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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】カルバミン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 269/04 20060101AFI20240806BHJP
   C07C 271/34 20060101ALI20240806BHJP
   C07D 295/205 20060101ALI20240806BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C07C269/04
C07C271/34
C07D295/205
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113224
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022022652
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 靖
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-212159(JP,A)
【文献】特開2006-022043(JP,A)
【文献】特開2012-250930(JP,A)
【文献】特開2018-140942(JP,A)
【文献】特開2019-181402(JP,A)
【文献】特開平04-230650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0258785(US,A1)
【文献】Mahmut Abla et al.,Halogen-free process for the conversion of carbon dioxide to urethanes by homogeneous catalysis,Chemical Communications,2001年,2238-2239頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 269/04
C07C 271/34
C07D 295/205
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一級アミン及び/又は二級アミンとトリエタノールアミン、N-アルキルジエタノールアミン、N,N-ジアルキルエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種である三級アミノアルコールを含む二酸化炭素吸収剤に二酸化炭素を吸収させ、酸触媒存在下、オレフィン化合物と反応させるカルバミン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
一級アミン及び/又は二級アミンが、アルキルアミン、アルキレンアミン、エタノールアミンである請求項1に記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
酸触媒が、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化物、硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸などの有機酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ-アルミナの固体酸である請求項1~のいずれか1項に記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
オレフィン化合物が、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロヘキセン、エチルヘキセン、スチレンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1~のいずれか1項に記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素からカルバミン酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題のため、二酸化炭素の分離・回収・有効利用が注目されており、多くの開発がなされている。特に、石炭火力発電は大量の二酸化炭素を発生しており、石炭からバイオマスへの燃料転換や、二酸化炭素の回収、有効利用技術などは、地球温暖化対策の重要な課題となっている。
【0003】
二酸化炭素の分離回収法としては、アミン水溶液を利用した化学吸収法が最も一般的である。化学吸収法は、二酸化炭素と選択的に反応するアミンの水溶液、特に、エタノールアミン系の水溶液を吸収剤として使用し、温度差で二酸化炭素を吸脱着する。すなわち、低温で二酸化炭素を吸収剤に吸収させ、高温で二酸化炭素を放散するというサイクルで二酸化炭素を分離回収する。化学吸収法は純度の高い二酸化炭素を効率よく回収できるという特徴を有するため、広く実用化されており、低二酸化炭素濃度で、常圧である石炭火力発電の燃焼排ガス処理に適しているが、アミンと反応した二酸化炭素を分離するために多大なエネルギーを要するという欠点がある。
【0004】
一方、二酸化炭素の有効利用としては、二酸化炭素を水素などで還元し、ギ酸、メタノール、メタンにする方法が提案されている。これらの反応に関しては多くの研究がなされているが、反応に高温高圧が必要であるという問題がある。一般にメタノールは、二酸化炭素、一酸化炭素、及び水素から、亜鉛系触媒存在下、250~300℃という高温、50~100気圧という高圧の条件で製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
近年、二酸化炭素をアミンに吸収、反応させた後、有用物へ転換させる方法が提案されている。この方法は、二酸化炭素を分離、回収、精製する工程が省略できるため、消費エネルギーの観点から興味深い。
【0006】
例えば、アミン、均一系触媒を使用することで、比較的温和な条件で二酸化炭素からメタノールを製造する方法が提案されている。Sayan Karらは二酸化炭素をポリエチレンポリアミン水溶液に吸収させ、均一系Ru触媒を使用して水素還元することにより、70気圧、145℃という比較的温和な条件でメタノールが生成することを報告している(例えば、非特許文献1参照)。Ekambaram Balaramanらは、更に温和な110℃、10気圧という条件で、二酸化炭素とアンモニア、アミンから得られる尿素を均一系Ru触媒で水素還元することにより、メタノールが生成することを報告しており(例えば、非特許文献2参照)、また他にも二酸化炭素とアルコールから脱水反応で得られたギ酸エステル、炭酸エステル、カルバミン酸エステルから均一系Ru触媒を使用して水素還元することにより、110℃、10気圧でメタノールが生成する報告もある(例えば、非特許文献3参照)。しかし、この場合、二酸化炭素とアミン、アンモニアから尿素を製造する工程、二酸化炭素、アミン、アルコールからカルバミン酸エステルを製造する工程に課題がある。いずれの反応も水が副生するため、尿素、カルバミン酸エステルの加水分解が生じ、尿素、カルバミン酸エステルが生成しにくいことが知られている。これらの反応を進めるため、脱水するのに多大なエネルギーを必要とする。
【0007】
なお、カルバミン酸エステルはポリウレタンの原料として広く知られている二酸化炭素誘導体である。カルバミン酸エステルから脱アルコールによってポリウレタン原料のイソシアネートが得られるし、触媒存在下、カルバミン酸エステルとポリアミン、ポリオール、水とを反応させて直接ポリウレタンにすることも可能である。
【0008】
このように、カルバミン酸エステルは有用な二酸化炭素誘導体であるにもかかわらず、製造するには多大なエネルギーを要するため、工業的に二酸化炭素の有効利用を図るには問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】再公表2017/175760公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 1580-1583
【文献】Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 11702-11705
【文献】Nat. Chem. 2011, 3, 609-614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化炭素を含む混合気体からアミンを使用して二酸化炭素を選択的に吸収させ、アミンに吸収した二酸化炭素を分離・精製することなく、カルバミン酸エステルに転換させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、アミンによる二酸化炭素の吸収及び二酸化炭素を吸収したアミンの転換について鋭意検討した結果、アミンと二酸化炭素により生成したカルバミン酸塩に酸触媒及びオレフィンを添加してカルバミン酸エステルを製造する際に、三級アミノアルコール存在下で反応を行うと効率的に製造することができるという新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのカルバミン酸エステルの製造方法である。
【0014】
[1]一級アミン及び/又は二級アミンと三級アミノアルコールを含む二酸化炭素吸収剤に二酸化炭素を吸収させ、酸触媒存在下、オレフィン化合物と反応させるカルバミン酸エステルの製造方法。
【0015】
[2]一級アミン及び/又は二級アミンが、アルキルアミン、アルキレンアミン、エタノールアミンである上記[1]に記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【0016】
[3]三級アミノアルコールが、トリエタノールアミン、N-アルキルジエタノールアミン、N,N-ジアルキルエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種である上記[1]又は[2]に記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【0017】
[4]酸触媒が、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化物、硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸などの有機酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ-アルミナなどの固体酸である上記[1]~[3]のいずれかに記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【0018】
[5]オレフィン化合物が、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロヘキセン、エチルヘキセン、スチレンからなる群より選ばれる少なくとも一種である上記[1]~[4]のいずれかに記載のカルバミン酸エステルの製造方法。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、アミン溶液に二酸化炭素を吸収させた後、二酸化炭素を分離回収せずに、カルバミン酸エステルを製造する方法である。アミン溶液に精製した二酸化炭素を吸収させても良いが、石炭火力発電所の排ガス中に含まれる二酸化炭素をアミン溶液で吸収して、そのままカルバミン酸を製造することもできる。
【0021】
本発明の方法において使用するアミンは、一級アミン及び/又は二級アミンと三級アミノアルコールである。一級アミン及び/又は二級アミンとしては、アルキルアミン、アルキレンアミン、アルカノールアミンを使用することができる。アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミンなどの脂肪族アミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、水添MDAなどの脂環式アミンが挙げられる。またアルキレンアミンとしては、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン(トリメチレンジアミン)、1,4-ブタンジアミン(テトラメチレンジアミン)、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミンなどが挙げられる。これらの一級アミン及び/又は二級アミンは一種を使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0022】
三級アミノアルコールは、一級アミン及び/又は二級アミンと共に使用する。三級アミノアルコールは、一級アミン及び/又は二級アミンと二酸化炭素が反応してカルバミン酸塩を形成する反応を促進する。三級アミノアルコールを使用しないと一級アミン及び/又は二級アミンは二分子で二酸化炭素と反応するのに対し、三級アミノアルコールを使用すると、一級アミン及び/又は二級アミンは一分子で二酸化炭素と反応する。また、三級アミノアルコールは、一級アミン及び/又は二級アミンと二酸化炭素が反応して形成されたカルバミン酸と反応してカルバミン酸エステルになる。
【0023】
三級アミノアルコールとしては、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミンなどが挙げられる。これらの三級アミノアルコールは一種を使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0024】
本発明の方法において、アミン溶液に二酸化炭素を吸収させる方法に特に制限はなく、一般的なガスを液体に吸収させる方法を使用することができる。二酸化炭素を含むガスをアミン溶液に吹き込んでも良いし、吸収塔の上部からアミン溶液を液状で散布し、下方から二酸化炭素を含むガスを供給しても良い。二酸化炭素を含むガスは加圧した方が吸収効率は高くなるが、常圧でも吸収させることはできる。
【0025】
本発明の方法において、アミン溶液に二酸化炭素を吸収させた後、オレフィン化合物と反応させエステル化する。また、三級アミノアルコールとカルバミン酸が反応して副生した水とオレフィン化合物が反応してアルコールになり、エステル化を促進する。
【0026】
本発明の方法において、オレフィン化合物には、特に制限はなく、工業的に入手しやすいものを使用することができるが、あえて例示すれば、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロヘキセン、エチルヘキセン、スチレンなどが挙げられる。これらのオレフィン化合物は、カルバミン酸、又は副生成水と反応してアルコールとなる。生成したアルコールは、イソプロパノール、t-ブタノール、シクロヘキサノールなどであり、これらのアルコールを脱水して原料のオレフィン化合物に戻すことも極めて容易である。
【0027】
本発明の方法では、アミンを非水系溶媒に溶解、分散させた溶液に二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を吸収させても良い。非水系溶媒としては特に制限はないが、アルコール、オレフィン、エーテルが好ましい。二酸化炭素を含むガス中にある水分をアミンが吸収すると、前述のようにカルバミン酸エステルが加水分解する原因となる。オレフィン、エーテルは酸触媒存在下、水と反応し、アルコールを生成するため、カルバミン酸エステルの加水分解を抑制することができる。
【0028】
本発明の方法で、カルバミン酸エステルを製造する工程は以下のとおりである。
【0029】
(1)三級アミノアルコールを含む二酸化炭素吸収剤に二酸化炭素を吸収させ、カルバミン酸塩を製造する工程、
(2)カルバミン酸塩、オレフィン化合物、三級アミノアルコールを酸触媒存在下、反応させてカルバミン酸エステルを製造する工程。
【0030】
(1)、(2)の工程は、別々に実施しても良いし、同時に実施しても良い。すなわち酸触媒存在下、アミン類、オレフィン化合物を含む二酸化炭素吸収液に二酸化炭素を吸収、反応させてカルバミン酸エステルを製造しても良い。
【0031】
(1)、(2)の工程を別々に実施する場合は、二酸化炭素の吸収を促進させるために、80℃以下で実施することが好ましい。80℃を超える温度で実施する場合には、二酸化炭素を含むガスを加圧する必要がある。また(2)の工程は、40℃~150℃で実施することが好ましい。40℃未満ではエステル化の反応速度が工業的でないほど遅くなり、150℃を超えると、カルバミン酸塩、カルバミン酸エステルの分解が激しくなる。また、(1)、(2)の工程を同時に実施する場合も、40℃~150℃で実施することが好ましい。40℃未満ではエステル化の反応速度が工業的でないほど遅くなり、150℃を超えると、カルバミン酸塩、カルバミン酸エステルの分解が激しくなる。
【0032】
本発明の方法では、酸触媒を使用する。酸触媒は、アミンと二酸化炭素から生成したカルバミン酸塩とオレフィン化合物の反応を促進する。また、カルバミン酸塩と三級アミノアルコールとの反応、オレフィン化合物と水との反応を促進する。酸触媒を加えないと、これらの反応は著しく遅くなる。酸触媒の種類は特に制限されないが、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化チタン、臭化アルミニウム、フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化物、硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸などの有機酸、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ-アルミナなどの固体酸が好ましいが、これら以外の酸を使用しても一向に差し支えない。
【0033】
本発明の方法において、アミン溶液、オレフィン化合物に溶解、又は分散する酸を使用する場合は、アミン溶液及び/又はオレフィン化合物にあらかじめ酸を溶解、懸濁させておいて二酸化炭素と接触させても良いし、オレフィン化合物、二酸化炭素を吸収したアミン溶液に酸を添加しても良い。オレフィン化合物、二酸化炭素を吸収したアミン溶液に酸を添加する場合には、加圧下で酸を添加すると効率よく反応を進めることができる。反応終了後は、酸は蒸留、相分離、ろ過などの操作により分離する。分離した酸は再使用しても良い。
【0034】
本発明の方法において、固体酸を使用する場合は、オレフィン化合物、アミン溶液に溶解、又は分散する酸を使用する場合より効率よく反応を進めることができる。球状、タブレット、ペレットなどの適切な形状の固体酸を反応器に充填し、これに二酸化炭素を吸収させた、三級アミノアルコールを含むアミン溶液とオレフィン化合物を圧送することにより反応が進行する。
【発明の効果】
【0035】
本発明のカルバミン酸エステルの製造方法は、二酸化炭素の分離回収・精製エネルギーを削減でき、二酸化炭素を有用な物質に変換できるため、工業的に極めて有用である。
【実施例
【0036】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
【0037】
BA:n-ブチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
PIP:ピペラジン(東ソー株式会社製)
Cy=:シクロヘキセン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
EH=:2-エチル-1-ヘキセン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
MDEA:N-メチルジエタノールアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
HEM:N-ヒドロキシエチルモルホリン(合成品)
AlCl:塩化アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
SA:硫酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
HPA:ヘテロポリ酸(モリブドリン酸、シグマアルドリッチ製)
反応生成物は、Agilent Technologies 7890Aガスクロマトグラフシステムで分析した。
【0038】
実施例1
耐圧容器にBA 4g、MDEA 14gを入れ、大気圧下で二酸化炭素40%、窒素60%の混合ガスを供給し、二酸化炭素を吸収させた。この時、最高温度は50℃を超えたが、二酸化炭素が飽和になるまで吸収させた。これを耐圧容器に移し、Cy= 11g、AlCl 1.2gを加え、耐圧容器を密閉し、二酸化炭素で0.133Mpaまで加圧した。内温が80℃になるよう加熱し、6時間保持した。その後、冷却し、耐圧容器内部の混合物を分析したところ、原料のBA基準でカルバミン酸エステルの収率は25%であった。
【0039】
比較例
MDEAを加えなかった他は、実施例1と同じ方法で反応させた。耐圧容器内部の混合物を分析したところ、原料のBA基準でカルバミン酸エステルの収率は8%であった。
【0040】
実施例2
ガラス製フラスコにPIP 4g、HEM 30gを入れ、室温、大気圧下で二酸化炭素20%、窒素80%の混合ガスを供給し、飽和になるまで二酸化炭素を吸収させた。その後、これを耐圧容器に移し、Cy= 12g、SA 0.2gを加え、耐圧容器を密閉し、内温が100℃になるまで昇温した。8時間後、室温まで冷却し、耐圧容器内部の混合物を分析したところ、原料のPIP基準でカルバミン酸エステルの収率は48%であった。
【0041】
実施例3
球状シリカ(富士シリシア化学株式会社製)1gを10%SA水溶液2gに1時間浸漬した後、水を減圧留去した。乾燥空気流通下、140℃で2時間乾燥し、硫酸をシリカに担持した固体酸触媒を調製した。
【0042】
この固体酸触媒をAlClの代わりに使用した他は、実施例1と同じ方法でカルバミン酸エステルを製造した。その結果、原料のBA基準でカルバミン酸エステルの収率は33%であった。
【0043】
実施例4
耐圧容器にBA 4g、MDEA 14g、HPA 1gを入れ、室温、0.11MPaで二酸化炭素を吸収させた。耐圧容器を解放し、EH= 20gを加え、二酸化炭素で再び0.11MPaに加圧した。内温60℃になるまで昇温すると、圧力は0.25MPaになった。110分後、二酸化炭素のカルバミン酸エステルへの反応が進行し、圧力は0.23MPaに低下した。更に、内温100℃になるまで加熱すると、圧力は0.77MPaになったが、4時間後には0.71MPaに低下した。室温まで冷却し、耐圧容器内部の混合物を分析したところ、原料のPIP基準でカルバミン酸エステルの収率は45%であった。