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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020861
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126777
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂
(72)【発明者】
【氏名】片平 静穂
(72)【発明者】
【氏名】横山 健治
(72)【発明者】
【氏名】大宮 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-94950(JP,A)
【文献】特開2016-215569(JP,A)
【文献】特開2011-5701(JP,A)
【文献】特開2002-240257(JP,A)
【文献】米国特許第5806994(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを備える液体吐出ヘッドから液体インクを搬送機構によって搬送された記録媒体に吐出して画像を形成する液体を吐出する装置であって、
前記ノズル最終吐出後の経過時間を管理する経過時間管理部と、
前記最終吐出後の経過時間に基づいて、前記ノズルのいずれかを次の吐出動作を優先的に行なわせる優先吐出ノズルとして設定する優先吐出ノズル設定部と、
前記優先吐出ノズルから前記液体インクを吐出させる吐出制御部と、を備え、
前記搬送機構は、前記優先吐出ノズルが複数設定されたとき、前記記録媒体の搬送方向に沿った先頭に当たる前記優先吐出ノズルに、前記記録媒体における液体吐出対象領域の搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
複数のノズルを備える液体吐出ヘッドから液体インクを搬送機構によって搬送された記録媒体に吐出して画像を形成する液体を吐出する装置であって、
前記ノズルの最終吐出後の経過時間を管理する経過時間管理部と、
前記最終吐出後の経過時間に基づいて、前記ノズルのいずれかを次の吐出動作を優先的に行なわせる優先吐出ノズルとして設定する優先吐出ノズル設定部と、
前記優先吐出ノズルから前記液体インクを吐出させる吐出制御部と、を備え、
複数の前記ノズルを前記記録媒体の搬送方向において列状に配置したノズル列が前記搬送方向と直交する方向に並んで複数配置されている場合、
前記優先吐出ノズル設定部は、前記各ノズル列に含まれる前記ノズルにおいて前記優先吐出ノズルとなるものがあるとき、全ての前記ノズル列のうち、前記搬送方向の沿った最先頭に当たるものを前記優先吐出ノズルとして設定し、
前記搬送機構は、前記優先吐出ノズルに、前記記録媒体における液体吐出対象領域の搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
複数のノズルを備える液体吐出ヘッドから液体インクを搬送機構によって搬送された記録媒体に吐出して画像を形成する液体を吐出する装置であって、
前記ノズルの最終吐出後の経過時間を管理する経過時間管理部と、
前記最終吐出後の経過時間に基づいて、前記ノズルのいずれかを次の吐出動作を優先的に行なわせる優先吐出ノズルとして設定する優先吐出ノズル設定部と、
前記優先吐出ノズルから前記液体インクを吐出させる吐出制御部と、を備え、
複数の前記ノズルを前記記録媒体の搬送方向において列状に配置したノズル列が前記搬送方向と直交する方向に複数並んで配置されている場合、
前記優先吐出ノズル設定部は、ノズル列において前記搬送方向の同じ位置にあるノズル行に含まれる前記ノズルのうち、前記経過時間に基づいて前記優先吐出ノズルとなる前記ノズルの数が最も多いノズル行を優先吐出ノズル行として設定し、
前記搬送機構は、前記優先吐出ノズルに、前記記録媒体における液体吐出対象領域の搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
記搬送機構は、前記優先吐出ノズル行が複数ある場合には、当該優先吐出ノズル行のうち、前記搬送方向に沿って最先頭に位置する前記優先吐出ノズル行に、前記記録媒体における液体吐出対象領域の前記搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、請求項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドを複数備えている場合、
前記搬送機構は、当該液体吐出ヘッドのそれぞれに含まれる前記優先吐出ノズル行のうち、前記搬送方向に沿って先頭に当たるものを最優先吐出ノズル行として設定し、
前記搬送機構は、前記最優先吐出ノズル行に、前記記録媒体における液体吐出対象領域の前記搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、
請求項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記優先吐出ノズル設定部は、前記最終吐出後の経過時間が前記ノズルの乾燥時間を超えているものを前記優先吐出ノズルとして設定する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記吐出制御部は、前記経過時間が前記乾燥時間を超えていなければ、前記優先吐出ノズルとしての吐出動作を実行しないように制御する、
請求項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
複数のノズルを備える液体吐出ヘッドから液体インクを搬送機構によって搬送された記録媒体に吐出して画像を形成する液体を吐出する方法であって、
前記ノズルの最終吐出後の吐出動作に係る経過時間を管理し、
前記最終吐出後の経過時間に基づいて、前記ノズルのいずれかを次の吐出動作を優先的に行なわせる優先吐出ノズルとして設定し、
前記優先吐出ノズルから前記液体インクを吐出させるとき、
前記搬送機構は、前記優先吐出ノズルが複数設定されたとき、前記記録媒体の搬送方向に沿った先頭に当たる前記優先吐出ノズルに、前記記録媒体における液体吐出対象領域の搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、
ことを特徴とする液体を吐出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置の一例として、記録媒体に液体インクを吐出して画像を形成する画像形成装置が知られている。当該画像形成装置は、液体インクを吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに対して記録媒体を移動させる媒体搬送機構を備える。液体吐出ヘッドは、液体インクを吐出するノズルを複数備えている。当該画像形成装置には、各色の液体インクの吐出に対応する液体吐出ヘッドの動作と記録媒体の搬送の制御の態様よって、様々な種類が知られている。
【0003】
例えば、液体吐出ヘッドを必要数だけ記録媒体の搬送方向と直交する方向に配列して位置を固定し、配列されている液体吐出ヘッドに対し記録媒体を移動させるラインヘッド型が知られている。複数の液体吐出ヘッドをキャリッジに搭載し、記録媒体の搬送方向と直交する方向にキャリッジを走査しながら、液体吐出ヘッドの走査位置に対して記録媒体を移動させるシリアルヘッド型も知られている。いずれも、記録媒体上の液体吐出対象領域(画像形成領域)に対するノズルの相対的な位置の変更を制御しながら、液体インクの吐出を制御する。これら制御によって記録媒体に画像が形成される。
【0004】
液体インクは周囲環境の状況によって乾燥して、ノズルやノズル周囲に付着した状態で固化することがある。ノズルやノズル周囲で液体インクが固化すると、吐出動作に悪影響を与えることになる。ひいては、画像形成においても悪影響を与えることになる。そこで、各ノズルの状態に応じて、画像形成動作などで吐出動作をしなかったノズルのみを画像形成動作とは関係なく吐出動作させることで乾燥を防止する技術が知られている。当該技術は空吐出動作と呼ばれる。
【0005】
また、特定のノズルに吐出動作が集中したときにも吐出動作に悪影響を与える。この弊害に対処するために、吐出動作時に可動する発熱素子の使用頻度の差を軽減することを目的として、液体記録ヘッドの走査方向に応じて、液体を吐出するノズルを変更する技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、所定の液体吐出動作(画像形成動作、印刷動作)の最中においても、乾燥防止のための空吐出動作やクリーニング動作を行う必要がある。このクリーニング動作を実行している間は、所定の画像形成動作、印刷動作などの所定の液体吐出動作を行うことはできない。したがって、空吐出動作やクリーニング動作を行うと、例えば画像形成動作の効率を低下させる、という課題がある。一方、空吐出動作などを行なわないと液体吐出動作の質が低下する、という課題もある。したがって、空吐出動作などを行なわずに、液体吐出ヘッドの乾燥を防止できることが望ましい。
【0007】
本発明は、所定の液体吐出動作における各ノズルの動作の状況に基づいて液体の吐出対象の位置を制御し、空吐出動作を省略しても液体吐出ヘッドの乾燥を防止できる液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、複数のノズルを備える液体吐出ヘッドから液体インクを搬送機構によって搬送された記録媒体に吐出して画像を形成する液体を吐出する装置であって、前記ノズル最終吐出後の経過時間を管理する経過時間管理部と、前記最終吐出後の経過時間に基づいて、前記ノズルのいずれかを次の吐出動作を優先的に行なわせる優先吐出ノズルとして設定する優先吐出ノズル設定部と、前記優先吐出ノズルから前記液体インクを吐出させる吐出制御部と、を備え、前記搬送機構は、前記優先吐出ノズルが複数設定されたとき、前記記録媒体の搬送方向に沿った先頭に当たる前記優先吐出ノズルに、前記記録媒体における液体吐出対象領域の搬送方向先端を対応させるように前記記録媒体を搬送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の液体吐出動作における各ノズルの動作の状況に基づいて液体の吐出対象の位置を制御し、空吐出動作を省略しても液体吐出ヘッドの乾燥を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図2】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図3】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図4】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図5】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図6】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第一実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図7】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第二実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図8】本発明に係る液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの第三実施形態に係る一連の動作態様の例を示す図。
図9】本発明に係る液体吐出方法の第一実施形態を説明するフローチャート。
図10】本発明に係る液体吐出方法の第二実施形態を説明するフローチャート。
図11】本発明に係る液体を吐出する装置の実施形態であるインクジェットプリンタの概略を示す構成図。
図12】上記インクジェットプリンタが備えるインクジェットヘッドモジュールの概要を示す図。
図13】上記インクジェットヘッドモジュールが備えるインクジェットヘッドの概要を示す図。
図14】上記液体を吐出する装置の制御部の構成を示すハードウェア構成図。
図15】上記液体を吐出する装置の制御部の構成を示す機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の要旨]
本発明は、液体を吐出する装置及び液体吐出方法に関し、所定の液体吐出動作(画像形成動作、印刷動作)の最中に、各ノズルが吐出動作を行った時からの経過時間(最終の吐出動作後の経過時間)に基づいて、次に吐出動作を行う優先度を設定する。例えば、連続的に行なわれる吐出動作において、複数のノズルのそれぞれの吐出動作の実行タイミングを「経過時間」に基づいて設定する。この場合の設定は、特定の固定された順番であれば次のタイミングで吐出動作をするノズルではないノズルを、「優先的に吐出動作をさせるノズル(優先吐出ノズル)」に設定して、吐出動作の制御をする。そして、優先吐出ノズルによる吐出動作でも所定の画像が形成されるように、優先吐出ノズルの位置に応じて、液体の吐出対象物(記録媒体)における液体吐出対象領域(例えば、画像形成領域)を移動させるように制御をする。
【0012】
このような制御を行うことにより、乾燥する前に、液体吐出動作によって液体インクを流動させてノズルの状態を維持する。なお、吐出動作を優先的に行なわせることにするノズルのことを、本明細書では「優先吐出ノズル」と称する。すなわち、本発明は、液体吐出ヘッドが備える各ノズルの未吐出動作時間に基づいて優先吐出ノズルを決定し、その優先吐出ノズルと液体吐出動作時における記録媒体の液体吐出対象領域との相対的な位置関係に基づいて、記録媒体の位置を制御することを要旨の一つとする。
【0013】
すなわち、本発明に係る液体を吐出する装置によれば、各ノズルの最終の吐出動作後の経過時間(最終吐出後の経過時間)が、吐出動作が行なわれていないノズルにおいて液体インクが乾燥する可能性がある時間に至るタイミングを判定し、この判定に基づいて優先吐出ノズルを特定し、その優先吐出ノズルからの吐出動作によって所定の画像が形成できるように記録媒体の搬送を制御する。これによって、画像形成動作そのものが乾燥防止のための動作を兼ねることができ、従来のような空吐出やクリーニング動作を行なわずに、ノズルの乾燥を防止することができ、かつ、画像形成動作の効率を向上できる。
【0014】
また、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体吐出方法によれば、空吐出動作による液体インクの消費を削減することもできる。
【0015】
[液体を吐出する装置の実施形態]
以下、本発明に係る液体を吐出する装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明に係る一実施形態としてのインクジェットプリンタ1の概要について図11等を用いて説明する。
【0016】
[インクジェットプリンタ1の全体構成]
図11は、液体を吐出する装置の一種であるオンデマンド方式のライン走査型インクジェット記録装置(以下、「インクジェットプリンタ1」とする。)の全体構成を示す概略図である。図11において、インクジェットプリンタ1は、装置本体100と、アンワインダー(記録媒体巻き出し部)である記録媒体供給部200と、リワインダー(記録媒体巻取り部)である記録媒体回収部300と、により構成される。インクジェットプリンタ1は、シート状媒体である記録媒体Pの搬送経路の直上に配置されるインクジェットヘッドモジュール110を備える。インクジェットプリンタ1における各動作の制御は、制御部150による。インクジェットヘッドモジュール110は、複数のインクジェットヘッド111を備えている。
【0017】
インクジェットプリンタ1に搭載されるインクジェットヘッドモジュール110は、記録媒体Pの搬送方向T(副走査方向Sc)と直交する方向である主走査方向MCには移動せず、直下を副走査方向に移動する記録媒体Pに対して所定のタイミングで液体インクを吐出する、いわゆる「ラインヘッド型」である。なお、インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッドモジュール110を、キャリッジ115にインクジェットヘッド111を搭載し、主走査方向MCに走査しながら、記録媒体Pの副走査方向Scのタイミングに合わせて液体インクを吐出して画像を形成する「シリアルヘッド型」でもよい。なお、本明細書においては、インクジェットヘッドモジュール110から液体インクが吐出されるタイミング、記録媒体Pの搬送タイミングに基づいて、後述するノズル113と液体吐出対象領域である画像形成領域Rの相対的な位置を管理しながら、所定のノズル113から液体インクを吐出させる一連の動作を「画像形成動作」に相当するものとしている。
【0018】
装置本体100は、記録媒体Pの幅方向(搬送方向Tと直交する方向)の位置決めを行う規制ガイド121と、記録媒体Pの張力を一定に保つ駆動ローラと従動ローラのインフィード部122と、を備える。なお、記録媒体Pの幅方向とは、記録媒体Pの搬送方向Tに直交する方向であって、後述するインクジェットヘッドモジュール110において画像が形成される面を構成する方向をいう。
【0019】
また、装置本体100は、記録媒体Pの張力に応じて上下に移動し、位置信号を出力するダンサローラ123と、EPC(Edze Position Contorol)124と、を備える。また、装置本体100は蛇行量検出器125を備える。
【0020】
また、装置本体100は、インクジェットヘッドモジュール110に対向する位置に設けられたプラテン126と、インクジェットヘッドモジュール110の維持・回復モジュール127と、記録媒体Pを乾燥させる乾燥モジュール128と、を備える。また、装置本体100は、記録媒体Pを設定された速度で駆動させる駆動ローラと従動ローラのアウトフィード部129と、記録媒体Pを装置外に排紙する駆動ローラと従動ローラからなるプラー130と、を備える。装置本体100が備える複数の構成による搬送部が記録媒体Pをインクジェットヘッドモジュール110の直下に搬送する。これら搬送部は、画像形成された記録媒体Pを記録媒体回収部300に搬送する。
【0021】
液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド111を複数搭載して構成されるインクジェットヘッドモジュール110は、ラインヘッド型の場合は全体として、記録媒体Pの幅寸法よりも長い長さ寸法を有している。なお、シリアルヘッド型であれば、主走査方向MCの走査範囲が記録媒体Pの幅寸法よりも長くなるように制御される。ラインヘッド型の場合、インクジェットヘッドモジュール110は、複数のインクジェットヘッド111を記録媒体Pの幅方向に複数入れるして長尺ヘッドが構成される。
【0022】
インクジェットヘッドモジュール110は、カラー印刷に対応し、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローからなる各色に個別に対応する複数のインクジェットヘッド111(111K、111C、111M、111Y)を備えている。図12は、ラインヘッド型の例示であるが、記録媒体Pの搬送方向Tの上流側から下流側に向かって順に、黒色インクに対応するインクジェットヘッド111K、シアン色インクに対応するインクジェットヘッド111C、マゼンタ色インクに対応するインクジェットヘッド111M、黄色インクに対応するインクジェットヘッド111Yが配列されている。なお、各色の液体インクに対応するインクジェットヘッド111の配列順は、この例に限定されるものではない。
【0023】
各インクジェットヘッド111は、短尺ヘッド112が複数搭載されて構成されている。インクジェットヘッド111を構成する短尺ヘッド112の各々は、液体インクの吐出口を構成するノズル113を備える。すなわち、各インクジェットヘッド111は、複数のノズル113を備えている。例えば、図13に例示するように、ノズル113は、短尺ヘッド112の長手方向において千鳥格子状に配列されている。なお、各短尺ヘッド112におけるノズル113の配列は、図13に例示するような二列に限定されるものではなく、一列(単列)のものであっても、三列以上の複数列でもよい。また、千鳥格子状の配列に限定されるものではなく、格子状の配列でもよい。
【0024】
図11に示すようにインクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド111が備えるノズル113の配列面(ノズル面)が、プラテン126の上空に配置されていて、プラテン126の上を搬送される記録媒体Pとの間に所定の隙間を形成するようになっている。
【0025】
インクジェットプリンタ1における画像形成動作は、画像形成対象を示すデータ(画像形成データ)に基づいて行なわれる。より詳しくは、記録媒体Pにおいて画像が形成される画像形成領域Rに対するノズル113の相対的な位置を決めるために、記録媒体Pの搬送をし、その搬送に応じて吐出動作の対象となるノズル113を決定する。決定されたノズル113から適量の液体インクが吐出されるように吐出動作が制御される。
【0026】
従来の画像形成動作の制御においては、各ノズル113における吐出動作の頻度は、形成しようとする画像によって異なる。言い換えると、各ノズル113があるタイミングで吐出動作を行った後に、次に吐出動作を行うまでに時間(経過時間)は画像データに応じて異なる。この点において、本実施形態にインクジェットプリンタ1は、各ノズル113の吐出動作の時点を記録して、各ノズル113における最終の吐出動作後の経過時間(最終吐出後の経過時間)を管理する。この経過時間を本明細書では「最終吐出後経過時間」と称する。また、各インクジェットヘッド111が備える各ノズル113のうち、最終吐出後経過時間が最も長くなっているノズル113を、次の吐出動作において優先的に動作させるようにする「優先吐出ノズル」として設定する。
【0027】
ここで、優先吐出ノズルは、画像データに応じて決まる吐出動作の順番とは異なり、経過時間に基づいて決まる。この場合、画像データに基づけば次のタイミングで吐出動作をするノズル113はないノズル113から液体インクが吐出されても、画像データに基づく吐出動作と同等の結果になるように記録媒体Pの位置を制御する。
【0028】
より詳細には、優先吐出ノズルの吐出動作によって吐出される液体インクによる画像形成が正常に行なわれるように、次の吐出動作において液体インクが吐出される記録媒体P上の仮想領域である液体吐出対象領域(画像形成領域R)と優先吐出ノズルとの相対的な位置関係に応じて、記録媒体Pの搬送を制御する。したがって、最終吐出後経過時間が長時間になったノズル113(乾燥する確率が高まっているノズル113)を優先吐出ノズルとして、次の吐出動作のタイミングで吐出動作を行っても画像が形成されるように記録媒体Pの搬送を制御する。これによって、画像形成動作を行うだけで、乾燥を防止する空吐出動作などを省くことができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る記録媒体Pには、一般的には用紙(普通紙)であるが、それ以外のコート紙、ラベル紙等の他、オーバヘッドプロジェクタシート、フィルム、可撓性を持つ薄板等も含まれるものとする。記録媒体Pに用いることができる素材は、インクジェットヘッドモジュール110から吐出されたインク滴が付着可能なものや、一時的に付着可能なもの、付着して固着するもの、および付着して浸透するものなども含まれる。例えば、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子(圧電部材)などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどである。特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれるので、記録媒体Pの材質は液体が付着可能なものであって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどであればよい。
【0030】
[制御部150のハードウェア構成]
次に、上記にて例示したような吐出動作及び搬送動作の制御を担う制御部150について説明する。図14は制御部150のハードウェア構成を示す図である。図14に示すように制御部150は、一般的な情報処理装置と同様の構成を含む。本実施形態に係るインクジェットプリンタ1が備える制御部150は、CPU(Central Processing Unit)151、RAM(Random Access Memory)152、ROM(Read Only Memory)153、HDD(Hard Disk Drive)154及びI/F155がバス159を介して接続されている。また、I/F155には表示部156、操作部157及び専用デバイス158が接続されている。
【0031】
CPU151は演算手段であり、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する。RAM152は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU151が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM153は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD154は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や、媒体引渡制御プログラムや後処理制御プログラムなどの各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等が格納される。
【0032】
I/F155は、バス159と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。表示部156は、利用者がインクジェットプリンタ1の状態や設定している動作モードを確認するための視覚的ユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。操作部157は、利用者がインクジェットプリンタ1の動作モードの設定を入力するためのユーザインタフェースである。
【0033】
専用デバイス158は、インクジェットプリンタ1において専用の動作をする機能を実現するためのハードウェアであって、例えばインクジェットヘッドモジュール110の画像形成処理機能を実現する構成を含む。また、専用デバイス158には、インクジェットヘッドモジュール110が備えるインクジェットヘッド111により構成される液体吐出部や、記録媒体供給部200や記録媒体回収部300による構成される搬送機構が含まれている。
【0034】
制御部150は、専用デバイス158に含まれる各ハードウェア構成を用いて、ROM153やHDD154などに格納されたプログラムをRAM152に読み出してCPU151によって実行されることで、所定の機能を実現するソフトウェア制御部を構成する。
【0035】
「制御部150による機能ブロック」
図15は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の機能ブロック図である。制御部150において実行される制御プログラムにより実現される搬送吐出制御部10は、吐出制御部11と、経過時間管理部12と、優先吐出ノズル設定部13と、搬送制御部14と、を有する。
【0036】
吐出制御部11は、後述する優先吐出ノズル設定部13において優先吐出ノズルとして設定されたノズル113が、画像形成動作に係る次の吐出動作で液体インクを吐出するように、各ノズル113の吐出動作を制御する。また、優先吐出ノズルが設定されないときは、通常の吐出制御によって該当するノズル113の吐出動作を制御する。なお、インクジェットヘッドモジュール110がシリアルヘッド型として構成される場合においては、吐出制御部11がインクジェットヘッド111の主走査を制御する。
【0037】
経過時間管理部12は、ノズル113のそれぞれにおいて、吐出動作が行なわれた後に次の吐出動作が行なわれるまでの経過時間である最終吐出後の経過時間(吐出後経過時間)を計測してRAM152などの記憶領域に格納する。したがって、経過時間管理部12は、複数のノズル113が個別に有する吐出後経過時間を個別に記録して管理する。また、経過時間管理部12は、インクジェットプリンタ1に対する画像形成動作の実行指示の後において、各ノズル113に対する最初の吐出動作が行なわれるまでの経過時間である未吐出経過時間も計測してRAM152などの記憶領域に格納する。
【0038】
優先吐出ノズル設定部13は、各インクジェットヘッド111が備えるノズル113の個々の未吐出動作時間のうち、最も過去に吐出動作を行ったノズル113(すなわち、未吐出動作時間が最も長いノズル113)を優先吐出ノズルの候補として特定する。また、優先吐出ノズル設定部13は、優先吐出ノズルの候補のうち、未吐出動作時間が予め規定される閾値時間を超えるノズル113の有無を判定し、閾値時間を超える未吐出経過時間となっているノズル113を優先吐出ノズルとして設定する。なお、優先吐出ノズル設定部13は、閾値時間を超える未吐出経過時間となっているノズル113が無い場合は、優先吐出ノズルの候補のうち、記録媒体Pの搬送方向Tに沿った先頭に当たるノズル113を優先吐出ノズルとして設定する。
【0039】
優先吐出ノズル設定部13において用いられる閾値時間は、液体インクが乾燥する可能性が高い時間、又は、確実に乾燥する時間に相当する「乾燥時間」である。なお、乾燥時間は、液体インクの性質・種類や、インクジェットヘッド111の周囲の温度や湿度によって異なる。したがって、インクジェットプリンタ1が液体インクの性質や種類を設定する機能を備えているならば、優先吐出ノズル設定部13は、その設定に応じて複数の乾燥時間から適する乾燥時間を用いて上記の判定処理を実行する。また、インクジェットプリンタ1がインクジェットヘッド111の周囲の温度や湿度を計測する機能を備えているならば、優先吐出ノズル設定部13は同様に設定に基づいて選択される乾燥時間に基づく判定処理を実行する。
【0040】
搬送制御部14は、優先吐出ノズルとして設定されたノズル113と、次の吐出動作における液体インクの吐出対象領域である画像形成領域Rとの相対的な位置関係に基づいて記録媒体Pを搬送するように搬送機構の動作を制御する。
【0041】
[画像形成方法の第一実施形態]
次に、インクジェットプリンタ1において実行される画像形成動作の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1から図6は、画像形成方法の一実施形態における一連の制御の様子を例示する図である。
【0042】
本実施形態では、インクジェットヘッド111が備えるノズル113が単列で構成されているものとする。また、説明の便宜上、一のインクジェットヘッド111が備えるノズル113は、10個が単列配置になっているものを用いる。したがって、本実施形態に係るノズル113は、例えば記録媒体Pの搬送方向Tに沿っていて、搬送方向Tの上流側のノズル113から順に[n1]、[n2]、・・・、[n10]として区別されるものとする。以下の説明において、ノズル113(n1)と表示した場合、図1に示すインクジェットヘッド111における搬送方向T最上流に相当するノズル113を指すものとなる。なお、インクジェットヘッド111は、[n1]、[n2]、[n3]・・・[n10]の順に液体インクを吐出することで、記録媒体Pに画像を形成していくものとする。
【0043】
また、本実施形態に係るインクジェットヘッドモジュール110は、いわゆるシリアルヘッド型であって、インクジェットヘッド111がキャリッジ115に搭載されて主走査方向MCに移動しながら液体インクを吐出することで画像形成動作を行う。なお、以下の説明において、また、記録媒体Pの内側に描かれている点線は、画像形成動作において液体インクがこれから吐出される液体吐出対象領域を示している。この領域のことを「画像形成領域R」と表記する。したがって、画像形成動作において記録媒体Pに液体インクを吐出する領域として、既に液体インクが吐出され終わっている領域は画像形成領域Rには相当しないものとする。
【0044】
図1に例示するように、搬送制御部14によって、液体吐出開始位置まで記録媒体Pが搬送され、画像形成領域Rの搬送方向先端に対してノズル113のうちの搬送方向先端に位置するノズル113(n10)が至った状態を最初の画像形成開始位置とする。
【0045】
[ノズル113の状態の例示]
なお、以下の説明において、各ノズル113の状態の区別について説明する。各図において、ノズル113を示す円が黒色の塗りつぶされているものは、インクジェットヘッド111が画像形成動作に係る吐出動作を行う直近のタイミング(次の吐出タイミング)において、吐出動作を実行可能な状態にあるものを示している。
【0046】
すなわち、黒色塗りつぶしの円に該当するノズル113は、インクジェットヘッド111が備えるノズル113の中では、未吐出動作時間が比較的短いものであって、「乾燥時間」を経過していることは無いノズル113を例示している。
【0047】
また、白色の塗りつぶしの円に該当するノズル113は、次のタイミングでは吐出動作を実行不能なものを例示している。すなわち、白色塗りつぶし円に該当するノズル113は、インクジェットヘッド111が備えるノズル113の中では、未吐出動作時間が比較的長いものであるが、次の吐出動作に係る優先吐出ノズルとしては設定されず、乾燥時間を経過していないノズル113を例示している。
【0048】
また、斜線パターンの塗りつぶしの円に相当するノズル113は、インクジェットヘッド111の中では、未吐出動作時間が経ち始めているものを例示している。すなわち、斜線パターン塗りつぶし円に該当するノズル113は、他のノズル113と比較すると吐出動作を実行不能状態(白塗りつぶし円)に近いものを例示している。
【0049】
図1に例示した状態から、画像形成動作に係る1回目の吐出動作が実行された状態を図2に例示する。ここで例示する吐出動作の回数は、キャリッジ115の主走査を行う回数と同数となるものとする。したがって1回目の吐出動作が終わると、キャリッジ115は、画像形成領域Rの幅方向の反対側端部に移動した状態になっている。そして、1回目の画像形成動作において、キャリッジ115が主走査方向MCoへ移動しながら画像形成領域Rにノズル113(n1、n2、n3、n9、n10)から液体インクが吐出される。
【0050】
図2に例示した状態から2回目の画像形成動作が実行される前の状態を図3に例示する。次の画像形成動作で画像形成領域R内に液体インクを吐出するには、最終吐出後経過時間が最も長いノズル113(先の画像形成動作では吐出動作をしなかったノズル113)が、2回目の画像形成動作で液体インクを吐出して画像を形成できる位置に来るようにする。すなわち、すでに液体インクが吐出された部分の画像形成領域R内における搬送方向先端に、吐出動作を行うべく設定されたノズル113が相当するように、搬送制御部14が記録媒体Pを搬送方向Tに搬送させる。このように制御することで、記録媒体Pの搬送量を多くして、画像形成速度を少しでも速くさせることができる。
【0051】
図3の例では、最終吐出後経過時間が最も長いノズル113の中で、画像形成領域Rに合致するノズル113(n7、n8)を優先吐出ノズルとして設定する。そして、優先吐出ノズル(n7、n8)の中で、画像形成領域Rにおける搬送方向先端に最も近い(ノズル113の中で搬送方向Tの先端となる)ノズル113(n8)が、画像形成領域Rの搬送方向先端に合うように、記録媒体Pを搬送させる。
【0052】
図3に例示した状態から2回目の画像形成動作が実行された状態を図4に例示する。ここではキャリッジ115が主走査方向MCrへ移動しながら画像形成領域Rに対応したノズル113(n7、n8)から液体インクが吐出されて記録媒体Pに画像が形成されていく。なお、1回目の画像形成動作が実行されたときの領域と2回目の画像形成動作が行なわれた領域を便宜上区別するために、それぞれの領域を示す図形パターンを異なるものにしている。この図形パターンの違いは、本実施形態の要旨には関係しない。
【0053】
図4に例示した状態から3回目の画像形成動作が実行される前の状態を図5に例示する。ここまで、ノズル113(n4、n5、n6)は一度も吐出動作を実行していないので、113(n4、n5、n6)が3回目の画像形成動作で液体インクを吐出して画像を形成できる位置に来るようにする。図5の例では、ノズル113(n4、n5、n6)を優先吐出ノズルとして設定する。そして、優先吐出ノズル(n4、n5、n6)の中で、画像形成領域Rにおける搬送方向先端に最も近いノズル113(n6)が、画像形成領域Rの搬送方向先端に合うように、記録媒体Pを搬送させる。
【0054】
図5に例示した状態から3回目の画像形成動作が実行された状態を図6に例示する。ここではキャリッジ115が主走査方向MCoへ移動しながら画像形成領域Rに対応したノズル113(n4、n5、n6)から液体インクが吐出されて記録媒体Pに画像が形成されていく。
【0055】
なお、3回目の画像形成動作が実行されると、図2に例示した1回目の画像形成動作で液体吐出動作を実行したノズル113(n1、n2、n3、n9、n10)が最終吐出後時間の最も長いノズル113に該当する状態になる。そこで、次(第4回目)の画像形成動作の歳には、記録媒体Pの搬送方向Tに沿って最も先頭側に位置することなるノズル113(n10)を必須とし、ノズル113(n1、n2、n3、n9)の中から画像形成領域Rに合致するノズル113を、優先吐出ノズルとして設定する。
【0056】
図1から図6を用いて説明した状態を繰り返しながら、インクジェットプリンタ1は画像形成動作を実行する。これによって、複数あるノズル113のうち、最終吐出後時間が最も長くなっているノズル113から優先的に画像形成動作に用いる(液体吐出動作をさせる)ことで、ノズル113の乾燥を防ぐこともできる。
【0057】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、原則的に、すべてのノズル113において満遍なく吐出動作が行なわれるような画像形成動作の場合、最終の吐出動作からさほど時間が経過していなくても、吐出後経過時間が最も長いノズル113が優先吐出ノズルとして設定される。この場合、乾燥防止の関係からは、優先吐出ノズルに対する制御が不要であっても、上記の制御が実行されることになる。すなわち、単に吐出後経過時間に基づいて優先吐出ノズルを設定するだけでは、不必要な制御処理や、搬送動作を頻繁に発生させる可能性もある。
【0058】
そこで、インクジェットプリンタ1においては、優先吐出ノズル設定部13において、吐出後経過時間が長くなっているノズル113のうち、吐出後経過時間が乾燥時間を超えているもののみを優先吐出ノズルと設定してもよい。これによって、乾燥時間が経過していなければ、優先吐出ノズルに係る制御を省略することができ、効率的な画像形成動作をしつつ、空吐出などのメンテナンス動作を省略することもできる。
【0059】
なお、乾燥時間は、気温や湿度、液体インクの性質や種類などによって異なる。また、乾燥時間を経過しても吐出動作を行わないノズル113を放置すると、乾燥による吐出不良が生ずる可能性がある。そこで、例えば、ノズル113の周囲の温度や湿度を計測する温湿度計測部を設けて、優先吐出ノズル設定部13においては、温湿度の違いによって異なる乾燥時間を予め記憶しておくようにし、これに基づいて優先吐出ノズルの設定に係る判定を行うようにしてもよい。この場合、より乾燥しやすい条件となる温湿度に対応する乾燥時間は、通常のものよりも短く設定する。
【0060】
また、インクジェットプリンタ1で使用する液体インクの性質や種類の区別に基づいて、それぞれに対応する乾燥時間を予め記憶しておき、これに基づいて優先吐出ノズルの設定に係る判定を行うようにしてもよい。この場合、より乾燥しやすい条件となる温湿度に対応する乾燥時間は、通常のものよりも短く設定する。なお、液体インクの性質や種類の設定は、操作部157が提供するユーザインタフェースを介して行えるようにすればよい。
【0061】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、従来のように、一定の時間あるいは一定の走査数において必ず吐出動作を実行するものに比べて、乾燥しだす可能性が高まっているノズル113に対して優先的に吐出動作を実行させるように画像形成処理を制御するので、画像形成動作の実行速度を低下させることを避けることと、液体インクの無駄な消費量の低下を両立させることができる。
【0062】
[画像形成方法の第二実施形態]
次に、インクジェットプリンタ1において実行される画像形成動作の別の実施形態について、図7を参照しながら説明する。図7は、例えば、四色の異なる色の液体インクのそれぞれに対応するインクジェットヘッド111が、記録媒体Pの搬送方向Tと直交する副走査方向に配列されているものを例示している。本実施形態では、キャリッジ115に黒色インクに対応するインクジェットヘッド111K、シアン色インクに対応するインクジェットヘッド111C、マゼンタ色インクに対応するインクジェットヘッド111M、黄色インクに対応するインクジェットヘッド111Yが搭載されているものとする。
【0063】
この場合、ノズル113が格子配列状になり、すでに説明した第一実施形態のように搬送方向Tに沿った列方向の配列をインクジェットヘッド111の各々が有している。本実施形態において、複数のノズル113を区別するときにインクジェットヘッド111の並び方向において同じ位置にある複数のノズル113の行(ノズル行)をそれぞれまとめて「L1」、「L2」、「L3」、・・・、「L10」と表記する。
【0064】
本実施形態において、複数のノズル列がある場合は、各ノズル行に含まれるノズル113の中で、最終吐出後時間が最も長いノズル113の数が異なる。したがって、画像形成動作において、最終吐出後時間が最も長いノズル113を多く含んでいるノズル行を優先的に吐出動作をさせるように、記録媒体Pを搬送する。なお、優先的に吐出動作をさせるノズル行を優先吐出ノズル行とする。
【0065】
図7に例示したものでは、ノズル113(L7)が、最終吐出後経過時間が最も長いものを一番多く含んでいるものとなる。この場合、ノズル113(L7)の優先度が最も高いノズル行となる。なお、次に優先度が高いもの、ノズル113(L2)である。
【0066】
仮に、優先度としては同等となる、最も高い優先度のノズル行が複数あった場合、その中でも搬送方向Tに沿って最も先頭となるノズル行を優先して使用する最優先吐出ノズル行とする。そして、最優先吐出ノズル行の位置に合わせて記録媒体Pを搬送する。これによって、記録媒体Pの搬送量を多くすることができ、画像形成速度全体を速くすることができる。
【0067】
なお、形成される画像の色合い(各液体インクに係る吐出頻度と相関する)によっては、吐出頻度が少ないノズル113が含まれることがある。また、画像形成動作を開始後、一度も吐出動作が実行されないノズル113(吐出ノズル)が出現することも想定される。特に未吐出ノズルについては、乾燥が進行しやすい。そこで、画像形成動作が開始されてから最初に各ノズル113が吐出動作を実行するまでの時間を「未吐出経過時間」として、経過時間管理部12が管理する。そして、吐出頻度が少ないノズル113や未吐出経過時間が閾値を超えるノズル113に対して、画像形成動作中に一定の時間を経過した段階、または画像形成動作後に空吐出動作を実行させるように、搬送吐出制御部10がインクジェットヘッドモジュール110を制御する。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、記録媒体Pの搬送方向Tに沿って同等の位置に当たるノズル113が複数あるときでも、適切に優先吐出ノズル(優先吐出ノズル行)を設定することができる。そして、優先吐出ノズル(優先吐出ノズル行)に対応するように記録媒体Pの搬送制御を行いながら、ノズル113への吐出動作を制御することで、空吐出動作などのメンテナンス動作を省略してもノズル113の乾燥を防止することができる。
【0069】
[画像形成方法の第三実施形態]
次に、インクジェットプリンタ1において実行されるさらに別の画像形成動作の実施形態について、図8を参照しながら説明する。
【0070】
図8は、キャリッジ115に、第二実施形態で示したような各色の液体インクに対応するインクジェットヘッド111が複数搭載されている構成を例示している。図8では、二つのインクジェットヘッド111がキャリッジ115に搭載されているものを例示している。説明の便宜上、一方を第一インクジェットヘッド111aとし、他方を第二インクジェットヘッド111bとする。いずれにも、同じノズル行の表示を付している。
【0071】
本実施形態において、例えば、第一インクジェットヘッド111aと、第二インクジェットヘッド111bに、同じ優先度となるノズル行(Ll7)が存在する場合、搬送方向Tに沿って最も先頭になるインクジェットヘッド111である第一インクジェットヘッド111aの方のノズル行(Ll7)を、より優先度の高い最優先吐出ノズル行とし、最優先吐出ノズル行の位置に対応するように記録媒体Pを搬送させる。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、記録媒体Pの搬送方向Tに沿って同等の位置に当たるノズル113が複数あり、また、同等の優先後をなるノズル113を含むノズル行が複数あるときでも、適切に優先吐出ノズル(優先吐出ノズル行)を設定することができる。そして、優先吐出ノズル(優先吐出ノズル行)に対応するように記録媒体Pの搬送制御を行いながら、ノズル113への吐出動作を制御することで、空吐出動作などのメンテナンス動作を省略してもノズル113の乾燥を防止することができる。
【0073】
[優先吐出ノズル設定処理の第一例]
図9は、第一実施形態に係る画像制御方法を実行するときに搬送吐出制御部10において実行される優先吐出ノズル設定処理の流れを示すフローチャートである。優先吐出ノズル設定処理は、画像形成処理が実行される単位(印刷ジョブ単位)で実行されるものとする。したがって、後述する「吐出後経過時間」は、画像形成処理の単位が異なれば、一旦リセットされるものとする。
【0074】
なお、以下の説明において、画像形成処理が実行される単位をまたがって吐出後経過時間を管理しても矛盾が無い処理内容においては、この限りではない。
【0075】
まず、経過時間管理部12が記録しているノズル113の各々の吐出後経過時間を優先吐出ノズル設定部13が参照し、吐出後経過時間が長くなっているノズル113を抽出する(S901)。ここで「吐出後経過時間が長くなっているノズル113」とは、各ノズル113の吐出後経過時間が最も長いノズル113でもよいし、予め規定する閾値を超えているノズル113を対応させてもよい。なお、吐出後経過時間とは、画像形成動作が開始されてから少なくとも一度は液体インクを吐出する吐出動作を実行したノズル113に対して適用される管理指標である。画像形成動作が開始されてから一度も吐出動作をしていないノズル113については、吐出後経過時間ではなく、未吐出経過時間を管理指標として区別する。
【0076】
次に、S901において複数のノズル113が抽出されたか否かを優先吐出ノズル設定部13が判定する(S902)。複数のノズル113が抽出されていれば(S902:YES)、搬送方向Tに沿って最も先頭に当たるノズル113を優先吐出ノズル設定部13が優先吐出ノズルの候補として特定する(S903)。S901において抽出されたノズル113が一つであれば(S902:NO)、そのノズル113を優先吐出ノズル設定部13が優先吐出ノズルの候補として特定する(S904)。
【0077】
続いて、優先吐出ノズル設定部13が、優先吐出ノズルの候補における吐出後経過時間が予め設定されている乾燥時間を超えているか否かの判定をする(S905)。S905において乾燥時間を超えていれば(S905:YES)、S903又はS904において特定されたノズル113を優先吐出ノズルとして設定する(S906)。
【0078】
続いて、搬送制御部14が、優先吐出ノズルの位置に、次の画像形成領域Rの搬送方向先端が相当するように、記録媒体Pを搬送する(S907)。
【0079】
続いて、吐出制御部11が、優先吐出ノズルの吐出動作を制御し画像形成動作を実行する(S908)。
【0080】
なお、S905において乾燥時間を超えていなければ、S906、S907、s908は実行されずに、優先吐出ノズル設定処理を終了する(S905:NO)。
【0081】
[優先吐出ノズル設定処理の第二例]
図10は、第二実施形態に係る画像制御方法を実行するときに搬送吐出制御部10において実行される優先吐出ノズル設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
まず、経過時間管理部12が記録しているノズル113の各々の吐出後経過時間を優先吐出ノズル設定部13が参照し、吐出後経過時間が長くなっているノズル113を抽出する(S1001)。
【0083】
次に、S1001において抽出されたノズル113を最も多く含むノズル行を特定する(S1002)。
【0084】
S1002において特定されたノズル業が複数あるか否かを優先吐出ノズル設定部13が判定する(S1003)。複数のノズル行が特定されていれば(S1003:YES)、搬送方向Tに沿って最も先頭に当たるノズル行を優先吐出ノズル設定部13が優先吐出ノズルを含むノズル行(優先吐出ノズル行)の候補として特定する(S1004)。S1002において特定されたノズル行が一つであれば(S1003:NO)、そのノズル行を優先吐出ノズル設定部13が優先吐出ノズル行の候補として特定する(S1005)。
【0085】
なお、インクジェットヘッド111を複数備える構成においては、上記のS1001からS1005までの処理が、各インクジェットヘッド111に対して実行され、その中で、優先吐出ノズル行の候補が特定されるものとする。
【0086】
続いて、優先吐出ノズル設定部13が、優先吐出ノズル行の候補として特定したノズル行に含まれるノズル113のうち、一つでも乾燥時間を超えているものがあるか否かの判定をする(S1006)。S1006において乾燥時間を超えているノズル113が一つでもあれば(S1006:YES)、そのノズル113が未吐出ノズルであるか否かの判定をする(S1007)。
【0087】
S1007において、画像形成動作が実行されてから一度も吐出動作を実行していない未吐出ノズルであると判定されれば(S1007:YES)、該当するノズル113に対して、吐出制御部11が吐出動作を実行させる(S1008)。
【0088】
S1007の判定において、未吐出ノズルでなければ(S1007:NO)、S1004又はS1005において特定されたノズル行のうち、搬送方向Tにおいて最先頭に位置するノズル行を優先吐出ノズル行として設定する(S1009)。
【0089】
続いて、搬送制御部14が、優先吐出ノズル行に対応する位置に、次の画像形成領域Rの搬送方向先端が相当するように、記録媒体Pを搬送する(S1010)。
【0090】
続いて、吐出制御部11が、優先吐出ノズル行の吐出動作を制御し画像形成動作を実行する(S1011)。
【0091】
なお、S1006において乾燥時間を超えていなければ、S1007からS1011の処理は実行されることなく、優先吐出ノズル設定処理を終了する(S1006:NO)。
【0092】
なお、第三実施形態のように、複数のインクジェットヘッド111を有する場合における優先吐出ノズル(優先吐出ノズル行)の設定は、図10に例示した流れと同様である。
【0093】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 :インクジェットプリンタ
10 :搬送吐出制御部
11 :吐出制御部
12 :経過時間管理部
13 :優先吐出ノズル設定部
14 :搬送制御部
100 :装置本体
110 :インクジェットヘッドモジュール
111 :インクジェットヘッド
111a :第一インクジェットヘッド
111b :第二インクジェットヘッド
112 :短尺ヘッド
113 :ノズル
115 :キャリッジ
121 :規制ガイド
122 :インフィード部
123 :ダンサローラ
125 :蛇行量検出器
126 :プラテン
127 :回復モジュール
128 :乾燥モジュール
129 :アウトフィード部
130 :プラー
150 :制御部
151 :CPU
152 :RAM
153 :ROM
154 :HDD
155 :I/F
156 :表示部
157 :操作部
158 :専用デバイス
159 :バス
200 :記録媒体供給部
300 :記録媒体回収部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】特開2002-011856号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15