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特許7532836インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置
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  • 特許-インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240806BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240806BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240806BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240806BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20240806BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240806BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240806BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240806BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240806BHJP
【FI】
C09D11/30
C08F2/50
C08F290/06
C08F2/44 Z
C09D11/38
B29C64/112
B29C64/314
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
C08F2/44 A
C09D11/101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020051682
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147581
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典晃
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柴 圭将
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144582(JP,A)
【文献】特開2019-189711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245633(US,A1)
【文献】特開2018-177924(JP,A)
【文献】特開2019-157062(JP,A)
【文献】特開2017-160405(JP,A)
【文献】特開2017-171702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
B29C
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質固体成分及びラジカル重合性モノマーを含有し、
色材を含まず、
前記硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値(A)と、組成物における液体成分のHSP値(B)との差(HSP値(B)-HSP値(A))が、0.5(cal/cm0.5以上3.0(cal/cm0.5以下であり、
前記ラジカル重合性モノマーのうち、ラジカル重合性単官能モノマーが、組成物全量に対して30.0質量%以上57.0質量%以下であることを特徴とするインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記硬質固体成分がシランカップリング剤で表面改質されたシリカである、請求項1に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が不飽和二重結合を有する、請求項2に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
25℃における粘度が200mPa・s以下である、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
前記硬質固体成分の含有量が、前記組成物全量の体積に対して0.5体積%以上40.0体積%以下である、請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
前記硬質固体成分の含有量が、前記組成物全量の体積に対して1.0体積%以上20.0体積%以下である、請求項5に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
前記硬質固体成分の体積平均粒径が5nm以上1000nm以下である、請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
前記硬質固体成分の体積平均粒径が120nm以上250nm以下である、請求項7に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
前記硬質固体成分の体積平均粒径の0.7倍以下又は1.4倍以上の粒径を有する固体成分の存在比率が10%以上である、請求項1から8のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
前記硬質固体成分の体積平均粒径の0.7倍以下又は1.4倍以上の粒径を有する固体成分の存在比率が20%以上である、請求項9に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項11】
前記ラジカル重合性モノマーが、アクリル系モノマーを含有する、請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項12】
前記ラジカル重合性モノマーの含有量が、組成物全量に対して50.0質量%以上95.0質量%以下である、請求項1から11のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項13】
更に、重合開始剤を含有し、
前記重合開始剤の含有量が、組成物全量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である、請求項1から12のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項14】
更に、ラジカル重合性オリゴマーを含有する、請求項1から13のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項15】
前記ラジカル重合性オリゴマーがウレタン基を有する、請求項14に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項16】
前記ラジカル重合性オリゴマーの含有量が、組成物全量に対して1.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項14から15のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、
前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有する
ことを特徴とする立体造形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元立体物を造形する技術として、付加製造(AM:Additive Manufacturing)と呼ばれる技術が知られている。この技術は、積層方向に薄く切った断面形状を計算し、その形状に従って各層を形成して積層することにより立体物を造形する技術である。
近年、付加製造技術の中でも、インクジェットヘッドを用いて活性エネルギー線硬化型組成物を必要箇所に配置し、配置された活性エネルギー線硬化型組成物を光照射装置等で硬化させることにより三次元の立体物を造形するマテリアルジェッティング方式が注目されている。
【0003】
マテリアルジェッティング方式は主に試作目的で利用されており、硬化物には、強度、延性、耐衝撃性、耐熱性等の各種特性が要求される。これら特性を向上させる方法として、固体成分を活性エネルギー線硬化型組成物に添加する方法が知られている。
【0004】
例えば、硬質固体成分を含有する光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物を用いて立体造形物を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この開示によれば、硬質固体成分を含むことにより、耐熱性向上、耐熱変形性低減、機械的強度などの力学的特性向上、寸法精度向上、などの効果が得られることが開示されている。
また、例えば、無機粒子をラジカル重合性単官能モノマーと組み合わせることにより、延伸性と十分な硬度を両立した硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化型組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インクジェット吐出することができ、強度と耐衝撃性に優れる硬化物を得ることができるインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、硬質固体成分及びラジカル重合性モノマーを含有し、色材を含まず、前記硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値(A)と、組成物における液体成分のHSP値(B)との差(HSP値(B)-HSP値(A))が、0.5(cal/cm0.5以上3.0(cal/cm0.5以下であり、前記ラジカル重合性モノマーのうち、ラジカル重合性単官能モノマーが、組成物全量に対して30.0質量%以上57.0質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるとインクジェット吐出することができ、強度と耐衝撃性に優れる硬化物を得ることができるインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置の一例 を示す概略図である。
図2図2は、実施例における弾性率及び引張強度の測定用サンプルの作製方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物)
本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、硬質固体成分及びラジカル重合性モノマーを含有し、前記硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値(A)と、組成物における液体成分のHSP値(B)との差(HSP値(B)-HSP値(A))が、0.5(cal/cm0.5以上3.0(cal/cm0.5以下であり、更に必要に応じて重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、色材、分散剤、及びその他成分等を含んでもよい。
また、「インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物」は、インクジェット方式で吐出され、活性エネルギー線を照射されることで硬化して硬化物を形成する組成物である。
なお、本発明において「硬化する」とは、ポリマーが形成されることを表すが、固化する場合に限られず、増粘する場合や、固化と増粘がともに生じる場合なども含まれる。
また、「固化物(硬化物)」とは、ポリマーを表すが、固体に限られず、増粘物や、固体と増粘物の混在物なども含まれる。
【0010】
本発明者らは、従来の技術における以下の問題点について検討したところ、以下の知見を得た。
従来技術では、活性エネルギー線硬化型組成物に硬質固体成分を含有させると、粘度が上昇し、インクジェット方式で吐出することが困難になる場合があるという問題がある。
【0011】
本発明者らは、硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値(A)と、組成物における液体成分のHSP値(B)との差(HSP値(B)-HSP値(A))が、所定の範囲内であることにより、活性エネルギー線硬化型組成物に硬質固体成分を含有させた場合であっても粘度上昇が抑制され、インクジェット方式で好適に吐出することができ、形成される硬化物の弾性率、引張強度、及び耐衝撃性が高い硬化物が得られることを見出した。
【0012】
<硬質固体成分>
前記硬質固体成分は、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の弾性率、強度、及び耐衝撃性等を向上させることができる
ここで、「硬質」とは、外部からの応力により、形状が変化し難い性質を表す。
硬質であるか否かは、当業者であれば当該技術分野において知られた判断基準に基づいて判断することができ、かかる判断基準としては例えば、ビッカース硬度、弾性率などが挙げられる。
好ましい一態様において、硬質の固体材料の弾性率は4GPa以上であり、より好ましくは5GPa以上である。
なお、弾性率は、例えば、JIS K 7161及び、JIS K 7171、ISO 14577などに従って求めることができる。
【0013】
前記硬質固体成分としては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、アラミド繊維、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、各種樹脂などが挙げられる。
「固体成分」とは、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中において固体状態を維持可能な成分を表す。
また、固体成分は、常温常圧環境下のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中において粒子の形態であることが好ましい。
更に、固体成分は、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中において分散されている状態であることが好ましい。
【0014】
前記硬質固体成分の含有量は、前記組成物全量の体積に対して0.5体積%以上40.0体積%以下であることが好ましく、1.0体積%以上20.0体積%以下であることがより好ましい。前記硬質固体成分の含有量が前記組成物全量の体積に対して0.5%以上であることにより、前記硬質固体成分の特性を造形物により反映することができる。また、1.0%以上であると、固体成分の特性を造形物に更に反映することができる。また、前記硬質固体成分の含有量が前記組成物全量の体積に対して40.0%以下であることによりマトリックス樹脂における結合力の低下を抑制することができ、結果として硬化物が脆くなることを抑制することができる。また、前記硬質固体成分の含有量が前記組成物全量の体積に対して20.0%以下であると、硬化物が脆くなることを更に抑制できる。
更には、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の粘度が低下するため、インクジェット方式による吐出性が向上する。
【0015】
なお、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中における固体成分の含有量が一定である場合、用いる固体成分の弾性率が高くなるほど硬化物の弾性率が向上する。言い換えると、弾性率の高い固体成分を用いることで、より少量の添加量で目的の弾性率を有する硬化物を得ることができる。ここで、インクジェット方式で吐出するために用いる組成物は、一般に低粘度であることが好ましいが、固体成分の含有量を増やすほど粘度が上昇することが知られている。そのため、本発明のようにインクジェット用に用いる場合は、弾性率の高い固体成分を用いることで弾性率を向上させつつ、固体成分の含有量を低減させることが好ましい。
【0016】
前記硬質固体成分の形状としては特に制限は無く、球状でも棒状でも不定形のものでもよく、中空粒子、多孔質粒子、コア-シェル構造型粒子などであっても構わない。
【0017】
前記硬質固体成分の体積平均粒径は、5nm以上1000nm以下が好ましく、120nm以上300nm以下がより好ましい。
前記硬質固体成分の体積平均粒径が5nm以上であれば、前記硬質固体成分の特性を造形物に反映することができる。前記硬質固体成分の体積平均粒径が120nm以上であれば、硬質固体成分/マトリックス樹脂界面の剥離による衝撃吸収を期待できる。即ち、前記硬質固体成分の体積平均粒径が120nm以上であれば、加えられた衝撃エネルギーの一部が界面剥離に消費されるため、クラック生成が起こり難くなる。
なお、マトリックス樹脂とは、組成物を硬化させた硬化物中における硬質固体成分以外の周囲の硬化した樹脂を意味する。
また、1000nm以下であれば、インクジェット方式による吐出安定性を向上させることができる。さらに、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中における固体成分の分散安定性を考慮すると、300nm以下であることが好ましい。
【0018】
硬化物の耐衝撃性を考慮すると、粒度分布はブロードであることが好ましく、前記硬質固体成分の体積平均粒径の0.7倍以下又は1.4倍以上の粒径を有する固体成分の存在比率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
詳細な理由は不明であるが、粒度分布がブロードな方が、硬質固体成分/マトリックス樹脂界面の剥離による衝撃吸収量が大きくなると推察している。
体積平均粒径及び粒度分布は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0019】
-表面改質-
前記硬質固体成分のうち、ガラス、シリカ、アルミナなどの表面に水酸基を有する硬質固体成分は、シランカップリング剤を用いて表面改質されたものを使用することが好ましい。
前記シランカップリング剤としては特に制限は無く、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、スチリル p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、などが挙げられる。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランのように、不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
【0020】
<液体成分>
組成物中における液体成分には、ラジカル重合性化合物を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
本発明において液体成分とは、常温常圧環境下において、液体である成分を意味する。
【0021】
<<ラジカル重合性化合物>>
「ラジカル重合性化合物」とは、ラジカル重合によりポリマーを形成することができる化合物を表し、典型的には1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー単位としての化合物である。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性単官能モノマー及びラジカル重合性多官能モノマー等のラジカル重合性モノマー、並びにラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性単官能モノマー、ラジカル重合性多官能モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーはいずれも、活性エネルギー線によってラジカル重合して得られる硬化物のモノマー単位である。すなわち、本発明において「ラジカル重合性モノマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー分子を表し、「ラジカル重合性オリゴマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するオリゴマー分子を表す。「オリゴマー」とは、少数のモノマーに由来する構造単位を有する分子を表し、当該構造単位の数は、当該モノマーの構造やオリゴマーの用途などにより異なり得るが、典型的には2以上20以下であることが好ましい。
【0022】
本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合、カチオン重合性化合物を用いた場合と比べて、高粘度化が抑制され、重合速度を向上させることができるので、好適にインクジェット方式に用いることができる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性モノマーを用いることで、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の高粘度化をより抑制することができる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性単官能モノマーを用いることで、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の高粘度化を更に抑制することができる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性オリゴマーを用いることで、硬化物の硬化収縮を低減することができ、また、硬化物の延伸性及び靭性も向上させることができる。
【0023】
ラジカル重合性単官能モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能以上のモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
2官能のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
3官能以上のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、1官能以上6官能以下のモノマーであることが好ましく、2官能以上3官能以下のモノマーであることがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタン基を有するものを用いることで、ポリマー中における側鎖間で相互作用が生じ、硬化物の強靭性が向上する。また、ウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマーであることがより好ましい。
【0028】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、UV-6630B(UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー、分子量:3000、重合性官能基数:2、日本合成化学株式会社製)、CN983NS(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、重合性官能基数:2、サートマー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ラジカル重合性化合物としては、上記の通り、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、カルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが挙げられるが、アクリル系モノマーを用いることが好ましい。アクリル系モノマーは、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の高粘度化を抑制させることができ、重合速度を向上させることができるので、好適にインクジェット方式に用いることができる。
アクリル系モノマー以外のラジカル重合性単官能モノマーやエポキシ系モノマーを用いる場合は、アクリル系モノマーと併用することが好ましい。エポキシ系モノマーとしては、例えば、ビス(3,4エポキシシクロヘキシル)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、エポキシ系モノマーをアクリル系モノマーと併用する場合、更にオキセタンモノマーも併用することが好ましい。
【0030】
ラジカル重合性化合物の含有量は、組成物全量に対して50.0質量%以上であることが好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることが特に好ましい。また、99.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
ラジカル重合性モノマーの含有量は、組成物全量に対して50.0質量%以上であることが好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましい。また、95.0質量%以下であることが好ましく、85.0質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
ラジカル重合性単官能モノマーの含有量は、組成物全量に対して30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、99.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
ラジカル重合性多官能モノマーの含有量は、組成物全量に対して10.0質量%以上であることが好ましい。また、40.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
ラジカル重合性オリゴマーの含有量は、組成物全量に対して1.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、40.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
[硬質固体成分の表面を構成する物質と組成物における液体成分との親和性(HSP値)]
前記硬質固体成分の表面を構成する物質と組成物における液体成分との間の親和性は高いことが好ましい。前記硬質固体成分の表面を構成する物質と組成物における液体成分との間の親和性が高いことにより、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中における硬質固体成分の分散安定性が向上し、インクジェット方式による吐出性や保存安定性が向上する。また、硬化物中において、硬質固体成分と樹脂の界面における接着性が向上する。
なお、「硬質固体成分の表面を構成する物質」とは、硬質固体成分が本来有している組成部分(残基を含む)、及び硬質固体成分が本来有している組成部分(残基を含む)とは異なる物質(組成部分を含む)の少なくともいずれかを意味する。
なお、「組成物中の液体成分」とは、組成物中の固体の成分以外の液体成分を意味する。
【0036】
前記硬質固体成分の表面を構成する物質と組成物における液体成分との間の親和性を表す評価手段の1つとしてHSP値(ハンセン溶解度パラメータ)がある。
HSP値は、2種の物質の相溶性を予測するのに有用な手段であって、チャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって発見されたパラメータである。
HSP値は、実験的及び理論的に誘導された下記3つのパラメータ(δD、δP、及びδH)を有し、「(HSP値)=(δD)+(δP)+(δH)」と表される。なお、本願において、HSP値の単位は、(cal/cm0.5を用いた。
・δD:ロンドン分散力に由来するエネルギー。
・δP:双極子相互作用に由来するエネルギー。
・δH:水素結合力に由来するエネルギー。
【0037】
前記HSP値は、(δD,δP,δH)のように表されるベクトル量であり、3つのパラメータを座標軸とする3次元空間(ハンセン空間)上にプロットして表される。
一般的に使用される物質のHSP値は、データベース等の公知の情報源があるため、例えば、データベースを参照することによって、所望の物質のHSP値を入手することができる。データベースにHSP値が登録されていない物質は、例えばHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等のコンピュータソフトウェアを用いることによって、物質の化学構造に基づいて求めることができる。
また、ハンセン溶解球法からHSP値を求めることもできる。2種以上の物質を含む混合物のHSP値は、各物質のHSP値に、混合物全体に対する各物質の体積比を乗じた値のベクトル和に基づいて算出される。
【0038】
前記硬質固体成分の表面を構成する物質を同定する方法としては、例えば、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、2次イオン質量分析法(SIMS)、電子線マイクロアナリシス(EPMA)、X線マイクロアナリシス(XMA)などを用いる方法などが挙げられる。
【0039】
組成物における液体成分を同定する方法としては、例えば、シリカゲルクロマトグラフィ、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などの方法で成分を分離し、各成分を質量分析法、赤外分光法、核磁気共鳴分光法、紫外分光法で解析する方法などが挙げられる。
また、組成物における液体成分の含有量(体積比)を測定する方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)、イオンクロマトグラフィ(IC)などの分析法で、検量線との比較により定量する方法などが挙げられる。
【0040】
本発明においては、前記硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値をHSP値(A)とし、組成物における液体成分のHSP値をHSP値(B)とした場合に、HSP値(B)はHSP値(A)より大きい。また、HSP値(A)及びHSP値(B)の差(HSP値(B)-HSP値(A))は0.5(cal/cm0.5以上3.0(cal/cm0.5以下であり、0.5(cal/cm0.5以上2.0(cal/cm0.5以下が好ましい。
HSP値(A)及びHSP値(B)の差(HSP値(B)-HSP値(A))が0.5(cal/cm0.5未満であると、(粘度上昇値/固体成分添加量)が大きくなり、3.0(cal/cm0.5以上だと固体成分の分散性が悪化する。
【0041】
<重合開始剤>
前記重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、重合開始剤の含有量は、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-クロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。
【0042】
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、例えば、分子量200以上5000以下の化合物であることが好ましく、具体的には、PEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)1~40モル付加物、ステアリン酸EO1~40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<重合禁止剤>
前記重合禁止剤としては、例えば、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<色材>
前記色材としては、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中に溶解又は安定に分散し熱安定性に優れた染料又は顔料が適している。これらの中でも、溶解性染料(Solvent Dye)が好ましい。なお、色の調整等を行うために2種類以上の色材を適宜混合してもよい。
【0045】
<分散剤>
分散剤は、固体成分の表面に吸着することで、固体成分をインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物中に安定して分散させる機能を有する添加剤である。分散剤としては、適宜公知のものを用いることができる。
【0046】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、有機溶媒、水などが挙げられる。
【0047】
<<有機溶媒>>
インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、重合性化合物とは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば有機溶媒の特性等が組成物に影響する程度には含まない)ことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0048】
<<水>>
インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、水を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。また、水を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば水の特性等が組成物に影響する程度には含まない)ことを意味し、1.0質量%未満であることが好ましい。水の含有量が一定量以下であることで、硬化速度の低下、硬化強度の低下、吸水性の増加、後述するサポート部形成材料との分離性低下等を抑制することができる。
【0049】
[インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の調製方法]
インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性化合物、色材、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて分散液を調製し、当該分散液にさらに、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させ、次に固体成分を混合させることにより調製することができる。
【0050】
[インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の物性]
インクジェット方式で好適に使用可能な組成物は、ノズルからの吐出性などに鑑みると、粘度が低いことが好ましい。したがって、一態様において、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、25℃環境下において、200mPa・s以下が好ましく、150mPa・s以下がより好ましい。また、吐出性、造形精度の観点から、25℃環境下において、9mPa・s以上であることが好ましい。なお、造形中は、インクジェットヘッドやインク流路の温度を調節することにより、活性エネルギー線硬化型組成物の粘度を調整することが可能である。
なお、上記粘度は常法により計測することができ、例えばJIS Z 8803に記載の方法などを用いることができる。他には、例えば、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34´×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0051】
また、インクジェット用途に用いることができる組成物は、吐出安定性、造形精度などに鑑みると、表面張力が25℃環境下において20mN/m以上40mN/m以下の範囲にあることが好ましい。したがって、一態様において、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は25℃環境下において20mN/m以上40mN/m以下の表面張力を有している。
なお、表面張力は常法により測定することができ、かかる測定方法としては、例えばプレート法、リング法、ペンダントドロップ法などが挙げられる。
【0052】
(立体造形物)
本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、硬質固体成分を含むことにより、硬化物を積層することで造形される立体造形物(マテリアルジェッティング造形物)の機械的物性を良好にすることができる。
立体造形物の好ましい機械的物性としては、強度については引張最大応力が10MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。前記強度としては、引張試験(JIS K7161、JIS K7113、ISO 527、ASTM D638など)により測定する強度を意味する。
延伸性については引張破断伸度が3%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましい。前記延伸性としては、引張試験(JIS K7161、JIS K7113、ISO 527、ASTM D638など)により測定する延伸性を意味する。
耐熱性については、荷重たわみ温度(HDT)が50℃以上であることが好ましい。
また、耐衝撃性はIzod衝撃強度が20J/m以上であることが好ましく、40J/m以上であることがより好ましい。前記耐熱性としては、荷重たわみ温度(HDT)試験(JIS K7191-1、ASTM D648など)により測定する耐熱性を意味する。
【0053】
(立体造形物の製造方法及び立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の立体造形物の製造装置は、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0054】
<吐出工程及び吐出手段>
前記吐出工程は、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する工程である。
前記吐出手段本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する手段である。
前記吐出工程は、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を、昇降機能を有するステージ上にインクジェット方式で吐出することが好ましい。前記ステージ上に吐出されたインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、液膜を形成する。
【0055】
<硬化工程及び硬化手段>
前記硬化工程は、吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程である。
前記硬化手段は、吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる手段である。
前記硬化工程では、ステージ上に形成されたインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物からなる液膜を活性エネルギー線を照射することにより硬化する。
【0056】
-活性エネルギー線-
インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、光が好ましく、特に波長220nm~400nmの紫外線が好ましい。紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0057】
本発明の立体造形物の製造方法では、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことにより所望の形状の立体造形物を製造する。
【0058】
以下、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をモデル部形成材料として使用した場合の立体造形物の造形方法、及び造形装置について説明する。ただし、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0059】
-造形装置-
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置を示す概略図である。
造形装置30は、ヘッドユニット31、32、紫外線照射機33、ローラー34、キャリッジ35、及びステージ37を有する。ヘッドユニット31は、モデル部形成材料1を吐出する。ヘッドユニット32は、サポート部形成材料2を吐出する。紫外線照射機33は、吐出されたモデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2に紫外線を照射して硬化する。ローラー34は、モデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2の液膜を平滑化する。キャリッジ35は、ヘッドユニット31,32等の各手段を、図1におけるX方向に往復移動させる。ステージ37は、基板36を、図1に示すZ方向、及び図1の奥行方向であるY方向に移動させる。尚、Y方向への移動は、ステージ37ではなくキャリッジ35において行なってもよい。
【0060】
モデル部形成材料が色ごとに複数ある場合、造形装置30には、各色のモデル部形成材料を吐出するための複数のヘッドユニット31が設けられていてもよい。ヘッドユニット31,32におけるノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズルを好適に使用することができる。
【0061】
ローラー34に使用できる金属としては、SUS300系、400系、600系、六価クロム、窒化珪素、及びタングステンカーバーイドなどが例示される。また、これらのいずれかをフッ素やシリコーンなどで被膜コーティングした金属を、ローラー34に使用してもよい。これらの金属のなかでも、強度、加工性の面からSUS600系が好ましい。
ローラー34を使用する場合、造形装置30は、ローラー34と造形物の面とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、ステージ37を下げながら積層する。ローラー34は紫外線照射機33に隣接している構成が好ましい。
【0062】
また、休止時のインクの乾燥を防ぐため、造形装置30には、ヘッドユニット31,32におけるノズルを塞ぐキャップなどの手段を設置してもよい。また、長時間連続使用時のノズルの詰まりを防ぐため、造形装置30には、ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンス機構を設置してもよい。
【0063】
-造形方法-
以下、造形装置で行われる工程について説明する。
【0064】
造形装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、入力された二次元データのうち最も底面側の断面を示す二次元データに基づいて、ヘッドユニット31からモデル部形成材料1の液滴を吐出させ、ヘッドユニット32からサポート部形成材料2の液滴を吐出させる。これにより、最も底面側の断面を示す二次元データにおけるモデル部を示す画素に対応する位置にモデル部形成材料1の液滴が配され、サポート部を示す画素に対応する位置にサポート部形成材料2の液滴が配され、隣り合う位置の液滴同士が接した液膜が形成される。なお、造形する造形物が1個の場合は、ステージ37の真中に断面形状の液膜が形成される。造形する造形物が複数個の場合、造形装置30は、ステージ37に複数個の断面形状の液膜を形成してもよいし、先に造形された造形物に液膜を積み重ねてもよい。
【0065】
ヘッドユニット31及び32にはヒータを設置することが好ましい。さらに、ヘッドユニット31にモデル部形成材料を供給する経路及びヘッドユニット32にサポート部形成材料を供給する経路にプレヒータを設置することが好ましい。
【0066】
平滑化工程において、ローラー34は、ステージ37上に吐出されたモデル部形成材料、及びサポート部形成材料のうち余剰な部分を掻き取ることで、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料からなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。平滑化工程はZ軸方向へ積層毎に1回行われてもよいし、2乃至50回の積層毎に1回行われてもよい。平滑化工程において、ローラー34は停止していてもよいし、ステージ37の進行方向に対して正もしくは負の相対速度で回転していてもよい。またローラー34の回転速度は定速でも一定加速度、一定減速度でもよい。ローラー34の回転数は、ステージ37との相対速度の絶対値として、50mm/s以上400mm/s以下が好ましい。相対速度が小さすぎる場合、平滑化が不十分で平滑性が損なわれる。また相対速度が大きすぎる場
合、装置が大型化を要し、振動などによって、吐出された液滴の位置ずれなどが発生しやすく、結果として平滑性が低下することがある。平滑化工程において、ローラー34の回転方向はヘッドユニット31,32の進行方向と逆向きであることが好ましい。
【0067】
硬化工程において、造形装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、吐出工程で形成された液膜に、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料に含まれる光重合開始剤の波長に応じた紫外線を照射する。これにより、造形装置30は、液膜を硬化して、層を形成する。
【0068】
最も底面側の層の形成後、造形装置30のエンジンは、ステージを一層分、下降させる。
造形装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、底面側から二つ目の断面を示す二次元画像データに基づいて、モデル部形成材料1の液滴を吐出させ、サポート部形成材料2の液滴を吐出させる。吐出方法は、最も底面側の液膜を形成するときと同様である。これにより、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の二次元データが示す断面形状の液膜が形成される。更に、造形装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、液膜に紫外線を照射することにより、液膜を硬化して、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の層を形成する。
造形装置30のエンジンは、入力された二次元データについて、底面側に近いものから順に利用して、上記と同様に、液膜の形成と、硬化と、を繰り返し、層を積層させる。繰り返しの回数は、入力された二次元画像データの数、あるいは三次元モデルの高さ、形状などに応じて異なる。すべての二次元画像データを用いた造形が完了すると、サポート部に支持された状態のモデル部の造形物が得られる。
【0069】
造形装置30により造形された造形物は、モデル部及びサポート部を有する。サポート部は、造形後に造形物から除去される。除去方法としては、物理的除去、及び化学的除去がある。物理的除去では、機械的な力を加えて除去する。一方、化学的除去では、溶媒に浸漬し、サポート部を崩壊させて除去する。サポート部の除去方法としては、特に制限はないが、物理的除去では造形物が破損する可能性があるため、化学的除去がより好ましい。さらに、コストを考慮すると水に浸漬して除去する方法がより好ましい。水に浸漬して除去する方法が採用される場合、サポート部形成材料の硬化物は、水崩壊性を有するものが選択される。
【0070】
上述のとおり、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット用途、とくにインクジェットによる立体造形物の製造に好適に用い得るものである。したがって本発明には、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて造形された立体造形物も包含される。かかる立体造形物の製造方法は、インクジェットを用いる限り特に限定されないが、例えば上記<造形方法>の欄にて詳述した方法などが挙げられる。
【0071】
(収容容器)
収容容器は、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物が収容された状態の容器を意味する。インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物が収容された容器は、カートリッジやボトルとして使用することができ、これにより、搬送や交換等の作業において、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物へのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【実施例
【0072】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
<インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
(比較例1)
イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)65質量部、2官能アクリレート(商品名:A-600、新中村化学工業株式会社製)24質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:紫光UV-6630B、日本合成化学株式会社製)11質量部を均一に混合した。次に、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omunirad TPO、BASF社製)4質量部を加え、均一に混合して、参考例1のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0074】
<硬質固体成分を含むインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
(実施例1)
イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)65質量部、2官能アクリレート(商品名:A-600、新中村化学工業株式会社製)24質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:紫光UV-6630B、日本合成化学株式会社製)11質量部を均一に混合した。次に、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omunirad TPO、BASF社製)4質量部を加え、均一に混合した。次に、硬質固体成分(アドマファインK180SM-C5、アドマテック株式会社製)を10質量部加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)を通過させて、実施例1のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0075】
(実施例2~8)
下記表1の配合処方に従って、実施例1と同様の作製手順で、実施例2~8のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。表1における配合処方の単位は「質量部」である。
【0076】
次に、得られたインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物について、以下のようにして「HSP値の測定」、「粘度の測定」及び「固形分沈降性」、並びにインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物から作成した硬化物について「弾性率」、「引張強度」及び「衝撃強さ」を測定した。結果を表4に示す。
【0077】
<HSP値の測定>
HSP値(A)は、硬質固体成分の表面改質に使用されたシランカップリング剤の構造を基にコンピュータソフトウェア(HSPiP)により求めた。
HSP値(B)は、組成物における液体成分(表1中の「ラジカル重合性モノマー」及び「ラジカル重合性オリゴマー」)の各HSP値をコンピュータソフトウェア(HSPiP)により求め、次に、各液体成分のHSP値に、液体成分全体に対する各液体成分の体積比を乗じた値のベクトル和を算出し、これに基づいて求めた。
【0078】
<粘度の測定方法>
コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22L(東機産業株式会社製)を用いて測定した。なお、測定容器内の温度は高温循環槽を用いて25℃に固定し、ロータはコーンロータ(1°34´×R24)を使用した。
<固形分沈降性の評価方法>
遮光環境に静置し、固形分が沈降しているかどうかを目視で確認した。
(評価基準)
A:2週間以上沈降なし
B:1週間以上2週間以内に沈降
C:1週間以内に沈降
【0079】
[弾性率及び引張強度の測定用サンプルの作製方法]
図2に示すように、ガラス基板上にOHPシートを載せ、更にシリコン型(形状:引張6号形、JIS K 6251、厚さ1mm)をOHPシートに載せて密着させた。
次に、インクをシリコン型に充填し、OHPシートを被せ、その上にガラス板を置いた(言い換えると、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を酸素遮断環境に置いた)。
次に、紫外線照射機(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE SP5-250DB)を用いて、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。
次に、さきほど紫外線を照射した面とは反対の面から、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。なお、紫外線照射機により照射される紫外線の波長は365nmに設定した。
次に、OHPシートを剥がし、シリコン型から試験片を取り出し、温度23℃相対湿度50%の環境下に24時間静置した。
【0080】
<弾性率及び引張強度の測定方法>
精密万能試験機(オートグラフAG-X、島津製作所)を用いて測定した。引張速度5mm/min、引張冶具間距離50mmの条件で試験片の引張試験を行い、応力-ひずみ曲線のひずみ0.05~0.25%の範囲における傾きを弾性率の測定値とし、試験開始~サンプル破断までの範囲における応力の最大値を引張強度の測定値とした。
【0081】
<衝撃強さ測定用サンプルの作製方法>
図2に示すように、ガラス基板上にOHPシートを載せ、更にシリコン型(縦63.5mm、横12.7mm、厚さ3mm)をOHPシートに載せて密着させた。
次に、インクをシリコン型に充填し、OHPシートを被せ、その上にガラス板を置いた(言い換えると、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物を酸素遮断環境に置いた)。
次に、紫外線照射機(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE SP5-250DB)を用いて、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を30分間照射した。
次に、さきほど紫外線を照射した面とは反対の面から、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を30分間照射した。なお、紫外線照射機により照射される紫外線の波長は365nmに設定した。
次に、OHPシートを剥がし、シリコン型から試験片を取り出し、温度23℃相対湿度50%の環境下に24時間静置した。
【0082】
<衝撃強さの測定方法>
デジタル衝撃試験機(Impact Tester、東洋精機製作所)を用いて測定した。ASTM D 256に従い、アイゾット法で測定した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
実施例及び比較例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
(ラジカル重合性モノマー)
・IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製
・A-600:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製
(ラジカル重合性オリゴマー)
・UV-6630B:ウレタンアクリレートオリゴマー、官能基数2、日本合成化学株式会社製
(重合開始剤)
・Omnirad TPO:BASF社製
(硬質固体成分)
・アドマファインK180SM-C5:表面改質シリカ粒子、体積平均粒径180nm、アドマテックス社製
・アドマファインSC2500-SMJ:表面改質シリカ粒子、体積平均粒径1000nm、アドマテックス社製
・アドマファイン3SM-C11:表面改質シリカ粒子、体積平均粒径280nm、アドマテックス社製
・アドマナノYA10C-SM1:表面改質シリカ粒子、体積平均粒径10nm、株式会社アドマテックス社製
・アドマナノYA100C-SM2:表面改質シリカ粒子、体積平均粒径10nm、株式会社アドマテック
【0088】
アドマファインはVMC法(気化したシリコンを冷却して微粒子を得る方法)で製造されており、粒度分布がブロードである。
一方、アドマナノは湿式合成法で製造されており、粒度分布がシャープである。
【0089】
実施例1~8の粘度は200cp以下なので、インクジェットヘッドで安定に吐出可能であった。
比較例との比較から、実施例1~8のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物から得られた硬化物の弾性率と強度が向上していることがわかった。
さらに、実施例1~4のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物から得られた硬化物の弾性率と引張強度と衝撃強さが同時に向上しているがわかった。
さらに、実施例1~2のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物においては、インクの粒子沈降性も良好であることがわかった。
【0090】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 硬質固体成分及びラジカル重合性モノマーを含有し、
前記硬質固体成分の表面を構成する物質のHSP値(A)と、組成物における液体成分のHSP値(B)との差(HSP値(B)-HSP値(A))が、0.5(cal/cm0.5以上3.0(cal/cm0.5以下である、ことを特徴とするインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<2> 前記硬質固体成分がシランカップリング剤で表面改質されたシリカである、前記<1>に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<3> 前記シランカップリング剤が不飽和二重結合を有する、前記<2>に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<4> 25℃における粘度が200mPa・s以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<5> 前記硬質固体成分の含有量が、前記組成物全量の体積に対して0.5体積%以上40.0体積%以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<6> 前記硬質固体成分の含有量が、前記組成物全量の体積に対して1.0体積%以上20.0体積%以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<7> 前記硬質固体成分の体積平均粒径が5nm以上1000nm以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<8> 前記硬質固体成分の体積平均粒径が120nm以上250nm以下である、前記<7>に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<9> 前記硬質固体成分の体積平均粒径の0.7倍以下又は1.4倍以上の粒径を有する固体成分の存在比率が10%以上である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<10> 前記硬質固体成分の体積平均粒径の0.7倍以下又は1.4倍以上の粒径を有する固体成分の存在比率が20%以上である、前記<9>に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<11> 前記ラジカル重合性モノマーが、アクリル系モノマーを含有する、前記<1>から<10>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<12> 前記ラジカル重合性モノマーの含有量が、組成物全量に対して50.0質量%以上95.0質量%以下である、前記<1>から<11>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<13> 更に、重合開始剤を含有し、
前記重合開始剤の含有量が、組成物全量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である、前記<1>から<12>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<14> 更に、ラジカル重合性オリゴマーを含有する、前記<1>から<13>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<15> 前記ラジカル重合性オリゴマーがウレタン基を有する、前記<1>から<114>に記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<16> 前記ラジカル重合性オリゴマーの含有量が、組成物全量に対して1.0質量%以上40.0質量%以下である、前記<14>から<15>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物である。
<17> 前記<1>から<16>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、
前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<18> 前記<1>から<16>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
吐出された前記インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有する、ことを特徴とする立体造形物の製造装置である。
【0091】
前記<1>から<16>のいずれかに記載のインクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、前記<17>に記載の立体造形物の製造方法、及び前記<18>に記載の立体造形物の製造装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 モデル部形成材料
2 サポート部形成材料
10 モデル部
20 サポート部
30 造形装置
31 ヘッドユニット(吐出手段の一例)
32 ヘッドユニット(吐出手段の一例)
33 紫外線照射機(硬化手段の一例)
34 ローラー
35 キャリッジ
36 基板
37 ステージ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【文献】特許第4307636号公報
【文献】特開2017-160405号公報
図1
図2