(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】FRPの成形方法およびコア
(51)【国際特許分類】
B29C 70/46 20060101AFI20240806BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20240806BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20240806BHJP
B29C 43/02 20060101ALI20240806BHJP
B29C 33/52 20060101ALI20240806BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20240806BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C70/06
B29C43/32
B29C43/02
B29C33/52
B29K101:10
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020111784
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加地 暁
(72)【発明者】
【氏名】高野 恒男
(72)【発明者】
【氏名】本間 孝志
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/187399(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079824(WO,A1)
【文献】特開2015-016694(JP,A)
【文献】特開2020-032535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/46
B29C 70/06
B29C 43/32
B29C 43/02
B29C 33/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体とその表面を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグを該コアと共に金型内に配置し、該金型内で硬化させて硬化物を得る硬化工程とを有し、該硬化工程では該プリプレグの少なくとも一部が該コアの膨張により加圧されるFRP成形方法であって、該コア本体が第一ワックスからなるマトリクスと有機材料からなるフィラービーズとからなること、
前記フィラービーズが前記第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなること、および、該硬化工程の後に該フィラービーズが該マトリクスと共に該硬化物から除去されることを特徴とするFRP成形方法。
【請求項2】
前記硬化工程において前記マトリクスの一部または全部が融解する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記フィラービーズの重量にして90%以上が0.1cm以上、0.5cm以上または1cm以上の粒径を有する、請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記外皮が前記コア本体の表面全部を覆っている、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項5】
前記硬化工程における硬化温度と前記マトリクスの融点の差が60℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項6】
前記マトリクスの融点が80℃未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項7】
前記硬化工程における硬化温度が140℃以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項8】
前記フィラービーズの重量にして90%以上が同じ粒形状と粒径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項9】
前記同じ粒形状が、球、円柱、角を丸めた円柱、角柱または角を丸めた角柱から選ばれるいずれかの形状である、請求項8に記載の成形方法。
【請求項10】
前記フィラービーズがポリマーからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項11】
前記第一ワックスと前記第二ワックスの一方が極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスであり、他方が炭化水素を主成分とするワックスである、請求項
1~10のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項12】
前記極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスが、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有する、請求項
11に記載の成形方法。
【請求項13】
前記炭化水素を主成分とするワックスが、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスから選ばれる一種以上のワックスを含有する、請求項
11または
12に記載の成形方法。
【請求項14】
前記硬化工程の前に前記コアを予備加熱する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項15】
高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加され、前記予備加熱が誘導加熱により行われる、請求項
14に記載の成形方法。
【請求項16】
マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加され、前記予備加熱がマイクロ波加熱により行われる、請求項
14に記載の成形方法。
【請求項17】
前記コア準備工程で準備された段階において、前記コア本体が前記フィラービーズを含有する第一タイプ個片と前記フィラービーズを含有しない第二タイプ個片とを含む複数の個片からなる、請求項1~
16のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項18】
前記第一タイプ個片が前記外皮と接しないように配置されている、請求項
17に記載の成形方法。
【請求項19】
前記コア準備工程で準備された段階の前記コアにおいては前記フィラービーズが融着により一時的に一体化されており、前記コア準備工程の後において前記マトリクスの膨張により前記フィラービーズが互いに離れ離れとなる、請求項1~
18のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項20】
前記プリプレグが炭素繊維プリプレグである、請求項1~
19のいずれか一項に記載の成形方法。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか
一項に記載の成形方法でFRPを成形することを含む、FRP製品の製造方法。
【請求項22】
コア本体とその表面を覆う外皮とからなり、プリプレグを金型内で硬化させるときに該プリプレグの少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、該コア本体が第一ワックスからなるマトリクスと有機材料からなるフィラービーズとからなること
と、前記フィラービーズが前記第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなることを特徴とするコア。
【請求項23】
前記フィラービーズの重量にして90%以上が0.1cm以上、0.5cm以上または1cm以上の粒径を有する、請求項
22に記載のコア。
【請求項24】
前記外皮が前記コア本体の表面全部を覆っている、請求項
22または
23に記載のコア。
【請求項25】
前記マトリクスの融点が80℃未満である、請求項
22~
24のいずれか一項に記載のコア。
【請求項26】
前記フィラービーズが140℃以下の温度で融解しない、請求項
22~
25のいずれか一項に記載のコア。
【請求項27】
前記フィラービーズの重量にして90%以上が同じ粒形状と粒径を有する、請求項
22~
26のいずれか一項に記載のコア。
【請求項28】
前記同じ粒形状が、球、円柱、角を丸めた円柱、角柱または角を丸めた角柱から選ばれるいずれかの形状である、請求項
27に記載のコア。
【請求項29】
前記フィラービーズがポリマーからなる、請求項
22~
28のいずれか一項に記載のコア。
【請求項30】
前記第一ワックスと前記第二ワックスの一方が極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスであり、他方が炭化水素を主成分とするワックスである、請求項
22~29のいずれか一項に記載のコア。
【請求項31】
前記極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスが、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有する、請求項
30に記載のコア。
【請求項32】
前記炭化水素を主成分とするワックスが、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスから選ばれる一種以上のワックスを含有する、請求項
30または
31に記載のコア。
【請求項33】
高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加されている、請求項
22~
32のいずれか一項に記載のコア。
【請求項34】
マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加されている、請求項
22~
32のいずれか
一項に記載のコア。
【請求項35】
前記コア本体が、前記フィラービーズを含有する第一タイプ個片と前記フィラービーズを含有しない第二タイプ個片とを含む複数の個片からなる、請求項
22~
34のいずれか一項に記載のコア。
【請求項36】
前記第一タイプ個片が前記外皮と接しないように配置されている、請求項
35に記載のコア。
【請求項37】
前記フィラービーズ
が融着により、前記マトリクスの膨張によって互いに離れ離れ可能に一体化されている、請求項
22~
36のいずれか一項に記載のコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、FRP(Fiber Reinforced Plastic)の成形方法およびFRPの成形に用いられるコアに関する。
【背景技術】
【0002】
FRPは自動車用の補強部材(reinforcement)を含む様々な用途で使用されている。
中空部や断面U字形部を有するFRPの成形方法として、プリプレグ予備成形体(prepreg preform)をワックスからなるコアと共に金型内に配置し、該金型内で該コアを膨張させることにより、加圧しながら硬化させる方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ワックスからなるコアを用いてプリプレグを加圧しながら硬化させることを含むFRP成形方法に関連する有益な改良を提供することを主たる目的とする。
本発明の各実施形態により解決される課題は、本明細書中に明示的または黙示的に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は以下を含むが、これらに限定されるものではない。
[a1]コア本体とその表面を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程と、プリプレグを該コアと共に金型内に配置し、該金型内で硬化させて硬化物を得る硬化工程とを有し、該硬化工程では該プリプレグの少なくとも一部が該コアの膨張により加圧されるFRP成形方法であって、該コア本体が第一ワックスからなるマトリクスと有機材料からなるフィラービーズとからなること、および、該硬化工程の後に該フィラービーズが該マトリクスと共に該硬化物から除去されることを特徴とするFRP成形方法。
[a2]前記硬化工程において前記マトリクスの一部または全部が融解する、[a1]に記載の成形方法。
[a3]前記フィラービーズの重量にして90%以上が0.1cm以上、0.5cm以上または1cm以上の粒径を有する、[a1]または[a2]に記載の成形方法。
[a4]前記外皮が前記コア本体の表面全部を覆っている、[a1]~[a3]のいずれかに記載の成形方法。
[a5]前記硬化工程における硬化温度と前記マトリクスの融点の差が60℃以上である、[a1]~[a4]のいずれかに記載の成形方法。
[a6]前記マトリクスの融点が80℃未満である、[a1]~[a5]のいずれかに記載の成形方法。
[a7]前記硬化工程における硬化温度が140℃以上である、[a1]~[a6]のいずれかに記載の成形方法。
[a8]前記フィラービーズの重量にして90%以上が同じ粒形状と粒径を有する、[a1]~[a7]のいずれかに記載の成形方法。
[a9]前記同じ粒形状が、球、円柱、角を丸めた円柱、角柱または角を丸めた角柱から選ばれるいずれかの形状である、[a8]に記載の成形方法。
[a10]前記フィラービーズがポリマーからなる、[a1]~[a9]のいずれかに記載の成形方法。
[a11]前記フィラービーズが前記第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなる、[a1]~[a9]のいずれかに記載の成形方法。
[a12]前記第一ワックスと前記第二ワックスの一方が極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスであり、他方が炭化水素を主成分とするワックスである、[a11]に記載の成形方法。
[a13]前記極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスが、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有する、[a12]に記載の成形方法。
[a14]前記炭化水素を主成分とするワックスが、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスから選ばれる一種以上のワックスを含有する、[a12]または[a13]に記載の成形方法。
[a15]前記硬化工程の前に前記コアを予備加熱する、[a1]~[a14]のいずれかに記載の成形方法。
[a16]高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加され、前記予備加熱が誘導加熱により行われる、[a15]に記載の成形方法。
[a17]マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加され、前記予備加熱がマイクロ波加熱により行われる、[a15]に記載の成形方法。
[a18]前記コア準備工程で準備された段階において、前記コア本体が前記フィラービーズを含有する第一タイプ個片と前記フィラービーズを含有しない第二タイプ個片とを含む複数の個片からなる、[a1]~[a17]のいずれかに記載の成形方法。
[a19]前記第一タイプ個片が前記外皮と接しないように配置されている、[a18]に記載の成形方法。
[a20]前記コア準備工程で準備された段階の前記コアにおいては前記フィラービーズが融着により一時的に一体化されており、前記コア準備工程の後において前記マトリクスの膨張により前記フィラービーズが互いに離れ離れとなる、[a1]~[a19]のいずれかに記載の成形方法。
[a21]前記プリプレグが炭素繊維プリプレグである、[a1]~[a20]のいずれかに記載の成形方法。
[a22][a1]~[a21]のいずれかに記載の成形方法でFRPを成形することを含む、FRP製品の製造方法。
【0006】
[b1]コア本体とその表面を覆う外皮とからなり、プリプレグを金型内で硬化させるときに該プリプレグの少なくとも一部を加圧するために用いられるコアであって、該コア本体が第一ワックスからなるマトリクスと有機材料からなるフィラービーズとからなることを特徴とするコア。
[b2]前記フィラービーズの重量にして90%以上が0.1cm以上、0.5cm以上または1cm以上の粒径を有する、[b1]に記載のコア。
[b3]前記外皮が前記コア本体の表面全部を覆っている、[b1]または[b2]に記載のコア。
[b4]前記マトリクスの融点が80℃未満である、[b1]~[b3]のいずれかに記載のコア。
[b5]前記フィラービーズが140℃以下の温度で融解しない、[b1]~[b4]のいずれかに記載のコア。
[b6]前記フィラービーズの重量にして90%以上が同じ粒形状と粒径を有する、[b1]~[b5]のいずれかに記載のコア。
[b7]前記同じ粒形状が、球、円柱、角を丸めた円柱、角柱または角を丸めた角柱から選ばれるいずれかの形状である、[b6]に記載のコア。
[b8]前記フィラービーズがポリマーからなる、[b1]~[b7]のいずれかに記載のコア。
[b9]前記フィラービーズが前記第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなる、[b1]~[b7]のいずれかに記載のコア。
[b10]前記第一ワックスと前記第二ワックスの一方が極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスであり、他方が炭化水素を主成分とするワックスである、[b9]に記載のコア。
[b11]前記極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスが、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有する、[b10]に記載のコア。
[b12]前記炭化水素を主成分とするワックスが、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスから選ばれる一種以上のワックスを含有する、[b10]または[b11]に記載のコア。
[b13]高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加されている、[b1]~[b12]のいずれかに記載のコア。
[b14]マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子が前記コアに添加されている、[b1]~[b12]のいずれかに記載のコア。
[b15]前記コア本体が、前記フィラービーズを含有する第一タイプ個片と前記フィラービーズを含有しない第二タイプ個片とを含む複数の個片からなる、[b1]~[b14]のいずれかに記載のコア。
[b16]前記第一タイプ個片が前記外皮と接しないように配置されている、[b15]に記載のコア。
[b17]前記フィラービーズが融着により一時的に一体化されている、[b1]~[b16]のいずれかに記載のコア。
【発明の効果】
【0007】
ワックスからなるコアを用いてプリプレグを加圧しながら硬化させることを含むFRP成形方法に関連する有益な改良が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るFRP成形方法で使用され得るコアの構造例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るFRP成形方法で使用され得るコアの構造例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、プリプレグ予備成形体がコアの周囲に配置されたところを示す断面図である。
【
図4】
図4は、プリプレグ予備成形体が、その内側に包まれたコアと共に金型内に配置されたところを示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、プリプレグシートの端部同士間の突き合わせ接合部を示す断面図であり、
図5(b)は、プリプレグシートの端部同士間のオーバーラップ接合部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、ワックス除去工程においてFRP成形品の内部からコア本体の材料を排出させるところを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
プリプレグ(prepreg: pre-impregnated composite material)は、FRP製品の製造で中間材料として使用される、繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合体である。FRPは一般に、プリプレグを予備成形したうえ、金型内で硬化させることにより成形される。
プリプレグにおける繊維の形態は、長繊維、織物、不織布、ノンクリンプファブリック、短繊維など様々である。ひとつの平面内で一方向に引き揃えた長繊維を樹脂で含浸させたものは一方向プリプレグ(UDプリプレグ)と呼ばれ、織物を樹脂で含浸させたものはクロスプリプレグと呼ばれる。短繊維からなるマットを樹脂で含浸させたプリプレグはSMC(sheet molding compound)と呼ばれる。単一の長繊維束を樹脂で含浸させたプリプレグは、トウプリプレグと呼ばれる。
プリプレグに使用される繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維である。2種以上の繊維が併用されることもある。
炭素繊維と熱硬化性樹脂とからなるプリプレグは炭素繊維プリプレグと呼ばれる。
【0010】
プリプレグに用いられる熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂とも呼ばれる)、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂である。2種以上の熱硬化性樹脂が混合されて用いられることもある。
プリプレグにおける熱硬化性樹脂の含有量は、限定するものではないが、多くの場合15~50重量%である。該含有量は、15~20重量%、20~25重量%、25~40重量%、40~45重量%または45~50重量%であり得る。
プリプレグには、様々な添加剤が添加され得る。例えば、難燃剤、消泡剤、脱泡剤、離型剤、粒子状フィラー、着色剤、シランカップリング剤等である。
【0011】
1.FRPの成形方法
本発明の実施形態のひとつはFRPの成形方法に関する。
好適例に係るFRP成形方法は、大きく分けて次の3つの工程からなる。
(i)コア本体とその表面を覆う外皮とからなるコアを準備するコア準備工程。
(ii)プリプレグを該コアと共に金型内に配置し、該金型内で硬化させて硬化物(FRP)を得る硬化工程。
(iii)硬化工程の後、該硬化物から該コア本体の材料を除去するコア除去工程。
このFRP成形方法は、屈曲または湾曲した壁面を含む構造を備えるFRP製品の製造に好ましく用いることができる。
屈曲または湾曲した壁面を含む構造の典型例は、中空構造、筒状構造、断面U字形構造および断面L字形構造である。例えば、中空の直方体は、90度の角度で屈曲した壁面を有している。
アンダーカットを有する構造物は、構造中に屈曲または湾曲した壁面を含むことが多い。
以下、FRPからなる中空の直方体を成形する場合を例に、図面を参照しつつ、実施形態に係るFRP成形方法を詳細に説明する。
【0012】
(1)コア準備工程
コア準備工程では、コア本体とその表面を覆う外皮とからなるコアが準備される。コア本体は、第一ワックスからなるマトリクスと、有機材料からなるフィラービーズとからなる。
粒径の定義は後述する。
図1はかかるコアの構造を示す断面図である。
図1において、コア3は、マトリクス1aとフィラービーズ1bとからなるコア本体1と、コア本体1の表面を覆う外皮2とから構成されている。
コア本体1において、マトリクス1aはフィラービーズ1b間の隙間を充たしている。マトリクス1a中にフィラービーズ1bが埋め込まれていると言い換えてもよい。
【0013】
第一ワックスからなるマトリクス1aは、室温(25℃)において固体であり、その融点は通常40℃以上である。マトリクス1aの融点は50℃以上であってもよい。
マトリクス1aの融点は、硬化工程における硬化温度より低くなくてはならない。硬化温度は、通常120℃から180℃の範囲内である。
第一ワックスは、炭化水素を主成分とするワックスであってもよいし、極性基を有する有機化合物を含有するワックスであってもよく、必要な特性を備えるものを市販のワックスから適宜選択して用いることができる。
【0014】
硬化工程における硬化温度とマトリクス1aの融点との温度差は、好ましくは50℃超、より好ましくは60℃超、更に好ましくは70℃超である。この温度差が大きい程、硬化工程においてマトリクス1aが早く融解する。
硬化工程における硬化温度がどうであろうと、マトリクス1aの融点は80℃未満であることが好ましく、70℃未満であることがより好ましい。融点が低い程、硬化工程においてマトリクス1aは早く融解するからである。
【0015】
フィラービーズ1bは有機材料からなるため、比較的低い比重を有する。このことは、コア3を軽量化し、そのハンドリングを容易にするうえで有利である。
フィラービーズ1bをなす有機材料には、硬化工程において実質的に分解も融解もしないものが選ばれる。フィラービーズ1bの材料には、更に、硬化工程において、マトリクス1aに実質的に溶解しないことと、マトリクス1aをなす第一ワックスにより実質的に膨潤しないこととが要求される。フィラービーズ1bはかかる有機材料を用いて形成されるので、その粒形状が硬化工程の前後で大きく変わることがない。
フィラービーズ1bは、硬化工程で受ける圧力に耐える必要があることから、好ましくは中実である。
【0016】
フィラービーズ1bの材料の一例はポリマーである。
ポリマーは熱可塑性であっても熱硬化性であってもよく、必要な特性を備えるものを適宜選択して用いることができる。
熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリアミドイミド、フッ素樹脂などが例示される。
熱硬化性ポリマーとしては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが例示される。
【0017】
フィラービーズ1bの材料の他の一例はワックスである。すなわち、フィラービーズ1bは、マトリクス1aをなす第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなり得る。
第一ワックスと第二ワックスが相溶しないとき、第二ワックスは第一ワックスの融解物に実質的に溶解しない。また、第一ワックスの融解物と第二ワックスの融解物をひとつの容器に入れたとき、両者は二相に分離する。
【0018】
本発明者等が調べたところでは、極性基を有する有機化合物を含有するワックスと、炭化水素を主成分とするワックスは、互いに相溶しない傾向にある。
極性基とは、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基のような、炭素と酸素の結合または炭素と窒素の結合を含む官能基(エーテル基を除く)である。主要成分としてヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルを含有するワックスは、極性基を有する有機化合物を含有するワックスの典型例である。
炭化水素を主成分とするワックスには、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスのような石油ワックスの他、合成ワックスであるフィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどがある。
【0019】
第一ワックスと第二ワックスは、いずれか一方が極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスであり、他方が炭化水素を主成分とするワックスであり得る。
極性基を有する有機化合物を一種以上含有するワックスは、例えば、ヒドロキシ脂肪酸アミド、脂肪酸アミド、ヒドロキシ脂肪酸エステルおよび脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の化合物を含有し得る。
炭化水素を主成分とするワックスは、例えば、石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスから選ばれる一種以上のワックスを含有し得る。
【0020】
フィラービーズ1bの粒形状は球であることが好ましいが、限定するものではない。フィラービーズ1bの粒形状は、例えば、円柱、角を丸めた円柱、角柱(四角柱、六角柱、八角柱など)、角を丸めた角柱などであってもよい。好ましい粒形状のひとつである立方体は角柱の一種である。
フィラービーズ1bの殆ど全て、例えば、重量にして90%以上が同じ粒形状と粒径を有するとき、マトリクス1aとフィラービーズ1bの体積比が制御し易い利点がある。
【0021】
フィラービーズ1bの粒形状が球のとき、その粒径は球の直径を意味する。フィラービーズ1bの粒形状が球以外であるときは、当該粒と同じ体積を有する球の直径を、その粒径と見なす。
フィラービーズ1bは、重量にして90%以上が好ましくは0.1cm以上、より好ましくは0.5cm以上の粒径を有する。フィラービーズ1bは重量にして90%以上が粒径1cm以上、1.5cm以上または2cm以上の粒からなってもよい。粒径が大きい程、コア除去工程におけるフィラービーズ1bの除去は容易である。
フィラービーズ1bの粒径に特段の上限はないが、実際には、コア本体1のサイズや、コア本体1が脆くなることなく含有し得るフィラービーズ1bの量により制約される。成形すべきFRP製品が中空の場合には、そのFRP製品に設けることが許される排出孔(後述する)のサイズによっても、フィラービーズ1bの粒径が制限される。
【0022】
一例において、コア本体1は、第一ワックスとフィラービーズ1bの混合物から、注型成形により作製することができる(コア本体の第一の作製法)。
他の一例において、コア本体1は、フィラービーズ1bを容器に充填し、次いで第一ワックスの融解物を該容器に注入した後、該容器内で第一ワックスを固化させることによって作製することができる(コア本体の第二の作製法)。
コア本体の第一の作製法または第二の作製法により得られたコア本体1の外形は、必要に応じて機械加工により整えることができる。
【0023】
上述のコア本体の第二の作製法において、第一ワックスの融解物を容器に注入する前に、短時間の加熱によって容器内のフィラービーズ1bの表面のみを一時的に融解させることで、フィラービーズ1bを一体化させてもよい(コア本体の第三の作製法)。そうすることで、得られるコア本体1の強度を高くすることができる。
このコア本体の第三の作製法で得たコア本体1を有するコア3では、硬化工程でマトリクス1aを膨張させたときにフィラービーズ1b間の融着接合部が壊れて、フィラービーズ1bが互いに離れ離れになる。
一例において、コア本体1は、フィラービーズ1bを含有する第一タイプ個片11と、フィラービーズ1bを含有しない第二タイプ個片12とを含む複数の個片からなってもよい。この場合、
図2に示すように、第一タイプ個片11が外皮2と接しないように配置されてもよい。
【0024】
コア3は、コア本体1を作製した後、そのコア本体1を外皮2用に準備したポリマーフィルムで包み、接着または融着により密封することにより製造することができる。
外皮2は、ポリマーからなるシュリンクチューブを用いて形成することもできる。コア本体1を入れたシュリンクチューブを熱収縮させ、更に該シュリンクチューブの両端をヒートシールすればよい。
【0025】
硬化工程におけるコア本体1の膨張によって外皮2が破断しないために、外皮2の材料は伸び変形が可能でなくてはならない。この伸び変形は、弾性的であっても、塑性的であっても、その両方の性質を有してもよい。
外皮2の材料は、限定するものではないが、好ましくはポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素ゴムのような合成ポリマーであり、これらのポリマーからなるエラストマーであってもよい。
【0026】
外皮2は、低温硬化型の液状ゴムを用いて形成することもできる。コア本体1の表面に液状ゴムを塗布し、コア本体1が融解しない温度で硬化させればよい。変形法では、液状ゴムをコア本体1の表面に塗布した後、塗布面に補強材として合成樹脂製の伸び変形可能な不織布を貼り付け、さらにその上に追加の液状ゴムを塗布したうえで、液状ゴムを硬化させてもよい。
外皮2は、UV硬化型エラストマーで形成することもできる。UV硬化型エラストマーは、硬化物がゴムのような弾性体となるUV硬化型樹脂であり、その一例はUV硬化型シリコーンゴムやUV硬化型ウレタンアクリレートである。UV硬化型エラストマーは、室温でも短時間で硬化させることができる点で、外皮2の材料に好適である。
外皮2はコア本体1の表面全部を覆っていることが好ましいが、必須ではない。
【0027】
一例では、高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子をコア3に添加することで、コア3を誘導加熱可能とし得る。かかる材料の例は、強磁性材料、フェリ磁性材料および導電性材料である。強磁性材料の例として、鉄、ニッケル、コバルト、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、パーマロイ、および多くの鋼が挙げられる。フェリ磁性材料の例として、マグネタイト、ニッケル-亜鉛フェライト、マンガン-亜鉛フェライトおよび銅-亜鉛フェライトが挙げられる。導電性材料の例として、銅、アルミニウムおよび黄銅が挙げられる。
【0028】
他の一例では、マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子をコア3に添加することで、コア3をマイクロ波加熱可能とし得る。かかる材料の例として、炭化ケイ素、フェライト、チタン酸バリウム、アナターゼ形酸化チタン、黒鉛およびカーボンブラックが挙げられる。
コアの誘導加熱またはマイクロ波加熱は、硬化工程にて行い得る他、硬化工程の前に金型の外でコアを予備加熱するときに行い得る。
【0029】
高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料またはマイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子は、コア本体1と外皮2のいずれか一方に添加してもよいし、両方に添加してもよく、また、コア本体1に添加するときは、マトリクス1aとフィラービーズ1bのいずれか一方に添加してもよいし、両方に添加してもよい。好ましくは、かかる粒子はコア本体1にのみ添加され、より好ましくはフィラービーズ1bにのみ添加される。
フィラービーズ1bのみを誘導加熱またはマイクロ波加熱可能とすることにより、硬化工程の直前にフィラービーズ1b間の隙間を充たすマトリクス1aが融点より僅かに低い温度となるようにコア3を予備加熱することができる。
【0030】
(2)硬化工程
硬化工程では、通常、1枚または2枚以上のプリプレグシートから、ほぼ正味形状(near net shape)を有するプリプレグ予備成形体4を作製し、これを
図3に示すように、コア3の周囲に配置する。一例では、プリプレグ予備成形体4を別途工程で作製してからコア3と組み合わせるのではなく、最初からコア3を内包した状態、すなわち
図3に示す状態となるように、プリプレグ予備成形体4を作製してもよい。
プリプレグ予備成形体4は、異種のプリプレグを組み合わせて作製してもよい。一例では、SMCを、一方向プリプレグ、クロスプリプレグおよびトウプリプレグから選ばれる一種以上のプリプレグと組み合わせて、プリプレグ予備成形体4を作製することができる。
プリプレグ予備成形体4は、プリプレグとプリプレグではない樹脂シートからなる積層構造を有してもよい。
【0031】
プリプレグ予備成形体4の作製後、
図4に示すように、プリプレグ予備成形体4をその内側に包まれたコア3と共に、下型102と上型104とからなる金型100のキャビティ内に配置する。通常、この時点で金型100は硬化温度と同じ温度に加熱されている。金型100は、好ましくは、真空機構を有する。
次いで、金型100を型締めして、プリプレグ予備成形体4を硬化させる。硬化時の金型100の温度である硬化温度は、限定するものではないが、通常120℃から180℃の範囲内であり、好ましくは140℃以上である。硬化温度が高い程、プリプレグ予備成形体4の硬化時間を短縮することができる。硬化時間は、プリプレグ予備成形体4の厚さに応じて適宜設定することができ、限定するものではないが、好ましくは20分間以下である。
ここでいう硬化時間は、金型100の型締めの開始から型開きまでの時間である。
【0032】
金型100からプリプレグ予備成形体4を通して伝わる熱を吸収してコア3は膨張し、プリプレグ予備成形体4を金型100の内面に押し付ける。換言すれば、金型100の型締め力に抗してコア3が膨張しようとすることで発生する内圧が、プリプレグ予備成形体4に印加される。
型締め直後はコア3の体積が熱膨張により緩やかに増加するだけなので、プリプレグ予備成形体4に加わる圧力は弱いが、コア本体1の温度が第一ワックスの融点に達し、マトリクス1aが融解し始めると、プリプレグ予備成形体4に加わる圧力は急激に上昇する。第一ワックスの体積が融解に伴い大きく増加するからである。
【0033】
マトリクス1aの融解物すなわち融解した第一ワックスは流動して、コア本体1の未融解部分と外皮2の間のスペース全体に万遍なく行き渡る。融解した第一ワックスが圧力媒体として作用することにより、プリプレグ予備成形体4の全ての部分が、実質的に同じ圧力で金型100の内面に強く押し付けられる。
【0034】
コア本体がフィラービーズを含有せず、実質的に第一ワックスのみからなる場合、金型からコア本体に伝わる熱の殆ど全てが第一ワックスの融解に費やされるため、第一ワックスの融解量が過大となる。第一ワックスの融解量が過大であると、金型内の圧力が型締め力を上回るために金型が開いてしまい、正常な成形が不可能となる。
それに対し、コア本体1がフィラービーズ1bを含有すると、金型100からコア本体1に伝わる熱の一部はフィラービーズ1bの温度上昇に費やされ、その分だけマトリクス1aの融解量が減少するので、金型100内の圧力の極端な上昇を防止することができる。
一例では、マトリクス1aが全量融解しても金型100内の圧力が型締め力を超えなくなるまで、コア本体1に添加するフィラービーズ1bの量を増やすこともできる。
【0035】
プリプレグ予備成形体4が厚く、熱が金型100からコア3に伝わるのが遅いときには、マトリクス1aを融点の低い第1ワックスで構成することが好ましい。そうすることで、マトリクス1aの融解前、すなわち、金型100内の圧力が十分に高くなる前に、プリプレグ予備成形体4が金型100と接する部分で硬化し始めることを防止できる。
プリプレグ予備成形体4が十分に加圧されない状態で硬化すると、得られるFRPがボイドを含んだり、外観品質の低いものとなったりする。
【0036】
コア3が例えば
図2に示すように構成されているとき、すなわち、コア本体1のうち外皮と接する部分にはフィラービーズ1aが添加されていないとき、マトリクス1aのみからなるコア本体1の表層部は、金型100からコア3に伝わる熱によって、早くかつ均一に融解する。従って、
図2に示すコアを用いることは、金型100内の圧力が十分に高くなる前にプリプレグ予備成形体4が硬化し始めることを防止するうえで有利である。
【0037】
他の一例では、マトリクス1aの融解を早めるために、硬化工程の前にコア3を予備加熱してもよい。
この予備加熱は、マトリクス1aが融解しないように行う必要がある。なぜならば、予備加熱の段階でマトリクス1aを融解させてしまうと、硬化工程において、マトリクス1aの融解に伴うコア3の大きな膨張を利用したプリプレグ予備成形体4の加圧ができないからである。
コア3の予備加熱には熱風循環炉を好ましく用い得るが、追加手段または代替手段として誘電加熱またはマイクロ波加熱を利用すれば、より短時間でコア3の予備加熱を行うことができる。
誘電加熱を利用するには、高周波電磁界下で発熱する性質を有する材料の粒子をコア3に添加すればよい。
マイクロ波加熱を利用するには、マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する材料の粒子をコア3に添加すればよい。
【0038】
プリプレグ予備成形体4はプリプレグシートから作られているため、
図5(a)に示すようなプリプレグシート5同士間の突き合わせ接合部、および、
図5(b)に示すようなプリプレグシート5同士間のオーバーラップ接合部の、少なくともいずれかを有している。
コア3の外皮2には、このような接合部にあるプリプレグシート5同士間の隙間をシールして、融解したワックスがプリプレグ予備成形体4と金型100の間に入り込むことを防止する役割がある。それ故に、外皮2の材料は柔軟で変形可能でなくてはならない。また、融解したワックスがプリプレグ予備成形体4と金型100の間に入り込むことが確実に防止されるように、コア本体1の表面は、実質的に全部が外皮2で覆われていることが好ましい。
【0039】
(3)ワックス除去工程
ワックス除去工程では、プリプレグ予備成形体4を硬化させてなるFRP成形品6を金型100から取り出し、その内部からコア本体1をなすマトリクス1aとフィラービーズ1bを除去する。
マトリクス1aは、凝固する前に、あるいは、いったん凝固した場合には再び加熱して融解させてから、排出孔7から排出させる。排出孔7は、硬化工程の後に、ドリルやホールソーを用いてFRP成形品6に設けられる。排出孔7に加えてエアブロー孔(図示せず)を設け、エアブローを行うことにより、排出を促進してもよい。
【0040】
フィラービーズ1bは、排出孔7の直径をフィラービーズ1bの粒径より大きくすることにより、融解させることなく、マトリクス1aの融解物と共にFRP成形品6から除去することができる。これは、ワックス除去工程の時点では、マトリクス1aのみが融解していればよいことを示す。そのため、ワックス除去工程は極めて短時間で完了させることができる。
特に、マトリクス1aをなす第一ワックスの融点が低いと、硬化工程の後もマトリクス1aを融解状態に保つことが容易であり、また、マトリクス1aが凝固した場合にも、再度融解させることが容易である。
【0041】
FRP成形品6から除去した第一ワックスとフィラービーズ1bは、再利用することができる。
フィラービーズ1bが、第一ワックスと相溶しない第二ワックスからなるとき、FRP成形品6から除去したフィラービーズ1bは一旦溶融させてから再利用してもよい。
外皮2は、FRP成形品6の内面に固着していてFRP成形品6の機能と外観に影響しなければ、除去する必要はない。
【0042】
以上、FRPからなる中空の直方体を成形する場合を例に、実施形態に係るFRP成形方法を説明したが、この方法で成形し得るFRP製品の外形は直方体に限定されるものではない。この成形方法は、屈曲または湾曲した壁面を含む構造を備える、各種のFRP成形品の製造に適用することができる。
実施形態に係るFRP成形方法は、FRPのみからなる構造体の製造だけではなく、FRPが金属部品と一体的に成形された構造体の製造や、熱硬化性樹脂からなるFRPと熱可塑性樹脂からなるFRPとが一体的に成形された構造体の製造にも使用できる。
【0043】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本明細書に開示された発明は、屈曲または湾曲した壁面を含む構造を備えるFRP成形品の製造に好ましく用いることができる。
本明細書に開示された発明は、限定するものではないが、自動車、船舶、鉄道車両、航空機その他の輸送機器のための部品(構造部品を含む)や、自転車のフレーム、テニスラケットおよびゴルフシャフトを含む各種のスポーツ用品を、繊維強化樹脂で製造するときに好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 コア本体
1a マトリクス
1b フィラービーズ
11 第一タイプ個片
12 第二タイプ個片
2 外皮
3 コア
4 プリプレグ予備成形体
5 プリプレグシート
6 FRP成形品
7 排出孔
100 金型
102 下型
104 上型