(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】塗布装置、及び、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20240806BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240806BHJP
B05C 9/04 20060101ALI20240806BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20240806BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240806BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240806BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C5/00 101
B05C9/04
B05C9/10
B05C11/10
B05C13/02
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2020131660
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2020044167
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】阿地 恵太
(72)【発明者】
【氏名】松島 功
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105130(JP,A)
【文献】特開平08-323258(JP,A)
【文献】特開2020-018967(JP,A)
【文献】特開平09-073255(JP,A)
【文献】米国特許第05735953(US,A)
【文献】特開2020-175381(JP,A)
【文献】特開2011-194619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤をシートに塗布する
塗布ローラと、
前記
塗布ローラに当接してニップを形成する、移動可能な
加圧ローラと、
前記ニップとは異なる位置で前記
塗布ローラに当接する
ローラ状の当接部材と、
前記
塗布ローラの、前記当接部材から離間する離間方向への移動を制限する制限部材と、
を備
え、
前記塗布ローラは軸部を有し、前記軸部を中心に回転可能であり、
前記制限部材は、前記軸部に当接することにより、前記塗布ローラの離間方向への移動を制限することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記制限部材は、前記
塗布ローラの前記離間方向の移動を制限する制限位置と、前記
塗布ローラの前記離間方向の移動を制限しない制限解除位置と、の間を移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記制限部材を前記制限位置に向けて付勢する付勢体と、
前記付勢体による付勢に抗するように前記制限部材を前記制限解除位置に向けて移動させる移動機構と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記ニップに進入するシートの厚みに応じて、前記制限部材が前記制限位置と前記制限解除位置とのうちいずれかの位置に移動するように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記制限部材は、前記離間方向に直交する方向に対して傾斜した当接面が前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接可能なクサビ状部材であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記
加圧ローラを前記
塗布ローラに向けて付勢する付勢部材を備え、
前記制限部材は、前記付勢部材に支持されたことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、前記ニップに進入するシートの厚みに応じて、その姿勢が変化し、
前記制限部材は、その姿勢が前記付勢部材の姿勢の変化にともない変化しても、前記
塗布ローラが前記離間方向に変位しないように前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接することを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、回転軸を中心に回転可能な加圧アームであって、
前記制限部材は、前記回転軸に直交する断面でみたときに、前記加圧アームとともに前記回転軸を中心に回転しても、前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接する当接面から前記回転軸までの距離が略一定であることを特徴とする請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記制限部材は、前記回転軸に直交する断面でみたときに、前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接する当接面が、前記回転軸からの距離が略一定となるように略円弧状に形成されたことを特徴とする請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記制限部材は、前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接して前記
塗布ローラの前記離間方向の移動を制限する当接面と、前記
塗布ローラに直接的又は間接的に当接せずに前記
塗布ローラの前記離間方向の移動を制限しないように前記当接面から切り欠かれた切欠き部と、を備えたことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれかに記載の塗布装置と、前記塗布装置によって塗布剤が塗布されたシートに画像を形成する画像形成装置と、を備えたことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙などのシートに塗布液などの塗布剤を塗布する塗布装置と、それを備えた画像形成システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの画像形成装置が設置された画像形成システムにおいて、用紙などのシートに塗布液を塗布する塗布装置が設置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1において、塗布装置は、画像形成装置(インクジェットプリンタ)の上流側に設置されていて、インクジェットプリンタに搬送されるシート(被記録媒体)の表面に、滲み抑制剤などの塗布液(処理剤液)を塗布する。これにより、画像形成装置においてシート上に形成される画像に、滲みなどの画像不良が生じにくくなる。
特許文献1において、塗布装置には、塗布液(処理剤液)が貯留された貯留部(供給パン)や、貯留部に貯留された塗布液を汲み上げる汲み上げローラ(スクイーズローラ)や、汲み上げローラによって汲み上げた塗布液を塗布ローラに供給する中間ローラ(絞りローラ)や、汲み上げローラから中間ローラを介して供給された塗布液をシートに塗布する塗布ローラや、塗布ローラとの間にシート(用紙)が搬送されるニップを形成する加圧ローラ、などが設置されている。そして、塗布ローラと加圧ローラとのニップに搬送されるシートに対して、塗布ローラによって塗布液が塗布されることになる。
また、中間ローラを設置することなく、汲み上げローラによって汲み上げた塗布液を直接的に塗布ローラに供給する塗布装置も知られている。いずれにしても、塗布ローラに塗布液を供給する部材(中間ローラ、又は、汲み上げローラである。)は、固定した位置から移動しないように構成された固定部材として機能している。
【0004】
一方、特許文献1には、小径の塗布ローラによって薄膜塗布をおこなうことを目的として、バネなどの弾性体によって塗布ローラを加圧ローラに向けて付勢する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の塗布装置は、塗布部材(塗布ローラ)と加圧部材(加圧ローラ)とのニップにシートが進入した瞬間に、加圧部材がシートの厚み以上に跳ね上がってしまい、塗布部材も変位してしまう現象が生じてしまっていた。そして、そのような現象が生じてしまうと、塗布部材による固定部材(中間ローラや汲み上げローラなどである。)への加圧が弱められてしまい、ニップの位置で塗布部材によってシートに塗布される塗布液(塗布剤)の量にバラツキ(塗布ムラ)が生じてしまうことになる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シートに塗布される塗布剤の量にバラツキが生じにくい、塗布装置、及び、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における塗布装置は、塗布剤をシートに塗布する塗布ローラと、前記塗布ローラに当接してニップを形成する、移動可能な加圧ローラと、前記ニップとは異なる位置で前記塗布ローラに当接するローラ状の当接部材と、前記塗布ローラの、前記当接部材から離間する離間方向への移動を制限する制限部材と、を備え、前記塗布ローラは軸部を有し、前記軸部を中心に回転可能であり、前記制限部材は、前記軸部に当接することにより、前記塗布ローラの離間方向への移動を制限するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートに塗布される塗布剤の量にバラツキが生じにくい、塗布装置、及び、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成システムを示す全体図である。
【
図4】塗布装置における制限部材の動作を示す図である。
【
図5】塗布装置の要部における、(A)内部の構造を示す斜視図と、(B)フレーム構造体を示す斜視図と、である。
【
図7】比較例としての、塗布装置の要部の動作を示す図である。
【
図8】変形例としての、塗布装置の要部の動作を示す図である。
【
図9】
図8の塗布装置において、塗布ローラに対する制限部材による制限が解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成システム100の全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ、50は画像形成装置1に搬送されるシートPに対して前処理として塗布液(塗布剤)を塗布する塗布装置、80は用紙などのシートPを給送する給紙装置、85は画像形成後のシートP上のインクを乾燥させる乾燥装置、90は乾燥装置85から排出されたシートPがスタックされる排紙装置、を示す。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成システム100は、上流側から、給紙装置80、塗布装置50、画像形成装置1、乾燥装置85、排紙装置90、が接続されたものである。
【0012】
図1を参照して、画像形成システム100の動作について簡単に説明する。
まず、パソコンなどから画像形成システム100の制御部に画像情報とともにプリント指令が入力されると、給紙ローラ82によって給紙カセット81からシートPが給送される。給紙カセット81から給送されたシートPは、搬送ローラによって、第1搬送経路K1を経由して塗布装置50に向けて搬送される。
なお、本実施の形態では、給紙カセット81に収納されたカット紙が給送されるように給紙装置80を構成したが、ロール紙が給送されるように給紙装置80を構成することもできる。
【0013】
その後、塗布装置50に搬送されたシートPは、第2搬送経路K2を経由して塗布装置主部51に搬送される。そして、塗布装置主部51にて、シートPの下面(画像形成時にオモテ面となるシート面である。)に、滲みや裏写り等を抑えるための塗布液(前処理液)が塗布される。その後、塗布液が塗布されたシートPは、反転経路K4(第4搬送経路)に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された状態(塗布液が塗布されたシート面がオモテ面(上面)になった状態である。)で、第3搬送経路を経由して、画像形成装置1に搬送される。
ここで、画像形成装置1でシートPの両面にそれぞれ画像形成するモード(両面プリントモード)が選択されている場合には、シートPの両面に塗布液を塗布する必要があるため、片面に塗布液が塗布された後のシートPは、反転経路K4に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された後に、両面経路K5(第5搬送経路)に搬送されて、再び塗布装置主部51に搬送されることになる。そして、塗布装置主部51で、もう一方の面にも塗布液が塗布されたシートPは、そのまま第3搬送経路K3を経由して画像形成装置1に搬送されることになる。
なお、塗布装置50における塗布装置主部51の構成・動作については、後で
図3、
図4等を用いて詳述する。
【0014】
その後、画像形成装置1に搬送されたシートPは、第6搬送経路K6を経由した後に、搬送ドラム2に搬送されながら、そのオモテ面(上面)に所望の画像が形成されることになる。このとき、シートPのオモテ面には、前処理として塗布液が塗布されているため、画像の滲みや裏写り等が抑えられることになる。
そして、画像が形成されたシートPは、第7搬送経路K7を経由して、乾燥装置85に搬送される。
なお、画像形成装置1の構成・動作については、後で
図2を用いて詳述する。
【0015】
その後、乾燥装置85に搬送されたシートPは、第8搬送経路K8を経由した後に、ドライヤ部86に搬送されて、シートP上の画像が乾燥される。そして、画像が乾燥されたシートPは、第9搬送経路K9を経由して、排紙装置90に搬送される。
ここで、上述した両面プリントモードが選択されている場合には、シートPの両面に画像を形成する必要があるため、片面の画像が乾燥された後のシートPは、反転経路K10(第10搬送経路)に搬送されて、搬送方向が逆転されて反転された後に、両面経路K11、K12(第11、第12搬送経路)に搬送されて、再び画像形成装置1の搬送ドラム2に搬送されることになる。そして、搬送ドラム2上で、もう一方の面にも所望の画像が形成されたシートPは、第7搬送経路K7を経由して再び乾燥装置85に搬送されることになる。そして、ドライヤ部86で、もう一方の面の画像が乾燥されたシートPは、そのまま第9搬送経路K9を経由して排紙装置90に搬送されることになる。
【0016】
その後、排紙装置90に搬送されたシートPは、第13搬送経路K13を経由した後に、排紙トレイ91上にスタックされることになる。
こうして、画像形成システム100における一連の動作が完了することになる。
【0017】
以下、
図2を用いて、画像形成装置1(インクジェットプリンタ)について、詳述する。
図2において、2はシートPを搬送する搬送ドラム、5は搬送ドラム2上でシートPを把持するクリッパ、6は搬送ドラム2からシートPを分離する分離部材、7は搬送ドラム2から分離されたシートPを搬送する搬送ベルト、を示す。
10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2はインクジェット方式により印字・印画するための画像形成部がユニット化されたヘッド(印字モジュール)、30は梁部材35などを保持するためのベースフレーム、を示す。
【0018】
ここで、本実施の形態における画像形成装置1は、カラー画像を形成するためのものであって、
図2に示すように、黒色用のヘッド10Kと、カラー用の3色(イエロー、マゼンタ、シアン)のヘッド10Y、10M、10Cと、コーティング用(特殊色用)の2色のヘッド10S1、10S2と、が設置されている。これらの6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、搬送ドラム2に微小な隙間をあけて対向して、搬送ドラム2の回転方向に沿うように放射状に並設されている。
なお、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、プリントに用いられるインクの色(種類)が異なる以外はほぼ同一構造である。ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、略長方体状のユニットであって、その主部が圧電アクチュエータで構成されていて、液体(液滴)としてのインクを吐出するノズルや、インクが充填されたインクタンクや、制御基板(制御部)などが設けられている。
【0019】
図2を参照して、画像形成装置1の動作について簡単に説明する。
まず、画像形成装置1にシートPが搬入されると、そのシートPは、搬送ローラ4によって、搬送ドラム2に向けて搬送される。他方、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2では、入力された画像情報に基づいて各色の書込み情報に変換される。
そして、搬送ドラム2に搬送されたシートPは、クリッパ5に把持された状態で搬送ドラム2上に位置決めされて、搬送ドラム2の反時計方向に回転に沿うように搬送される。
そして、搬送ドラム2の回転によって
図2の矢印方向に搬送されるシートP上に、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2から書込み情報に基づいて液体としてのインクが順次吹き付けられて、シートP上に所望の画像が形成される。
その後、所望の画像が形成されたシートPは、分離部材6によって搬送ドラム2から分離される。そして、搬送ドラム2から分離されたシートPは、搬送ベルト7によって搬送されて、さらに搬送ローラによって乾燥装置85に向けて搬送されることになる。
【0020】
以下、
図3、
図4等を用いて、本実施の形態における画像形成システム100において、特徴的な塗布装置50について詳しく説明する。
塗布装置50は、用紙などのシートPに塗布剤としての塗布液Gを塗布する装置である。
図3に示すように、本実施の形態における塗布装置50(塗布装置主部51)は、塗布部材としての塗布ローラ52、当接部材としての中間ローラ53、汲み上げローラ54、加圧部材としての加圧ローラ57、貯留部55、加圧機構61~64、などで構成されている。
また、
図4に示すように、本実施の形態における塗布装置50(塗布装置主部51)には、制限部材としてのストッパ65(クサビ状部材)、移動機構(移動手段)としてのソレノイド66、付勢体(付勢手段)としての引張スプリング67が設置されている。
なお、簡単のため、
図3においては、ストッパ65、ソレノイド66、引張スプリング67の図示は省略しており、
図4においては、汲み上げローラ54や貯留部55の図示は省略している。
【0021】
塗布部材としての塗布ローラ52は、塗布剤としての塗布液Gをシートに塗布するローラ部材であって、長手方向(
図3の紙面垂直方向であって、回転軸方向である。)に延びるように配置されている。塗布ローラ52は、
図3の上下方向に移動可能に、かつ、
図3の矢印方向に回転可能に、本体筐体に保持されている(
図5(A)に示すサブユニット110を介して本体筐体に保持されている。)。
加圧部材としての加圧ローラ57は、塗布ローラ52との間に長手方向にわたってニップ(塗布ニップ)を形成する、移動可能なローラ部材である。加圧ローラ57は、
図3の上下方向に移動可能に、かつ、
図3の矢印方向に回転可能に、本体筐体に保持されている(
図3に示す第1加圧アーム61を介して本体筐体に保持されている。)。
当接部材としての中間ローラ53は、塗布ローラ52と汲み上げローラ54とにそれぞれ当接するローラ部材であって、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップ(塗布ニップ)とは異なる位置で塗布ローラ52に当接している。中間ローラ53は、
図3の矢印方向に回転可能に本体筐体に保持されている(
図5(A)に示すサブユニット110を介して本体筐体に保持されている。)。また、中間ローラ53は、上下方向に移動することなく、
図3の固定位置に設置されている固定部材としても機能している。
貯留部55には、一定量の塗布液Gが貯留されている。貯留部55は、
図3の紙面垂直方向を長手方向とする略長方体状の箱状部材である。
汲み上げローラ54は、貯留部55に貯留された塗布液Gを汲み上げる汲み上げ部材として機能するものである。汲み上げローラ54は、
図3の矢印方向に回転可能に本体筐体(
図5(A)に示すサブユニット110が着脱可能に設置される本体筐体である。)に保持されている。また、汲み上げローラ54は、上下方向に移動することなく、
図3の固定位置に設置されている。
【0022】
このように構成された塗布装置50において、汲み上げローラ54は、
図3の時計方向に回転しながら、貯留部55内の塗布液Gを担持する。汲み上げローラ54に担持された塗布液Gは、
図3の反時計方向に回転する中間ローラ53(計量ローラ)に移行して担持される。そして、中間ローラ53に担持された塗布液Gは、
図3の時計方向に回転する塗布ローラ52との当接位置で適量化(計量化)されて、適量化された塗布液Gが塗布ローラ52に担持される。
そして、塗布ローラ52に担持された塗布液Gが、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップに搬送されるシートPのシート面(下面)に塗布される(塗布工程である)。このとき、加圧ローラ57は、加圧機構61~64に押圧されながら、
図3の反時計方向に回転している。
【0023】
なお、汲み上げローラ54は、駆動モータ72に連結されていて、制御部に制御される駆動モータ72によって所定方向に回転駆動される。中間ローラ53と塗布ローラ52とは、駆動モータ72からギア列を介して駆動が伝達されて、それぞれ所定方向に回転することになる。また、加圧ローラ57は、その軸端部に上述したギア列に接離可能なギアが設置されていて、駆動モータ72の駆動が伝達されて回転可能に構成されている。
【0024】
また、加圧ローラ57は、加圧機構61~64によって、塗布ローラ52に対して接離方向(上下方向)に移動可能に構成されている。
図3に示すように、加圧機構は、第1加圧アーム61、第2加圧アーム62、カム63、圧縮スプリング64、などで構成されている。第1加圧アーム61は、支軸61aを中心に回転可能に本体筐体に保持されていて、加圧ローラ57を回転可能に保持している。第2加圧アーム62は、第1加圧アーム61の支軸61aを中心に、第1加圧アーム61との回転とは独立して回転可能に本体筐体に保持されている。第2加圧アーム62には、第1加圧アーム61を加圧ローラ57とともに塗布ローラ52に向けて付勢する圧縮スプリング64(一端側が第1加圧アーム61に接続され、その他端側が第2加圧アーム62に接続されている。)が設置されている。カム63は、そのカム面が第2加圧アーム62の上部に当接していて、カムモータ71によって回転駆動されてカム角度が変化することで、第1、第2加圧アーム61、62とともに加圧ローラ57を上下動させる。
そして、塗布工程がおこなわれるときには、加圧機構61~64によって、加圧ローラ57は
図3(A)に示す当接位置(塗布ローラ52に当接する位置である。)に移動する。これに対して、塗布工程がおこなわれないときには、加圧機構61~64によって、加圧ローラ57は離間位置(塗布ローラ52から離れる位置である。)に移動する。
【0025】
ここで、本実施の形態における塗布装置50には、
図4に示すように、中間ローラ53(当接部材)に対する塗布ローラ52の離間方向(
図3、
図4の上方である。)の移動を制限する制限部材としてのストッパ65(クサビ状部材)が設けられている。すなわち、ストッパ部69は、塗布ローラ52の、中間ローラ53(当接部材)から離間する離間方向への移動を制限する制限部材として機能する。
詳しくは、ストッパ65(制限部材)は、
図4(A)に示すように、塗布ローラ52の軸部52a(又は、軸部52aを回転可能に保持する軸受)に当接して塗布ローラ52の離間方向(上方向)の移動を制限する。すなわち、塗布ローラ52は無制限に離間方向(上方向)に移動するのではなくて、ストッパ65との当接によって、その移動(移動量)が制限される(移動しにくくなる)。
【0026】
このようにストッパ65(制限部材)を設けることで、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入した瞬間に、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまい、塗布ローラ52も上方に変位してしまう現象を軽減することができる。したがって、塗布ローラ52によってシートPに塗布される塗布液の量にバラツキ(塗布ムラ)が生じる不具合が軽減されることになる。
【0027】
詳しくは、
図7に示す塗布装置151のように、ストッパ65(制限部材)を設置しない場合には、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入した瞬間に、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に白矢印方向に跳ね上がってしまう。そして、加圧ローラ57が跳ね上がった瞬間に、塗布ローラ52に対する加圧が弱められて、塗布ローラ52(又は、中間ローラ53)も上方(白矢印方向)に変位し、塗布ローラ52と中間ローラ53とのニップN2で塗布液Gが大量に通過してしまい(塗布液Gの受け渡しが過剰になってしまい)、塗布ニップN1の位置で塗布ローラ52によってシートPに塗布される塗布液Gの量にバラツキ(塗布ムラ)が生じてしまう。特に、
図7(B)に示すように厚みが厚いシートP(厚紙)が通紙される場合には、
図7(A)に示すように厚みが薄いシートP(薄紙)が通紙される場合に比べて、そのような不具合が顕著になる。さらに、シートPの搬送速度が速い場合や、塗布ローラ52のローラ径が小径である場合などにも、そのような不具合が顕著になる。
このような不具合を解決するために、圧縮スプリング64のばね定数を上げて加圧ローラ57の加圧力を上げる方策や、加圧ローラ57を上下動しないように固定する方策も考えられるが、前者はニップ(塗布ニップ)におけるシートPの進入遅れ(搬送タイミング遅れ)による搬送不良が生じやすく、後者はニップ(塗布ニップ)をシートPが通過しない搬送不良が生じやすくなってしまう。
【0028】
これに対して、本実施の形態では、塗布ローラ52の離間方向の移動をある程度許容した上に、その移動量を制限しているため、上述したような不具合の発生を軽減することができる。すなわち、シートPの搬送不良を生じさせることなく、シートPに塗布される塗布液Gの塗布ムラ(バラツキ)を軽減することができる。
なお、本実施の形態では、塗布ローラ52に直接的に当接可能なストッパ65(制限部材)を設けたが、塗布ローラ52に間接的に当接可能なストッパ65(制限部材)を設けることもできる。
【0029】
ここで、
図4に示すように、本実施の形態において、制限部材としてのストッパ65は、離間方向に直交する方向(水平方向である。)に対して傾斜した当接面(一点鎖線で示した部分である。)が塗布ローラ52に直接的又は間接的に当接可能なクサビ状部材である。すなわち、ストッパ65は、クサビ形状をしていて、塗布ローラ52に当接する当接面が、水平面ではなくて、水平面に対して小さな角度がついた傾斜面(
図4の左方から右方に向けて上方に傾斜する傾斜面である。)になっている。
また、ストッパ65は、
図4の略水平方向(離間方向に直交する方向である。)にスライド移動可能に、
図5(A)、
図6に示すサブユニット110を介して、本体筐体に保持されている。そして、ストッパ65(制限部材)は、付勢体としての引張スプリング67によって、その当接面(傾斜面)が塗布ローラ52に当接する方向(
図4の右方である。)に付勢されている。
【0030】
このような構成により、ストッパ65は、引張スプリング67による付勢によって、塗布ローラ52の軸部52aに常に接触した状態になる。したがって、
図4(A)の状態からカム63が回転することで加圧ローラ57、塗布ローラ52、中間ローラ53が加圧されて、塗布ローラ52が中間ローラ53側に沈むことでストッパ65と塗布ローラ52とに隙間が生じそうになっても(
図4(B)の状態である。)、ストッパ65がクサビ形状をしているため、
図4(C)に示すように、ストッパ65が右方にスライドして、塗布ローラ52との当接状態が維持されることになる。
なお、カム63の角度(回転方向の姿勢)によって塗布ローラ52に対する加圧ローラ57の加圧力が変化して、塗布ローラ52が変位した場合にも、ストッパ65は同じように動作して、同様の効果を奏することになる。そして、塗布ローラ52は、ストッパ65によって加圧ローラ57の側への移動が制限されるため、加圧ローラ57による加圧が解除されるような場合であっても、塗布ローラ52と中間ローラ53とのニップが維持されて、中間ローラ53から塗布ローラ52に供給される塗布液Gの量が安定することになる。
【0031】
ここで、本実施の形態において、ストッパ65(制限部材)は、塗布ローラ52(塗布部材)の離間方向の移動を制限する制限位置(
図4(C)において実線で示す位置である。)と、塗布ローラ52の離間方向の移動を制限しない制限解除位置(
図4(C)において破線で示す位置である。)と、の間を移動可能に構成されている。
詳しくは、塗布装置50には、ストッパ65(制限部材)を制限位置に向けて付勢する付勢体としての引張スプリング67と、引張スプリング67(付勢体)による付勢に抗するようにストッパ65を制限解除位置に向けて移動させる移動機構としてのソレノイド66と、が設けられている。さらに具体的に、引張スプリング67は、その一端側がストッパ65の一端側に接続され、その他端側が本体筐体に接続されている。また、ソレノイド66は、そのプランジャがストッパ65の他端側に接続されている。なお、ソレノイド66は、
図5、
図6に示すサブユニット110の側板112に固定保持されている。
【0032】
このような構成により、ソレノイド66に電圧が印加されない状態では、ソレノイド66によるプランジャの吸引が生じないため、引張スプリング67の付勢によって、ストッパ65は、塗布ローラ52の軸部52aに当接する位置(制限位置)まで、
図4の右方に移動することになる。このとき、ストッパ65は、先に説明したように塗布ローラ52の離間方向の移動を制限する制限部材として機能することになる。
これに対して、ソレノイド66に電圧が印加されると、ソレノイド66によるプランジャの吸引が生じるため、引張スプリング67の付勢に抗するように、ストッパ65は、塗布ローラ52に当接しない位置(制限解除位置)まで、
図4の左方に移動することになる。このとき、ストッパ65は、先に説明したように塗布ローラ52の離間方向の移動を制限する制限部材としては機能しないことになる。このような状態は、塗布工程がおこなわれない場合などで、塗布ローラ52を脱圧したいときに有用である。具体的に、本実施の形態では、塗布装置50による塗布工程がおこなわれないときに、ソレノイド66に電圧を印加して、ストッパ65を制限解除位置に移動した後に、加圧機構61~64によって、加圧ローラ5を離間位置(塗布ローラ52から離れる位置である。)に移動している。
このような制御をおこなうことで、加圧ローラ57と塗布ローラ52とが常に圧接している場合に比べて、加圧ローラ57と塗布ローラ52とに弾性変形が生じる不具合などを軽減することができる。
塗布ローラ52の軸部52aにストッパ65を当接させる構成とすることで、軸部52a以外の別部材を設けて、この別部材にストッパ65を当接させるような構成に比べて、簡易な構成で塗布ローラ52の離間方向の移動を制限することができる。
【0033】
ここで、本実施の形態において、ニップ(塗布ニップ)に進入するシートPの厚みに応じて、ストッパ65(制限部材)が制限位置と制限解除位置とのうちいずれかの位置に移動するように、ソレノイド66(移動手段)を制御することもできる。
詳しくは、先に
図7を用いて説明したように、シートPの厚みが薄いときには、シートPの厚みが厚いときに比べて、塗布ローラ52の変位が少なく、ストッパ65によって離間方向の移動を制限する必要があまりない。したがって、シートPの厚みが薄いときには、ストッパ65が制限解除位置に移動するようにソレノイド66に電圧を印加して、シートPの厚みが厚いときには、ストッパ65が制限位置に移動するようにソレノイド66への電圧印加をおこなわない。
これにより、ストッパ65と塗布ローラ52との当接によってダメージが生じる頻度を少なくすることができる。
なお、このような制御をおこなうときに、ニップに進入するシートPの厚さを直接的に検知する検知手段として、ニップの上流側のシート搬送経路に設置した測距センサなどのシート厚検知センサを用いることができる。また、ニップに進入するシートPの厚さを間接的に検知する検知手段として、画像形成システム100の外装部に設置された操作表示パネル40(
図1参照)を用いて、ユーザーによって操作表示パネル40に入力されたシートPに関する情報からシートPの厚さを間接的に検知することもできる。そして、検知手段によって検知されたシートPの厚みが所定値以下である場合に、ソレノイド66に電圧を印加する。
【0034】
ここで、本実施の形態における塗布装置主部51(塗布装置50)は、
図5(A)、
図6に示すサブユニット110が着脱可能に設置されている。
サブユニット110は、塗布ローラ52と中間ローラ53とが回転可能に保持されていて、汲み上げローラ54などが回転可能に保持された本体筐体(メインユニット)に対して着脱可能に設置されている。詳しくは、サブユニット110の筐体は、2つの側板112と、2つの側板112の間に設置されたステー111と、で構成されている。2つの側板112には、それぞれ、位置決め穴部112aと、U字状の切欠き部112b(加圧ローラ57に対向する側が切欠かれている。)と、が形成されている。そして、サブユニット110において、中間ローラ53は、2つの側板112の位置決め穴部112aに軸受を介して回転可能に保持されている。また、サブユニット110において、塗布ローラ52は、2つの側板112の切欠き部112bに軸受を介して回転可能かつ上下動可能に保持されている。
【0035】
このように、塗布装置主部51(塗布装置50)の一部をサブユニット化することで、塗布ローラ52や中間ローラ53などのメンテナンスや交換をおこなうときの作業性が向上する。
また、本実施の形態では、薄いシートP(薄紙)の塗布ニップにおける分離性を向上するために、外径が比較的小さくて曲率分離が可能な塗布ローラ52を用いている。そして、そのような小径の塗布ローラ52が撓みにくいように、荷重方向(上下方向)に移動可能に構成している。特に、サブユニット110がサービスパーツとして長期間保管されるような場合であっても、塗布ローラ52には、中間ローラ53との大きな当接圧がかからないことになるため、塗布ローラ52が撓みにくくなる(弾性歪みが生じにくくなる)。
また、本実施の形態において、固定部材としての中間ローラ53は、位置決め穴部112aにガタなく保持(位置決め)されることが好ましい。しかし、位置決め穴部112aに対するガタがまったくないように設定してしまうと、サブユニット110に対して中間ローラ53を着脱しにくくなってしまう。そのため、先に説明した中間ローラ53の機能が満足される範囲(塗布量の大きなバラツキなどが生じない範囲)で、固定部材としての中間ローラ53を、位置決め穴部112aに多少のガタがある状態で保持してもよい。本願明細書等では、このようにガタがある場合にも、中間ローラ53が固定部材として機能しているものと定義する。
【0036】
また、
図6を参照して、本実施の形態において、サブユニット110の2つの側板112には、それぞれ、ストッパ65、ソレノイド66、引張スプリング67が着脱可能(交換可能)に設置されている(
図5(A)では、図示を省略している。)。
そのため、ストッパ65、ソレノイド66、引張スプリング67のメンテナンスや交換をおこなうときの作業性も向上する。
【0037】
<変形例>
図8に示すように、変形例における塗布装置50(塗布装置主部51)は、塗布部材としての塗布ローラ52、当接部材としての汲み上げローラ54、加圧部材としての加圧ローラ57、貯留部55、加圧機構58、68、75、などで構成されている。
このように、変形例における塗布装置50には、
図3のもののように中間ローラ53が設置されておらず、汲み上げローラ54から塗布ローラ52に直接的に塗布液G(塗布剤)が供給されることになる。すなわち、変形例においては、汲み上げローラ54が、塗布ローラ52が加圧ローラ57に当接するニップ(塗布ニップ)とは異なる位置で塗布ローラ52に当接する当接部材として機能することになる。また、汲み上げローラ54は、上下方向に移動することなく、
図8の固定位置に設置されている固定部材としても機能している。
【0038】
ここで、変形例における加圧機構は、
図8に示すように、押えローラ58、付勢部材としての加圧アーム68、圧縮スプリング75、などで構成されている。
押えローラ58は、加圧ローラ57を上方から押圧して、塗布ローラ52に対する加圧ローラ57の加圧力を付与するローラ部材である。
加圧アーム68は、回転軸68a(回転中心)を中心に回転可能に、本体筐体に保持されている。また、加圧アーム68は、その端部に圧縮スプリング75の一端側が接続されていて、その端部と回転軸68aとの間に押えローラ58が回転可能に保持されている。圧縮スプリング75の他端側は、本体筐体に接続されている。このような構成により、加圧機構58、68、75によって、加圧ローラ57が塗布ローラ52に圧接することになる。したがって、加圧アーム68は、加圧ローラ57(加圧部材)を塗布ローラ52(塗布部材)に向けて付勢する付勢部材として機能しているとも言える。
なお、変形例における加圧機構58、68、75も、
図3のもののように、モータなどの駆動手段によって回転駆動するように構成することが好ましい。具体例としては、回転軸68aに直接的にモータを接続してもよいし、加圧アーム68にカムを当接させてもよい。そして、そのように加圧機構58、68、75を駆動手段によって駆動可能に構成することで、
図3のものと同様に、ニップに進入するシートPの厚みに応じて加圧ローラ57の加圧力を調整する制御や、非塗布工程時に加圧ローラ57の脱圧をおこなう制御、などを実行することが可能になる。
【0039】
ここで、
図8に示すように、変形例における付勢部材としての加圧アーム68には、汲み上げローラ54(当接部材)に対する塗布ローラ52(塗布部材)の離間方向の移動を制限する制限部材としてのストッパ部69(アーム状ストッパ部)が支持されている。すなわち、ストッパ部69は、塗布ローラ52の、汲み上げローラ54(当接部材)から離間する離間方向への移動を制限する制限部材として機能する。
詳しくは、変形例において、ストッパ部69は、加圧アーム68に一体的に形成されていて、回転軸68aから塗布ローラ52に向けて延在するようにアーム状に形成されている。そして、加圧アーム68のストッパ部69(制限部材)は、塗布ローラ52の軸部52a(又は、軸部52aを回転可能に保持する軸受)に当接して塗布ローラ52の離間方向(上方向)の移動を制限する。すなわち、塗布ローラ52は無制限に離間方向(上方向)に移動するのではなくて、ストッパ65との当接によって、その移動(移動量)が制限される(移動しにくくなる)。
このようにストッパ部69(制限部材)を設けることで、塗布ローラ52と加圧ローラ57とのニップにシートPが進入した瞬間に、加圧ローラ57がシートPの厚み以上に跳ね上がってしまい、塗布ローラ52も上方に変位してしまう現象を軽減することができる。したがって、変形例においても、塗布ローラ52によってシートPに塗布される塗布液の量にバラツキ(塗布ムラ)が生じる不具合が軽減されることになる。
なお、変形例においては、制限部材としてのストッパ部69を付勢部材としての加圧アーム68と同部品として一体的に成形したが、制限部材としてのストッパ部69を付勢部材としての加圧アーム68とは別部品として加圧アーム68にボルト締結などによって接合することもできる。
【0040】
ここで、変形例において、加圧アーム68(付勢部材)は、ニップ(塗布ニップ)に進入するシートPの厚みに応じて、その姿勢が変化する。具体的に、
図8(B)に示すように厚いシートPがニップに進入したときには、
図8(A)に示すように薄いシートPがニップに進入したときに比べて、シートPによる加圧ローラ57の押し上げが大きくなって、加圧アーム68が回転軸68aを中心にして
図8の反時計方向に回転する。
このとき、ストッパ部69(制限部材)は、その姿勢が加圧アーム68(付勢部材)の姿勢の変化にともない変化しても、塗布ローラ52(塗布部材)が離間方向に変位しないように塗布ローラ52に直接的又は間接的に当接している。具体的に、
図8(A)から
図8(B)に示すように、ストッパ部69が加圧アーム68とともに回転軸68aを中心にして回転しても、ストッパ部69は、塗布ローラ52の軸部52aに当接して、塗布ローラ52の上方への移動を制限している。
さらに詳しくは、
図8に示すように、ストッパ部69(制限部材)は、回転軸68aに直交する断面でみたときに、加圧アーム68とともに回転軸68aを中心に回転しても、塗布ローラ52に直接的又は間接的に当接する当接面69aから回転軸68aまでの距離Hが略一定になるように構成されている。
具体的に、ストッパ部69(制限部材)は、回転軸68aに直交する断面でみたときに、塗布ローラ52に直接的又は間接的に当接する当接面69aが、回転軸68aからの距離Hが略一定となるように略円弧状に形成されている。
このような構成により、ストッパ部69が加圧アーム68とともに回転軸68aを中心にして回転しても、ストッパ部69によって、絶対的な制限位置が変化することなく、塗布ローラ52の上方への移動が制限されることになる。
【0041】
ここで、変形例において、ストッパ部69(制限部材)は、塗布ローラ52(塗布部材)に直接的又は間接的に当接して塗布ローラ52の離間方向の移動を制限する当接面69aと、塗布ローラ52に直接的又は間接的に当接せずに塗布ローラ52の離間方向の移動を制限しないように当接面69aから切り欠かれた切欠き部69bと、が形成されている。
詳しくは、切欠き部69bは、当接面69aに対して、加圧アーム68の脱圧回転方向(反時計方向の回転方向)の上流側に形成されている。また、切欠き部69bは、
図9に示すように、塗布ローラ52の軸部52aに対向しても軸部52aに当接しないように、回転軸68aからの距離が、回転軸68aから当接面69aまでの距離H(
図8参照)よりも短くなるように形成されている。
したがって、
図9に示すように、切欠き部69bが塗布ローラ52の軸部52aに対向した状態であるとき(回転軸68aと軸部52aとの間に切欠き部69bが介在するときである。)には、ストッパ部69は制限部材として機能しないことになる。このような状態は、塗布工程がおこなわれない場合などで、塗布ローラ52を脱圧したいときに有用である。具体的に、変形例では、塗布装置50による塗布工程がおこなわれないときに、先に説明した駆動手段によって加圧アーム68を
図9の位置に回転させて、加圧ローラ57と塗布ローラ52との脱圧をおこなうことになる。このような制御をおこなうことで、加圧ローラ57と塗布ローラ52とが常に圧接している場合に比べて、加圧ローラ57と塗布ローラ52とに弾性変形が生じる不具合などを軽減することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態における塗布装置50(画像形成システム100)は、塗布液G(塗布剤)をシートに塗布する塗布ローラ52(塗布部材)と、塗布ローラ52に当接してニップ(塗布ニップ)を形成する移動可能な加圧ローラ57(加圧部材)と、ニップ(塗布ニップ)とは異なる位置で塗布ローラ52に当接する当接部材としての中間ローラ53(又は、汲み上げローラ54)と、塗布ローラ52の当接部材としての中間ローラ53(又は、汲み上げローラ54)から離間する離間方向への移動を制限するストッパ65(制限部材)と、が設けられている。
これにより、シートPに塗布される塗布液Gの量のバラツキを生じにくくすることができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1の前処理装置としての塗布装置50に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、シートに塗布剤を塗布する塗布装置であれば、すべての塗布装置に対して本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、塗布部材、加圧部材、当接部材として、それぞれローラ部材(塗布ローラ52、加圧ローラ57、中間ローラ53(又は、汲み上げローラ54))を用いた。これに対して、塗布部材、加圧部材、当接部材のうち少なくとも1つを所定方向に走行するベルト部材(無端ベルト)とすることもできる。
また、加圧ローラ57を塗布ローラ52に加圧する加圧機構は、実施の形態のものや、変形例のものに限定されることなく、例えば、加圧機構としてリンク機構を用いることもできる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0045】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙に限定されることなく、シート状の記録媒体のすべて、例えば、コート紙、ラベル紙、OHPシート、金属シート、等も含むものと定義する。
【0046】
1 画像形成装置(インクジェットプリンタ)、
40 操作表示パネル、
50 塗布装置、
51 塗布装置主部、
52 塗布ローラ(塗布部材)、
53 中間ローラ(当接部材、固定部材)、
54 汲み上げローラ、
55 貯留部(供給パン)、
57 加圧ローラ(加圧部材)、
61 第1加圧アーム(加圧機構)、
62 第2加圧アーム(加圧機構)、
63 カム(加圧機構)、
64 圧縮スプリング(加圧機構)、
65 ストッパ(制限部材、クサビ状部材)、
66 ソレノイド(移動機構)、
67 引張スプリング(付勢体)、
68 加圧アーム(付勢部材)、
68a 回転軸(回転中心)、
69 ストッパ部(制限部材)、
69a 当接面、 69b 切欠き部、
80 給紙装置、
85 乾燥装置、
90 排紙装置、
100 画像形成システム、
G 塗布液(塗布剤)、 P シート(被塗布体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】