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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240806BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/00 335
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141746
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037552
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 夏樹
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086270(JP,A)
【文献】特開2017-116921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161497(US,A1)
【文献】特開2017-068056(JP,A)
【文献】特開2017-072711(JP,A)
【文献】特開2018-010258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた無端状の定着ベルトと、
回転可能に設けられ、前記定着ベルトを外周側から加圧する加圧部材と、
前記定着ベルトを保持するベルト保持部材と、
前記加圧部材の長手方向の一方端部側に設けられ、前記加圧部材を回転駆動させる加圧ギヤと、
前記加圧部材の長手方向に沿って前記定着ベルトの内周側に配置された均熱部材と、
前記均熱部材を介して前記定着ベルトを内周側から押圧し、前記定着ベルトと前記加圧部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記均熱部材及び前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、を備える定着装置において、
前記均熱部材は、前記ニップ部と対向する第一面と、前記第一面の前記定着ベルト回転方向の上流側から屈曲して延在する第二面と、前記第一面の前記定着ベルト回転方向の下流側から屈曲して延在する第三面と、を有し、
少なくとも前記加圧ギヤが設けられた長手方向端部側に、前記第一面と前記第二面との境界である上流側境界部と、前記第一面と前記第三面との境界である下流側境界部とが、長手方向端部に向かうに従い前記第一面の短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部を有し、
前記上流側境界部及び前記下流側境界部の前記傾斜部における傾斜角が、それぞれ3度以下であり、
前記均熱部材の前記傾斜部における前記上流側境界部及び下流側境界部の傾斜形状が、直線状であり、
前記均熱部材の傾斜部における前記下流側境界部の傾斜が、前記上流側境界部の傾斜よりも大きいことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記均熱部材は、長手方向の両端側に、前記第一面と前記第二面との境界である上流側境界部と、前記第一面と前記第三面との境界である下流側境界部とが、長手方向端部に向かうに従い前記第一面の短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部を有し、
少なくとも前記加圧ギヤが設けられた長手方向端部側の前記上流側境界部及び前記下流側境界部の前記傾斜部における傾斜角が、それぞれ3度以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記均熱部材の傾斜部は、長手方向において前記加圧部材と対向する領域の外側にあることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記均熱部材の短手方向において、
前記下流側境界部の傾斜開始位置と長手方向端部との距離をL1、前記上流側境界部の傾斜開始位置と長手方向端部との距離をL2としたとき、L1>L2の関係を満たすことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記均熱部材の短手方向において、
前記下流側境界部の傾斜開始位置と長手方向端部との距離をL1、前記上流側境界部の傾斜開始位置と長手方向端部との距離をL2としたとき、L1及びL2がいずれも0.5mm以上であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記均熱部材が、アルミニウム及び銅のいずれかにより形成された部材であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより画像が形成され、画像転写方式または直接方式により未定着トナー画像が記録媒体(記録材シート、印刷紙、感光紙、静電記録紙等。以下、単に「用紙」ともいう)に形成される。未定着トナー画像を定着させるための定着装置として、ベルト方式の定着装置や、セラミックヒータを用いたサーフ定着(フィルム定着)の定着装置等が知られている。
【0003】
無端ベルトを用いたベルト方式の定着装置では、ウォームアップ時間(電源投入時など、常温状態から印刷可能な所定の温度(リロード温度)までに要する時間)や、ファーストプリント時間(印刷要求を受けた後、印刷準備を経て印字動作を行い排紙が完了するまでの時間)の短縮化が望まれている。また、画像形成装置の高速化に伴い、単位時間あたりの通紙枚数が増え、必要熱量が増大しているため、特に連続印刷のはじめに熱量が不足する(所謂、温度落ち込み)が問題となっている。
【0004】
上述の課題を解決するために、ベルト全体を温めることを可能にし、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消して、高生産の画像形成装置に搭載されても、良好な定着性を得ることができるようにした定着装置が提案されている。更なる省エネ性およびファーストプリントタイム向上のため、金属熱伝導体等を介さず無端ベルトを直接加熱する構成が提案されている。
【0005】
無端ベルトを直接加熱する構成では、加圧部材と対向する位置に、無端ベルトの内周面に接するようにニップを形成する部材が配置されている。
無端ベルトの内周面が加圧部材からの加圧力によってニップを形成する部材に対して圧接されながら摺動する構成では、駆動負荷が大きくなる傾向があり、経時で特に顕著となる。また、回転時に無端ベルトの内周面がニップを形成する部材のエッジ等に当接することにより損傷し、ベルトの破損や破断を招くおそれがあった。
【0006】
そこで、ニップを形成する部材を低摩擦特性の材料で構成したり、表面の摺動負荷をさらに低減するために潤滑剤を塗布することが知られている。
しかしながら、潤滑剤を塗布する態様においては、無端ベルト内周面でニップ部内へ進入できなかった潤滑剤が無端ベルト回転軸方向に沿って移動し、端部の開口部から漏れてしまうという課題があった。
【0007】
これに対し、特許文献1では、ニップ形成部材がベルト内周面に摺接する第一の面と、該第一の面におけるベルト回転方向の上流側端部側に配置され、第一の面に対して所定の角度をもつ第二の面と、第一の面と第二の面とを接続する曲げ部とを有し、第二の面、曲げ部、及びベルトの内周面で形成される空間に堆積する潤滑部材の量が、ベルトの回転軸方向におけるニップ形成部材の端部側よりも中央部側の方が多くなるように第一の面、第二の面、及び曲げ部を形成する技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、無端ベルトは加圧ローラ連れ回り回転するが、加圧ローラの回転軸にギヤを取り付けて加圧ローラを駆動させる駆動装置においては、駆動開始時に駆動力によって加圧ローラがニップ方向に引き込まれる引込力を受けることが知られている。
通常、加圧ローラの駆動は長手方向の片側において行われるため、引込力も片側に偏重して生じ、荷重とニップ幅に偏差が生じることにより異常画像が生じたり、装置の耐久性の低下が生じたりするという課題があった。
【0009】
特に、荷重偏差に起因して局所的に負荷が大きくなった部位では、無端ベルト内周面に配設された部材(ニップ形成に寄与する部材であって、均熱部材等を含む)のエッジが強く当たるため、繰り返しの起動により無端ベルトの破損や破断を招くおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、回転駆動開始時に生じる荷重偏差による影響を低減し、無端ベルト状の定着部材の内周面の損傷や破断の発生を防止可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、回転可能に設けられた無端状の定着ベルトと、回転可能に設けられ、前記定着ベルトを外周側から加圧する加圧部材と、前記定着ベルトを保持するベルト保持部材と、前記加圧部材の長手方向の一方端部側に設けられ、前記加圧部材を回転駆動させる加圧ギヤと、前記加圧部材の長手方向に沿って前記定着ベルトの内周側に配置された均熱部材と、前記均熱部材を介して前記定着ベルトを内周側から押圧し、前記定着ベルトと前記加圧部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記均熱部材及び前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、を備える定着装置において、前記均熱部材は、前記ニップ部と対向する第一面と、前記第一面の前記定着ベルト回転方向の上流側から屈曲して延在する第二面と、前記第一面の前記定着ベルト回転方向の下流側から屈曲して延在する第三面と、を有し、少なくとも前記加圧ギヤが設けられた長手方向端部側に、前記第一面と前記第二面との境界である上流側境界部と、前記第一面と前記第三面との境界である下流側境界部とが、長手方向端部に向かうに従い前記第一面の短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部を有し、前記上流側境界部及び前記下流側境界部の前記傾斜部における傾斜角が、それぞれ3 度以下であり、前記均熱部材の前記傾斜部における前記上流側境界部及び下流側境界部の傾斜形状が、直線状であり、前記均熱部材の傾斜部における前記下流側境界部の傾斜が、前記上流側境界部の傾斜よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転駆動開始時に生じる荷重偏差による影響を低減し、無端ベルト状の定着部材の内周面の損傷や破断の発生を防止可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】定着装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。
図2】定着装置の一実施形態の構成を示す断面図である。
図3】定着装置の駆動機構の構成を示す斜視図(A)及び断面模式図(B)である。
図4】定着装置における定着ベルトへの負荷を説明図する図である。
図5】本発明に係る定着装置が備える均熱部材の一例を示す説明図である。
図6】均熱部材の駆動側の部分拡大図である。
図7】ベルト保持部材の説明図である。
図8】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
〔定着装置〕
本発明を適用可能な定着装置の例を図1及び図2に示す。
図1は定着装置の一実施形態の構成を示す斜視図であり、図2は断面図である。
図1及び図2に示す定着装置は、未定着画像Tを担持した記録媒体Pを搬送して、当該記録媒体Pに未定着画像Tを定着する定着装置であって、回転可能に設けられた無端状の定着ベルト1と、回転可能に設けられ、定着ベルト1を外周側から加圧する加圧部材3と、定着ベルト1を保持するベルト保持部材8と、加圧部材3の長手方向の一方端部側に設けられ、加圧部材3を回転駆動させる加圧ギヤ11と、加圧部材3の長手方向に沿って定着ベルト1の内周側に配置された均熱部材5と、均熱部材5を介して定着ベルト1を内周側から押圧し、定着ベルト1と加圧部材3との間にニップ部Nを形成するニップ形成部材6と、均熱部材5及びニップ形成部材6を支持する支持部材7と、を備える。
図1中、加圧部材3の長手方向において加圧ギヤ11が設けられた一方端部側を駆動側R1で示し、他方端部側を非駆動側R0で示している。
【0016】
また、図2に示すように、定着ベルト1の内側には、定着ベルト1を加熱する熱源2を備えている。熱源2としては、例えば、ハロゲンヒータ、IHヒータ、抵抗発熱体、及びカーボンヒータ等を用いることができる。
【0017】
均熱部材5及びニップ形成部材6は、いずれも定着ベルト1の長手方向(幅方向)に延び、ニップ部Nの形成に寄与する。
均熱部材5は、熱が局所的に留まることを防止し、積極的に長手方向に熱を移動させて長手方向の温度不均一性を低減するために設けられている。
本実施形態では、均熱部材5の加圧部材3と対向する面は、定着ベルト1に直接接触する面であり、ニップ形成面となる。
【0018】
均熱部材5は、ニップ形成部材6の定着ベルト1の内面に対向する面を覆うように嵌合されて一体化されている。均熱部材5とニップ形成部材6とを一体化する方法としては、爪などを設けて噛み合わせる方法や、接着等の手段を用いる方法等が挙げられる。また、位置決めのための位置決め部材を備えていることが好ましい。
【0019】
均熱部材5は、ニップ部Nと対向する第一面5aと、第一面5aの定着ベルト1の回転方向の上流側から屈曲して延在する第二面5bと、第一面5aの定着ベルト1の回転方向の下流側から屈曲して延在する第三面5cと、を有している。
第一面5aと第二面5bとの境界である上流側境界部51と、第一面5aと第三面5cとの境界である下流側境界部52は、エッジが形成されないよう滑らかに連続した曲面として形成されていることが好ましい。
なお、第一面5aのニップ形成面側の平面視における上流側端部は上流側境界部51に相当し、下流側端部は下流側境界部52に相当する。
【0020】
図2の例ではニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。ニップ部Nの形状を凹形状とすることにより、記録媒体(用紙)先端の排出方向が加圧ローラ寄りになるため、分離性が向上し、ジャムの発生が抑制される。
【0021】
定着ベルト1はニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)とする。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があっても良い。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0022】
定着ベルト1の内部にはニップ部を支持するための支持部材7(ステー)を設け、加圧部材3により圧力を受ける均熱部材5及びニップ形成部材6の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。この支持部材7は両端部でベルト保持部材8(フランジ)に保持固定され位置決めされている。
また、熱源2と支持部材7の間に反射部材9を備え、熱源2からの輻射熱などにより支持部材7が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材9を備える代わりに支持部材7表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能となる。
【0023】
加圧部材(以下、「加圧ローラ」ともいう)3は芯金3a及び弾性層4を備えている。また、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)を有していることが好ましい。
加圧ローラ3は長手方向一方端部側(駆動側R1)に加圧ギヤ11を備え、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。
加圧ローラ3の駆動については後述する。
【0024】
加圧ローラ3はスプリングなどにより定着ベルト1側に押し付けられており、弾性層4が押し潰されて変形することにより、所定の幅でニップ部を形成する。
加圧ローラ3は中空のローラであっても良く、加圧ローラ3にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性層4の材料としてはソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ3内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト1の熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0025】
加圧ローラ3が駆動源により回転し、ニップ部Nで定着ベルト1に駆動力が伝達されることにより定着ベルト1が連れまわり回転する。
定着ベルト1はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部N以外では両端部でベルト保持部材8(フランジ)にガイドされ、走行する。
このような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
【0026】
図3は、図1に示す駆動側R1の駆動機構の構成を示す図であり図3(A)は分解斜視図、図3(B)は断面模式図である。
図3に示すように、本実施形態における加圧ローラ3の駆動機構は、モータ16と、モータ16からの駆動力を伝えるための1組のアイドラギヤ(第1アイドラギヤ14、第2アイドラギヤ15)と、加圧ギヤ11と、加圧ブラケット12と、を有している。
【0027】
加圧ギヤ11は、加圧ローラ3の回転軸に設置されていて、加圧ローラ3とともに回転する平歯車またはハスバ歯車である。
第1アイドラギヤ14は、加圧ギヤ11に噛合する遊び車であって、加圧ブラケット12に設けられた軸12aを回転中心に挿通されて、回転可能に保持される。
第2アイドラギヤ15は、第1アイドラギヤ14と噛合するとともに、加圧ギヤ11が第1アイドラギヤ14と噛合することで、モータ16からの駆動力を加圧ギヤ11へと伝達するためのギヤセットを構成する遊び車である。
一例として、モータ16が図3(B)に示す反時計回りに回転するとき、第2アイドラギヤ15は時計回り、第1アイドラギヤ14が反時計回り、加圧ギヤ11が時計回りとなって、加圧ローラ3も時計回りで回転することとなる。
【0028】
モータ16の回転によって加圧ギヤ11に駆動力F1が印加されると、加圧ローラ3をニップ方向に引き込むような引込力F2が生じることが知られている。
こうした引込力F2は、非駆動側R0においては非常に弱いので、引込力F2により加圧ローラ3の駆動側R1(加圧ギヤ11側)のみがニップ方向に引き込まれるような力を受けることとなる。
図3(B)中、軸が受ける力を実線の矢印(F2、F4、F6)、ギヤが受ける力を破線の矢印(F1、F3、F5)で示している。
【0029】
図4に基づき、定着ベルト1への荷重の不均一が生じるしくみを説明する。図4(A)は長手方向の上面図、図4(B)は駆動側R1の部分拡大図である。
まず、加圧ローラ3は、加圧ギヤ11から引込力を受け、次に芯金3aに荷重がかかり、その後加圧ローラ3の駆動側R1がニップ方向に引き込まれる。非駆動側R0はそれより遅れて引き込まれる。これによりニップ幅やニップ荷重の不均一が発生し、摺動負荷(トルク)の増大や線速変動による搬送不良が発生するおそれがある。
特に、駆動側R1において、荷重の不均一に起因して局所的に負荷が大きくなった部位では、定着ベルト1が、均熱部材5のエッジや突出した屈曲部等と点接触する部位が生じ、当該部位において局所的に強く摺擦されることを繰り返すことにより破損が生じるおそれがある。
【0030】
そこで、長手方向端部側において定着ベルト1の内周面と点接触となる部位が生じず、定着ベルト1の内周面への負荷を低減し、破損を防止することができる均熱部材5の形状を検討した。まず、長手方向端部に向かうに従って定着ベルト1の内周面から離間するように、均熱部材5の短手方向の幅を絞る方向に傾斜を有する形状とし、その傾斜開始位置と傾斜角について検討した。
【0031】
(A)傾斜開始位置
図5(A)は、均熱部材5の加圧ローラ3と対向する面(第一面5a)の平面図である。
図5(A)中、長手方向の中央Cから傾斜開始位置Aまでの距離をX、長手方向の中央Cから加圧ローラ3の長手方向端部が当接する位置Bまでの距離をYで示している。
図5(B)は、均熱部材5の断面図である。図5(B)に示すように、均熱部材5の第一面5aのニップ面側向の平面視における上流側端部は上流側境界部51(第一面5aと第二面5bとの境界)であり、下流側端部は下流側境界部52(第一面5aと第三面5cとの境界)である。
【0032】
(1)X<Yとした場合:長手方向において、傾斜開始位置を加圧ローラ3の端部よりも中央側に設けた場合は、定着ベルト1への張力が大きくなり、耐久性が低下する。また傾斜開始位置のコブが定着ベルト1の内周面に当接すると点接触となるため、定着ベルト1の破損につながる。
(2)X>Yとした場合:加圧ローラ3の長手方向の長さが短縮され、形成されるニップ部も短縮されるため、画像品質が低下するおそれがある。
以上の点から、長手方向の中央から傾斜開始位置までの距離Xと長手方向の中央から加圧ローラ3の長手方向端部が当接する位置までの距離Yを一致させる(X=Yとする)ことが好ましい。
【0033】
(B)傾斜角
図6は、均熱部材5の駆動側R1の部分拡大図である。
図6(A)及び図6(B)に示すように、第一面5aの上流側端部である上流側境界部51、下流側端部である下流側境界部52は、長手方向端部に向かうに従い第一面5aの短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部(51a、52a)を有している。
傾斜部における好適な傾斜角度を検討するため、以下に示す角度にて所定回数駆動を繰り返した場合の定着ベルト1の破損の有無を観察した。なお、下記の傾斜角θは傾斜開始位置(51b、52b)における傾斜角(θ1、θ2に相当)である。
【0034】
(1)θ=0°:傾斜を設けない場合、均熱部材5の端部側において定着ベルト1の破損が生じた。
(2)0°<θ≦3°:傾斜角が3°以下の場合、定着ベルト1の破損はみられなかった。
(3)3°<θ:傾斜角が3°を越える場合、加圧ローラ3の端部と当接する位置において定着ベルト1の破損が生じた。
以上の点から、傾斜部の傾斜角は3°以下であることが好ましい。
【0035】
定着ベルト1は、ベルト保持部材8により保持されており(図1及び図4参照)、ベルト保持部材8は図7に示すように、ウイング形状8aを有している。
ベルト保持部材8に保持されて回転する定着ベルト1は、加圧ローラ3との当接部を過ぎた下流側において、もとの円筒形状に戻ろうとする。ここで、傾斜部が設けられていないと、定着ベルト1は均熱部材5との当接部位とウイング形状8aとの当接部位の双方から張力を受け、負荷が大きくなってしまう。
これに対し、傾斜部を設けることにより、定着ベルト1が均熱部材5から離間し、当接しない部位を設け、かかる負荷を低減することができる。
定着ベルト1と均熱部材5との下流側における離間距離を、図6中L1で示す。
【0036】
離間距離L1を維持しつつ、さらに定着ベルト1に対する負荷を低減する方法として、均熱部材5の厚さ方向の形状を変更することも考えられる。しかしながら、厚みの変化によりニップ形成に対する影響が生じることは好ましくない。そこで、厚みを減じる傾斜を設ける場合は、加圧ローラ3との当接領域の外側において、傾斜開始位置の傾斜角度を1°以下とし、長手方向端部に向かって断面が2次曲線状の形状とすることが好ましい。
なお、ウイング形状8aによる負荷を受けない上流側の離間距離L2は、下流側の離間距離L1よりも小さくてもよい。
【0037】
以上の要素を満たす均熱部材5を備えることにより、回転駆動開始時に生じる荷重偏差による影響を低減し、定着ベルト1の内周面の損傷や破断の発生を防止することができる。
本発明に係る定着装置は、図1及び図2に示すように、回転可能に設けられた無端状の定着ベルト1と、回転可能に設けられ、定着ベルト1を外周側から加圧する加圧部材(加圧ローラ)3と、定着ベルト1を保持するベルト保持部材8と、加圧部材3の長手方向の一方端部側に設けられ、加圧部材3を回転駆動させる加圧ギヤ11と、加圧部材3の長手方向に沿って定着ベルト1の内周側に配置された均熱部材5と、均熱部材5を介して定着ベルト1を内周側から押圧し、定着ベルト1と加圧部材3との間にニップ部Nを形成するニップ形成部材6と、均熱部材5及びニップ形成部材6を支持する支持部材7と、を備える。均熱部材5は、ニップ部Nと対向する第一面5aと、第一面5aの定着ベルト回転方向の上流側端部から屈曲して延在する第二面5bと、第一面5aの定着ベルト回転方向の下流側端部から屈曲して延在する第三面5cと、を有する。
そして、図5及び図6に示すように、少なくとも加圧ギヤ11が設けられた長手方向端部側(駆動側R1)に、第一面5aと第二面5bとの境界である上流側境界部51と、第一面5aと第三面5bとの境界である下流側境界部52とが、長手方向端部に向かうに従い第一面5aの短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部(51a、52a)を有し、上流側境界部51及び下流側境界部52の傾斜部(51a、52a)における傾斜角(θ1、θ2)が、それぞれ3度以下である。
【0038】
均熱部材5の上流側境界部51と下流側境界部52は、エッジが形成されないよう滑らかに連続した曲面として形成されている。なお、図5及び図6に示すように、第一面5aの長手方向の平面視における上流側端部は上流側境界部51に相当し、下流側端部は下流側境界部52に相当する。
【0039】
なお、均熱部材5は、長手方向の両端側(駆動側R1及び非駆動側R0)に、第一面5aと第二面5bとの境界である上流側境界部51と、第一面5aと第三面5bとの境界である下流側境界部52とが、長手方向端部に向かうに従い第一面5aの短手方向の幅が短縮される方向に傾斜する傾斜部(51a、52a)を有し、少なくとも加圧ギヤ11が設けられた長手方向端部側(駆動側R1)の上流側境界部51及び下流側境界部52の傾斜部(51a、52a)における傾斜角(θ1、θ2)が、それぞれ3度以下であることが好ましい。
本実施形態の定着装置が備える均熱部材5は、両端側(駆動側R1及び非駆動側R0)に複雑な形状加工をすることなく、駆動側R1のみ厳しく管理することにより、引込力に起因した局所的な負荷を抑えることができ、加工費の低減を実現し、装置のコスト低減を実現することができる。
【0040】
均熱部材5の傾斜部は、長手方向において加圧部材3と対向する領域の外側にあることが好ましい。
また、均熱部材5は、少なくともエッジや突出した屈曲部等の変曲点が定着ベルト1の内周側と点接触しないことが好ましく、傾斜部において定着ベルト1の内周側と当接しないことがより好ましい。
これにより、回転駆動開始時における定着ベルト1への負荷が低減され、定着ベルト1の内周面における均熱部材5との摺動による破損を防ぐことができる。
【0041】
均熱部材5の傾斜部における上流側境界部51及び下流側境界部52の傾斜形状は、図6(A)に示すような直線状とすることができ、また図6(B)に示すような2次曲線状とすることができる。
傾斜起点における傾斜角度を小さくし、さらに定着ベルト1との離間距離を確保することができるという観点から、2次曲線状とすることが好ましい。
【0042】
図7に示したように、定着ベルト1の回転方向下流側において、定着ベルト1は均熱部材5との当接部位とウイング形状8aとの当接部位の双方から張力を受け、上流側よりも負荷が大きくなってしまう。
そのため、図6に示すように、均熱部材5の傾斜部における下流側境界部52の傾斜が、上流側境界部51の傾斜よりも大きいことが好ましい。
これにより、下流側における定着ベルト1にかかる張力を低減し、負荷の歪みを小さくすることができ、定着ベルト1の寿命が短くなるのを防ぐことができる。
【0043】
また、均熱部材5の短手方向において、下流側境界部52の傾斜開始位置52bと長手方向端部との距離をL1、上流側境界部51の傾斜開始位置51bと長手方向端部との距離をL2としたとき、L1>L2の関係を満たすことが好ましい。
これにより、均熱部材5の端部と定着ベルト1の内周面との干渉を防ぐことができる。
さらに、均熱部材5の短手方向において、L1及びL2がいずれも0.5mm以上であることが好ましい。
離間距離として0.5mm以上を確保することにより、均熱部材5の端部と定着ベルト1の内周面との干渉をより確実に防ぐことができる。
【0044】
例えば、図6中L3で示す長さ(加圧ローラ3の端部から均熱部材5の端部までの距離)が短い場合であっても、傾斜角(θ1、θ2)を3度以内としたまま、傾斜形状を2次曲線状とすることによりL1及びL2を0.5mm以上確保することが好ましい。
【0045】
均熱部材5は、熱伝導性が高く、かつ加工が容易な材料からなることが好ましく、例えば、アルミニウム及び銅のいずれかにより形成された部材であることが好ましい。
このような均熱部材5を備えた定着部材は、高CPM(定着温度が高いマシン)にも搭載することでき、高生産性を実現することができる。
【0046】
〔画像形成装置〕
本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置としての電子写真方式のプリンタの概略構成図を図8に示す。
図8に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0047】
図8において画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
図8に示す構成の画像形成装置100は、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)21に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる記録紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0048】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、いま、ブラック画像形成を行う感光体ドラム41Bkを対象として説明すると、感光体ドラム41Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置42Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ32Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、光書込装置68が用いられる。
【0049】
転写ベルト21に対する重畳転写は、転写ベルト21がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに形成された可視像が、転写ベルト21の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト21を挟んで各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対向して配設された1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0050】
各感光体ドラム感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0051】
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト21及び1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkを備えた転写ベルトユニット20と、転写ベルト21に対向して配設され転写ベルト21に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ65と、転写ベルト21に対向して配設され転写ベルト21上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置23と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置68とを有している。
【0052】
光書込装置68は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備しており、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である)を出射して感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに静電潜像を形成する構成とされている。
【0053】
画像形成装置100は、感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkと転写ベルト21との間に向けて搬送される用紙Pを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた用紙Pを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkと転写ベルト21との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対64と、用紙Pの先端がレジストローラ対64に到達したことを検知する図示しないセンサとが設けられている。
【0054】
画像形成装置100は、トナー像が転写された用紙Pにトナー像を定着させるための本発明に係る定着装置10を備えている。
また、画像形成装置100は、定着済みの用紙Pを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ67と、画像形成装置100の本体上部に配設されて排紙ローラ67により画像形成装置100の本体外部に排出された用紙Pを積載する排紙トレイ69と、排紙トレイ69の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル90Y、90C、90M、90Bkと、を備えている。
【0055】
転写ベルトユニット20は、転写ベルト21、1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkの他に、転写ベルト21が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト21に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット20と、1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkと、2次転写ローラ65と、クリーニング装置23とで転写装置71が構成されている。
【0056】
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の用紙Pの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ63を有しており、給送ローラ63が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の用紙Pをレジストローラ対64に向けて給送するようになっている。
【0057】
転写装置71に装備されているクリーニング装置23は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト21に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、転写ベルト21上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト21をクリーニングするようになっている。
【0058】
クリーニング装置23はまた転写ベルト21から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。
【符号の説明】
【0059】
1 定着ベルト
2 熱源
3 加圧部材(加圧ローラ)
4 弾性体
5 均熱部材
5a 第一面
5b 第二面
5c 第三面
6 ニップ形成部材
7 支持部材(ステー)
8 ベルト保持部材
8a 筒部
10 定着装置
11 駆動ギヤ
12 加熱ブラケット
14,15 アイドラギヤ
16 モータ
51 上流側境界部
52 下流側境界部
100 画像形成装置
D1 通紙方向(用紙搬送方向)
N ニップ部
P 記録媒体(用紙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【文献】特開2018-010258号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8