層像が複数同時に撮影され、例えば撮影結果を立体的に描写することもできる。
【0028】
図5に示すX線CT装置10は、実施形態のセラミックシンチレータアレイ1を有するX線検出器6を具備している。前述したように、実施形態のセラミックシンチレータアレイ1は第一の反射層3及び第二の反射層4の構成等に基づいて、シンチレータセグメント2から放射される可視光の反射効率が高いため、優れた光出力を有している。このようなシンチレータアレイ1を有するX線検出器6を使用することによって、X線CT装置10による撮影時間を短くすることができる。その結果、被検体11の被爆時間を短くすることができ、低被爆化を実現することが可能になる。実施形態の放射線検査装置(X線CT装置10)は、人体の医療診断用のX線検査に限らず、動物のX線検査や工業用途のX線検査等に対しても適用可能である。さらに、X線非破壊検査装置による検査精度の向上等にも寄与する。
【実施例
【0029】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1~6、比較例1~2)
各樹脂材料に酸化チタン(石原産業製CR-90)を60wt%混練し,硬化物を作製した。FT-IR(日本分光製FT/IR-6600)にて作製した硬化物の赤外吸収スペクトルを取得し,1490~1750cm-1のピークと2500~2990cm-1のピークの面積を算出した。2500~2990cm-1のピークに対する1490~1750cm-1のピークの面積比率を求めた。また,作製した硬化物にX線を4.2kGy照射し,照射部と未照射部の反射率(波長510nmと670nmの平均)を測定し,その差を反射率の低下率として算出した。その結果を表1に示す。反射率の低下率(%)の詳細を以下に記載する。分光反射率測定計にて、X線照射部と未照射部の反射率をそれぞれ波長510nmと670nmにて測定した。それぞれの箇所で測定した2つの波長の反射率の平均値を求め、X線照射部の反射率から未照射部の反射率を引いた差(低下率%)を算出した。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)の面積比率が小さいほど、X線照射での反射率の低下率は小さくなる傾向にある。
【0030】
実施例1~6の硬化物は、それぞれ、C=O結合を含む。これに対し、比較例1,2の硬化物は、C=O結合を持たない。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例8、9、比較例3、4)
実施例1,4と比較例1,2の樹脂を用いて、シンチレータアレイを形成した。Gd22S:Pr(Pr濃度=0.05モル%)の組成を有する蛍光体粉末をラバープレスにより仮成形し、この仮成形体をTa製のカプセル中に脱気密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1425℃の条件で3時間処理した。このようにして、直径約80mm×高さ約120mmの円柱状の焼結体を作製した。この焼結体からGOSセラミック板を切り出した。
長さ70mm、幅22mm、厚み2mmのGOSセラミック板を2枚,長辺同士を突き合わせ,その表面に一回り面積が大きい白色PETフィルム(三菱ケミカル製,厚み100μm)をエポキシ接着材で貼り合わせた。張り合わせる際にはGOSセラミック板、エポキシ接着材、白色PETシートを重ねて、荷重16kg印加し、100℃で加熱して接着した。常温まで冷却後に荷重を除き,長さ70mm,幅44mmの積層体を完成させた。
この積層体のGOSセラミック板表面にダイシングによる溝加工を施した。このとき、溝の深さは2.1mmで形成した。溝は白色PETシートまで形成されている。また,溝の位置は2つのセラミック板の境界が溝になるように溝加工位置を調整した.溝に酸化チタンを混合した実施例1,4及び比較例1,2の樹脂材料を流し込み、熱硬化,研磨した。その後、外周部をカットし、長さ66mm,幅40mm,厚さ1.99mmの図2cに相当するシンチレータアレイを作製した。
本発明のシンチレータアレイでは、比較例に対して,実施例に示したとおり,フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)において、波数域1(1490cm-1~1750cm-1)の吸収ピーク面積の、波数域2(2500cm-1~2990cm-1)の吸収ピーク面積に対する比率(ピーク面積比)が小さい樹脂を反射層にもちいることで,X線照射による光出力の低下を小さくすることが認められた.本発明の対策がその方向として有効なものであることは疑いない。
【0033】
【表2】
【0034】
以下、出願当初の発明を付記する。
[1]
希土類酸硫化物蛍光体の焼結体で構成されるセラミックシンチレータアレイであって、複数のシンチレータセグメントと、前記複数のシンチレータセグメントを一体化するように、シンチレータセグメント間に設けられた反射層部を有し、前記反射層は、C=C結合を含まない樹脂を含み、赤外分光により、前記反射層を構成する反射材が1490cm-1~1750cm-1の波数域1と,2500cm-1~2990cm-1の波数域2に吸収ピークをもち,波数域2に対する波数域1のピークの面積比が0.01~4であることを特徴とするセラミックシンチレータアレイ。
[2]
前記[1]記載のセラミックシンチレータアレイにおいて、セグメント間反射層及び天板反射層は少なくともエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレートのいずれか一つを含み、気泡もしくは顔料として酸化チタン、酸化アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム,酸化シリコンのいずれか一つを含むことを特徴とするセラミックシンチレータアレイ。
[3]
[1]~[2]記載のセラミックシンチレータアレイにおいて、天板反射層は接着層を介して付設されていることを特徴とするセラミックシンチレータアレイ。
[4]
[1]~[3]記載のセラミックシンチレータアレイにおいて、希土類酸硫化物蛍光体は、
一般式:RE22S:Pr
(ここで、REはY、Gd、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つである)で表され、RE22Sに対するPrの含有量が0.001モル%以上10モル%以下である組成を有することを特徴とするセラミックシンチレータアレイ。
[5]
[1]~[4]記載のセラミックシンチレータアレイを具備する放射線検出器。
[6]
[5]記載の放射線検出器を具備する放射線検査装置。
<1>
少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備え、前記第一の反射層は、C=O結合を有する樹脂を含む、シンチレータアレイ。
<2>
前記第一の反射層は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレート、エポキシ変性シリコーン、グリシジルエーテルのうち、少なくともいずれか一つを含む、<1>に記載のシンチレータアレイ。
<3>
前記樹脂は、エステル基、カルボキシル基、ケト基のうち、少なくともいずれか一つを含む、<1>に記載のシンチレータアレイ。
<4>
前記第一の反射層は、酸化チタン、酸化アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム,酸化シリコン、気泡のうち、少なくともいずれか一つを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
<5>
前記2つのシンチレータセグメント上及び前記第一の反射層上に設けられ、前記第一の反射層と同じ樹脂を含む第二の反射層と、を更に備える、<1>~<4>のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
<6>
前記シンチレータセグメントは、希土類酸硫化物蛍光体、もしくはガーネット構造酸化物蛍光体を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
<7>
少なくとも2つのシンチレータセグメントと、前記2つのシンチレータセグメント間に設けられた第一の反射層と、を備え、前記第一の反射層は、赤外分光により1490cm -1 ~1750cm -1 の波数域1と2500cm -1 ~2990cm -1 の波数域2に吸収ピークを有し、波数域2に対する波数域1のピークの面積比が0.01~4である、シンチレータアレイ。
<8>
前記波数域2に対する前記波数域1のピークの面積比が3.6以下である、<7>に記載のシンチレータアレイ。
<9>
前記2つのシンチレータセグメント上及び前記第一の反射層上に設けられ、前記第一の反射層と同じ樹脂を含む第二の反射層と、を更に備える、<7>または<8>に記載のシンチレータアレイ。
<10>
前記シンチレータセグメントは、希土類酸硫化物蛍光体、もしくはガーネット構造酸化物蛍光体を含む、<7>~<9>のいずれか1項に記載のシンチレータアレイ。
<11>
<1>~<10>のいずれか1項に記載のシンチレータアレイを具備する放射線検出器。
<12>
<11>に記載の放射線検出器を具備する放射線検査装置。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のシンチレータアレイによれば、X線照射による光出力の低下を小さくすることができるため、産業上有用なものと言える。
【符号の説明】
【0036】
1 シンチレータアレイ
2 シンチレータセグメント
3 シンチレータセグメント間の反射層
4 X線入射面側のシンチレータアレイに付設される反射層(第二の反射層)
5 接着層
6 X線検出器
7 光電変換素子


図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5