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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240806BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J171/00
C09J11/06
C09J163/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019212082
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021076814
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018220937
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019204475
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(72)【発明者】
【氏名】阪上 智恵
(72)【発明者】
【氏名】岩田 智
(72)【発明者】
【氏名】久米 悦夫
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204593(JP,A)
【文献】特開2014-206732(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108319061(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0195249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 171/00
C09J 11/06
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムが貼合された偏光板であって、
前記接着剤層は、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化物であり、
前記光硬化性組成物は、カチオン重合性化合物100質量部に対して、光カチオン重合開始剤を0.5~1.5質量部含み、
前記カチオン重合性化合物はカチオン重合性化合物全質量に対して2官能のオキセタン化合物を50質量%超70質量%以下み、
前記光カチオン重合開始剤は芳香族スルホニウム塩であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物は、さらに、カチオン重合性化合物全質量に対して脂肪族エ
ポキシ化合物を10質量%以上50質量%未満含む請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が300g
/(m2・24hr)以下である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムに熱可塑性樹脂フィルムが貼合された偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムが積層された構造を有し、液晶表示装置に組み込まれる。また偏光フィルムの製造方法として、二色性色素により染色された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸処理し、次いで水洗処理及び乾燥処理を施す方法が広く採用されている。
【0003】
通常、偏光フィルムは、上記の水洗処理及び乾燥処理の後、直ちに保護フィルムが貼合される。これは、乾燥後の偏光フィルムは物理的な強度が弱く、一旦これを巻き取ると、加工方向に裂けやすいなどの問題があるためである。したがって、通常、乾燥処理後の偏光フィルムには、直ちに接着剤が塗布され、この接着剤を介して偏光フィルムの両面に同時に保護フィルムが貼合される。
【0004】
接着剤としては、一般的に、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂を主成分とした水系接着剤や、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられている。活性エネルギー線硬化型接着剤として、特許文献1には、脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を有さないエポキシ化合物とを組み合わせ、光カチオン重合開始剤とともに配合した光硬化性接着剤が記載されている。偏光フィルムと保護フィルムとの接着に用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-257199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、モバイル機器の多様化により、より過酷な環境における耐久性が求められている。特許文献1に記載の偏光板では、過酷な環境下(例えば高温環境に長時間保管された場合)に偏光板が変色するという問題があることが分かってきた。
そこで本発明の課題は、過酷な環境下においても偏光板の変色が抑制された偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の発明を含む。
[1]偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムが貼合された偏光板であって、
前記接着剤層は、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含む光硬化性組成物の硬化物であり、
前記光硬化性組成物は、カチオン重合性化合物100質量部に対して、光カチオン重合開始剤を0.5~1.5質量部含み、
前記カチオン重合性化合物はカチオン重合性化合物全質量に対して2官能のオキセタン化合物を10~70質量%含むことを特徴とする偏光板。
[2]前記カチオン重合性化合物は、さらに、カチオン重合性化合物全質量に対して脂肪族エポキシ化合物を10~70質量%含む[1]に記載の偏光板。
[3]前記熱可塑性樹脂フィルムは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が300g/(m2・24hr)以下である、[1]又は[2]に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光板は、過酷な環境下においても偏光板の変色が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に光硬化性組成物からなる接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルムが貼合されたものである。偏光板を構成する各部材及び成分について順次説明する。
【0010】
[偏光フィルム]
偏光フィルムは、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムから構成される。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂として、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0011】
上記の偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経て、製造される。
【0012】
一軸延伸工程は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間を通して延伸してもよいし、熱ロールで挟む方式で延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4~8倍程度である。
【0013】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。
【0014】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常水100重量部あたり0.01~0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、通常水100重量部あたり 0.5~10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20~40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30~300秒程度である。
【0015】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、通常水100重量部あたり1×10-3~1×10-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20~80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30~300秒程度である。
【0016】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、通常水100重量部あたり2~15重量部程度、好ましくは5~12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、通常水100重量部あたり2~20重量部程度、好ましくは5~15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 100~1,200秒程度、好ましくは150~600秒程度、さらに好ましくは200~400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上、好ましくは50~85℃である。
【0017】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後に乾燥処理が施され、偏光フィルムが製造される。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度であり、浸漬時間は、通常2~120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は、通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40~100℃である。また、乾燥処理の時間は、通常120~600秒程度である。
【0018】
かくして得られるポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの厚さは、10~50μm 程度とすることができる。
【0019】
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の偏光板は、先に説明したポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムに、光硬化性組成物を介して、熱可塑性樹脂フィルムを積層し、光硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0020】
熱可塑性樹脂フィルムは、透明樹脂から形成されることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムは、延伸されていないフィルム、または、一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂フィルムの主成分は、好ましくは、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0022】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどの面で、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートとは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0023】
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、4,4′-ジカルボキシジフェニル、4,4′-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、および1,4-ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p-ヒドロキシ安息香酸の如き、ヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が少量用いられてもよい。
【0024】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、4,4´-ジカルボキシジフェニール、4,4´-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4-ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分と共に、p-ヒドロキシ安息香酸やp-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が用いられてもよい。
【0025】
上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂をフィルム化した後、上記したような延伸処理を施したものを保護フィルムとして用いることにより、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れるとともに、厚みが低減されたロール状偏光板を得ることができる。
【0026】
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコールまたはビスフェノールから形成されるポリエステルである。なかでも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性および耐酸性に優れているため、好ましく使用される。このようなポリカーボネートとして、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、または1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの如き、ビスフェノール類から誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0027】
ポリカーボネート系樹脂フィルムの製造法としては、流延製膜法、溶融押出法など、いずれの方法を用いてもよい。具体的な製造法の例として、ポリカーボネート系樹脂を適当な有機溶剤に溶解してポリカーボネート系樹脂溶液とし、これを金属支持体上に流延してウェブを形成し、そのウェブを上記金属支持体から剥ぎ取った後、剥ぎ取られたウェブを熱風乾燥してフィルムを得る方法を挙げることができる。
【0028】
アクリル系樹脂は、特に限定されないが、一般にはメタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。この共重合体は、通常、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルを含む単官能単量体を、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の共存下に重合して得ることができる。また、アクリル系樹脂は、第三の単官能単量体を共重合させることができる。
【0029】
メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルと共重合し得る第三の単官能単量体としては、たとえば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類; アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、および2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルなどのヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびアクリル酸などの不飽和酸類;クロロスチレンおよびブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類;ビニルトルエンおよびα-メチルスチレンなどの置換スチレン類;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物類;フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド類などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で用いられてもよいし、異なる複数種が併用されてもよい。
【0030】
多官能単量体を共重合させる場合、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルに共重合し得る多官能単量体としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびテトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2価アルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、またはこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどの多価アルコールをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、ならびにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体などの二塩基酸、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物などにグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0031】
このような組成からなるアクリル系樹脂は、さらに、共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、たとえば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応などが挙げられる。
【0032】
上記アクリル系樹脂のガラス転移温度は、80~120℃の範囲が好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移温度を上記範囲に調整するには、通常、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長およびその有する官能基の種類、ならびに単量体全体に対する多官能アクリル単量体の重合比を適宜選択する方法などが採用される。
【0033】
アクリル系樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤として例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤などを挙げることができる。ただし、偏光フィルムに積層される保護フィルムとして透明性が必要とされるため、これら添加剤の量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0034】
アクリル系樹脂フィルムの製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法など、いずれの方法を用いてもよい。なかでも、原料樹脂を、例えばTダイから溶融押出し、得られるフィルム状物の少なくとも片面をロールまたはベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。
【0035】
アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性などの観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。ここでいうアクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。かかる弾性重合体の例として、アルキルアクリレートを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマーおよび架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレートなど、アルキル基の炭素数が1~8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリレートが好ましく用いられる。このアルキルアクリレートに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートの如き、メタクリル酸エステル、スチレンの如き、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルの如き、ビニルシアン化合物などが挙げられる。又、架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびブタンジオールジ(メタ)アクリレートの如き、多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートの如き、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0036】
さらに、ゴム粒子を含まないアクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含むアクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を、保護膜とすることもできる。アクリル系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、各々商品名で、スミペックス(住友化学株式会社製)、アクリペット(三菱レイヨン株式会社製)、デルペット(旭化成株式会社製)、パラペット(株式会社クラレ製)、アクリビュア(株式会社日本触媒製)などが挙げられる。
【0037】
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類またはメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添よって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセンおよびそれらの誘導体類、並びに、その他の環状ポリオレフィンモノマーから選択される2種以上を用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセンまたはそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂の例を挙げると、JSR(株)の“アートン”、日本ゼオン(株)の“ZEONEX”および“ZEONOR”、三井化学(株)の“APO”および“アペル”などがある。非晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜に用いられる。
【0038】
セルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロース系樹脂は、好ましくはセルロースエステル系樹脂であり、より好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどを挙げることができる。このようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルムの市販品としては、例えば、富士フイルム(株)製の“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”および“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC8UX2M”および“KC8UY”などが挙げられる。
【0039】
光学補償機能が付与されたセルロース系樹脂フィルムを用いることもできる。かかる光学補償フィルムとして例えば、セルロース系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系樹脂の表面に位相差調整機能を有する化合物が塗布されたもの、セルロース系樹脂を一軸または二軸に延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。市販されているセルロース系樹脂の光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム(株)製の“ワイドビューフィルム WV BZ 438”および“ワイドビューフィルム WV EA”、コニカミノルタオプト(株)社製の“KC4FR-1”および“KC4HR-1”などがある。
【0040】
偏光フィルムの一方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤を含有する保護膜を液晶セルの視認側に配置することで、液晶セルを紫外線による劣化から保護できるためである。
【0041】
本発明では、偏光フィルムの少なくとも一方の面に、上述の熱可塑性樹脂フィルムが光硬化性組成物を用いて貼合される。偏光フィルムの片面にのみ熱可塑性樹脂フィルムを貼合する場合は、例えば、偏光フィルムの他面に、液晶セルなどの他の部材に貼合するための粘着剤層を直接設けるなどの形態をとることもできる。
【0042】
一方、偏光フィルムの両面に熱可塑性樹脂フィルムを貼合する場合、それぞれの熱可塑性樹脂フィルムは同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0043】
偏光フィルムの一方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムは、後述する光硬化性組成物を用いて接着されるが、偏光フィルムの他方の面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムは、他の光硬化性組成物から形成される接着剤層を用いて接着されてもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂フィルムは、偏光フィルムへの貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。又、熱可塑性樹脂フィルムの偏光フィルムへの貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの各種処理層を有していてもよい。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、通常5~200μm程度の範囲であり、好ましくは10~120μm、さらに好ましくは10~100μmである。
【0045】
熱可塑性樹脂フィルムは、温度40℃、相対湿度90%の条件における透湿度が300g/(m2・24hr)以下であることが好ましく、200g/(m2・24hr)以下であることがより好ましく、100g/(m2・24hr)以下であることがさらに好ましい。透湿度が300g/(m2・24hr)以下であると、例えば高温高湿環境下における透過率変化や高温環境下における色相変化を抑制できることから好ましい。
偏光フィルムの両面に熱可塑性樹脂フィルムを貼合する場合、少なくとも視認側(最外面)に温度40℃、相対湿度90%の条件における透湿度が300g/(m2・24hr)以下である熱可塑性樹脂フィルムを貼合することが好ましく、偏光フィルムの両面に温度40℃、相対湿度90%の条件における透湿度が300g/(m2・24hr)以下である熱可塑性樹脂フィルムを貼合することがより好ましい。
【0046】
[接着剤層]
本発明の偏光板は、上記の偏光フィルムの一方の面に接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合したものである。この接着剤層は、カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤が所定の割合で配合された光硬化性組成物から形成されるものである。
【0047】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、光硬化性組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える成分となる。カチオン重合性化合物として、2官能のオキセタン化合物を含む。
【0048】
(2官能オキセタン化合物)
2官能のオキセタン化合物とは、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を2個有する化合物であり、例えば、次のような化合物が挙げられる。
【0049】
ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル〕エーテル、ビス〔(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル〕エーテル、ビス〔(オキセタン-3-イル)メチル〕エーテル、1,4-ビス[〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル]ベンゼン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4′-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2′-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、1,1,1-トリス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕プロパン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕エタン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕プロパン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ブタン及び1,6-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ヘキサンなど。
【0050】
なかでも、ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル〕エーテルである場合、光硬化性組成物の反応性が高く、得られる硬化物の高温での弾性率を高くすることができる。そのため、高温条件下や高温高湿下での偏光板の耐久性が高くなるため、好ましい。
【0051】
2官能のオキセタン化合物は、光硬化性組成物が低粘度になる点及び光硬化性組成物の硬化物が接着力に優れる点で、分子量が550以下であることが好ましく、分子量150~400であることがより好ましく、分子量150~300であることがさらに好ましい。
【0052】
2官能のオキセタン化合物は、1種類を使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0053】
カチオン重合性化合物全質量を基準に、2官能のオキセタン化合物を10~70質量%の割合で配合することが好ましい。2官能のオキセタン化合物が10質量%以下になると光硬化性組成物の硬化性が低下し、70質量%以上になると熱可塑性樹脂フィルムへの接着力が低下する。好ましい含有量は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、2官能のオキセタン化合物は15~65質量%であり、より好ましくは25~55質量%である。
【0054】
(脂肪族エポキシ化合物)
本発明における光硬化性組成物は、カチオン重合性化合物としてさらに脂肪族エポキシ化合物を含んでいてもよい。カチオン重合性化合物として2官能のオキセタン化合物と脂肪族エポキシ化合物とを併用すると、光硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率を高い値に保ちながら、偏光フィルムと保護フィルムとの密着性を一層高めることができる。ここでいう脂肪族エポキシ化合物とは、エポキシ基に含まれる2個の炭素原子の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している化合物である。その例として、アルカンポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0055】
ポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテルの例としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0056】
アルカンポリオールのポリグリシジルエーテルの具体例としては、下式(IV)であらわされる化合物である。
【0057】
【化1】
【0058】
上記式(IV)において、Zは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Zは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、また、環構造であってもよい。Zは炭素数2~6が好ましく、4~6がより好ましい。
【0059】
上記式(IV)で示される化合物として、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
その他の脂肪族エポキシ化合物としては、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル及びジペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、2-エチルへキシルグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、などが挙げられる。
【0061】
脂肪族エポキシ化合物は、入手が容易で、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を高める効果が大きいことから、式(IV)で示される化合物であることが好ましい。具体的には、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル及び1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のZが炭素数4~6の化合物が好ましく用いられる。
【0062】
脂肪族エポキシ化合物は、1種類を使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0063】
2官能のオキセタン化合物と脂肪族エポキシ化合物とを併用する場合、両者の配合割合は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、脂肪族エポキシ化合物を10~90質量%とするのが好ましく、15~80質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることがさらに好ましい。もちろん、これらの合計が100質量%を超えることはない。脂肪族エポキシ化合物(例えば上記式(IV)で表される化合物)を、カチオン重合性化合物全体のうち10質量%以上の割合で配合することにより、熱可塑性樹脂フィルムとの接着力に優れたものとなる。光硬化性組成物の低粘度化及び接着力の点で、脂肪族エポキシ化合物は多いほうが好ましいが、90質量%を超えると、光硬化性組成物の硬化物の80℃における貯蔵弾性率が低くなり、それを介して偏光フィルムと保護フィルムとが貼合された偏光板の冷熱衝撃試験における耐久性が悪くなる。
【0064】
(その他のカチオン硬化性成分)
光硬化性組成物は、その他のカチオン硬化性成分を含んでいてもよい。その他のカチオン硬化性成分としては、芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、1官能のオキセタン化合物などが挙げられる。
【0065】
本発明において、芳香族エポキシ化合物とは、グリシジルエーテル基又はグリシジルエステル基が芳香環に直接結合した化合物を表す。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ、ビスフェノールAとビスフェノールFとエピクロルヒドリンが重縮合したエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムとの接着性の点で、芳香族エポキシ化合物の1分子中に含まれるエポキシ基の数は2以上であることが好ましい。また、同様の理由で、芳香族エポキシ化合物の重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、400~50,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましく、2,000~5,000であることがさらに好ましい。なお、本発明におけるMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のMwを意味する
【0067】
芳香族エポキシ化合物は、単独で使用しても、2種以上使用してもよい。
【0068】
芳香族エポキシ化合物を併用する場合、その含有量は、カチオン重合性化合物全質量に対して1~25質量%含むことが好ましい。含有量が1質量%以上含有することにより、熱可塑性樹脂フィルムとの密着性が向上する。一方、その含有量が25質量%を超えると、組成物の粘度が高くなり、塗工性が悪くなる。好ましい含有量は、カチオン重合性化合物全質量に対して中3~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。
【0069】
水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行うことにより得られる水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものである。その具体例として、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどがある。
【0070】
脂環式エポキシ化合物とは、分子内に少なくとも2個の脂環式エポキシ基を含む化合物を意味する。脂環式エポキシ基とは、下記式(II)で表される基(式(II)中、m=2~5の整数を表す)であり、具体的には、エポキシシクロペンチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0071】
脂環式エポキシ化合物は、式(III)で表される化合物が好ましい。
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
式(III)で表される化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0072】
脂環式エポキシ化合物を併用する場合、耐湿熱性の観点においては脂環式エポキシ化合物の含有量は少ない方が好ましい。具体的には、脂環式エポキシ化合物はカチオン重合性化合物全質量に対して30質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、1~10質量であることがさらに好ましい。
【0073】
(光カチオン重合開始剤)
光硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合が進行し、硬化して接着剤層を与える。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線の如き活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始するものであればよい。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、カチオン重合性化合物に混合してもその保存安定性や作業性に影響を与えない。光カチオン重合開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄-アレーン錯体などを挙げることができる。
【0074】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
【0075】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート
ジ(4-アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、
トリルクミルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジ(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフロオロホスフェートなど。
【0076】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート
4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナートなど。
【0077】
鉄-アレーン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
【0078】
これらの光カチオン重合性開始剤は、市販品として入手できる。例えば、アデカオプトマーSP-100、SP-150、SP-152、SP-170、SP-172〔(株)ADEKA製〕、フォトイニシエーター2074(ローディア社製)、カヤラッドPCI-220、PCI-620〔日本化薬(株)製〕、イルガキュア250(チバ・ジャパン社製〕、CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S〔サンアプロ(株)製)、WPI―113、WPI―116〔和光純薬工業(株)製〕)、BBI-102、BBI-103、TPS-102、TPS-103、DTS-102、DTS-103〔みどり化学(株)製〕等が挙げられる。
【0079】
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0080】
光カチオン重合開始剤の配合量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して 0.5~1.5質量部とする。カチオン重合性化合物100質量部あたり、光カチオン重合開始剤を0.5質量部以上(より好ましくは0.7質量部以上)配合することにより、カチオン重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与えるとともに、高温高湿環境下における耐久性に優れたものとなる。一方、その量が多くなると、未反応の開始剤、開始剤を溶解するために必要に応じて使用される溶剤又は開始剤の分解物の残存量が多くなるため、硬化物の物性が損なわれ、高温環境下において偏光板が変色する。よって、光カチオン重合開始剤の量は、カチオン重合性化合物100質量部あたり1.5質量部以下とするのが好ましい。
【0081】
(その他の成分)
光硬化性組成物は、以上説明したカチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤に加え、他の成分を含んでいてもよい。配合しうる他の成分の例を挙げると、光増感剤、光増感助剤、熱カチオン重合開始剤、連鎖移動剤、熱可塑性樹脂、流動調整剤、消泡剤、レベリング剤、有機溶剤、シランカップリング剤、ポリマーなどがある。偏光フィルムに貼合される保護フィルムの種類によっては、光増感剤、さらには光増感助剤を配合するのが好ましいことがある。
【0082】
光増感剤は、光カチオン重合開始剤が示す極大吸収波長よりも長い波長に極大吸収を示し、光カチオン重合開始剤による重合開始反応を促進させる化合物である。このような光増感剤としては、アントラセン系化合物が好ましく使用される。光増感剤となりうるアントラセン系化合物として、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジイソプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジペンチルオキシアントラセン、9,10-ジヘキシルオキシアントラセンなどが挙げられる。
【0083】
光増感助剤は、光増感剤の作用を一層促進させる化合物である。このような光増感助剤としては、ナフタレン系化合物が好ましく使用される。光増感助剤となりうるナフタレン系化合物として、1,4-ジメトキシナフタレン、1-エトキシ-4-メトキシナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジプロポキシナフタレン、1,4-ジブトキシナフタレンなどが挙げられる。
【0084】
これら他の成分を配合する場合、その量は、光硬化性組成物の主成分であるカチオン重合性化合物100質量部に対して、例えば、それぞれ10質量部以下の範囲から、配合目的に合わせて適宜選択すればよい。
【0085】
本発明における光硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、25℃において10~1000mPa・sであることが好ましい。塗工性および塗布層の薄膜化の点で、15~500mPa・sであることがより好ましく、20~100mPa・sであることがさらに好ましい。本発明における粘度は、E型粘度計による測定値である。
【0086】
光硬化性組成物の水分の含有量は、光硬化性組成物全量に対して3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。光硬化性組成物の水分の含有量が3質量%を超えると、光硬化性組成物の硬化性が悪化する傾向にある。そのため、偏光板作製直後の熱可塑性樹脂フィルムと偏光フィルムとの密着性が低下し、ウキや剥れが発生する傾向にある。
【0087】
[偏光板の作製]
熱可塑性樹脂フィルムは、光硬化性組成物から形成される接着剤層を介して偏光フィルムに貼合され、偏光板とされる。この貼合は、上で説明した光硬化性組成物の塗布層を、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムの貼合面の一方又は両方に形成し、その塗布層を介して偏光フィルムとこれらの保護フィルムを貼合し、未硬化の光硬化性組成物の塗布層に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、これらの熱可塑性樹脂フィルムを偏光フィルム上に固着させることで行われる。
【0088】
光硬化性組成物の塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に光硬化性組成物を流延させる方式を採用することもできる。各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、光硬化性組成物を良好に溶解するものであれば、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。
【0089】
偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムを接着するにあたり、両者の貼合面の一方又は双方には、光硬化性組成物の塗布層を形成する前に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理の如き易接着処理が施されてもよい。
【0090】
光硬化性組成物の塗布層に活性エネルギー線を照射するために用いる光源は、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。特に波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好適に用いられる。光硬化性組成物への活性エネルギー線の照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1~100mW/cm2であることが好ましい。光硬化性組成物への光照射強度は、0.1mW/cm2未満であると反応時間が長くなりすぎ、 100mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性組成物の重合時の発熱により、光硬化性組成物の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる可能性がある。光硬化性組成物への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10~5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性組成物への積算光量が10mJ/cm2 未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0091】
偏光フィルムの両面に熱可塑性樹脂フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線の照射はどちらの熱可塑性樹脂フィルム側から行ってもよいが、例えば、一方の熱可塑性樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有し、他方の熱可塑性樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない熱可塑性樹脂フィルム側から活性エネルギー線を照射するのが、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めるうえで好ましい。
【0092】
光硬化性組成物の硬化により形成された接着剤層の厚さは、通常20μm 以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。接着剤層が厚くなると、耐熱環境下及び耐高温高湿環境下における耐久性が悪化する傾向にある。
【0093】
[積層光学部材]
本発明の偏光板は、偏光板以外の光学機能を有する光学層を積層して、積層光学部材とすることができる。典型的には、偏光板の熱可塑性樹脂フィルムに、接着剤層や粘着剤層を介して光学層を積層貼着することにより積層光学部材とされるが、その他、例えば、偏光フィルムの一方の面に本発明に従って光硬化性組成物を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合し、偏光フィルムの他方の面に接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することもできる。後者の場合、偏光フィルムと光学層を貼着するための接着剤層として、本発明で規定する光硬化性組成物の硬化物を用いてもよいし、他の公知の接着剤から形成される接着剤層を用いてもよい。
【0094】
偏光板に積層される光学層の例を挙げると、液晶セルの背面側に配置される偏光板に対しては、その偏光板の液晶セルに面する側とは反対側に積層される、反射層、半透過反射層、光拡散層、集光板、輝度向上フィルムなどがある。また、液晶セルの前面側に配置される偏光板及び液晶セルの背面側に配置される偏光板のいずれに対しても、その偏光板の液晶セルに面する側に積層される位相差板などがある。
【0095】
反射層、半透過反射層、又は光拡散層は、それぞれ反射型の偏光板(光学部材)、半透過反射型の偏光板(光学部材)、又は拡散型の偏光板(光学部材)とするために設けられる。反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。また半透過型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。反射型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光フィルム上の保護フィルムにアルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設して、反射層を形成することができる。半透過型の偏光板としての光学部材は、上記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料等を含有して光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで形成できる。一方、拡散型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光板上の保護フィルムにマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法など、種々の方法を用いて、表面に微細凹凸構造を形成する。
【0096】
さらに、反射拡散両用の偏光板としての光学部材を形成することもでき、その場合は、例えば、拡散型偏光板の微細凹凸構造面にその凹凸構造が反映した反射層を設けるなどの方法が採用できる。微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうるなどの利点を有する。また、微粒子を含有した樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光が微粒子含有層を透過する際に拡散され、明暗ムラを抑制しうるなどの利点も有する。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングの如き蒸着やメッキ等の方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子は、例えば、平均粒径が0.1~30μmであるシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンの如き無機系微粒子、架橋又は非架橋のポリマーの如き有機系微粒子などでありうる。
【0097】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどとして、形成することができる。
【0098】
輝度向上フィルムは、液晶表示装置における輝度の向上を目的に用いられるもので、その例としては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
【0099】
他方、上記した光学層としての位相差板は、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。その例としては、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、フィルム基材上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。フィルム基材上に液晶層を形成する場合、フィルム基材として、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0100】
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンのような鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリアミドなどが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであることができる。なお、位相差板は、広帯域化など光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
積層光学部材においては、偏光板以外の光学層として位相差板を含むものが、液晶表示装置に適用したときに有効に光学保障を行えることから、好ましく用いられる。位相差板の位相差値(面内及び厚み方向)は、適用される液晶セルに応じて、最適なものを選べばよい。
【0102】
積層光学部材は、偏光板と、上記した各種の光学層から使用目的に応じて選択される1層又は2層以上とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、積層光学部材を形成する各種光学層は、接着剤層や粘着剤層を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤や粘着剤は、接着剤層や粘着剤層が良好に形成されるものであれば特に限定はない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止などの観点から、粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を使用することが好ましい。粘着剤には、アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体がベースポリマーとして有用である。
【0103】
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10~40質量%の溶液を調製し、これを偏光板上に直接塗工する方式や、予めプロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを偏光板上に移着する方式などにより、行うことができる。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、1~50μm 程度の範囲が適当である。
【0104】
また、粘着剤層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
【0105】
帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子などを挙げることができる。これらの中から、適当な帯電防止剤をそれぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。またもちろん、イオン性化合物に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできるし、導電性微粒子に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできるし、導電性高分子に分類される帯電防止剤を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0106】
以上説明した帯電防止剤の中では、溶剤との相溶性に優れることから、イオン性化合物が好ましく用いられる。
【0107】
イオン性化合物は、有機カチオンを有するイオン性化合物、無機カチオンを有するイオン性化合物、有機アニオンを有するイオン性化合物、及び無機アニオンを有するイオン性化合物に分類できる。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。無期カチオンとしては、リチウム、カリウム等が挙げられる。イオン性化合物を構成するカチオン成分は無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性の観点から有機カチオンであることが好ましい。一方、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[(PF6 -)]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO22-]アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO22-]アニオン等が挙げられる。
【0108】
積層光学部材は、液晶セルの片側又は両側に配置することができる。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。積層光学部材と液晶セルの接着には、通常粘着剤が用いられる。
【実施例
【0109】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す「部」及び「%」は特記ない限り質量基準である。また、以下の例で用いたカチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、及びレベリング剤は次のとおりであり、以下それぞれの記号で表示する。
【0110】
(A)カチオン重合性化合物
(a1)3―エチル―3{[(3 ―エチルオキセタン― 3 ―イル)メトキシ]メチル}オキセタン:東亜合成(株)から入手、商品名“OXT-221”。後述の表1では「(a1)」と略記する。
(a2)1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス(株)から入手、商品名“EX-214L”。後述の表1では「(a2)」と略記する。
【0111】
(B)光カチオン重合開始剤
(b1)4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート:サンアプロ(株)から入手、商品名“CPI-100P”。後述の表1では「(b1)」と略記する。なお、CPI-100Pは50%プロピレンカーボネート溶液として使用し、表1にはその固形分量を記載した。
【0112】
[実施例1~3、比較例1]
[調製例1~4]
(1)光硬化性組成物の調製
表1に示す配合割合で各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性組成物1~3を調製した。
【0113】
(2)偏光板の作製
[実施例1]
上記光硬化性組成物1を用いて偏光板を作製した。厚さ50μm のシクロオレフィン系フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、バーコーターを用いて、上記の光硬化性組成物1を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるように塗工した。その光硬化性組成物の塗布面にポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。また、紫外線吸収剤を含む厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂(PMMA)〔商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製〕からなる保護フィルムの貼合面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、シクロオレフィン系フィルムに用いたものと同じ光硬化性組成物1を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるようにバーコーターで塗工した。その光硬化性組成物の塗布面に、上で作製したシクロオレフィンフィルムが片面に貼合された偏光フィルムを偏光フィルム側で貼合し、積層体を作製した。この積層体のシクロオレフィン系フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用)を用いて積算光量(UVB)が200mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、光硬化性組成物を硬化させ接着剤層を形成した。こうして、偏光フィルムの両面に接着剤を介して保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
【0114】
[実施例2]
上記光硬化性組成物1を用いて偏光板を作製した。厚さ50μm のシクロオレフィン系フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、バーコーターを用いて、上記の光硬化性組成物1を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるようにそれぞれ塗工した。その光硬化性組成物の塗布面にポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。また、紫外線吸収剤を含む厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)系フィルム〔商品名“TD60UL”、富士フィルム(株)製〕の貼合面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、シクロオレフィン系フィルムに用いたものと同じ光硬化性組成物を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるようにバーコーターで塗工した。その光硬化性組成物の塗布面に、上で作製したシクロオレフィンフィルムが片面に貼合された偏光フィルムを偏光フィルム側で貼合し、積層体を作製した。この積層体のシクロオレフィン系フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用)を用いて積算光量(UVB)が200mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、光硬化性組成物を硬化させ接着剤層を形成した。こうして、偏光フィルムの両面に接着剤を介して保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
【0115】
[実施例3]
光硬化性組成物1を光硬化性組成物2に代えたこと以外は、実施例1と同様して、偏光板を作製した。
【0116】
[比較例1]
光硬化性組成物1を光硬化性組成物3に代えたこと以外は、実施例1と同様して、偏光板を作製した。
【0117】
熱可塑性樹脂フィルムの温度40℃、相対湿度90%における透湿度は、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定した。
PMMA:60g/(m2・24hr)
TAC:520g/(m2・24hr)
COP:5.8g/(m2・24hr)
【0118】
(3)粘着剤層つき偏光板の作製
上記(2)で作製した偏光板のシクロオレフィン系フィルム面に、コロナ処理を施し、厚さ25μmのアクリル系粘着剤をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光フィルムを得た。
【0119】
(4)偏光板の光学特性評価
上記(3)で作製した粘着剤つき偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、無アルカリガラス〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG”〕に貼合し、それぞれの透過色相のb値を測定した。測定は、(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計“UV-2450”にオプションアクセサリーである“偏光フィルム付きフィルムホルダー”をセットしたものを用い、波長380nm~780nmの範囲における偏光板の透過スペクトルを求めて、その分光光度計に付属するソフトウェア“UV-Probe”によって、透過色相のb値を算出した。
【0120】
(5)偏光板の耐熱性評価
上記(4)で作製した偏光板を、温度90℃の加熱環境下に48時間静置する加熱試験を行い、試験後の偏光板における透過色相b値を測定した。測定及びb値の算出は、上記(4)と同様の方法で行った。耐熱試験前後の透過色相の差の絶対値(|Δb|)値は、以下の式に従い算出した。
【0121】
|Δb|=|加熱試験後のb値-加熱試験前のb値|
【0122】
次に、得られた|Δb|の値から、下記式に基づいて、比較例1の|Δb|を基準とする各例の「Δb変化率(改善率)」(%)を求めた。Δb変化率の算出値を表1に示す。Δb変化率が大きいほど、耐熱性に優れる。
各例のΔb変化率(%)
=|{(各例の|Δb|)-(比較例1の|Δb|)}|/(比較例1の|Δb|)×100
なお、いずれの実施例及び比較例においても、Δbは正の値を示した。
結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1から、偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルムが貼合された偏光板において、その接着剤を、カチオン重合性化合物中に2官能のオキセタン化合物を10~70質量%含み、かつカチオン重合性化合物100質量部に対して光カチオン重合開始剤を0.5~1.5質量部含むものとすることで、良好な耐熱性を示すことが確認された。
【0125】
[調製例4-10]
(1)光硬化性組成物の調製
表2に示す配合割合で各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性組成物4~10を調製した。
なお、表2における略語はそれぞれ以下に記載の化合物を示す。
(A)カチオン重合性化合物
(a1)3―エチル―3{[(3 ―エチルオキセタン― 3 ―イル)メトキシ]メチル}オキセタン:東亜合成(株)から入手、商品名“OXT-221”。表2では「(a1)」と略記する。
(a2)1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス(株)から入手、商品名“EX-214L”。表2では「(a2)」と略記する。
(a3)ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス(株)から入手、商品名“EX-211L”。表2では「(a3)」と略記する。
(a4)ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル:ナガセケムテックス(株)から入手、商品名“EX-411”。表2では「(a4)」と略記する。
(a5)3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-シクロヘキサンカルボキシレート:ダイセル化学(株)から入手、商品名“セロキサイド 2021P”。表2では「(a5)」と略記する。
(B)光カチオン重合開始剤
(b1)4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート:サンアプロ(株)から入手、商品名“CPI-100P”。表2では「(b1)」と略記する。なお、CPI-100Pは50%プロピレンカーボネート溶液として使用し、表2にはその固形分量を記載した。
【0126】
[実施例4]
(2)偏光板の作製
厚さ50μmのシクロオレフィン系樹脂フィルムの〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、バーコーターを用いて、光硬化性組成物4を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるように塗工した。その光硬化性組成物4の塗布面にポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。また、紫外線吸収剤を含む厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂(PMMA)〔商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製〕からなる保護フィルムの貼合面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、光硬化性組成物4を硬化後の膜厚が約1.5μmとなるようにバーコーターで塗工した。その光硬化性組成物4の塗布面に、上で作製したシクロオレフィンフィルムが片面に貼合された偏光フィルムを偏光フィルム側で貼合し、積層体を作製した。この積層体のシクロオレフィン系フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用)を用いて積算光量(UVB)が200mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、光硬化性組成物を硬化させ接着剤層を形成し、偏光フィルムの両面に接着剤を介して保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
【0127】
[実施例5]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物5に代えたこと以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0128】
[実施例6]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物6に代えた以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0129】
[実施例7]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物7に代えた以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0130】
[実施例8]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物8に代えた以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0131】
[実施例9]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物9に代えた以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0132】
[実施例10]
光硬化性組成物4を光硬化性組成物10に代えた以外は、実施例4と同様にして偏光板を作製した。
【0133】
(3)粘着剤層つき偏光板の作製
上記(2)で作製した偏光板のシクロオレフィン系フィルム面に、コロナ処理を施し、厚さ25μmのアクリル系粘着剤をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光フィルムを得た。
【0134】
(4)偏光板の光学特性評価
上記(3)で作製した粘着剤つき偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、無アルカリガラス〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG”〕に貼合し、それぞれの透過色相のb値を測定した。測定は、(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計“UV-2450”にオプションアクセサリーである“偏光フィルム付きフィルムホルダー”をセットしたものを用い、波長380nm~780nmの範囲における偏光板の透過スペクトルを求めて、その分光光度計に付属するソフトウェア“UV-Probe”によって、透過色相のb値を算出した。
【0135】
(5)偏光板の耐熱性評価
上記(4)で作製した偏光板を、温度90℃の加熱環境下に48時間静置する加熱試験を行い、試験後の偏光板における透過色相b値を測定した。測定及びb値の算出は、上記(4)と同様の方法で行った。耐熱試験前後の透過色相の差の絶対値(|Δb|)値は、以下の式に従い算出した。
|Δb|=|加熱試験後のb値-加熱試験前のb値|
【0136】
次に、得られた|Δb|の値から、下記式に基づいて、比較例1の|Δb|を基準とする各例の「Δb変化率(改善率)」(%)を求めた。Δb変化率の算出値を表2に示す。Δb変化率が大きいほど、耐熱性に優れる。
各例のΔb変化率(%)
=|{(各例の|Δb|)-(比較例1の|Δb|)}|/(比較例1の|Δb|)×100
なお、いずれの実施例及び比較例においても、Δbは正の値を示した。
結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
(6)偏光板の耐湿熱性評価
上記(4)で作製した偏光板を、温度80℃相対湿度90%の高温高湿環境下に48時間静置する耐湿熱試験を行い、試験後の偏光板における視感度補正単体透過率Ty値を測定した。測定及びTy値の算出は、上記(4)と同様の方法で行った。耐湿熱試験前後の視感度補正単体透過率Tyの差の絶対値(|ΔTy|)値は、以下の式に従い算出した。
|ΔTy|=|加熱試験後のTy値-加熱試験前のTy値|
なお、いずれの実施例及び比較例においても、ΔTyは正の値を示した。
結果を表3に示す。
【0139】
【表3】