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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バーナーコーンライナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20240806BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240806BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20240806BHJP
   F23M 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   B23K 35/30 20060101ALN20240806BHJP
   C22C 29/08 20060101ALN20240806BHJP
   C22C 29/10 20060101ALN20240806BHJP
   C22C 29/06 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C22B15/00 102
F27D1/00 N
F27D3/18
F23M5/00 G
B23K35/30 340L
B23K35/30 340C
C22C29/08
C22C29/10
C22C29/06 B
C22C29/06 Z
B23K35/30 340M
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020098868
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191888
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武内 秀明
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038036(JP,A)
【文献】特開2012-137437(JP,A)
【文献】特開昭61-257810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
F27D 1/00 - 1/18
B23K 35/30
C22C 29/08
C22C 29/10
C22C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自熔製錬炉の精鉱バーナーに設けられるバーナーコーンライナーの製造方法であって、
前記バーナーコーンライナーを構成する円筒部材の内面に、ニッケル、クロム、ボロン、ケイ素を含む合金を基盤材料とし、前記基盤材料に炭化タングステンを、前記基盤材料と前記炭化タングステンの割合が前記基盤材料35W%、前記炭化タングステン65W%となる割合で分散させた溶接棒を用いた肉盛溶接によって保護層を形成する工程を有することを特徴とする、バーナーコーンライナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーコーンライナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅硫化物、ニッケル硫化物などの非鉄金属硫化物を原料とする熔融製錬には自熔製錬炉が用いられる。自熔製錬炉には製錬原料と反応用ガスとを炉内に供給する精鉱バーナーが備えられている。
【0003】
自熔製錬炉の操業においては、炉内の熔融製錬反応を制御し、安定した操業を行なうことが求められる。熔融製錬反応は製錬原料に含まれる金属硫化物の酸化反応である。この酸化反応は製錬原料と反応用ガスとの接触によって生じる。そのため、製錬原料と反応用ガスとがしっかりと混合しているほど、酸化反応が進行しやすい。このことから、精鉱バーナー内では製錬原料と反応用ガスとを混合しておく予混合が行なわれる。
【0004】
また、精鉱バーナーの中心には下端に分散コーンを備えた補助バーナーが設けられ、この補助バーナーの外側を円筒形状のバーナーコーンライナーが包囲している。さらに、分散コーンの上方には酸素を噴出する噴出孔が設けられ(例えば、特許文献1参照)、分散コーンの傾斜面と噴出孔から噴出した酸素とにより、製錬原料が適度に分散し、反応用ガスとの混合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-97411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この分散は補助バーナーとバーナーコーンライナーとの間に形成される隙間において行われるが、バーナーコーンライナーは、高酸化雰囲気という過酷な環境下で製錬原料と接触するため、その内面が摩耗、損傷しやすいという問題があった。バーナーコーンライナーの内面が摩耗、損傷すると、円筒形状が損なわれて製錬原料と反応ガスとの均一な混合、すなわち予混合が不完全となる恐れがある。特許文献1は、分散コーンを保護する方法を開示しているが、バーナーコーンライナーの内面を摩耗、損傷から保護する方法については開示していない。
【0007】
また、バーナーコーンライナー本体の耐摩耗性を高度に向上させることによっても、バーナーコーンライナーの摩耗や、損傷の抑制が可能であるが、ニッケルやクロムのほか、コバルトやタングステン等の高価な元素が大量に使用されてコストが大幅に上昇してしまう。更に、極めて高硬度な合金を形成するために、所望の寸法への機械加工が困難となってしまうため、そのような構成を採用するのは現実的ではないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、バーナーコーンライナー本体の耐摩耗性に拠らず、内面の摩耗や損傷を抑制できるバーナーコーンライナー、およびそのバーナーコーンライナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るバーナーコーンライナーは、自熔製錬炉の精鉱バーナー内に設けられるバーナーコーンライナーであって、
前記バーナーコーンライナー内に設けられた補助バーナーの周囲を包囲する、耐熱性の円筒部材を備え、
前記円筒部材の内面に、300℃以下の温度領域において、前記円筒部材よりも高硬度な保護層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バーナーコーンライナー内面の摩耗や損傷を抑制でき、バーナーコーンライナーの寿命延長を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自熔製錬炉の全体構成の一例を示した図である。
図2】本実施形態に係るバーナーコーンライナーを含む精鉱バーナーの構成の一例を示した図である。
図3】補助バーナーの外部構成の一例を示した図である。
図4】補助バーナーの内部構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
(自熔製錬炉)
まず、自熔製錬炉の全体構成を説明する。
【0014】
図1は、自熔製錬炉の全体構成の一例を示した図である。図1に示すように、自熔製錬炉FFはセトラー11を備えている。セトラー11の一端の上面には反応塔12が立設している。セトラー11の他端の上面には排煙道13が立設している。反応塔12の上端には精鉱バーナー20が設けられている。セトラー11の側壁には、カラミの高さにカラミ抜き口14が、カワの高さにカワ抜き口15が、互いに離間して設けられている。
【0015】
自熔製錬炉FFを用いた銅製錬操業は以下のように行なわれる。
【0016】
精鉱バーナー20から粉状の製錬原料と、反応用ガス(例えば酸素富化空気)とが反応塔12内に吹き込まれる。製錬原料には少なくとも硫化銅精鉱(以下、単に「銅精鉱」と称する。)とフラックスとが含まれている。フラックスは良質のカラミを製造するために添加されるものであり、例えば珪砂である。また、製錬原料には必要に応じて冷材などが含まれている。
【0017】
反応塔12内に吹きこまれた製錬原料は、補助バーナーの熱、反応塔12の炉壁内の輻射熱などにより昇温され、銅精鉱中の硫黄分および鉄分が燃焼することで熔融する。製錬原料が熔融した熔体はセトラー11内に溜められる。セトラー11内において熔体はカラミとカワとに比重分離する。
【0018】
熔体上部のカラミはカラミ抜き口14から排出され、電気錬かん炉で処理される。熔体下部のカワは、次工程の転炉の要求に応じて適量がカワ抜き口15から抜き出される。反応塔12およびセトラー11内で発生した製錬ガスは、排煙道13を通って自熔製錬炉FFから排出され、排熱ボイラーで熱が回収される。
【0019】
(精鉱バーナー)
つぎに、精鉱バーナーの構成を説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るバーナーコーンライナーを含む精鉱バーナーの構成の一例を示した図である。図2に示すように、精鉱バーナー20は反応用ガスが導入されるウインドボックス21を備えている。ウインドボックス21の下部は下方に行くにつれて径が絞られたコーン状に形成されており、その下端に円筒状のバーナーコーンライナー22が接続されている。バーナーコーンライナー22は反応塔12の上端に立設している(図1参照)。また、バーナーコーンライナー22には点検口23が設けられている。
【0021】
精鉱バーナー20は補助バーナー30を備えている。補助バーナー30はウインドボックス21およびバーナーコーンライナー22の内部を貫き、鉛直に配置されている。補助バーナー30はバーナーコーンライナー22の中心に配置されている。補助バーナー30の炎が噴射される下端は、バーナーコーンライナー22の下端付近に位置している。
【0022】
補助バーナー30の外周を囲むように精鉱シュート24が設けられている。精鉱シュート24は補助バーナー30と同軸の筒部材である。精鉱シュート24はウインドボックス21内に配置されており、ウインドボックス21内で昇降可能となっている。製錬原料は精鉱シュート24を通して自熔製錬炉FF内に供給される。
【0023】
精鉱シュート24の外周を囲むように風速調整器25が設けられている。風速調整器25はウインドボックス21内に配置されており、精鉱シュート24とは独立してウインドボックス21内で昇降可能となっている。風速調整器25を昇降させることで、ウインドボックス21からバーナーコーンライナー22に供給される反応用ガスの流路幅を調整できる。これにより、反応用ガスの流速を調整できる。
【0024】
(バーナーコーンライナー)
つぎに、バーナーコーンライナー22について説明する。
【0025】
まず、本発明の実施形態に係るバーナーコーンライナー22を構成する円筒部材22aについて説明し、その後、この円筒部材22aの内面に形成される保護層22bについて説明する。
【0026】
<円筒部材について>
図2に示すように、円筒部材22aは、バーナーコーンライナー22の本体を構成する円筒形状の部材であり、後述の耐熱性の材料で作成されている。円筒部材22aの側面には、外側に突出した点検口23が設けられている。
【0027】
バーナーコーンライナー22の内部には、予熱された粉状の製錬原料と反応用ガス(例えば酸素富化空気)とが供給され、製錬原料の燃焼による輻射熱によって、その内面(円筒部材22aの内面)が300℃程度に昇温する。このため、前記の円筒部材22aは少なくともこの温度に耐える耐熱性を有する必要があり、この耐熱性を満たす材料で作成される。例えば、18Cr-8Ni-0.06Cを代表組成とするSUS304や、25Cr-20Ni-0.06Cを代表組成とするSUS310S等の、オーステナイト系ステンレス鋼はこの耐熱性を満たす材料として好ましく使用することができる。
【0028】
ここで、前記の円筒部材22aは、その内部において反応用ガスとの製錬原料との混合が行われ、円筒部材22aの内面への製錬原料の衝突や接触による摩耗が懸念されることから、前記の円筒部材22aは、耐摩耗性を向上できる耐熱性の材料で作成してもよい。例えば、13Cr-0.1Cを代表組成とするSUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼は、300℃までの温度領域においてSUS304やSUS310Sよりも高硬度となる特性を有し、耐摩性を付加する優れた耐熱性の材料である。
【0029】
しかしながら、円筒部材22a全体について、耐摩耗性が極めて高く、耐熱性も有する高硬性材料で構成すると、材料自体のコストが増加するとともに、円筒部材22aの加工が困難になり、加工コストも増大してしまう。更には、材料の硬度が高すぎて、加工自体を適切に行うことができず、性能を担保できないこともあり得る。
【0030】
本発明の実施形態に係るバーナーコーンライナー22は、バーナーコーンライナー22の本体を構成する円筒部材22a自体に、高度な耐摩耗性を要求するものではないため、円筒部材22aの材料の選定に際しては、少なくとも耐熱性が確保されていればよく、耐摩耗性に関しては、例えば、作成コストと、機械加工性を考慮して行えばよい。
【0031】
<保護層について>
図2に示すように、保護層22bは、円筒部材22aの内面を製錬原料の衝突や接触から守るために、内筒部材22aの内面に設けられ、300℃以下の温度領域において前記円筒部材22aよりも高硬度となる材料で形成される。
【0032】
保護層22bを設けることにより、母材となる円筒部材22a自体の耐摩耗性に拠らず、円筒部材22aの内面の耐摩耗性を向上させて、円筒部材22aを保護することができる。これにより、バーナーコーンライナー22の寿命を効果的に延長することが可能である。
【0033】
ここで、前記の保護層22bを形成するための材料は、300℃以下の温度領域において、母材となる円筒部材22aの硬度よりも高硬度な保護層22bを形成することのできる材料である必要があり、円筒部材22aの材料に応じて選択すればよい。
【0034】
例えば、円筒部材22aがSUS304相当の耐熱性の材料で作成されている場合であれば、300℃以下の温度領域においてより硬度が高く、耐摩耗性の優れたSUS410相当の耐熱性を有する材料を、保護層22bを形成するための材料として使用することができる。これにより、円筒部材22aの内面を摩耗から保護することができ、バーナーコーンライナー22の寿命延長を図ることが可能である。
【0035】
ここで、保護層22bを形成するための材料は、より高硬度な保護層22bを構成できる材料であるほうが、円筒部材22aを摩耗から保護する効果が高く、より有利である。ところが、このような材料は、通常、高価な元素を数多く含み、極めて高硬度となるため、その使用に制約があることが多い。例えば、上述のように、円筒部材22aの材料としてこのような材料を使用することは困難である。
しかしながら、本実施形態において形成される保護層22bは、バーナーコーンライナー22の円筒部材22aの内面を被覆するものであり、且つ、さらなる機械加工を必要としないため、このような高硬度の材料も容易に使用可能である。これにより、精錬原料と接触、衝突する円筒部材22aの内面のみをより一層強化することができ、製品寿命を延ばすことができる。
【0036】
例えば、上記の円筒部材22aがSUS304相当の耐熱性の材料で作成されている場合において、例えば、SUS410相当の材料よりもより高硬度な保護層22bを形成できる30%程度のクロム、4~15%のタングステンを含むステライト相当の材料を使用することも可能である。
【0037】
このステライト相当の材料が使用された態様においては、SUS410相当の材料が使用された態様に比して、より高硬度な保護層22bを形成することが可能であり、より高い保護効果が期待できる。このほか、このような高い保護効果を得るために、30%程度のクロムを含有する30クロム鋳鉄相当の材料や、ニッケルを主成分とし、10%程度のクロム、ケイ素とボロンを含有したコルモノイ相当の材料を、保護層22bを形成するための材料として使用してもよい。
【0038】
さらに、上記にて説明した種々の材料を基盤材料(マトリックス)とし、これに炭化物系、窒化物系、酸化物系等の種々のセラミック粉末を分散させた材料を使用してもよい。これにより、さらに高度な保護効果が期待できる。
【0039】
この場合、耐摩耗性の改善効果の点から、分散させるセラミック粉末として、例えば、炭化クロム、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物系セラミック粉末を採用することが好ましい。また、分散させるセラミック粉末の粒径は特に限定されないが、粒径10~100μmの範囲のものが好ましく、また、基盤材料に対するセラミック粉末の配合割合は、20W%以上、80W%以下とすることが好ましい。これにより、保護層22bの靭性を保ちつつ、セラミック粉末を分散させることによる強化作用を効果的に発揮することが可能である。
【0040】
(補助バーナー)
つぎに、補助バーナー30の構成を説明する。
【0041】
図3は、補助バーナーの構成の一例を示した図である。図3に示すように、補助バーナー30は吹込管31を有する。吹込管31は鉛直に配置された中空の管である。以下、吹込管31のうち、鉛直方向に沿って下端から所定幅の領域を下端部31aと称し、残部を本体部31bと称する。下端部31aには、吹込管31の内部と外部とを連通する噴出孔32が周方向に沿って複数形成されている。
【0042】
吹込管31(下端部31a)の下端には分散コーン33が設けられている。分散コーン33は下方に広がる円錐状の部材である。
【0043】
図4は、補助バーナーの内部構成の一例を示した図である。図4に示すように、吹込管31の内部には内管34が設けられている。内管34は吹込管31よりも小径の中空の管である。吹込管31と内管34とは、吹込管31を外側として、同軸に配置されている。分散コーン33は吹込管31の下端と、内管34の下端部とに固定されている。
【0044】
内管34の内部には、重油バーナー35が配置されている。重油バーナー35のノズル35aは、内管34の下端付近に配置されている。
【0045】
吹込管31と内管34との間には隙間があり、ガスの流路となっている。吹込管31にはこの流路に通ずる第1供給口36が設けられている。第1供給口36を通して、吹込管31の内部にガスが供給される。吹込管31の内部に供給されたガスは、吹込管31と内管34との間の流路を通り、噴出孔32から噴出する。この際、ガスは噴出孔32を通って、吹込管31の内部から外部に向かって噴出する。なお、吹込管31に供給されるガスは特に限定されないが、高圧の酸素または酸素富化空気が好ましい。
【0046】
内管34には、その内部に通ずる第2供給口37が設けられている。第2供給口37を通して、内管34の内部に酸素または酸素富化空気が供給される。内管34の内部に供給された酸素または酸素富化空気は、内管34の内部を通って、下端から排出される。この際、酸素または酸素富化空気は、重油バーナー35のノズル35aから噴出した重油の着火および燃焼に供される。
【0047】
製錬原料は精鉱シュート24を経て落下する(図2参照)。落下した製錬原料は分散コーン33の傾斜面により分散する。また、製錬原料は噴出孔32から噴出するガスによっても分散する。これにより、製錬原料と反応用ガスとが混合される。
【0048】
(バーナーコーンライナーの製造方法)
つぎに、本発明の実施形態に係るバーナーコーンライナー22の製造方法について説明する。
まず、円筒部材22aの作成方法であるが、その作成方法は特に限定されない。例えば、所望の耐熱性が得られる成分組成となるように調整された原材料を溶解炉で熔融し、これを鋳造して得た鋳造材を、所望の形状に機械加工を行うことにより作成してもよいし、或いは、所望の耐熱性が得られる圧延材料を、曲げ加工や、機械加工等を組み合わせて、所望の形状に組み立てて作成してもよい。
【0049】
そして、このようにして作成された円筒部材22aの内面に対し、300℃以下の温度領域において、円筒部材22aの硬度よりも高硬度となる保護層22bを形成する。ここで、この保護層22bの形成方法は特に限定されないが、例えば、保護層22bを形成するための成分構成を有する溶接材料を、熱源で熔融して円筒部材22aの内面に対して被覆、肉盛する肉盛溶接であれば、簡便であり好ましい。こうした肉盛溶接に使用できる溶接材料として、例えば、JISZ3251「硬化肉盛用被覆アーク溶接棒」で規定される13クロムステンレス系の溶接棒であるDF4Aや、30クロム鋳鉄系の溶接棒であるDFCrAを挙げることができる。この場合、形成する保護層22bの厚みの分だけ、予め、母材となる円筒部材22aの掘り込み加工を行っておき、その上に保護層22bの形成手段としての肉盛溶接を行うようにすれば、円筒内面に対して保護層22bが凸部に形成されることがなく、反応用ガスとの製錬原料との混合が阻害される恐れがなくなるのでより好ましい。
【0050】
その他、保護層22bの形成方法は問わず、物理蒸着、化学蒸着を含む成膜処理により堆積した膜、フィルムのような膜、円筒部材22aの内周面に沿った固体部材等、種々の形態及び方法で形成可能である。保護層22bが固体部材で構成されている場合には、保護層22bのことを、保護部材と呼んでもよい。
【0051】
次に、本発明の実施形態に係るバーンコーンライナーの実施例について説明する。
【0052】
[実施例]
[実施例1]
SUH310相当の耐熱性の材料を用いて作成した肉厚50mmの円筒部材からなるバーナーコーンライナーの内面全体に8mm深さの除去加工を行った。除去加工後の円筒部材の内面に、ニッケル、クロム、ボロン、ケイ素を含む合金を基盤材料とし、この基盤材料に炭化タングステンを、基盤材料と炭化タングステンの割合が基盤材料35W%、炭化タングステン65W%となる割合に分散させた溶接棒を用いて肉盛溶接を行い、円筒部材の内面に、SUH310よりも300℃以下の温度領域において高硬度となる保護層を形成した。ここで、この肉盛溶接により形成される保護層の厚みは8mmとし、よって、この層を含む耐熱部材の厚みが50mmとなるように調整した。
【0053】
つぎに、このようにして作成したバーナーコーンライナーを精鉱バーナーに組み込み、自熔製錬炉の操業を6カ月間行なった。その後、バーナーコーンライナーを取り出し、その内面の磨耗状況を観察した。
【0054】
その結果、最大減肉部の厚みは48mmであり、よって、内面の最大摩耗深さは2mmであった。6か月経過しても、摩耗による減肉が非常に少ないということが示された。
[比較例1]
バーナーコーンライナーの内面に対する除去加工を行わず、また、内面に保護層を形成せずに精鉱バーナーに組み込み操業を行ったこと以外は、実施例と同様に実施した。
【0055】
その結果、使用3カ月間で著しい減肉が発生し、その一部で穴が開いて使用不能となった。
【0056】
以上より、本発明が適用されたバーナーコーンライナーは、効果的に内面の摩耗や損傷を抑制することができるバーナーコーンライナーであることが確認できた。さらに、本発明のバーナーコーンライナーの製造方法は、バーナーコーンライナーの本体を構成する円筒部材の耐摩耗性に拠らず、容易に円筒部材を保護することができ、且つ、効果的に寿命を延ばすことが可能であることが確認できた。
【0057】
このように、本発明の、バーナーコーンライナー、およびその製造方法は、バーナーコーンライナー内面の摩耗や損傷を抑制でき、バーナーコーンライナーの寿命延長を効果的に図ることができるので、その工業的価値は極めて大きい。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
FF 自熔製錬炉
11 セトラー
12 反応塔
13 排煙道
14 カラミ抜き口
15 カワ抜き口
20 精鉱バーナー
21 ウインドボックス
22 バーナーコーンライナー
22a 円筒部材
22b 保護層
23 点検口
24 精鉱シュート
25 風速調整器
30 補助バーナー
31 吹込管
31a 下端部
31b 本体部
32 噴出孔
33 分散コーン
34 内管
35 重油バーナー
35a ノズル
36 第1供給口
37 第2供給口
図1
図2
図3
図4