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特許7532903両面粘着テープ及びテープ付き建築資材、並びに接着強度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】両面粘着テープ及びテープ付き建築資材、並びに接着強度測定方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240806BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
B32B27/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020093931
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187938
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
(72)【発明者】
【氏名】片野 大地
(72)【発明者】
【氏名】下岡 澄生
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/066060(WO,A1)
【文献】再公表特許第2017/002634(JP,A1)
【文献】特開2005-194525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体の貼付に使用され、
非透気性基材の一方の面に粘着剤層(a1)を有し、前記非透気性基材の他方の面に粘着剤層(a2)を有し、前記粘着剤層(a1)の厚みが10μm以上100μm以下であり、前記粘着剤層(a1)が、カルボキシル基含有ビニル単量体由来の構造と、窒素含有ビニル単量体由来の構造とを有し、前記カルボキシル基含有ビニル単量体が単量体成分全量に対して0.2質量%~5.0質量%使用されてなるアクリル共重合体を含むアクリル系粘着剤で形成された構成A、
又は、
透気性基材の一方の面側の粘着剤層(b1)を有し、前記透気性基材の他方の面に粘着剤層(b2)を有し、総厚が10μm以上100μm以下であり、前記粘着剤層(b1)及び前記粘着剤層(b2)が、カルボキシル基含有ビニル単量体由来の構造と、窒素含有ビニル単量体由来の構造とを有し、前記カルボキシル基含有ビニル単量体が単量体成分全量に対して0.2質量%~5.0質量%使用されてなるアクリル共重合体を含むアクリル系粘着剤で形成された構成B、
のいずれかの構成を有する両面粘着テープ。
【請求項2】
記粘着剤層(a1)のゲル分率が1質量%以上35質量%以下である、請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
記粘着剤層(b1)及び前記粘着剤層(b2)の合計のゲル分率が1質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層(a1)を形成する前記アクリル系粘着剤が、窒素含有ビニル単量体由来の構造を有するアクリル共重合体を含み、前記アクリル共重合体は、前記窒素含有ビニル単量体が単量体成分全量に対して0.5質量%~20質量%使用されてなる、請求項2又は3に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層(b1)及び前記粘着剤層(b2)を形成する前記アクリル系粘着剤が、窒素含有ビニル単量体由来の構造を有するアクリル共重合体を含み、前記アクリル共重合体は、前記窒素含有ビニル単量体が単量体成分全量に対して0.5質量%~20質量%使用されてなる、請求項2~4のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記被着体が、可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂を含む組成物で形成される部材、又は該部材を含む複合材である、請求項1~5のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
建築資材の接合用途に用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材に、請求項1~7のいずれか1項に記載の両面粘着テープが貼付された、テープ付き建築資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤を含有する部材の固定に使用可能な両面粘着テープに関するものである。特に、住宅・ビル・施設等の建築物の資材(以下、建築資材とする。)として使用される、1mm以上の厚みと適度な柔軟性とを有する可塑剤含有の軟質シート(以下、可塑剤含有軟質シート)の固定に用いる両面粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅・ビル・施設等の建築物において、可塑剤含有軟質シートは、床材、壁材等の居住空間を作る内装材、キッチン、浴室、トイレ等の住宅設備の内装材、住宅、ビル等の防水のための外装材等の用途で、様々な建築物の部材として利用されている。
【0003】
これらの可塑剤含有軟質シートは、従来、接着剤、熱融着、ビス等により、各種部材に固定されて利用されている。しかしこれらの固定方法は、作業が煩雑であり、又、固定場所によっては適用が制限されという課題があった。
【0004】
一方、両面粘着テープによる固定方法は、可塑剤含有軟質シートに予め両面粘着テープを貼付することで、固定場所の制限を受けずに固定可能となり、簡便な固定方法として利用される。しかし、可塑剤含有軟質シート中に含まれる可塑剤が、両面粘着テープ中に経時で移行し、その両面粘着テープが本来有する接着力が大幅に低下して、可塑剤含有軟質シートが剥離するという問題が生じやすい。
【0005】
上述の問題に対し、例えば特許文献1には、装飾フィルム等に使用する塩化ビニル樹脂基材に塗布または貼付して使用しても、塩化ビニル樹脂中の可塑剤による経時後の接着力低下が起きないアクリル系粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-043863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、可塑剤含有軟質シートから上記可塑剤含有軟質シートに貼付された両面粘着テープへ可塑剤が移行すると、上述した両面粘着テープの接着力の低下だけでなく、可塑剤含有軟質シートにも可塑剤量の低下による不具合が生じる。本発明者等は、特に、両面粘着テープを厚み1mm以上の可塑剤含有軟質シートに貼付すると、上記可塑剤含有軟質シートが経時で硬くなり風合低下が生じやすく、また、上記風合い低下が一層進んで可塑剤含有軟質シートが経時でカールするという問題があることを見出した。
【0008】
さらに、特許文献1で開示されるアクリル系粘着剤を用いた両面粘着テープであっても、可塑剤含有軟質シートが1mm以上の厚みを有すると、両面粘着テープへ可塑剤が過剰量移行して、両面粘着テープの接着力が低下しやすくなる場合があり、可塑剤含有軟質シートと他の部材とを上記両面粘着テープを介して接合したときに、経時で剥離しやすくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)に貼付したときに、上記被着体(H1)が経時で硬くなり風合が低下すること、及び風合いの低下が一層進んで上記被着体(H1)が経時でカールすることを防ぎ、更には、上記被着体(H1)からの可塑剤の過剰移行による接着力低下を抑制することが可能な両面粘着テープを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上述した両面粘着テープを用いたテープ付き建築資材を提供すること、更には、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)と両面粘着テープとの接着強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記問題について鋭意検討を行った結果、可塑剤を含有する1mm以上の被着体に接する両面粘着テープの仕様に応じて、粘着剤層の厚み又は両面粘着テープの総厚を所定の範囲にすることで、上記問題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体の貼付に使用され、非透気性基材の一方の面に粘着剤層(a1)を有し、上記非透気性基材の他方の面に粘着剤層(a2)を有し、上記粘着剤層(a1)の厚みが10μm以上100μm以下である構成A、又は、透気性基材の一方の面側の粘着剤層(b1)を有し、上記透気性基材の他方の面に粘着剤層(b2)を有し、総厚が10μm以上100μm以下である構成B、のいずれかの構成を有する両面粘着テープを提供する。
【0013】
また本発明は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材に上述した両面粘着テープが貼付された、テープ付き建築資材を提供する。
【0014】
さらに本発明は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体の被着面に両面粘着テープを貼付し、前記被着体及び前記両面粘着テープのうち一方を、90°~180°の剥離角度で10mm/分以下の引張速度で引張剥離して、前記被着体に対する前記両面粘着テープの接着強度を測定する接着強度測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両面粘着テープによれば、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体に貼付したときに、可塑剤量の低下による上記被着体の経時での風合いの低下及びカールの発生を抑制することができ、さらに可塑剤の過剰移行による上記被着体に対する接着力の経時低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の両面粘着テープの構成Aの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の両面粘着テープの構成Bの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I.両面粘着テープ
本発明の両面粘着テープは、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体の貼付に使用されるものであり、下記構成A又は構成Bのいずれかの構成を有する。すなわち、本発明の両面粘着テープの構成Aは、非透気性基材の一方の面に粘着剤層(a1)を有し、上記非透気性基材の他方の面に粘着剤層(a2)を有し、上記粘着剤層(a1)の厚みが10μm以上100μm以下である。また、本発明の両面粘着テープの構成Bは、透気性基材の一方の面側の粘着剤層(b1)を有し、上記透気性基材の他方の面に粘着剤層(b2)を有し、総厚が10μm以上100μm以下である。
【0018】
なお、本明細書内において、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体のことを、単に被着体(H1)と表す場合がある。また、両面粘着テープの上記被着体(H1)を貼付した面と反対側の面に貼付される他の被着体のことを、単に被着体(H2)と表す場合がある。
【0019】
例えば塩化ビニル軟質シート等の可塑剤を含有する被着体(可塑剤含有被着体)に両面粘着テープを貼付すると、可塑剤含有被着体中の可塑剤が、経時で上記可塑剤含有被着体に接触する両面粘着テープに移行し、上記可塑剤含有被着体中の可塑剤量が減少する。その結果、上記可塑剤含有被着体は、経時で硬くなり風合が低下したり、可塑剤量の減少に伴い収縮してカールする等の不具合が生じる。また、両面粘着テープ側に可塑剤が移行すると、両面粘着テープの可塑化により接着力が経時で低下して、両面粘着テープと上記可塑剤含有被着体との界面、若しくは、両面粘着テープと該両面粘着テープを介して上記可塑剤含有被着体に接合される他の被着体との界面において、剥離が生じやすくなる等の不具合が生じる。
【0020】
本発明者等は、これらの不具合は、被着体に貼付する両面粘着テープの粘着剤を適切に選定しても、可塑剤を含有する被着体が1mm以上の厚みを有する場合に特に顕著に発生しやすいことを知見した。
【0021】
可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体において上述した不具合が顕著に生じやすい要因について、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、以下の推量に至った。可塑剤を含有する被着体が1mm以上の厚みを有する場合、風合い等を出すために、通常、上記被着体の単位面積あたりに含まれる可塑剤量が多くなる。しかし、上記被着体に両面粘着テープを貼付すると、上記被着体中の可塑剤濃度と上記両面粘着テープ中の可塑剤濃度との高低差から、上記被着体中の可塑剤が、可塑剤濃度の低い両面粘着テープ側へ移行しやすくなる。ここで、被着体に接する粘着剤層の厚みが大きいほど、両面粘着テープ中に含浸可能な可塑剤量が多くなり、また、粘着剤層は、接着剤層と比較して柔軟性が高く可塑剤が移行しやすいため、被着体側から両面粘着テープ側へ過剰量の可塑剤が移行すると推量される。このように、可塑剤を含有する被着体の厚みと該被着体に接する粘着剤層の厚みとの関係から、両面粘着テープ側へ過剰量の可塑剤が移行することで、上記被着体中の可塑剤量が急激に減少してしまい、風合い低下やカールの発生が生じやすくなると推量される。また、両面粘着テープが側に過剰な量の可塑剤が移行して両面粘着テープ中の可塑剤濃度が高くなることで、両面粘着テープの可塑化が進みやすくなり、粘着剤の接着力が経時で大きく低下すると推量される。
【0022】
そこで本発明者等が更に鋭意検討した結果、1mm以上の厚みの可塑剤含有シートの場合、上記可塑剤含有シートと接する粘着剤層の厚みが大きいほど、可塑剤含有シートから両面粘着テープへの可塑剤の移行が促進されやすくなるが、上記可塑剤含有軟質シートに実質的に接する粘着剤層の厚みを所定の範囲内とすることで、両面粘着テープ中に含浸可能な可塑剤量が制限されるため、粘着剤層への可塑剤の過剰量の移行を抑制することができ、上述した不具合が抑制されることを見出し、本発明に至った。
【0023】
本発明の両面粘着テープは、非透気性基材(k1)または透気性基材(k2)を中芯とし、可塑剤を含有する被着体(H1)に貼付する側の粘着剤層(a1またはb1)、及び上記被着体(H1)と接合する他方の被着体(H2)に貼付する側の粘着剤層(a2またはb2)を、上記基材を挟んで積層したものを基本構成とする。すなわち、非透気性基材(k1)を中芯に用いる場合は、被着体(H1)と実質的に接する粘着剤層(a1)の厚みを10μm~100μmの範囲内に制御し、一方、透気性基材(k2)を中芯に用いる場合は、粘着剤層を構成する粘着剤及び可塑剤が透気性基材(k2)内に浸透可能となることから、被着体(H1)と実質的に接する両面の粘着剤層(b1とb2の合計)の厚み、換言すれば両面粘着テープの総厚を10μm~100μmの範囲内に制御する両面粘着テープを提供するものである。
【0024】
以下、本発明の両面粘着テープについて、構成A及び構成Bごとに説明する。
【0025】
1.構成A
本発明の両面粘着テープの構成Aは、非透気性基材の一方の面に粘着剤層(a1)を有し、上記非透気性基材の他方の面に粘着剤層(a2)を有し、上記粘着剤層(a1)の厚みが10μm以上100μm以下である。
【0026】
図1は、本発明の両面粘着テープの構成Aの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、構成Aの両面粘着テープ10Aは、非透気性基材(k1)によって、両面の粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)が実質接触することがない。また、構成Aの両面粘着テープにおいて、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)に接触するのは、粘着剤層(a1)となる。
【0027】
構成Aの両面粘着テープによれば、粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)との間に有する非透気性基材(k1)により、被着体(H1)から移行した可塑剤は非透気性基材(k1)を通過できず粘着剤層(a1)中に滞留する。このため、粘着剤層(a1)の厚みを所定の範囲内とすることで、被着体(H1)から粘着剤層(a1)への可塑剤の移行量が過剰になるのを抑制することができる。これにより、被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合い低下やカールの発生、並びに、接着力の低下による被着体(H1)の剥離を防ぐことができる。更に、構成Aの両面粘着テープによれば、粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)との間に有する非透気性基材(k1)により、被着体(H1)から移行した可塑剤が粘着剤層(a2)側へ移行するのを阻止することができる。これにより、構成Aの両面粘着テープの粘着剤層(a2)側に他の被着体(H2)を貼付したときに、上記他の被着体(H2)が可塑剤を浸透しやすい材質である場合であっても、上記他の被着体(H2)により被着体(H1)からの可塑剤の移行が促進されるのを抑制することができる。その結果、可塑剤の移行による被着体(H1)の風合い低下やカールの発生、並びに両面粘着テープの接着力の低下を抑制することができ、被着体(H1)や他の被着体(H2)の剥離を防ぐことができる。
【0028】
<粘着剤層(a1)>
構成Aにおいて粘着剤層(a1)は、非透気性基材の一方の面に設けられる層である。上記粘着剤層(a1)は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)に構成Aの両面粘着テープを貼付する際に、上記被着体(H1)と貼合される。
【0029】
構成Aにおいて、粘着剤層(a1)は、厚みが10μm以上100μm以下であればよく、好ましくは15μm以上63μm以下であり、より好ましくは20μm以上40μm以下であり、より一層好ましくは20μm以上30μm以下である。粘着剤層(a1)の厚みを上記の範囲とすることで、被着体(H1)を粘着剤層(a1)に貼付したときに、被着体(H1)から粘着剤層(a1)への可塑剤の移行量が過剰になるのを抑制し、被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下、カールの発生、及び粘着剤層(a1)との間での剥離の発生を抑制する効果を更に高めることができるからである。
【0030】
構成Aの両面粘着テープにおける粘着剤層(a1)の厚みとは、非透気性基材との接触面から該接触面と対向する面までの厚みをいい、図1中の符号Tで表される部分の長さをさす。
【0031】
また、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みを1としたときに、粘着剤層(a1)の厚みが、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みの0.002倍以上0.08倍以下であることが好ましく、0.004倍以上0.08倍以下であることが更に好ましく、0.01倍以上0.07倍以下であることがより好ましい。可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みと粘着剤層(a1)の厚みとが上記の関係を有することで、粘着剤層(a1)中に含浸可能な可塑剤量を少なくすることができ、両面粘着テープの可塑化を抑制することができる。これにより、被着体(H1)との十分な接着力を有しつつ、かつ被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下、カールの発生を効果的に抑制することができる。
【0032】
上記粘着剤層(a1)は、ゲル分率が1質量%以上35質量%であることが好ましい。これにより、被着体(H1)を粘着剤層(a1)に貼付したときに、被着体(H1)中の可塑剤が粘着剤層(a1)に移行した場合であっても、経時的な剥がれの発生を効果的に防止することができる。中でも粘着剤層(a1)のゲル分率は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが、上記可塑剤が粘着剤層(a1)に移行した場合であっても、経時的な剥がれの発生を効果的に防止するうえでより好ましい。
【0033】
本明細書内において粘着剤層(a1)のゲル分率は、構成Aの両面粘着テープの粘着剤層(a2)を除いた粘着剤層(a1)と非透気性基材とで構成される試験片を用い、予め粘着剤層(a1)の質量を測定した上記試験片を23℃に調整されたトルエン70質量部及びメタノール30質量部の混合溶媒に72時間浸漬し、次いで、超音波装置を用い、23℃の雰囲気下で40kHzの周波数で15分間振動させた後に、上記混合溶媒中に残存した粘着剤層(a1)の乾燥後の質量を測定し、以下の式に基づいて算出した値をさす。
【0034】
ゲル分率(質量%)={(混合溶媒中に残存した粘着剤層(a)の質量)/(上記浸漬前の粘着剤層(a)の質量)}×100
【0035】
上記浸漬前の粘着剤層(a1)の質量は、試験片の質量から非透気性基材の質量を差し引いた値、換言すれば上記両面粘着テープの質量から、その製造に使用した非透気性基材の質量及び粘着剤層(a2)の質量を差し引いた値をさす。また、上記残存した粘着剤層の質量は、上記残存物の乾燥後の質量から、上記非透気性基材の質量を差し引いた値をさす。なお、上記試験片は、構成Aの両面粘着テープから粘着剤層(a2)をアルコール等でふき取り除去したものを用いても良く、予め質量を測定した非透気性基材の片面に、粘着剤層(a1)を構成する粘着剤を所定量塗工したものを用いても良い。
【0036】
上記混合溶媒を用い、かつ、超音波振動を与えることによって算出された上記ゲル分率は、トルエン単独の溶媒に対するゲル分率と相関するものではなく、粘着剤層の分子間及び分子内の水素結合等による見かけの結合を分断し、架橋剤等の架橋反応に起因したゲル分率をさす。
【0037】
粘着剤層(a1)の坪量は、10g/m~110g/mの範囲内とすることができ、好ましくは15g/m~73g/mの範囲内であり、より好ましくは20g/m~50g/mの範囲内であり、一層好ましくは20g/m~40g/mの範囲内である。粘着剤層(a1)の坪量を上記の範囲内とすることで、被着体(H1)との十分な接着力を持つことができ、併せて、被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下及びカールの発生、並びに両面粘着テープの可塑化による接着力の経時低下を効果的に抑制することができるからである。
【0038】
本明細書内において、上記粘着剤層(a1)の坪量は、両面粘着テープの単位面積(1m)あたりに存在する上記粘着剤層(a1)の質量を表し、以下の式に基づいて算出した値を示す。
【0039】
上記粘着剤層(a1)の坪量(g/m)=(粘着剤層(a1)の質量)/(構造Aの両面粘着テープの片面側の面積)
【0040】
上記粘着剤層(a1)は、周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される23℃における貯蔵弾性率が、0.08MPa~0.12MPaの範囲内であることが好ましく、0.08MPa~0.09MPaの範囲内であることが、被着体(H1)への貼付初期の優れた接着力を付与でき、かつ、可塑剤の移行に起因した接着力の経時的な低下を抑制できるうえでより好ましい。
【0041】
また、上記粘着剤層(a1)は、周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される60℃における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)が0.40~0.60の範囲内であることが好ましく、0.45~0.50の範囲内であることが、被着体(H1)に貼付された構成Aの両面粘着テープを60℃の環境下に放置した際に、経時で被着体(H1)から移行しうる可塑剤が、被着体(H1)と粘着剤層(a1)との接着界面に偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持することができる点で両面粘着テープでより好ましい。
【0042】
また、上記粘着剤層(a1)は、周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される100℃における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)が0.55~0.80の範囲内であることが好ましく、0.60~0.70の範囲内であることが、被着体(H1)に貼付された上記構成Aの両面粘着テープを100℃の環境下に放置した際に、経時で被着体(H1)から移行しうる可塑剤が、被着体(H1)と粘着剤層(a1)との接着界面に偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープとすることができる点でより好ましい。
【0043】
各温度における上記損失弾性率の比(tanδ)は、tanδ=損失弾性率(Pa)/貯蔵弾性率(Pa)の式に基づいて算出した値をさす。
【0044】
本明細書内において、上記粘着剤層(a1)の23℃における貯蔵弾性率、60℃及び100℃におけるtanδは、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:ARES-G2)を用い、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度23℃、60℃または100℃の温度条件で、周波数1Hzで測定された貯蔵弾性率、ならびに、上記貯蔵弾性率と損失弾性率とに基づいて算出された値をさす。なお、上記試験片としては、粘着剤層(a1)を厚み2mm及び直径8mmの大きさからなる円状に裁断したものを使用する。
【0045】
上記範囲内の23℃における貯蔵弾性率、ならびに、60℃及び100℃のtanδを有する粘着剤層(a1)を有する構成Aの両面粘着テープは、被着体(H1)の反発力等に起因した剥がれを引き起こしにくく、100℃以下の環境下に放置された場合であっても、被着体(H1)から粘着剤層(a1)への可塑剤の移行に起因した被着体(H1)と粘着剤層(a1)との界面剥離を効果的に抑制することができる。
【0046】
上記粘着剤層(a1)は、例えば粘着剤により形成することができる。上記粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。中でも汎用性が高く、両面粘着テープを比較的安価に製造することができ、更に被着体(H1)に対する粘着剤層(a1)の厚みの制御による本発明の効果を特に奏しやすいことから、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0047】
上記アクリル系粘着剤としては、アクリル重合体と、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂等とを含有するものを使用することができ、中でもアクリル重合体と架橋剤と粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤を使用することが、耐候性及び耐熱性に優れた粘着剤層を備えた両面粘着テープを得るうえで好ましい。
【0048】
換言すれば、上記粘着剤層(a1)は、アクリル重合体と架橋剤と粘着付与樹脂とを含有することが好ましく、上記粘着剤層(a1)中で上記アクリル重合体が架橋されていることが好ましい。
【0049】
アクリル重合体としては、(メタ)アクリル単量体等を含む1種又は2種以上の単量体成分を重合して得られるものを使用することができる。アクリル重合体は、1種の単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の単量体を組み合わせて重合させたアクリル共重合体であっても良い。中でも1種又は2種以上の(メタ)アクリル単量体と1種又は2種以上の(メタ)アクリル単量体以外の単量体とを組み合わせて重合させたアクリル共重合体が好ましい。
【0050】
上記(メタ)アクリル単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができ、炭素原子数4~9のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、n-ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートを単独または組み合わせ使用することがさらに好ましい。
【0051】
上記(メタ)アクリル単量体は、上記アクリル重合体を構成する単量体成分の全量に対して、80質量%~98.5質量%の範囲で使用することが好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲で使用することがより好ましい。また、貼付初期から被着体(H1)の表面へなじんで、優れた接着力を発現し、かつ経時で被着体(H1)から粘着剤層(a1)へ可塑剤が移行した後も、被着体(H1)と接着剤層(a1)との界面に可塑剤が偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得るうえで、上記アルキル基の立体障害の影響が少ない炭素原子数4のn-ブチルアクリレートを60質量%以上使用することが好ましく、80質量%以上使用することがより好ましく、90質量%以上使用することが一層好ましい。
【0052】
また、上記アクリル重合体は、上述した(メタ)アクリル単量体のほかに、高極性ビニル単量体等の高極性単量体を使用することが好ましい。すなわち、粘着剤層(a1)は、少なくとも(メタ)アクリル単量体由来の構造(構成単位)と高極性ビニル単量体由来の構造(構成単位)と有するアクリル共重合体を含むことが好ましい。
【0053】
上記高極性ビニル単量体としては、例えば水酸基含有ビニル単量体、カルボキシル基含有ビニル単量体、アミノ基やアミド基を有する窒素含有ビニル単量体等を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0054】
水酸基含有ビニル単量体は、水酸基により後述する架橋剤と反応することができる。上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル単量体が挙げられる。
【0055】
水酸基含有ビニル単量体は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量に対して0.05質量%~2.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1質量%~0.5質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.1質量%~0.2質量%の範囲が、上記粘着剤層(a1)のゲル分率を上記した範囲に調整しやすく、その結果、貼付初期から被着体(H1)の表面へなじんで、優れた接着力を発現し、かつ経時で被着体(H1)から粘着剤層へ可塑剤が移行する際、アクリル重合体間の架橋構造が可塑剤の流動性を阻害せず、被着体(H1)との接着界面に可塑剤が偏在することを抑制できるため、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。
【0056】
上記窒素含有ビニル単量体としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0057】
上記窒素含有ビニル単量体は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量に対して、0.5質量%~20質量%の範囲内であることが好ましく、0.8質量%~10質量%の範囲内であることがより好ましく、1.0質量%~2.5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。1.0質量%~1.9質量%の範囲内がもっとも好ましい。上記アクリル重合体を構成する上記窒素含有ビニル単量体由来の構造割合を上記範囲に調整することによって、アクリル系粘着剤層が適度に柔軟化し、貼付初期から被着体(H1)の表面へなじんで、優れた接着力を発現し、かつ経時で被着体(H1)から粘着剤層へ可塑剤が移行した後も、被着体(H1)との接着界面に可塑剤が偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。
【0058】
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリル単量体が挙げられる。なかでもアクリル酸が好ましい。
【0059】
上記カルボキシル基含有ビニル単量体は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量に対して、0.2質量%~5質量%の範囲内で使用することが好ましく、0.4質量%~3質量%の範囲内で使用することがより好ましい。1.5質量%~2.5質量%の範囲内で使用することがもっとも好ましい。カルボキシル基含有ビニル単量体の使用量が上記範囲にあると、ポリ塩化ビニル樹脂等の高極性の被着体(H1)に対し、貼付初期から優れた接着力を発現できる。また、カルボキシル基は高極性であるため、粘着剤層(a1)中に多く存在すると、上記粘着剤層(a1)は、被着体(H1)から移行した可塑剤によって可塑化されやすくなる場合がある。したがって、カルボキシル基含有ビニル単量体は、上記に示した含有量の範囲で使用することが、粘着剤層(a1)等への上記可塑剤の移行を抑制し、上記可塑剤の影響による接着力の低下が少なく、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持することから好ましい。
【0060】
上記高極性ビニル単量体としては、上記したもののほかに、酢酸ビニル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレート等のその他高極性ビニル単量体を使用することができる。
【0061】
上記その他高極性ビニル単量体は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量に対して0.2質量%~5質量%の範囲内で使用することが好ましく、0.4質量%~3質量%の範囲内で使用することがより好ましい。2.0質量%~3.0質量%の範囲内で使用することがもっとも好ましい。上記その他高極性ビニル単量体の使用量が上記範囲にあると、貼付初期から、ポリ塩化ビニル樹脂等の高極性の被着体(H1)表面への接着力が高くなるうえ、上記カルボキシル基を有するビニル単量体ほどの極性を有していないため、上記アクリル重合体の分子間へ可塑剤が浸入しにくく、経時で被着体(H1)から粘着剤層へ可塑剤が移行した後も、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。
【0062】
アクリル系粘着剤は、カルボキシル基含有ビニル単量体由来の構造(構成単位)を有するアクリル共重合体を含むことが好ましい。換言すれば、アクリル系粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)として、カルボキシル基含有ビニル単量体を含むことが好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂等の高極性の被着体(H1)への接着が良好であり、上記可塑剤の影響による接着力低下が抑制でき、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持することできるからである。
【0063】
また、アクリル系粘着剤は、窒素含有ビニル単量体由来の構造(構成単位)を有するアクリル共重合体を含むことが好ましい。換言すれば、アクリル系粘着剤に含まれるアクリル共重合体は、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)として、窒素含有ビニル単量体を含むことが好ましい。被着体(H1)が例えば高極性のポリ塩化ビニルである場合、ポリ塩化ビニルの可塑化をより一層効果的に行うために、上記ポリ塩化ビニルの分子間へ浸入しやすい可塑剤を使用することが多い。上記可塑剤としては、分子内に芳香環とエステル基を有するものが挙げられる。上記芳香環とエステル基等との間で分極しやすい構造を有する可塑剤は、上記ポリ塩化ビニルの分子間へ浸入しやすい。ここで、上記粘着剤層(a1)中の上記アクリル重合体がカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基は上記ポリ塩化ビニルと同様に極めて高い極性を有するため、上記可塑剤が粘着剤層中に含まれるアクリル重合体の分子内へ浸入しやすくなる。その結果、被着体(H1)中の可塑剤量が減少して風合い等が損なわれると共に、粘着剤層が可塑化して接着力が低下しやすい傾向にある。これに対し、アクリル重合体を構成する単量体成分として、窒素含有ビニル単量体を含むことで、粘着剤層(a1)の極性を下げて被着体(H1)からの可塑剤の過剰な移行を抑制することができる。これにより、被着体(H1)の風合い低下やカールを発生しにくくすることができ、又、被着体(H1)から移行した可塑剤による上記粘着剤層(a1)の可塑化がより効果的に抑制されるため、上記粘着剤層(a1)は優れた接着力を長期間にわたり保持することが可能となる。
【0064】
上記粘着剤層(a1)中のアクリル重合体は、上述した理由から、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の少なくとも一方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することが好ましい。中でも粘着剤層(a1)が薄厚でありながら、高極性の被着体(H1)へ良好な接着性を示し、且つ、被着体(h1)から粘着剤層(a1)への可塑剤の過剰な移行を抑制できることから、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の両方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することがさらに好ましい。
【0065】
上記アクリル重合体は、上記単量体成分を、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の方法で重合させることによって製造することができ、溶液重合法によって製造することが、両面粘着テープの生産効率を向上させることともにその生産コストを低減するうえで好ましい。
【0066】
上記アクリル重合体は、30万~150万の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましく、50万~100万の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0067】
なお、本明細書内において、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR-H」
・検出器:示差屈折
【0068】
上記粘着剤層(a1)を形成する粘着剤は、上述したアクリル重合体に加えて、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤を含有する粘着剤により粘着剤層(a1)を形成することよって、貼付初期から被着体(H1)表面への接着強度に優れ、かつ経時で被着体(H1)から粘着剤層(a1)へ可塑剤が移行した後も、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持することができる。
【0069】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を、上記アクリル重合体が有する架橋性官能基の種類に応じて選択し使用することができる。上記架橋剤の含有量は、上記アクリル重合体100質量部に対して、0.3質量部~1.8質量部の範囲内が好ましく、0.6質量部~1.3質量部の範囲内がより好ましく、0.6質量部~0.9質量部の範囲内がもっとも好ましい。上記架橋剤の含有量は、上述したゲル分率を備えた上記粘着剤層(a1)を形成できるよう適宜選択し使用することができる。
【0070】
上記粘着剤は、両面粘着テープの接着力をより一層向上させるため、粘着付与樹脂を含有してもよい。上記粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族(C5系)や芳香族(C9系)などの石油樹脂、スチレン系樹脂フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、メタクリル系樹脂等を使用することができる。なかでも、上記粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂を使用することが好ましく、重合ロジン系樹脂を使用することが好ましい。可塑剤含有軟質シート等の被着体(H1)がカールしようとする力に抵抗可能な粘着剤層の強度が発現し、剥離を抑制することができるためである。
【0071】
上記粘着付与樹脂は、上記アクリル重合体100質量部に対し5質量部~50質量部の範囲内で使用することが好ましく、10質量部~30質量部の範囲内で使用することが、被着体(H1)への貼付初期の優れた接着力を付与でき、かつ、可塑剤の移行に起因した接着力の経時的な低下を抑制できるため、より好ましい。
【0072】
<非透気性基材>
構成Aにおいて、非透気性基材は、両面粘着テープの中芯として、粘着剤層(a1)および粘着剤層(a2)の間に設けられる層である。構成Aにおいては、非透気性基材の両面にそれぞれ粘着剤層(a1)及び(a2)が形成されているため、粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)は、実質的に接触することがない。
【0073】
非透気性基材は、可塑剤との親和性が低く、粘着剤層(a1)および(a1)の粘着剤が透過又は含浸しないものが用いられる。
【0074】
非透気性基材は、非透気性基材を10枚積層したものを試験片とし、上記試験片のJISP 8117に準拠して測定されたガーレ式透気度が10秒/100mlより大きいことが好ましく、60秒/100ml以上であることが好ましく、60分/100ml以上であることがさらに好ましい。非透気性基材が上述した透気度を示すことで、可塑剤が粘着剤層(a2)側に移行するのを非透気性基材が阻止することができるからである。なお、非透気性基材のガーレ式透気度は高いほど良く、上限は特に限定されないが、測定限界時間/100mlとすることができ、例えば10000秒/100ml未満とすることができる。
【0075】
非透気性基材のガーレ式透気度は、非透気性基材を10枚積層し、10枚重ねの基材を試験片としJIS P8117に準拠して測定される透気度である。測定は、23℃50%RH中にて非透気性基材を10枚重ねてセットし、内径28.6mm、重さ567gの内筒が落下して100mlの空気が通過する時間を測定した場合の通過時間を計測する。
【0076】
非透気性基材としては、上述した透気度を示すことが可能な、樹脂フィルム、樹脂発泡体、高密度の不織布等を用いることができる。上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。
【0077】
また、粗面への貼付性が必要な場合は、上記非透気性基材として樹脂発泡体を好適に用いることができる。上記樹脂発泡体としては、例えばPEやPP等の樹脂を発泡させた発泡体が挙げられる。上記樹脂発泡体は、独立気泡構造を有していても良く連続気泡構造を有していても良いが、非通気性の観点から、独立気泡構造であることが好ましい。
【0078】
また、両面粘着テープに手切れ性が必要な場合は、上記非透気性基材としては、PP、PET、ポリスチレン(PS)、ナイロン等の二軸延伸フィルム、PE、PP等の横一軸延伸フィルム、リニアローデンシティポリエチレン(LLDPE)等の無延伸フィルム、凹凸加工等による脆弱部を含む樹脂フィルム、金属箔もしくは金属を蒸着させたフィルム、バリアコート層を含むフィルムを用いることが好ましい。具体的にはトレファンYT42、トレファンYT62(いずれも東レ株式会社製)、ティアファインTF110、ティアファインTF120(いずれも東洋紡株式会社)、OPSフィルム(旭化成ケミカルズ株式会社)、カラリヤンY、カラリヤンY2(いずれも電気化学工業株式会社)、LL-MTNST(フタムラ化学株式会社)等が挙げられる。
【0079】
上記非透気性基材は、可塑剤の移行性の観点から、可塑剤を含まないことが好ましい。なお、本明細書内において、基材が可塑剤を含まないとは、可塑剤を実質的に又は完全に含まないことを意味し、具体的には、基材中の可塑剤の含有量が10質量%未満であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。基材とは非透気性基材及び透気性基材の総称とする。
【0080】
上記非透気性基材の厚みは、上述した透気度を示すことができ、粘着剤層(a1)及び(a2)を支持することが可能な大きさであれば特に限定されないが、例えば2μm~1500μmの範囲内が好ましく、中でも5μm~110μmの範囲内が好ましく、可塑剤の移行の阻止と両面粘着テープの薄型化やハンドリング性との両立を、より可能にする観点から、更に10μm~20μmの範囲内が好ましい。上記非透気性基材が発泡樹脂体の場合は、可塑剤の移行を阻止し、且つ粗面への貼付性を高める観点から、厚みが100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
【0081】
<粘着剤層(a2)>
構成Aにおいて粘着剤層(a2)は、非透気性基材の粘着剤層(a1)を有する面とは反対側の面に設けられる層である。粘着剤層(a2)は、被着体(H1)と他の被着体(H2)とを構成Aの両面粘着テープを介して接合する際に、上記他の被着体(H2)と貼合される。
【0082】
構成Aにおいて、粘着剤層(a2)の厚みは、上記被着体(H2)に対して十分な接着力を示すことが可能な厚みであれば特に限定されないが、10μm以上100μm以下とすることができる。中でも上記粘着剤層(a2)の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上63μm以下であることがさらに好ましく、20μm以上40μm以下がより好ましく、20μm以上30μm以下がより一層好ましい。粘着剤層(a1)と同様に粘着剤層(a2)も所定の厚みを有することで、粘着剤層(a2)に貼付される他の被着体(H2)が、可塑剤を含有し且つ1mm以上の厚みを有す場合に、他の被着体(H2)に含有される可塑剤が粘着剤層(a2)に移行することによる、上記他の被着体(H2)の風合い低下やカールの発生、並びに接着力の低下を抑制することができる。これにより、被着体(H2)の劣化を防ぐと共に、粘着剤層(a2)と上記他の被着体(H2)との界面剥離の発生を防ぎ、強固に接合することができるからである。
【0083】
また、他の被着体(H2)が、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体である場合、粘着剤層(a2)に貼付される上記他の被着体(H2)の厚みを1としたときに、粘着剤層(a2)の厚みが他の被着体(H1)の厚みの0.002倍以上0.08倍以下であることが好ましく、0.004倍以上0.08倍以下であることが更に好ましく、0.01倍以上0.07倍以下であることがより好ましい。他の被着体(H2)の厚みと粘着剤層(a2)の厚みとが上記の関係を有することで、被着体(H2)への接着性が確保しやすくなるためである。
【0084】
上記粘着剤層(a2)は、粘着剤層(a1)と同一の組成であっても良く、異なる組成であっても良い。
【0085】
上記粘着剤層(a2)は、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いて形成することができる。中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。構成Aの両面粘着テープを安価に製造でき、また、粘着剤層(a2)に貼付される他の被着体(H2)が可塑剤を含む場合に、粘着剤層(a2)の厚みを調整することで、可塑剤の移行による上記他の被着体(H2)の風合い低下やカールの発生、並びに接着力の低下や上記他の被着体(H2)の剥離を抑制することが可能となるからである。
【0086】
上記粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)がそれぞれアクリル系粘着剤で形成されている場合、上記粘着剤層(a2)は、粘着剤層(a1)と同一組成のアクリル系粘着剤で形成されていても良く、異なる組成のアクリル系粘着剤で形成されていても良い。粘着剤層(a2)を構成するアクリル系粘着剤としては、アクリル重合体と、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂等とを含有するものを使用することができ、アクリル重合体と架橋剤と粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤を使用することが、耐候性及び耐熱性に優れる点で好ましい。アクリル系粘着剤に含まれるアクリル重合体、架橋剤、及び粘着付与樹脂の詳細については、上述した粘着剤層(a1)で説明したアクリル重合体、架橋剤、及び粘着付与樹脂の詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0087】
上記粘着剤層(a2)中のアクリル重合体は、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の少なくとも一方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することが好ましく、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の両方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することがさらに好ましい。その理由については、粘着剤層(a1)で説明した通りである。
【0088】
上記粘着剤層(a2)のゲル分率は、特に限定されないが、1質量%以上35 質量%であることが好ましく、1質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上15質量%以下であることより好ましい。粘着剤層(a2)に貼付される被着体(H2)が、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の物品である場合に、被着体(H2)中の可塑剤が粘着剤層(a2)に移行しても、経時的な剥がれの発生を効果的に防止することができるからである。
【0089】
本明細書内において粘着剤層(a2)のゲル分率は、粘着剤層(a2)と非透気性基材とで構成される試験片を用いて上述した粘着剤層(a1)のゲル分率の測定方法と同様の方法により測定することができる。
【0090】
粘着剤層(a2)の坪量は、特に限定されないが、10g/m~110g/mの範囲内とすることができ、好ましくは15g/m~73g/mの範囲内であり、より好ましくは20g/m~50g/mの範囲内であり、一層好ましくは20g/m~40g/mの範囲内である。粘着剤層(a2)の坪量を上記の範囲内とすることで、被着体(H2)との十分な接着力を持つことができ、また、被着体(H2)が1mm以上の厚みを有する可塑剤含有の物品である場合に、被着体(H2)中の可塑剤量の減少による被着体(H2)の風合いの低下やカールの発生を効果的に抑制することができる。
【0091】
本明細書内において、上記粘着剤層(a2)の坪量は、両面粘着テープの単位面積(1m)あたりに存在する上記粘着剤層(a2)の質量を表し、以下の式に基づいて算出した値を示す。
【0092】
上記粘着剤層(a2)の坪量(g/m)=(粘着剤層(a2)の質量)/(構造Aの両面粘着テープの片面側の面積)
【0093】
粘着剤層(a2)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される、23℃における貯蔵弾性率、並びに60℃及び100℃のそれぞれの温度における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)は、それぞれ上述した粘着剤層(a1)の23℃における貯蔵弾性率、並びに60℃及び100℃のそれぞれの温度における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)の好ましい範囲と同様とすることができる。
【0094】
粘着剤層(a2)の23℃における貯蔵弾性率、並びに60℃及び100℃のそれぞれの温度における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)は、それぞれ上述した粘着剤層(a1)の項で説明した方法により測定することができる。
【0095】
<離型ライナー>
構成Aの両面粘着テープは、上記粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)の非透気性基材側とは反対側の面に、それぞれ離型ライナーが積層されていてもよい。上記離型ライナーとしては、例えばクラフト紙やグラシン紙や上質紙等の紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン(オリエンテッドポリプロピレン(OPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、上記紙類と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、上記紙類にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施した紙、等の片面または両面を、シリコーン系樹脂等で剥離処理したもの等を使用することができる。
【0096】
<構成Aの両面粘着テープの製造方法>
構成Aの両面粘着テープは、例えば離型ライナーの表面に上記粘着剤を塗工し乾燥等することによって上記粘着剤層(a1)及び粘着剤層(a2)をそれぞれ形成する工程、離型ライナー上に形成した上記粘着剤層(a1)及び(a2)を、非透気性基材の両面側にそれぞれ転写する工程を経ることによって製造することができる。
【0097】
2.構成B
本発明の両面粘着テープの構成Bは、透気性基材の一方の面側の粘着剤層(b1)を有し、上記透気性基材の他方の面に粘着剤層(b2)を有し、総厚が10μm以上100μm以下である。
【0098】
構成Bの両面粘着テープは、通常、粘着剤層(b1)および粘着剤層(b2)の一部又は全部が、透気性基材に含浸されている。図2は構成Bの両面粘着テープ10Bの一例を示す概略断面図であり、粘着剤層(b1)および粘着剤層(b2)の一部が、それぞれ透気性基材(k2)に含浸されている例を示している。
【0099】
構成Bの両面粘着テープは、粘着剤層(b1)および粘着剤層(b2)の一部又は全部が透気性基材(k2)に含浸されることで、粘着剤層(b1)および粘着剤層(b2)が一体化していると疑似できる。このため、被着体(H1)と実質的に接するのは、透気性基材(k2)を含む粘着剤層(b1)および粘着剤層(b2)、すなわち、構成Bの両面粘着テープ全体となる。したがって、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)に貼付する際に、構成Bの両面粘着テープの粘着剤層(b1)と上記被着体(H1)とが接触してもよく、粘着剤層(b2)と上記被着体(H1)とが接触してもよい。
【0100】
構成Bの両面粘着テープは、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)との間に透気性基材を有するため、上記被着体(H1)から移行した可塑剤は、透気性基材を通過可能となり、離型ライナーを除く両面粘着テープ内全体に拡散される。構成Bの両面粘着テープによれば、総厚が所定の範囲内にあることで、被着体(H1)から構成Bの両面粘着テープへの可塑剤の移行量が過剰になるのを抑制することができ、可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合い低下やカールの発生を抑制することができる。また、構成Bの両面粘着テープによれば、上記被着体(H1)からの過剰量の可塑剤の移行による、両面粘着テープの接着力の低下を抑制することができる。被着体(H1)と構成Bの両面粘着テープとの界面に可塑剤が偏在しにくくなるため、接着力の低下を防ぐことができる。更に、構成Bの両面粘着テープを介して被着体(H1)と対向して他の被着体(H2)が貼付される場合に、他の被着体(H2)と構成Bの両面粘着テープとの界面に可塑剤が偏在しにくくなるため、接着力の低下を防ぐことができ、被着体(H1)及び被着体(H2)を強固に接合可能となる。
【0101】
構成Bの両面粘着テープは、総厚が10μm以上100μm以下であればよく、好ましくは15μm以上63μm以下であり、より好ましくは20μm以上40μm以下であり、より一層好ましくは20μm以上30μm以下である。構成Bの両面粘着テープの総厚を上記の範囲とすることで、被着体(H1)からの両面粘着テープへの可塑剤の移行量が過剰になるのを抑制し、被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下、カールの発生、及びの両面粘着テープの接着力の経時低下を抑制する効果を更に高めることができるからである。
【0102】
構成Bの両面粘着テープの総厚とは、構成Bの両面粘着テープの一方の最表面から他方の最表面までの厚みをいい、図2中の符号Tで表される部分の長さをさす。なお、構成Bの両面粘着テープの両面に離型ライナーが設けられている場合は、構成Bの両面粘着テープの総厚には、離型ライナーの厚みは含まないものとする。
【0103】
また、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みを1としたときに、構成Bの両面粘着テープの総厚が、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みの0.002倍以上0.08倍以下であることが好ましく、0.004倍以上0.08倍以下であることが更に好ましく、0.01倍以上0.07倍以下であることがより好ましい。可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の厚みと構成Bの両面粘着テープの総厚とが上記の関係を有することで、構成Bの両面粘着テープ中に含浸可能な可塑剤量を少なくすることができ、被着体(H1)との十分な接着力を持たせ、接着力の経時低下を抑えることができ、かつ被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下、カールの発生を効果的に抑制することができるからである。
【0104】
構成Bの両面粘着テープの総坪量は、10g/m~130g/mの範囲内であることが好ましく、中でも好ましくは15g/m~93g/mの範囲内であり、より好ましくは20g/m~70g/mの範囲内であり、一層好ましくは20g/m~60g/mの範囲内である。構成Bの両面粘着テープの総坪量を上記の範囲内とすることで、被着体(H1)との十分な接着力を持たせつつ、かつ被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下やカールの発生を効果的に抑制することができ、さらに、被着体(H2)への長期接着性が確保しやすくなる。
【0105】
本明細書内において、構成Bの両面粘着テープの総坪量は、構成Bの両面粘着テープの単位面積(1m)あたりに存在する構成Bの両面粘着テープ全体の質量を表し、以下の式に基づいて算出した値を示す。ただし、両面粘着テープ全体の質量には離型ライナーの質量は含まないものとする。
【0106】
構成Bの両面粘着テープの合計の坪量(g/m)=(構成Bの両面粘着テープの質量)/(両面粘着テープの片面側の面積)
【0107】
<粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)>
構成Bにおける粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、一部又は全部が透気性基材に含浸されている。
【0108】
上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計のゲル分率が1質量%以上35質量%であることが好ましい。これにより、上記可塑剤が粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)に移行した場合であっても、経時的な剥がれの発生を効果的に防止することができる。中でも粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計のゲル分率は、1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%~25質量%の範囲内であることが更に好ましく、1質量%~15質量%の範囲内であることが、上記可塑剤が粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)に移行した場合であっても、経時的な剥がれの発生を効果的に防止するうえでより好ましい。
【0109】
本明細書内において、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計のゲル分率は、23℃に調整されたトルエン70質量部及びメタノール30質量部の混合溶媒に、予め粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計質量が測定された構成Bの両面粘着テープを72時間浸漬し、次いで、超音波装置を用い、23℃の雰囲気下で40kHzの周波数で15分間振動させた後に、上記混合溶媒中に残存した粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の乾燥後の合計質量を測定し、以下の式に基づいて算出した値をさす。
【0110】
ゲル分率(質量%)={(混合溶媒中に残存した粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計質量)/(上記浸漬前の粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の合計質量)}×100
【0111】
上記浸漬前の両面粘着テープを構成する粘着剤層の質量は、上記両面粘着テープの質量から、その製造に使用した透気性基材の質量を差し引いた値をさす。また、上記残存した粘着剤層の質量は、上記残存物の乾燥後の質量から、上記透気性基材の質量を差し引いた値をさす。
【0112】
上記混合溶媒を用い、かつ、超音波振動を与えることによって算出された上記ゲル分率は、トルエン単独の溶媒に対するゲル分率と相関するものではなく、粘着剤層の分子間及び分子内の水素結合等による見かけの結合を分断し、架橋剤等の架橋反応に起因したゲル分率をさす。
【0113】
上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される23℃における貯蔵弾性率が、0.08MPa~0.12MPaの範囲内であることが好ましく、0.08MPa~0.09MPaの範囲内であることが、被着体(H1)への貼付初期の優れた接着力を付与でき、かつ、可塑剤の移行に起因した接着力の経時的な低下を抑制できるうえでより好ましい。
【0114】
また、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、それぞれ周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される60℃における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)が0.40~0.60の範囲内であることが好ましく、0.45~0.50の範囲内であることが、被着体(H1)に接着された上記両面粘着テープを60℃の環境下に放置した際に、経時で被着体(H1)から移行しうる可塑剤が、被着体(H1)との接着界面に偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得るうえでより好ましい。
【0115】
また、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、それぞれ周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルで測定される100℃における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tanδ)が0.55~0.80の範囲内であることが好ましく、0.60~0.70の範囲内であることが、被着体(H1)に接着された上記両面粘着テープを100℃の環境下に放置した際に、経時で被着体(H1)から移行しうる可塑剤が、被着体(H1)との接着界面に偏在せず、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得るうえでより好ましい。
【0116】
なお、上記比(tanδ)は、tanδ=損失弾性率(Pa)/貯蔵弾性率(Pa)の式に基づいて算出した値をさす。
【0117】
上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の上記23℃における貯蔵弾性率、60℃及び100℃におけるtanδは、上記「1.構成A <粘着剤層(a1)>」の項で説明した方法により測定することができる。
【0118】
粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)がそれぞれ、上記範囲内の23℃における貯蔵弾性率、ならびに、60℃及び100℃のtanδを有することで、両面粘着テープは、被着体(H1)の反発力等に起因した剥がれを引き起こしにくく、100℃以下の環境下に放置された場合であっても、被着体(H1)からの可塑剤の移行に起因した界面剥離を効果的に抑制することができる。
【0119】
粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、同一組成の粘着剤により形成されることが好ましい。上記粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。中でも汎用性が高く、両面粘着テープを比較的安価に製造することができ、更に粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)を含む両面粘着テープの総厚の制御による本発明の効果を特に奏しやすいことから、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)は、同一組成のアクリル系粘着剤により形成されることが好ましい。
【0120】
アクリル系粘着剤としては、アクリル重合体と、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂等とを含有するものを使用することができ、アクリル重合体と架橋剤と粘着付与樹脂等とを含有するアクリル系粘着剤を使用することが、耐候性及び耐熱性に優れる点で好ましい。アクリル系粘着剤並びにアクリル系粘着剤に含まれるアクリル重合体、架橋剤、及び粘着付与樹脂の詳細については、上記「1.構成A <粘着剤層(a1)>」の項で説明したアクリル系粘着剤並びにアクリル系粘着剤に含まれるアクリル重合体、架橋剤、及び粘着付与樹脂の詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0121】
中でも、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)を形成する上記アクリル系粘着剤は、カルボキシル基含有ビニル単量体由来の構造を有するアクリル共重合体を含むことが好ましい。また、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)を形成する上記アクリル系粘着剤は、窒素含有ビニル単量体由来の構造を有するアクリル共重合体を含むことが好ましい。
【0122】
すなわち、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)中のアクリル重合体は、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の少なくとも一方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することが好ましく、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の両方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に有することがさらに好ましい。上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)中のアクリル共重合体が、カルボキシル基含有ビニル単量体及び窒素含有ビニル単量体の少なくとも一方を、アクリル共重合体を構成するモノマー単位(単量体成分)に含むことによる効果については、上記「1.構成A <粘着剤層(a1)>」の項で説明した通りである。
【0123】
上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)の厚みはそれぞれ個々に設定可能であり、上記粘着剤層(b1)の厚みと粘着剤層(b2)の厚みとが同じであってもよく、異なっても良い。粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)のそれぞれの厚みは、構成Bの両面粘着テープの総厚を所定の範囲にすることが可能な大きさであれば特に限定されず、例えば5μm以上95μm以下とすることができ、中でも5μm以上85μm以下であることが好ましく、15μm以上53μm以下であることがさらに好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。被着体(H1)との十分な接着力を持たせつつ、かつ被着体(H1)中の可塑剤量の減少による被着体(H1)の風合いの低下やカールの発生を効果的に抑制することができ、さらに、被着体(H2)への長期接着性が確保しやすくなるからである。
【0124】
<透気性基材>
構成Bにおける透気性基材は、粘着剤層(b1)と粘着剤層(b2)との間に介在する層である。
【0125】
上記透気性基材は、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)を構成する粘着剤が通過又は含浸可能となる透気性を有することが好ましい。具体的には、上記透気性基材は、透気性基材を10枚積層したものを試験片とし、上記試験片のJIS P8117に準拠して測定されたガーレ式透気度が小さいほど通気性が高くなるため好ましく、上記透気性基材として、上記ガーレ式透気度が10秒/100ml以下であるものを使用することが好ましく、7秒/100ml以下のものを使用することがより好ましく5秒/100ml以下のものを使用することが特に好ましい。透気性基材が上記の透気度を示すことで、一方の粘着剤層と接する被着体(H1)から移行してきた可塑剤が透気性基材内を通過して、上記透気性基材の両面に形成された粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)を含む両面粘着テープ内全体に、可塑剤が比較的均一に分散することができる。これにより、被着体(H1)から構成Bの両面粘着テープへの可塑剤の移行量を調整することができ、また、可塑剤が偏在することによる界面剥離を効果的に抑制することができる。なお、透気性基材のガーレ式透気度の下限は0秒/100mlとすることができる。
【0126】
上記透気性基材のガーレ式透気度は、上記「1.構成A <非透気性基材>」の項で説明した、透気性基材のガーレ式透気度の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0127】
上記透気性基材は、厚みが10μm~50μmの範囲内が好ましく、20μm~45μmの範囲内であることがより好ましい。上記の範囲の厚みの透気性基材の使用によって、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記透気性基材の空孔部分に含浸し、両面粘着テープの総厚を、被着体(H1)からの可塑剤の移行量が過剰にならない大きさに調整することができる。又、被着体(H1)から移行してきた可塑剤が透気性基材を透過して上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)内に拡散されるため、粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)と被着体との界面での上記可塑剤の偏在を抑制でき、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。さらに、上記範囲の厚みの透気性基材の使用によって、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記透気性基材の空孔部分に含浸し、上記透気性基材の引張強度が向上して、切断工程や貼付工程における取り扱い作業性に優れた両面粘着テープを得ることができる。
【0128】
上記透気性基材としては、不織布基材または多孔フィルム基材を使用することが、薄厚で上記範囲の透気度を確保しやすいため好ましい。上記透気性基材としては、具体的には、不織布基材、織布基材、モノフィラメント糸で構成された繊維織物(メッシュ基材)等が挙げられ、薄い厚みであっても高い引張弾性率を得やすい不織布基材や、高いガーレ式透気度を得やすいメッシュ基材を使用することが好ましい。
【0129】
上記透気性基材は、可塑剤を含有しないことが好ましい。その理由等については、上記「1.構成A <非透気性基材>」の項で説明した理由等と同様である。
【0130】
不織布基材の材質としては、両面粘着テープの不織布として用いられる公知慣用の不織布を用いることができる。代表的な例としては、マニラ麻等の麻、レーヨン、再生セルロース、木材パルプ等のセルロース系繊維、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維等の化学繊維及びこれらの混合物等が挙げられる。さらに、必要に応じて、ビスコース含浸や熱可塑性樹脂をバインダーとした含浸処理を施しても良い。
【0131】
また、不織布の強度を向上させる目的で、不織布製造工程で公知慣用の強化剤を添加することが好ましい。強化剤は、内添強化剤或いは外添強化剤を、単独または併用しても良い。内添強化剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、尿素-ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ-ポリアミド系樹脂等が使用できる。特に、エポキシ-ポリアミド系樹脂であるポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂が著しく不織布の層間強度を上げるため好ましい。内添強化剤の添加量としては、好ましくは不織布に対して0.2質量%~1質量%の範囲内、さらに好ましくは0.3質量%~0.5質量%の範囲内である。一方、外添強化剤としては、でんぷん;ビスコース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。中でも、不織布基材の層間強度を上げるために、上述の内添強化剤を使用することが好ましい。
【0132】
上記不織布基材の坪量は、5g/m~20g/mの範囲内であることが好ましく、5g/m~15g/mの範囲内であることが好ましく、7g/m~12g/mの範囲内であることが一層好ましい。また、上記不織布基材の密度は、0.15g/m~0.35g/mの範囲内であることが好ましく、0.2g/m~0.3g/mの範囲内であることがより好ましい。上記不織布基材の坪量範囲であると、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記不織布基材の空孔部分に含浸し、被着体(a1)から移行してきた上記可塑剤を通過させるため、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)内の上記可塑剤の偏在を抑制でき、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。さらに、上記坪量の不織布基材の使用によって、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記基材の空孔部分に含浸し、上記不織布基材の引張強度が向上して、切断工程や貼付工程における取り扱い作業性を向上することができる。なお、不織布基材以外の透気性基材においても、坪量は上述の不織布基材の坪量の範囲内と同様とすることができる。
【0133】
不織布基材の抄紙方法としては、特に限定されるものではないが、公知の湿式法により得られ、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、傾斜短網抄紙機等を使用した各種抄紙法が用いられる。
【0134】
多孔フィルム基材としては、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、ポリアリレート樹脂等の公知のモノフィラメント繊維をスクリーン状に織ったメッシュ基材等を用いることができる。中でも、モノフィラメントとして、引張弾性率や引張強度が高いポリエステル樹脂の使用が好ましい。メッシュ基材の形態としては、繊維径5~25μmのモノフィラメント糸がMDおよびTDで1インチ当たり80~300本交互に織り込まれた厚み10~50μmのメッシュ基材を用いる。好ましくは繊維径5~25μmのモノフィラメント糸がMDおよびTDで1インチ当たり100~200本交互に織り込まれた厚み10~50μmのメッシュ基材である。上記メッシュ基材の繊維径範囲であると、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記基材の空孔部分に含浸し、被着体(a1)から移行してきた上記可塑剤を通過させるため、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)内の上記可塑剤の偏在を抑制でき、長期間にわたり優れた接着力と凝集力を保持する両面粘着テープを得ることができる。さらに、上記厚みのメッシュ基材の使用によって、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)が上記メッシュ基材の空孔部分に含浸し、上記メッシュ基材の引張強度が向上して、切断工程や貼付工程における取り扱い作業性を向上することができる。
【0135】
上記多孔フィルム基材の坪量及び密度の好ましい範囲は、上述した不織布基材の坪量及び密度と同様とすることができる。
【0136】
<離型ライナー>
構成Bの両面粘着テープは、上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)上にそれぞれ離型ライナーが積層されていてもよい。上記離型ライナーとしては、上記「1.構成A <離型ライナー>」の項で説明した材料を用いることができる。
【0137】
<構成Bの両面粘着テープの製造方法>
構成Bの両面粘着テープは、例えば離型ライナーの表面に上記粘着剤を塗工し乾燥等することによって上記粘着剤層(b1)及び粘着剤層(b2)をそれぞれ形成する工程、離型ライナー上に形成した上記粘着剤層を、透気性基材の両面側にそれぞれ転写する工程を経ることによって製造することができる。
【0138】
3.用途
本発明の両面粘着テープは、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)の貼付に使用される。具体的には、本発明の両面粘着テープは、1mm以上の厚みの可塑剤含有軟質シートの固定に用いられる。中でも本発明の両面粘着テープは、建築資材の接合用途に好適に用いられる。建築資材として、1mm以上の厚みの可塑剤含有軟質シートが多く用いられ、且つ、固定方法の簡便さ、及び建築資材の外観維持や強固な固定が要求されるためである。
【0139】
可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)とは、その被着体を製造するときに、ロール形状に巻き取ることができる程度に可塑剤を添加して柔軟性を付与した、厚みが1mm以上の被着体(可塑剤含有軟質シート)である。
【0140】
被着体(H1)は、可塑剤と樹脂成分とを含む組成物により形成され、具体的には、可塑剤とポリ塩化ビニルとを含有する組成物、可塑剤とゴムとを含有する組成物が挙げられる。中でも可塑剤の移行が比較的発生しやすいことから、上記被着体(H1)は、可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂を含む組成物で形成される部材、又は該部材を含む複合材であることが好ましく、特に、本発明の両面粘着テープは、可塑剤の移行が比較的発生しやすい軟質ポリ塩化ビニルシートに好適に使用することができる。
【0141】
被着体(H1)に含有される上記可塑剤としては、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸エステル、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等の脂肪族ニ塩基酸エステル、トリメリット酸トリ2エチルヘキシル等のトリメリット酸エステル、エポキシステアリン酸ブチル等のエポキシ可塑剤等が例示される。上記可塑剤は、1種でもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0142】
中でも上記被着体(H1)は、上記可塑剤としてフタル酸エステルを含有することが好ましく、フタル酸エステルの中でもフタル酸ジイソノニルを含有することが好ましい。特に上記被着体(H1)がポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニルシートである場合に、上記ポリ塩化ビニルシートの可塑化を効率的に行うことができるからである。
【0143】
上記可塑剤の含有量としては、被着体(H1)の質量に対して、10質量%~50質量%の範囲内であることが好ましく、15質量%~30質量%の範囲内であることがさらに好ましく、20質量%~26質量%の範囲内であることがより好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲である被着体(H1)は、およそ5℃以下の低温環境下においても十分な柔軟性を有し、広い温度範囲で柔軟性を発揮することができ、また、目的とする風合いを発現可能となるからである。
【0144】
被着体(H1)は、用途に応じた適度な耐衝撃性を付与するため、炭酸カルシウム、タルク、焼成クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機充填剤を含有してもよい。上記無機添加剤の使用量は、ポリ塩化ビニルやゴム等の樹脂成分の量に対し10質量%~60質量%の範囲内であることが好ましく、20質量%~40質量%の範囲内であることが、優れた耐衝撃性と十分なレベルの柔軟性とを両立することができる。
【0145】
また、被着体(H1)は、着色するための有機顔料を含有しても良い。上記有機顔料としては、カーボンブラック等を使用できる。上記有機顔料の使用量は、ポリ塩化ビニルやゴムの質量に対し、2質量%~10質量%の範囲であることが良好な耐衝撃性と柔軟性とを保持することができる。
【0146】
被着体(H1)は、1層からなる部材でもよく、2層以上で構成された複合材でも良い。2層以上で構成された複合材の場合、上記複合材は、可塑剤を含む部材を含んでいればよく、全ての層が可塑剤を含有していても良く、可塑剤が含有した層と可塑剤を含有しない層とを組み合わせても良い。2層以上で構成された複合材を被着体として用いた場合、その複合材から可塑剤が粘着剤層に移行した際に、複合材を構成する2層間で異なる収縮が発生するため、複合材のカールが一層発生しやすくなる。特に、本発明の両面粘着テープは、2層以上で構成された複合材のカールの発生を抑制するために好適に使用することができる。なお、2層以上で構成された複合材とは、例えば、2層以上の層が積層されている態様の他、1つの層が他の層に内包されている態様も含む。
【0147】
可塑剤を含有しない層としては、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の可塑剤を含有しない樹脂で形成されたシートやフィルム、紙、織布等が挙げられる。
【0148】
また、可塑剤を含有しない層は、透気性を有していても良く、非透気性であってもよい。可塑剤を含有しない層が透気性を有する場合は、可塑剤を含有する層が、可塑剤を含有しない層を介して構造Aの両面粘着テープにおける粘着剤層(a1)、若しくは構造Bの両面粘着テープにおける粘着剤層(b1)又は(b2)と接することで、本発明の両面粘着テープを用いることによる可塑剤の移行量の制御効果が発揮されやすくなる。可塑剤を含有しない層が透気性を有する場合の透気度、及び非透気性である場合の透気度については、上述した透気性基材及び非透気性基材の透気度と同様とすることができる。
【0149】
被着体(H1)の厚みは1mm以上であればよく、好ましくは1mm~5mmの範囲内、より好ましくは1.2mm~3mmの範囲内、一層好ましくは1.5mm~2mmの範囲内である。被着体(H1)の厚みが上記の範囲にあることで、可塑剤を多く含有することができ、風合い及び柔軟性を発揮することが可能となるからである。なお、被着体(H1)が2層以上で構成された複合材の場合、被着体(H1)の厚みとは、可塑剤を含む層の総厚をいう。
【0150】
また、被着体(H1)の硬度は100以下であることが好ましく、30以上100以下であることが好ましく、50以上100以下であることがより好ましい。通常、可塑剤の含有量が多いほど、被着体(H1)は硬度が低くなり柔軟性を発揮することが可能となる。よって、被着体(H1)が上述の硬度を有することで、可塑剤が多く含まれることとなり、可塑剤が両面粘着テープにより移行しやすくなるため、本発明の両面粘着テープを用いることによる可塑剤の移行量の制御効果がより発揮されやすくなる。なお、被着体(H1)が2層以上で構成された複合材の場合、被着体(H1)の硬度とは、可塑剤を含む層の硬度をいう。
【0151】
被着体の硬度は、ASTM D2240準拠のタイプAデュロメータにより測定された値とする。
【0152】
被着体(H1)は、例えば、可塑剤および樹脂成分を含む組成物を高温に融解した状態にし、Tダイ押し出し成形、カレンダー成形、インフレーション成形等の任意の製膜方法により、シート状に成形することができる。
【0153】
被着体(H1)は、可塑剤を含有し且つ厚みが1mm以上の物品であればよく、中でも上記物品が建築資材であることが好ましく、具体的には、床材、壁紙、浴室タイル材、屋上の防水材、緩衝材、遮音材、窓枠のパッキン部材、庭や水路の遮水材等が挙げられる。
【0154】
また、本発明の両面粘着テープは、上記被着体(H1)を貼付する面とは反対側の面に、他の被着体(H2)を貼付することで、上記両面粘着テープを介して被着体(H1)及び他の被着体(H2)とを接合することができる。例えば厚みが1mm以上の塩化ビニル軟質シートを有する壁紙を、本発明の両面粘着テープを介して壁に貼合することで、経時での壁紙の風合い低下やカールの発生を抑制することができ、また、経時での接着力の低下を抑えて、壁から壁紙が剥離するのを防ぐことができる。
【0155】
他の被着体(H2)は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の樹脂物であっても良く、可塑剤を含有しない樹脂物や可塑剤を含有するが厚みが1mm未満の樹脂物であってもよい。また、他の被着体(H2)は、金属板、コンクリート、ガラス等の無機物であってもよい。他の被着体(H2)については、後述する「II.テープ付き建築資材」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0156】
他の被着体(H2)が、被着体(H1)よりも可塑剤の含有量が少ないか、若しくは可塑剤を実質含有しない樹脂物である場合、上記被着体(H1)と上記被着体(H2)との接合には、構成Aの両面粘着テープを用いることが好ましい。構成Bの両面粘着テープでは、被着体(H1)に含まれる可塑剤が、透気性基材を透過して両面粘着テープ中に移行し、更に被着体(H2)の中に浸透が進む場合がある。この場合、上記被着体(H1)からの可塑剤の移行が促進されて、上記被着体(H1)の風合い低下やカールの発生等が一層進行しやすくなるおそれがある。これに対し、構成Aの両面粘着テープであれば、非透気性基材により可塑剤の移行が阻害されるため、他の被着体(H2)による上記被着体(H1)からの可塑剤の移行促進を防ぐことが可能となる。
【0157】
II.テープ付き建築資材
本発明の建築資材は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材に、上記「I.両面粘着テープ」の項で説明した両面粘着テープが貼付されたものである。
【0158】
本発明のテープ付き建築資材によれば、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材に、上記「I.両面粘着テープ」の項で説明した構成A又は構成Bのいずれかの両面粘着テープが貼付されていることから、上記両面粘着テープを介して建築資材を所望の場所に貼合したときに、建築資材に含まれる可塑剤が両面粘着テープへ移行する量が過剰になるのを抑制することができる。これにより、経時で建築資材の風合いが損なわれることや、建築資材がカールするのを防ぐことができ、さらに経時での両面粘着テープの接着力の低下を抑えて、建築資材を貼合面から経時で剥離しにくくすることが可能となる。
【0159】
本発明における両面粘着テープは、非透気性基材の一方の面に粘着剤層(a1)を有し、上記非透気性基材の他方の面に粘着剤層(a2)を有し、上記粘着剤層(a1)の厚みが10μm以上100μm以下である構成A、又は、透気性基材の一方の面側の粘着剤層(b1)を有し、上記透気性基材の他方の面に粘着剤層(b2)を有し、総厚が10μm以上100μm以下である構成B、のいずれかの構成を有する。本発明における両面粘着テープが構成Aを有する場合は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材は、構成Aの両面粘着テープの粘着剤層(a1)に貼付される。一方、本発明における両面粘着テープが構成Bを有する場合は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材は、構成Bの両面粘着テープの粘着剤層(b1)に貼付されてもよく、粘着剤層(b2)に貼付されていてもよい。
【0160】
本発明における両面粘着テープは、上記「I.両面粘着テープ」の項で説明したものと同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0161】
本発明における建築資材は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材であればよく、上記「I.両面粘着テープ」の項において、被着体(H1)の具体例として例示した物品が挙げられる。具体的には、床材、壁紙、浴室タイル材、屋上の防水材、緩衝材、遮音材、窓枠のパッキン部材、庭や水路の遮水材等の建築資材が挙げられる。
【0162】
本発明のテープ付き建築資材は、両面粘着テープの少なくとも一方の面に、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の建築資材が貼付されていればよく、両面粘着テープの他方の面(上記建築資材が貼付された面とは反対側の面)には、他の被着体が貼付されていてもよく、他の被着体が貼付されず離型ライナーを有していてもよい。離型ライナーについては、上記「I.両面粘着テープ」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0163】
上記両面粘着テープの他方の面に貼付される他の被着体は、可塑剤を含有していても良く、可塑剤を含有していなくても良い。他の被着体としては、例えば、可塑剤を含有する樹脂シート、可塑剤を含有しない樹脂シート、金属板、コンクリート、ガラス等の無機物からなる被着体、繊維等からなる生地等が挙げられる。
【0164】
III.接着強度測定方法
本発明の接着強度測定方法は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体の被着面に両面粘着テープを貼付し、前記被着体及び前記両面粘着テープのうち一方を、90°~180°の剥離角度で10mm/分以下の引張速度で引張剥離して、前記被着体に対する前記両面粘着テープの接着強度を測定する方法である。
【0165】
一般に、両面粘着テープの粘着強度の測定方法として、例えば90度剥離や180度剥離による接着強度の測定方法が汎用される。これらの方法においては、通常、90°や180°の剥離角度で300mm/分という比較的速い引張速度で両面粘着テープを引っ張って被着体から剥離させ、そのとき測定される強度を、被着体に対する両面粘着テープの接着強度として規定する。
【0166】
しかし、本発明者等は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(H1)に対する両面粘着テープの接着強度を測定しようとする場合、上述した引張速度で被着体(H1)と両面粘着テープとを剥離すると、上記被着体(H1)からの可塑剤の移行による両面粘着テープの真の接着力を正確に測定することが困難であることを知見した。被着体(H1)は、厚みが大きく多量の可塑剤を含有するところ、両面粘着テープの粘着剤層の厚みに応じて上記被着体(H1)に含まれる可塑剤が経時で両面粘着テープ側に多量に移行すると、上記被着体(H1)の劣化と併せて、両面粘着テープの接着力が低下しやすくなる。本発明者等は、上記被着体(H1)に両面粘着テープを貼付した貼合物について、一般的な引張速度で接着強度を測定すると、上記可塑剤の移行による接着力の経時低下が検知しにくく、可塑剤量の減少による被着体(H1)の劣化が生じているにもかかわらず、両面粘着テープの接着力が実際よりも大きな値で測定されてしまう場合があることを知見した。すなわち、可塑剤量の減少による上記被着体(H1)の劣化具合と、可塑剤の移行を受けて可塑化した両面粘着テープの接着力とが相関せず、被着体(H1)との貼合による両面粘着テープの経時での真の接着力を正確に測定することが困難である。
【0167】
そこで本発明者等が検討を行った結果、90°~180°の剥離角度で引っ張る際の引張速度(剥離速度)を所定値以下にてテープと被着体とを剥離することで、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体に対する両面粘着テープの真の接着強度が測定可能となることを見出した。すなわち、本発明の測定方法により、可塑剤の移行による上記被着体(H1)の劣化と相関した、両面粘着テープの経時接着力を正確に検知することができる。また、被着体(H1)の劣化を外観上確認することが困難な場合も、本発明の測定方法により測定される接着力の経時変化から、被着体(H1)の劣化の程度を予見することができる。
【0168】
本発明の接着強度測定方法において使用する被着体は、可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体であればよく、上記「I.両面粘着テープ」及び「II.テープ付き建築資材」の項で説明した被着体(H1)と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0169】
本発明の接着強度測定方法において使用される上記被着体(H1)は、矩形状が好ましく、その大きさは、幅が20mm±10mmの範囲内であり、有効長さが100mm±50mmの範囲内であることが好ましい。なお、上記有効長さとは、試験機にセットする際の固定部分(掴みしろ)を除く長さをいう。
【0170】
また、本発明の接着強度測定方法において使用される両面粘着テープは、矩形状が好ましく、その大きさは、通常、貼付する被着体(H1)と同じ長さ及び幅である。
【0171】
本発明の接着強度測定方法において、被着体(H1)及び両面粘着テープは、貼付前にそれぞれ標準環境下で静置することが好ましい。本発明において、標準環境とは、温度23℃±1℃、相対湿度50%RH±10%RHの雰囲気下をいう。また、標準環境に静置する時間は、1日程度が好ましい。
【0172】
被着体(H1)の被着面に貼付する際、両面粘着テープの被着体(H1)と接する面とは反対側の面には、通常、離型ライナーが設けられる。
【0173】
被着体(H1)に両面粘着テープを貼付した後、両面粘着テープ側から荷重をかけることが好ましい。被着体(H1)の被着面と両面粘着テープとを十分に接着させて接着面積を担保することで、より正確な接着強度を測定可能となるからである。荷重は、面で加圧する場合は、3N/cm~50N/cmの範囲内であることが好ましく、ローラーで加圧する場合は、例えば2kgローラーを1往復させる方法等が挙げられる。
【0174】
貼付直後の接着強度(初期接着強度)を測定する場合、被着体(H1)に両面粘着テープを貼付した後、測定までの時間は特に限定されないが、一般的には被着体(H1)に両面粘着テープを貼付してから1分後とすることができる。また、被着体(H1)に対する両面粘着テープの接着を安定化させる目的で、被着体(H1)に両面粘着テープを貼付してから標準環境下で20分~60分程度静置してから測定することができる。
【0175】
また、被着体(H1)に両面粘着テープを貼付した貼合体を、温度及び湿度、並びに時間をそれぞれ規定した条件下で静置した後、後述する方法により測定することで、所定の条件下での接着強度を測定することができる。なお、所定の環境下に静置した貼合体は、測定前に初期接着強度の測定と同様に、標準環境下で一定の時間静置することが好ましい。
【0176】
例えば、80℃の加熱条件下で7日間静置する加速試験を経た上記貼合体を用いて、後述する測定方法により被着体(H1)に対する両面粘着テープの長期保存後による経時接着強度を測定することができる。
【0177】
本発明の接着強度測定方法においては、被着体(H1)に両面粘着テープを貼付した貼合体を用い、前記貼合体における前記被着体及び前記両面粘着テープのうち一方を、90°~180°の剥離角度で10mm/分以下の引張速度で引っ張って剥離する。このとき、被着体(H1)を固定して両面粘着テープを引張剥離して(引き剥がして)も良く、両面粘着テープを固定して、被着体(H1)を引張剥離して(引き剥がして)も良い。中でも、被着体(H1)を固定して、両面粘着テープを引張剥離することが好ましい。被着体(H1)を引っ張って剥離する場合、被着体(H1)の曲げ応力が掛かり、測定される接着力に上記曲げ応力が含まれる場合があるが、両面粘着テープ側を引っ張って剥離することで、接着力に被着体(H1)の曲げ応力を含まれなくすることができ、より正確な測定が可能となる。
【0178】
また、前記被着体と前記両面粘着テープとを剥離する際の引張速度(剥離速度)は、10mm/分以下であればよく、好ましくは5mm/分以下、より好ましくは3mm/分以下である。また、上記引張速度の下限は、接着力を測定可能な速度であればよく、0.001mm/分以上とすることができる。引張速度を上述した所定値以下とすることで、被着体(H1)に対する両面粘着テープの接着力、特に可塑剤の移行による両面粘着テープの経時での接着力をより正確に検知することができる。
【0179】
上記接着強度は、汎用の接着力の測定に用いられる試験機を用いて測定可能であり、例えばテンシロン引張試験機を用いて測定することができる。測定は、汎用の接着力の測定方法(JIS Z0237)に準じて試験機にサンプルをセットし、引張速度を本発明において規定する所定の範囲にして行うことができる。例えば、前記貼合体における前記被着体を固定し、前記両面粘着テープを180°の剥離角度で所定の引張速度で引張剥離する場合であれば、以下の方法により測定することができる。まず、上記貼合体の被着体(H1)から両面粘着テープを少し剥離し、上記被着体(H1)の片端を、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の下側チャックへ固定し、両面粘着テープを、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の上側チャックへ固定して測定する。この状態から所定の引張速度で上側チャックを引っ張る。これにより、180°の剥離角度で上記上側チャックに固定された両面粘着テープが所定の引張速度で引っ張られて上記被着体(H1)から剥離する。このとき測定される値を、180°剥離による接着強度とすることができる。
【0180】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0181】
以下に実施例により具体的に説明する。
【0182】
実施例及び比較例の両面粘着テープにおいて中芯として使用した基材は下記のとおりである。各基材の透気度は、23℃50%RH中にて基材10枚を重ねてセットし、直径28.6mm、重さ567gの内筒が落下して100mlの空気が通過する時間を測定した。測定機器として、JIS P8117に準拠の東洋精機製作所製のガーレ式透気度を使用した。透気度から基材Aは非透気性基材、基材Bは透気性基材であった。
・基材A:厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「エンブレットPET-12」、両面コロナ処理品、ユニチカ株式会社製)、ガーレ式透気度3600秒/100ml以上
・基材B:厚み45μmの不織布(日本製紙パピリア製「No.1215」、坪量17g/m)、ガーレ式透気度0.2秒/100ml
【0183】
また、実施例及び比較例にて得られた両面粘着テープにおける粘着剤層のゲル分率は、下記の方法により測定した。上記実施例及び比較例にて得られた両面粘着テープを、40mm×50mmの大きさへ切断した後、両面の離型ライナーを剥がして質量を測定した後、23℃に調整されたトルエン70質量部及びメタノール30質量部の混合溶媒に上記試験片を72時間浸漬し、次いで、超音波装置(アズワン株式会社製、商品名:US CLEANER US-5R)を用い、23℃下で40kHzの周波数で15分間振動させた。上記振動後に、上記混合溶媒中に残存したものを、乾燥機(105℃)を用い1時間乾燥させたものの質量を測定し、以下の式に基づいてゲル分率を算出した。
【0184】
ゲル分率(質量%)={(混合溶媒中に残存した粘着剤層の質量)/(上記浸漬前の粘着剤層の質量)}×100
【0185】
上記浸漬前の粘着剤層の質量は、上記両面粘着テープの質量から、その製造に使用した基材の質量を差し引いた値をさす。また、上記残存した粘着剤層の質量は、上記残存物の乾燥後の質量から、基材の質量を差し引いた値をさす。なお、実施例1~3及び比較例1については、両面の離型ライナーを剥がした両面粘着テープから、測定対象の粘着剤層とは反対側の粘着剤層を除去した試験片を用いて、それぞれの粘着剤層のゲル分率を測定し、このときの上記浸漬前の粘着剤層の質量は、上記試験片の質量から基材の質量を差し引いた値とした。
【0186】
(実施例1)
(1-1)アクリル系粘着剤の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ブチルアクリレート93.4質量部と、酢酸ビニル3質量部と、アクリル酸2.5質量部と、N-ビニル-2-ピロリドリン1質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部とを、酢酸エチル100質量部に溶解し、80℃で8時間重合して、重量平均分子量70万のアクリル共重合体溶液を得た。この溶液に、上記アクリル共重合体(固形分)100質量部に対し、粘着付与樹脂としてロジンエステル系樹脂A-100(荒川化学工業株式会社製)を15質量部と、重合ロジンエステル系樹脂D-135(荒川化学工業株式会社製)を15質量部とを添加し、トルエンで希釈混合し、不揮発分40質量%のアクリル系粘着剤組成物(s)を得た。
【0187】
上記不揮発分40質量%のアクリル系粘着剤組成物(s)100質量部に対し、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、コロネートL-45E、固形分45質量%)0.52質量部を添加してアクリル系粘着剤(S)を調製した。上記アクリル重合体(固形分)100質量部に対する架橋剤(固形分)の含有量は、0.76質量部であった。
【0188】
(1-2)両面粘着テープS-1
上記アクリル系粘着剤(S)をディゾルバー攪拌機で15分攪拌した後、離型ライナーに乾燥後の坪量が35g/mになるようにロールコーターで上記アクリル系粘着剤(S’)を塗布し、85℃ドライヤー中で3分間乾燥させることによって、厚みが33μmの粘着剤層を得た。
【0189】
上述した上記方法によって、上記離型ライナー上に厚みが33μmの上記粘着剤層を形成したテープAを2枚作成し、上記テープAの粘着剤層を基材Aの両面にそれぞれラミネートし、ロール(テスター産業社製SA-1010、小型卓上テストラミネーター)に0.4MPaの加圧をかけながら1m/分の速度で通過させた後、40℃の乾燥機内で48時間養生させることによって、上記基材Aの一方の面に粘着剤層(a1)、他方の面に粘着剤層(a2)がそれぞれ設けられた構成Aの両面粘着テープS-1を得た。両面粘着テープS-1は、粘着剤層(a1)、(a2)の厚みがそれぞれ33μmであり、粘着剤層(a1)、(a2)のゲル分率がそれぞれ10質量%であり、両面粘着テープの総厚は78μmであった。
【0190】
(実施例2)
離型ライナーに乾燥後の坪量が71g/m、乾燥後厚みが67μmになるようにアクリル系粘着剤(S)をロールコーターで塗布して粘着剤層を形成し、テープBを得た。
【0191】
上記テープAに代えて上記テープBを用い、上記テープBの粘着剤層を上記基材Aの両面にそれぞれラミネートして、上記基材Aの一方の面に粘着剤層(a1)、他方の面に粘着剤層(a2)をそれぞれ設けたこと以外は、実施例1と同様にして構成Aの両面粘着テープS-2を得た。両面粘着テープS-2は、粘着剤層(a1)、(a2)の厚みがそれぞれ67μmであり、粘着剤層(a1)、(a2)のゲル分率はそれぞれ10質量%であり、両面粘着テープの総厚は146μmであった。
【0192】
(実施例3)
(3-1)アクリル系粘着剤(T)の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ブチルアクリレート93.4質量部、メチルアクリレート3質量部、アクリル酸2.3質量部、N-イソプロピルアクリルアミド1.2質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部に、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.2質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、80℃で8時間重合して、重量平均分子量80万のアクリル共重合体溶液を得た。この溶液に、上記アクリル共重合体固形分100質量部に対し、ロジンエステル系樹脂A-100(荒川化学工業株式会社社製)を15質量部と、重合ロジンエステル系樹脂D-135(荒川化学工業株式会社製)を15質量部とを添加し、メチルエチルケトンで希釈混合し、不揮発分45質量%のアクリル系粘着剤組成物(t)を得た。
【0193】
上記不揮発分45質量%のアクリル系粘着剤組成物(t)100質量部に対し、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、コロネートL-45E、固形分45質量%)1.24質量部を添加してアクリル系粘着剤(T)を調製した。上記アクリル重合体(固形分)100質量部に対する架橋剤(固形分)の含有量は、1.61質量部であった。
【0194】
(3-2)両面粘着テープT-1
離型ライナーに乾燥後の坪量が71g/m、乾燥後厚みが67μmなるようにアクリル系粘着剤(T)をロールコーターで塗布して粘着剤層を形成し、テープCを得た。
【0195】
テープBに代えてテープCを用いて、上記テープCの粘着剤層を上記基材Aの両面にそれぞれラミネートして、上記基材Aの一方の面に粘着剤層(a1)、他方の面に粘着剤層(a2)をそれぞれ設けたこと以外は、実施例2と同様にして構成Aの両面粘着テープT-1を得た。両面粘着テープT-1は、粘着剤層(a1)、(a2)の厚みがそれぞれ67μmであり、粘着剤層(a1)、(a2)のゲル分率がそれぞれ2質量%であり、両面粘着テープの総厚は146μmであった。
【0196】
(実施例4)
上記基材Aに代えて基材Bを用い、上記テープAの粘着剤層を上記基材Bの両面にそれぞれラミネートした後に100℃に加熱したロールに通過させる操作を行ったこと以外は、実施例1と同様にして構成Bの両面粘着テープS-3を得た。両面粘着テープS-3は、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計坪量が70g/mであり、両面粘着テープS-3の総坪量は87g/mであり、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計のゲル分率は10質量%であり、両面粘着テープの総厚は76μmであった。
【0197】
(比較例1)
離型ライナーに乾燥後の坪量が142g/m、乾燥後厚みが134μmになるようにアクリル系粘着剤(S)をロールコーターで塗布して粘着剤層を形成して、テープDを得た。
【0198】
上記テープAに代えて、上記テープDを用い、2枚の上記テープDを上記基材Aの両面にそれぞれラミネートして、上記基材Aの一方の面に粘着剤層(a1)、他方の面に粘着剤層(a2)をそれぞれ設けたこと以外は、実施例1と同様にして構成Aの両面粘着テープS-4を得た。両面粘着テープS-4は、粘着剤層(a1)、(a2)の厚みがそれぞれ134μmであり、粘着剤層(a1)、(a2)のゲル分率はそれぞれ10質量%であり、両面粘着テープの総厚は280μmであった。
【0199】
(比較例2)
上記基材Aに代えて、上記基材Bを中芯の基材として用い、上記基材Bの両面にそれぞれ粘着剤層をラミネートした後に100℃に加熱したロールに通過させる操作を行ったこと以外は、実施例2と同様にして構成Bの両面粘着テープS-5を得た。両面粘着テープS-5は、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計坪量が142g/mであり、両面粘着テープS-5の総坪量は159g/mであり、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計のゲル分率が10質量%であり、両面粘着テープの総厚は144μmであった。
【0200】
(比較例3)
上記基材Aに替えて、上記基材Bを中芯の基材として用い、上記基材Bの両面に実施例3で得たテープCの粘着剤層をそれぞれラミネートした後、100℃に加熱したロールに通過させる操作を行ったこと以外は、実施例3と同様にして構成Bの両面粘着テープT-2を得た。両面粘着テープT-2は、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計坪量が142g/mであり、両面粘着テープT-2の総坪量は159g/mであり、粘着剤層(b1)及び(b2)の合計のゲル分率が2質量%であり、両面粘着テープの総厚は144μmであった。
【0201】
[評価]
<被着体(H1)の作成>
ポリ塩化ビニル(重合度1400)を100質量部、フタル酸ジイソノニル34質量部、炭酸カルシウム25質量部、カーボンブラック3質量部、バリウム-亜鉛系安定剤3質量部を用いて、ポリ塩化ビニル樹脂コンパウンドを調製した。得られたポリ塩化ビニル樹脂コンパウンドを用いて、カレンダー成形(加工温度170℃)により厚み1.5mmのポリ塩化ビニル製シートを得た。このポリ塩化ビニル製シートを被着体(H1-1)とした。
【0202】
<評価1.可塑剤を含有する厚みが1mm以上の被着体(被着体(H))への初期接着力>
一方の離型ライナーを除去した両面粘着テープを、厚み25μmのPETフィルムに貼付し、幅20mm及び有効長100mmとなるように裁断したものを試験片とした。上記試験片を、23℃及び50%RHの雰囲気下に1日間放置した。また、両面粘着テープが貼付されていない上記被着体(H1-1)を20mm幅及び100mm長さに裁断したものを、上記試験片と同じ条件下に放置した。
【0203】
上記放置後、上記試験片と上記被着体(H1-1)とを23℃及び50%RH雰囲気下において、上記試験片の他方の離型ライナーを剥離除去した面に、上記被着体(H1-1)を貼付し2kgローラーを1往復させ、同雰囲気下に60分間放置することによってそれらを接着させて、サンプルを得た。
【0204】
上記サンプルの上記被着体(H1-1)から上記試験片を少し剥離し、上記被着体(H1-1)の片端を、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の下側チャックへ固定し、上記試験片を、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の上側チャックへ固定し、3mm/分及び300mm/分の速度で上側チャックを引っ張ることによって上記試験片を180°の角度で剥離し、その接着力(180度ピール接着力)を測定した。
【0205】
なお、後述する表中には記さないが、3mm/分の速度で引っ張った測定を、本発明の接着強度測定方法における実施例とし、一方、300mm/分の速度で引っ張った測定を、本発明の接着強度測定方法における比較例とする。評価2においても同様とする。
【0206】
<評価2.長期保管後の被着体(H1)への接着力(180度ピール接着力)>
上記評価1の初期接着力の評価方法と同様にして、一方の離型ライナーを除去した両面粘着テープを上記PETフィルムに貼付して、幅20mm及び有効長100mmとなるように裁断した試験片とした。他方の離型ライナーを剥離除去した面に、20mm幅及び100mm長さに裁断した上記被着体(H1-1)を貼付し、2kgローラーを1往復させ、同雰囲気下に60分間放置することによってそれらを接着させて、サンプルを得た。その後、上記サンプルを80℃の加熱条件下に7日間放置後、23℃及び50%RH雰囲気下へ取り出し同雰囲気下に60分間放置した。
【0207】
上述した環境下に放置した後のサンプルの上記被着体(H1-1)から上記試験片を少し剥離し、上記被着体(H1-1)の片端を、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の下側チャックへ固定し、上記試験片を、テンシロン引張試験機の引っ張り装置部の上側チャックへ固定し、3mm/分及び300mm/分の速度で上側チャックを引っ張ることによって上記試験片を180°の角度で剥離し、その接着力(180度ピール接着力)を測定した。
【0208】
<評価3.加熱促進試験後の被着体(H1)との密着具合>
上記評価2の加熱環境下に放置した後のサンプルの上記試験片を上記被着体(H1-1)から手で剥がした際の密着具合を以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:問題ない。
△:密着低下が見られる。
×:密着が明らかに不足している。浮きや剥がれがある。
【0209】
<評価4.加熱促進試験後の被着体(H1)の風合い評価>
上記評価2の接着力の測定を行った後の被着体(H1-1)の風合いについて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:両面粘着テープに貼付する前と概ね同等の風合いである。
〇:両面粘着テープに貼付する前と比較してやや風合いが硬くなるが、実用上問題ない。
×:両面粘着テープに貼付する前と比較して明らかに硬く、実用上問題がある。
【0210】
<評価5.加熱促進試験後の被着体(H1)のカール評価>
上記評価2の接着力の測定を行った後の被着体(H1-1)のカールについて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:平面に静置した際にカールをほとんど感じない。
〇:平面に静置した際、端部にカールを感じるが、実用上は問題ない。
×:平面に静置した際、全体的に顕著な実用上問題のあるカールを感じる。
【0211】
<評価6.被着体(H1)の風合い評価(SUS)>
PETフィルムの代わりにステンレス(SUS)板を用いた他は、上記評価1の初期接着力の評価方法と同様にして試験片を作成した。23℃及び50%RH雰囲気下において上記試験片を上記被着体(H1-1)に貼付し、2kgローラーを1往復させ、同雰囲気下に60分間放置することによってそれらを接着させて、サンプルを得た。その後上記サンプルを80℃の加熱条件下に7日間放置後、23℃及び50%RH雰囲気下へ取り出し、被着体(H1-1)の風合いについて、評価4と同じ基準で評価した。
【0212】
<評価7.被着体(H1)の風合い評価(EVAシート)>
SUS板をエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)シート(「ライトエヴァシート ND-307」、ライト化成工業株式会社)に変更した以外は、上記評価6の評価方法と同様にして、被着体(H1-1)の風合いについて、評価4と同じ基準で評価した。
【0213】
各評価結果を表に示す。なお、実施例1~3、比較例1については、被着体(H1-1)の厚みを1としたときの粘着層(a1)の厚みを算出した。また、実施例4、比較例2~3については、評価1で得た被着体(H1-1)の厚みを1としたときの両面粘着シートの総厚を算出した。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
実施例1~4の両面粘着テープは、厚みが1mm以上のポリ塩化ビニル製シートに貼付して加熱促進試験を実施したところ、ポリ塩化ビニル製シートの風合いの低下及びカールの発生が抑制されたことが示唆された(評価4、5)。
【0219】
一方、比較例1~3の両面粘着テープは、厚みが1mm以上のポリ塩化ビニル製シートに貼付して加熱促進試験を実施したところ、ポリ塩化ビニル製シートの風合いの低下及びカールの発生が確認された。比較例2、比較例3では、基材を介して設けられたそれぞれの粘着剤層の厚みは100μm以下であったが、透気性基材を用いているため両面粘着テープの総厚は100μmよりも大きくなり、粘着剤層の両面が可塑剤を溜め込み、ポリ塩化ビニル製シートの風合いの低下及びカールの発生を引き起こしているといえる。
【0220】
また、評価6及び評価7から、実施例の両面粘着テープの中でも、非透気性基材である基材Aを用いた実施例1~3の両面粘着テープは、透気性基材である基材Aを用いた実施例4の両面粘着テープと比較して、両面粘着テープを介してポリ塩化ビニル製シートと接合される他の被着体が可塑剤を受け入れやすい材質からなるEVAシートであっても、ポリ塩化ビニル製シートの風合いの低下が抑制されることが示唆された。これは非透気性基材によりポリ塩化ビニル製シートからの可塑剤の移行が阻止され、EVAシートによる可塑剤移行の促進が抑えられためと推量される。
【0221】
さらに、評価1及び評価2の接着力の測定において、300mm/分の引張速度で接着強度を測定した場合、比較例1~3の両面粘着テープとポリ塩化ビニル製シートとの貼合体では、評価4及び評価5が「×」だったが評価2において接着力の低下が確認されず、可塑剤の移行によるポリ塩化ビニル製シートの性状劣化と両面粘着テープの接着力低下との相関が取れなかった。一方で、引張速度3mm/分の引張速度で測定した場合、比較例1~3の両面粘着テープとポリ塩化ビニル製シートとの貼合体において、評価2の接着力は評価1の接着力より大きく低下しており、可塑剤の過剰移行の影響による接着力の低下が確認された。これにより、比較例の両面粘着テープでは、可塑剤の過剰移行が生じてポリ塩化ビニル製シートの劣化及び接着力の低下が生じていることが示唆された。また、低速剥離で接着強度を測定することで、評価4及び評価5が示すポリ塩化ビニル製シートの劣化と接着力の低下との相関が確認できた。
【0222】
同様に、実施例1~4の両面粘着テープとポリ塩化ビニル製シートとの貼合体に対し、引張速度3mm/分の引張速度で接着強度を測定した場合、評価2の接着力は評価1と同等、又は、比較例の場合よりも低下率が小さく、さらに、評価4及び評価5が「○」又は「◎」であった。このことから本発明の両面粘着テープは、可塑剤の過剰移行によるポリ塩化ビニル製シートの劣化及び接着力の低下を抑制したことが示唆された。また、低速剥離で接着強度を測定することで、両面粘着テープの接着力の実力値が測定されたと推量され、可塑剤の過剰移行が抑制されたことによる、ポリ塩化ビニル製シートの性状と両面粘着テープの接着力との間の相関が確認された。
【符号の説明】
【0223】
10A…構成Aの両面粘着テープ
10B…構成Bの両面粘着テープ
k1…非透気性基材
k2…透気性基材
a1、a2、b1、b2…粘着剤層
図1
図2