(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】カメラボディ、カメラアクセサリ、カメラシステム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20240806BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240806BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240806BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240806BHJP
【FI】
G03B17/14
H04N23/68
H04N23/66
G03B5/00 J
(21)【出願番号】P 2022199637
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2020531297の分割
【原出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018136450
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】大石 末之
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114792(JP,A)
【文献】特開2015-045885(JP,A)
【文献】特開2017-182002(JP,A)
【文献】特開2018-112761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/14
G03B 5/00
H04N 23/68
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを備え、被写体像を形成するカメラアクセサリが取り付け可能なカメラボディであって、
前記カメラアクセサリとの間で情報を送受信する第1通信部と、
前記カメラアクセサリから情報を受信する第2通信部と、
を備え、
前記第1通信部は、前記カメラアクセサリと前記カメラボディとで振れを補正する際の振れ補正の分担割合を示す情報を前記カメラアクセサリへ送信し、
前記第2通信部は、前記レンズの位置に関する情報を前記カメラアクセサリから受信し、
前記第2通信部の通信開始の指示は、前記第1通信部で通信されるカメラボディ。
【請求項2】
前記第1通信部と、前記第2通信部とは互いに独立に通信し、
前記第2通信部は、前記カメラアクセサリからの情報を受信する一方向の通信を行う請求項1に記載のカメラボディ。
【請求項3】
前記第1通信部は、前記カメラアクセサリによる振れ補正の開始を指示する情報を前記カメラアクセサリへ送信する請求項1または2に記載のカメラボディ。
【請求項4】
前記第2通信部が備える信号線は、前記カメラアクセサリから信号が出力される信号線からなり、前記カメラボディから信号が出力される信号線を含まない請求項1~3のいずれか一項に記載のカメラボディ。
【請求項5】
前記レンズは、光軸方向に移動するフォーカスレンズである請求項1~4のいずれか一項に記載のカメラボディ。
【請求項6】
前記レンズは、光軸と交わる方向に移動する補正レンズである請求項1~5のいずれか一項に記載のカメラボディ。
【請求項7】
前記第1通信部は、カメラアクセサリへの情報の送信と、前記カメラアクセサリからの情報の受信とを同時に行う通信と、前記カメラアクセサリへの情報の送信のみを行う通信と、を行う請求項1~6のいずれか一項に記載のカメラボディ。
【請求項8】
前記第2通信部は、所定のデータ量の情報を周期的に受信する請求項1~7のいずれか一項に記載のカメラボディ。
【請求項9】
前記被写体像を撮像し、移動する撮像素子と、
振れを検出する第1検出部と、
前記第1検出部の検出結果と、前記分担割合とに基づいて、前記撮像素子を移動させる制御を行う第1制御部と、
を備える請求項1~8の何れか一項に記載のカメラボディ。
【請求項10】
レンズを備え、被写体像を形成するカメラボディに取り付け可能なカメラアクセサリであって、
移動可能なレンズと、
前記カメラボディとの間で情報を送受信する第3通信部と、
前記カメラボディへ情報を送信する第4通信部と、
を備え、
前記第3通信部は、前記カメラアクセサリと前記カメラボディとで振れを補正する際の振れ補正の分担割合を示す情報を前記カメラボディから受信し、
前記第4通信部は、前記レンズの位置に関する情報を前記カメラボディへ送信し、
前記第4通信部の通信開始の指示は、前記第3通信部で通信されるカメラアクセサリ。
【請求項11】
前記第3通信部と、前記第4通信部とは互いに独立に通信し、
前記第4通信部は、前記カメラボディへ情報を送信する一方向の通信を行う請求項10に記載のカメラアクセサリ。
【請求項12】
前記第3通信部は、前記カメラアクセサリによる振れ補正の開始を指示する情報を前記カメラボディから受
信する請求項10または11に記載のカメラアクセサリ。
【請求項13】
前記第4通信部が備える信号線は、前記カメラアクセサリから信号が出力される信号線からなり、前記カメラボディから信号が出力される信号線を含まない請求項10~12のいずれか一項に記載のカメラアクセサリ。
【請求項14】
前記レンズは、光軸方向に移動するフォーカスレンズである請求項10~13のいずれか一項に記載のカメラアクセサリ。
【請求項15】
前記レンズは、光軸と交わる方向に移動する補正レンズである請求項10~14のいずれか一項に記載のカメラアクセサリ。
【請求項16】
前記第4通信部は、所定のデータ量の情報を周期的に
送信する請求項10~15のいずれか一項に記載のカメラアクセサリ。
【請求項17】
振れを検出する第2検出部と、
前記レンズは、光軸と交わる方向に移動する補正レンズであり、
前記第2検出部の検出結果と、前記分担割合とに基づいて、前記補正レンズを移動させる制御を行う第2制御部と、
を備える請求項10~16のいずれか一項に記載のカメラアクセサリ。
【請求項18】
請求項1~9の何れか一項に記載のカメラボディと、請求項10~17のいずれか一項に記載のカメラアクセサリとを備えるカメラシステム。
【請求項19】
カメラアクセサリとカメラボディとの通信方法であって、
前記カメラアクセサリとの間で通信を行う第1通信
工程と、
カメラアクセサリからボディへの一方向の、前記第1通信
工程とは独立し
た通信であり、通信開始の指示が前記第1通信
工程により指示される第2通信
工程と、
を実行し、
振れを補正する際の前記カメラボディと前記カメラアクセサリとの分担割合に関する情報は、
前記第1通信
工程により送信され、
前記カメラアクセサリ
が備えるレンズの位置を示す情報は、前記第2通信
工程により送信される通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラボディ、カメラアクセサリ、カメラシステム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振れ補正装置を備える交換レンズが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、振れ補正装置を備える交換レンズを振れ補正装置を備えるカメラボディに装着する場合、交換レンズとカメラボディとの振れ補正の協働が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様は、レンズを備え、被写体像を形成するカメラアクセサリが取り付け可能なカメラボディであって、前記カメラアクセサリとの間で情報を送受信する第1通信部と、前記カメラアクセサリから情報を受信する第2通信部と、を備え、前記第1通信部は、前記カメラアクセサリと前記カメラボディとで振れを補正する際の振れ補正の分担割合を示す情報を前記カメラアクセサリへ送信し、前記第2通信部は、前記レンズの位置に関する情報を前記カメラアクセサリから受信し、前記第2通信部の通信開始の指示は、前記第1通信部で通信される構成とした。
【0005】
本発明の第2の態様は、レンズを備え、被写体像を形成するカメラボディに取り付け可能なカメラアクセサリであって、移動可能なレンズと、前記カメラボディとの間で情報を送受信する第3通信部と、前記カメラボディへ情報を送信する第4通信部と、を備え、前記第3通信部は、前記カメラアクセサリと前記カメラボディとで振れを補正する際の振れ補正の分担割合を示す情報を前記カメラボディから受信し、前記第4通信部は、前記レンズの位置に関する情報を前記カメラボディへ送信し、前記第4通信部の通信開始の指示は、前記第3通信部で通信される構成とした。
【0006】
本発明の第3の態様のカメラシステムは、上記のカメラボディと、上記のカメラアクセサリとを備える構成とした。
本発明の第4の態様は、カメラアクセサリとカメラボディとの通信方法であって、
前記カメラアクセサリとの間で通信を行う第1通信工程と、カメラアクセサリからボディへの一方向の、前記第1通信工程とは独立した通信であり、通信開始の指示が前記第1通信工程により指示される第2通信工程と、を実行し、振れを補正する際の前記カメラボディと前記カメラアクセサリとの分担割合に関する情報は、前記第1通信工程により送信され、前記カメラアクセサリが備えるレンズの位置を示す情報は、前記第2通信工程により送信される構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】カメラシステムの要部構成を説明するブロック図である。
【
図2】コマンドデータ通信とホットライン通信を例示するタイミングチャートである。
【
図3】RDY信号、CLK信号、DATAB信号、DATAL信号のタイミングを例示する図である。
【
図4】HCLK信号とHDATA信号のタイミングを例示する図である。
【
図5】第2データ92に含まれる情報を説明する図である。
【
図6】レンズ側制御部330による振れ補正レンズ361bの駆動量の算出を説明する図である。
【
図8】角度振れについてのトータル振れ状態とカットオフ周波数fcωと第1補正率Gω1の関係を示す図である。
【
図9】静止画/動画防振と、シャッター速度と、第2補正率との関係を示す図である。
【
図10】静止画/動画防振と防振モードとカットオフ周波数fc_inteωの関係を示す図である。
【
図11】並進振れについてのトータル振れ状態とカットオフ周波数fcαと第1補正率Gα1の関係を示す図である。
【
図12】静止画/動画防振と防振モードとカットオフ周波数fc_inteαの関係を示す図である。
【
図13】動画撮影を行う場合の振れ補正の状態を示すタイミングチャートである。
【
図14】静止画撮影を行う場合の振れ補正の状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
図1は、カメラシステム1の要部構成を説明するブロック図である。本実施形態のカメラシステム1は、カメラボディ2に交換レンズ3が着脱可能に装着されている。
図1において交換レンズ3の光軸Oと、光軸Oと交差する面内におけるX軸方向とY軸方向とを、それぞれ線で示す。
【0009】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、ボディ側制御部230、ボディ側通信部240、電源部250、撮像素子260、センサ駆動部265、信号処理部270、操作部材280、振れセンサ290および表示部285を有する。ボディ側制御部230は、ボディ側通信部240、電源部250、撮像素子260、センサ駆動部265、信号処理部270、操作部材280および振れセンサ290と接続される。
【0010】
ボディ側通信部240は、交換レンズ3のレンズ側通信部340との間で所定の通信を行う。ボディ側通信部240は、ボディ側制御部230に信号を送信する。ボディ側通信部240は、ボディ側第1通信部240aと、ボディ側第2通信部240bとを含む。ボディ側第1通信部240aは交換レンズ3と後述のコマンドデータ通信を行い、ボディ側第2通信部240bは交換レンズ3と後述のホットライン通信を行う。
【0011】
ボディ側第1通信部240aは後述のボディ側第1制御部230aと接続され、コマンドデータ通信でカメラボディ2と交換レンズ3との間で送受信される情報は、ボディ側第1制御部230aにより出力または入力される。ボディ側第2通信部240bはボディ側第1制御部230aおよび後述のボディ側第2制御部230bと接続され、ホットライン通信で交換レンズ3からカメラボディ2に送信される情報は、ボディ側第1制御部230aおよびボディ側第2制御部230bに送信される。
【0012】
電源部250は、不図示の電池の電圧をカメラシステム1の各部で使用される電圧に変換し、カメラボディ2の各部、および、交換レンズ3へ供給する。電源部250は、ボディ側制御部230の指示により、給電先ごとに給電のオンとオフとを切換え可能である。
【0013】
撮像素子260は、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子260は、ボディ側制御部230からの制御信号により、撮像面260Sの被写体像を撮像して信号を出力する。撮像素子260は、動画撮影と静止画撮影とが可能である。動画撮影とは、動画を記録する他、表示部285で連続的に結像状態を表示させるためのいわゆるスルー画の撮影も含むものとする。
撮像素子260から出力される信号は、信号処理部270によってスルー画用の画像データや静止画撮影用の画像データの生成に用いられる。撮像素子260は、信号処理部270、ボディ側制御部230と接続される。
【0014】
信号処理部270は、撮像素子260から出力された信号に対して所定の画像処理を行って画像データを生成する。生成された画像データは、不図示の記憶媒体に所定のファイル形式で記録されたり、表示部285による画像表示に用いられたりする。信号処理部270は、ボディ側制御部230、撮像素子260、および表示部285と接続される。
【0015】
振れセンサ290は、手振れ等によるカメラボディ2の振れを検出する。振れセンサ290は、角速度センサ290aと加速度センサ290bとを含む。振れセンサ290は、角度振れおよび並進振れを、X軸方向成分とY軸方向成分とに分けて検出する。
【0016】
角速度センサ290aは、カメラボディ2の回転運動によって発生する角速度を検出する。角速度センサ290aは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸の各軸回りの回転をそれぞれ検出し、X軸方向に関する振れ角速度ω1の検出信号とY軸方向に関する振れ角速度ω2の検出信号をボディ側制御部230へそれぞれ出力する。
【0017】
また、加速度センサ290bは、カメラボディ2の並進運動で発生する加速度を検出する。加速度センサ290bは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸方向の加速度をそれぞれ検出し、X軸方向の振れ加速度α1の検出信号とY軸方向の振れ加速度α2の検出信号をボディ側制御部230へそれぞれ出力する。
角速度センサ290aおよび加速度センサ290bは、それぞれホットライン通信の周期よりも短い周期で周期的に検出信号を出力することができる。
【0018】
ボディ側制御部230は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。ボディ側制御部230は、記憶部235を含む。記憶部235は、ボディ側制御部230によってデータの記録と読み出しが制御される。記憶部235は、ボディ側制御部230が実行する制御プログラム等を記憶する。ボディ側制御部230は、記憶部235に記憶されている制御プログラムを実行してカメラボディ2内の各部を制御する。
【0019】
ボディ側制御部230は、ボディ側第1制御部230aと、ボディ側第2制御部230bとを含む。ボディ側第1制御部230aは、カメラボディ2全体の制御を主に行い、ボディ側第2制御部230bは、センサ駆動部265と接続され、撮像素子260を光軸と交差する方向に移動させる振れ補正動作を主に制御する。ボディ側第2制御部230bは振れ補正動作の制御を主に行うので、振れ補正に関する制御を迅速に行うことができる。ボディ側第1制御部230aは、ボディ側第2制御部230bに対して振れ補正の開始や後述する補正率など振れ補正に関する指示を送信する。ボディ側第1制御部230aおよびボディ側第2制御部230bの間は、相互に必要なデータや指示の送受信が適宜行われる。
【0020】
センサ駆動部265は、例えば、アクチュエータと駆動機構と位置検出部を含む。センサ駆動部265は、ボディ側制御部230から出力される指示に基づき、光軸Oと交差する方向に撮像素子260を移動させる。撮像素子260が光軸Oと交差する方向に移動することにより、撮像素子260の撮像面260Sでの被写体像の振れ(像振れ)が抑えられる。センサ駆動部265は、光軸Oと交差する方向における撮像素子260の位置をホール素子などの位置検出部により検出する。
【0021】
レリーズボタンや操作スイッチ等を含む操作部材280は、カメラボディ2の外装面に設けられる。ユーザは、操作部材280を操作することにより、撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。また、ユーザは、操作部材280によって、振れ補正機能のONとOFFとを指示したり、防振モードをスポーツモードとノーマルモードとレンズ側優先モードのどれにするか指示したり、振れ補正の設定をすることができる。
【0022】
スポーツモードは、ノーマルモードより可動範囲を小さくしたり振れ補正角を小さくしたりする等、動きの速い被写体を追いかけたり、頻繁に構図を変更したり、シャッター速度を早くするような条件下での振れ補正に適したモードである。ノーマルモードは、可動範囲を機械的な可動範囲と一致させるなどして大きくし、振れ補正の効果を高めることができる。
レンズ側優先モードは、カメラボディ2と交換レンズ3とで防振モードが一致しない場合に、カメラボディ2の防振モードを交換レンズ3で設定された防振モードに合わせるモードである。
【0023】
ここで、本実施形態では、後述の通り振れ補正の設定の少なくとも一部を交換レンズ3の指示部375でも設定できるので、カメラボディ2と交換レンズ3とで振れ補正の設定が一致しない場合がある。振れ補正の設定がカメラボディ2と交換レンズ3とで一致しない場合、交換レンズ3での振れ補正効果とカメラボディ2での振れ補正効果とが一致せず、ライブビュー画像などが不自然に見える場合がある。
【0024】
本実施形態では、操作部材280による操作はボディ側第1制御部230aに送信され、指示部375による指示はコマンドデータ通信またはホットライン通信でボディ側第1制御部230aに送信される。したがって、ボディ側第1制御部230aで、カメラボディ2と交換レンズ3の振れ補正の設定を認識することが可能であり、ボディ側第1制御部230aは、交換レンズ3に振れ補正の設定に関する指示をコマンドデータ通信で送信し、カメラボディ2と交換レンズ3の振れ補正の設定を一致させることができる。
操作部材280は、ユーザの操作に応じた操作信号をボディ側制御部230へ送出する。
【0025】
表示部285は、例えば液晶表示パネルによって構成される。表示部285は、ボディ側制御部230からの指示により、信号処理部270によって処理された画像データに基づく画像や、操作メニュー画面等を表示する。また、表示部285をタッチパネル操作することにより、操作部材280に代わって撮影条件の設定などを行うこととしても良い。
【0026】
<交換レンズ>
交換レンズ3は、レンズ側制御部(算出部)330、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、撮像光学系360、レンズ駆動部370、指示部375、および振れセンサ390を有する。レンズ側制御部330は、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、レンズ駆動部370、指示部375、および、振れセンサ390と接続される。
【0027】
レンズ側制御部330は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ側制御部330は、レンズ側記憶部350に記憶されている制御プログラムを実行し、自動焦点調節制御、振れ補正制御など、交換レンズ3の各部を制御する。レンズ側制御部330による振れ補正制御は後述する。
【0028】
レンズ側記憶部350は、不揮発性の記憶媒体によって構成される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330によってデータの記録と読み出しが制御される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330が実行する制御プログラム等を記憶する他に、撮像光学系360の光学特性を示すデータや、振れ補正の設定に応じたカットオフ周波数(後述のfcω、fcα、fc_inteω、fc_inteα、)、第1補正率(後述のGω1、Gα1)を記憶する。
【0029】
撮像光学系360は、複数のレンズと絞り部材とを有し、結像面(撮像面260S)に被写体像を結像させる。撮像光学系360の少なくとも一部は、移動部材として、交換レンズ3内での位置を移動可能に構成されている。
撮像光学系360は、例えば、移動部材としてのフォーカシングレンズ361a、移動部材としての振れ補正レンズ361bを有する。
【0030】
レンズ駆動部370は、移動部材を移動させるものであり、レンズ駆動部370a、370bを含む。レンズ駆動部370はそれぞれ、アクチュエータと駆動機構、移動部材の位置検出部を含む。レンズ側制御部330は、レンズ駆動部370の位置検出部やアクチュエータからの信号により、移動部材の位置情報を周期的に作成する。
【0031】
また、レンズ駆動部370の位置検出部やアクチュエータからの信号により、レンズ側制御部330で、移動部材を移動駆動中であるか否か、移動部材の移動方向、移動部材が停止中であるか否か、などの移動状態が周期的に認識される。移動部材の位置情報が作成される周期および移動部材の移動状態が認識される周期は、ホットライン通信の周期より短くすることが可能である。
【0032】
フォーカシングレンズ361aは、レンズ駆動部370aにより、光軸O方向に進退移動が可能に構成されている。フォーカシングレンズ361aが移動することにより、撮像光学系360の焦点位置が調節される。フォーカシングレンズ361aの移動方向や移動量、移動速度などの駆動指示は、ボディ側制御部230から指示することとしてもよく、ボディ側制御部230からの指示を考慮してレンズ側制御部330から指示することとしてもよい。フォーカシングレンズ361aの光軸O方向の位置は、レンズ駆動部370aのエンコーダ等によって検出可能に構成されている。
【0033】
振れ補正レンズ361bは、レンズ駆動部370bにより、光軸Oと交差する方向に進退移動可能に構成されている。振れ補正レンズ361bが移動することにより、撮像素子260の撮像面260Sの被写体像の揺動(像振れ)が抑えられる。振れ補正レンズ361bの移動方向や移動量、移動速度などの駆動指示は、振れセンサ390の検出信号に基づいてレンズ側制御部330から指示することとしてもよく、振れセンサ390の検出信号とボディ側制御部230からの指示を考慮してレンズ側制御部330から指示することとしてもよい。
【0034】
振れ補正レンズ361bの位置は、レンズ駆動部370bのホール素子等によって検出可能に構成されている。振れ補正レンズ361bの位置情報として、レンズ駆動部370bは、例えば、光軸Oと交差する面内における振れ補正レンズ361bの光軸O´の位置を検出する。つまり、光軸Oを原点位置とする振れ補正レンズ361bの光軸O´のX軸方向の座標値と、Y軸方向の座標値とを検出する。そのため、振れ補正レンズ361bの位置情報は、光軸O´のX軸方向の位置とY軸方向の位置とで表すことも可能であり、光軸O´のX軸方向の移動量(座標値の差分)とY軸方向の移動量とで表すことも可能である。
【0035】
指示部375は、例えば、交換レンズ3の外筒に設けられている。ユーザは、指示部375を操作することによって、交換レンズ3での振れ補正機能のONまたはOFFの指示や、交換レンズ3での防振モードをスポーツモードにするかノーマルモードにするかなど、交換レンズ3での振れ補正の設定をすることができる。ユーザの操作に応じた操作信号は、指示部375からレンズ側制御部330へ送出される。
【0036】
振れセンサ390は、手振れ等による交換レンズ3の振れを検出する。振れセンサ390は、カメラボディ2の振れセンサ309と同等である。振れセンサ390は、角速度センサ390aと加速度センサ390bとの検出信号をレンズ側制御部330へそれぞれ出力する。角速度センサ390aおよび加速度センサ390bは、それぞれホットライン通信の周期よりも短い周期で周期的に検出信号を出力することができる。
【0037】
レンズ側通信部340は、ボディ側通信部240との間で所定の通信を行う。レンズ側通信部340は、レンズ側第1通信部340aと、レンズ側第2通信部340bとを含む。レンズ側第1通信部340aはカメラボディ2との間で後述のコマンドデータ通信を行い、レンズ側第2通信部340bはカメラボディ2に対して後述のホットライン通信を行う。
【0038】
レンズ側第1通信部340aはレンズ側制御部330と接続され、コマンドデータ通信で交換レンズ3からカメラボディ2に送信される情報は、レンズ側制御部330により作成される。レンズ側第2通信部340bもレンズ側制御部330と接続され、ホットライン通信で交換レンズ3からカメラボディ2に送信される情報は、レンズ側制御部330やレンズ側第2通信部340bなどにより作成される。
【0039】
図1のレンズ側通信部340とボディ側通信部240との間の矢印は信号の流れを示す。
レンズ側第1通信部340aは、ボディ側第1通信部240aに向けて、交換レンズ3がコマンドデータ通信可能であるか否かを示す信号(以下、RDY信号)とデータ信号(以下、DATAL信号)を出力する。ボディ側第1通信部240aは、レンズ側第1通信部340aに向けて、コマンドデータ通信のクロック信号(以下、CLK信号)とデータ信号(以下、DATAB信号)を出力する。
【0040】
レンズ側第2通信部340bは、ボディ側第2通信部240bに向けて、ホットライン通信のクロック信号(以下、HCLK信号)とデータ信号(以下、HDATA信号)を出力する。
ホットライン通信は、交換レンズ3からカメラボディ2への一方向のデータ通信であり、コマンドデータ通信は、交換レンズ3とカメラボディ2との双方向のデータ通信である。
【0041】
<通信の詳細>
カメラシステム1は、コマンドデータ通信とホットライン通信とによる2つの独立した通信系統を備えるので、それぞれの通信を並行して行うことができる。
つまり、カメラボディ2および交換レンズ3は、コマンドデータ通信を行っているときにホットライン通信を開始することも終了することもできる。また、ホットライン通信を行っているときにコマンドデータ通信を行うことも可能である。
従って、交換レンズ3は、コマンドデータ通信中であってもホットライン通信でカメラボディ2にデータを継続的に送信することができる。例えば、データ量の増大によりコマンドデータ通信に要する時間が長くなっても、ホットライン通信を必要なタイミングで行うことができる。
【0042】
さらに、カメラボディ2は、ホットライン通信でデータを受信している間であっても、コマンドデータ通信で、交換レンズ3への種々の指示や要求を任意のタイミングで送信することができるとともに、交換レンズ3から任意のタイミングでデータを受けることができる。
【0043】
図2は、コマンドデータ通信とホットライン通信を例示するタイミングチャートである。
カメラボディ2は、コマンドデータ通信によりホットライン通信の開始を指示した後、例えば時刻t1以降、ホットライン通信によって交換レンズ3からのデータを周期的に受信する。
また、カメラボディ2は、コマンドデータ通信により、交換レンズ3との間でデータを送受信する。詳しくは、カメラボディ2は、時刻t2からt3、および、時刻t9からt10の間で、交換レンズ3に送信指示するとともに各種データを受信し、時刻t5からt6、および、時刻t12からt13において、交換レンズ3へ各種データを送信し、その合間の時刻t4、t7、t8およびt11において、それぞれ、振れ補正の開始指示、絞り駆動指示およびフォーカス駆動指示などの移動部材の移動制御に関する指示を交換レンズ3へ送信する。
【0044】
本実施形態において、コマンドデータ通信は、送受信するデータの種類が多く、また、交換レンズ3への指示頻度も高い。また、データの種類によっては送受信に要する時間が長くなってしまい、時刻t2からt3、時刻t5からt6、時刻t9からt10、および、時刻t12からt13で各種データを送受信する時間は、時刻t4、t7、t8およびt11で指示を送信する時間より長い。
【0045】
交換レンズ3は、例えば、コマンドデータ通信によって送られるカメラボディ2からの指示に応じて、交換レンズ3の情報(焦点距離、撮影距離、絞り値、撮像光学系360の光学特性等)を示すデータをカメラボディ2へ送信する。交換レンズ3はさらに、カメラボディ2から送信されるカメラボディ2の情報(フレームレート、カメラボディ2の設定等)を示すデータを受信する。
【0046】
コマンドデータ通信は、1回の送受信に要する時間も長く、送受信の頻度も多いため、短い周期でのデータ通信を継続して行うことが難しい。
これに対し、ホットライン通信は、コマンドデータ通信に用いる通信用端子とは異なる通信用端子を用いるため、交換レンズ3からカメラボディ2へのデータ通信を短い周期で継続して行うことができる。例えば、ホットライン通信を、カメラボディ2の起動処理が終わってから露光中も含めて遮断処理まで、所望の期間に行うことができる。
ホットライン通信の開始指示と終了指示は、コマンドデータ通信によってカメラボディ2から交換レンズ3へ送信されるがこの限りではない。
【0047】
<コマンドデータ通信の説明>
次に、
図3を用いて、コマンドデータ通信について説明する。
図3は、RDY信号、CLK信号、DATAB信号、DATAL信号のタイミングを例示する。
1回のコマンドデータ通信では、カメラボディ2から交換レンズ3へ1つのコマンドパケット402を送信した後に、カメラボディ2と交換レンズ3との間で相互に1つずつのデータパケット406,407が送受信される。
【0048】
レンズ側第1通信部340aは、コマンドデータ通信の開始時(t21)にはRDY信号の電位をLレベルとする。ボディ側第1通信部240aは、RDY信号がLレベルであると、CLK信号401の出力を開始する。CLK信号401の周波数は、例えば8MHzである。ボディ側第1通信部240aは、クロック信号401に同期して、所定長のコマンドパケット402を含むDATAB信号を出力する。コマンドパケット402は、HレベルとLレベルの切り替えで示される。ボディ側第1通信部240aは、コマンドパケット402のデータ長に相当する期間のCLK信号401を出力したら、その後CLK信号の出力を終了する(t22)。
【0049】
コマンドパケット402には、例えば、同期用データ、何番目のコマンドデータ通信なのかを識別するためのデータ、カメラボディ2からの指示を示すデータ、後続のデータパケット406のデータ長を示すデータ、通信エラーチェック用のデータなどが含まれる。コマンドパケット402に含まれる指示は、例えば、カメラボディ2から交換レンズ3への移動部材の駆動指示、カメラボディ2から交換レンズ3へのデータの送信指示、などがある。
【0050】
交換レンズ3は、コマンドパケット402に含まれる通信エラーチェック用のデータに、受信したコマンドパケット402から算出された値が一致するか否かにより、通信エラーの有無を判断すればよい。
コマンドパケット402の受信を完了すると、レンズ側第1通信部340aがRDY信号をHレベルにするとともに、レンズ側制御部330がコマンドパケット402に基づく第1制御処理404を開始する(t22)。
【0051】
レンズ側第1通信部340aは、レンズ側制御部330による第1制御処理404が完了すると、RDY信号をLレベルにすることができる(t23)。ボディ側第1通信部240aは、入力されるRDY信号がLレベルになると、CLK信号405を出力する。
【0052】
ボディ側第1通信部240aは、CLK信号405に同期して、データパケット406を含むDATAB信号を出力する。また、レンズ側第1通信部340aは、CLK信号405に同期して、所定長のデータパケット407を含むDATAL信号を出力する。データパケット406,407は、HレベルとLレベルの切り替えで示される。ボディ側第1通信部240aは、データパケット406のデータ長に相当する期間のCLK信号405を出力したら、その後CLK信号の出力を終了する(t24)。
【0053】
データパケット406、407は、コマンドパケット402によって示されたデータ数を有する可変長のデータである。データパケット406、407には、同期用のデータ、カメラボディ2の情報を示すデータ、交換レンズ3の情報を示すデータ、通信エラーチェック用のデータなどが含まれる。
【0054】
カメラボディ2から交換レンズ3に送信されるデータパケット406は、移動部材の駆動量を示すデータ、カメラボディ2内での設定や動作状態を伝えるためのデータなどを含む。
交換レンズ3からカメラボディ2に送信されるデータパケット407は、交換レンズ3の機種名情報を示すデータ、交換レンズ3での振れ補正制御を示すデータ、撮像光学系360の光学特性に関するデータ、などを含む。
【0055】
受信側の機器(交換レンズ3またはカメラボディ2)は、データパケット406、407に含まれる通信エラーチェック用のデータに、受信したデータパケット406,407から算出された値が一致するか否かにより、通信エラーの有無を判断すればよい。
【0056】
データパケット406,407の送受信が完了すると、レンズ側第1通信部340aはRDY信号をHレベルにするとともに、レンズ側制御部330はデータパケット406,407に基づいて第2制御処理408を開始する(t24)。
【0057】
(第1および第2制御処理の説明)
次に、コマンドデータ通信の第1制御処理404および第2制御処理408の例を説明する。
例えば、コマンドパケット402が、フォーカシングレンズ361aの駆動指示を含むとする。レンズ側制御部330は、第1制御処理404として、フォーカシングレンズ361aの駆動指示を受信したことを示すデータパケット407を生成する。
【0058】
次に、レンズ側制御部330は、第2制御処理408として、データパケット406によって示された移動量だけフォーカシングレンズ361aを移動させるように、レンズ駆動部370aへ指示を出す。これにより、フォーカシングレンズ361aの光軸O方向への移動が開始される。レンズ側第1通信部340aは、レンズ側制御部330からレンズ駆動部370aへフォーカシングレンズ361aの移動指示が出されると、第2制御処理408を完了したとしてRDY信号をLレベルにする(t25)。
【0059】
また、例えば、コマンドパケット402が、ホットライン通信の開始指示を含むとする。レンズ側制御部330は、第1制御処理404として、ホットライン通信の開始指示を受信したことを示すデータパケット407を生成する。次に、レンズ側制御部330は、第2制御処理408として、レンズ側第2通信部340bによりホットライン通信を開始させる。レンズ側第1通信部340aは、ホットライン通信を開始すると、第2制御処理408を完了したとしてRDY信号をLレベルにする(t25)。
【0060】
また、例えば、コマンドパケット402が、振れ補正の駆動指示を含むとする。レンズ側制御部330は、第1制御処理404として、振れ補正レンズ361bの駆動指示を受信したことを示すデータパケット407を生成する。
【0061】
次に、レンズ側制御部330は、第2制御処理408として、データパケット406によって示された補正率や振れ補正制御指示と振れセンサ390の出力に基づいて振れ補正レンズ361bを移動させるように、レンズ駆動部370bへ指示を出す。これにより、振れ補正レンズ361bの光軸Oと交差する方向への移動が開始される。レンズ側第1通信部340aは、レンズ側制御部330からレンズ駆動部370bへ振れ補正レンズ361bの移動指示が出されると、第2制御処理408を完了したとしてRDY信号をLレベルにする(t25)。
【0062】
<ホットライン通信の説明>
次に、
図4を用いて、ホットライン通信について説明する。
図4は、HCLK信号とHDATA信号のタイミングを例示する。1回のホットライン通信では、交換レンズ3からカメラボディ2に対して、1つのHCLK信号502に同期させて1つのHDATA信号503が送信される。
【0063】
本実施の形態によるカメラシステム1では、ホットライン通信の開始指示を送受信する前に予め交換レンズ3とカメラボディ2との間で、ホットライン通信に関することが取り決められている。ホットライン通信に関することとして、例えば、1回のホットライン通信により送信するHDATA信号のデータ長(バイト数)、HDATA信号に含めるデータとその順序、HCLK信号のクロック周波数、周期(
図4のTinterval)、1周期における通信時間(
図4のTtransmit)等がある。
本実施形態では、HCLK信号の周波数は2.5MHz、1回のホットライン通信のデータ長はコマンドパケット402より長く、1回のホットライン通信の周期は1ミリ秒、1周期における通信時間は送信間隔の75%未満とするが、この限りではない。
【0064】
なお、1回のホットライン通信とは、ホットライン通信の1周期で行われるデータ送信のことをいい、カメラボディ2からのコマンドデータ通信によるホットライン通信開始指示からホットライン通信終了指示までとは異なる。
【0065】
まず、ホットライン通信におけるレンズ側第2通信部340bの動作について説明する。レンズ側第2通信部340bは、時刻t31以前にコマンドデータ通信によりホットライン通信の開始の指示が受信されると、カメラボディ2へのHCLK信号の出力を開始する(t31)。HCLK信号は周期的に交換レンズ3から出力されるものであり、
図4では、HCLK信号502、502´、…として示される。
【0066】
レンズ側第2通信部340bは、HCLK信号に同期して、HDATA信号を出力する。HDATA信号は、HレベルとLレベルの切り替えで示される。1つのHDATA信号は所定のデータ長であり、
図4ではD0からD7の8ビットを含む1バイトがN個分あるものとして表す。
1つのHDATA信号は、固定長とするために未使用のビット領域や未使用のバイト領域を含めてもよい。未使用のビット領域や未使用のバイト領域には、予め定められた初期値が入力される。HDATA信号はHCLK信号502、502´、…に同期させて周期的に交換レンズ3から出力されるものであり、
図4では、HDATA信号503、503´、…として表す。
【0067】
レンズ側第2通信部340bは、HDATA信号の送信が完了すると(t32)、次のHDATA信号の送信を開始する時刻t34までHCLK信号の出力を停止する。時刻t31からt32までを1回のホットライン通信とし、時刻t31からt34までをホットライン通信の1周期とする。レンズ側第2通信部340bは、時刻t34から2回目のホットライン通信を開始する。
レンズ側第2通信部340bは、コマンドデータ通信によってカメラボディ2からホットライン通信の終了の指示が送信されるまで、周期的にホットライン通信を続ける。
【0068】
レンズ側第2通信部340bは、内蔵するシリアル通信部により、HDATA信号503、503´、…をボディ側第2通信部240bに送信する。レンズ側第2通信部340bは、例えばDMA(Direct Memory Access)機能を用いて、不図示のメモリのデータ領域に格納されているデータをHDATA信号として効率良く転送する。DMA機能は、CPUの介在なしに自動でメモリ上のデータにアクセスする機能である。
【0069】
次に、ホットライン通信におけるボディ側第2通信部240bの動作について説明する。本実施形態では、ボディ側第2通信部240bは、電源オン時の初期化処理が終了すると、または、コマンドデータ通信によりホットライン通信の開始指示を送信すると判断すると、受信可能状態で待機する。
【0070】
ボディ側第2通信部240bは、交換レンズ3からHDATA信号の送信が開始され、その開始時刻t31から所定時間Terror0経過後(時刻t33)までに所定長のデータの受信を完了(t32)すると、正常に通信できたとして受信したデータを確定する。所定時間Terror0は、1周期における通信時間Ttransmitに余裕を持たせた時間であり、例えば、1周期の80%とする。ボディ側第2通信部240bは、HDATA信号を1回受信した後も、受信可能状態で待機し、時刻t31から1周期が経過すると、次のHDATA信号の受信を開始する(t34)。
【0071】
ボディ側第2通信部240bは、レンズ側通信部340によりHDATA信号の送信が開始されてから、所定時間Terror0以内に所定長のデータの受信を完了しない場合には、正常に通信できなかった(通信エラー)として受信したデータを破棄する。
なお、ホットライン通信において、1周期における通信時間(Ttransmit)は、各周期の間(時刻t33からt34の間)で通信エラー処理などが行えるように75%を超えないのが好ましいが、この限りではない。
【0072】
<ホットラインデータ>
1回のホットライン通信では、1つのホットラインデータ90が交換レンズ3からカメラボディ2に送信される。
ホットラインデータ90は、移動部材の位置情報および移動部材の位置情報とは異なる情報の少なくとも2種類の情報を、移動部材毎に含めることができる。
本実施形態の場合、ホットラインデータ90は、フォーカシングレンズ361aの位置情報とフォーカシングレンズ361aの駆動量の算出に用いられうる情報とを含む第1データ91と、振れ補正レンズ361bの位置情報と振れ補正レンズ361bの駆動量の算出に用いられうる情報とを含む第2データ92と、を含む。第1データ91に含める情報と第2データに含める情報とは、同じでもよく、一部が異なっていてもよい。また、カメラボディ2は、移動部材の駆動量を算出するためにホットライン通信で送信される情報を用いてもよいし、用いなくてもよい。
【0073】
移動部材の位置情報とは異なる情報は、移動部材の駆動量の算出に用いられ得る情報であり、移動部材毎に設定可能である。例えば、位置情報の信頼性、移動部材の移動状態、指示部375などの操作部材の操作状態の少なくとも一つを含む。上述の情報や状況などは、レンズ側制御部330やレンズ側第2通信部340bなどで数値や識別子の形で表現されてホットラインデータ90に含められる。
【0074】
移動部材の位置を示す位置情報は、移動部材がフォーカシングレンズ361aの場合、光軸O方向におけるフォーカシングレンズ361aの相対的または絶対的な位置を示し、レンズ駆動部370aのアクチュエータのパルス数やレンズ駆動部370aにより検出された検出値などである。
移動部材の位置を示す位置情報は、移動部材が振れ補正レンズ361bの場合、光軸Oと交差する面内における振れ補正レンズ361bの相対的または絶対的な位置を示し、光軸Oと交差する面内における振れ補正レンズ361bの光軸O´の座標値または移動量などである。
【0075】
位置情報の信頼性は、位置情報が有効か無効であるかを示す識別子、位置情報の信頼性を示す数値、などで表される。
【0076】
移動部材の移動状態は、移動部材が移動中であるか否かを示す識別子、移動部材が移動可能な状況にあるか否かを示す識別子、移動部材を駆動停止中であるか否かを示す識別子、移動部材を駆動開始中であるか否かを示す識別子、移動部材の移動方向を示す識別子、などで表される。
【0077】
指示部375などの操作部材の操作状態は、指示部375により指示される防振モードを示す識別子、指示部375の有無を示す識別子、などであらわされる。
【0078】
(第2データ92の説明)
図5は、第2データ92に含まれる情報を説明する図である。
第2データ92は、例えば、振れ補正レンズ361bの位置に関するデータ92h、92i、振れセンサ390からの検出信号に基づく振れ状態に関するデータ92a~92d、振れ補正量または算出された振れ量の信頼性に関するデータ92e、92f、振れ補正レンズ361bの移動状態に関するデータ92g、指示部375による指示を示すデータ92qの少なくとも1つを含む。
【0079】
データ92a~92dは、振れセンサ390からの検出信号に基づく振れ状態に関し、振れセンサ390からの検出信号に基づいてレンズ側制御部330または振れセンサ390により選択された識別子を含む。
レンズ側制御部330は、振れセンサ390の検出信号から振れ状態を判断する。本実施形態では、振れ状態として、構図変更中の状態、構図が安定した状態、三脚に固定された状態、等を判断する。レンズ側制御部330は、構図変更中か否かを示す識別子、構図安定状態か否かを示す識別子、三脚固定状態か否かを示す識別子、をそれぞれ選択し、各識別子をホットラインデータ90に含めてカメラボディ2に送信する。
例えばレンズ側制御部330は、角速度センサ390aから出力されるX軸方向の角度振れ検出信号に基づいて、構図変更中か否かを示す識別子、構図安定状態か否かを示す識別子、三脚固定状態か否かを示す識別子、をそれぞれ選択し、データ92aとして設定する。
データ92bは、上記判断がY軸方向について行われる点がデータ92aと相違する。
データ92cは、上記判断が並進振れについて行われる点がデータ92aと相違する。
データ92dは、上記判断がY軸方向の並進振れについて行われる点がデータ92aと相違する。
ボディ側制御部230は、データ92a~92dにより、交換レンズ3での振れ状態の判断結果を知ることができ、交換レンズ3とカメラボディ2とで振れ状態を一致させることができる。
【0080】
データ92gは、振れ補正レンズ361bの移動状態に関し、レンズ側制御部330により選択された識別子を含む。本実施形態では、振れ制御状態として、静止画防振中、動画防振中、非振れ補正中などが挙げられる。非振れ補正中とは、レンズ駆動部370bが駆動せず振れ補正が行われていない状態をいう。
【0081】
静止画防振中とは、カメラボディ2からコマンドデータ通信で送信される静止画防振開始指示やシャッター速度に基づき、静止画の撮像時に適した振れ補正を行っている状態をいう。
動画防振中とは、カメラボディ2からコマンドデータ通信で送信される動画防振開始指示に基づき、動画の撮像時やライブビュー画像撮像時に適した振れ補正を行っている状態をいう。
本実施形態では、動画防振中の方が高速撮影時の静止画防振中より振れ補正の効果が強く出るような設定となっている。
ボディ側制御部230は、データ92gにより、振れ補正レンズ361bの移動状態を知ることができる。
【0082】
データ92h、92iは、振れ補正レンズ361bの位置に関し、振れ補正レンズ361bの位置を示す数値または振れ補正レンズ361bの移動量を示す数値で表される。
データ92hは、X軸方向における振れ補正レンズ361bの光軸O´の現在位置を示す。本実施形態において、データ92hは、交換レンズ3内で検出されたX軸方向における座標値を撮像素子260の撮像面260Sでの座標値(像面換算値)に換算して示す。像面換算値は、交換レンズ3で検出された振れ補正レンズ361bの座標値に、防振係数を掛けて算出される。防振係数は、振れ補正レンズ361bの単位移動量に対する撮像面260Sに於ける像面の移動量を示し、撮像光学系360の焦点距離および撮影距離によって変動する値であり、レンズ側記憶部350などで記憶されている。
【0083】
レンズ側制御部330は、振れ補正レンズ361bの座標値が検出された際の焦点距離や撮影距離に応じた防振係数をレンズ側記憶部350から読み出し、像面換算値を算出する。交換レンズ3で像面換算値を算出することにより、焦点距離や撮影距離に応じた防振係数をカメラボディ2へ送信する必要がなくなるという効果があるが、像面換算前の値をホットライン通信で送信することとしてもよい。
【0084】
データ92iは、上記判断がY軸方向について行われる点がデータ92hと相違する。
データ92e、92fは、振れ補正レンズ361bの位置情報の信頼性、算出された振れ量や振れ補正量の信頼性に関し、レンズ側制御部330がデータ92h~92oの信頼性に基づいて選択した識別子を含む。本実施形態では、データ92e、92fは、データ92h~92oがそれぞれ有効であるか否かを示すものとするが、この限りではない。
ボディ側制御部230は、データ92e、92fにより、データ92h~92oの信頼性を知ることができる。
【0085】
データ92qは、指示部375による指示を示し、例えば、指示部375がスポーツモードとノーマルモードとのどれを指示しているか、または、指示部375の有無を示す識別子を含む。レンズ側制御部330は、指示部375の無い交換レンズ3の場合、データ92qに、指示部375が無いことを示す識別子を含める。
【0086】
<振れ補正の説明>
本実施の形態によるカメラシステム1は、レンズ駆動部370bによって振れ補正レンズ361bを駆動させて行うレンズ側振れ補正と、センサ駆動部265によって撮像素子260を駆動させて行うボディ側振れ補正とが可能に構成されている。そのため、例えば、レンズ側振れ補正とボディ側振れ補正とを協働させて、振れ補正効果の向上が可能である。
【0087】
レンズ側振れ補正およびボディ側振れ補正では、振れ補正に関する各設定や振れの状態などに応じて、制御を適宜変更することもできる。
例えば、振れの状態に応じて、振れ補正レンズ361bまたは撮像素子260(以下、可動部とする)の可動範囲や補正する振れの周波数帯域を変更させることができる。三脚固定状態では、三脚固定時に発生し易い10数Hzの周波数帯域の振れ検出信号を抽出して補正してもよい。構図変更中状態では、構図変更に伴うユーザの意図した交換レンズ3の振れまで補正しないように、周波数帯域を特定の範囲に制限したり、可動範囲を小さくしたりしてもよい。構図安定状態では、構図変更中状態よりも周波数帯域の範囲を広くして、可動範囲を機械的な可動範囲と一致させるなどして大きくしたりしてもよい。
【0088】
また、防振モード、シャッター速度等に応じて、補正する振れの周波数帯域や可動部の可動範囲を変更させることもできる。防振モードがスポーツモードの場合、ノーマルモードよりも速いシャッター速度での撮影に対応させるため、可動範囲を小さくしてもよい。防振モードがノーマルモードの場合、可動範囲をスポーツモードより大きくして、振れ補正の効果を高めることができる。
【0089】
また、静止画撮影中と動画撮影中とでは、振れ補正制御を変更させることとしてもよい。
動画撮影中の場合、大きな振れも補正できるように、周波数帯域を広くしたり、可動範囲を大きくしたりしてもよい。静止画撮影中の場合、動画撮影中よりも周波数帯域の範囲を狭くしてノイズを除去するなどして、精度を向上させてもよい。本実施形態では、静止画防振開始指示と動画防振開始指示との2種類の指示のうちいずれか一つをコマンドデータ通信でカメラボディ2から交換レンズ3に送信することにより、交換レンズ3で静止画または動画に適した振れ補正制御を行うことができる。
【0090】
動画防振開始指示には、交換レンズ3での振れ補正の分担割合を示す第2補正率(Gω2、Gα2)が含まれている(
図9参照)。第2補正率(Gω2、Gα2)は、交換レンズ3とカメラボディ2とで協働して振れを補正する際の、交換レンズ3の振れ補正の割合を示すものである。第2補正率(Gω2、Gα2)は、カメラボディ2の振れ補正の割合を示すこととし、レンズ側制御部330でカメラボディ2の振れ補正の割合と合わせて100%になるような交換レンズ3の振れ補正の割合を算出することとしてもよい。第2補正率(Gω2、Gα2)は、角度振れと並進振れでそれぞれ設定可能である。角度振れ補正に関する第2補正率Gω2と並進振れ補正に関する第2補正率Gα2とを合わせて第2補正率とする。
また、静止画防振開始指示には、シャッター速度に応じた第2補正率が含まれている。シャッター速度の変更により第2補正率が変化する場合、第2補正率を変化させて静止画防振開始指示が再度カメラボディ2から交換レンズ3に送信される。なお、シャッター速度は、撮像素子260の光電変換部の蓄積時間や機械的なシャッター機構を設ける場合はその駆動速度に応じたものであり、電気的なシャッター速度でも、機械的なシャッター速度でも構わない。
本実施形態では、静止画防振開始指示とともにシャッター速度に応じた第2補正率をカメラボディ2から交換レンズ3へコマンドデータ通信で送信することとしたが、交換レンズ3にシャッター速度に応じた第2補正率などを記憶させておき、カメラボディ2からシャッター速度に関する情報をコマンドデータ通信で送ることとしても良い。
カメラボディ2は、振れ補正の設定(防振モードや振れ状態)によって第2補正率を変更することとしてもよい。第2補正率が変化する場合、第2補正率を変化させた動画防振開始指示または静止画防振開始指示が再度カメラボディ2から交換レンズ3に送信される。
【0091】
<振れ補正の目標位置算出>
ここで、
図6を用いて、レンズ側制御部330による振れ補正レンズ361bの駆動量の算出を説明する。本実施形態では、駆動量とは、振れを補正するために必要な振れ補正レンズ361bの目標位置までの駆動量であり、全振れ量ともいう。また、駆動量として、振れ補正レンズ361bの目標位置を算出する。
カメラボディ2におけるボディ側第2制御部230bは、レンズ側制御部330と同様に、振れ補正の駆動量として撮像素子260の目標位置を算出する。
【0092】
レンズ側制御部330は、角速度センサ390aの検出信号に基づいてX軸回りの角速度振れを補正する目標位置LC1と、加速度センサ390bの検出信号に基づいてX軸方向の加速度振れを補正する目標位置LC2とを算出し、振れ補正レンズ361bのX軸方向の振れを補正する目標位置LCを算出する。
【0093】
尚、以上の説明では、X軸についてのみ説明したが、レンズ側制御部330は、Y軸についても同様に、角速度センサ390a、及び、加速度センサ390bの検出信号に基づいて、角速度振れを補正する目標位置LC1´、及び、並進振れを補正する目標位置LC2´を算出し、Y軸方向の振れを補正する目標位置LC´を算出する。以降、X軸、Y軸の作動は同様であるため、X軸についてのみ記載する。
【0094】
レンズ側制御部330は、フィルタ部331、第1変更部332、第2変更部333、積分部334、第1判定部335、第2判定部336、第3判定部337を備える。角速度センサ390aにより検出された振れ角速度ω1は、フィルタ部331に入力される。フィルタ部331は、振れ角速度ω1から所定のカットオフ周波数fcω以下をカットし、振れ角速度ω2を第1変更部332へ出力する。
第1変更部332は、所定の第1角度振れ補正率Gω1を振れ角速度ω2に乗算して振れ角速度ω3を第2変更部333に出力する。第2変更部333は、所定の第2角度振れ補正率Gω2を振れ角速度ω3に乗算して振れ角速度ω4を積分部334に出力する。積分部334は振れ角速度ω4を積分して角度振れを補正するための振れ補正レンズ361bの目標位置LC1を出力する。
【0095】
第1判定部335は、角速度センサ390aから出力される検出信号(振れ角速度ω1)が入力され、交換レンズ3に生じた角度振れに関するレンズ側振れ状態を判定する。
本実施形態では、振れ状態として、構図変更中状態であるか否か、構図安定状態であるか否か、三脚固定状態であるいか否か、の少なくとも一つが挙げられる。構図変更中状態とは、ユーザが交換レンズ3を水平または垂直方向に揺動させて構図を変更している状態である。構図安定状態とは、ユーザが交換レンズ3の位置を固定させて構図が安定された状態である。三脚固定状態とは、交換レンズ3若しくはカメラボディ2が三脚に固定された状態である。
【0096】
第1判定部335の判定したレンズ側振れ状態は、第2判定部336に入力される。また、第1判定部335の判定したレンズ側振れ状態は、カメラボディ2へ後述のホットライン通信で送信される。
【0097】
ここで、ボディ側第2制御部230bは、角速度センサ290aの検出信号に基づいて、カメラボディ2に生じた角度振れに関するボディ側振れ状態を判定する。ボディ側第2制御部230bは、振れ状態として、レンズ側制御部330と同様の構図変更中状態、構図安定状態、三脚固定状態の他に、レンズ側優先状態を判定する。レンズ側優先状態とは、ユーザの設定などにより、振れ状態について、交換レンズ3とカメラボディ2との判定が一致しない場合、交換レンズ3の判定を優先する状態である。
【0098】
ボディ側第2制御部230bで判定されたボディ側振れ状態は、後述のコマンドデータ通信でレンズ側制御部330に送信され、第2判定部336に入力される。従って、第2判定部336には、レンズ側振れ状態とボディ側振れ状態とが入力される。第2判定部336は、レンズ側振れ状態とボディ側振れ状態に基づいて、角度振れについてのトータル振れ状態を判定する。
【0099】
図7に示すように、第2判定部336は、ボディ側振れ状態がレンズ側優先状態のときはレンズ側振れ状態をトータル振れ状態とし、ボディ側判定結果がレンズ側優先状態以外のときはボディ側振れ状態をトータル振れ状態とする。
【0100】
第2判定部336は、角度振れについてのトータル振れ状態と閾値と係数の関係(
図8)を記憶しており、角度振れについてのトータル振れ状態に対応するカットオフ周波数fcωをフィルタ部331に出力し、第1補正率Gω1を第1変更部に出力する。
【0101】
第2変更部333には、ボディ側第1制御部230aで判定されてコマンドデータ通信で送信された第2補正率Gω2が入力される。
【0102】
本実施形態では、カメラボディ2の第2補正率と交換レンズ3の第2補正率とを足すと1になるように設定されている。ボディ側第1制御部230aは、
図9に示すように、静止画/動画防振と、シャッター速度と、第2補正率との関係を記憶している。本実施形態では、X軸方向における第2補正率とY軸方向における第2補正率とは同じものとしたが、この限りではない。また、角度振れの第2補正率Gω2と並進振れの第2補正率Gα2も同じものとしたが、この限りではない。
本実施形態では、シャッター速度が速い場合には交換レンズ3で高速撮影に適した振れ補正を行うこととし、シャッター速度が速くない場合には交換レンズ3とカメラボディ2とで振れ補正を協働させて振れ補正の効果を大きくすることとした。
【0103】
従って、静止画防振でシャッター速度が例えば1/60秒時より速い場合、交換レンズ3の第2補正率を1、カメラボディ2の第2補正率を0としている。また、動画防振、または、静止画防振でシャッター速度が例えば1/60秒時より遅い場合、交換レンズ3の第2補正率を0.5、カメラボディ2の第2補正率を0.5としている。第2補正率は適宜変更可能であり、カメラボディ2に振れ補正機能が無い場合には、交換レンズ3の第2補正率を1、カメラボディ2の第2補正率を0とする。
【0104】
また、交換レンズ3に角度振れ補正機能はあるが並進振れ補正機能が無い場合、角度振れに関する第2補正率は上述のように設定し、並進振れに関して、交換レンズ3の第2補正率を0、カメラボディ2の第2補正率を1とする。また、カメラボディ2と交換レンズ3の振れ補正機能の精度に応じて第2補正率を調整しても良い。第2補正率は、防振開始指示のコマンドデータ通信でカメラボディ2から交換レンズ3に送信することとしたが、補正率変更コマンドデータ通信を設けて防振開始後に変更される度に送信することとしてもよい。
【0105】
第3判定部337には、ボディ側第1制御部230aからコマンドデータ通信で送信された振れ補正に関する指示が入力される。カメラボディ2から送信される振れ補正に関する指示には、振れ補正制御が動画防振と静止画防振のどちらであるか、防振モードがスポーツモードとノーマルモードとレンズ側優先モードのどれであるか、が含まれる。また、第3判定部337には、指示部375から、ユーザにより設定された防振モードが入力される。
【0106】
第3判定部337は、
図10に示す、振れ補正に関する指示(静止画/動画防振、防振モード)と閾値(周波数帯域、カットオフ周波数fc_inteω)の関係を記憶しており、対応するカットオフ周波数fc_inteωを積分部334に出力する。本実施形態ではスポーツモードでのカットオフ周波数fc_inteωをノーマルモードでのカットオフ周波数fc_inteωより大きくしているがこの限りではない。積分部334は、振れ角速度ω4とカットオフ周波数fc_inteωとに基づいて積分し、角度振れについての目標位置LC1を算出する。
【0107】
レンズ側制御部330は、振れ角速度を補正するために必要な角度振れ目標位置LC1の算出と同様に、並進振れを補正するために必要な並進振れ目標位置LC2を算出し、LC1とLC2とを加減算して最終的な目標位置LCを算出する。
【0108】
ここで、レンズ側制御部330による並進振れ目標位置LC2の算出について、角度振れ目標位置LC1の算出とは異なる点を記載する。なお、角度振れ目標位置LC1を算出する各構成331~337と、並進振れ目標位置LC2を算出する各構成331~337は同じものとして説明するがこの限りではない。
【0109】
加速度センサ390bにより検出された振れ加速度α1は、フィルタ部331に入力される。フィルタ部331は、所定のカットオフ周波数fcα以下をカットし、振れ加速度α2を第1変更部332へ出力する。第1変更部332は、並進振れについての所定の第1補正率Gα1を振れ加速度α2に乗算して振れ加速度α3を第2変更部333に出力する。第2変更部333は、所定の第2並進振れ補正率Gα2を振れ加速度α3に乗算して振れ加速度α4を積分部334に出力する。積分部334は振れ加速度α4とカットオフ周波数fc_inteαとに基づいて2回積分して振れ補正レンズ361bの並進振れを補正するための目標位置LC2を出力する。
【0110】
第2判定部336は、並進振れについてのトータル振れ状態とカットオフ周波数fcαと第1補正率Gα1の関係(
図11)を記憶しており、トータル振れ状態に対応するカットオフ周波数fcαをフィルタ部331に出力し、第1補正率Gα1を第1変更部332に出力する。
【0111】
第2変更部333には、ボディ側第1制御部230aで判定されてコマンドデータ通信で送信された並進振れについての第2補正率Gα2が入力される。
第3判定部337は、
図12に示す、静止画/動画防振と防振モードとカットオフ周波数fc_inteαの関係を記憶しており、対応するカットオフ周波数fc_inteαを積分部334に出力する。本実施形態では並進振れ目標位置LC2でのカットオフ周波数fc_inteαを角度振れ目標位置LC1でのカットオフ周波数fc_inteωより大きくしているがこの限りではない。
【0112】
次に、ボディ側第2制御部230bによる、角度振れを補正するための撮像素子260の目標位置BC1および加速度振れを補正するための撮像素子260の目標位置BC2、の算出について、レンズ側制御部330による目標位置LC1、LC2の算出とは異なる点を記載する。なお、目標位置BC1、BC2を算出する各構成として、各構成331~337を用いて説明するが、各構成はレンズ側制御部330の各構成と異なっていてもよい。
【0113】
また、本実施形態では、ボディ側第2制御部230bが、フィルタ部331、第1変更部332、第2変更部333、積分部334を備え、ボディ側第1制御部230aが、第1判定部335、第2判定部336、第3判定部337を備えて判定結果をボディ側第2制御部230bに送信することとするが、適宜変更可能である。
【0114】
ボディ側第2制御部230bは、振れ速度センサ290a、290bにより検出された振れ角速度ω1、振れ加速度α1、カットオフ周波数fcω、fcα、第1補正率Gω1、Gα1、ボディ側第2補正率Gω2、Gα2、カットオフ周波数fc_inteω、fc_inteαに基づいて目標位置BC1、BC2を出力する。X軸、Y軸それぞれ同様である。
【0115】
ボディ側第1制御部230aの第1判定部335は、振れセンサ290の出力に基づいて、ボディ側振れ状態を角度振れと角速度振れのそれぞれについて判定する。また、ボディ側第1制御部230aの第2判定部336は、ボディ側振れ状態と交換レンズ3からホットライン通信で送信されるレンズ側振れ状態とに基づいて、トータル振れ状態を判定し、カットオフ周波数fcω、fcα、第1補正率Gω1、Gα1を判定する。判定方法は、レンズ側制御部330と同様である。
【0116】
また、ボディ側第1制御部230aの第3判定部337は、ボディ側第1制御部230aで認識している動画撮影中か静止画撮影中かの情報と、ボディ側防振モードと、交換レンズ3からホットライン通信で送信されるレンズ側防振モードとに基づいて、カットオフ周波数fc_inteω、fc_inteαを判定する。判定方法は、レンズ側制御部330と同様である。
【0117】
本実施形態では、目標位置LC、BCを算出するために用いられる変数や閾値(第1補正率、カットオフ周波数)はカメラボディ2と交換レンズ3とで一致している。したがって、第1補正率またはカットオフ周波数がカメラボディ2と交換レンズ3とで一致しない場合に生じる振れ補正の効果への違和感を抑制することができる。なお、係数や閾値は、カメラボディ2と交換レンズ3との間で振れ補正の効果の違和感が生じない程度にずれが生じていても良い。
【0118】
また、第2補正率については、レンズ側第2補正率(振れ補正についての交換レンズ3の分担割合)とボディ側第2補正率(振れ補正についてのカメラボディ2の分担割合)とを足した値が1(または100%)になるようになっている。したがって、交換レンズ3での振れ補正とカメラボディ2での振れ補正とを協働させて、振れ補正を過剰に行うことや振れ補正を抑制しすぎることなく、振れ補正の効果を向上させることができる。
【0119】
なお、レンズ側制御部330およびボディ側第2制御部230bの両方に、第2判定部336を設けることとしたが、トータル振れ状態をカメラボディ2から交換レンズ3にコマンドデータ通信で送信することとしてもよい。その場合、レンズ側制御部330でレンズ側振れ状態を第1判定部335から第2判定部336へ送信することを省略可能であるとともに、第2判定部336では
図7の対応を記憶および参照する必要もない。
【0120】
また、レンズ側制御部330およびボディ側第2制御部230bの両方に、第2判定部336を設けて
図8および
図11のトータル振れ状態とカットオフ周波数と第1補正率とを判定させることとしたが、カットオフ周波数と第1補正率とをカメラボディ2から交換レンズ3にコマンドデータ通信で送信することとしてもよい。その場合、レンズ側制御部330でレンズ側振れ状態を第1判定部335から第2判定部336へ送信する必要もなく、第2判定部336も省略可能である。
【0121】
同様に、レンズ側制御部330およびボディ側第2制御部230bの両方に、第3判定部337を設けて
図10および
図12の積分部334のカットオフ周波数の判定を行うこととしたが、カットオフ周波数をカメラボディ2と交換レンズ3との間で送受信することとしてもよい。その場合、レンズ側制御部330またはボディ側第2制御部230bの一方でのカットオフ周波数の判定を省略可能である。
【0122】
レンズ側制御部330はさらに、検出信号の出力された時点の防振係数を読み出し、全振れ量と防振係数とに基づいて目標位置LCの像面換算値を算出してもよい。この際、レンズ側制御部330は、振れ補正レンズ361bの駆動範囲(機械的な可動範囲および制御的な可動範囲)を考慮せずに像面換算値を算出する。ここで、機械的な可動範囲とは振れ補正レンズ361bの保持機構に基づく可動範囲をいい、制御的な可動範囲とはユーザの設定や撮影条件により制限される可動範囲をいう。
【0123】
レンズ側制御部330はまた、機械的な可動範囲および制御的な可動範囲を考慮して、振れ補正レンズ361bの目標位置を、X軸方向およびY軸方向について算出する。移動量は、X軸方向およびY軸方向における目標位置と現在位置の差分(座標値の差分)として算出しても良い。
【0124】
振れ補正レンズ361bの移動量または目標位置を演算したレンズ側制御部330は、レンズ駆動部370bへ駆動信号を出力し、振れ補正レンズ361bを駆動させる。駆動信号を受けたレンズ駆動部370bは、振れ補正レンズ361bを光軸Oと交差するX軸およびY軸方向へ、それぞれ移動させる。
【0125】
また、レンズ駆動部370bは、振れ補正レンズ361bのX軸方向およびY軸方向における位置を周期的に検出し、現在位置としてレンズ側制御部330に出力する。レンズ側制御部330は、レンズ駆動部370bから出力された値をそのままデータ92h、92iとしてもよく、像面換算などの演算を行った値をデータ92h、92iとしてもよい。
【0126】
ボディ側第2制御部230bは、ホットライン通信で受信した振れ補正レンズ361bの位置情報、ボディ側第1制御部230aからの指示、振れセンサ290から出力された検出信号、の少なくとも一つに基づいて駆動信号を作成し、センサ駆動部265へ出力する。駆動信号を受けたセンサ駆動部265は、撮像素子260を光軸Oと交差するX軸およびY軸方向へ、それぞれ移動させる。
【0127】
以下、防振動作の一例について
図13、
図14を用いて説明する。
<動画撮影時の防振動作>
図13は、動画撮影を行う場合の振れ補正の状態を示すタイミングチャートである。本来、X軸及びY軸の2軸分のタイミングチャートが存在するが、X軸及びY軸とはほぼ同様であるため、1軸分の作動のみ記載している。また、
図13、
図14では、角度振れについて図示し、並進振れに関しては同様であるため省略する。また、
図13、
図14では、ボディ側振れ状態として、レンズ側優先状態が選択されているものとする。また、防振モードの変更はないものとして省略する。
【0128】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t1において、メインスイッチ等の起動スイッチがオンになったことを認識する。
ボディ側第1制御部230aは、時刻t2において、レンズ側制御部330にコマンドデータ通信で振れ検出開始を指示するとともにボディ側第2制御部230bにも振れ検出開始を指示する。振れセンサ290,390はこの指示に従い、振れの検出を開始し、時刻t3から検出信号が出力される。ボディ側第2制御部230bおよびレンズ側制御部330は、検出信号に基づいて振れ状態を判定し、判定結果をそれぞれレンズ側振れ状態、ボディ側振れ状態とする。
【0129】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t4以前において、コマンドデータ通信によりホットライン通信の開始を指示しているものとする。レンズ側制御部330は、時刻t4以前からホットラインデータ90を周期的に出力しており、
図13で、ホットライン通信の行われている時刻は、時刻t4、時刻t4´とそれ以外がある。
【0130】
ボディ側第1制御部230aは、ホットラインデータ90のデータ92a~92dにより、レンズ側振れ状態を認識する。又、ボディ側第1制御部230aは、これとほぼ同時刻に、ボディ側第2制御部230bから少なくともボディ側振れ状態を取得する。時刻t4では、交換レンズ3もカメラボディ2も構図安定状態と判断されている(
図13の黒丸で示す)。
【0131】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t5において、コマンドデータ通信で動画防振開始をレンズ側制御部330に指示するとともにボディ側第2制御部230bに動画防振開始を指示する。コマンドデータ通信での動画防振開始指示には、ボディ側防振モード、ボディ側振れ状態、第2補正率が含まれる。
【0132】
ここで、時刻t5ではホットライン通信が開始されており、ボディ側第1制御部230aでは、時刻t4のホットライン通信のデータ92qによりレンズ側防振モードが認識されている。ボディ側第1制御部230aは、レンズ側防振モードと操作部材280等で設定されたボディ側防振モードとを考慮し、レンズ側制御部330にボディ側防振モードを時刻t5のコマンドデータ通信で送信する。
【0133】
また、ボディ側第1制御部230aは、時刻t4においてホットラインデータ90のデータ92aにより、角度振れについてのレンズ側振れ状態は構図安定状態であることを認識する(
図13の黒丸で示す)。ボディ側第1制御部230aは、レンズ側振れ状態は構図安定状態であり、ボディ側振れ状態はレンズ側優先状態であるため、レンズ側制御部330に角度振れについてのトータル振れ状態が構図安定状態であることを時刻t5のコマンドデータ通信で送信する。ここで、時刻t4では、振れセンサ290の検出信号に基づく角度振れについてのボディ側振れ状態も構図安定状態である。従って、時刻t4でもカメラボディ2と交換レンズ3とで振れ状態を一致させることができる。
【0134】
また、ボディ側第1制御部230aは、時刻t5時点での設定と
図9とに基づいて、第2補正率Gω2を決定し、レンズ側制御部330に時刻t5のコマンドデータ通信でレンズ側の第2補正率Gω2を送信すると同時にボディ側第2制御部230bにボディ側の第2補正率Gω2を送信する。
【0135】
時刻t5の動画防振開始指示を受け、レンズ側制御部330またはボディ側第2制御部230bは可動部の目標位置を算出し、時刻t6からレンズ駆動部370bまたはセンサ駆動部265により可動部を駆動させて振れ補正を開始する。
図13の例では、時刻t5以前では、可動部は駆動停止しており、重力方向に落下した状態にある。時刻t5の指示を受けて、一旦、可動部は可動中心に駆動され、時刻t6以降に振れ補正が行われる。
【0136】
このように、ボディ側第1制御部230aは、周期的にホットラインデータ90を取得するので、ホットラインデータ90からレンズ側防振モードまたはレンズ側振れ状態の変化を認識することができる。ボディ側第1制御部230aは、ホットラインデータ90からレンズ側防振モードまたはレンズ側振れ状態が変化したことを認識すると、必要に応じてコマンドデータ通信を行い、カメラボディ2と交換レンズ3との振れ補正制御を一致させるようにする。
【0137】
時刻t5´のコマンドデータ通信について説明する。
図13における時刻t7で、ユーザが構図変更のために交換レンズ3を操作したとする。すると、レンズ側制御部330の第1判定部335は、レンズ側振れ状態として構図変更中状態であることを判定する。そして、時刻t7以降に行われるホットライン通信(時刻t4´)で、レンズ側振れ状態として構図変更中状態であることをしめすデータ92aが含まれるホットラインデータ90が送信される。一方、カメラボディ2の振れセンサ290の検出結果からは構図安定状態の検出が継続している。
【0138】
ここで、
図13では、ボディ側振れ状態としてレンズ側優先状態が選択されているので、ボディ側第1制御部230aは、トータル振れ状態としてレンズ側優先状態であることを時刻t5´のコマンドデータ通信で送信すると同時にボディ側第2制御部230bにもレンズ側の振れ状態(構図変更中状態)を送信する。レンズ側制御部330は時刻t5´のコマンドデータ通信でトータル振れ状態がレンズ側優先状態であることを受信すると、第2判定部336はトータル振れ状態として構図変更中状態と判定し、時刻t5´で構図変更中状態の振れ補正を開始する。また、ボディ側第2制御部230bもトータル振れ状態が構図変更中状態であることを受信したので、時刻t5´で構図変更中状態の振れ補正を開始する。
【0139】
このように、時刻t4、t4´の周期的なホットライン通信で、交換レンズ3からレンズ側振れ状態を送信することができるので、カメラボディ2は、レンズ側振れ状態を交換レンズ3からカメラボディ2に送信させる指示を含むコマンドデータ通信を行う必要がない。また、レンズ側振れ状態を交換レンズ3からカメラボディ2に送信させる指示を含むコマンドデータ通信を行う場合、周期的にコマンドデータ通信を行う必要があり、その周期がホットライン通信に比べて長い場合、レンズ側振れ状態とボディ側振れ状態とが一致しない時間が長くなってしまうという問題がある。
【0140】
また、レンズ側振れ状態を交換レンズ3からカメラボディ2に送信させる指示を含むコマンドデータ通信を速い周期で行おうとすると、その間他のコマンドデータ通信が行えないという問題もある。しかしながら、本実施形態によれば、コマンドデータ通信とは独立したホットライン通信で振れ状態などを送信するので、上述のような問題がないという効果がある。
【0141】
<静止画撮影時の防振動作>
図14は、静止画撮影を行う場合の振れ補正の状態を示すタイミングチャートであり、静止画撮影を指示するレリーズ操作前後のスルー画露光も含めて記載している。また、本来、X軸及びY軸の2軸分存在するが、X軸及びY軸は同様であるため、1軸分の作動のみ記載している。
【0142】
時刻t1以降、上述のホットライン通信が周期的に行われる。時刻t2では、上述の動画防振開始指示が、コマンドデータ通信でカメラボディ2から交換レンズ3に送信される。
図14では、ボディ側振れ状態は、レンズ側優先状態が選択されている。
【0143】
時刻t2の時点では、ユーザは交換レンズ3を操作して構図を変更しており、交換レンズ3およびカメラボディ2の双方で構図変更中状態の振れ状態が検出されているものとする。従って、時刻t2以降の動画防振では、トータル振れ状態として構図変更中状態が選択される。
【0144】
時刻t3で、ユーザは交換レンズ3の構図変更操作を止めると、次のホットライン通信(時刻t4)でレンズ側振れ状態として構図安定状態を示すデータ92aが送信される。
【0145】
一方、時刻t4のタイミングでは、振れセンサ290の検出結果からは構図変更状態が引き続き検出され、振れセンサ390の検出結果と一致しない。また、時刻t5で静止画撮影の操作がユーザにより行われるものとする。
【0146】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t5において、操作部材280によりレリーズスイッチがオンされたことを認識する。ボディ側第1制御部230aは、時刻t6で撮像素子260を操作してスルー画の作成を停止させる。
【0147】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t7において、レンズ側制御部330にコマンドデータ通信で静止画防振開始を指示するとともに、ボディ側第2制御部230bに静止画防振開始を指示する。時刻t7から時刻t9の間は、静止画撮影に適した振れ補正制御が行われる。
【0148】
時刻t7の静止画防振開始指示には、動画防振開始指示と同様に、ボディ側防振モード、ボディ側角度振れ状態(レンズ側優先状態)、第2補正率が含まれ得る。
ボディ側第1制御部230aは、時刻t7の直前のホットライン通信(時刻t4)のデータ92aでレンズ側振れ状態が構図安定状態であることとボディ側振れ状態がレンズ側優先状態であることから、トータル振れ状態を構図安定状態とする。
【0149】
従って、時刻t7で、交換レンズ3への静止画防振開始指示にはレンズ側優先状態が含まれ、ボディ側第2制御部230bへの静止画防振開始指示にはトータル振れ状態として構図安定状態が含まれる。
【0150】
また、ボディ側第1制御部230aは、時刻t7時点での設定と
図9とに基づいて、第2補正率Gω2を決定し、時刻t7のコマンドデータ通信でレンズ側制御部330にレンズ側の第2補正率Gω2を送信するとともにボディ側第2制御部230bにボディ側の第2補正率Gω2を送信する。
レンズ側制御部330はこの指示に従い、レンズ駆動部370bを操作して振れ補正レンズ361bを駆動し、静止画に適した振れ補正を開始する。ボディ側第2制御部230bも同様である。
【0151】
ボディ側第1制御部230aは、時刻t8において撮像素子260により静止画露光を開始し、時刻t9において静止画露光を終了し、時刻t12においてスルー画露光を再開する。
ボディ側第1制御部230aは、露光終了すると、コマンドデータ通信で動画防振開始をレンズ側制御部330へ指示して動画防振を再開させる(時刻t10)。また、ボディ側第1制御部230aは、ボディ側第2制御部230bに、交換レンズ3と同様に動画防振開始を指示する。
【0152】
レンズ側制御部330は、露光終了すると、時刻t11でホットライン通信を再開する。なお、時刻t8から時刻t11の間もホットライン通信は継続するものとしてもよい。
【0153】
時刻t13で、ユーザは構図変更操作をすることにより交換レンズ3の振れセンサ390の検出結果から構図変更中状態が検出される。一方、カメラボディ2の振れセンサ290の検出結果からは構図安定状態が検出される。
図14では、ボディ側振れ状態としてレンズ側優先状態が設定されているので、ボディ側第1制御部230aは、時刻t14で、レンズ側優先状態であることをコマンドデータ通信で交換レンズ3に送信するとともに、ホットライン通信で受信したレンズ側振れ状態(構図変更中状態)をトータル振れ状態としてボディ側第2制御部230bに送信する。時刻t14から、レンズ側制御部330およびボディ側第2制御部230bは、トータル振れ状態を構図変更中状態とした振れ補正制御を行う。
【0154】
上述のように、レンズ側振れ状態とボディ側振れ状態とが一致しなくても、ホットライン通信でレンズ側振れ状態をカメラボディ2に送信することができ、カメラボディ2と交換レンズ3とで振れ状態が一致しない時間を短くすることができる。
【0155】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
交換レンズ3とカメラボディ2との振れ補正の分担割合を送受信するので、カメラシステム1において交換レンズ3の振れ補正とカメラボディ2の振れ補正とを協働させて振れ補正効果を向上させることができる。また、交換レンズ3とカメラボディ2との分担割合を設定できるので、交換レンズ3またはカメラボディ2で振れ補正を過剰に行ってしまうことや振れ補正を抑制しすぎることを防止できる。また、補正率をボディ側制御部230で設定できるので、静止画撮影であるか動画撮影であるか、シャッター速度などの撮影条件に応じた振れ補正を行うことができる。また、分担割合は、角度振れと並進振れのそれぞれについて設定可能であり、交換レンズ3に角度振れ補正機能はあるが並進振れ補正機能が無い場合でも、カメラボディ2と交換レンズ3とを協働させることができる。また、分担割合は、コマンドデータ通信で送信することとしたので、カメラボディ2から送信するタイミングを決定することができるとともに、ホットライン通信を並列して行うことも可能である。また、ボディ側第1制御部230aから、ボディ側の分担割合をボディ側第2制御部230bに送信し、レンズ側の分担割合をレンズ側制御部330に送信することとしたので、ボディ側第2制御部230bおよびレンズ側制御部330は各自の分担割合に基づいた制御を容易に行うことができる。
【0156】
カメラボディ2は、振れセンサ309の検出信号から可動部の目標位置を算出するために用いる情報に基づくボディ側情報を、交換レンズ3に送信するので、目標位置を算出するために用いる情報をカメラボディ2と交換レンズ3とで一致させることができる。目標位置を算出するために用いる情報としては、カットオフ周波数のような振れを補正する周波数帯域の閾値に関する情報や、第1補正率のような振れ補正の効果の強弱に関する情報をいう。
【0157】
ここで、目標位置を算出するために用いる情報がカメラボディ2と交換レンズ3とで一致する場合、例えば、振れ状態の検出結果を一致させて、振れ補正する周波数帯域や振れ補正可動部の可動範囲を変更して振れ補正効果を高めることができる。また、振れの状態をホットライン通信で交換レンズ3からカメラボディ2に送信するので、交換レンズ3とカメラボディ2とで振れの状態が一致しない時間を短くすることができる。仮に、振れの状態をホットライン通信で送信せず、交換レンズ3からカメラボディ2に振れの状態をコマンドデータ通信のみで送信することとした場合、カメラボディ2でレンズ側の振れ状態の検出結果を認識できる時間が遅れてしまい、交換レンズ3とカメラボディ2とで検出結果がずれる時間が大きくなってしまい、振れ補正時のファインダ像、スルー画像に対するユーザの使用感の低下(違和感)が生じる。しかしながら、本実施の形態では、交換レンズ3とカメラボディ2とで検出結果がずれる時間を小さくさせることができる。
【0158】
レンズ側第2通信部340bは、コマンドデータ通信でカメラボディ2からの指示を受信するよりも短い周期で、ホットラインデータ90を周期的に送信することもでき、コマンドデータ通信の時期や期間に関わらず、振れ補正制御に用いられる情報を即時に送信することができる。
また、振れセンサ390は、ホットライン通信よりも短い周期で、検出信号を周期的に出力することもでき、ホットラインデータ90の出力のタイミングと振れセンサ390の検出信号の出力のタイミングとのずれを考慮する必要がなく、ホットラインデータ90の即時性を向上することができる。
【0159】
交換レンズ3は、ホットラインデータ90に含められる数値の信頼性(位置情報の有効性、レンズ側振れ状態の有効性、など)も送信できるので、1回のホットライン通信で数値とその信頼性とを対応付けてカメラボディ2に送信して、カメラボディ2で信頼性に応じた対処をさせることができる。
【0160】
交換レンズ3は、固定長のホットラインデータ90をカメラボディ2に周期的に送信するので、可変長のデータを送信する場合と異なり、一定の周期で送信を繰り返すことができる。
【0161】
本発明は上述した内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0162】
(変形例1)
上記の説明では、ホットライン通信においてDMA機能を用いる例を説明した。DMA機能を用いる代わりに、ソフトウェアを介在させてホットラインデータ90を生成してもよい。変形例1では、HDATA信号の送信はレンズ側第2通信部340bにより行われ、ホットラインデータ90の生成はレンズ側制御部330により行われる。このように構成することによって、DMA機能を用いなくてもホットライン通信とホットラインデータ90の生成とを並列に行うことができる。ただし、ホットラインデータ90の生成は、ホットライン通信の1周期を超えない期間に行われる。
【0163】
(変形例2)
上記の説明では、ボディ側制御部230をボディ側第1制御部230aとボディ側第2制御部230bとに分ける例を説明したが、ボディ側第1制御部230aとボディ側第2制御部230bとに分けることなく、1つのボディ側制御部230として構成しても構わない。この場合、ボディ側制御部230は、直接センサ駆動部265を制御すればよく、ボディ側第2通信部240bによる通信ラインは、1つのボディ側制御部230のみに接続すればよい。
【0164】
また、
図4のホットライン通信の例では、HCLK信号線とHDATA信号線の2本のみを用いたクロック同期式通信のデータ転送方向を、交換レンズ3からカメラボディ2への1方向とする例を示したが、さらにもう1本信号ラインを追加して、双方向にデータ転送可能としても構わない。あるいは、HDATA信号線の入出力を切り替え可能に構成することにより、双方向にデータ通信を行うように構成しても構わない。
【0165】
ホットライン通信は、クロック同期式に限らず、UART(調歩同期式通信)を用いても構わない。また、クロック信号線およびデータ信号線に加えて、ハンドシェーク信号線、または、CS(チップセレクト)信号線を追加して、レンズ側制御部330とボディ側第1制御部230a、ボディ側第2制御部230bとが通信開始のタイミングを合わせるように構成してもよい。
【0166】
(変形例3)
カメラボディ2において、撮像素子260を光軸Oと交差する方向に駆動するセンサ駆動部265を省略し、信号処理部270で行う画像処理によって画像の位置を移動させる振れ補正を行う構成にしてもよい。または、カメラボディ2において、センサ駆動部265による振れ補正と、信号処理部270による振れ補正とを合わせて行うこととしてもよい。
【0167】
(変形例4)
交換レンズ3とカメラボディ2とで、振れの成分によって振れ補正を分担するように構成してもよい。例えば、交換レンズ3は、X軸およびY軸についての角度振れとX軸およびY軸についての並進振れを分担し、カメラボディ2は、光軸O回りの振れ(ロール成分)を分担することとしてもよい。
【0168】
(変形例5)
レンズ側振れ状態とレンズ側防振モードとはホットライン通信でカメラボディ2に送信するものとしたが、コマンドデータ通信でも送信するものとしてもよい。その場合、ホットラインデータ通信で送信する形式とコマンドデータ通信で送信する形式は異なっていても良い。
【符号の説明】
【0169】
1:カメラシステム、2:カメラボディ、3:交換レンズ、230:ボディ側制御部、230a:ボディ側第1制御部、230b:ボディ側第2制御部、235:記憶部、240:ボディ側通信部、240a:ボディ側第1通信部、240b:ボディ側第2通信部、250:電源部、260:撮像素子、260S:撮像面、265:センサ駆動部、270:信号処理部、280:操作部材、285:表示部、290:センサ、290a:角速度センサ、290b:加速度センサ、309:センサ、330:レンズ側制御部、331:フィルタ部、332:第1変更部、333:第2変更部、334:積分部、335:第1判定部、336:第2判定部、337:第3判定部、340:レンズ側通信部、340a:レンズ側第1通信部、340b:レンズ側第2通信部、350:レンズ側記憶部、360:撮像光学系、361a:フォーカシングレンズ、361b:補正レンズ、370:レンズ駆動部、370a:レンズ駆動部、370b:レンズ駆動部、375:指示部、390:センサ、390a:角速度センサ、390b:加速度センサ、401:クロック信号、402:コマンドパケット、404:第1制御処理、405:信号、406:データパケット、407:データパケット、408:第2制御処理、502:信号、503:信号