(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】2剤型ポリウレタン組成物の発泡防止方法及び2剤型ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/36 20060101AFI20240805BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240805BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20240805BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08G18/36
C08G18/08 038
C08G18/22
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2024083005
(22)【出願日】2024-05-22
【審査請求日】2024-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】増田 塁
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-296018(JP,A)
【文献】特開2007-308656(JP,A)
【文献】特開2001-181567(JP,A)
【文献】特開2014-009310(JP,A)
【文献】特開2004-308407(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043420(WO,A1)
【文献】特開平05-247161(JP,A)
【文献】特開2016-041792(JP,A)
【文献】特開2016-041793(JP,A)
【文献】国際公開第2023/090308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際に発泡を防止する方法であって、
前記方法は、
前記第1剤と前記第2剤を用意するステップと、
前記第1剤と前記第2剤とを混合するステップと、
前記第1剤、前記前記第2剤又はそれらの混合物に、消泡剤及び発泡抑制剤を添加するステップと、を備え、
前記ポリオールが脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、
前記消泡剤は、オレフィンポリマーであり、
前記消泡剤は、第1剤100質量部に対して0.01~5.0質量部の含有量で存在し、
前記発泡抑制剤は、有機カルボン酸であり、
前記発泡抑制剤は、前記第1剤100質量部に対して1.0~5.0質量部の含有量で存在
し、
前記2剤型ポリウレタン組成物が、上記第1剤に含まれるポリオールと上記第2剤に含まれるポリイソシアネートとのウレタン反応を促進するための触媒を含み、
前記触媒が金属触媒であり、
前記金属触媒は、第1剤100質量部に対して0.001~2.0質量部である、方法。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートがイソシアネートオリゴマーであり、
前記脂肪酸がリシノレイン酸を主成分とし、
前記有機カルボン酸が分岐したアルキル基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法により2剤型ポリウレタン組成物の発泡を防止するステップと、
前記2剤型ポリウレタン組成物を用いて防水塗膜を形成するステップと、
を備える、防水塗膜の生産方法。
【請求項4】
ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する2剤型ポリウレタン組成物であって、
前記第1剤又は前記第2剤が更に、消泡剤、発泡抑制剤、及び、
前記2剤型ポリウレタン組成物が、上記第1剤に含まれるポリオールと上記第2剤に含まれるポリイソシアネートとのウレタン反応を促進するための触媒を含み、
前記触媒が金属触媒であり、
前記金属触媒は、第1剤100質量部に対して0.001~2.0質量部であり、
前記消泡剤は、非イオン性のオレフィンポリマーであり、
前記消泡剤は、第1剤100質量部に対して0.01~5.0質量部の含有量で存在し、
前記発泡抑制剤は、有機カルボン酸であり、
前記ポリオールが脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、
前記発泡抑制剤は、前記第1剤100質量部に対して1.0~5.0質量部であり、2剤型ポリウレタン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際に発泡を防止する方法及びその方法に使用できる2剤型ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン組成物は、接着剤、シーリング材及びコーティング材の用途に広く使用される。中でも、2剤型ポリウレタン組成物は、急速に強度を生じるという点、また、粘弾性から高構造化までの幅広い機械特性に亘る使用特性の観点で、1剤型を上回る利点をもたらす。
【0003】
そのような用途に用いられる2剤型ポリウレタン組成物としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、ポリオール、ポリイソシアネート、ブロックされたアミン、及び、金属触媒等で構成される2剤型ポリウレタン組成物が開示されている。特許文献1の2剤型ポリウレタン組成物は、ブロックされたアミンを用いることにより、2剤型ポリウレタン組成物の可使時間をより長くし、気泡を生じることなく硬化して高い強度を有する弾性材料を形成できるようにすることが意図されたものであると考えられる。
【0004】
一方で、特許文献2には、ウレタンプレポリマーからなる主剤と、所定範囲内の分子量を有するポリオール、有機カルボン酸金属塩からなる硬化触媒、硬化触媒の安定化剤として機能するカルボン酸、及び、可塑剤等を含む硬化剤とを含む2剤型ポリウレタン系シーリング材が開示されている。特許文献2のシーリング材は、可塑剤の含有量を減量することに加えて、高湿度下で触媒が失活したり、水分とイソシアネートとの反応が優先したりする等の硬化触媒が有していた問題を解決することが意図されたものであると考えられる。
【0005】
しかしながら、本発明者は、これらの従来の2剤型ポリウレタン組成物を硬化して得られる硬化物が、微少な発泡を有するか、又は、引張強度等の物性において必ずしも充分ではない場合があり、さらなる改良の余地があると考えた。また、本発明者は、発泡を抑制するための組成変更により、2剤型ポリウレタン組成物が本来有すべき所望の物性が損なわれる場合があるため、そのような所望の物性が損なわれないことを担保したうえで2剤型ポリウレタン組成物の発泡を防止できるようにさらに改良する余地があると考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2015-534590号公報
【文献】特許第3696447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際の発泡を従来よりも抑制することができ、かつ、所望の物性を有する硬化物を形成することができる方法及びその方法に使用することができる2剤型ポリウレタン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、一実施形態において本発明は下記の構成を有する。
[1]
ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際に発泡を防止する方法であって、
前記方法は、
前記第1剤と前記第2剤を用意するステップと、
前記第1剤と前記第2剤とを混合するステップと、
前記第1剤、前記前記第2剤又はそれらの混合物に、消泡剤及び発泡抑制剤を添加するステップと、を備え、
前記ポリオールが脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、
前記消泡剤は、オレフィンポリマーであり、
前記発泡抑制剤は、有機カルボン酸であり、
前記発泡抑制剤は、前記第1剤100質量部に対して1.0~5.0質量部の含有量で存在する、方法。
[2]
前記ポリイソシアネートがイソシアネートオリゴマーである、[1]に記載の方法。
[3]
前記脂肪酸がリシノレイン酸を主成分とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記有機カルボン酸が分岐したアルキル基を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
[1]に記載の方法により2剤型ポリウレタン組成物の発泡を防止するステップと、
前記2剤型ポリウレタン組成物を用いて防水塗膜を形成するステップと、
を備える、防水塗膜の生産方法。
[6]
ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する2剤型ポリウレタン組成物であって、
前記第1剤又は前記第2剤が更に、消泡剤及び発泡抑制剤を含み、
前記消泡剤は、非イオン性のオレフィンポリマーであり、
前記発泡抑制剤は、有機カルボン酸であり、
前記発泡抑制剤は、前記第1剤100質量部に対して1.0~5.0質量部である、2剤型ポリウレタン組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法及び組成物は、2剤型ポリウレタン組成物の硬化させる際の発泡を従来よりも抑制することができ、かつ、所望の物性を有する硬化物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1試験において調製した2剤型ポリウレタン組成物を硬化させて得られた硬化物の表面の写真である。
【
図2】第2試験において調製した2剤型ポリウレタン組成物(消泡剤と、前記第1剤100質量部に対して0~7質量部の発泡抑制剤を含むもの)を硬化させて得られた硬化物の表面の写真である。
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
2剤型ポリウレタン組成物は、ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する。前記第1剤、前記第2剤、又は前記第1剤と前記第2剤の混合物に、消泡剤及び発泡抑制剤を添加する。
【0012】
本明細書において、ポリオールは、2個以上の活性水素基(好ましくは、ヒドロキシル基)を有する化合物(多価アルコール)を意味する。ポリイソシアネートは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとがウレタン結合を介して結合した化合物を意味する。
【0013】
「分子量」とは本明細書において、分子のモル質量(g/モル)を意味するように理解される。「平均分子量」とは、分子のオリゴマー又はポリマー混合物の数平均Mnを意味し、標準物質としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって通常決定される。本明細書における「室温」とは、23℃の温度を意味する。
【0014】
本明細書において、特定の成分が「主成分」であるとは、該特定の成分が、該特定の成分を含んでなる剤の全成分100質量%に対して50質量%以上の含有量で存在することを意味する。他の好ましい実施形態においては、特定の成分が、該特定の成分を含む剤100質量%に対して70質量%以上であってもよい。
【0015】
[ポリオール]
上記第1剤の成分として含まれるポリオールは、商業的に入手可能なポリオール又は商業的に入手可能な複数のポリオールの混合物であってもよい。上記ポリオールは、例えば、水酸基を有する油脂、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール、低分子多価アルコール類、及び、これらの混合物であってもよい。
【0016】
上記ポリオールは、脂肪酸と多価アルコールとのエステルであることがより好ましい。上記エステルは、リシノレイン酸とグリセリンとのエステル等の、水酸基を有する脂肪酸と多価アルコールとのエステルであってもよいし、水酸基を有していない植物油脂に化学反応を用いて水酸基を導入したものであってもよい。上記ポリオールは、水酸基を有する脂肪酸と多価アルコールとのエステルであることが更に好ましい。
【0017】
上記「水酸基を有する脂肪酸」は、リシノレイン酸を主成分とすることが好ましい。リシノレイン酸は、ポリオールを構成する脂肪酸100質量%に対して80質量%以上であることがより好ましい。ヒマシ油は、その分子を構成する脂肪酸の約90%がリシノレイン酸である。従って、リシノレイン酸を主成分とする脂肪酸で構成されたポリオールとしては、ヒマシ油を用いることができる。
【0018】
上記水酸基を有していない植物油脂としては、亜麻仁油、サフラワー油、大豆油、きり油、ケシ油、菜種油、ゴマ油、米油、トール油、綿実油、コーン油等のヨウ素価が100以上のものが好ましい。これらのなかでも、大豆油が好ましい。水酸基を有していない植物油脂に化学反応を用いて水酸基を付加する方法については、例えば、特開2005-320431号公報を参照することができる。
【0019】
ヒマシ油は、未変性ヒマシ油であってもよいし、変性ヒマシ油であってもよい。ヒマシ油は、未変性ヒマシ油であることが好ましい。未変性ヒマシ油は、ヒマ(トウダイグサ科のトウゴマ)の種子から抽出し、精製したものであり、二塩基酸等による架橋(変性)を施していないものである。ヒマシ油は、脱水処理されたものであることが好ましい。
【0020】
変性ヒマシ油のような変性植物由来油脂は、目的とする性状となるよう二塩基酸と植物由来油脂を混合し、脱水縮合反応させたものである。この変性植物由来油脂の合成には、公知の方法を用いることができる。例えば、植物由来油脂を任意の溶媒に溶解させた後、二塩基酸を添加する。この反応液をディーン・スタークトラップにより還流を行い、脱水縮合反応を行いつつ、系外へと反応により生じる水を除去する。反応が完結した後に、溶媒を減圧除去することにより目的とする化合物を得ることができる。
【0021】
上記ポリオールは、1.5~5.0の平均官能性を有することが好ましい。平均官能性は2.0~4.0であり、特に好ましくは2.5~3.5である。
【0022】
上記ポリオールは、120~200mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましい。140~180mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましい。上記水酸化は156~165mgKOH/gであることが好ましい。
【0023】
上記ポリオールは、60~110gI2/100Gのヨウ素価を有することが好ましい。上記ヨウ素価は、70~100gI2/100Gであることが好ましく、80~90gI2/100Gであることがさらに好ましい。
【0024】
上記ポリオールは、イソシアネート基との適度な反応性を有することから、第二級ヒドロキシル基を有することが好ましい。上記ポリオールが有するヒドロキシル基の過半数が第二級ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0025】
上記ポリオールは、第1剤の総重量ベースで60wt-%~100wt-%、好ましくは80wt-%~99.7wt-%、より好ましくは95wt-%~99.5wt-%の含有量で存在することが好ましい。
【0026】
[ポリイソシアネート]
第2剤に含まれるポリイソシアネートは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。上記ポリイソシアネートは、イソシアネートオリゴマーであることが好ましく、イソシアヌレート(3量体)であることが更に好ましく、脂肪族系ジイソシアネートのイソシアヌレートであることが更により好ましい。上記脂肪族系ジイソシアネートは、2個のイソシアネート基が脂肪族炭化水素に結合した構造を有する化合物である。上記脂肪族炭化水素基は、例えば、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せであってもよい。
【0027】
上記ポリイソシアネートを構成するジイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(無置換のMDI。ピュアMDI、モノメリックMDIともいう)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)を高分子量化した化合物)、変性MDI等のような芳香族系ポリイソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族系ポリイソシアネートであってもよい。
上記ジイソシアネートは、なかでも、脂肪族系ポリイソシアネートであることが好ましく、HDIであることが更に好ましい。
【0028】
上記ポリイソシアネートは、第2剤の総重量ベースで60wt-%~100wt-%、好ましくは80wt-%~100wt-%、より好ましくは95wt-%~100wt-%の量で存在することが好ましい。
【0029】
[触媒]
上記2剤型ポリウレタン組成物は、上記第1剤に含まれるポリオールと上記第2剤に含まれるポリイソシアネートとのウレタン反応を促進するための触媒を含むことが好ましい。上記触媒は、第1剤及び/又は第2剤の成分として存在することができるが、好ましくは第1剤の成分として存在する。上記触媒は、ビスマス系触媒、錫系触媒等の金属触媒であってもよい。触媒は、具体的には、例えば、ビスマストリオクテートのようなビスマス系触媒、ジオクチル錫(IV)ジラウレートのような4価のスズ触媒であってもよい。これらの中でも、ビスマス系触媒が好ましい。
【0030】
上記2剤型ポリウレタン組成物が金属触媒を含む場合、金属触媒は、第1剤100質量%に対して0.001~2.0質量%であることが好ましく、0.01~1.0質量%であることがより好ましい。
【0031】
[消泡剤]
本発明の2剤型ポリウレタン組成物は消泡剤を含む。消泡剤は、主に第1剤と第2剤とを攪拌混合する際に巻き込まれた気泡を破裂させて解消する働きをすると考えられる成分である。消泡剤は、第1剤と第2剤のいずれに含まれていてもよいが、第1剤に含まれていることが好ましい。
【0032】
上記消泡剤としては、2剤型ポリウレタン組成物に通常用いられるものを使用することができる。消泡剤は、例えば、アクリル系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマー、ブタジエンポリマー、オレフィンポリマー、ジメチルシリコーン、又は、変性シリコーンであってもよい。消泡剤は、これらのなかでも、オレフィンポリマーであることが好ましい。オレフィンポリマーは、例えば、フローレンAC-2200HF(共栄社化学株式会社)であってもよい。
【0033】
上記消泡剤は、発泡抑制と各種物性とのバランスの観点から、第1剤100質量%に対して0.01~5.0質量%の含有量で存在することが好ましい。上記消泡剤は、0.05~3.0質量%の含有量で存在することがより好ましく、0.1~1.0質量%含有量で存在することが更に好ましい。
【0034】
[発泡抑制剤]
本発明の2剤型ポリウレタン組成物は発泡抑制剤を含む。本発明において、発泡抑制剤は、ウレタン硬化反応を調整することにより、副反応による炭酸ガス発生を抑制すると考えられる成分である。
【0035】
本発明2剤型ポリウレタン組成物において用いられる発泡抑制剤は、有機カルボン酸又は有機カルボン酸の金属塩であることが好ましく、有機カルボン酸であることがより好ましい。
【0036】
上記有機カルボン酸は、分岐したアルキル基を有する有機カルボン酸であることが好ましい。有機カルボン酸は、炭素数が5~15であることが好ましく、炭素数が6~10であることが好ましい。そのようなカルボン酸としては、例えば、オクチル酸、2-エチルへキシル酸、ネオデカン酸等を用いることができる。
【0037】
上記発泡抑制剤は、発泡抑制と各種物性とのバランスから、第1剤100質量%に対して0.1~6.0質量%の含有量で存在することが好ましく、1.0~5.0質量%含有量で存在することがより好ましい。
【0038】
本発明の2剤型ポリウレタン組成物は、可塑剤、溶媒、フィラー等のその他任意の成分を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の2剤型ポリウレタン組成物は、消泡剤と発泡抑制剤を併用することにより、減圧等による脱泡処理を行わなくても発泡抑制と各種物性とのバランスに優れることになる。従って、本発明の2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際には、減圧等による脱泡処理は必須ではない。しかしながら、必要に応じて、硬化物に対して減圧等による脱泡処理をおこなってもよい。
【0040】
[用途]
本発明の方法によって形成される2液型ポリウレタン組成物の硬化物は、ポリウレタン組成物は、接着剤、シーリング材及びコーティング材の用途に広く使用されるが、特に好ましくは防水用コーティングとして用いられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明は実施例に限定されない。
【0042】
<予備試験、ポリエーテルポリオールとヒマシ油との比較>
参考例A及び参考例Bにおいて、2液型ポリウレタン組成物の第1剤と第2剤として、下記表1に示される成分を含むものを調製した。第1剤と第2剤とを撹拌装置(商品名「RW20デジタル」、IKA社製)を用いて1分間攪拌して混合物を得た。その混合物を、「テラダイト離型剤 MO-7(株式会社寺田製)を塗布したガラス板の表面に塗布し、24時間室温で静置して硬化物を得た。なお、参考例A及びBにおいて減圧による脱泡処理は行わなかった。
【0043】
【0044】
表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<第1剤(硬化剤)>
PPG T600:ポリプロピレングリコール、商品名「サンニックスGP-600」、三洋化成工業株式会社製
ヒマシ油:ポリオール、商品名:URIC H-2315、伊藤製油株式会社製)
ビスマス系触媒:商品名:K-KAT XK640、楠本化成株式会社製)
消泡剤:オレフィンポリマー消泡剤(商品名:Flowlen AC-2200HF、共栄社化学株式会社製)
発泡抑制剤:オクチル酸 商品名「オクチル酸」、JNC株式会社製
比較発泡抑制剤:酸化カルシウム(商品名:CML#35、近江化学工業株式社製)
<第2剤(主剤)>
HDIトリマー:商品名「Desmodur N3300」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート体、Covestro AG社製
【0045】
表1に示される各物性は以下のように測定した。
引張強度:JIS A6021-2000に規定する引張強さ[N/mm2]
伸び率:JIS A6021-2000に規定する破断時の伸び率[%]
引裂強度:JIS A6021-2000に規定する引裂強さ[N/mm]
D硬度
【0046】
予備試験から、硬化剤としてヒマシ油を含む2液型ポリウレタン組成物の硬化物は、引張強度、伸び率、引裂強度、及び、D硬度を含むすべての物性において、硬化剤としてポリプロピレングリコールを含む組成物の硬化物よりも優れていた。しかしながら、ヒマシ油を含む2液型ポリウレタン組成物の硬化物は、表面粘着性(残留タック)を有しており、また、発泡を有していたため、それらの点において改善の余地があった。
【0047】
<第1試験、発泡抑制及び表面粘着性の評価>
[組成物の製造]
参考例1-1~2-4において、2液型ポリウレタン組成物の第1剤と第2剤として、下記表2に示される成分を含むものをそれぞれ調製した。参考例1-1~2-4の第1剤と第2剤とをそれぞれ撹拌装置(商品名「RW20デジタル」、IKA株式会社製)で1分間攪拌した。なお、参考例1-1~2-4において、減圧による脱泡処理は行わなかった。
【0048】
【0049】
表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<第1剤(硬化剤)>
ヒマシ油(ポリオール):商品名:URIC H-2315、伊藤製油株式会社製)
ビスマス系触媒:商品名:K-KAT XK640、楠本化成株式会社製)
消泡剤:オレフィンポリマー消泡剤(商品名:Flowlen AC-2200HF、共栄社化学株式会社製)
発泡抑制剤:オクチル酸 商品名「オクチル酸」、JNC株式会社製
比較発泡抑制剤:酸化カルシウム(商品名:CML#35、近江化学工業株式社製)
<第2剤(主剤)>
HDIトリマー:商品名「Desmodur N3300」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート体、Covestro AG社製
【0050】
参考例1-1~2-4において得られた混合物をDSプライマー・エコ(1成分形ウレタン樹脂プライマー)を塗布したスレート板に塗布し、24時間室温で静置して硬化物を得た。得られた各硬化物の外観を
図1に示す。
【0051】
[発泡抑制の評価]
オクチル酸(発泡抑制剤)及び酸化カルシウム(比較発泡抑制剤)のいずれもが含まれない参考例1-1及び2-1の硬化物は、発泡しており、硬化物中に細かい気泡が含まれていた。酸化カルシウム(比較発泡抑制剤)を含むが、オクチル酸(発泡抑制剤)を含まない参考例1-2、1-3及び1-4の硬化物は、断面に微細な気泡は目視で確認されなかったが、表面が波打っていた。参考例1-2、1-3及び1-4は、酸化カルシウムが発泡を完全に防止できなかったことを示唆した。オクチル酸を含む参考例2-2及び2-3の硬化物は、オクチル酸を含まない参考例1-1及び2-1の硬化物よりも目視で発泡が少なかった。さらに、参考例2-4の硬化物は、透明で平滑であり、この試験において最も発泡が少なかった。オクチル酸の量を増やすと泡立ちが減少することが示された。この際、硬化剤にオクチル酸を5重量%添加することで発泡が最も抑制された。
【0052】
[表面粘着性の評価]
得られた各硬化物を指で触ることにより、各硬化物の表面粘着性の有無を確認した。酸化カルシウム(2~10質量%)を用いた参考例1-2~1-4の硬化物は、強い表面粘着性を有していた。1~5質量%のオクチル酸を含む参考例2-2~2-4の硬化物は、表面粘着性を示さなかった。この結果から、従来の消泡剤に加えて発泡抑制剤として所定量のオクチル酸を加えることにより、発泡抑制と表面粘着性の低減(硬化性向上)におい有用であることが判明した。
【0053】
<第2試験、発泡抑制剤の含有量に関する試験>
第1剤100質量%に対してオクチル酸の含有量を0~7質量%に変更した以外は第1試験と同様に第1剤及び第2剤を調製し、硬化させて硬化物を得た。それらの硬化物について第1試験同様に各物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
これらの結果から、オクチル酸が第1剤100質量%に対して1~5質量%含まれる場合に防水コーティングとして好適な物性値を有することがわかった。
【0056】
図2は、それぞれ、第2試験において調製した硬化物の表面の写真である。オクチル酸0%の場合、塗膜における微細な発泡のために、硬化物が、白濁したゆず肌状の非平滑な表面を有するという問題を有していた。1%のオクチル酸を添加した場合には、そのような問題が軽減された。3%以上のオクチル酸を添加した場合には、硬化物が、透明で平滑な表面を有しており、そのような問題が解消されていた。
【要約】
【課題】本発明は、2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際の発泡を従来よりも抑制することができ、かつ、所望の物性を有する硬化物を得ることができる方法及びその方法に使用することができる2剤型ポリウレタン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤とを有する2剤型ポリウレタン組成物を硬化させる際に発泡を防止する方法であって、前記方法は、前記第1剤と前記第2剤を用意するステップと、前記第1剤と前記第2剤とを混合するステップと、前記第1剤、前記前記第2剤又はそれらの混合物に、消泡剤及び発泡抑制剤を添加するステップと、を備え、前記ポリオールが脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、前記消泡剤は、オレフィンポリマーであり、前記発泡抑制剤は、有機カルボン酸であり、前記発泡抑制剤は、前記第1剤100質量部に対して1.0~5.0質量部の含有量で存在する、方法。
【選択図】なし