(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】積層フィルム及び導体基板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20240806BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240806BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240806BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240806BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240806BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/18 B
B32B27/38
C08L21/00
C08K5/3492
H05K1/03 610H
H05K3/46 S
H05K3/46 G
(21)【出願番号】P 2020121440
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】小川 禎宏
(72)【発明者】
【氏名】正木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-209723(JP,A)
【文献】特開2018-150542(JP,A)
【文献】特開平01-215851(JP,A)
【文献】特開2004-277461(JP,A)
【文献】特開2007-176967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03,3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの両面に設けられた樹脂層と、を備え、
前記基材フィルムが、液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムであり、
前記樹脂層が、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤と、を含有する樹脂組成物を含
み、
前記硬化剤が、エステル系硬化剤であり、
前記臭素系難燃剤の含有量が、前記ゴム成分、前記架橋成分、及び前記硬化剤の総量100質量部に対して、1~30質量部である、積層フィルム。
【請求項2】
前記臭素系難燃剤が、トリアジン骨格を有する化合物を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記難燃助剤が、アンチモン化合物を含む、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記ゴム成分が、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
基材フィルムと、前記基材フィルムの両面に設けられた硬化樹脂層と、前記硬化樹脂層の前記基材フィルムと反対側の少なくとも一方の面上に設けられた導体箔と、を有し、
前記基材フィルムが、液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムであり、
前記硬化樹脂層が、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含
み、
前記硬化剤が、エステル系硬化剤であり、
前記臭素系難燃剤の含有量が、前記ゴム成分、前記架橋成分、及び前記硬化剤の総量100質量部に対して、1~30質量部である、導体基板。
【請求項6】
前記臭素系難燃剤が、トリアジン骨格を有する化合物を含む、請求項5に記載の導体基板。
【請求項7】
前記難燃助剤が、アンチモン化合物を含む、請求項5又は6に記載の導体基板。
【請求項8】
前記ゴム成分が、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の導体基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及び導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどの電子機器では使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする低比誘電率及び低誘電正接の基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、ITS分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化及び実用計画が進んでおり、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料が更に要求されると予想される。
【0003】
従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂等の樹脂が使用されている(例えば、特許文献1~4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-69046号公報
【文献】特開2012-255059号公報
【文献】特開2014-60449号公報
【文献】特開2003-171480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素樹脂は、低誘電特性を有する材料であることが知られているが、導体箔との接着性が低い。液晶ポリマーは融点が高いため、液晶ポリマーを含む配線基板を製造するためには、300℃以上の高温での熱プレスが必要とされる。柔軟で接着性に優れる樹脂材料を用いて導体箔と接着することが考えられるが、柔軟で接着性に優れる樹脂材料は、プリント配線板に求められる難燃性に劣る傾向がある。そのため、低誘電特性、接着性、及び難燃性を兼ね備える樹脂フィルムが求められている。
【0006】
本発明は、接着性、低誘電特性、及び難燃性を有する積層フィルム、及び該積層フィルムを用いた導体基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、基材フィルムと、基材フィルムの両面に設けられた樹脂層とを備え、基材フィルムが、液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムであり、樹脂層が、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤と、を含有する樹脂組成物を含む、積層フィルムに関する。
【0008】
本開示の他の一態様は、基材フィルムと、基材フィルムの両面に設けられた硬化樹脂層と、硬化樹脂層の基材フィルムと反対側の少なくとも一方の面上に設けられた導体箔と、を有し、基材フィルムが、液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムであり、硬化樹脂層が、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、導体基板に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着性、低誘電特性、及び難燃性を有する積層フィルム、及び該積層フィルムを用いた導体基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[積層フィルム]
一実施形態に係る積層フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの両面に設けられた樹脂層とを備える。
図1は、積層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。積層フィルム10は、基材フィルム1と、基材フィルム1の両面に設けられた樹脂層3とを備える。
【0013】
(基材フィルム)
本実施形態に係る基材フィルムとして、液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムを用いることで、誘電特性を向上することができる。基材フィルム1の厚みは、30μm以上、50μm以上、又は80μm以上であってよく、250μm以下、200μm以下、又は150μm以下であってよい。
【0014】
液晶ポリマーフィルム(以下、単に「LCPフィルム」という場合ある。)は、液晶ポリマーの成形体である。液晶ポリマーフィルムを構成する液晶ポリマーは、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーであってもよい。サーモトロピック液晶ポリマーの例としては、サーモトロピック液晶ポリエステル、及びサーモトロピック液晶ポリエステルアミドが挙げられる。サーモトロピック液晶ポリエステル及びサーモトロピック液晶ポリエステルアミドに、イミド結合、ウレタン結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合、及びイソシアヌレート結合から選ばれる構造が導入されていてもよい。液晶ポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位、及び/又は6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位を含むポリマーであってもよい。
【0015】
液晶ポリマーフィルムは、誘電特性を過剰に損なわない範囲で、液晶ポリマー以外のポリマーを更に含んでもよい。液晶ポリマー以外のポリマーは、220℃以上、又は280~360℃の融点を有するポリマーであってもよく、その例としては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、及びポリアリレートが挙げられる。
【0016】
フッ素樹脂フィルムを構成するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パ-フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン重合体(FEP)、及びテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。高周波特性により優れることから、フッ素樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンを含むフィルムであることが好ましい。
【0017】
(樹脂層)
樹脂層は、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤とを含有する樹脂組成物を含む。
【0018】
樹脂層には、主にゴム成分によって、容易に柔軟性が付与される。ゴム成分は、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムを含むことができる。吸湿等による配線へのダメージを保護する観点から、ガス透過性が低いゴム成分を用いてもよい。係る観点から、ゴム成分が、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びブチルゴムから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。スチレンブタジエンゴムを用いることにより、めっき工程に使用する各種薬液に対する樹脂層の耐性が向上し、歩留まりよく配線基板を製造することができる。
【0019】
アクリルゴムの市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社「Nipol ARシリーズ」、クラレ株式会社「クラリティシリーズ」が挙げられる。イソプレンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン株式会社「Nipol IRシリーズ」が挙げられる。ブチルゴムの市販品としては、例えば、JSR株式会社「BUTYLシリーズ」が挙げられるスチレンブタジエンゴムの市販品としては、例えば、JSR株式会社「ダイナロンSEBSシリーズ」、「ダイナロンHSBRシリーズ」、クレイトンポリマージャパン株式会社「クレイトンDポリマーシリーズ」、アロン化成株式会社「ARシリーズ」が挙げられる。ブタジエンゴムの市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社「Nipol BRシリーズ」が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴムの市販品としては、例えばJSR株式会社「JSR NBRシリーズ」が挙げられる。シリコーンゴムの市販品としては、例えば信越シリコーン株式会社「KMPシリーズ」が挙げられる。エチレンプロピレンゴムの市販品としては、例えば、JSR株式会社「JSR EPシリーズ」が挙げられる。フッ素ゴムの市販品としては、例えば、ダイキン株式会社「ダイエルシリーズ」が挙げられる。エピクロルヒドリンゴムの市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社「Hydrinシリーズ」が挙げられる。
【0020】
ゴム成分は、合成により作製することもできる。例えば、アクリルゴムでは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等を反応させることにより得られる。
【0021】
ゴム成分は、架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。架橋基を有するゴムを用いることにより、伸縮性樹脂層の耐熱性が向上し易い傾向がある。架橋基は、ゴム成分の分子鎖を架橋する反応を進行させ得る反応性基であればよい。その例としては、後述するエポキシ基を有する架橋成分が有する反応性基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、エポキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。
【0022】
ゴム成分は、酸無水物基又はカルボキシル基のうち少なくとも一方の架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。酸無水物基を有するゴムの例としては、無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムが挙げられる。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸に由来する構成単位を含む重合体である。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムの市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のスチレン系エラストマー「タフプレン912」がある。
【0023】
無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマーであってもよい。水素添加型スチレン系エラストマーは、耐候性向上等の効果も期待できる。水素添加型スチレン系エラストマーは、不飽和二重結合を含むソフトセグメントを有するスチレン系エラストマーの不飽和二重結合に水素を付加反応させて得られるエラストマーである。無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、クレイトンポリマージャパン株式会社の「FG1901」、「FG1924」、旭化成株式会社の「タフテックM1911」、「タフテックM1913」、「タフテックM1943」が挙げられる。
【0024】
ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は、塗膜性の観点から、20000~200000、30000~150000、又は50000~125000であってもよい。ここでのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる標準ポリスチレン換算値を意味する。
【0025】
樹脂組成物において、ゴム成分の含有量は、ゴム成分、エポキシ基を有する架橋成分及び硬化剤の総量を基準として、60~95質量%であることが好ましく、65~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが更に好ましい。ゴム成分の含有量が60質量%以上であると、より十分な伸縮性が得られ易く、かつゴム成分と架橋成分がよく混ざり合う傾向がある。ゴム成分の含有量が95質量%以下であると、樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。樹脂層におけるゴム成分の含有量が、樹脂層の質量を基準として、上記範囲内にあってもよい。
【0026】
エポキシ基を有する架橋成分(以下、単に「架橋成分」という場合がある。)は、硬化反応時に架橋して架橋重合体を形成する成分である。架橋成分は、分子内にエポキシ基を有していれば特に制限されず、例えば一般的なエポキシ樹脂であることができる。エポキシ樹脂としては、単官能、2官能又は多官能のいずれでもよく、特に制限はないが、十分な硬化性を得るためには2官能又は多官能のエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0027】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型等のエポキシ樹脂が挙げられる。脂肪鎖で変性したエポキシ樹脂は、柔軟性を付与できる。市販の脂肪鎖変性エポキシ樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のEXA-4816が挙げられる。硬化性、低タック性、及び耐熱性の観点から、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ナフタレン型、又はジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂を選択してもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
無水マレイン酸基又はカルボキシル基を有するゴムと、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)との組み合わせにより、伸縮性樹脂層の耐熱性及び低透湿度、伸縮性樹脂層と導電層との密着性、並びに、伸縮性樹脂層の低いタックの点で、特に優れた効果が得られる。伸縮性樹脂層の耐熱性が向上すると、例えば窒素リフローのような加熱工程における伸縮性樹脂層の劣化を抑制することができる。伸縮性樹脂層が低いタックを有すると、作業性良く導体基板又は配線基板を取り扱うことができる。
【0029】
樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、エポキシ基を有する架橋成分以外の他の架橋成分を含んでいてもよい。他の架橋成分の含有量は、伸縮性樹脂層の誘電正接をより十分に低減する観点から、エポキシ基を有する架橋成分100質量部に対して10質量部未満であることが好ましい。
【0030】
硬化剤は、それ自体が硬化反応に関与する化合物であり、樹脂層の耐熱性を向上しつつ、誘電正接を低減することができる。
【0031】
硬化剤としては特に制限されないが、耐熱性の向上効果及び誘電正接の低減効果をより十分に得る観点から、エステル系硬化剤を用いることができる。エステル系硬化剤としては、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に1個又は2個以上有する化合物が挙げられる。エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、「EPICLON HPC8000-65T」、「EPICLON HPC8000-L-65MT」、及び「EPICLON HPC8150-60T」(いずれもDIC株式会社製の商品名)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
エステル系硬化剤は、硬化反応時に下記式(I)に示すように架橋成分と反応するものと考えられる。このようなエステル系硬化剤と、架橋成分との反応において水酸基は生成せず、また、副反応が生じたとしても水酸基は生成し難く、その結果、低い誘電正接を実現できるものと考えられる。
【0033】
【化1】
式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、1価の有機基を示すが、本発明の効果がより十分に得られることから、芳香環を有する1価の有機基であってもよい。
【0034】
樹脂組成物において、架橋成分及び硬化剤の合計の含有量は、ゴム成分、架橋成分及び硬化剤の総量を基準として、5~40質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。架橋成分及び硬化剤の合計の含有量が5質量%以上であると、より十分な硬化が得られ易いと共に、樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。架橋成分及び硬化剤の合計の含有量が40質量%以下であると、より十分な伸縮性が得られ易く、かつゴム成分と架橋成分がよく混ざり合う傾向がある。
【0035】
樹脂組成物において、架橋成分と硬化剤との含有量比は、エポキシ樹脂中のエポキシ基とエステル系硬化剤中のエステル結合との当量比で、4:5~5:4の範囲であることが好ましい。含有量比が上記範囲内であることで、より十分な硬化が得られ易いと共に、伸縮性樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。
【0036】
樹脂層は、臭素系難燃剤及び難燃助剤の両方を含有することで、自己消化性を有し難燃性に優れる積層フィルムを作製することができる。
【0037】
臭素系難燃剤は、臭素原子が結合した芳香環を有する化合物を含んでよく、トリアジン骨格を有する化合物を含んでもよい。臭素系難燃剤は、誘電特性を向上する観点から、臭素原子が結合した芳香環とトリアジン骨格とを有する化合物を含むことが好ましい。臭素系難燃剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2-ジブロモ-4-(1,2-ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン等の臭素化添加型難燃剤;及びトリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤が挙げられる。
【0039】
臭素系難燃剤の含有量は、難燃性と柔軟性とのバランスの観点から、ゴム成分、架橋成分、及び硬化剤の総量100質量部に対して、1~30質量部、2~25質量部、又は4~20質量部であってもよい。
【0040】
難燃助剤としては、例えば、アンチモン化合物を用いることができる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、及びアンチモン酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
難燃助剤の含有量は、難燃性と柔軟性とのバランスの観点から、ゴム成分、架橋成分、及び硬化剤の総量100質量部に対して、1~20質量部、2~18質量部、又は4~16質量部であってもよい。
【0042】
樹脂組成物は、更に硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、硬化反応の触媒として機能する化合物である。硬化促進剤は、三級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、リン系化合物、ルイス酸、アミン錯塩、及びホスフィンから選ばれるものであってもよい。これらの中でも、樹脂組成物のワニスの保存安定性及び硬化性の観点から、イミダゾールを使用してもよい。ゴム成分が無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムを含む場合、これと相溶するイミダゾールを選択してもよい。
【0043】
樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、ゴム成分、架橋成分及び硬化剤の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよい。硬化促進剤の含有量が0.1質量部以上であると、より十分な硬化が得られ易い傾向がある。硬化促進剤の含有量が10質量部以下であると、より十分な耐熱性が得られ易い傾向がある。以上の観点から、硬化促進剤の含有量は0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってもよい。
【0044】
樹脂組成物は、以上の成分の他、必要に応じて、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤、レベリング剤等を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で更に含んでもよい。
【0045】
樹脂層の厚さは特に限定されないが、積層フィルムの難燃性と柔軟性のバランスの観点から、1~100μm、2~60μm、3~40μm、又は4~20μmであってよい。
【0046】
硬化後の樹脂層の弾性率(引張弾性率)は、0.1MPa以上1000MPa以下であってもよい。弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下であると、基材としての取り扱い性及び可撓性が特に優れる傾向がある。この観点から、弾性率が0.3MPa以上100MPa以下、又は0.5MPa以上50MPa以下であってもよい。
【0047】
硬化後の樹脂層の破断伸び率は、100%以上であってもよい。破断伸び率が100%以上であると、十分な伸縮性が得られ易い傾向がある。この観点から、破断伸び率は150%以上、200%以上、300%以上又は500%以上であってもよい。破断伸び率の上限は、特に制限されないが、通常1000%程度以下である。
【0048】
硬化後の樹脂層の誘電正接(Df)は、樹脂層上に設けられた配線パターンの伝送損失を十分に低減する観点から、0.004以下、0.0035以下、0.003以下、又は、0.0025以下であってもよい。誘電正接の下限は、特に制限されないが、通常0.0005程度以上である。
【0049】
硬化後の樹脂層の比誘電率(Dk)は、樹脂層上に設けられた配線パターンの伝送損失を十分に低減する観点から、3.0以下、2.8以下、又は2.5以下であってもよい。
【0050】
樹脂層は、例えば、ゴム成分、架橋成分、硬化剤、臭素系難燃剤、難燃助剤、及び、必要により他の成分を、有機溶剤に溶解又は分散して樹脂ワニスを調製し、樹脂ワニスをキャリアフィルムの上に成膜することにより作製される樹脂フィルムを用いて形成することができる。
【0051】
有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドが挙げられる。溶解性及び沸点の観点から、トルエン、又はN,N-ジメチルアセトアミドを用いてもよい。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス中の固形分(有機溶媒以外の成分)濃度は、20~80質量%であってもよい。
【0052】
キャリアフィルムとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、液晶ポリマーなどのフィルムが挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、又はポリスルホンのフィルムをキャリアフィルムとして用いてもよい。
【0053】
キャリアフィルムの厚みは、特に制限されないが、3~250μmであってもよい。キャリアフィルムの厚みが3μm以上であるとフィルム強度が十分であり、キャリアフィルムの厚みが250μm以下であると十分な柔軟性が得られる。以上の観点から、厚みは5~200μm、又は7~150μmであってもよい。樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等によりキャリアフィルムに離型処理が施されたフィルムを必要に応じて用いてもよい。
【0054】
必要に応じて、保護フィルムを樹脂層上に貼り付け、キャリアフィルム、樹脂層及び保護フィルムからなる3層構造の樹脂フィルムとしてもよい。
【0055】
保護フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどのフィルムが挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンのフィルムを保護フィルムとして用いてもよい。伸縮性樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により保護フィルムに離型処理が施されていてもよい。
【0056】
保護フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、10~250μmであってもよい。厚みが10μm以上であるとフィルム強度が十分である傾向があり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる傾向がある。以上の観点から、厚みは15~200μm、又は20~150μmであってもよい。
【0057】
積層フィルムは、例えば、樹脂フィルムを2枚準備し、保護フィルムを剥がして露出した樹脂層を基材フィルムの両面に貼り合わせることで作製することができる。
【0058】
[導体基板]
一実施形態に係る導体基板は、基材フィルムと、基材フィルムの両面に設けられた硬化樹脂層と、硬化樹脂層の基材フィルムと反対側の少なくとも一方の面上に設けられた導体箔と、を有する。基材フィルムは、上述した液晶ポリマーフィルム又はフッ素樹脂フィルムである。硬化樹脂層は、ゴム成分と、エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤と、臭素系難燃剤と、難燃助剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む。すなわち、硬化樹脂層は、本実施形態に係る積層フィルムを構成する樹脂層を硬化したものである。
【0059】
導体箔の弾性率は、40~300GPaであってもよい。導体箔の弾性率が40~300GPaであることにより、配線基板の伸長による導体箔の破断が生じ難い傾向がある。同様の観点から、導体箔の弾性率は50GPa以上又は60GPa以上であってもよく、280GPa以下又は250GPa以下であってもよい。ここでの導体箔の弾性率は、共振法によって測定される値であることができる。
【0060】
導体箔は、金属箔であることができる。金属箔としては、銅箔、チタン箔、ステンレス箔、ニッケル箔、パーマロイ箔、42アロイ箔、コバール箔、ニクロム箔、ベリリウム銅箔、燐青銅箔、黄銅箔、洋白箔、アルミニウム箔、錫箔、鉛箔、亜鉛箔、半田箔、鉄箔、タンタル箔、ニオブ箔、モリブデン箔、ジルコニウム箔、金箔、銀箔、パラジウム箔、モネル箔、インコネル箔、ハステロイ箔等が挙げられる。適切な弾性率等の観点から、導体箔は、銅箔、金箔、ニッケル箔、及び鉄箔から選ばれてもよい。配線形成性の観点から、導体箔は銅箔であってもよい。銅箔は、フォトリソグラフィーにより、伸縮性樹脂層の特性を損なわずに、簡易的に配線パターンを形成できる。
【0061】
銅箔としては、特に制限はなく、例えば、銅張積層板及びフレキシブル配線板等に用いられる電解銅箔及び圧延銅箔を使用できる。市販の電解銅箔としては、例えば、F0-WS-18(古河電気工業株式会社製、商品名)、NC-WS-20(古河電気工業株式会社製、商品名)、YGP-12(日本電解株式会社製、商品名)、GTS-18(古河電気工業株式会社製、商品名)、及びF2-WS-12(古河電気工業株式会社製、商品名)が挙げられる。圧延銅箔としては、例えば、TPC箔(JX金属株式会社製、商品名)、HA箔(JX金属株式会社製、商品名)、HA-V2箔(JX金属株式会社製、商品名)、及びC1100R(三井住友金属鉱山伸銅株式会社製、商品名)が挙げられる。伸縮性樹脂層との密着性の観点から、粗化処理を施している銅箔を使用してもよい。耐折性の観点から、圧延銅箔を用いてもよい。
【0062】
金属箔は、粗化処理によって形成された粗化面を有していてもよい。この場合、通常、粗化面が伸縮性樹脂層に接する向きで、金属箔が伸縮性樹脂層上に設けられる。伸縮性樹脂層と金属箔との密着性の観点から、粗化面の表面粗さRaは、0.1~3μm、又は0.2~2.0μmであってもよい。微細な配線を容易に形成するために、粗化面の表面粗さRaが0.3~1.5μmであってもよい。
【0063】
表面粗さRaは、例えば、表面形状測定装置Wyko NT9100(Veeco社製)を用いて、以下の条件で測定することができる。
測定条件
内部レンズ:1倍
外部レンズ:50倍
測定範囲:0.120×0.095mm
測定深度:10μm
測定方式:垂直走査型干渉方式(VSI方式)
【0064】
導体箔の厚みは、特に制限はないが、1~50μmであってもよい。導体箔の厚みが1μm以上であると、より容易に配線パターンを形成することができる。導体箔の厚みが50μm以下であると、エッチング及び取り扱いが特に容易である。
【0065】
導体箔は、樹脂層の片面又は両面上に設けられる。樹脂層の両面上に導体箔を設けることにより、硬化等のための加熱による反りを抑制することができる。
【0066】
導体箔を設ける方法は特に制限されないが、例えば、硬化樹脂層を形成するための樹脂組成物を金属箔に直接塗工する方法、及び、積層フィルムにおける樹脂層と導体箔とを積層する方法がある。
【0067】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0068】
本発明について以下の実施例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
(樹脂ワニスの作製)
ポリビンに、無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブタジエンゴム(KRATON株式会社製、商品名「FG1924」、スチレン比:1.3%)80質量部(不揮発分の配合量)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EPICLON HP7200H」)10.9質量部(不揮発分の配合量)、エステル系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「HPC-8150」)9.1質量部(不揮発分の配合量)、及びトルエン400質量部を加えて混合し、不揮発分25質量%のベース樹脂を得た。次いで、ベース樹脂に、臭素化芳香族トリアジン(第一工業製薬株式会社、商品名「SR-245」)5質量部、三酸価アンチモン(株式会社鈴裕化学製、商品名「ファインカット WP-2」)5質量部、及び1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「1B2MZ」)3質量部を添加して、自転公転ミキサ(株式会社シンキー製、商品名「AR-100」)を用いて混合して、樹脂ワニスを作製した。
【0070】
(樹脂フィルムの作製)
キャリアフィルムとして離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製、商品名「ピューレックスA31」、厚み25μm)を準備した。このPETフィルムの離型処理面上にナイフコータ(株式会社康井精機製、商品名「SNC-350」)を用いて上記樹脂ワニスを塗布した。塗膜を乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、80℃で20分の加熱により乾燥して、所定の厚みを有する樹脂層を形成させた。形成された樹脂層に、キャリアフィルムと同じ離型処理PETフィルムを、離型処理面が樹脂層側になる向きで保護フィルムとして貼付けて、樹脂フィルムを得た。
【0071】
(積層フィルムの作製)
LCPフィルム(株式会社クラレ製、商品名「CTQ」、厚み:100μm)の両面に、樹脂フィルムからキャリアフィルムと保護フィルムを剥がした樹脂層(厚み:5μm)を積層し、真空加圧式ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、商品名「V130」)を用いて、圧力0.9MPa、温度100℃及び加圧時間1分の条件でラミネートして、樹脂層/LCP/樹脂層の3層から構成される積層フィルムを得た。
【0072】
[実施例2~3及び比較例1]
臭素系難燃剤である臭素化芳香族トリアジン及び難燃助剤である三酸価アンチモンの添加量を、表1に示す量(質量部)に変更して樹脂ワニスを作製したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルム及び積層フィルムを作製した。
【0073】
[評価]
樹脂フィルム及び積層フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(誘電特性)
Split Post Dielectric Reconator(SPDR)法による誘電特性を評価した。樹脂フィルムを、乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、180℃で60分の熱処理し、樹脂層を硬化させて、誘電特性測定用のサンプルを作製した。サンプルを誘電体共振器(QWED製)に設置し、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製、E8364B)を用いて、周波数10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0075】
(ピール強度)
樹脂フィルムからキャリアフィルム及び保護フィルムを剥がし、露出した樹脂層の両面に、H-VLP銅箔を重ねた。その状態で、真空加圧式ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、商品名「V130」)を用いて、圧力0.9MPa、温度100℃及び加圧時間60秒の条件で銅箔を樹脂層にラミネートした。その後、乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、180℃で60分の加熱により、樹脂層を硬化させて、ピール強度測定用のサンプルを作製した。サンプルのサイズは、幅10mm×長さ70mmとした。サンプルの銅箔と硬化樹脂層間のピール強度を、卓上ピール試験機(株式会社島津製作所、商品名「EZ-S」)を用いて評価した。測定条件は、試験角度90°、ピール速度50mm/分とし剥離方向はサンプルの長さ方向とした。
【0076】
(燃焼試験)
積層フィルムを、乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、180℃で60分の加熱により、樹脂層を硬化させて、燃焼試験用のサンプルを作製した。燃焼試験用のサンプルに対して、UL94V試験を実施した。
【0077】
【符号の説明】
【0078】
1…基材フィルム、3…樹脂層。10…積層フィルム。