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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バックグラインドテープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240806BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240806BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L21/304 622L
H01L21/304 622Z
H01L21/304 631
C09J7/38
C09J4/02
C09J175/04
C09J11/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020127494
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024736
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】池谷 達宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 健一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211505(JP,A)
【文献】特開2013-258332(JP,A)
【文献】特開2017-171896(JP,A)
【文献】特開2009-194287(JP,A)
【文献】特開平11-307620(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047308(WO,A1)
【文献】特開2014-17462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 4/02
C09J 175/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有するバックグラインドテープであって、
前記粘着剤層が、粘着剤組成物の硬化物からなり、厚みが50~500μmであり、
前記粘着剤組成物が、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、多官能チオール(C)と、光重合開始剤(D)と、界面活性剤(E)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
前記界面活性剤(E)が、フルオロアルキル基を有する重合物であり、
前記粘着剤組成物が、前記界面活性剤(E)を0.1~3質量%含有することを特徴とするバックグラインドテープ。
【請求項2】
前記粘着剤層が、単層構造である、請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項3】
前記粘着剤層のゲル分率が45~65質量%である、請求項1または請求項2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のバックグラインドテープ。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有する、請求項4に記載のバックグラインドテープ。
【請求項6】
前記粘着剤組成物が、
前記ポリウレタン(A)を20~50質量%、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)を35~77質量%、
前記多官能チオール(C)を2~9質量%、
前記光重合開始剤(D)を0.01~5質量%含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のバックグラインドテープ。
【請求項7】
前記粘着剤組成物が、更に脂肪酸エステル(F)を含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のバックグラインドテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインドテープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの薄型化に伴って、半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハのバックグラインド工程が行われている。半導体ウエハのバックグラインド工程では、半導体ウエハの表面をバックグラインドテープで保護した上で、裏面を研削し、半導体ウエハを薄型化している。
【0003】
従来、バックグラインドテープは、半導体ウエハの表面を保護するために用いられている。バックグラインドテープとしては、一般的に、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着シートが使用されている。
例えば、特許文献1には、基材、中間層、及び粘着剤層をこの順で有し、中間層が、非エネルギー線硬化性のアクリル系重合体(A)及び質量平均分子量が5万~25万のエネルギー線硬化性のアクリル系重合体(B)を含む層であり、粘着剤層が、エネルギー線硬化型のアクリル系重合体(C)を含む層であるウエハ保護用粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/111310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、バックグラインドテープとして、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハに対して十分な凹凸吸収性を有するものが求められている。表面に凹凸部分を有する半導体ウエハとしては、表面にはんだ等からなるバンプ(電極)が形成された半導体ウエハなどがある。表面に凹凸部分を有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う場合、表面を保護するバックグラインドテープの半導体ウエハに対する凹凸吸収性が不十分であると、凹凸部分の周辺に空隙が生じる。この空隙に、バックグラインド工程で使用する水が侵入すると、半導体ウエハが汚染される可能性がある。
【0006】
また、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う際に用いられるバックグラインドテープには、十分な粘着力を有することが求められる。しかし、粘着力の高いバックグラインドテープを、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハに貼付してバックグラインド工程を行うと、バックグラインド工程後、バックグラインドテープを剥離した半導体ウエハに、バックグラインドテープの粘着剤が転写される糊残りが発生してしまう。バックグラインドテープの粘着剤が半導体ウエハに転写されると、バックグラインド工程後の半導体デバイスの製造工程に不具合が生じることがある。近年、半導体デバイスにおいてより一層の小型化が図られている。このため、半導体ウエハ上の微小な汚れであっても半導体デバイスの製造工程に不具合を生じさせることがある。したがって、目視で確認できない微細な糊残りであっても発生しないこと望ましい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、凹凸吸収性に優れ、十分な粘着力を有し、かつバックグラインドテープを剥離した後の被着体に糊残りを生じさせにくいバックグラインドテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を含む。
[1] シート状の基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有するバックグラインドテープであって、
前記粘着剤層が、粘着剤組成物の硬化物からなり、厚みが50~500μmであり、
前記粘着剤組成物が、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、多官能チオール(C)と、光重合開始剤(D)と、界面活性剤(E)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
前記界面活性剤(E)が、フルオロアルキル基を有する重合物であり、
前記粘着剤組成物が、前記界面活性剤(E)を0.1~3質量%含有することを特徴とするバックグラインドテープ。
【0009】
[2] 前記粘着剤層が、単層構造である、[1]に記載のバックグラインドテープ。
[3] 前記粘着剤層のゲル分率が45~65質量%である、[1]または[2]に記載のバックグラインドテープ。
[4] 前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[5] 前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有する、[4]に記載のバックグラインドテープ。
【0010】
[6] 前記粘着剤組成物が、
前記ポリウレタン(A)を20~50質量%、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)を35~77質量%、
前記多官能チオール(C)を2~9質量%、
前記光重合開始剤(D)を0.01~5質量%含む、[1]~[5]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【0011】
[7] 前記粘着剤組成物が、更に脂肪酸エステル(F)を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凹凸吸収性に優れ、十分な粘着力を有し、かつバックグラインドテープを剥離した後の被着体に糊残りを生じさせにくいバックグラインドテープを提供できる。
したがって、本発明のバックグラインドテープは、例えば、表面にバンプが形成された半導体ウエハなど、表面に凹凸部分を有する被着体のバックグラインド工程を行う際に、表面を保護するために使用されるバックグラインドテープとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<バックグラインドテープ>
本実施形態のバックグラインドテープ(以下、「BGテープ」とも言う。)は、シート状の基材と、基材の片面に形成された粘着剤層とを有する。
本実施形態のBGテープの平面形状は、例えば、帯状であってもよいし、矩形状であってもよいし、円板状であってもよく、特に限定されない。
【0015】
(基材)
基材の材質は、適宜選択可能であり、例えば、樹脂材料などが挙げられる。樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルシート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリイミド(PI);ポリフェニレンサルファイド(PPS);エチレン酢酸ビニル(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、適度な可撓性を有するシートが得られるため、PE、PP、PETを用いることが好ましい。樹脂材料は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
基材として樹脂材料からなる樹脂シートを用いる場合、樹脂シートは、単層であってもよいし、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。多層構造を有する樹脂シートにおいて、各層を構成する樹脂材料は、1種のみを単独で含む樹脂材料であってもよいし、2種以上を含む樹脂材料であってもよい。
【0017】
基材としては、帯電防止処理が施されているものを用いても良い。基材に施される帯電防止処理としては、特に限定されないが、基材の少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法、基材に帯電防止剤を練り込む方法などを用いることができる。
さらに、基材の粘着剤層が形成される面には、必要に応じて、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理等の易接着処理が施されていてもよい。
【0018】
基材の厚さは、基材の材質などに応じて適宜選択できる。BGテープが、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハなどの被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられるものであって、基材として樹脂シートを用いる場合、基材の厚さは、例えば10~1000μmであることが好ましく、好ましくは50~300μmである。基材の厚さが10μm以上であると、BGテープの剛性(コシ)が高くなる。そのため、BGテープを、被着体である半導体ウエハに貼り付けたり剥離したりする際に、BGテープにしわおよび浮きが生じ難くなる傾向がある。また、基材の厚さが1000μm以下であると、半導体ウエハに貼り付けたBGテープを、半導体ウエハから剥離しやすくなり、作業性(取扱い性、ハンドリング)が良好となる。
【0019】
(粘着剤層)
粘着剤層は、後述する粘着剤組成物の硬化物からなる。粘着剤層は、単層構造であることが好ましい。粘着剤層は、基材の片面に形成されている。
BGテープが、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハなどの被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられる場合、粘着剤層は、BGテープを被着体の表面に十分な接着力で固定することにより、バックグラインド工程中の被着体の表面を保護する役割を有する。また、粘着剤層は、被着体表面の凹凸を吸収して平滑にすることにより、バックグラインド工程の精度を高める役割を有する。さらに、本実施形態のBGテープの有する粘着剤層は、BGテープを剥離した後の被着体に、糊残りが生じない。
【0020】
本実施形態の粘着剤層の厚みは、50~500μmであり、60~400μmであることが好ましく、70~300μmであることがより好ましい。粘着剤層の厚みが50μm以上であると、BGテープの凹凸吸収性および粘着力が良好となる。また、粘着剤層の厚みが500μm以下であると、粘着剤層の膜厚制御が容易となる。
【0021】
本実施形態のBGテープが、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付されるものである場合、粘着剤層の厚みは、被着体表面の凹凸部分の高さに大きく依存する。粘着剤層の厚みは、十分な凹凸吸収性が得られるように、被着体表面の凹凸部分の高さ以上とすることが好ましい。したがって、例えば、被着体表面の凹凸部分が半導体ウエハに形成されたバンプである場合、粘着剤層の厚みをバンプの高さ寸法の2倍以上とすることが好ましい。バンプの高さは通常30~200μmであり、例えば、バンプの高さが100μmである場合には、粘着剤層の厚みを200μm以上とすることが好ましく、バンプの高さが200μmである場合には、粘着剤層の厚みを400μm以上とすることが好ましい。
【0022】
粘着剤層は、単層構造であってもよいし、本実施形態の粘着剤層と、本実施形態の粘着剤層とは異なる1層以上の他の粘着剤層を積層した多層構造であってもよい。他の粘着剤層としては、従来公知の粘着剤層を用いることができる。本実施形態において、粘着剤層が多層構造である場合、本実施形態の粘着剤層が最表面に存在する必要がある。また、本実施形態のBGテープにおいては、粘着剤層の硬化を阻害しない範囲内で、粘着剤層と基材との間に粘着剤層以外の層が存在していても良い。工程短縮の面から、粘着剤層は単層構造であることが好ましい。
【0023】
粘着剤層のゲル分率は、45~65質量%であることが好ましい。ゲル分率が45質量%以上であると、被着体に貼付したBGテープを剥離することによる糊残りの発生をより効果的に抑制できる。また、ゲル分率が65質量%以下であると、粘着剤層が十分な流動性を有するものとなり、BGテープの凹凸吸収性がより一層良好となる。粘着剤層のゲル分率は、47質量%以上であることがより好ましい。また、粘着剤層のゲル分率は、63質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
(粘着剤層のゲル分率の測定)
粘着剤層のゲル分率の測定は、以下の方法で行う。まず、BGテープから約1gとなるサイズでシートを切り出し、基材を剥がして測定用サンプルとし、その質量を測定する。続いて、測定用サンプルを50mlのトルエンに浸漬し、室温で72時間静置する。その後、測定用サンプルをトルエン中から取り出し、80℃で5時間乾燥し、再び質量を測定する。そして、下記式に基づいて、ゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:トルエンに浸漬した後の測定用サンプルの質量(トルエンの質量は含まない)
B:トルエンに浸漬する前の測定用サンプルの質量
【0025】
(セパレーター)
BGテープには、粘着剤層を保護する目的で、粘着剤層の基材と反対側の表面に、透明なセパレーターが設けられていてもよい。セパレーターは、粘着剤層の表面にラミネートされていることが好ましい。セパレーターの材料としては、例えば、紙、プラスチックフィルムなどを用いることができ、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムを用いることが好ましい。セパレーターとして用いられるプラスチックフィルムとしては、上記した粘着剤層を保護し得るものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテンなどが挙げられる。
【0026】
<粘着剤組成物>
次に、本実施形態のBGテープにおいて、粘着剤層の材料として使用した粘着剤組成物について詳細に説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、多官能チオール(C)と、光重合開始剤(D)と、界面活性剤(E)とを含む。
【0027】
(ポリウレタン(A))
ポリウレタン(A)は、後述のポリウレタン(a1)を含む。ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)だけでなく、粘着剤組成物の硬化物における凝集力を調節する目的で、後述するポリウレタン(a2)が含まれていてもよい。ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)以外の成分は含まれないことが好ましい。
【0028】
[ポリウレタン(a1)]
ポリウレタン(a1)は、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。また、ポリウレタン(a1)は、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有する。ポリウレタン(a1)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0029】
本発明において、ポリウレタンの「複数の末端」とは、ポリウレタンが直鎖ポリマーである場合、2つの末端であり、ポリウレタンが分岐ポリマーである場合、各分岐鎖の本数と同じ数の末端のうち2つ以上の末端である。
また、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、化学式CH=CH-CO-で表される官能基、および化学式CH=C(CH)-CO-で表される官能基から選択される一種以上を意味する。
【0030】
[ポリウレタン(a2)]
ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と同様に、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と異なり、1つの末端のみに(メタ)アクリロイル基を有する。ポリウレタン(a2)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。ポリウレタン(a2)の有する(メタ)アクリロイル基を有さない末端は、イソシアナト基、アルキルアルコール由来の構造、アルキルイソシアネート由来の構造から選ばれるいずれかを有することが好ましく、アルキルアルコール由来の構造を有することがより好ましい。
【0031】
「ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールとしては、炭素数2~4のアルキレン鎖を有するものであることが好ましい。具体例としては、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオールなどが挙げられる。
【0032】
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、1種類のアルキレン鎖を含むものであってもよいし、2種類以上のアルキレン鎖を含むものであってもよい。
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、末端に2つまたは3つの水酸基を有するもの(ジオール型またはトリオール型のポリオキシアルキレンポリオール)であることが好ましく、ポリオキシアルキレングリコール(ジオール型)であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン鎖を有するポリプロピレングリコールであることが特に好ましい。
【0033】
例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが、ポリプロピレングリコールである場合、水酸基価は20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリプロピレングリコールの具体例としては、例えば、水酸基価が56mgKOH/gの水酸基(ヒドロキシ基)を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000、ジオール型)などが挙げられる。
【0034】
ここで、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価とは、JISK0070にしたがって測定されたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価である。すなわち、ポリオキシアルキレンポリオール1gをアセチル化させたときの遊離酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、無水酢酸を用いて試料(ポリオキシアルキレンポリオール)中の水酸基をアセチル化し、その際に生じる遊離酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
【0035】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、500~5,000であることが好ましく、800~4,000であることがより好ましく、1,000~3,000であることがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500以上であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有するBGテープが、剥離強度の高いものとなる。また、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が5,000以下であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)が十分な量のウレタン結合を含むものとなる。このため、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化させた硬化物は、凝集力が良好なものとなる。
【0036】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)は、2種以上の異なるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が、ポリイソシアネート由来の構造を挟んで結合された構造を有していてもよい。
ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
「ポリイソシアネート由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートとしては、イソシアナト基を複数有する化合物が用いられ、ジイソシアネートを用いることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加物、1,5-ナフチレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
これらのポリイソシアネートの中でも、これを用いて合成したポリウレタン(A)の耐光性、およびポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の制御の点から、イソホロンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の点で、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることがより好ましい。
【0039】
ポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)などが挙げられる。
【0040】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
また、ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造およびポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が同じである場合、ポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)とを同時に合成することができ、ポリウレタン(A)を効率よく製造でき、好ましい。
【0042】
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の80~100%であることが好ましく、90~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a2)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の0~20%であることが好ましく、0~10%がより好ましく、0%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合が80%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物が、十分に凝集力の大きいものとなり、好ましい。
【0043】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数(ポリウレタン(a1)の末端数と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)の末端数との合計数)のうち、分子数基準で90~100%に(メタ)アクリロイル基が導入されていることが好ましく、95~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、(メタ)アクリロイル基の導入量が分子数基準で90%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力が十分に高いものとなる。
【0044】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、赤外線吸収スペクトル(IR)法、核磁気共鳴スペクトル(NMR)法などを用いてポリウレタン(A)を分析した結果を用いて算出できる。
【0045】
ポリウレタン(A)に含まれているポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)の含有量の割合、すなわち、ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、後述するポリウレタン(A)の製造方法により調整できる。
【0046】
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、30,000~200,000であることが好ましく、50,000~150,000であることがより好ましく、60,000~100,000であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の質量平均分子量が30,000以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物が、良好な柔軟性を有するものとなる。また、ポリウレタン(A)の質量平均分子量が200,000以下であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物は、取り扱いが容易で、作業性が良好なものとなる。
【0047】
(ポリウレタン(A)の質量平均分子量の測定方法)
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC-101;昭和電工株式会社製Shodex(登録商標))(以下、GPCという。)により測定されたポリスチレン換算の値である。GPCの測定条件は以下のとおりである。
カラム:LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:ポリウレタン(A)の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0048】
本実施形態の粘着剤組成物中におけるポリウレタン(A)の含有量は、20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の含有量が20質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物は、十分な凝集力を有するものとなり、優れた粘着力が得られる。また、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、粘着剤層の柔らかさが適正範囲となり、粘着剤層と被着体との間への気泡の挟み込みが生じにくい。また、ポリウレタン(A)の含有量が50質量%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物は、十分な柔軟性を有するものとなる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、被着体に対する濡れ性が良好である。
【0049】
((メタ)アクリレートモノマー(B))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、ポリウレタン(A)以外であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であればよく、特に限定されない。(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、単官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの両方を用いてもよい。
【0050】
本発明において、単官能(メタ)アクリレートにおける「単官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、1つのみである(メタ)アクリレートを意味する。
また、本発明において、多官能(メタ)アクリレートにおける「多官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、2つ以上である(メタ)アクリレートを意味する。
【0051】
(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力および粘着剤組成物の硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートと3官能以上の(メタ)アクリレートとを含有することがより好ましく、特に、単官能(メタ)アクリレートと、3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する3官能(メタ)アクリレートとを含有することが好ましい。
【0052】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0053】
これらの単官能(メタ)アクリレートの中でも、粘着剤組成物を硬化させて得られる硬化物の粘着力(剥離力)およびゲル分率が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に、より適正な範囲となりやすいため、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。具体的には、アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも特に、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび/またはn-ブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0054】
多官能(メタ)アクリレートは、ポリウレタン(A)以外であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有している化合物である。多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物のポリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス(ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω-ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートとして、粘着剤組成物の硬化性の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリレートモノマー(B)として、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートの両方を含有する場合、(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有することが好ましい。この場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量は、90~99モル%であることがより好ましく、95~98モル%であることがさらに好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、1~10モル%であることがより好ましく、2~5モル%であることがさらに好ましい。
【0056】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量が85モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、十分な凹凸吸収性が得られ、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が99モル%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0057】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量が1モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が大きくなりすぎず好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量が15モル%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。
【0058】
本実施形態の粘着剤組成物中における(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は、35~77質量%であることが好ましく、40~74質量%であることがより好ましく、45~69質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が35質量%以上であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎることがなく、塗工性に優れるため好ましい。また、(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が77質量%以下であると、粘着剤組成物の粘度が低くなりすぎることがなく、粘着剤組成物からなる塗膜の厚みを制御し易く、好ましい。
【0059】
(多官能チオール(C))
多官能チオール(C)は、粘着剤組成物を硬化させた硬化物の凹凸吸収性およびゲル分率を制御する目的で、粘着剤組成物中に含有させる。
多官能チオール(C)は、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物である。
【0060】
多官能チオール(C)としては、特に限定されないが、例えば、1,2-エタンジチオール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。多官能チオール(C)としては、上記の中でも、粘着剤組成物の反応性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を用いることが好ましい。
【0061】
本実施形態の粘着剤組成物中における多官能チオール(C)の含有量は、2~9質量%であることが好ましく、3~8質量%であることがより好ましく、4~7質量%であることがさらに好ましい。多官能チオール(C)の含有量が2質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。含有量が9質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0062】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)は、特に限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光重合開始剤(D)としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。これらの光重合開始剤(D)中でも、粘着剤組成物を光硬化させて得られる硬化物の透明性の観点から、カルボニル系光重合開始剤および/またはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましく、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよび/または1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンを用いることが好ましい。
【0063】
本実施形態の粘着剤組成物中における光重合開始剤(D)の含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が0.01質量%以上であると、粘着剤組成物の光硬化が十分に進行する。また、光重合開始剤(D)の含有量が5質量%以下であると、粘着剤組成物の光硬化時に低分子量成分が多くなりすぎることがない。このため、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0064】
(界面活性剤(E))
界面活性剤(E)は、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープの剥離強度を調整するとともに、BGテープを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りを生じにくくする目的で含有させる。界面活性剤(E)としては、フルオロアルキル基を有する重合物を用いる。
【0065】
上記重合物の有するフルオロアルキル基は、特に限定されるものではなく、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル基、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル基、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H-オクタフルオロプロピル基、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等が挙げられる。
【0066】
上記重合物の有するフルオロアルキル基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
上記のフルオロアルキル基の中でも、上記重合物の含有するフッ素原子の数が好適となりやすいため、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基であることが好ましい。
【0067】
上記重合物は、フルオロアルキル基を側鎖に有するものであることが好ましい。本実施形態において、側鎖とは、分子の最も長い炭素鎖(主鎖)から枝分かれした部分を意味する。
上記フルオロアルキル基を有する重合物が、フルオロアルキル基を側鎖に有する場合、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、ブリードアウト現象の生じにくいものとなり、剥離後の被着体の汚染をより少なくできる。また、上記フルオロアルキル基を有する重合物が、フルオロアルキル基を側鎖に有することにより、上記重合物と上記ポリウレタン(A)との相溶性がより一層向上し、粘着剤組成物の透明性が向上する。
【0068】
上記フルオロアルキル基を有する重合物としては、例えば、下記式(1)で示される化合物を構成モノマーとして含むものが挙げられる。
CH=C(R)-C(O)O-Q-Rf ・・・(1)
(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基である。Qは、単結合またはフッ素原子を含まない2価の連結基である。Rfは、主鎖の炭素数が1~6であって、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基を示す。)
【0069】
式(1)において、Qが示す2価の連結基としては、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、式(C2rO)で表されるオキシアルキレン基(式中のrは2~6の整数、sは1~10の数であり、当該オキシアルキレン基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)、2価の6員環芳香族基、2価の4~6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5~6員環の複素環基、または下記式(2)で表される2価の連結基が挙げられる。Qが示す2価の連結基は、2種以上を組み合わせたものであってもよく、環を縮合したものであってもよく、置換基を有するものであってもよい。Qは原子量の合計が300以下の連結基であることが好ましい。
【0070】
-Y-Z- ・・・(2)
(式(2)中、Yは、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、2価の6員環芳香族基、2価の4~6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5~6員環の複素環基、またはこれらが縮合した環基である。Zは、-O-、-S-、-CO-、-C(O)O-、-C(O)S-、-N(R)-、-SO-、-PO(OR)-、-N(R)-C(O)O-、-N(R)-C(O)-、-N(R)-SO-、または-N(R)-PO(OR)-であり、Rは、水素原子または炭素数が1~3のアルキル基である。)
【0071】
Qとしては、単結合、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、下記式(3)で表される基、またはこれらの基の組み合わせが好ましく、-(CH(式中のpは0~6の整数であり、pが0の場合は単結合を表す。)が特に好ましい。
【0072】
-Y-Z- ・・・(3)
(式(3)中、Yは、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または2価の6員環芳香族基である。Zは、-N(R)-、-SO-、または-N(R)-SO-であり、Rは、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。)
【0073】
式(1)におけるRfは、主鎖の炭素数が1~6であって、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基である。QとRfとの境界は、Rfの炭素数が最も少なくなるように定める。ポリフルオロアルキル基とは、主鎖の炭素数(側鎖を含まない炭素数)1~6のアルキル基の水素原子が、2つ以上フッ素原子に置換された基を意味する。また、主鎖とは、直鎖状の場合は該直鎖を意味し、分岐状の場合は最も長い炭素鎖を意味する。側鎖とは、分岐状のポリフルオロアルキル基を構成する炭素鎖のうち、主鎖以外の炭素鎖を意味する。側鎖はアルキル基、モノフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基からなる。
【0074】
界面活性剤(E)の重量平均分子量(Mw)は、5,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~20,000である。界面活性剤(E)の重量平均分子量が上記範囲内であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、適度な剥離強度を有し、かつブリードアウト現象のより生じにくいものとなる。
【0075】
本実施形態の粘着剤組成物中における界面活性剤(E)の含有量は、0.1~3質量%であり、好ましくは0.15~2質量%であり、さらに好ましくは0.2~1質量%である。上記界面活性剤(E)の含有量が0.1質量%以上であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、糊残りの生じにくいものとなる。上記界面活性剤(E)の含有量が3質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、ブリードアウト現象の生じにくいものとなる。
【0076】
前記フルオロアルキル基を有する重合物としては、市販品を用いてもよい。具体的には、例えば、商品名で、メガファックF-477、F-553、F-556、F-559、F-569(以上、DIC社製)、サーフロンS-386、S-611、S-647、S-651、S-653、-656、S-658、(以上、AGCセイミケミカル社製)などが挙げられる。これらのフルオロアルキル基を有する重合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
(脂肪酸エステル(F))
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、多官能チオール(C)と、光重合開始剤(D)と、界面活性剤(E)とを含み、さらに必要に応じて、脂肪酸エステル(F)を含有してもよい。
脂肪酸エステル(F)は、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープにおける粘着力を制御するとともに、粘着剤層のラミネート性(濡れ性)および泡抜け性(被着体にBGシートを貼り合わせ時に挟み込んだ気泡の抜けやすさ)を向上させる目的で粘着剤組成物中に含有させる。
【0078】
脂肪酸エステル(F)としては、脂肪酸とアルキルアルコールとのエステルを用いることができ、他の成分との相溶性の観点から、炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステル、および炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルから選ばれる脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0079】
炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルおよび/またはステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが特に好ましい。
【0080】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルとしては、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸などの不飽和脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタンなどのアルコールとのエステルが挙げられる。
【0081】
本実施形態の粘着剤組成物中における脂肪酸エステル(F)の含有量は、1~15質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
脂肪酸エステル(F)の含有量が1質量%以上であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープにおける粘着力が好ましい範囲になるとともに、粘着剤層のラミネート性および泡抜け性が良好となる。脂肪酸エステル(F)の含有量が15質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に脂肪酸エステル(F)を含む糊残りが生じにくく、好ましい。
【0082】
(溶剤)
本実施形態の粘着剤組成物は、溶剤を含んでもよいが、溶剤を実質的に含まない無溶剤のものであることがより好ましい。
本実施形態の粘着剤組成物が溶剤を含む場合、例えば、レベリング剤および/または軟化剤として溶剤を用いることができる。
【0083】
本実施形態の粘着剤組成物が無溶剤である場合、これを用いてBGテープの粘着剤層を形成する際に、溶媒を加熱乾燥する工程を省略できるため、優れた生産性が得られる。特に、本実施形態の粘着剤組成物を用いて、厚みが50μmを超える粘着剤層を有するBGテープを製造する場合には、溶媒を加熱乾燥する工程を省略することによる生産性向上効果が顕著となるため、無溶剤であることが好ましい。
【0084】
本発明において、粘着剤組成物が「溶剤を実質的に含まない」の意味は、粘着剤組成物中における溶剤の含有量が0~1質量%であることを意味し、好ましくは0~0.5質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0085】
(その他)
本実施形態の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、染料などが挙げられる。
【0086】
<粘着剤組成物の製造方法>
次に、本実施形態の粘着剤組成物の製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。
以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、ポリウレタン(A)については、好ましい合成方法について例を挙げて説明する。本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、(メタ)アクリレートモノマー(B)、多官能チオール(C)、光重合開始剤(D)、界面活性剤(E)、脂肪酸エステル(F)など、ポリウレタン(A)を除く各成分については、市販品を容易に購入できるし、各成分として用いる化合物の種類によってそれぞれ合成方法が異なるため、合成方法の説明を省略する。
【0087】
<ポリウレタン(A)の合成方法>
以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれるポリウレタン(A)の好ましい合成方法の一例について説明する。なお、ポリウレタン(A)の合成方法は、以下に示す合成方法に限定されるものではなく、合成に用いる原料および設備などの条件によって、適宜変更可能である。
【0088】
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法において、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行う。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0089】
ポリウレタン(A)を合成するには、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、イソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)がヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンを合成する。原料として用いられるポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートの具体的な例は、ポリウレタン(A)の項で例示したとおりである。
【0090】
このとき、原料中に含まれるヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比を調整することにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が少ないほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が多いほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0091】
次に、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0092】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられる。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンのイソシアナト基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0093】
また、ポリウレタン(A)は、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールを併用して、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルアルコールとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルアルコールなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルアルコールは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールと、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0095】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルアルコール由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0096】
<ポリウレタン(A)の合成方法の他の例>
次に、ポリウレタン(A)の好ましい合成方法の他の例について説明する。
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法においても、上記の合成方法の例と同様に、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行う。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0097】
この合成方法を用いてポリウレタン(A)を合成する場合、上記の合成方法の例と異なり、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
具体的には、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、ヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)がイソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
【0098】
このとき、原料中に含まれるイソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比を調整することにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が少ないほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が多いほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0099】
次に、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0100】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製のカレンズMOI(登録商標)、カレンズAOI(登録商標)などが例示できる。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンのヒドロキシ基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることが好ましい。
【0101】
また、ポリウレタン(A)は、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートを併用して、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルイソシアネートとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルイソシアネートなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルイソシアネートは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートと、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0103】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルイソシアネート由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0104】
<粘着剤組成物に含まれる各成分の混合方法>
本実施形態の粘着剤組成物は、上記の合成方法により得られたポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、多官能チオール(C)と、光重合開始剤(D)と、界面活性剤(E)と、必要に応じて添加される脂肪酸エステル(F)およびその他の添加剤とを混合する方法により製造できる。
本実施形態の粘着剤組成物に含まれる各成分を混合する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ホモディスパー、パドル翼などの攪拌翼を取り付けた攪拌装置を用いて行うことができる。
【0105】
<BGテープの製造方法>
次に、本実施形態のBGテープの製造方法について説明する。
本実施形態のBGテープの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造できる。
例えば、シート状の基材上に、粘着剤組成物を塗布し、セパレーターをラミネートして積層体とする。その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させる。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層が形成されたBGテープが得られる。
【0106】
基材に粘着剤組成物を塗布する方法は、特に限定されず、適宜選択可能である。例えば、基材に粘着剤組成物を塗布する方法として、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等の各種コーターを用いる方法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0107】
粘着剤組成物を光硬化させる際の光源としては、ブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
光の照射強度は、粘着剤組成物を充分に硬化させることができ、かつ硬化物のゲル分率が45~65質量%の範囲内となるような条件であることが好ましく、例えば、50~3000mW/cmであることが好ましい。なお、光の照射強度が弱いと硬化に時間がかかり、生産性が低下する。
【0108】
本実施形態では、透明なセパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射したが、基材が透明である場合、基材側から紫外線を照射してもよく、セパレーターとして不透明なものを用いてもよい。
【0109】
<BGテープの用途および求められる性能>
本実施形態のBGテープは、例えば、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いることができる。具体的には、半導体ウエハのバンプが形成された面に貼付して、半導体ウエハの表面を保護し、所定のウエハ加工工程の後に剥離される半導体ウエハ加工用のバックグラインドテープとして好適に使用できる。
【0110】
本実施形態のBGテープを、表面にバンプが形成された半導体ウエハの表面を保護する用途に用いる場合、BGテープの剥離強度(粘着力)は、例えば、半導体デバイスの加工工程におけるバックグラインド工程において、半導体ウエハにBGテープがしっかりと固定される剥離強度(粘着力)を有する必要がある。一方、BGテープの剥離強度は、所定の加工工程の後、BGテープを半導体ウエハから剥離する際に、半導体デバイスの部品を破損させない程度の強度である必要がある。
【0111】
これらの観点から、上記の用途に用いられるBGテープの剥離強度は、剥離速度が0.3m/min.であって、粘着剤層の厚みが50~200μmである場合、10~300gf/25mmであることが好ましく、15~200gf/25mmであることがより好ましく、20~150gf/25mmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが200~500μmである場合、50~500gf/25mmであることが好ましく、60~400gf/25mmであることがより好ましく、70~300gf/25mmであることがさらに好ましい。BGテープの剥離強度の具体的な測定方法は、実施例において後述する。
【0112】
本実施形態のBGテープは、シート状の基材の片面に、本実施形態の粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有する。このため、本実施形態のBGテープは、凹凸吸収性に優れ、十分な粘着力を有し、かつBGテープを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくい。したがって、本実施形態のBGテープは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に好適である。
【0113】
本実施形態のBGテープは、例えば、表面にバンプからなる凹凸部分を有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う際に貼付され、バックグラインド工程後に剥離されるBGテープとして、好適に用いることができる。この場合、本実施形態のBGテープによって半導体ウエハが十分な粘着力で固定される。しかも、BGテープが十分な凹凸吸収性を有しているため、半導体ウエハに貼付されたBGテープとバンプ周辺との間に空隙が発生しにくい。よって、バックグラインド工程で使用する水が、BGテープとバンプ周辺との間の空隙に侵入して、半導体ウエハが汚染されることを防止できる。さらに、本実施形態のBGテープは、バックグラインド工程後、BGテープを剥離した半導体ウエハのバンプ周辺に、糊残りが発生しにくく、好ましい。
【0114】
本実施形態のBGテープは、粘着剤層が粘着剤組成物の硬化物からなる単層構造とすることができる。この場合、1つの層を形成する工程を行うだけで粘着剤層を形成できる。よって、本実施形態のBGテープは、例えば、凹凸吸収性を有する層と粘着力を有する層とが備えられたBGテープを形成する場合と比較して、少ない製造工程で容易に製造できる。
【実施例
【0115】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0116】
<ポリウレタン(A-1)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた反応器に、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)を0.55kg(2.1mol)と、水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000)を4.01kg(2.0mol)と、ウレタン化触媒であるジオクチルスズ(ネオスタンU-810、日東化成社製)を0.8gとを仕込んだ。
【0117】
その後、反応器を60℃まで昇温して4時間反応させ、ポリウレタン(A)の前駆体として、イソシアナト基を両末端に有するポリウレタンを得た。続いて、反応器に2-ヒドロキシエチルアクリレート23.22g(0.2mol)を加え、70℃まで昇温して2時間反応させ、質量平均分子量67,000のポリウレタン(A-1)を4.58kg得た。
【0118】
得られたポリウレタン(A-1)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-1)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0119】
<ポリウレタン(A-2)の合成>
ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物に代えて、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)2.1molを用いたこと以外は、ポリウレタン(A-1)の合成法と同様にして、質量平均分子量66,000のポリウレタン(A-2)を得た。
【0120】
得られたポリウレタン(A-2)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-2)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0121】
<粘着剤組成物の調製>
このようにして得られたポリウレタン(A)と、表1および表2に示す(メタ)アクリレートモノマー(B)と多官能チオール(C)と光重合開始剤(D)と界面活性剤(E)と脂肪酸エステル(F)とを、表1および表2に記載の割合で配合し、25℃でディスパーを用いて混合し、実施例1~実施例8および比較例1~比較例6の粘着剤組成物を得た。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1および表2中に記載の下記記号は、以下に示す化合物である。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(東亜合成株式会社製)
BUA:n-ブチルアクリレート(東亜合成株式会社製)
ACMO:アクリロイルモルホリン(新中村化学工業株式会社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成株式会社製)
【0125】
PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製)
NR1:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製)
TPO(Omnirad TPO H):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製)
【0126】
メガファックF-477:フルオロアルキル基を側鎖に有する重合物(DIC株式会社製)
サーフロンS-386:フルオロアルキル基を側鎖に有する重合物(AGCセイミケミカル株式会社製)
サーフロンS-656:フルオロアルキル基を側鎖に有する重合物(AGCセイミケミカル株式会社製)
サーフロンS-651:フルオロアルキル基を側鎖に有する重合物(AGCセイミケミカル株式会社製)
(メガファックF-477、サーフロンS-386、サーフロンS-656、サーフロンS-651の重量平均分子量(Mw)は、いずれも5,000~30,000である。)
【0127】
KF-353:オキシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)
エキセパールIPM:ミリスチン酸イソプロピル(花王株式会社製)
エキセパールEH-S:ステアリン酸2-エチルヘキシル(花王株式会社製)
【0128】
<BGテープの作製>
シート状の基材として、厚さ50μmPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:エステル(商標)フィルムE5100)を用意した。そして、基材のコロナ処理面上に、アプリケーターを用いて実施例1の粘着剤組成物を、硬化後の厚さが150μmとなるように塗布した。
【0129】
次いで、粘着剤組成物の塗布面に、セパレーターとして、厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)を、ゴムローラーを使用して貼り合わせた。
その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cmの条件で紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させた。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、セパレーターとが積層された実施例1のBGテープを得た。
【0130】
次に、実施例1の粘着剤組成物に代えて、実施例2~実施例8および比較例1~比較例6の粘着剤組成物をそれぞれ用いて、実施例1のBGテープと同様にして、BGテープを作製した。なお、比較例5については、粘着剤組成物の硬化後の厚さが30μmとなるように調整した。その結果、実施例2~実施例8および比較例1~比較例6のBGテープが得られた。
【0131】
次に、実施例1~実施例8および比較例1~比較例6のBGテープについて、以下に示す項目の評価を行った。
【0132】
<剥離力(剥離強度)>
BGテープを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の全面を、ガラス板にラミネートして、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を1往復させることにより、測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下に30分間放置した。その後、JIS K 6854-2に準じて、剥離速度0.3m/min.で180°方向の引張試験を行って、ガラス板に対する剥離強度(gf/25mm)を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0133】
<凹凸吸収性>
BGテープを幅25mm、長さ50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプとを対向させて設置した。そして、BGテープの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、BGテープとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0134】
BGテープと貼り合わせたバンプ付きウエハを、BGテープの基材側からデジタル光学顕微鏡(株式会社配合ハイロックス社製、RH-2000)により観察し、以下の基準により、バンプへの凹凸吸収性を評価した。その結果を表1および表2に示す。
「基準」
○:BGテープの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がない
×:BGテープの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がある
【0135】
<糊残り、汚染の評価>
(顕微鏡観察)
BGテープを幅25mm、長さ50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプと対向させて設置した。そして、BGテープの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、BGテープとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0136】
BGテープと貼り合わされたバンプ付きウエハを、23℃で24時間放置した。その後、バンプ付きウエハからBGテープを、おおよそ2m/min.程度の速度で、手で剥離した。そして、バンプ付きウエハの表面をデジタル光学顕微鏡(株式会社ハイロックス社製、RH-2000)により倍率400倍で観察し、特に汚染されやすいバンプ周辺における糊残りおよび界面活性剤による汚染の有無を、以下の基準により評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0137】
なお、「糊残りによる汚染」とは、粘着剤層自体がウエハ表面に付着した状態で残り、ウエハ表面がべたついている状態であることを意味する。「界面活性剤による汚染」とは、粘着剤層からブリードアウトした界面活性剤がウエハ表面に付着し、ウエハ表面が濡れたような状態であることを意味する。表1および表2には、以下の基準による評価が「×」である場合、汚染の理由も記載した。
「基準」
○:バンプ周辺に糊残りおよび界面活性剤による汚染がない。
×:バンプ周辺に糊残りおよび/または界面活性剤による汚染がある。
【0138】
(水接触角)
被着体として、無アルカリガラス板を用意し、自動接触角測定計(共和界面科学社製、DM-500)を使用して、23℃で表面の水接触角を測定した。その結果、水接触角は40°であった。
次に、BGテープを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の全面を、無アルカリガラス板の水接触角を測定した面にラミネートし、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を1往復させることにより、BGテープを貼合させた。
【0139】
その後、BGテープを貼合させた無アルカリガラス板を、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下に24時間放置した。そして、無アルカリガラス板からBGテープを剥離し、剥離後の無アルカリガラス板の表面の水接触角を測定した。BGテープを剥離した後の無アルカリガラス板の表面の水接触角は、BGテープを貼合させる前と同じ方法により測定した。得られた測定結果を用いて、以下の基準により、評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0140】
以下の基準において「X1」は、BGテープを剥離した後の無アルカリガラス板の表面の水接触角(°)を示す。「X2」は、BGテープを貼合させる前の無アルカリガラス板の表面の水接触角(°)を示す。
「基準」
○:角度差の絶対値(│X1-X2│)が10°未満
×:角度差の絶対値(│X1-X2│)が10°以上
【0141】
<ゲル分率の測定>
厚さ75μmの剥離PETフィルム(東山フィルム株式会社製、商品名:クリーンセパ(商標)HY-S10-2)上に、アプリケーターを用いて硬化後の厚さが150μmとなるように、粘着剤組成物を塗布した。なお、比較例5については硬化後の厚さが30μmとなるように、粘着剤組成物を塗布した。次いで、粘着剤組成物の塗布面を、厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)で覆った。
【0142】
続いて、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cmの条件で、超軽剥離PETフィルムを介して粘着剤組成物に紫外線を照射し、粘着剤組成物を硬化させて硬化物(粘着剤層)を得た。
【0143】
次に、硬化物(粘着剤層)を約1gとなるサイズに切り出し、両面のPETフィルムを剥離して測定用サンプルとし、その質量を測定した。続いて、測定用サンプルを50mlのトルエンに浸漬し、室温で72時間静置した。その後、測定用サンプルをトルエン中から取り出し、80℃で5時間乾燥し、再び質量を測定した。そして、下記式に基づいて、ゲル分率を測定した。
【0144】
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:トルエンに浸漬した後の測定用サンプルの質量(トルエンの質量は含まない)
B:トルエンに浸漬する前の測定用サンプルの質量
【0145】
表1に示すように、実施例1~8のBGテープは、剥離強度が10gf/25mm以上であり、十分な粘着力を有するものであった。また、実施例1~8のBGテープは、凹凸吸収性の評価が全て○であり、凹凸吸収性に優れるものであった。また、実施例1~8のBGテープは、顕微鏡観察、水接触角の評価が全て○であり、糊残りおよび界面活性剤による汚染が見られなかった。
また、実施例1~8の硬化物は、ゲル分率がBGテープの粘着剤層として適正な範囲であった。
【0146】
これに対し、表2に示すように、界面活性剤(E)を含まない粘着剤組成物を用いた比較例1のBGテープは、顕微鏡観察、水接触角の評価が×であり、糊残りによる汚染が確認された。
また、界面活性剤(E)を5.0質量%含む粘着剤組成物を用いた比較例2のBGテープは、顕微鏡観察、水接触角の評価が×であり、界面活性剤(E)による汚染が確認された。
界面活性剤(E)を3.2質量%含む粘着剤組成物を用いた比較例3のBGテープは、顕微鏡観察では汚染が確認されなかったものの、水接触角の評価が×であった。
【0147】
多官能チオール(C)を含まない粘着剤組成物を用いた比較例4のBGテープは、凹凸吸収性の評価が×であり、凹凸吸収性が不十分であった。また、比較例4の硬化物は、ゲル分率が高かった。
粘着層の厚みが30μmである比較例5のBGテープは、粘着層の厚みが薄いため、凹凸吸収性の評価が×であり、凹凸吸収性が不十分であった。
界面活性剤(E)の代わりに、オキシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンを用いた比較例6のBGテープは、顕微鏡観察、水接触角の評価が×であり、糊残りによる汚染が確認された。