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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】寄生流量の補正方法及び補正装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021574881
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2020031710
(87)【国際公開番号】W WO2021039665
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】16/550,742
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,アレクセイ ヴィ.
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500542(JP,A)
【文献】特表2014-504766(JP,A)
【文献】特表2016-512350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054702(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスフローコントローラにおける流体の寄生流量を補正する方法であって、
圧力センサにて発生した圧力測定信号を取得すること、
流量センサにて発生した流量センサ信号を取得すること、
前記圧力測定信号を用いて推定寄生流量信号を生成すること、
前記流量センサ信号を加速して、前記推定寄生流量信号と同等な帯域幅を有する加速された流量センサ信号を生成すること
記加速された流量センサ信号及び前記推定寄生流量信号を用いて、前記マスフローコントローラの弁を閉ループ制御にて制御するために、補正流量信号を生成すること
前記推定寄生流量信号により、前記マスフローコントローラの閉ループ制御をいつ停止するかを決定すること、
前記閉ループ制御が停止されたときに、前記圧力測定信号に基づいて前記弁を制御すること、並びに、
前記推定寄生流量信号により、前記閉ループ制御をいつ再開するかを決定すること
を有する方法。
【請求項2】
前記推定寄生流量信号が閾値を超えたときに、前記閉ループ制御が停止される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記推定寄生流量信号が前記閾値より低下したときに、前記閉ループ制御が再開される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記推定寄生流量信号が、前記閾値とは異なる別の閾値より低下したときに、前記閉ループ制御が再開される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
マスフローコントローラであって、
制御信号に応じて流体の流量を適正に制御するように構成されている弁と、
前記流体の圧力を示す圧力測定信号を提供するように構成されている圧力センサと、
流量センサ信号を提供するように構成されている熱式マスフローセンサと、
前記圧力測定信号を用いて推定寄生流量信号を生成し、
前記流量センサ信号を加速して、前記推定寄生流量信号と同等な帯域幅を有する加速された流量センサ信号を生成し、
前記加速された流量センサ信号及び前記推定寄生流量信号を用いて、前記弁を閉ループ制御にて制御するために、補正流量信号を生成する
ように構成されているコントローラと
を備えており、
前記コントローラは、
前記推定寄生流量信号により、前記閉ループ制御をいつ停止するかを決定し、
前記閉ループ制御が停止されたときに、前記圧力測定信号に基づいて前記弁を制御し、
前記推定寄生流量信号により、前記閉ループ制御をいつ再開するかを決定する
ように構成されているマルチモード制御コンポーネントを
含む、マスフローコントローラ。
【請求項6】
前記マルチモード制御コンポーネントは、閾値を超えた前記推定寄生流量信号に基づいて、前記閉ループ制御をいつ停止するかを決定するように構成されている、請求項5に記載のマスフローコントローラ。
【請求項7】
前記マルチモード制御コンポーネントは、前記閾値より低下した前記推定寄生流量信号に基づいて、前記閉ループ制御を再開するように構成されている、請求項に記載のマスフローコントローラ。
【請求項8】
前記マルチモード制御コンポーネントは、前記閾値とは異なる別の閾値より低下した前記推定寄生流量信号に基づいて、前記閉ループ制御を再開するように構成されている、請求項に記載のマスフローコントローラ。
【請求項9】
前記マルチモード制御コンポーネントは、前記閾値を手動設定可能とするように構成されている、請求項に記載のマスフローコントローラ。
【請求項10】
前記マルチモード制御コンポーネントは、前記推定寄生流量信号のノイズに基づいて前記閾値を自動的に設定するように構成されている、請求項に記載のマスフローコントローラ。
【請求項11】
前記コントローラは、前記流量センサ信号を加速して、加速された流量センサ信号を生成するために、1ミリ秒及び5ミリ秒間の時定数を有する加速フィルタを含む、請求項5に記載のマスフローコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフロー測定及び制御システムに関し、特に、限定はされないが、本発明は、流体流量の測定及び制御を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、典型的なマスフローコントローラ(MFC)500は、ガスが流れるバイパス110を有しており、バイパス110は、ガスを主流路115とセンサ管120とに一定の割合で導く。この結果、センサ管120を介した流体(例えば、ガス又は液体)の流量を測定することにより、熱式マスフローセンサ123は、MFC500の主流路115を流れる流体の流量を示す流量センサ信号150を提供することができる。流量センサ信号150は非常に遅い(例えば、2~3秒間の応答時間を有する)ことが、技術的に知られている。よって、図6に示すように、流量センサ信号150は低ノイズ加速フィルタにて加速され(ブロック506)、比較的低レベルのノイズ(0.1%~1%の範囲)を有しながらも流量センサ信号150よりも流速の変化に対してより迅速に応答し得る測定流量信号507を生成する。
【0003】
図5及び図6と共に図7を参照することにより、流体の吸入圧力501が変化した際に、流体の寄生流量が、バイパス110及びセンサ管120を通って、(MFC500のバイパス110と制御弁140との間に位置した)デッドボリューム117内に流れ込む。よって、MFC500を出ていく寄生流量が無い状態で、熱式マスフローセンサ123にてこの寄生流量が測定される。より詳細には、バイパス110の周りを移動する流体の実際のバイパス流量503は、MFC500を出ていく供給流量511よりも多い。したがって、より正確な供給流量511を得るためには、寄生流量が測定流量信号507から減算されなければならない。
【0004】
図6に示すように、従来技術で測定流量信号507を補正するためには、圧力測定信号155が圧力センサ178から得られ(ブロック502)、(流体の測定された圧力に基づいて)推定寄生流量信号505が得られ(ブロック504)、この推定寄生流量信号505が、測定流量信号507を補正するために使用される。但し、適正な補正を実現するためには、推定寄生流量信号505と測定流量信号507とで帯域幅が実質的に同じでなければならない。しかしながら、測定流量信号507が、典型的には50~100ミリ秒の時定数を有しているのに対して、(推定寄生流量を演算するために用いられる圧力信号の極端に速い応答時間のため)推定寄生流量信号505の帯域幅は比較的高い。
【0005】
この結果、従来の制御アルゴリズム600は、低い時定数(TC)のローパスフィルタにて推定寄生流量信号505を濾波して(ブロック509)、閉ループ制御アルゴリズム516に提供される補正流量信号510を生成するために測定流量信号507から減じられる(測定流量信号507と同様な帯域幅である)低帯域幅の寄生流量信号508を生成する。
【0006】
測定流量信号507を補正する従来技術は、寄生流量が比較的少なくて熱式マスフローセンサ123が直線作動域で動作するような、高流量のMFCでは効率良く作用する。しかし、低流量のMFCにそれを用いる場合には、知られた不利な点が存在する。
【0007】
例えば、急速な圧力変化などの結果として流体の流量状態が急速に変動した場合には、熱式マスフローセンサ123が飽和して、寄生流量が熱式マスフローセンサ123のフルスケール範囲を超えることになって、熱式マスフローセンサ123の読み取りがまったく非直線的となる。この結果、測定流量信号507は、実際のバイパス流量503の正確な表示とならない。より詳細には、バイパス110の周りを移動する流体の実際のバイパス流量503は、測定流量信号507により示されるものより実質的に大きいレベル513(図7に示す)に到達する。結果として、推定寄生流量信号505及び低帯域幅の寄生流量信号508が正確であったとしても、測定流量信号507が無効であるので補正流量信号510は無効となる。よって、閉ループ制御アルゴリズム516内でコントローラ470が補正流量信号510を用いる場合に、コントローラ470は、流量設定点185に従った流体の流量を供給するように制御弁140を適正に制御できなくなる。
【0008】
圧力の急速な変化の問題を解消するために、図6における公知の手法は、測定流量信号507が信頼できないことを低帯域幅の寄生流量信号508が示す場合に、補正流量信号510を無視すること(ブロック518)と、代わりにフィードフォワード制御アルゴリズム520を使用することとを含む。図7に示す例では、低帯域幅の寄生流量信号508が閾値512を超えた時刻t1 にフィードフォワード制御アルゴリズム520が作動開始し、低帯域幅の寄生流量信号508が閾値512より下がる時刻t2 までの時間Tff1 の間にフィードフォワード制御アルゴリズム520が作動し続ける。
【0009】
測定流量信号507が信頼できないことを寄生流量が示しているときには、このフィードフォワード制御アルゴリズム520は有用であるが、流体の圧力が安定して、寄生流量が低下し、測定流量信号507が再び有効となった後は、閉ループ制御アルゴリズム516を用いることが好ましい。しかし、低帯域幅の寄生流量信号508のゆっくりした応答時間によって、流体の圧力が安定した後の長い間(推定寄生流量信号505が低下した後の長い間)にわたってフィードフォワード制御アルゴリズム520が作動し続ける。言い換えると、所望又は必要以上にわたって、フィードフォワード制御アルゴリズム520が使用され続けられる。例えば、(100sccm以下の)低流量の装置にあっては、急速な圧力変化からの回復時間は、5秒、10秒、又はそれ以上である。
【0010】
したがって、流体の流れにおける急速な変化に対応した既存の手法の欠点を解消する新規で革新的な特徴を提供する方法及び/又は装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
図面に示される本発明の代表的な実施の形態は、以下のように要約される。これらのいくつかの実施の形態は、詳細な説明の項にてより十分に述べられる。しかしながら、発明の概要又は詳細な説明にて述べられる形態に本発明を限定する意図が無いことは理解されるべきである。当業者であれば、特許請求の範囲に表現された本発明の精神及び範囲に属する数多くの変更物、等価物、及び代替物が存在する点を認識することが可能である。
【0012】
本発明の態様は、マスフローコントローラにおける流体の寄生流量に関連した流量不調和を補正するための方法を提供できる。この方法は、圧力センサにて発生した流体の圧力測定信号を取得することと、流量センサにて発生した流体の流量センサ信号を取得することと、圧力測定信号を用いて推定寄生流量信号を生成することとを有する。流量センサ信号が加速されて、推定寄生流量信号と同等な帯域幅を有する加速された流量センサ信号を生成し、加速された流量センサ信号及び推定寄生流量信号を用いて、マスフローコントローラを制御するために、補正流量信号が生成される。
【0013】
別の態様は、制御信号に応じて流体の流量を制御するために適合できる弁と、流体の圧力を示す圧力測定信号を提供するように構成されている圧力センサと、流量センサ信号を提供するように構成されている熱式マスフローセンサとを備えるマスフローコントローラとして特徴付けられる。このマスフローコントローラは、また、圧力測定信号を用いて推定寄生流量信号を生成するように構成されているコントローラを備える。このコントローラは、また、流量センサ信号を加速して、推定寄生流量信号と同等な帯域幅を有する加速された流量センサ信号を生成するように構成され、加速された流量センサ信号及び推定寄生流量信号を用いて、マスフローコントローラを制御するために、補正流量信号を生成するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
種々の目的及び効果、並びに本発明のより完全な理解は、付随の図面と合わせられた場合に以下の詳細な説明及び付随の特許請求の範囲を参照することにより、明らかであって容易に認められる。
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る、寄生流量補正と流体の流れを制御するマルチモード制御手法とを利用する代表的なマスフローコントローラを示すブロック図である。
図2】開示する実施の形態に関連して行われる方法を示すフローチャートである。
図3図1に示すマスフローコントローラの典型的な動作態様を示すグラフを含む。
図4図1のマスフローコントローラの態様を実現するために使用される構成部材を示すブロック図である。
図5】従来のマスフローコントローラを示すブロック図である。
図6図5に示すマスフローコントローラにて実行される従来の方法を示すフローチャートである。
図7図5に示す従来のマスフローコントローラの動作態様を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様は、改善された寄生流量補正、及び、閉ループ制御からフィードフォワード制御に変更される際の改善された動作を備えるマスフローコントローラに向けられる。
【0017】
例えば、ここで論じられる実施の形態は、突然の圧力変化などの1又は複数の妨害が、閉ループ制御で使用される(例えば、寄生流量による)信頼できないフィードバック測定を引き起こす際に、閉ループ制御からフィードフォワード制御へより迅速に変化するように構成されている。さらに、ここに開示される実施の形態は、フィードフォワード制御から閉ループ制御へのより速い復帰を可能とする。
【0018】
図1を参照すれば、寄生流量補正と(例えば、流体ディスペンサから反応容器への)流体の流れを制御するためのマルチモード制御手法とを実行する代表的なマスフローコントローラ(MFC)100が示されている。これらの構成部材の図示された配置は、論理的なものであって、実際のハードウェア図を意味するものではない。よって、実際の装備においては、これらの構成部材は、結合されたり、分離されたり、削除されたり、及び/又は、追加されたりしても良い。当業者であれば分かるように、図1に示される構成部材は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実装されても良い。さらに、明細書に照らして、これらの個々の構成部品の構造は、通常の技術範囲内で良く知られている。
【0019】
いくつかの実施形態にあって、MFC100にて制御される流体は、液体(例えば、硫酸)であり、別の実施形態にあっては気体(例えば、窒素)であるが、本開示の利点を有して、MFC100により供給される流体が、気体又は液体などの任意の様態での元素及び/又は化合物の混合物を含む任意の流体であっても良いことを、当業者であれば理解する。本願に基づけば、MFC100は、気体状態の流体(例えば、窒素)及び/又は液体状態の流体(例えば、塩酸)を半導体工場内の装置に供給する。多くの実施の形態におけるMFC100は、高圧、低温の条件で、種々のタイプのコンテナ又は容器に流体を供給するように構成されている。
【0020】
図示するように、MFC100は、ベース105、バイパス110、主流路115、及びセンサ管120を備える従来のMFC500と同じ多くの構成部材を備えている。結果として、センサ管120を通る流体(気体又は液体)の流量は、MFC100の主流路115を介して流れる流体の流量を表している。
【0021】
センサ管120は、MFC100の熱式マスフローセンサ123の一部である、小さな孔の管であって良い。そして示すように、センサ素子125及び130がセンサ管120の外側に結合(例えば、巻回)されている。1つの実例としての実施の形態では、センサ素子125及び130が抵抗温度計素子(例えば、導線コイル)であるが、他の種類のセンサ(例えば、抵抗温度検出器(RTD)及び熱電対)も利用可能である。さらに、他の実施形態では、本発明の範囲を逸脱しないセンサからの信号を処理するための別の多くのセンサ及び構造物を確かに利用している。
【0022】
図示するように、センサ素子125及び130は、センサ素子回路135に電気的に接続している。概して、センサ素子回路135は、(センサ素子125、130からの信号136、138に感応して)流量センサ信号150を提供するように構成されている。流量センサ信号150は、センサ管120を介した流量を示し、それ故、MFC100の主流路115を介した流量を示す。
【0023】
明瞭化のために図1には示されていないが、流量センサ信号150が、アナログ/デジタル変換器を用いて、増幅変換処理されて、流量センサ信号150のデジタル表式を生成するようにしても良い。当業者であれば容易に理解できるように、流量センサ信号150は、MFC100の内部特性及び/又はMFC100を流れる流体(例えば、気体)の特性に基づいて、(所定の補正係数にて流量センサ信号150を調節することによって)調節されても良い。
【0024】
図1に示すように、典型的なMFC100は、また、コントローラ170へ圧力測定信号155を提供する圧力センサ178を備えている。明瞭化のために図示されていないが、圧力測定信号155は、アナログ/デジタル変換器を用いて、増幅されてデジタル形態に変換されても良い。圧力センサ178は、例えば、ゲージ圧センサ、差圧センサ、絶対圧センサ、又はピエゾ抵抗圧力センサにて実現されても良い。
【0025】
この実施の形態のコントローラ170は、センサ素子125、130、センサ素子回路135、及び圧力センサ178を備える制御システムの一部である。コントローラ170は、概して、流量設定点185に基づく流量を提供するために制御弁140の位置を制御する制御信号180を生成するように構成されている。制御弁140は、例えば、圧電性弁、又はソレノイド弁にて実現されても良く、制御信号180は、電圧(圧電性弁の場合)、又は電流(ソレノイド弁の場合)であっても良い。
【0026】
図示するように、この実施の形態のコントローラ170は、寄生流量補正モジュール172及びマルチモード制御コンポーネント174を有する。コントローラ170は、(不揮発性メモリに格納された)ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェア、又はそれらの組み合わせを含む種々のコンポーネントにて実現されても良く、これらのコンポーネントは、ここでさらに述べられる方法を実施する非一時的なプロセッサ読み取り可能指示を格納及び実行することを、当業者であれば、この開示を参照して、容易に理解する。
【0027】
図1を参照する一方、図1に示される実施の形態で実行される方法を示す図2にも同時の参照がなされる。図2に示すように、MFC100の動作中に、寄生流量補正モジュール172は、圧力測定信号155を取得し(ブロック202)、また、流量センサ信号150を取得する(ブロック204)。
【0028】
寄生流量補正モジュール172は、概して、流量センサ信号150を補正するように動作するが、さらに、寄生流量補正モジュール172は、マルチモード制御コンポーネント174のより速い動作を可能にする。図示するように、寄生流量補正モジュール172は、寄生流量の推定を表す推定寄生流量信号505を生成し(ブロック206)、寄生流量補償を提供するように動作するが、(図5及び図6を参照して前述したような)従来の技術が行っているような方法にて推定寄生流量信号505を「低減する」代わりに、(ブロック204にて)取得された流量センサ信号150が加速されて、推定寄生流量信号505と同等の帯域幅を有する加速された流量センサ信号212(「高速」信号212ともいう)を生成する(ブロック208)。
【0029】
ここで使用されるように「同等の」という用語には、推定寄生流量信号505と加速された流量センサ信号212とが同様な帯域幅を有することを意味する点が意図されている。いくつかの実装にあって、圧力センサ178の帯域幅は、コントローラ170のサンプリング速度よりもずっと広いので、流量センサ信号150は理論的に可能な限り加速される。例えば、寄生流量補正モジュール172は、推定寄生流量信号505の帯域幅と同等な帯域幅を有する加速された流量センサ信号212を生成するために、1ミリ秒~5ミリ秒の時定数を有する加速フィルタを含んでいても良い。
【0030】
このように、MFC100を制御するために、加速された流量センサ信号212及び推定寄生流量信号505を用いて補正流量信号214が生成される。より詳細には、図2に示すように、推定寄生流量信号505が加速された流量センサ信号212から減算されることにより、補正流量信号214が生成される。図示するように、補正流量信号214は、MFC100のコントローラ170の閉ループ制御に使用され(ブロック218)、任意に濾波されて(ブロック216)、ブロック218での閉ループ制御に使用される補正流量信号214の濾波表現219を生成する。より詳細には、コントローラ170は、制御信号180、ひいては制御弁140を調節することによってブロック218で閉ループ制御を実施しても良く、補正流量信号214で表される流量は、流量設定点185で表される流量と同じである。
【0031】
(ブロック208での)流量センサ信号150の加速は、最大帯域幅にまでなされても良く、この結果、それは推定寄生流量信号505の広い帯域幅と同等である。例えば、ブロック208での)流量センサ信号150の加速は、1~5ミリ秒の時定数を有するフィルタによりなされても良い。流量センサ信号150を加速することは、実質的により多くのノイズを発生するため、反直感的でありこれまでには示唆されてこなかった。しかし、(従来技術で使用されてきた)低帯域幅の寄生流量信号508の代わりに推定寄生流量信号505を使用することは、推定寄生流量信号505が閾値を超えたか否かのずっと早い判断を可能とする(ブロック220)。よって、マルチモード制御コンポーネント174は、従来の技術に比べて、フィードフォワード制御の使用の開始及び停止をより速く行うことができる。
【0032】
いくつかの実施の形態では、推定寄生流量信号505が、フィードフォワード制御を開始するために使用されている寄生流量閾値よりも低下した際に、閉ループ制御が再開される。例えば、図3を参照すると、ブロック222でフィードフォワード制御の使用をトリガする第1の閾値312と、ブロック218で閉ループ制御の使用をトリガする第2の閾値314とが存在する。しかし、ブロック222でフィードフォワード制御の使用をトリガするブロック220での閾値は、ブロック218で閉ループ制御の使用を促進する閾値と同じであっても良い。例えば、ブロック222でフィードフォワード制御が開始された後にあまりにも速くブロック218での閉ループ制御が開始されることを抑止するために、ブロック220での閾値に加えてタイマーが使用されることが考えられる。このように、推定寄生流量信号505はノイズが多くてブロック220での閾値に近いような例にあっては、ブロック222でのフィードフォワード制御とブロック218での閉ループ制御とにおける切り替えの発生がより少なくなる。
【0033】
ブロック220での閾値は、予想される寄生流量のノイズに応じて、手動にて適切な値に設定することができる。例えば、限定はされないが、この閾値は、MFC100のフルスケール流量の約1%、5%、又は10%であっても良い。ブロック220でフィードフォワード制御の使用をトリガする閾値は、また、ノイズの最高値がある量、例えば、推定寄生流量信号505のノイズの2倍又は3倍を超過する場合に、その閾値が超過すべく設定されるように、推定寄生流量信号505のノイズから自動的に由来され得る。
【0034】
図3に示すように、推定寄生流量信号505は、低帯域幅の寄生流量信号508よりも圧力の変化に対してずっと迅速に反応するので、結果として、流入圧力501での同じ変化に対応して、マルチモード制御コンポーネント174は、時間Tff2 の間にフィードフォワード制御222を使用する。この時間Tff2 は、従来の技術がフィードフォワード制御アルゴリズム520を作動する時間Tff1 よりずっと短い。
【0035】
さらに、(従来技術の)ブロック506での低ノイズ加速濾波処理の遅延がないため、寄生流量が低下した後に正当な「速い」流れの読み取りがずっと早く取得されるので、急峻な圧力変化からの長すぎる回復時間は全く存在しない。よって、結果としての加速された流量センサ信号212は、従来技術での「遅い」低帯域幅の測定流量信号507よりも正確であり、補正流量信号214は従来技術の補正流量信号510よりも正確である。さらに、必要又は所望であれば、その「速い」補正流量信号214が所望の時定数にて任意に濾波されて(ブロック216)補正流量信号214の濾波表現219を提供するようにしても良い。補正流量信号214は従来技術に対して改善されているが、(推定寄生流量信号505における増加にて示されるような)圧力での急峻な変化は、補正流量信号214を信頼できないようにする。
【0036】
結果として、推定寄生流量信号505が(ブロック220にて)閾値を超えた際には、マルチモード制御コンポーネント174は、ブロック218での閉ループ制御からブロック222でのフィードフォワード制御の使用への切り替えを促進する。閉ループ制御が、補正流量信号214を含むフィードバックループを伴ったPID制御方法を利用して良いことを、当業者であれば理解する。
【0037】
マルチモード制御コンポーネント174がブロック222でフィードフォワード制御を使用する場合、流量設定点185に対応する流量に十分に近い又は等しい流体の流量を提供するために制御弁140の位置を制御すべく、不揮発性メモリに存する特徴データ184がマルチモード制御コンポーネント174で利用される。多くの実施の形態では、特徴データ184を生成するための特性処理は、MFC100が処理環境で利用される前に、(例えば、MFC100の製造者又は提供者によって行われる)製造過程の一部として実行される。
【0038】
特徴データ184は、種々の圧力のそれぞれについて、流量値(例えば、最大流量に対する百分率の形式)及び弁位置値(例えば、最大弁位置に対する百分率の形式)を含むデータ対の集まりを含んでいても良い。
【0039】
参照によって本願に組み込まれる、マルチモード制御アルゴリズムと題した米国特許7,640,078並びに適応圧力無感受マスフローコントローラ及び多ガス応用のための方法と題した米国特許9,027,585は、マルチモード制御コンポーネント174で採用されるフィードフォワード制御に関した追加の詳細を開示している。
【0040】
図4を参照すると、図1を参照して記述されているMFC100の態様を実現するために利用される内部のコンポーネント400を表すブロック図が示されている。図示するように、表示部412及び不揮発性メモリ420が、ランダムアクセスメモリ(RAM)424、(N個の処理コンポーネントを含む)処理部426、ソレノイド/ピエゾ型弁430に連結している弁駆動コンポーネント428、インターフェースコンポーネント432、通信コンポーネント434、及びマスフローセンサ436が連結しているバス422に、連結している。図4に示されるコンポーネントは、内部のコンポーネントを表しているが、図4はハードウェア図を意図しているのではなく、図4に示されるコンポーネントの多くは、共通の構成にて実現されるか又は追加の内部コンポーネント中に分配されても良い。さらに、他の現存する及びまだ開発されていない内部コンポーネント及び構造が、図4を参照して記述されている機能コンポーネントを実装するために、利用されても良いことは、間違いなく予期される。
【0041】
表示部412は、概して、内容の表示をユーザに提供するために作動し、幾つかの実装では、表示部412はLCD又はOLEDディスプレイにより実現される。例えば、表示部412は、流量評定点185及び図3に示される信号の1つもしくは複数のグラフ的又は数的な表現を表示する。概して、不揮発性メモリ420は、データと図1に示される機能コンポーネントに関連するコードを含む実行可能なコードを(永続的に)格納するように機能する。いくつかの実施の形態では、例えば、不揮発性メモリ420は、ブートローダコード、ソフトウェア、作動システムコード、ファイルシステムコード、及び寄生流量補正モジュール172及びマルチモード制御コンポーネント174を含む図1に結び付けて論じられたコンポーネントの1又は複数の部分の実装を実行するためのコードを含んでいる。別の実装にあっては、図1に示された1又は複数のコンポーネントを実装するために、専用のハードウェアが利用されても良い。
【0042】
多くの実装にあって、不揮発性メモリ420は、フラッシュメモリ(例えば、NAND又はONENANDメモリ)によって実現されるが、他のタイプのメモリも使用できることは容易に予想される。不揮発性メモリ420からのコードを実行することは可能であるが、不揮発性メモリ420内の実行可能なコードが、RAM424に典型的にロードされ、処理部426内のN個の処理コンポーネントの1つ又は複数によって実行される。図示するように、処理部426は、コントローラ170で実行される機能に利用される、アナログのオリエンテーション、温度、及び圧力(例えば、圧力測定信号155)の入力を取得するようにしても良い。
【0043】
RAM424に接続されたN個の処理コンポーネントは、概して、図1に示される機能コンポーネントを有効にすべく不揮発性メモリ420に格納されている指示を実行するように動作する。
【0044】
インターフェースコンポーネント432は、概して、ユーザがMFC100と相互に作用し合えるようにする1又は複数のコンポーネントを表す。インターフェースコンポーネント432は、例えば、キーパッド、タッチスクリーン、及び1又は複数のアナログ又はデジタルの制御端子を有しており、インターフェースコンポーネント432は、ユーザからの入力を流量設定点185に翻訳するために利用される。そして、通信コンポーネント434は、概して、外部の処理ツールを含む外部のネットワーク及び装置とMFC100が通信できるようにする。例えば、示された流量が、通信コンポーネント434を介して、外部の装置に通信される。当業者であれば、無線(例えば、WiFi)及び有線(例えば、イーサーネット)での種々の通信を可能とする(集約された又は分散された)コンポーネントを通信コンポーネント434が備えることを理解する。
【0045】
図4に示すマスフローセンサ436は、図1に示す熱式マスフローセンサ123を実現するための当業者には公知であるコンポーネントの集まりを示す。これらのコンポーネントは、センサ素子、増幅器、アナログ/デジタル変換器、及びフィルタを有している。
【0046】
当業者であれば、ここで論じられる情報及び信号が種々の技術及び手法の何れかを用いて表現されることを理解する。例えば、上述した説明を通して参照されたデータ、指示、命令、情報、信号、ビット、シンボル、及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場・磁性粒子、光波場・光学粒子、又はそれらの組み合わせにて表現される。さらに、ここに開示された実施の形態に結び付けて述べられた種々の論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムステップは、図4に示されるものとは異なる別のコンポーネントによって実施されても良い。
【0047】
最後に、本発明は、マルチモード制御アルゴリズムを用いる流体の流れを制御するためのシステム及び方法を提供する。当業者であれば、ここに開示された実施の形態と同じ効果を実質的に得るために、数多くの変更物及び代替物が、本発明、その使用、及びその構成においてなされることを容易に理解できる。したがって、開示された例示の形式に本発明を限定する意図はない。多くの変更物、修正物、及び代替の構成は、特許請求の範囲に表現された本発明の精神及び範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7