(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240806BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 525
G03G21/00 530
(21)【出願番号】P 2020144730
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 直毅
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-352193(JP,A)
【文献】特開2016-075781(JP,A)
【文献】特開2012-014102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側に配設されるニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接して定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、を
定着装置の筐体内に備え、
記録媒体が搬入される入口開口部に、前記記録媒体を前記ニップ部へ導く入口ガイド部材を有し、前記ニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を搬送して、当該記録媒体に未定着画像を定着する定着装置において、
前記筐体の内部に気流を発生させる気流発生手段と、前記気流を前記入口開口部に向けて案内する導風部材と、をさらに備え、
前記入口開口部に、前記記録媒体の搬送方向と異なる方向に空気の流れを生成
し、
前記導風部材は、前記気流発生手段で生じた前記気流を、前記定着ベルトと接触させることなく前記入口開口部に向けて案内することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側に配設されるニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接して定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、を
定着装置の筐体内に備え、
記録媒体が搬入される入口開口部に、前記記録媒体を前記ニップ部へ導く入口ガイド部材を有し、前記ニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を搬送して、当該記録媒体に未定着画像を定着する定着装置において、
前記筐体の内部に気流を発生させる気流発生手段と、前記気流を前記入口開口部に向けて案内する導風部材と、
前記入口開口部の空気を吸引する吸気手段と、をさらに備え、
前記入口開口部に、前記記録媒体の搬送方向と異なる方向に空気の流れを生成
し、
前記入口ガイド部材は、搬送される前記記録媒体と対向する面に、長手方向に沿って設けられた複数の通気口を有し、
前記吸気手段は、前記通気口を介して前記入口開口部の空気を吸引することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記導風部材は、前記気流発生手段で生じた前記気流を、前記定着ベルトと接触させることなく前記入口開口部に向けて案内することを特徴とする請求項
2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記入口開口部に生成される空気の流れが、前記記録媒体の搬送方向と逆方向であることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着ベルトの温度を検知する温度検知手段を備え、
前記気流発生手段は、前記温度検知手段の背面から検知面へ向かう気流を発生させることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記気流発生手段に接続された気流案内手段を備え、前記気流案内手段の排気口が、前記温度検知手段の背面側に向けられていることを特徴とする請求項
5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記吸気手段は、少なくとも前記定着ベルトから隔離して配置されることを特徴とする請求項
2または3に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像形成装置に使用される定着装置として、例えば、内部に熱源を備えて回転する定着ローラと、当該定着ローラに押圧された状態で回転する加圧ローラとを有し、両ローラ間に形成されたニップ部に未定着トナー像が形成された記録媒体を通過させ、当該ニップ部で未定着トナー像を溶融して記録媒体上に定着させるものが知られている。また、定着部材の低熱容量化や記録媒体への熱伝達効率の改善を目的として、熱源を有する定着ローラの代わりに、無端状のベルト部材等を用いた定着回転体(定着ベルト、定着スリーブ)や加圧回転体を備えた定着装置も知られている。
【0003】
上述の定着装置において、入力トナー(感光体から飛散したトナーや、二次転写部での地汚れトナー等を含む)が定着回転体や加圧ローラの表面に付着し、残存したトナーが紙粉等の他の異物と混ざって固着してしまうという課題があった。堆積した固着物は、成長すると黒ポチとなって記録媒体上に転写され、異常画像の発生や画像品質の低下をまねくおそれがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、定着部材または加圧部材に回転負荷を付与する回転負荷付与部材に与える回転負荷トルクを制御することにより、トナー固着による異常画像の発生を抑制する技術が提案されており、具体的には回転負荷付与部材に対して、0.1~0.6Nmの回転負荷を与える機構部を備える構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように定着部材と加圧部材の双方に駆動源を備え、両側駆動する構成は、部品点数の増加やコストアップとなり、また装置の大型化につながるという課題がある。
【0006】
一方、定着回転体が無端状のベルト部材で構成され、該ベルト部材が直接加熱される態様の定着装置において、ベルト部材は低熱容量化のために小径化された薄い部材からなるため、ベルト部材のクリーニング機構を設けることが困難である。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、低熱容量化された無端状の定着ベルトを備える構成において、クリーニング機構を設けることなく、ベルト表面のトナー汚れの固着を防止することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に配設されるニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記定着ベルトを介して前記ニップ形成部材と当接して定着ベルトとの間にニップ部を形成する対向回転体と、前記定着ベルトを加熱する加熱源と、を筐体内に備え、前記記録媒体が搬入される入口開口部に、前記記録媒体を前記ニップ部へ導く入口ガイド部材を有し、前記ニップ部に未定着画像を担持した記録媒体を搬送して、当該記録媒体に未定着画像を定着する定着装置において、前記筐体の内部に気流を発生させる気流発生手段と、前記気流を前記入口開口部に向けて案内する導風部材と、をさらに備え、前記入口開口部に、前記記録媒体の搬送方向と異なる方向に空気の流れを生成し、前記導風部材は、前記気流発生手段で生じた前記気流を、前記定着ベルトと接触させることなく前記入口開口部に向けて案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低熱容量化された無端状の定着ベルトを備える構成において、クリーニング機構を設けることなく、ベルト表面のトナー汚れの固着を防止することができる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】定着装置の一実施形態を示す要部概略構成図である。
【
図3】本発明に係る定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図5】入口ガイド部材を介した吸気を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
〔画像形成装置〕
本発明を電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、後述する本発明に係る定着装置を備えている。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお
図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
【0014】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
【0015】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0016】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0017】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0018】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
【0019】
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0020】
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙(以下、単に「用紙」ともいう)Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。ここで、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0021】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0022】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0023】
続いて、
図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0024】
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0025】
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写し切れなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。その後、図示しない除電装置によって各感光体5の表面が除電され、表面電位が初期化される。
【0026】
画像形成装置の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によってタイミングを計られて、二次転写ローラ36と二次転写バックアップローラ32との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
【0027】
その後、中間転写ベルト30の周回走行に伴って、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、上記二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
【0028】
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
【0029】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0030】
次に、本発明を適用することができる定着装置20の構成について
図2に基づき説明する。
図2に示す定着装置20は、回転可能な定着回転体としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた対向回転体としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源(以下、「ハロゲンヒータ」ともいう)23と、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材(ステー)25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する図示しない加圧手段等を備えている。
【0031】
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0032】
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22の表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
【0033】
図2に示す定着装置では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着回転体と対向回転体は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0034】
各ハロゲンヒータ23は、それぞれの両端部が定着装置20の側板(不図示)に固定されている。各ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、温度検知手段27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0035】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設され、支持部材(ステー)25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、支持部材25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、支持部材25を樹脂製とすることも可能である。
【0036】
また、ニップ形成部材24は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ニップ形成部材24には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。
【0037】
反射部材26は、支持部材25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。本実施形態では、反射部材26を支持部材25に固定している。また、反射部材26は、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23から支持部材25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱が支持部材25等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0038】
また、本実施形態のような反射部材26を設けずに、支持部材25のハロゲンヒータ23側の面を研磨又は塗装などの鏡面処理をし、反射面を形成してもよい。また、上記反射部材26又は支持部材25の反射面の反射率は、90%以上であることが望ましい。
ただ、支持部材25はその強度を確保するために形状や材質が自由に選択できないため、本実施形態のように反射部材26を別途設けた方が、形状や材質の選択の自重度が広がり、反射部材26と支持部材25はそれぞれの機能に特化することができる。また、反射部材26をハロゲンヒータ23と支持部材25との間に設けることにより、ハロゲンヒータ23に対する反射部材26の位置が近くなるので、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。
【0039】
また、光の反射による定着ベルト21の加熱効率をさらに向上させるには、反射部材26又は支持部材25の反射面の向きを検討する必要がある。例えば、反射部材26をハロゲンヒータ23を中心とする同心円状に配設した場合は、光がハロゲンヒータ23に向かって反射されるため、その分、加熱効率が低下してしまう。これに対し、反射部材26の一部又は全部を、ハロゲンヒータ23以外の方向で定着ベルト側へ光を反射する向きに配設した場合は、ハロゲンヒータ23の方向へ反射される光量が少なくなるため、反射光による加熱効率を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る定着装置20は、さらなる省エネ性及びファーストプリントタイムなどの向上のために、種々の構成上の工夫が施されている。
具体的には、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21をニップ部N以外の箇所において直接加熱できるようにしている(直接加熱方式)。本実施形態では、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の
図2の左側の部分の間に何も介在させないようにし、その部分においてハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21に直接与えるようにしている。
【0041】
また、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20~40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
【0042】
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20~40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではない。例えば、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。その場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも小さくなるため、ニップ部Nから排出される記録媒体が定着ベルト21から分離されやすくなる。
【0043】
本発明に係る定着装置の一実施形態の概略構成図を
図3に示す。
図3に示す定着装置は、
図1に示す画像形成装置1に対して所定の位置に配置される。また、定着ベルト21の内周面側の構成は
図2と同様である。
本実施形態の定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21の内側に配設されるニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材25と、定着ベルト21を介してニップ形成部材24と当接して定着ベルト21との間にニップ部Nを形成する対向回転体(加圧ローラ)22と、定着ベルト21を加熱する加熱源23と、を筐体40内に備え、記録媒体(用紙)Pが搬入される入口開口部41に、記録媒体Pをニップ部Nへ導く入口ガイド部材42を有し、ニップ部Nに未定着画像Tを担持した記録媒体Pを搬送して、当該記録媒体Pに未定着画像Tを定着する定着装置である。
【0044】
本実施形態の定着装置は、筐体40の内部に気流を発生させる気流発生手段(
図4参照)と、気流F2を入口開口部41に向けて案内する導風部材と、をさらに備え、入口開口部41に、記録媒体Pの搬送方向Dと異なる方向に空気の流れF3を生成する。
このような構成とすることにより、図中符号T1で模式的に示す飛散トナーの定着装置内への侵入を防ぐことができ、定着ベルト21表面のトナー汚れの固着を防止することができる。
【0045】
入口開口部41に生成される空気の流れF3の方向は、記録媒体Pの搬送方向Dと異なる方向であって、飛散トナーT1の侵入を防ぐことができる方向であれば限定されないが、記録媒体Pの搬送方向Dと逆方向であることがより好ましい。
【0046】
また、導風部材は、気流発生手段で生じた気流F1を入口開口部41に向けて案内することができる部材であれば特に限定されないが、気流F2を定着ベルト21と接触させることなく、すなわち定着ベルト21を冷却することなく入口開口部41に向けて案内する部材であることが好ましい。
導風部材としては、例えば、定着ベルト21に向かう気流を遮蔽する板状部材や、画成された流路を形成するような部材(パイプ状部材等)などが挙げられる。
【0047】
本実施形態の定着装置は、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段27を備えている。温度検知手段27としては、例えば、サーモパイル等が挙げられる。
温度検知手段27は、定着装置20に保持されていてもよいが、この場合、定着ベルト21と温度検知手段27との間に所定の距離を確保する必要があるため、定着装置が大型化してしまう。そのため、温度検知手段27を、定着装置が装着される画像形成装置本体に取り付け、定着装置外から定着ベルト21の温度を計測するように構成することが好ましい。
温度検知手段27を画像形成装置本体に取り付けることで、定着装置を画像形成装置本体から取り外す際に温度検知手段27が画像形成装置に残ることになって、部品交換の対象とならず、省資源となり、交換サービスを行う際のコストダウンにも寄与する。
【0048】
温度検知手段27を定着装置外側の画像形成装置本体に取り付ける場合、定着装置の筐体40に計測用開口44を設ける必要がある。
図2及び
図3中に矢印Dで示したとおり、用紙Pは定着装置20の下方から上方に向かって搬送される。用紙P上の未定着画像を定着させるために所定の温度に加熱されたニップ部Nを用紙Pが通過する際に、用紙Pに含まれる水分が放出される。また、他にもトナーに含まれるワックス成分なども放出される。
放出された水分やワックス成分がそのまま用紙Pとともに出口方向(上方)へ向かっていけば問題ないが、例えば定着ベルト21の回転に連れられて、定着ベルト21の回転方向、すなわちニップ部Nの下流側出口から温度検知手段27に向かう気流が発生することがある。すると、計測用開口44の隙間のために、放出された水分やワックス成分が温度検知手段27に向かって放出され、検知面27aに付着するおそれがある。検知面27aが汚染されることにより誤検知を生じる恐れがある。
【0049】
そこで、
図4に示すように、気流発生手段51は、温度検知手段27の背面から検知面27aへ向かう気流F1を発生させることが好ましい。
図4は、気流発生手段51の一例を示す説明図であり、温度検知手段27との位置関係を示したものである。
図4に示すように、気流発生手段51から気流案内手段(ダクト)52を設け、気流案内手段52の排気口を温度検知手段27の背面側であって、計測用開口44の隙間に向けて配置するのが好ましい。
気流案内手段52の排気口は温度検知手段27よりも前方であってもよい。
【0050】
このようにして、気流発生手段51から計測用開口44を通って、温度検知手段27の背面から検知面27aへ向かう気流F2が発生する。
この気流F2は、導風部材により入口開口部41に向けて案内される。
本実施形態の定着装置によれば、気流発生手段51により生成された気流によって、飛散トナーT1の定着装置内への侵入を防ぐとともに、温度検知手段の検知面27aの汚染も防止することができる。
【0051】
本実施形態の定着装置は、入口開口部41の空気を吸引する吸気手段50を備えている。
また、入口ガイド部材42は、
図5に示すように、搬送される記録媒体Pと対向する面42aに、長手方向Lに沿って設けられた複数の通気口42bを有し、吸気手段50は、通気口42bを介して入口開口部41の空気を吸引する。
図5中、吸気による空気の流れをF4で示している。
吸気手段50は、
図5に示すように入口ガイド部材42の記録媒体Pと対向する面42aと反対側の面から吸気を行う。
【0052】
吸気手段50を設け、通気口42bを介して入口開口部41の空気を吸引することにより、飛散トナーT1の定着装置内への侵入をより確実に防ぐことができ、定着ベルト21表面のトナー汚れの固着防止効果を高めることができる。
【0053】
なお、吸気手段50は、少なくとも定着ベルト21から隔離して配置されることが好ましい。具体的には、
図3に示すように吸気手段50は筐体40の外側に配置されることが好ましい。
また、吸気により生じる空気の流れF4は、定着ベルト21に接触せず、定着ベルト21を冷却しないことが好ましい。
【0054】
上述の構成により、本実施形態の定着装置は、定着ベルト21のクリーニングを行うための機構を設けることなく、感光体から飛散したトナーや二次転写部での地汚れトナー等を含む入力トナー量が多い態様であっても、飛散トナーT1の装置内への侵入を防ぐことができ、定着ベルト21の表面にトナー汚れが固着するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着ベルト
22 対向回転体(加圧ローラ)
27 温度検知手段
40 筐体
41 入口開口部
42 入口ガイド部材
42b 通気口
44 計測用開口
50 吸気手段
51 気流発生手段
52 気流案内手段
N ニップ部
P 記録媒体(用紙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】