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  • 特許-液晶調光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液晶調光素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240806BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240806BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/13 505
C08G73/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021551326
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036980
(87)【国際公開番号】W WO2021065933
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019182234
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/140278(WO,A1)
【文献】特開2008-106107(JP,A)
【文献】特開2003-114437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えた一対の基板の間に液晶組成物を含む液晶層を有し、且つ、前記一対の基板の少なくとも一方の基板が液晶を垂直に配向させるような液晶配向膜を備える、電圧印加により吸光状態を制御する液晶調光素子であって、
前記液晶組成物が、液晶及び二色性色素を含み、
前記液晶組成物における前記二色性色素の使用割合は、前記液晶100質量部に対して、0.01~10質量部であり、
前記液晶配向膜が、下記式[1-1]の構造を有するジアミンを原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを含む液晶配向処理剤から得られ、
前記ジアミンの使用割合が、前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドにおけるジアミン成分全体に対して、50~100モル%であることを特徴とする液晶調光素子。
【化1】
(Xは、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-、又は-OCO-を示す。Xは、単結合又は-(CH-(bは1~15の整数である)を示す。Xは、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-、又は-OCO-を示す。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xnは、0~4の整数を示す。Xは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。
【請求項2】
前記ジアミンの使用割合が、前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドにおける前記ジアミン成分全体に対して、80~100モル%である請求項1に記載の液晶調光素子。
【請求項3】
前記ジアミンの使用割合が、前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドにおける前記ジアミン成分全体に対して、100モル%である請求項1に記載の液晶調光素子。
【請求項4】
前記ジアミンが、下記式[1a]である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液晶調光素子。
【化2】
(Xは、前記式[1-1]の構造を示す。Xmは、1~4の整数を示す。Xmが2以上の場合、複数のXはそれぞれ独立して前記定義を有する。)
【請求項5】
前記液晶配向処理剤が、下記式[2]のテトラカルボン酸を原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを、前記ポリイミド前駆体若しくは前記ポリイミドとして含む、又は他のポリイミド前駆体若しくは他のポリイミドとして含む請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の液晶調光素子。
【化3】
(Zは、下記式[2a]~式[2l]から選ばれるいずれか1種の構造を示す。)
【化4】
(Z~Zはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基を示す。Z及びZはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項6】
前記液晶配向処理剤が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び炭素数1~3のアルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を含む請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の液晶調光素子。
【請求項7】
前記基板が、ガラス基板又はプラスチック基板である請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液晶調光素子。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の液晶調光素子に用いる液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を形成するための液晶配向処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色性色素を用いた液晶調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカーテンやブラインドに変わるものとして、外部から印加される電圧の程度に応じて光の透過量や視認性を可変的に制御する電気調光素子が多数提案されており、液晶調光素子もその一つである。
特に、プラスチック基板(或いはフィルム基板ともいう。)を用いた液晶調光素子は、ガラス基板のものに比べて、その軽量性や形状加工の容易さに優れることから、既存の窓ガラスへの後貼りが可能となり、今後、市場拡大が見込まれる。
液晶調光素子の方式は、種々知られているが、その一つに、二色性色素と液晶を用いたゲストホスト型液晶を用いる方式がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-21097号公報
【文献】特開平9-40964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶調光素子は、自動車や建築建物の窓ガラスに貼って使用される場合があるため、長期間、紫外線を含む光照射に曝される環境でも、液晶調光素子の光学特性の低下、具体的には、液晶の配向欠陥や明暗差の低下などが起こらないことが必要となる。これまで、このような液晶調光素子は見出されていなかった。
そこで本発明は、紫外線を含む光に対する安定性が高い、即ち、光照射に伴う光学特性の低下が起こらない液晶調光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、以下の要旨を有する本発明を完成するに至った。
即ち、電極を備えた一対の基板の間に液晶組成物を含む液晶層を有し、且つ、前記一対の基板の少なくとも一方の基板が液晶を垂直に配向させるような液晶配向膜を備える、電圧印加により吸光状態を制御する液晶調光素子であって、
前記液晶組成物が、液晶及び二色性色素を含み、
前記液晶配向膜が、下記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造(以下、「特定構造」ともいう。)を有するジアミンを原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド(ポリイミド系重合体ともいう。)を含む液晶配向処理剤から得られ、
前記ジアミンの使用割合が、前記ポリイミド前駆体又は前記ポリイミドにおけるジアミン成分全体に対して、50~100モル%であることを特徴とする液晶調光素子である。
【化1】
(Xは、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-、又は-OCO-を示す。Xは、単結合又は-(CH-(bは1~15の整数である)を示す。Xは、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-、又は-OCO-を示す。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xnは、0~4の整数を示す。Xは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。)
【化2】
(Xは、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-、又は-OCO-を示す。Xは、炭素数8~22のアルキル基又は炭素数6~18のフッ素含有アルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光照射に伴う光学特性の低下が起こらない液晶調光素子が得られる。そのため、本発明の液晶調光素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイや光の透過と遮断を制御する調光窓や光シャッターなどにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液晶調光素子の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<特定構造>
特定構造は、上記式[1-1]又は式[1-2]の構造である。
式[1-1]中、X~X及びXnは、上記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、下記のものが好ましい。
は、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-(CH-(aは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、単結合又は-(CH-(bは1~10の整数である)が好ましい。
は、合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-(CH-(cは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、合成の容易さの点から、2価の環状基であるベンゼン環、2価の環状基であるシクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基が好ましい。
は、2価の環状基であるベンゼン環又は2価の環状基であるシクロへキサン環が好ましい。
は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~10のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基又は炭素数1~10のフッ素含有アルコキシ基が好ましい。より好ましいのは、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基である。特に好ましいのは、炭素数1~9のアルキル基又は炭素数1~9のアルコキシ基である。
Xnは、原料の入手性や合成の容易さの点から、0~3が好ましい。より好ましいのは、0~2である。
【0009】
~X及びXnの好ましい組み合わせは、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13頁~34頁の表6~表47に掲載される式(2-1)~式(2-629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報WO2011/132751の各表では、本発明におけるX~Xが、Y1~Y6として示され、Xnがnとして示されているが、Y1~Y6は、X~Xと、nはXnと読み替えるものとする。また、国際公開公報WO2011/132751の各表に掲載される式(2-605)~式(2-629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基と読み替えるものとする。
【0010】
なかでも、式(2-25)~式(2-96)、式(2-145)~式(2-168)、式(2-217)~式(2-240)、式(2-268)~式(2-315)、式(2-364)~式(2-387)、式(2-436)~式(2-483)又は式(2-603)~式(2-615)の組み合わせが好ましい。特に好ましいのは、式(2-49)~式(2-96)、式(2-145)~式(2-168)、式(2-217)~式(2-240)、式(2-603)~式(2-606)、式(2-607)~式(2-609)、式(2-611)、式(2-612)又は式(2-624)である。
【0011】
式[1-2]中、X及びXは、前記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、下記のものが好ましい。
は、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-CON(CH)-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-O-、-CONH-又は-COO-である。
は、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。
【0012】
特定構造は、光照射に伴う液晶調光素子の光学特性の低下を抑制できる点から、式[1-1]の構造を用いることが好ましい。
【0013】
<ポリイミド系重合体>
ポリイミド系重合体は、上記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造を有するジアミンを原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体(ポリイミド系重合体)である。その際、ポリイミド前駆体またはポリイミドは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得ることができる。
【0014】
ポリイミド前駆体とは、例えば、下記式[A]の構造を有する。
【化3】
(Rは、4価の有機基を示す。Rは、2価の有機基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは正の整数を示す。)
ジアミン成分としては、分子内に第一級又は第二級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0015】
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]の繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【化4】
(R及びRは、式[A]で定義したものと同じである。)
【化5】
(R及びRは、式[A]で定義したものと同じである。)
【0016】
また、通常の合成手法で、上記で得られた式[D]の重合体に、式[A]中のA及びAの炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]中のA及びAの炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
【0017】
特定構造をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定構造を有するジアミン化合物を原料の一部に用いる。特に、下記式[1a]のジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう。)を用いることが好ましい。
【化6】
Xは、上記式[1-1]又は式[1-2]の構造を示す。また、式[1-1]におけるX~X及びXnの詳細、及び好ましい組み合わせは、上記式[1-1]の通りであり、式[1-2]におけるX及びXの詳細、及び好ましい組み合わせは、上記式[1-2]の通りである。
Xmは、1~4の整数を示す。なかでも、1又は2が好ましい。Xmが2以上の場合、複数のXはそれぞれ独立して前記定義を有する。
【0018】
式[1a]におけるXが式[1-1]で示される特定ジアミンとして、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の15頁~19頁に記載される式[2-1]~式[2-6]、式[2-9]~式[2-36]のジアミン化合物が挙げられる。なお、国際公開公報WO2013/125595の記載において、式[2-1]~式[2-3]中のR及び式[2-4]~式[2-6]中のRは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。また、式[2-13]中のAは、炭素数3~18の直鎖状又は分岐状アルキル基を示す。加えて、式[2-4]~式[2-6]中のRは、-O-、-CHO-、-COO-、又は-OCO-を示す。
【0019】
なかでも、好ましい特定ジアミンは、国際公開公報WO2013/125595に記載される式[2-1]~式[2-6]、式[2-9]~式[2-13]又は式[2-22]~式[2-31]のジアミン化合物である。
【0020】
より好ましいのは、液晶調光素子の光学特性の点から、下記式[1a-32]~式[1a-41]のジアミンである。
【化7】
(R及びRはそれぞれ、炭素数3~12のアルキル基を示す。)
【化8】
(R及びRはそれぞれ、炭素数3~12のアルキル基を示し、1,4-シクロヘキシレンのシス-トランス異性は、トランス異性体である。)
【0021】
特に好ましいのは、液晶調光素子の光学特性の点から、上記式[1a-33]、式[1a-35]~式[1a-37]、及び式[1a-39]~式[1a-41]のいずれかのジアミンである。
【0022】
式[1a]におけるXが式[1-2]で示される特定ジアミンとして、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の23頁に記載される式[DA1]~式[DA11]のジアミン化合物が挙げられる。なお、国際公開公報WO2013/125595の記載において、式[DA1]~式[DA5]中のAは、炭素数8~22のアルキル基又は炭素数6~18のフッ素含有アルキル基を示す。
【0023】
特定ジアミンの使用割合は、液晶調光素子の光学特性の点から、ポリイミド系重合体のジアミン成分全体に対して、50~100モル%である。好ましいのは、60~100モル%である。より好ましいのは、80~100モル%である。特に好ましいのは、100モル%である。また、特定ジアミンは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0024】
ポリイミド系重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記式[2]のテトラカルボン酸二無水物や、そのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド(すべてを総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう。)を用いることが好ましい。
【化9】
Zは、下記式[2a]~式[2l]から選ばれるいずれか1種の構造を示す。
【化10】
(Z~Zはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基を示す。Z及びZはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。)
【0025】
なかでも、式[2]中のZは、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[2a]、式[2c]、式[2d]、式[2e]、式[2f]、式[2g]、式[2k]又は式[2l]が好ましい。より好ましいのは、式[2a]、式[2e]、式[2f]、式[2g]、式[2k]又は式[2l]である。特に好ましいのは、液晶調光素子の光学特性の点から、式[2a]、式[2e]、式[2f]、式[2g]又は式[2l]である。
【0026】
特定テトラカルボン酸成分の使用割合は、ポリイミド系重合体の全テトラカルボン酸成分に対して、1モル%以上が好ましい。より好ましいのは、5モル%以上である。特に好ましいのは、液晶調光素子の光学特性の点から、10~100モル%である。
【0027】
ポリイミド系重合体には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0028】
具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の34頁~35頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。
特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0029】
ポリイミド系重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の35頁~36頁に記載される方法が挙げられる。
【0030】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記式[D1]~式[D3]の溶媒を用いることができる。
【化11】
(D及びDは、炭素数1~3のアルキル基を示す。Dは、炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0031】
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0032】
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数は、0.8~1.2であることが好ましい。テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.0より小さい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも小さい場合は、ポリマーの末端がアミノ基の構造となり、1.0より大きい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きい場合は、ポリマーの末端がカルボン酸無水物或いはジカルボン酸の構造となる。本発明においては、テトラカルボン酸成分の合計モル数は1.0より大きい、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きいことが好ましい。具体的には、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際、テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.05~1.20であることが好ましい。
【0033】
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。なかでも、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性の点から、30~85%が好ましい。より好ましいのは、40~80%である。
【0034】
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる樹脂膜の強度、及び樹脂膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定したMw(重量平均分子量)で5,000~1,000,000とするのが好ましい。より好ましいのは、10,000~150,000である。
【0035】
<液晶配向処理剤>
液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための溶液であり、特定構造を有するポリイミド系重合体及び溶媒を含有する溶液である。その際、特定構造を有するポリイミド系重合体は、2種類以上のものを用いることができる。
【0036】
重合体成分は、すべてが特定構造を有するポリイミド系重合体では無く、これら特定構造を持たないポリイミド系重合体が混合されていても良い。その際、特定構造を持たないポリイミド系重合体の使用割合は、特定構造を有するすべてのポリイミド系重合体100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましい。
【0037】
また、液晶配向処理剤は、式[2]のテトラカルボン酸を原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを、上記ポリイミド前駆体若しくは上記ポリイミド(特定構造を有するポリイミド系重合体)として含んでいてもよい。また、液晶配向処理剤は、式[2]のテトラカルボン酸を原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを、特定構造を有するポリイミド系重合体とは異なる他のポリイミド前駆体若しくは他のポリイミドとして含んでいてもよい。
ここでの原料とは、テトラカルボン酸成分を指すのはなく、ジアミン成分も含んだ原料を指す。そのため、式[2]のテトラカルボン酸を原料の一部に用いたポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体における式[2]のテトラカルボン酸の使用割合は、テトラカルボン酸成分全体に対して、100モル%であってもよい。
【0038】
液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択できる。なかでも、塗布により均一な液晶配向膜を形成するとい観点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は50~99.9質量%が好ましい。より好ましいのは、60~99質量%である。特に好ましいのは、65~99質量%である。
【0039】
液晶配向処理剤に用いる溶媒は、特定構造を有するポリイミド系重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、下記溶媒(溶媒A類ともいう。)を用いることが好ましい。
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどである。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0040】
また、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、下記溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の58頁~60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は上記式[D1]~式[D3]を用いることが好ましい。
【0041】
これら溶媒B類は、液晶配向処理剤を塗布する際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、溶媒A類と併用して用いることが好ましい。
液晶配向処理剤の塗布性を改善する目的では、上記溶媒A類のN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを上記溶剤B類と併用して用いることが好ましい。より好ましいのは、γ-ブチロラクトンを併用することである。
また、溶媒A類と溶媒B類とを併用する際、溶媒B類は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1~99質量%が好ましい。なかでも、10~99質量%がより好ましい。特に好ましいのは、20~95質量%である。
【0042】
液晶配向処理剤には、液晶配向膜の膜強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物(総称して架橋性化合物ともいう。)を導入することが好ましい。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
低級アルコキシアルキル基としては、例えば、炭素数1~3のアルコキシアルキル基が挙げられる。
【0043】
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の63頁~64頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]の架橋性化合物が挙げられる。
【0044】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898(2012.2.2公開)の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]の架橋性化合物が挙げられる。
ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の65頁~66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0045】
液晶配向処理剤における架橋性化合物の使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。より好ましいのは、架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるため、0.1~50質量部である。特に好ましいのは、1~30質量部である。
【0046】
液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
【0047】
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁に記載される界面活性剤が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。より好ましいのは、0.01~1質量部である。
【0048】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁~69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、1~20質量部である。
液晶配向処理剤には、上記以外の化合物の他に、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0049】
<液晶組成物>
液晶組成物は、液晶及び二色性色素を有する。そのため、本発明の液晶調光素子は、電圧印加の有無により、二色性色素が液晶のダイレクターの方向(配向の方向)に沿って90°変化するため、二色性色素の吸光特性の違いを利用することで、全光線透過率の明暗差(無色透明と有色の差)を得ることができる。
【0050】
液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。なかでも、本発明における液晶調光素子には、負の誘電異方性を有する液晶を用いることが好ましい。この場合、電圧無印加時は二色性色素の吸収が無いために無色透明となり、電圧印加時は吸収があるため有色となる。
【0051】
低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率の異方性が大きく、屈折率の異方性が大きい液晶が好ましい。また、液晶には、相転移温度、誘電率異方性及び屈折率異方性の各物性値に応じて、2種類以上の液晶を混合して用いることができる。
【0052】
液晶調光素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高くて電圧保持率(VHRともいう。)が高いことが求められる。そのため、液晶には、電気抵抗が高くて紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶を用いることが好ましい。
【0053】
二色性色素は、可視光領域、例えば、400nm~700nmの波長の範囲で、少なくとも一部又は全体の範囲内の光を吸収又は変形させることができる物質である。そして、液晶と併用することで、前記可視光領域の少なくとも一部又は全体の範囲内で光の異方性吸収が可能であり、液晶調光素子の色濃度、具体的には無色透明と有色とを調整することができる。
二色性色素の種類は、特に限定されない。例えば、黒色色素(Black dye)やカラー色素(Color dye)を用いることができる。
【0054】
液晶組成物における二色性色素の使用割合は、液晶100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましい。より好ましいのは、無色透明と有色との差(全光線透過率のコントラストともいう。)の点から、0.1~5質量部である。
【0055】
液晶組成物は、液晶と二色性色素を混合して調製することができる。その際、液晶への二色性色素の溶解性の点から、調製時に加熱することが好ましい。具体的には、液晶の相転移温度を超えない温度で加熱することが好ましい。
【0056】
<液晶調光素子の作製方法>
液晶調光素子は、電極を備えた一対の基板を有する。
液晶調光素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板を用いることができる。特に、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板が好ましい。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極、有機導電膜などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶調光素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
なお、プラスチック基板の厚みとしては特に限定されないが、その厚みが薄い場合、プラスチックフィルムと称されることもある。
【0057】
液晶調光素子は、一対の基板の少なくとも一方の基板に、特定構造を有するポリイミド系重合体を含む液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜を有する。特に、両方の基板に液晶配向膜があることが好ましい。
【0058】
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や目的とする液晶配向膜の膜厚に応じて、適宜選択できる。
【0059】
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、基板の種類や液晶配向処理剤に用いる溶媒に応じて30~300℃、好ましくは、30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。特に、基板にプラスチック基板を用いる場合には、30~150℃の温度で処理することが好ましい。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶調光素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましいのは、5~500nmである。より好ましいのは、10~300nmである。特に好ましいのは、10~250nmである。
【0060】
TN(Twisted Nematic)モードやIPS(In-Plane Switching)モード用の液晶表示素子のように、液晶を傾斜配向や水平配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビング処理法や光配向処理法などで配向処理する。対して、VA(Vertical Alignment)モード用の場合は、配向処理をしなくても良い。
【0061】
液晶調光素子に用いる液晶組成物は、上記の通りの液晶組成物であるが、そのなかに、液晶調光素子の電極間隙(ギャップともいう。)を制御するためのスペーサーを導入することもできる。
【0062】
液晶組成物の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、基板にガラス基板を用いる場合、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、液晶配向膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から、液晶組成物を減圧注入して、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。更に、基板にプラスチック基板を用いる場合には、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶組成物を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。
【0063】
液晶調光素子のギャップは、上記スペーサーなどで制御できる。その方法は、上記の通りに、液晶組成物中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板を用いる方法などが挙げられる。また、基板にプラスチック基板を用いて、基板の貼り合わせをラミネートで行う場合は、スペーサーを導入せずに、ギャップを制御できる。
液晶調光素子のギャップの大きさは、1~100μmが好ましい。より好ましいのは、1~50μmである。特に好ましいのは、2~30μmである。ギャップが小さすぎると、液晶調光素子の全光線透過率のコントラストが低下し、大きすぎると、素子の駆動電圧が高くなる。
【0064】
液晶調光素子には、全光線透過率のコントラストを高めるため、その外側表面に偏光板を貼り合わせることが好ましい。
【0065】
液晶調光素子の一例について説明する。
図1に示すように、液晶調光素子1は、互いに間隔をおいて平行に延在する第1透明基板2及び第2透明基板4と、第1透明基板2及び第2透明基板4の互いに対面する面に形成された第1透明電極6及び第2透明電極8と、第1透明電極6及び第2透明電極8の向かい合う面のそれぞれに形成される第1液晶配向膜10及び第2液晶配向膜12と、第1液晶配向膜10及び第2液晶配向膜12の間に封入される液晶層14とを備え、液晶層14には棒状を呈する液晶分子15が含まれている。
第1透明電極6及び第2透明電極8は、それぞれ透明導電膜で形成され、透明導電膜は、透明な導電材料が均一の厚さで薄膜状に形成されている。
また、第1透明基板2には第1透明電極6に導通する第1接続端子16が設けられ、第2透明基板4には第2透明電極8に導通する第2接続端子17とが設けられている。
そして、第1接続端子16及び第2接続端子17の間に液晶駆動用の動作電圧が印加されるように構成されている。
なお、本例においては、第1液晶配向膜10及び第2液晶配向膜12の少なくともいずれかが本発明の液晶配向膜であればよいが、両方が本発明の液晶配向膜であることが好ましい。
【0066】
また、液晶調光素子1は、液晶層14に液晶分子15及び二色性色素を有するセルで構成されている。本例では、液晶分子15は誘電率異方性が負のネガ型であり、二色染料分子は分子長軸方向の光を吸収するポジ型色素分子である。
液晶層14を透過する光の光透過量の調整は、第1透明電極6及び第2透明電極8の間に印加される動作電圧により、液晶分子15の長軸方向が第1液晶配向膜10及び第2液晶配向膜12で決定される配向方向に沿った状態で液晶層14の厚さ方向に対する液晶分子15の傾斜角が変化されることによりなされる。
【実施例
【0067】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下で用いる略号は下記の通りである。
「ポリイミド系重合体に用いる化合物類」
<特定ジアミン>
【化12】
<その他ジアミン>
【化13】
<特定テトラカルボン酸成分>
【化14】
「架橋性化合物」
【化15】
「溶媒」
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
γ-BL:γ-ブチロラクトン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0068】
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0069】
「ポリイミド系重合体のイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
【0070】
「ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
C1(3.20g,16.3mmol)、A1(3.78g,9.93mmol)及びB1(0.72g,6.66mmol)をNMP(23.1g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量(Mnともいう。)は23,200、重量平均分子量(Mwともいう。)は71,700であった。
【0071】
<合成例2>
C1(2.60g,13.3mmol)及びA1(5.12g,13.5mmol)をNMP(23.2g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸のMnは19,800、Mwは63,200であった。
【0072】
<合成例3>
C2(3.57g,14.3mmol)、A3(4.70g,10.9mmol)及びB2(1.10g,7.23mmol)をNMP(20.2g)中で混合し、80℃で6時間反応させた後、C1(0.70g,3.57mmol)とNMP(10.1g)を加え、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(3)を得た。このポリアミド酸のMnは20,800、Mwは65,700であった。
【0073】
<合成例4>
合成例3の手法で得られたポリアミド酸溶液(3)(20.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.50g)及びピリジン(2.65g)を加え、60℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(450ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(4)を得た。このポリイミドのイミド化率は78%であり、Mnは17,100、Mwは49,800であった。
【0074】
<合成例5>
C4(1.52g,7.67mmol)、A2(3.06g,7.75mmol)及びB2(0.79g,5.19mmol)をγ-BL(17.0g)中で混合し、60℃で8時間反応させた後、C1(1.00g,5.10mmol)とγ-BL(8.49g)を加え、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(5)を得た。このポリアミド酸のMnは16,900、Mwは50,200であった。
【0075】
<合成例6>
C4(1.21g,6.11mmol)及びA2(4.08g,10.3mmol)をγ-BL(16.3g)中で混合し、60℃で8時間反応させた後、C1(0.80g,4.08mmol)とγ-BL(8.13g)を加え、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(6)を得た。このポリアミド酸のMnは12,500、Mwは45,100であった。
【0076】
<合成例7>
C3(3.10g,13.8mmol)、A4(3.47g,7.04mmol)及びB2(1.07g,7.03mmol)をNMP(22.9g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(7)を得た。このポリアミド酸のMnは15,800、Mwは43,500であった。
【0077】
<合成例8>
C1(2.60g,13.3mmol)及びA5(5.07g,13.5mmol)をNMP(23.0g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(8)を得た。このポリアミド酸のMnは17,200、Mwは60,900であった。
【0078】
<合成例9>
C1(3.80g,19.4mmol)、A1(2.25g,5.91mmol)及びB1(1.49g,13.8mmol)をNMP(22.6g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(9)を得た。このポリアミド酸のMnは25,800、Mwは76,100であった。
【0079】
<合成例10>
C4(1.82g,9.19mmol)、A2(1.84g,4.66mmol)及びB2(1.65g,10.8mmol)をγ-BL(17.4g)中で混合し、60℃で8時間反応させた後、C1(1.20g,6.12mmol)とγ-BL(8.68g)を加え、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(10)を得た。このポリアミド酸のMnは18,500、Mwは53,800であった。
【0080】
合成例で得られたポリイミド系重合体を、表1に示す。
【表1】
*1:ポリアミド酸。
【0081】
「液晶配向処理剤の製造」
<実施例1>
合成例1の手法で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(1)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0082】
<実施例2>
合成例2の手法で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(2)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0083】
<実施例3>
合成例2の手法で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、K1(0.18g)、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0084】
<実施例4>
合成例3の手法で得られたポリアミド酸溶液(3)(10.0g)に、NMP(16.0g)、BCS(7.83g)及びPB(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(4)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0085】
<実施例5>
合成例4の手法で得られたポリイミド粉末(4)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、PB(11.8g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(5)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0086】
<実施例6>
合成例5の手法で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、γ-BL(1.60g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PGME(38.4g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(6)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0087】
<実施例7>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、γ-BL(1.60g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PGME(38.4g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(7)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0088】
<実施例8>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、γ-BL(1.60g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.10g)及びPGME(38.4g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0089】
<実施例9>
合成例7の手法で得られたポリアミド酸溶液(7)(10.0g)に、K1(0.13g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(9)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0090】
<実施例10>
合成例8の手法で得られたポリアミド酸溶液(8)(10.0g)に、K1(0.18g)、NMP(16.0g)、BCS(7.83g)及びPB(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(10)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0091】
<比較例1>
合成例9の手法で得られたポリアミド酸溶液(9)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(11)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0092】
<比較例2>
合成例10の手法で得られたポリアミド酸溶液(10)(10.0g)に、γ-BL(1.60g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PGME(38.4g)を加え、25℃で6時間撹拌して、液晶配向処理剤(12)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0093】
実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を、表2に示す。
【表2】
*2:( )内の数値は、ポリイミド系重合体100質量部に対する架橋性化合物の導入量(質量部)を示す。
【0094】
「液晶組成物の作製」
<液晶組成物(A)の作製>
MLC-6608(メルク社製)(10.0g)、Dichroic dye Blue AB4(NEMATEL社製)(0.015g)、Dichroic dye Yellow AG1(NEMATEL社製)(0.020g)及びDichroic dye Red AR1(NEMATEL社製)(0.015g)を混合し、80℃で24時間撹拌して、液晶組成物(A)を得た。
なお、上記成分中、MLC-6608(メルク社製)が液晶であり、他の成分が二色性色素である。
【0095】
「液晶調光素子の作製(ガラス基板)」
実施例の手法で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄した30×40mmのITO電極付きガラス基板のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で2分間、熱循環型クリーンオーブンにて220℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。この液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、液晶配向膜面を内側にして6μmのスペーサーを挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶組成物(A)を注入し、注入口を封止して液晶調光素子(ガラス基板)を得た。
得られた液晶調光素子を、偏光顕微鏡観察により液晶の配向均一性を確認したところ、いずれの液晶調光素子とも、液晶は均一に配向していた。また、すべての液晶調光素子とも、電圧印加(交流駆動:5V)により駆動し、電圧無印加と電圧印加による全光線透過率の明暗差を確認した。
【0096】
「液晶調光素子の作製(プラスチック基板)」
実施例の手法で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水で洗浄した150×150mmのITO電極付きPET基板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:0.1mm)のITO面上にバーコーターにて塗布をし、熱循環型クリーンオーブンにて120℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。この液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の液晶配向膜面に、6μmのスペーサーを塗布した。その後、この基板の周囲に紫外線硬化型のシール剤を描画して、ODF法にて、液晶組成物(A)を滴下し、次いで、他方の基板の液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせ、及びシール剤の硬化処理を行い、液晶調光素子(プラスチック基板)を得た。なお、ODF法にて、液晶組成物(A)の滴下、貼り合わせ及びシール剤の硬化処理を行う際には、ITO電極付きPET基板の支持基板としてガラス基板を用いた。
得られた液晶調光素子を、偏光顕微鏡観察により液晶の配向均一性を確認したところ、いずれの液晶調光素子とも、液晶は均一に配向していた。また、すべての液晶調光素子とも、電圧印加(交流駆動:5V)により駆動し、電圧無印加と電圧印加による全光線透過率の明暗差を確認した。
【0097】
「光安定性の評価」
本評価は、光照射前(初期)と光照射後の液晶調光素子の電圧印加状態(交流駆動:5V)のHaze(曇り度)を測定することで行った。具体的には、光照射装置に、Q-SUN Xe-1 Xenon Test Chamber(Q-LAB社製)(カットフィルター:Day Light F Filter,層内温度:60℃)を用いて、液晶調光素子に336時間光照射した。なお、本評価では、光照射前に対する光照射後のHazeの変化が小さいものほど、光安定性に優れるとした。その際、実施例11~実施例13及び実施例16~実施例18においては、上記の標準試験に加え、強調試験として、672時間光照射した後の測定も行った。なお、評価方法は上記と同様である。
【0098】
<実施例11~実施例20、比較例3及び比較例4>
上記の手法で得られた液晶配向処理剤(1)~液晶配向処理剤(12)のいずれかと、液晶組成物(A)を用いて、前記手法で液晶調光素子の作製及び光安定性の評価を行った。その際、実施例11~実施例15、実施例19、実施例20及び比較例3はガラス基板を用い、実施例16~実施例18及び比較例4はプラスチック基板を用いた。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
上記で示される通り、特定構造を有する特定ジアミンを用いて、且つ、その使用割合が高いポリイミド系重合体を含む液晶配向処理剤を用いた実施例の液晶調光素子は、その使用割合が低い比較例に比べて、光照射前に対する光照射後のHazeの変化が小さくなった。具体的には、実施例11と比較例3との比較、及び実施例16と比較例4との比較である。
また、特定ジアミンの使用割合が、より高い場合、強調試験において、光照射前に対する光照射後のHazeの変化が小さくなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例11と実施例12との比較、及び実施例16と実施例17との比較である。
更に、液晶配向処理剤に架橋性化合物を導入した場合、光照射前に対する光照射後のHazeの変化が小さくなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例12と実施例13との比較、及び実施例17と実施例18との比較である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
特定構造を有するポリイミド系重合体を含む液晶配向処理剤を用いることで、光照射に伴う光学特性の低下が起こらない液晶調光素子が得られる
また、本発明の液晶調光素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイや光の透過と遮断を制御する調光窓や光シャッターなどにおいて有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 液晶調光素子
2 第1透明基板
4 第2透明基板
6 第1透明電極
8 第2透明電極
10 第1液晶配向膜
12 第2液晶配向膜
14 液晶層
15 液晶分子
16 第1接続端子
17 第2接続端子
図1