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特許7532983撮影方法、撮影システム、移動体及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】撮影方法、撮影システム、移動体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/40 20230101AFI20240806BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240806BHJP
   H04N 23/70 20230101ALI20240806BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240806BHJP
   G03B 7/00 20210101ALI20240806BHJP
【FI】
H04N23/40 100
H04N23/50
H04N23/70
G03B15/00 T
G03B15/00 V
G03B15/00 H
G03B7/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020127719
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024889
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065239(JP,A)
【文献】特開2018-159642(JP,A)
【文献】特開2017-090146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/40
H04N 23/50
H04N 23/70
G03B 15/00
G03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影システムにより構造物の所定の範囲を撮影する撮影方法であって、
前記撮影システムは、移動体に搭載され、前記所定の範囲を撮影する撮影手段を含み、
前記撮影手段と前記構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影する第1の工程と、
前記距離に関する第2情報を取得しつつ、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影する第2の工程と、
前記第1情報と前記第2情報の比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する報知工程と、を含む
撮影方法。
【請求項2】
前記比較結果は、前記第1情報と前記第2情報の差分値を含む
請求項1に記載の撮影方法。
【請求項3】
前記報知工程は、前記第1情報と前記第2情報の差分値の絶対値が所定の閾値を超えた場合に前記距離変化に関する情報を報知する
請求項1、又は2に記載の撮影方法。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の工程のそれぞれで前記距離に関する情報が取得される前記構造物の領域、又は前記第1及び前記第2の工程のそれぞれで撮影される前記構造物の領域の少なくとも一方は、少なくとも一部が重複している
請求項1乃至3の何れか1項に記載の撮影方法。
【請求項5】
前記構造物は、前記距離が変化する領域を含む
請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮影方法。
【請求項6】
前記構造物はトンネルであり、
前記距離が変化する領域は、前記トンネルに設けられた非常駐車帯である
請求項5に記載の撮影方法。
【請求項7】
前記報知工程では、警告音、音声又は振動の少なくとも1つを用いて、前記距離変化に関する情報を報知する
請求項1乃至6の何れか1項に記載の撮影方法。
【請求項8】
構造物の所定の範囲を撮影する撮影システムであって、
移動体に搭載され、複数のモードに切り替え可能に構成された撮影手段と、
前記モードの切り替えを制御する制御手段と、
前記撮影手段と前記構造物との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の前記距離に関する情報を比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する報知手段と、を備え、
前記複数のモードは、所定の露出制御値で撮影する第1のモードと、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で撮影する第2のモードと、を含む
撮影システム。
【請求項9】
請求項8に記載の撮影システムを備える
移動体。
【請求項10】
構造物の所定の範囲を撮影する撮影システムで用いられるプログラムであって、
前記撮影システムは、移動体に搭載され、前記所定の範囲を撮影する撮影手段を備え、
前記撮影手段と前記構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影し、
前記距離に関する第2情報を取得しつつ、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影し、
前記第1情報と前記第2情報の比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する処理をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影方法、撮影システム、移動体及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等の構造物の維持管理において、車両で移動しながらカメラ等の撮影手段により構造物を撮影し、構造物の全壁面の展開図画像を作成する撮影方法が知られている。このような撮影方法では、適正な明るさ(撮影光量)で構造物を撮影するために、照明手段で構造物が照明され、且つ露光時間、センサゲイン、絞り又は照明照度等により露出条件を制御する自動露出制御が行われる。
【0003】
一方で、車両の運転者にセンターライン又は区分表示等の道路面上に描かれた線と車両との相対的位置関係を認識させるために、道路面の撮影結果に基づいて警告を報知する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の撮影方法では、トンネル内の非常駐車帯が設けられた区間等で撮影手段とトンネル壁面との距離が変化すると自動露出制御の追従遅れが生じ、撮影手段と撮影対象としてのトンネル壁面との距離変化に起因する白飛びや黒潰れ等の不具合が発生する場合がある。特許文献1の技術では、センターライン等が道路面に描かれていないと撮影手段とトンネル壁面との距離変化を報知できないため、上記の不具合を解決できない。
【0005】
本発明は、撮影手段と撮影対象である構造物との距離変化に起因する不具合の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る撮影システムは、撮影システムにより構造物の所定の範囲を撮影する撮影方法であって、前記撮影システムは、移動体に搭載される撮影手段を含み、前記撮影手段と前記構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影する第1の工程と、前記距離に関する第2情報を取得しつつ、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影する第2の工程と、前記第1情報と前記第2情報の比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する報知工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影手段と撮影対象である構造物との距離変化に起因する不具合の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る撮影システムの構成例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るカメラユニットの構成例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る照明ユニットの構成例を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る撮影システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】車両からトンネル壁面までの距離が短い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
図6】車両からトンネル壁面までの距離が長い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
図7】カメラユニットと照明ユニットの位置/姿勢変動の影響を示す図であり、(a)は位置/姿勢変動がない場合を示す図、(b)は位置/姿勢変動がある場合を示す図である。
図8】ガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成例を示す図である。
図9】トンネルの壁面に対して傾いた時の撮影領域と照明領域の関係を示す図である。
図10】インデックスプランジャの構成例を示す図である。
図11】撮影方向に対して照明方向を傾ける効果例を説明する図である。
図12A】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(a)はカメラユニットと照明ユニットとトンネルの壁面の関係を示す図、(b)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面から遠のいた場合を示す図である。
図12B】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(c)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面に近づいた場合を示す図、(d)は撮影光を照明光に対して傾けた例を示す図である。
図13】車両の蛇行と撮影領域と照明領域の関係例を説明する図である。
図14】実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
図15】第1実施形態に係る撮影システムの機能構成例を示すブロック図である。
図16】第1実施形態に係る撮影システムの動作例を説明する図である。
図17】第1実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
図18】第1実施形態に係る露出制御部による処理例を示すフローチャートである。
図19】1回目撮影と2回目撮影の車両の走行経路例を示す図であり、(a)は車両とトンネル壁面との位置関係の図、(b)は検出距離と走行距離との関係の図である。
図20】第2実施形態に係る撮影システムの機能構成例を示すブロック図である。
図21】第2実施形態に係る1回目撮影時の撮影動作例を示すフロー図である。
図22】第2実施形態に係る2回目撮影時の撮影動作例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための撮影方法及び撮影システムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の形状、その相対的配置、パラメータの値等は特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
<実施形態における用語の説明>
(構造物)
複数の材料や部材等を用い、重量を支えられた構造で構成されたものをいう。構造物には、例えば、道路、トンネル、ビル、ダム、又は堤防等が挙げられる。
(移動体)
移動することができるものをいう。移動体には、例えば、自動車や鉄道等の車両、又はドローン等の飛行体等が挙げられる。
(非常駐車帯)
高速道路やバイパス等の道路に一定間隔で道路の左側、又は右側に設けられた非常停止用のスペースをいう。
(白飛び)
撮影画像の明るい部分で階調が失われて真っ白になる現象(露出オーバー)をいう。
(黒潰れ)
撮影画像の暗い部分で階調が失われて真っ黒になる現象(露出アンダー)をいう。
(露出条件)
撮影時の露出量(露光量)を決定する条件をいう。固定露出条件とは、撮影手段の周囲の明るさによらず固定された露出条件をいう。自動露出条件とは、検出された明るさに応じて変化する露出条件をいう。
【0012】
[実施形態]
以下では、車両に搭載される撮影手段を含み、トンネルの壁面を撮影する撮影システムと、この撮影システムによる撮影方法を一例として実施形態を説明する。ここで、車両は移動体の一例であり、トンネルは構造物の一例である。また車両の走行方向は、移動体の移動方向の一例である。また、実施形態における撮影画像は、静止画、動画及び映像を含むものとする。
【0013】
<撮影システムの全体構成>
図1は、実施形態に係る撮影システムの構成の一例を説明する斜視図である。撮影システム100は、スライドユニット200と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを有する。
【0014】
カメラユニット300は、トンネルの壁面を撮影し、照明ユニット400は、カメラユニット300による撮影のために、トンネルの壁面に向けて光を照明する。
【0015】
スライドユニット200は、カメラユニット300及び照明ユニット400を図1の太矢印方向にスライドさせるための部材である。カメラユニット300及び照明ユニット400は、スライドユニット200により、図1の太矢印方向にその位置を変化させることができる。
【0016】
またスライドユニット200は、レール210及び220と、ベース230と、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と、フレーム261及び262とを備えている。
【0017】
カメラユニット300は、フレーム261に固定されたレール210上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。同様に、照明ユニット400は、フレーム262に固定されたレール220上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。
【0018】
レール210及び220は、レール軸が略平行となるようにフレーム261及び262にそれぞれ固定されている。ベース230は、フレーム261及び262に固定され、両者を接続するとともに、撮影システム100のベースとなる。
【0019】
ガイドシャフト240は、カメラユニット300及び照明ユニット400を安定した精度でスライドさせるために用いられる部材であり、金属製の丸棒等である。丸棒の長手方向がカメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向に沿うように設置されている。
【0020】
ガイドシャフト240は、ガイドシャフト240を保持するガイドシャフト保持部材251及び252にそれぞれ設けられた貫通孔に通され、保持されている。なお、ガイドシャフト240とその周辺の部材の構成及び作用については別途詳述する。
【0021】
ここで、図1では、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400の両方をスライドさせる構成を示したが、これに限定されるものではない。カメラユニット300をスライドさせるユニットと、照明ユニット400をスライドさせるユニットを別々にした構成としてもよい。
【0022】
撮影システム100は、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向が車両の走行方向と交差するように、車両のルーフ等に取り付けられる。換言すると、図1の太矢印方向は、撮影システム100が取り付けられた車両の走行方向に対して交差している。このように取り付けることで、車両の走行方向と交差する平面内において、カメラユニット300及び照明ユニット400の位置を変化させることができる。
【0023】
なお、撮影システム100が取り付けつけられる車両の部分は、ルーフに限定されるものではない。車両の前方、又は後方のボンネット等であってもよいし、車両がトラックであれば荷台等であってもよい。また、車両への撮影システム100の取り付けに関し、ルーフに取り付ける場合は、車両用のスキーキャリヤ等と同様に、フック部品等を用いて行えばよい。
【0024】
<カメラユニットの構成>
次に図2は、実施形態に係るカメラユニット300の構成の一例を説明する斜視図である。
【0025】
カメラユニット300は、ベースプレート310と、レール接続部321及び322と、カメラ331~334と、シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350とを有する。
【0026】
レール接続部321及び322は、ベースプレート310とレール210を接続するための部材である。レール接続部321及び322は、レール軸と直交する方向の断面が「コ」の字形の形状をしている。レール210が双頭レールの場合、双頭レールの頭の一方に「コ」の字形状を被せるようにして、レール接続部321及び322は、レール210に接続される。
【0027】
レール接続部321及び322は同一形状であり、レールの軸方向の異なる2つの位置でレール210と接続する。レール接続部321及び322にベースプレート310を固定することにより、カメラユニット300はレール軸の方向(図1の太矢印方向)にスライド可能となる。
【0028】
カメラ331~334は、ベースプレート310の平面部に固定されている。ここで、カメラ331は、レンズ331-1と、ラインCCD(Charge Coupled Device)331-2とを有する。レンズ331-1は、レンズ331-1の光軸方向にある被写体の像をラインCCD331-2の撮影面上に結像させる。ラインCCD331-2は、結像した被写体の像を撮影する。
【0029】
またレンズ331-1の内部には、絞り331-1a(図4参照)が設けられている。絞り331-1aは、絞り羽根を有する虹彩絞りであり、直径が可変の開口である。絞り羽根にモータ等の駆動源を接続し、制御信号に基づいてモータを駆動させることで開口の直径を変化させることができる。これによりレンズ331-1を通過する光の光量を変化させ、レンズ331-1により結像される被写体の像の明るさを変化させることができる。
【0030】
ラインCCD331-2は、画素が一次元状(ライン状)に配列されているCCDであり、実施形態では、カメラ331は、ラインCCD331-2の画素の配列方向が車両の走行方向と交差するようにベースプレート310に固定されている。なお、カメラ332~334も、カメラ331と同様の構成を備えるが、上述したものと同様であるため、説明を省略する。
【0031】
トンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、カメラ331~334は、図2のように、それぞれが有するレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、それぞれがトンネルの壁面に対向するように、カメラ331~334はベースプレート310の平面部に放射状に配置されている。
【0032】
カメラ331~334がそれぞれ撮影するライン画像をカメラの配列方向に繋ぎ合せることで、トンネルの形状に沿って、トンネルの壁面のライン画像を撮影することができる。そして車両を走行させながら上記のライン画像を所定の時間間隔で連続的に撮影し、ライン画像の画素の配列方向と直交する方向に、撮影したライン画像を繋ぎ合せることで、トンネルの壁面のエリア画像(2次元画像)を取得することができる。なお、所定の時間間隔はラインCCDによるライン画像の取得周期等である。
【0033】
ここで、上述ではカメラの台数を4台とする例を示したが、これに限定されるものではない。トンネルの大きさ等の条件に応じてカメラの台数を増減させてもよい。また、レンズ331-1の結像倍率、視野及びFナンバ等は、撮影したい条件に合わせて決定してもよい。
【0034】
さらに、上述ではカメラ331がラインCCDを備える例を示したが、これに限定されるものではなく、カメラ331は、画素が二次元的に配列されているエリアCCDを備えてもよい。さらにCCDに代えてCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等を用いてもよい。
【0035】
一方、シャフト連結部341及び342は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ350は、スライド方向における所望の位置でカメラユニット300を固定するための部材である。シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350の構成及び作用については、別途詳述する。
【0036】
<照明ユニットの構成>
次に図3は、実施形態に係る照明ユニット400の構成の一例を説明する斜視図である。
【0037】
照明ユニット400は、ベースプレート410と、レール接続部と、照明光源部431~436と、シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450とを有する。レール接続部とレール220との関係は、上述したレール接続部321及び322とレール210との関係と同様である。
【0038】
照明光源部431~436は、ベースプレート410の平面部に固定されている。照明光源部431は、レンズ431-1と光源431-2とを有する。
【0039】
光源431-2は、レンズ431-1を介して、レンズ431-1の光軸方向にある被写体を照明する。またレンズ431-1の内部には、絞り431-1aが設けられている(図4参照)。
【0040】
絞り431-1aは直径が可変の開口であり、開口の直径を変化させることで、レンズ431-1により照明される照明光の光量(明るさ)を変化させることができる。光源431-2として、メタルハライドライトやLED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。なお、照明光源部432~436も照明光源部431と同様の構成を備えるが、上記と同様であるため説明を省略する。
【0041】
上述したようにトンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、照明光源部431~436は、図3に示すように、それぞれが備えるレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、照明光源部431~436は、トンネルの壁面に対向するように、ベースプレート410の平面部に放射状に配置されている。照明ユニット400は、車両の走行方向と交差する方向(ラインCCDの画素の配列方向)に沿ったライン状の光をトンネルの壁面に照明することができる。
【0042】
なお、上述では、照明光源部の台数を6台とした例を説明したが、これに限定されるものではなく増減させてもよい。また照明光源部の台数は、カメラの台数と必ずしも一致する必要はなく、明るさ等の条件に応じて台数を決めてよい。さらにレンズの画角やFナンバ等も撮影したい条件に応じて決定してもよい。
【0043】
また、上述では、照明光源部431~436のそれぞれの位置を、レンズの光軸方向に前後に少しずつずらした構成を示したが、これは照明光源部同士の物理的な干渉を防止するためである。
【0044】
一方、シャフト連結部441及び442は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ450は、スライド方向における所望の位置で照明ユニット400を固定するための部材である。シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450の構成及び作用については別途詳述する。
【0045】
<撮影システムのハードウェア構成>
次に、図4は、撮影システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。撮影システム100は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、センサ制御ボード110と、TOF(Time of Flight)センサ141と、IMU(Inertial Measurement Unit)170と、車速計/移動距離計171と、操作部118とを有する。
【0046】
TOFセンサ141は、トンネル600の壁面からTOFセンサ141までの距離を検出し、トンネル600の壁面から撮影システム100までの距離を検出できる。
【0047】
より具体的には、トンネル600の壁面にTOFセンサ141から光を照射し、その反射光を受光するまでの時間に基づいてトンネル600の壁面までの距離を検出する。受光素子にエリアセンサを用いたTOFセンサ141を用いると、距離に応じて表示色が異なる2次元の等高線画像を得ることができる。
【0048】
IMU170は、車両500の運動を司る3軸の角度/角速度と加速度を計測し、また車速計/移動距離計171は、車両500の速度/移動距離を計測できる。
【0049】
IMU170及び車速計/移動距離計171で計測されたデータは、センサ制御ボード110を介してHDD114に出力されて記憶され、後に壁面の画像のサイズや傾き等を、画像処理で幾何補正するために使用される。
【0050】
カメラユニット300は、レンズ331-1、332-1、333-1及び334-1と、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2とを備えている。またレンズ331-1は絞り331-1aを、レンズ332-1は絞り332-1aを、レンズ333-1は絞り333-1aを、レンズ334-1は絞り334-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ331-1、絞り331-1a及びラインCCD331-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及びラインCCDの図示を省略している。
【0051】
照明ユニット400は、レンズ431-1、432-1、433-1、434-1、435-1及び436-1と、光源431-2、432-2、433-2、434-2、435-2及び436-2とを備えている。またレンズ431-1は絞り431-1aを、レンズ432-1は絞り432-1aを、レンズ433-1は絞り433-1aを、レンズ434-1は絞り434-1aを、レンズ435-1は絞り435-1aを、レンズ436-1は絞り436-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ431-1、絞り431-1a及び光源431-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及び光源の図示を省略している。
【0052】
センサ制御ボード110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、HDD(Hard Disk Drive)114と、外部I/F(Inter/Face)115と、ブザー116とを有し、それぞれがシステムバス117で相互に電気的に接続されている。ここで、センサ制御ボード110はコンピュータの一例である。
【0053】
ROM112は各種プログラムやデータ、各種の設定情報等を格納し、RAM113はプログラムやデータを一時保持する。CPU111はROM112等からプログラムやデータ、設定情報等をRAM113上に読み出し、処理を実行することで、撮影システム100全体の制御や画像データの処理を実現する。ここで、画像データの処理とは、カメラ331~334がそれぞれ撮影したライン画像を繋ぎ合せる処理や、車両を走行させながらカメラ331~334が所定の時間間隔で連続的に撮影したライン画像を、車両の走行方向で繋ぎ合せる処理等をいう。またCPU111は、別途、図15及び図18を用いて詳述する各種機能を実現できる。
【0054】
なお、CPU111の実現する制御、画像データの処理、及び各種機能の一部又は全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実現されてもよい。
【0055】
HDD114は、カメラユニット300から入力した画像データや、TOFセンサ141、IMU170及び車速計/移動距離計171から入力したセンサデータ等を記憶する。なお、HDD114はセンサ制御ボードの外部に設けられてもよい。
【0056】
外部I/F115はユーザが撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースの機能や、撮影システム100がPC(Personal Computer)等の外部装置とデータや信号のやりとりを行うためのインターフェースの機能を実現する。
【0057】
ブザー116は、ユーザに警告を報知するためのビープ音を発生させるものである。
【0058】
外部I/F115を介してPC(Personal Computer)等の外部装置にセンサ制御ボード110を接続し、センサ制御ボード110と外部装置との間で、画像データ等のデータの送受を行えるように構成してもよい。
【0059】
操作部118は、撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースである。操作部118は、マウスやキーボード等の入力部と、ディスプレイ等の表示部とを含んで構成される。操作部118としてノートPC等を利用できる。
【0060】
撮影の際には、例えば、カメラユニット300、照明ユニット400、TOFセンサ141、IMU170、車速計/移動距離計171及びセンサ制御ボード110は車両のルーフ部に設置される。操作部118は車両の内部に設けられ、オペレータ等により操作される。なお、オペレータは、撮影システム100を操作して撮影作業を行う者である。オペレータは、車両の運転者でもよいし、車両の運転者以外の者でもよい。また自動運転車等で撮影を行う場合は、人に代えて装置又は機器等がオペレータの役割を担ってもよい。
【0061】
オペレータは、車両の走行中に、操作部118における録画開始ボタンと停止ボタンを操作することで撮影の開始と停止を指示し、撮影を行うことができる。
【0062】
<撮影方法、作用効果等>
次に、実施形態に係る撮影システム100による撮影方法、及び作用効果等を説明する。
【0063】
撮影システム100では、スライドユニット200によりカメラユニット300及び照明ユニット400がスライドし、車両の走行方向と交差する方向において、所定の道路構造の長さに基づき定めた2つの位置で固定される。
【0064】
所定の道路構造の長さとは、車両の走行方向と交差する方向における歩道の幅である。
【0065】
ここで、歩道とは、歩行者が通行するための道路であり、車道等に併設され、歩行者の通行のために構造的に区画された道路の部分をいう。歩道の幅は、歩行者の通行量に応じて様々であるが、一般には1.5~3m程度である。
【0066】
歩道の幅が1.5mの場合、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を1.5mに定めてもよい。或いは歩道の幅が3m等で車両の幅を超える場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、車両の最大幅として定めてもよい。
【0067】
また、歩道の他に、監査路や路側帯がある場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、歩道の幅と監査路、または路側帯の幅との差分の長さとして定めてもよい。
【0068】
2つの位置で画像を取得する場合、まず、車両の走行方向と交差する方向において、歩道の幅に基づき定めた2つの位置のうちの一方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。次に、2つの位置のうちの他方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。
【0069】
以下、図5及び図6を参照して、2つの位置でトンネル600の壁面を撮影する方法の詳細を説明する。図5は、撮影システム100からトンネル600の壁面までの距離が短い場合の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。
【0070】
図5(a)では、撮影システム100は、車両500のルーフの上に固定されている。カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0071】
一方、図5(b)では、道路700のセンターに対し、左側に車線710があり、右側に車線720がある。車両500は車線720において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0072】
この例では、車線710(車両500の対向車線)側に歩道730がある。車線720側には歩道はないため、歩道がある場合と比較して、車両500はトンネル600の車両500側の壁面に近い位置を走行している。
【0073】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面から遠ざかる位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションAと呼ぶ。
【0074】
図5(b)の破線100Aは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Aで示されている撮影範囲内の領域600A(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0075】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図5(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0076】
一方、図6は、撮影システムからトンネルの壁面までの距離が長い時の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。なお、図5と重複する部分は説明を省略し、相違点を説明する。
【0077】
図6では、カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0078】
一方、図6(b)では、車両500は車線710において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0079】
この例では、車線710(車両500が走行する車線)側に歩道730がある。つまり車両500は、図5(b)の場合とは反対側の車線を逆方向に走行している。この場合は、走行車線側に歩道がない場合と比較して、車両500は、トンネル600の車両500側の壁面から遠い位置を走行することになる。
【0080】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面に近づく位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションBと呼ぶ。
【0081】
図6(b)の破線100Bは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Bで示されている撮影範囲内の領域600B(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0082】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図6(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0083】
図5の状態で撮影された壁面の画像と、図6の状態で撮影された壁面の画像を繋ぎ合せることで、トンネル600の入口から出口までの全壁面の撮影画像を取得することができる。
【0084】
ここで、カメラユニット300の各カメラで撮影する画像は、それぞれ撮影領域がオーバーラップしていることが望ましい。また画像を繋ぎ合せて一枚の展開図画像を作成するため、図5の歩道無し側の画像と図6の歩道有り側の画像は、天井部分がオーバーラップするように撮影することが望ましい。換言すると、往きと帰りでトンネル600の壁面を撮影する場合、トンネル600の壁面で撮影されていない領域が生じないように、往きの撮影領域と帰りの撮影領域を、車両500の走行方向と交差する方向にオーバーラップさせて撮影することが望ましい。
【0085】
実施形態によれば、歩道の有無に応じて、カメラユニット300及び照明ユニット400をポジションA及びBに切替えて固定するだけで、簡単に、車両500側の壁面から撮影システム100までの距離、すなわち被写体距離を略一定にすることができる。その結果、歩道の有無によらず、フォーカス状態、撮影倍率及び照明の明るさ等の撮影条件を共通にした撮影が可能となる。また、共通の撮影条件で右側半分と左側半分のトンネルの壁面を撮影できるため、両者を繋ぎ合せる画像処理も容易に行うことができる。
【0086】
以上によりカメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけることなく、適切にトンネルの壁面を撮影することができる。
【0087】
また、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行うと、走行に伴う振動や、急ブレーキ、急加速等の不規則な動きにより、調整機構が故障する可能性がある。
【0088】
また、調整機構にカム溝とカムフォロアを採用するカム機構を用いた場合、車両の走行による振動によって、徐々にカムフォロアがカム溝を移動し、フォーカス状態が変わってしまう場合もある。さらにトンネル内の粉塵が機構内部に入り込むと、動作不良を招く虞もある。
【0089】
実施形態によれば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行わないため、これらの故障の可能性を低減させることができる。またスライド機構が簡単であるため、装置コストを低減できるという効果もある。さらにフォーカス調整のために、被写体のテクスチャのコントラストを検知する等の複雑な画像処理を行わなくてよいため、演算コストを低減することができる。
【0090】
さらに、そもそも暗くて特徴量の少ないトンネルを走行する場合、コントラストを検出すること自体が難しく、十分な精度でコントラスト検出を行おうとすると、感度の高い高価な撮像素子が必要となる。実施形態によれば、このような技術的難易度や撮像素子のコストをも低減することができる。
【0091】
また、カメラユニットでライン撮像素子を用いる場合、1ライン分の画像しか得られないため、撮影画像を利用したフォーカス調整が難しくなる。実施形態でよれば、フォーカス調整に撮影した画像を利用しないため、カメラユニットにライン撮像素子を使用することもできる。これにより後述するような照明効率のよい撮影が可能となる。
【0092】
加えて、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、トンネル600の中心から比較的ずれた位置にカメラユニット300及び照明ユニット400を置いて撮影したとする。ここでトンネル600の中心とは、トンネル600の半円状の断面形状における半円の略中心を指す。
【0093】
この場合、トンネル600の天井付近の壁面の画像(図2のカメラ331で取得した画像)と、トンネル600の地面付近の壁面の画像(図2のカメラ334で取得した画像)とで、撮影倍率等の条件の差が大きくなる。その結果、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が大きく異なる等の不具合が生じる。
【0094】
また、このような不具合をなくすため、トンネルの壁面までの距離が略一定になるように、車線を無視して道路の中央を車両で走行しながら、トンネルの壁面の撮影を行う方法もある(例えば、特開2011-095222参照)。
【0095】
しかし、この方法では撮影時に対向車と衝突する虞があるため、車両の通行が少ない夜間に行ったり、道路を封鎖して行ったりする必要があって不便である。またトンネル内の道路に中央分離帯が設けられていると、そもそも上記の方法による撮影は不可能である。
【0096】
これに対し、実施形態によれば、車両500がトンネル600の壁面に近いときも遠いときも、カメラユニット300及び照明ユニット400をトンネル600の中心に近づけることができるため、トンネルの領域ごとでの撮影条件の差を抑制できる。従って、車両の通行止め等をすることなく、本来の車線を走行しながら、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が異なる等の不具合を抑制した撮影を行うことができる。
【0097】
なお、実施形態では、スライドユニット200を図1の太矢印方向に位置を変化させる例を示したが、これに限定されないものではない。車両の走行方向と交差する平面内における任意の方向に、スライドユニット200の位置を変化させる構成としてもよい。
【0098】
また実施形態では、スライドユニット200により、図1の太矢印方向における異なる2つの位置でカメラユニット300及び照明ユニット400を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。車両の走行方向と交差する平面内であって、トンネルの壁面に対向する方向における異なる2つの位置で、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定してもよい。
【0099】
ここで、「トンネルの壁面に対向する方向」について補足する。上述したように、トンネルは、車両の走行方向と直交する断面が半円状の形状をしている。従って、トンネルの壁面のうち、地面付近では壁面は水平方向を向いており、天井付近では壁面は鉛直下方向を向いている。「トンネルの壁面に対向する方向」とは、場所により向きが異なる壁面に対し、対向する方向をいう。地面付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略水平方向等である。一方、天井付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略鉛直上方向である。
【0100】
次に、実施形態に係るガイドシャフト240の構成及び作用の詳細について説明する。
【0101】
カメラユニット300と照明ユニット400は別体の構成要素であり、それぞれ独立してスライドする。そのため、ガイドシャフト240を適用しない構成とした場合、スライドする際にそれぞれが独立して、ピッチング、ヨーイング、ローリング等の動きを不規則に起こす可能性がある。
【0102】
また撮影システム100を車両から着脱する場合に、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置、又は姿勢(以降、位置/姿勢と示す)が変動する可能性がある。さらに走行中の振動でそれぞれの位置/姿勢が変動したり、温度等の影響によるフレーム261及び262やベースプレート310及び410等の部材の変形で、それぞれの位置/姿勢が変動したりする可能性もある。
【0103】
このような変動があると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができないという不具合が生じる場合がある。
【0104】
一例として、図7は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢が変動し、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらなくなった状態を説明する図である。図7(a)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がない場合を示す図であり、図7(b)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がある場合を示す図である。
【0105】
図7(a)は、図の太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。600はトンネルの壁面である。撮影範囲361は、カメラユニット300による撮影範囲を表し、トンネル600の壁面と撮影範囲361の交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。照明範囲461は、照明ユニット400による照明範囲を表し、トンネル600の壁面と照明範囲461の交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0106】
図7(a)では、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動がないため、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている。つまり、照明光は撮影領域を適切に照明している。
【0107】
一方、図7(b)では、カメラユニット300及び照明ユニット400の姿勢がそれぞれ独立に変動することにより、撮影範囲362と照明範囲462が図7(a)の状態から変化し、トンネル600の壁面における撮影領域と照明領域が重ならなくなっている。つまり、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動により、照明光は撮影領域を適切に照明していない。
【0108】
特に実施形態では、撮像素子にラインCCDを用い、車両500の走行方向における撮影範囲(領域)を狭くしている。この場合、狭い領域に照明光を集中すればよいため、照明効率がよいという効果があり、暗いトンネルの内部では十分な照明光量が必要となるため、より好適である。しかしその反面で、車両500の走行方向における撮影領域が狭いため、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300の撮影領域に照明光が適切に当たらない不具合が生じやすくなる。
【0109】
そこで、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制するため、実施形態の撮影システム100は、ガイドシャフト240を備えている。以下、図8を用いて具体的に説明する。図8は、実施形態に係るガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成の一例を説明する図である。
【0110】
図8において、ガイドシャフト240は、ガイドシャフト保持部材251及び252により保持されている。シャフト連結部341及び342は、カメラユニット300のベースプレート310に固定されている。
【0111】
またシャフト連結部341及び342は、それぞれ貫通孔341-1及び342-1を備えている。貫通孔341-1及び342-1にガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240とカメラユニット300は連結される。同様に、シャフト連結部441及び442がそれぞれ備える貫通孔に、ガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240と照明ユニット400は連結される。
【0112】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれガイドシャフト240と連結しながらスライドする。つまり、共通の部材をガイド(案内)にしてスライドすることができる。
【0113】
そのため、カメラユニット300及び照明ユニット400の何れか一方の位置/姿勢が変動したときは、他方もそれに連動して変動する。つまり、両者の相対的な位置/姿勢の関係を維持したまま、カメラユニット300と照明ユニット400をスライドさせたり静止させたりすることが可能となる。これにより、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の変動を抑制し、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制することができる。
【0114】
次に図9は、トンネルの壁面に対してカメラユニット300が傾いた場合のカメラユニット300の撮影領域の一例と、トンネルの壁面に対して照明ユニット400が傾いた場合の照明ユニット400の照明領域の一例を説明する図である。
【0115】
図9において、照明ユニット400は、光軸465を光軸とする発散光である照明光466を、トンネル600の壁面に照射している。照明光466の配光角(発散角)αは、1.65度等である。カメラユニット300は、トンネル600の壁面を撮影している。光軸365は、カメラユニット300の光軸である。
【0116】
車両500の蛇行運転等によりカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動すると、図9に示されているように、カメラユニット300と照明ユニット400がトンネルに壁面に対してそれぞれ傾く場合がある。この場合にも、カメラユニット300と照明ユニット400の相対的な位置/姿勢の関係は維持されるため、図示されているように、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態を維持することができる。
【0117】
このように、車両500の蛇行運転等でカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動した場合にも、照明ユニット400によりカメラユニット300の撮影領域を適切に照明することができる。なお、本実施形態では特にラインCCDを用いる場合を示したが、エリアCCD等を用いる場合であっても、同様の効果が得られる。
【0118】
次に、実施形態に係るインデックスプランジャ350及び450の構成及び作用の詳細を、図10を参照して説明する。図10は、インデックスプランジャ350及び450の構成の一例を説明する図である。
【0119】
図10において、インデックスプランジャ350は、カメラユニット300のベースプレート310の平面部に固定され、インデックスプランジャ450は、照明ユニット400のベースプレート410の平面部に固定されている。
【0120】
上述したように、カメラユニット300はレール210上をスライドし、照明ユニット400はレール220上をスライドする。インデックスプランジャ350及び450は同様の構成及び作用を有するため、ここではインデックスプランジャ450を例に説明する。
【0121】
インデックスプランジャ450は、プランジャ451と、プランジャ保持部452とを有する。プランジャ451は、丸棒状で地面側に突出したピンと、ピンに地面側への付勢力を与えるスプリングと、ピンとスプリングを押さえるスプリング押さえ部とを有する。プランジャ保持部452は、プランジャ451を保持する。
【0122】
一方、スライドユニット200におけるベース230には、照明ユニット400のスライド方向において、照明ユニット400を固定したい位置に上記ピンと嵌合するための嵌合孔231が設けられている。従って、照明ユニット400がスライドする際、嵌合孔231がない位置では、ピンは、ベース230にぶつかった状態であり、照明ユニット400を固定するようには作用しない。
【0123】
照明ユニット400がスライドして嵌合孔231がある位置にくると、ピンはスプリングによる付勢力で嵌合孔231に向かって突出し、嵌合孔231と嵌合する。これにより照明ユニット400はスライドできなくなって、照明ユニット400は固定される。固定を解除して、照明ユニット400を再度スライドさせたいときは、手動で固定解除機構を操作し、固定を解除する。
【0124】
実施形態では、ベース230において、スライド方向におけるポジションAとポジションBに相当する位置に、それぞれ嵌合孔が設けられている。これにより、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に、照明ユニット400を固定することができる。同様にして、カメラユニット300も、インデックスプランジャ350により、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に固定することができる。
【0125】
なお、実施形態では、ベース230に設けた嵌合孔231にピンを嵌合させ、照明ユニット400等を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。フレーム262やレール220等に設けた嵌合孔にピンを嵌合させて固定してもよいし、突き当てにより照明ユニット等を位置決めしたうえで、ボルト等でクランプすることで固定してもよい。
【0126】
次に、実施形態において、カメラユニット300による撮影方向(画像の取得方向)に対し、照明ユニット400による照明光の照明方向を傾けることの効果の一例を、図11を参照して説明する。
【0127】
図11は、図7と同様に、太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。撮影方向363は、カメラユニット300による撮影方向であり、カメラユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。撮影範囲364は、カメラユニット300により撮影される範囲を表す。トンネル600の壁面と撮影範囲364とが交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。
【0128】
照明方向463は、照明ユニット400による照明方向であり、照明ユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。照明範囲464は、照明ユニット400により照明される範囲を表す。トンネル600の壁面と照明範囲464とが交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0129】
上述したように、車両500の走行中の振動等により、カメラユニット300と照明ユニット400の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができない不具合が生じる。
【0130】
そこで、実施形態では、トンネル600の壁面の撮影領域に向け、カメラユニット300の撮影方向に対して照明ユニット400の照明方向を傾けて照明する。図11の例では、角度θの傾きで照明される様子が示されている。
【0131】
このように照明を傾け、車両の走行方向における照明領域の中央により近い付近を撮影領域とすることで、撮影領域に照明光が当たらないという不具合を抑制することができる。
【0132】
ここで、図12A及び図12Bは、それぞれカメラユニット300の光軸365と照明ユニット400の光軸465の傾き角度θと、照明光の配光角αと、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lと、照明領域Sとの関係の一例を説明する図である。
【0133】
図12A(a)は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、トンネル600の壁面との関係の一例を説明する図である。図12A(a)において、カメラユニット300の光軸365はトンネル600の壁面に対して垂直であり、照明ユニット400による照明光466の光軸465は、カメラユニット300の光軸365に対して傾き角度θで傾いている。なお、この「垂直」は厳密に90度をいうものではなく、トンネル600の壁面の傾斜や車両500の蛇行等に応じて90度から多少のずれがあってもよい。この点は以下においても同様である。
【0134】
照明光466は、配光角αでトンネル600の壁面を照明している。カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lは、車両500の蛇行運転等により、LminからLmaxまで変動するとする。照明領域Sは、照明光466によるトンネル600の照明領域である。照明光は円形領域を照明する光であり、照明領域Sはこの円形領域の直径を示している。但し、照明光は、円形領域を照明する光に限定されるものではなく、矩形領域を照明する光や楕円領域を照明する光であってもよい。
【0135】
一方、図12A(b)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も遠ざかった場合を示す図である。
【0136】
一例として、傾き角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図12A(b)では最右端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離5200mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最大距離Lmaxの一例となる。
【0137】
図12B(c)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も近づいた場合を示す図である。
【0138】
一例として、上記と同様に、角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図12B(c)では最左端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離2600mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最小距離Lminの一例となる。
【0139】
なお、上述では、照明ユニット400により、トンネル600の壁面に配光角αの発散光を照明する例を示したが、発散光に限定されず、平行光により照明してもよい。
【0140】
発散光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離に応じて、トンネル600の壁面における照明領域を変化させることができる。照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lが長いほど、より広い領域を照明することができる。
【0141】
一方、平行光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lによらず、トンネル600の壁面において一定の領域を照明することができる。
【0142】
また上述では、カメラユニット300の光軸365の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、照明ユニット400の光軸465をカメラユニット300の光軸365に対して傾ける例を示したが、これに限定されるものではない。図12B(d)に示されているように、照明ユニット400の光軸465の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾けてもよい。図12B(d)は、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾き角度θだけ傾けた例を示している。換言すると、照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365は傾き角度θで相対的に傾いていればよい。
【0143】
このように照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365とを相対的に傾けることで、カメラユニット300の撮影領域に向けて、光を照明することができる。トンネル600の壁面における水平方向の撮影領域(水平方向の撮影視野)が狭い場合であっても、カメラユニット300による撮影領域を照明ユニット400からの光で適切に照明することができる。
【0144】
また、ガイドシャフト240を用いて、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の関係を維持する構成と、照明方向を傾けて照明する構成とを組み合わせることで、より効果が顕著となる。換言すると、撮像素子にラインCCDを用い、照明効率がよい状態で撮影を行った場合であっても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を、より顕著に抑制することができる。
【0145】
また、車の蛇行でトンネルと壁面の距離が変動する場合やトンネルサイズが異なる場合においても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を抑制することができる。
【0146】
図13は、車両500の蛇行と、カメラユニット300の撮影領域と、照明ユニット400の照明領域の関係の一例を説明する図である。車両500は、図13に矢印で示されている方向に、蛇行しながら走行している。
【0147】
図13の右側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最大距離Lmaxが5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図13では最左端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な一方の限界である。
【0148】
一方、図13の左側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最小距離Lminが2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図13では最右端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な他方の限界である。
【0149】
角度θが2.5度、配光角αが1.65度の条件下(図12A参照)では、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lが2600mm~5200mmの範囲で、車両500の蛇行が許容されることが分かる。
【0150】
<撮影システムの動作>
次に、実施形態に係る撮影システム100の動作を、図14を用いて説明する。図14は撮影システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0151】
まず、ステップS141で、撮影システム100は、車両500に取り付けられる。
【0152】
続いて、ステップ142において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションAに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションAでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0153】
続いて、ステップS143において、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がない側の壁面の領域600Aの撮影が行われる。この場合、車両500がトンネル600の入口に進入するときに、撮影が開始される。撮影開始の指示は、ユーザが行う。
【0154】
車両500がトンネル600の出口まで到達したら、撮影は停止される。撮影停止の指示は、ユーザが行う。ここまででトンネル600の全壁面のうち、半分の壁面の画像データがHDD114に記憶される。
【0155】
続いて、ステップS144において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションBに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションBでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0156】
続いて、ステップS145において、ステップS1103における走行方向とは逆の方向に、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がある側の壁面の領域600Bの撮影が行われる。上述と同様に、撮影開始/停止の指示は、ユーザが行う。これにより、トンネル600の全壁面のうち、残りの半分の壁面が撮影され、HDD114に記憶される。
【0157】
続いて、ステップS146において、撮影された画像は、ユーザにより問題がないかが確認され、問題ない場合は(ステップS146、No)、撮影は終了する。一方、問題がある場合は(ステップS146、Yes)、ステップS1102に戻り、再度撮影が行われる。
【0158】
以上により、カメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけずに、トンネルの壁面等の対象物を撮影することができる。
【0159】
なお、実施形態では、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行う例を述べたが、このような固定を車両500に対して行ってもよい。以下にその構成を説明する。
【0160】
カメラユニット300及び照明ユニット400を車両固定用ベースプレートに取り付けておく。ポジションAの場合、走行方向に向かって車両のルーフの右端に、フック部品を用いて車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0161】
ポジションBの場合、走行方向に向かって車両のルーフの左端に、フック部品を用いて上記車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0162】
また、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と同様の部品を車両固定用ベースプレートに設け、シャフト連結部341及び342、並びに441及び442と、ガイドシャフト240とを連結させる。これによりカメラユニット300及び照明ユニット400の位置/姿勢の変動の影響を抑制できる。
【0163】
なお、この例の場合、撮影システム100は、スライドユニット200を有さなくてもよい。また、カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれインデックスプランジャ350及び450を有さなくてもよい。
【0164】
以上により、車両500に固定した場合においても、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行った場合と同様の効果を得ることができる。
【0165】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る撮影システム100aと、撮影システム100aによる撮影方法について説明する。撮影システム100aは、撮影システム100と同様に、トンネル600の所定の範囲を撮影する撮影システムである。なお、上述した実施形態で説明したものと同様の構成部には、同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は第2実施形態においても同様である。
【0166】
<撮影システム100aの機能構成例>
まず図15を参照して、撮影システム100aの機能構成について説明する。図15は、撮影システム100aの機能構成の一例を説明するブロック図である。図15に示すように、撮影システム100aは、距離検出部120と、明るさ検出部130と、撮影部140と、照明部150と、制御部160とを有する。
【0167】
これらのうち、距離検出部120は、撮影部140とトンネル壁面との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段の一例である。距離検出部120は、車両500の走行方向と交差する方向における撮影部140とトンネル600の壁面との距離を検出し、検出した距離情報を制御部160の備える露出条件決定部161に出力する。距離検出部120は、TOFセンサ141等により実現される。
【0168】
明るさ検出部130は、撮影システム100aによる撮影時の明るさを検出し、検出した明るさデータを露出制御部162に出力する。ここで、トンネル600内における明るさには、照明ユニット400による照明光のトンネル600の壁面による反射光による明るさと、太陽光等の自然光のトンネル600の壁面による反射光による明るさとが含まれる。また、照明ユニット400による照明とは別に、露出制御のためにトンネル600の壁面に光を照明する場合、トンネル600の壁面の明るさには、その反射光による明るさも含まれる。
【0169】
明るさ検出部130は、カメラユニット300の備えるラインCCD331-2等により実現される。但し、これに限定されるものではなく、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2の少なくとも1つにより実現されてもよい。また、カメラユニット300とは別に、PD(Photo Diode)等の光量検出のための光センサを設け、明るさ検出部130の機能を実現させてもよい。
【0170】
撮影部140は、移動体に搭載され、構造物の所定の範囲を撮影する撮影手段の一例である。撮影部140は、カメラユニット300等により実現され、トンネル600の壁面を撮影して撮影画像を取得する。
【0171】
また撮影部140は、複数のモードに切り替え可能に構成されている。この複数のモードは、所定の露出制御値で撮影する第1のモード(固定露出条件)と、所定の露出制御値とは異なる露出制御値で撮影する第2のモード(自動露出条件)とを含む。
【0172】
照明部150は、照明ユニット400等により実現され、撮影部140による撮影時に、明るさを確保するためにトンネル600の壁面を照明する。
【0173】
制御部160は、図4のセンサ制御ボード110等により実現され、主に撮影部140の露出条件を決定するとともに、撮影部140の露出を制御する。制御部160は、露出条件決定部161と、露出制御部162と、露出記憶部163と、入出力部164と、終了判定部165とを有する。
【0174】
これらのうち、露出条件決定部161、露出制御部162及び終了判定部165の各機能は、図4のCPU111が所定のプログラムを実行すること等により実現され、露出記憶部163の機能は、図4のHDD114等により実現される。また入出力部164の機能は、外部I/F115等により実現される。
【0175】
露出条件決定部161は、撮影部140のモードの切り替えを制御する制御手段の一例である。露出条件決定部161は、距離検出部120により検出された距離情報に基づき、撮影部140の露出条件を固定露出条件、又は自動露出条件の何れか一方に決定することで、撮影部140のモードの切り替えを制御する。
【0176】
より具体的には、露出条件決定部161は、距離検出部120により検出された距離が第1閾値以下である場合に、撮影部140の露出条件を自動露出条件に決定し、上記の距離が第1閾値以下でない場合に、撮影部140の露出条件を固定露出条件に決定する。決定結果は露出制御部162に出力される。ここで、第1閾値とは、撮影部140におけるラインCCDのダイナミックレンジ等に基づいて予め定められた値である。また、距離検出部120により検出された距離が第1閾値以下であれば、撮影された画像が白飛び及び黒潰れしないことを基準にして定められた値である。
【0177】
次に、露出制御部162について説明する。実施形態では、ラインCCDの露光時間(シャッタースピード)、ラインCCDが受光した光に対する出力電圧の増幅率(ゲイン)、カメラユニット300の備える絞りの直径、及び照明ユニット400による照明光量の少なくとも1つを露出条件とする。
【0178】
露出制御部162は、露光時間制御部1621と、増幅率制御部1622と、絞り制御部1623と、照明制御部1624とを有し、これらを用いて、撮影部140に固定露出条件で撮影させ、或いは撮影部140に自動露出条件で撮影させる。
【0179】
自動露出条件による撮影では、露出制御部162は、明るさ検出部130により検出された明るさに基づき露出条件を算出し、算出した露出条件で露出させる自動露出制御を行う。自動露出条件の算出には、露出制御値を自動で決定する公知の露出プログラム等を適用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0180】
露光時間制御部1621は、明るさ検出部130により検出された明るさデータに基づいて、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2のそれぞれの露光時間を制御する。
【0181】
また、増幅率制御部1622は、明るさデータに基づいて、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2のそれぞれの増幅率を制御し、絞り制御部1623は、明るさデータに基づいて、絞り331-1a、332-1a、333-1a及び334-1aのそれぞれの絞りの直径を制御する。さらに、照明制御部1624は、明るさデータに基づいて、照明ユニット400の備える光源431-2、432-2、433-2及び434-2のそれぞれの照明光量を制御する。
【0182】
なお、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2のそれぞれの露光時間は等しくてもよいし、等しくなくてもよい。また、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2のそれぞれの増幅率は、等しくてもよいし、等しくなくてもよい。また、絞り331-1a、332-1a、333-1a及び334-1aのそれぞれの直径は等しくてもよいし、等しくなくてもよい。さらに、光源431-2、432-2、433-2及び434-2のそれぞれの照明光量は、等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
【0183】
露出記憶部163は、露出制御部162により算出された露出条件データを記憶する。 入出力部164は、データや信号を入出力するためのインターフェース部である。終了判定部165は、撮影システム100aによるトンネル600の壁面の撮影が終了したか否かを判定する。一例として、終了判定部165は、車速計/移動距離計171による計測値に基づく走行距離を、図4のHDD114等の記憶装置に予め記憶されたトンネル600の長さと比較し、走行距離がトンネル600の長さに到達した場合に、撮影の終了を判定する。或いは、終了判定部165は、入出力部164を介して、オペレータの終了指示を受け付け、この終了指示に応答して撮影終了を判定してもよい。
【0184】
<撮影システム100aの動作>
次に、撮影システム100aの動作について、図16図17を参照して説明する。
【0185】
図16は、撮影システム100aの動作の一例を説明する図であり、(a)は撮影システム100aとトンネル600の壁面との位置関係を示す図、(b)は撮影部140からトンネル600の壁面までの検出距離と、車両500の走行距離との関係を示す図である。
【0186】
図16(a)において、図中の左側の車両500は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、TOFセンサ141とを含む撮影システム100aを搭載し、太矢印151及び152で示す方向に道路700を走行している。図中の中央に示した車両500aは、車両500が太矢印151の方向に走行した後の状態を示し、図中の右側に示した車両500bは、車両500が車両500aの状態からさらに太矢印152の方向に走行した後の状態を示している。
【0187】
図16(a)に示した撮影範囲364は、カメラユニット300による撮影範囲を示し、破線で示した照明範囲464は照明ユニット400による照明範囲を示している。図示するように、車両500の走行方向と交差する方向において、照明ユニット400はトンネル600の壁面に光を照明し、カメラユニット300はトンネル600の壁面を撮影する。
【0188】
図16(a)において、一点鎖線で示したレーザ光142は、TOFセンサ141からトンネル600の壁面に照射され、トンネル600の壁面で反射されてTOFセンサ141に戻るレーザ光を示している。TOFセンサ141は、このレーザ光142を利用して、撮影部140とトンネル600の壁面との距離を十分なサンプリングレートで検出する。
【0189】
図16(a)において、車両500の図中の下側にはトンネル600の壁面が示され、図中の左側の車両500の位置におけるトンネル600の壁面は、壁面601として示されている。
【0190】
図中の中央の車両500aの位置では、道路700の脇に設けられた非常駐車帯701によりトンネル600の壁面に段差があり、撮影部140と壁面602との距離が、撮影部140と壁面601との距離に対して長くなっている。距離が長くなった分、照明ユニット400による壁面602への照明光が広がるため、壁面602での反射光量が減少する。そのため、車両500aの位置では、明るさが低下し、カメラユニット300により撮影される壁面602の画像は、壁面601の画像と比較して暗くなる。
【0191】
図中の右側の車両500bの位置では、非常駐車帯701は設けられていないため、撮影部140と壁面603との距離は、撮影部140と壁面601との距離と同等になる。また、明るさは壁面601の撮影時と同等になる。
【0192】
一方、図16(b)において、横軸は、車両500の走行距離を示している。この走行距離は、図16(a)における車両500の走行距離と対応する。また縦軸は、TOFセンサ141による、撮影部140からトンネル600の壁面までの検出距離を示し、縦軸の矢印方向に進むほど、検出距離が長いことを示す。
【0193】
図16(b)に示す区間153は、TOFセンサ141により壁面601までの距離が検出される区間である。同様に、区間154は、壁面602までの距離が検出される区間であり、区間155は、壁面603までの距離が検出される区間である。区間154では、区間153及び区間155と比較して、非常駐車帯701の分だけ検出距離が長くなっている。また、区間153における検出距離と、区間155における検出距離は同等である。
【0194】
撮影システム100aは、図16(a)における図中左側の車両500の位置から壁面601の撮影を開始する。区間153では、露出条件決定部161は、カメラユニット300の露出条件を自動露出条件に決定する。カメラユニット300は、車両500の走行により太矢印151の方向に移動されながら、自動露出条件下で壁面601を撮影する。
【0195】
車両500が区間154に入ると、TOFセンサ141による検出距離が急激に変化する。露出条件決定部161は、この変化に基づき、車両500が非常駐車帯701の区間154に入ったことを検知し、露出条件を自動露出条件から固定露出条件に切り替えて、区間154に入る直前の露出条件に固定する。その後、カメラユニット300は、固定露出条件下で壁面602を撮影する。また、この際に、露出制御部162は、カメラユニット300に固定露出条件で露出させるが、並行して自動露出条件の算出も行い、算出した露出条件データを露出記憶部163に記憶させる。
【0196】
その後、車両500が区間154から区間155に入ると、TOFセンサ141による検出距離が再び急激に変化し、区間153における検出距離と同等のものになる。露出条件決定部161は、この変化に基づき、車両500が区間154を出たことを検知し、露出条件を固定露出条件から自動露出条件に切り替える。また、露出制御部162は、露出条件データの露出記憶部163への記憶を停止する。その後、カメラユニット300は自動露出条件下で壁面603を撮影する。
【0197】
その後、車両500がトンネル600から出ると、撮影システム100aは撮影を終了する。ここで、一度の撮影では、区間154における固定露出条件が適切にならず、壁面602の撮影画像に白飛びや黒潰れした領域が含まれる場合がある。その場合、撮影システム100aは、壁面602を適切な露出条件で撮影するために2回目の撮影を行う。
【0198】
2回目の撮影では、露出制御部162は、1回目の撮影において露出記憶部163に記憶された露出条件データを読み出し、読み出した露出条件データに基づく露出条件下で撮影する。なお、露出条件データにおいて、車両500が区間154に入った直後及び区間154から出る直前の露出条件データは、追従遅れ等により自動露出条件の算出が適切でない場合があるため、区間154における露出条件データの平均値等に置き換えると好適である。
【0199】
次に、図17は、撮影システム100aの1回目の撮影動作の一例を示すフローチャートである。
【0200】
まず、ステップS171において、車両500は走行を開始する。
【0201】
続いて、ステップS172において、露出条件決定部161は、露出条件を自動露出条件に決定し、撮影部140は、自動露出条件下でトンネル600の壁面の撮影を行う。
【0202】
続いて、ステップS173において、距離検出部120は、車両500の走行方向と交差する方向における撮影部140とトンネル600の壁面との間の距離を検出し、検出した距離情報を露出条件決定部161に出力する。
【0203】
なお、ステップS172とステップS173の順番は適宜変更可能であり、両者が並行して行われてもよい。
【0204】
続いて、ステップS174において、露出条件決定部161は、検出された距離が所定の第1閾値以下であるか否かを判定する。
【0205】
ステップS174で距離が所定の第1閾値以下であると判定された場合(ステップS174、Yes)、露出条件決定部161は、露出条件を自動露出条件に決定し、決定結果を露出制御部162に出力する。
【0206】
そして、ステップS175において、撮影部140は、自動露出条件下でトンネル600の壁面を撮影する。
【0207】
一方、ステップS174で距離が所定の第1閾値以下でないと判定された場合(ステップS174、No)、露出条件決定部161は、露出条件を固定露出条件に決定し、決定結果を露出制御部162に出力する。
【0208】
そして、ステップS176において、撮影部140は、固定露出条件下でトンネル600の壁面を撮影する。
【0209】
続いて、ステップS177において、露出制御部162は、自動露出条件を算出する。
【0210】
続いて、ステップS178において、露出制御部162は、算出した露出条件データを露出記憶部163に記憶させる。
【0211】
続いて、ステップS179において、終了判定部165は、撮影システム100によるトンネル600の壁面の撮影が終了したか否かを判定する。
【0212】
ステップS179で、撮影が終了したと判定された場合(ステップS179、Yes)、撮影システム100aは撮影を終了する。一方、ステップS179で撮影が終了していないと判定された場合(ステップS179、No)、撮影システム100aは、ステップS173に戻り、ステップS173以降の動作を再度行う。
【0213】
このようにして、撮影システム100aは、トンネル600の壁面を撮影することができる。
【0214】
<露出制御部162による処理>
次に、図18は、露出制御部162による処理の一例を示すフローチャ-トである。
【0215】
まず、ステップS181において、明るさ検出部130は、明るさデータIを検出し、検出した明るさデータIを露出制御部162に出力する。
【0216】
続いて、ステップS182において、露出制御部162は、明るさデータIが、予め定められた目標値Igより大きいか否かを判定する。
【0217】
ステップS182において、明るさデータIが目標値Igより大きいと判定された場合は(ステップS182、Yes)、ステップS183において、絞り制御部1623は、明るさデータIが目標値Igになるまで、絞り331-1a、332-1a、333-1a及び334-1aの直径を縮小可能であるか否かを判定する。
【0218】
ステップS183において、縮小可能である判定された場合(ステップS183、Yes)、絞り制御部1623は、ステップS184において、明るさデータIが目標値Igになるまで各絞りの直径を縮小する。その後、露出制御部162は、処理を終了する。
【0219】
一方、ステップS183において、縮小可能でないと判定された場合(ステップS183、No)、ステップS185において、露光時間制御部1621は、明るさデータIが目標値Igになるまで、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2の露光時間を短縮可能であるか否かを判定する。
【0220】
ステップS185において、短縮可能である判定された場合(ステップS185、Yes)、ステップS186において、露光時間制御部1621は、明るさデータIが目標値Igになるまで各ラインCCDの露光時間を短縮し、その後、露出制御部162は処理を終了する。
【0221】
一方、ステップS185において、短縮可能でないと判定された場合(ステップS185、No)、ステップS187において、増幅率制御部1622は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各ラインCCDの増幅率を低下可能であるか否かを判定する。
【0222】
ステップS187において、低下可能であると判定された場合(ステップS187、Yes)、ステップS188において、増幅率制御部1622は、明るさデータIが目標値Igになるまで各ラインCCDの増幅率を低下させ、その後、露出制御部162は処理を終了する。
【0223】
一方、ステップS187において、低下可能でないと判定された場合(ステップS187、No)、ステップS189において、照明制御部1624は、明るさデータIが目標値Igになるまで、光源431-2、432-2、433-2、434-2、435-2及び436-2の照明光量を低下可能であるか否かを判定する。
【0224】
ステップS189において、低下可能であると判定された場合(ステップS189、Yes)、ステップS190において、照明制御部1624は、明るさデータIが目標値Igになるまで各光源の照明光量を低下させ、その後、露出制御部162は処理を終了する。
【0225】
一方、ステップS189において、低下可能でないと判定された場合(ステップS189、No)、ステップS191において、露出制御部162は、ブザー116(図4参照)にビープ音を発生させて、調査範囲外の警告を報知し、その後、ステップS181に戻って処理を継続する。なお、ビープ音の発生に代えて、外部I/F115を介してユーザインターフェース画面に警告メッセージを表示する等して、ユーザに報知してもよい。
【0226】
一方、ステップ182において、明るさデータIが予め決定された目標値Igより大きくないと判定された場合は(ステップS182、No)、ステップS192において、照明制御部1624は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各光源の照明光量を上昇可能であるか否かを判定する。
【0227】
ステップS192において、上昇可能であると判定された場合(ステップS192、Yes)、ステップS193において、照明制御部1624は、明るさデータIが目標値Igになるまで各光源の照明光量を上昇させ、その後、露出制御部162は処理を終了する。
【0228】
一方、ステップS192において、上昇可能でないと判定された場合(ステップS192、No)、ステップS194において、増幅率制御部1622は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各ラインCCDの増幅率を上昇可能であるか否かを判定する。
【0229】
ステップS194において、上昇可能であると判定された場合(ステップS194、Yes)、ステップS195において、増幅率制御部1622は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各ラインCCDの増幅率を上昇させ、その後、処理を終了する。
【0230】
一方、ステップS194において、上昇可能でないと判定された場合(ステップS194、No)、ステップS196において、露光時間制御部1621は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各ラインCCDの露光時間を延長可能であるか否かを判定する。
【0231】
ステップS196において、延長可能であると判定された場合(ステップS196、Yes)、ステップS197において、露光時間制御部1621は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各ラインCCDの露光時間を延長し、その後、露出制御部162は処理を終了する。
【0232】
一方、ステップS196において、延長可能でないと判定された場合(ステップS196、No)、ステップS198において、絞り制御部1623は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各絞りの直径を拡大可能であるか否かを判定する。
【0233】
ステップS198において、拡大可能であると判定された場合(ステップS198、Yes)、ステップS199において、絞り制御部1623は、明るさデータIが目標値Igになるまで、各絞りの直径を拡大し、その後、処理を終了する。
【0234】
一方、ステップS198において、拡大可能でないと判定された場合(ステップS198、No)、ステップS191において、露出制御部162は、ブザー116にビープ音を発生させて、調査範囲外の警告を報知し、その後、ステップS181に戻って処理を継続する。なお、上述したものと同様に、ビープ音の発生に代えて、外部I/F115を介してユーザインターフェース画面に警告メッセージを表示する等して報知してもよい。
【0235】
このようにして、露出制御部162は、明るさデータIに基づいて露出制御処理を実行することができる。なお、図18では、ステップS183~S190において、絞り径縮小(ステップS183~S184)、露光時間短縮(ステップS185~S186)、増幅率低下(ステップS187~S188)、照明光量低下(ステップS189~S190)の順に制御する例を示したが、この順番は適宜変更可能である。同様に、ステップS192~S199において、照明光量上昇(ステップS192~S193)、増幅率上昇(ステップS194~S195)、露光時間延長(ステップS196~S197)、絞り径拡大(ステップS198~S199)の順に制御する例を示したが、この順番も適宜変更可能である。
【0236】
<撮影システム100aの作用効果>
トンネル内の撮影では、撮影システムにおける光の露出量をトンネル内の明るさに合わせる自動露出制御を行うことが好ましい。しかし、トンネルの壁面を撮影する場合、道路脇に設けられた非常駐車帯等に起因して、撮影手段とトンネルの壁面との間の距離が大きく変化する場合がある。撮影手段とトンネルの壁面との距離が変化すると、照明距離等が変わり、明るさが大きく変化する。そして、明るさの変化への自動露出制御の追従遅れで露出を適切に制御できず、白飛びや黒潰れが発生して、適切に撮影できない場合がある。
【0237】
本実施形態では、撮影部140とトンネル600の壁面との距離が所定の第1閾値以下である場合に、撮影時の露出条件を自動露出条件に決定し、当該距離が所定の第1閾値以下でない場合に、撮影時の露出条件を固定露出条件に決定する。
【0238】
これにより、道路脇に設けられた非常駐車帯等に起因して、撮影部140とトンネル600の壁面との距離が大きく変化した場合に、固定露出条件でトンネル600の壁面を撮影できる。そして、撮影光量の変化への追従遅れで露出を適切に制御できなくなることを防ぎ、白飛びや黒潰れを防止して適切に撮影することができる。
【0239】
また、本実施形態では、撮影部140とトンネル600の壁面との距離の絶対値を第1閾値と比較して露出条件を決定するため、非常駐車帯の設けられた区間154における壁面の段差が急峻でない場合においても、区間154に入ったことを正確に検知し、また、区間154を出たことを正確に検知することができる。
【0240】
さらに、区間154において固定露出条件下で撮影する場合、車両500の走行による一度の撮影のみでは、固定露出条件が適切にならず、区間154で適切に撮影できない場合がある。これに対し、本実施形態では、露出制御部162は、1回目の走行による撮影で、撮影部140が固定露出条件でトンネル600の壁面を撮影している時に、撮影光量に基づいて算出した露出条件データを露出記憶部163に出力して記憶させる。そして、車両500の走行による2回目の撮影において、露出記憶部163に記憶された露出条件データによる露出条件下で、区間154を撮影する。これにより、固定露出条件が適切でなく、1回目の撮影では適切な撮影が行えなかった区間を、2回目の撮影で適切に撮影できる。
【0241】
但し、区間154における露出条件が事前の実験等により既知の場合には、既知の露出条件で区間154を撮影することで、車両500の走行による一度の撮影により、白飛びや黒潰れのない適切な撮影を行うことができる。
【0242】
なお、上述した実施形態では、トンネル600の壁面に設けられた非常駐車帯701を例に説明したが、トンネル600の壁面に非常駐車帯701以外の窪みが設けられている場合にも、非常駐車帯701以外の窪みに対して上述した実施形態を適用可能である。
【0243】
[第2実施形態]
次に第2実施形態に係る撮影システム100bと、撮影システム100bによる撮影方法について説明する。撮影システム100bは、撮影システム100,100aと同様に、トンネル600の所定の範囲を撮影する撮影システムである。
【0244】
ここで、第1実施形態に係る撮影システム100aでは、撮影時における車両の走行経路が1回目と2回目で大きく異なると、撮影手段(撮影部140)と構造物(トンネル600の壁面)との距離の違いにより、1回目の走行で記憶した露出条件では適正な明るさで撮影できなくなる場合がある。
【0245】
この場合について、図19を参照して詳述する。図19は、1回目の撮影と2回目の撮影での車両の走行経路の一例を説明する図である。(a)は車両500とトンネル600の壁面との位置関係を示す図、(b)は撮影部140からトンネル600の壁面までの検出距離と、道路700を走行する車両500の走行距離との関係を示す図である。なお、図19の見方における図16と同様の部分については、ここでは重複する説明を省略する。
【0246】
図19(a)に示すように、1回目の撮影時における車両500の走行経路181(黒太矢印)に対し、2回目の撮影時における車両500の走行経路182(白抜き矢印)は、トンネル600の壁面により近くなっている。
【0247】
図19(b)に示すように、TOFセンサ(図示を省略)による検出距離は、1回目の撮影時の検出距離191に対し、2回目の撮影時の検出距離192は全体的に短くなっており、車両500がトンネル600の壁面の近くを走行していることが分かる。
【0248】
このように、1回目に対して2回目の撮影時に車両500がトンネル600の壁面のより近くを走行すると、非常駐車帯701におけるトンネル600の壁面は、適正な露出に対して明るく撮影され、白飛びする場合がある。また逆に、1回目に対して2回目の撮影時に車両500がトンネル600の壁面からより離れて走行すると、非常駐車帯701におけるトンネル600の壁面は、適正な露出に対して暗く撮影され、黒潰れする場合がある。ここで、非常駐車帯701は、車両500に搭載された撮影部140とトンネル600の壁面との距離が変化する領域の一例である。
【0249】
本実施形態に係る撮影方法は、撮影システムにより構造物の所定の範囲を撮影する撮影方法であり、撮影システムは、移動体に搭載される撮影手段を含む。本実施形態では、撮影手段と構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で構造物の所定の範囲の少なくとも一部を撮影する。また撮影手段と構造物との距離に関する第2情報を取得しつつ、所定の露出制御値とは異なる露出制御値で構造物の所定の範囲の少なくとも一部を撮影する。そして、第1情報と第2情報の比較結果に基づき、撮影手段と構造物との距離変化に関する情報を報知する。
【0250】
例えば、第1情報は、1回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する情報であり、第2情報は、2回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する情報である。また1回目の撮影は第1の工程の一例であり、2回目の撮影は第2の工程の一例である。
【0251】
この方法により、撮影手段と構造物との距離が大きく変化した場合にも、距離変化に関する情報をオペレータ等に報知して撮影手段と構造物との距離調整等を促すことで、露出を適正化し、撮影手段と構造物との距離変化に起因する白飛びや黒潰れ等の不具合の発生を抑制する。
【0252】
<撮影システム100bの機能構成例>
次に、図20を参照して、撮影システム100bの機能構成について説明する。図20は、撮影システム100bの機能構成の一例を説明するブロック図である。図20に示すように、撮影システム100bは、制御部160bを備える。制御部160bは、距離記憶部166と、比較部167と、報知部168とを備える。
【0253】
これらのうち、記憶部166の機能は、図4のHDD114等により実現され、比較部167及び報知部168の各機能は図4のCPU111が所定のプログラムを実行すること等により実現される。
【0254】
距離記憶部166は、距離検出部120により検出された撮影部140とトンネル壁面との距離に関する情報を記憶する記憶手段の一例である。
【0255】
比較部167は、距離記憶部166に記憶された複数の距離に関する情報を比較する比較手段の一例である。複数の距離に関する情報は、距離検出部120により検出された撮影部140とトンネル壁面との距離に関する複数の情報である。
【0256】
具体的には、複数の距離に関する情報は、1回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する第1情報と、2回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する第2情報を含む。また比較部167による比較結果は、第1情報と第2情報の差分値を含む。
【0257】
報知部168は、比較部167による比較結果に基づき、撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する情報を報知する報知手段の一例である。報知部168による報知動作は報知工程の一例である。
【0258】
撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する情報は、例えば1回目の撮影と2回目の撮影における撮影部140とトンネルの壁面との距離変化が所定の変化閾値を超えたことを示す警告情報である。オペレータは、報知部168による警告に応じて車両をトンネルの壁面に近づけたり、遠ざけたりする運転操作を行うことで、撮影部140とトンネルの壁面との距離に応じた露出を調整できる。
【0259】
また変化閾値は、例えば、適正な明るさで撮影するための許容される、撮影部140とトンネル600との距離変化の限界値であり、所定の閾値の一例である。この変化閾値は、変化閾値を跨ぐ状態で、非常駐車帯が設けられた道路区間(以下、非常駐車帯区間という)に車両が進入した際に、非常駐車帯の壁面の撮影画像が白飛び又は黒潰れしない程度に余裕をもって設定することが好ましい。
【0260】
報知部168は、操作部118(図4参照)に含まれる表示部に警告を示すメッセージを表示させたり、ブザー116(図4参照)にビープ音や音声を発生させたりして、撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する情報をオペレータに報知できる。或いはピエゾ素子等の振動部材を操作部118に設け、振動部材の振動でオペレータに報知することもできる。
【0261】
また、報知部168は、1回目の撮影における走行経路に対して、2回目の撮影における走行経路がトンネルの壁面に近づいているか、又は遠ざかっているかを識別可能に報知することもできる。
【0262】
<撮影システム100bの動作>
次に、図21図22を参照して、撮影システム100bの動作について説明する。図20の機能構成図も適宜参照して説明する。
【0263】
(1回目の撮影)
図21は、撮影システム100bによる1回目の撮影動作の一例を説明するフローチャートである。
【0264】
図21において、撮影システム100bによる1回目の撮影動作を開始すると、まずステップS211において、車両500は走行を開始し、撮影部140は撮影を開始する。撮影部140は所定の撮影間隔(フレームレート)で繰り返し撮影を行う。
【0265】
続いて、ステップS212において、距離検出部120は、撮影部140とトンネル600の壁面との距離の検出を開始し、所定の検出間隔で繰り返し検出を行う。
【0266】
続いて、ステップS213において、距離記憶部166は、距離検出部120による検出距離の記憶を開始する。この際に、距離記憶部166は、車両500の走行距離と距離検出部120による検出距離とを対応付けて記憶する。ここで、距離記憶部166が記憶する検出距離の情報は、「撮影手段と構造物との距離に関する第1情報」に対応する。
【0267】
続いて、ステップS214において、制御部160bは、非常駐車帯区間に車両500が進入したか否かを判定する。この判定では、距離検出部120による検出距離の変化量が所定の非常駐車帯閾値を超えた場合には車両500が非常駐車帯区間に進入したと判定され、そうでない場合には進入していないと判定される。
【0268】
ステップS214で非常駐車帯区間に進入していないと判定された場合には(ステップS214、No)、ステップS214の動作が再度行われる。一方、非常駐車帯区間に進入したと判定された場合には(ステップS214、Yes)、ステップS215において、距離記憶部166は、車両500が非常駐車帯区間に進入した際の走行距離を記憶する。
【0269】
続いて、ステップS216において、制御部160bは、車両500が非常駐車帯区間を退出したか否かを判定する。この判定でも進入時と同様に、距離検出部120による検出距離の変化量が所定の非常駐車帯閾値を超えた場合には車両500が非常駐車帯区間を退出したと判定され、そうでない場合には退出していないと判定される。
【0270】
ステップS216で非常駐車帯区間を退出していないと判定された場合には(ステップS216、No)、ステップS216の動作が再度行われる。一方、非常駐車帯区間を退出したと判定された場合には(ステップS216、Yes)、ステップS217において、距離記憶部166は、車両500が非常駐車帯区間を退出した際の走行距離を記憶する。
【0271】
続いて、ステップS218において、終了判定部165は、撮影を終了するか否かを判定する。
【0272】
ステップS218で終了しないと判定された場合には(ステップS218、No)、ステップS218の動作が再度行われる。一方、終了すると判定された場合には(ステップS218、Yes)、ステップS219において、車両500は走行を停止し、撮影部140は撮影を停止する。
【0273】
続いて、ステップS220において、距離検出部120は、撮影部140とトンネル600の壁面との距離の検出を停止する。
【0274】
このようにして、撮影システム100bは、トンネル600の壁面の1回目の撮影を行うことができる。
【0275】
(2回目の撮影)
次に図22は、撮影システム100bによる2回目の撮影動作の一例を説明するフローチャートである。なお、図22におけるステップS221~S222の動作は、図21におけるステップS211~S212の動作と同じである。また図222におけるステップS230~S232の動作は、図21におけるステップS218~S220の動作と同じである。そのため、ここでは重複する説明を省略する。
【0276】
ステップS223において、距離記憶部166は、距離検出部120による検出距離の記憶を開始する。この際に、距離記憶部166は、車両500の走行距離と距離検出部120による検出距離とを対応付けて記憶する。ここで、距離記憶部166が記憶する検出距離の情報は、「撮影手段と構造物との距離に関する第2情報」に対応する。
【0277】
続いて、ステップS224において、制御部160bは、車両500が非常駐車帯区間に進入したか否かを判定する。この判定では、距離検出部120による検出距離の変化量が所定の非常駐車帯閾値を超えた場合には車両500が非常駐車帯区間に進入したと判定され、そうでない場合には進入していないと判定される。或いは、1回目の撮影で距離記憶部166が記憶した進入時の走行距離と、現在の走行距離とを比較して判定することもできる。
【0278】
ステップS224で車両500が非常駐車帯区間に進入したと判定された場合には(ステップS224、Yes)、動作はステップS227に移行する。一方、進入していないと判定された場合には(ステップS224、No)、動作はステップS225に移行する。
【0279】
続いて、ステップS225において、比較部167は、1回目の撮影時に記憶された第1情報と2回目の撮影時に記憶された第2情報との比較結果として、第1情報と第2情報の差分値の絶対値を取得し、この比較結果が変化閾値以内であるか否かを判定する。
【0280】
なお、この場合の第1情報と第2情報は、1回目の撮影と2回目の撮影で車両の走行距離が同じ時の第1情報と第2情報である。或いは、1回目の撮影時における非常駐車帯区間進入前の検出距離の平均値を第1情報とし、2回目の撮影時における現在の検出距離を第2情報としてもよい。
【0281】
ステップS225で変化閾値以内であると判定された場合には(ステップS225、Yes)、動作はステップS224に戻り、ステップS224以降の動作が再度行われる。一方、変化閾値以内でないと判定された場合には(ステップS225、No)、ステップS226において、報知部168は、撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する警告を報知する。その後、動作はステップS224に戻り、ステップS224以降の動作が再度行われる。
【0282】
続いて、ステップS227において、制御部160bは、車両500が非常駐車帯区間を退出したか否かを判定する。この判定では、進入時と同様に、距離検出部120による検出距離の変化量が所定の非常駐車帯閾値を超えた場合には車両500が非常駐車帯区間を退出したと判定され、そうでない場合には退出していないと判定される。或いは、1回目の撮影で距離記憶部166が記憶した退出時の走行距離と、現在の走行距離とを比較して判定することもできる。
【0283】
ステップS227で退出したと判定された場合には(ステップS227、Yes)、動作はステップS230に移行する。一方、退出していないと判定された場合には(ステップS227、No)、動作はステップS228に移行する。
【0284】
続いて、ステップS228において、比較部167は、1回目の撮影時に記憶された第1情報と2回目の撮影時に記憶された第2情報との比較結果として、第1情報と第2情報の差分値の絶対値を取得し、この比較結果が変化閾値以内であるか否かを判定する。
【0285】
なお、この場合の第1情報と第2情報は、1回目の撮影と2回目の撮影で車両の走行距離が同じ時の第1情報と第2情報である。或いは、1回目の撮影時における非常駐車帯区間の検出距離の平均値を第1情報とし、2回目の撮影時における現在の検出距離を第2情報としてもよい。
【0286】
ステップS228で変化閾値以内であると判定された場合には(ステップS228、Yes)、動作はステップS227に戻り、ステップS227以降の動作が再度行われる。一方、変化閾値以内でないと判定された場合には(ステップS228、No)、ステップS229において、報知部168は、撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する警告を報知する。その後、動作はステップS227に戻り、ステップS227以降の動作が再度行われる。
【0287】
このようにして、撮影システム100bは、トンネル600の壁面の2回目の撮影を行うことができる。なお、2回目の撮影は非常駐車帯の撮影が目的であるため、非常駐車帯を出た後は、撮影部140とトンネルの壁面との距離変化に関する情報の報知動作は行われない。非常駐車帯区間を退出した時点で撮影を停止してもよいし、トンネルを退出するまで撮影を続けてもよい。
【0288】
<撮影システム100bによる撮影方法の作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、撮影手段と構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で構造物の所定の範囲の少なくとも一部を撮影する。また撮影手段と構造物との距離に関する第2情報を取得しつつ、所定の露出制御値とは異なる露出制御値で構造物の所定の範囲の少なくとも一部を撮影する。そして、第1情報と第2情報の比較結果に基づき、撮影手段と構造物との距離変化に関する情報を報知する。
【0289】
例えば、第1情報は、1回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する情報であり、第2情報は、2回目の撮影時に取得される撮影手段と構造物との距離に関する情報である。
【0290】
この方法により、撮影時に撮影手段と構造物との距離が大きく変化した場合にも、距離変化が大きくなったことを示す警告等の情報をオペレータ等に報知して、撮影手段と構造物との距離調整等を促すことができる。オペレータ等が報知に応じて露出を適正化することで、撮影手段と構造物との距離変化に起因する白飛びや黒潰れ等の不具合の発生を抑制できる。
【0291】
また本実施形態では、1回目の撮影(第1の工程)及び2回目の撮影(第2の工程)のそれぞれで、撮影手段と構造物との距離に関する情報が取得されるトンネルの壁面(構造物)の領域、又は1回目の撮影及び2回目の撮影のそれぞれで撮影されるトンネルの壁面の領域の少なくとも一方は、少なくとも一部が重複している。これにより、撮影手段と構造物との距離に応じて、撮影における明るさを適正化することが可能になる。
【0292】
また本実施形態では、警告音、音声又は振動の少なくとも1つを用いて、撮影手段と構造物との距離変化に関する情報を報知する。これによりオペレータ等に撮影手段と構造物との距離変化が大きくなったことを容易に認識させることができる。
【0293】
また本実施形態は、非常駐車帯が設けられたトンネル等、車両から構造物までの距離が大きく変化する領域を含む構造物の撮影に、特に好適である。
【0294】
なお、これ以外の効果は、上述した実施形態及び第1実施形態で説明したものと同様である。
【0295】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0296】
具体的には、カメラを搭載する車両としては2輪車、一般車等の4輪車、建設・農業・産業車両、鉄道車両、特殊車両であってもよく、また、ドローン等の飛行体であってもよい。これらまとめて移動体と称する。
【0297】
また実施形態では、対象物の一例としてトンネルを説明したが、これに限るものではなく、対象物には、気体、液体、粉体、粒体物質の輸送に用いる配管も含まれる。また、対象物には、昇降機(エレベータ)が走行する縦穴状の鉄筋コンクリート構造等の昇降路(エレベータシャフト)も含まれる。
【0298】
また、実施形態では、撮影システムの構成部の全部が移動体に設けられる構成を例示したが、これに限定されるものではない。一部の構成部を移動体の外部に設けることもできる。例えば、撮影手段や照明ユニット等の撮影を行う構成部を移動体に設け、またクラウドサーバや外部PC等に制御手段を設けて、撮影を行う構成部と制御手段との間で情報、データ又は信号を、インターネット等のネットワークを介して送受することもできる。
【0299】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0300】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0301】
また実施形態は、撮影システムも含む。例えば、撮影システムは、構造物の所定の範囲を撮影する撮影システムであって、移動体に搭載され、複数のモードに切り替え可能に構成された撮影手段と、前記モードの切り替えを制御する制御手段と、前記撮影手段と前記構造物との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記距離に関する情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された複数の前記距離に関する情報を比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する報知手段と、を備え、前記複数のモードは、所定の露出制御値で撮影する第1のモードと、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で撮影する第2のモードと、を含む。このような撮影システムにより、上述の撮影方法と同様の効果を得ることができる。
【0302】
また実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、構造物の所定の範囲を撮影する撮影システムで用いられるプログラムであって、前記撮影システムは、移動体に搭載され、前記所定の範囲を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段と前記構造物との距離に関する第1情報を取得しつつ、所定の露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影し、前記距離に関する第2情報を取得しつつ、前記所定の露出制御値とは異なる露出制御値で前記所定の範囲の少なくとも一部を撮影し、前記第1情報と前記第2情報の比較結果に基づき、前記撮影手段と前記構造物との距離変化に関する情報を報知する処理をコンピュータに実行させる。このようなプログラムにより、上述の撮影システムと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0303】
100 撮影システム
110 センサ制御ボード
111 CPU
112 ROM
113 RAM
114 HDD
115 外部I/F
116 ブザー
117 システムバス
118 操作部
120 距離検出部(距離情報取得手段の一例)
130 明るさ検出部
140 撮影部(撮影手段の一例)
141 TOFセンサ
150 照明部
153~155 区間
160 制御部
161 露出条件決定部(制御手段の一例)
162 露出制御部
1621 露光時間制御部
1622 増幅率制御部
1623 絞り制御部
1624 照明制御部
163 露出記憶部
164 入出力部
165 終了判定部
166 距離記憶部(記憶手段の一例)
167 比較部(比較手段の一例)
168 報知部(報知手段の一例)
170 IMU
171 車速計/移動距離計
200 スライドユニット
210、220 レール
230 ベース
231 嵌合孔
240 ガイドシャフト
251、252 ガイドシャフト保持部材
261、262 フレーム
300 カメラユニット
310、410 ベースプレート
321、322 レール接続部
331~334 カメラ
331-1、334-1 レンズ
331-1a 絞り
331-2、334-2 ラインCCD
341、342、441、442 シャフト連結部
341-1、342-1 貫通孔
350、450 インデックスプランジャ
361、362、364 撮影範囲
363 撮影方向
400 照明ユニット
431~436 照明光源部
431-1 レンズ
431-1a 絞り
431-2 光源
451 プランジャ
452 プランジャ保持部
461、462、464 照明範囲
463 照明方向
500 車両
600 トンネル
601~603 壁面
700 道路
701 非常駐車帯
710、720 車線
730 歩道
I 明るさデータ
Ig 目標値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0304】
【文献】特開平10-83500号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22