(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】基板上にシリコンゲルマニウム層を堆積する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20240805BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240805BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
C23C16/42
(21)【出願番号】P 2023515004
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021072926
(87)【国際公開番号】W WO2022048908
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ルカス
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ペーター
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0263440(US,A1)
【文献】特開2010-267969(JP,A)
【文献】特開平07-307302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/205
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンゲルマニウム層(3)を基板(1)上にヘテロエピタキシャルに堆積させる方法であって、
前記シリコンゲルマニウム層(3)は、組成Si
1-x
Ge
x
を有し、0.01≦x≦1であり、前記基板(1)は、シリコン単結晶ウェハまたはSOIウェハであり、前記方法は、
前記基板(1)の上にマスク層(4)を設けること
を含み、
前記マスク層(4)の外側セクションを除去して、前記マスク層(4)の残余(5)を取り囲む前記基板の縁部領域内の前記基板の環状自由表面(6)へのアクセスを提供することと、
前記基板の前記環状自由表面(6)の上に円筒形シリコンゲルマニウム層(2)を堆積させることと、
前記マスク層の残余を除去することと、
前記基板(1)および前記円筒形シリコンゲルマニウム層(2)上にシリコンゲルマニウム層(3)を堆積させることとを含み、前記シリコンゲルマニウム層(3)は前記円筒形シリコンゲルマニウム層(2)の内側側面に接触する
ことにおいて特徴付けられる、方法。
【請求項2】
マスク層(4)として低温酸化物材料を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円筒形シリコンゲルマニウム層(2)を、前記基板の前記環状自由表面(6)上に、1.5mm以下の幅および10nm以上10μm以下の厚みを有するように堆積させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(1)上および前記円筒形シリコンゲルマニウム層(2)上に前記シリコンゲルマニウム層(3)を0.01μm以上10μm以下の厚みを有するように堆積させることを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコンゲルマニウム層(3)は、定組成層である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコンゲルマニウム層(3)は、傾斜組成層である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記円筒形SiGe層(2)のゲルマニウム含有量は、前記SiGe層(3)のゲルマニウム含有量より低いか、等しいか、または高い、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にシリコンゲルマニウム(SiGe)層を堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
SiGeチャネルを使用する半導体デバイスは、シリコンのみに基づくそれぞれのデバイスに対する興味深い代替物である。SiGeチャネルの集積のためにSiGe層を提供するために、SiGe層は通常、基板、例えばシリコン単結晶ウェハの上に、ヘテロエピタキシャルに堆積されなければならない。不整合転位(MD)、貫通転位(TD)および貫通転位の転位堆積(DP)は、基板とヘテロエピタキシャルSiGe層との格子不整合に起因して、堆積プロセスの過程で形成されることがよく知られている。
【0003】
MD、TDおよびDPの存在並びにヘテロエピタキシャルSiGe層の表面の網目状粗面化に関連する問題を低減する多くの試みがなされてきた。
【0004】
US2010 0 291 761 A1は、基板の裏面に堆積された応力補償SiGe層の提供を提案する。
【0005】
US2010 0 317 177 A1は、基板上に第1のSiGe層を堆積させることと、第1のSiGe層の上に第2のSiGe層を堆積させることとを含む方法を開示する。
【0006】
US2004 0 075 105 A1によれば、DPの形成は、複数のTDがその表面にわたって実質的に均一に分布する第1の半導体層上に実質的に緩和されたキャップ層を形成することを含む方法によって低減され得る。
【0007】
最近、基板の縁部における高欠陥領域の存在が、成長膜が臨界厚みに達するとすぐに弛緩できる状態にある貫通腕(threading arm)の蓄積(reservoir)を提供し、事実上、弛緩の第1段階のためにループのランダム核形成を排除することによってTDの密度の有意な低減が観察されることを報告する論文(Fabrizio Rovaris, Continuum modeling of heteroepitaxy at the mesoscale: tackling elastic and plastic relaxation, University of Milano-Bicocca DEPARTMENT OF MATERIALS SCIENCE, Academic year 2019/2020)が公表された。この論文の著者は、本発明者らと共同研究したが、基板裏面に応力補償SiGe層を堆積することにより基板の縁部の高欠陥領域が得られたことを発表しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基板上にヘテロエピタキシャルに堆積されたSiGe層のTD密度をさらに低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、基板上にシリコンゲルマニウム層をヘテロエピタキシャルに堆積させる方法によって達成され、本方法は、
基板の上にマスク層を設けることと、
マスク層の外側セクションを除去して、マスク層の残余を取り囲む基板の縁部領域内の基板の環状自由表面へのアクセスを提供することと、
基板の環状自由表面上に円筒形シリコンゲルマニウム層を堆積させることと、
マスク層の残余を除去することと、
基板上および円筒形シリコンゲルマニウム層上にシリコンゲルマニウム層を堆積させることとを含み、シリコンゲルマニウム層は円筒形シリコンゲルマニウム層の内側側面に接触する。
【0010】
シリコン単結晶基板上のSiGeバッファ層は、基板内に既存の転位が存在しないので、選好的な核生成部位における不均質な核生成によって緩和する。Siウェハの縁部は、選好的な核生成部位として機能する機械的欠陥を示すことがよく知られている。歪みエネルギーは、成長中にエピタキシャル層に蓄積し、このプロセスのための活性化エネルギーに達すると、転位は、これらの部位で急速に核生成し、厚い転位束を形成する。これらの不整合転位の束は、他の転位の滑りを阻止するのに有効であるため、貫通転位堆積の形成をもたらす。転位が阻止されると、層を完全に緩和するために、より多くの転位が核形成される必要があり、これは、より高い貫通転位密度(TDD)をもたらす。より制御された緩和プロセスおよび不整合転位束の防止のために、低い活性化エネルギーを有する均等に分布した転位源が必要とされる。
【0011】
本発明は、そのような転位源をSiGe層の縁部領域に実現する方法を提案する。この縁部蓄積(reservoir)は、SiGe層の前に堆積された、緩和または部分的に緩和されたSiGe層(以下、円筒形SiGe層と呼ぶ)からなる。SiGe層は、円筒形SiGe層に対する垂直接触または垂直接触および水平接触の両方を有する。この縁部蓄積に含まれる既存の転位は、臨界厚みに達するとウェハの中心に向かって自由に滑ることによって緩和の初期段階においてSiGe層を緩和するよう用いられ、極めて長い不整合転位セグメントを阻止されることなく残す。このプロセスは、ウェハ縁部における不均質核生成による厚い転位束の形成を防止し、したがって、DPの形成を防止し、全体的なTDDを低下させる。
【0012】
以下の説明では、シリコン単結晶基板上にSiGe層を堆積する場合について説明するが、SOI(silicon-on-insulator)ウェハ等の他の基板を用いてもよい。本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板は、直径200mmまたは300mmのシリコン単結晶ウェハである。
【0013】
基板の縁部に円筒形SiGe層を設けるために、マスキング手法が追求される。原則として、基板の表面領域をSiGe層による堆積から一時的に排除するために任意のマスキング機構が使用され得る。本発明の好ましい実施形態によれば、SiO2のような酸化物材料、例えば低温酸化物(LTO)がマスキング材料として使用される。LTOは、シラン(SiH4)および酸素(O2)を含む雰囲気中で、300℃~500℃の温度で化学蒸着(CVD)によって基板の上に堆積されてもよい。代替的に、酸化物層を堆積するための他の公知の方法を使用することができ、または酸化物層を、850℃~1200℃の温度の急速熱アニール(RTP)炉内で乾式酸化によって成長させてもよい。
【0014】
次に、基板の縁部から基板の中心に向かって延在する基板の環状自由表面を提供するために、基板の縁部領域においてマスク層が除去される。縁部領域のマスク層は、例えばフッ化水素酸またはフッ化アンモニウムおよびフッ化水素酸によるウェットエッチングによって、または例えばCF4などによるプラズマエッチングによって除去されてもよい。本発明の一実施形態によれば、基板の縁部領域内のマスク層は、基板を支持体上に下向きに置き、プロセスチャンバ内にHFヒュームを導入することによって除去されてもよく、支持体とマスクとの間に拡散するHFヒュームは、最大1.5mmの幅を有するマスク部分をエッチング除去する。
【0015】
本発明によれば、基板の環状自由表面は、好ましくは縁部から基板の中心に向かって径方向に200μm以上1.5mm以下の距離にわたって延在する。基板の環状自由表面の幅は、基板の厚みが減少する基板の縁部部分の長さと同程度に小さくさえあってもよく、またはさらに小さくてもよい。
【0016】
次に、円筒形SiGe層を基板の環状自由表面にエピタキシャル成長させる。本発明の一実施形態によれば、大気圧下でのCVDが、円筒形SiGe層の堆積のために行われる。堆積プロセスの詳細は周知であり、例えばUS2010 0 317 177 A1で論じられる。代替的に、減圧下および低温で堆積してもよい。本発明の一実施形態によれば、円筒形SiGe層の組成はSi1-xGexであり、0.01≦x≦1である。本発明のさらに好ましい態様によれば、円筒状SiGe層の厚みは10nm以上10μm以下であり、円筒状SiGe層の一部または全部が緩和されている。円筒形SiGe層の上述の特性は、円筒形SiGe層のTDDを適切に制御することを可能にし、これは、本発明の目的を満たすために重要である。円筒形SiGe層のTDDは、少なくとも1.0×103cm-2であることが好ましい。
【0017】
基板の縁部領域に円筒形SiGe層を設けた後、円筒形SiGe層で囲まれた残余のマスク層が除去され、マスク層で覆われていた基板の表面は、基板の表面と円筒形SiGe層の内面および上面とに接触するSiGe層の堆積のためにアクセス可能になる。本発明の好ましい実施形態によれば、SiGe層は、大気圧下でCVDによってエピタキシャルに堆積される。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、SiGe層の組成はSi1-xGexであり、0.01≦x≦1である。本発明の一実施形態によれば、SiGe層は、傾斜バッファ層または定組成層である。SiGe層は、部分的にまたは完全に緩和され、基板および円筒形SiGe層の内面、または基板および円筒形SiGe層の内面および上面の両方に接触する。円筒形SiGe層のゲルマニウム含有量は、SiGe層のゲルマニウム含有量より低いか、等しいか、またはそれより高くてもよい。SiGe層の厚みは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0018】
円筒形SiGe層に含まれる貫通転位は、臨界厚みに達すると、中心に向かって滑ることによって、SiGe層を緩和させる。その結果、先行技術のアプローチと比較して、転位堆積密度および貫通転位密度の低減、ならびに表面粗さおよび全体的な均一性の改善がもたらされる。
【0019】
以下、図面を参照して本発明を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】製造の最終状態におけるウェハの一実施形態の断面図である。
【
図2】
図1に示すウェハの縁部領域を示す断面図である。
【
図3】ウェハの縁部領域がウェハの製造の中間状態で示されている点のみが
図2と異なる。
【
図5】基板から始まり、
図3および
図4によるウェハの製造の中間状態で終了する、特許請求されるプロセスの過程におけるウェハの状態の上面図を示す。
【
図6】
図3によるウェハの製造の中間状態から開始し、
図2による製造の最終状態で終了する、TDの進展を示す。
【
図7】製造の最終状態におけるウェハの別の実施形態の断面図である。
【
図8】製造の最終状態におけるウェハのさらに別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
製造の最終状態において、本発明に従って製造されるウェハは、
図1に示される構造を有してもよい。この構造は、基板1と、円筒形シリコンゲルマニウム層2と、円筒形シリコンゲルマニウム層2の内面および上面に接するシリコンゲルマニウム層3とを備える。
図2には、ウェハの縁部からウェハの中心に向かって矢印の方向に延びる、このウェハの縁部領域が示されている。
【0022】
シリコンゲルマニウム層3の堆積前は、ウェハは
図3に示す中間状態にある。中間状態の構造体は、基板1と、径方向幅wおよび厚みtを有する円筒形シリコンゲルマニウム層2とを含む。
図4は、中間状態のウェハの上面図を示す。
【0023】
この中間状態を達成するために、
図5に示すように、基板1の上面上にマスク層4を設ける。次に、マスク層4の外側部分を除去して、基板1の縁部領域において基板1の環状自由表面6へのアクセスを提供する。次に、円筒形シリコンゲルマニウム層2が環状自由表面6上に堆積され、マスク層4の残余5を取り囲む。その後、マスク層4の残余6も除去され、基板1および円筒形シリコンゲルマニウム層2上へのシリコンゲルマニウム層3のその後の堆積のための中間状態を提供する。
【0024】
図6は、製造の中間状態から開始して製造の最終状態までのTDの進展を示す。円筒形シリコンゲルマニウム層2に含まれる貫通転位は、臨界厚みに達すると、中心に向かって滑ることによってシリコンゲルマニウム層3の緩和を促進する。
【0025】
製造の最終状態において、本発明に従って製造されるウェハはまた、
図7または
図8に示される構造を有してもよい。
図7に示される実施形態によれば、シリコンゲルマニウム層3は、基板1の表面と、円筒形シリコンゲルマニウム層2の内面に、そのある高さまでとに接触する。
図8に示される実施形態によれば、シリコンゲルマニウム層3と円筒形シリコンゲルマニウム層2とは同じ厚みを有する。
【0026】
図9に示すように、基板の環状自由表面の幅は、基板の厚みが減少する基板1の縁部7の長さlと同程度に小さくてもよく、または長さlよりもさらに小さくてもよい。
【0027】
例示的な実施形態の上記の説明は、例示的なものとして理解されるべきである。
【符号の説明】
【0028】
使用される参照番号のリスト
1 基板
2 円筒状シリコンゲルマニウム層
3 シリコンゲルマニウム層
4 マスク層
5 マスク層の残余
6 基板の環状自由表面
7 縁部部分
l 縁部部分の長さ
w 幅
t 厚み
TD 貫通転位