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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】オイルブリード性シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240806BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240806BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/04
C08K3/36
C08K5/3475
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022578220
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2022000939
(87)【国際公開番号】W WO2022163365
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021010719
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 立栄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 野歩
(72)【発明者】
【氏名】生方 茂
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075813(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199742(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198830(WO,A1)
【文献】特開2011-153305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/36
C08K 5/3475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子と結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.2~20質量部、
(C)白金族金属系触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~500ppm、
(D)下記式(1)で表されるフェニル基含有オルガノポリシロキサン:1~10質量部、
【化1】
(式中、R3は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、少なくとも1つはフェニル基である。また、mは~3の正数、nは3~49の正数で、かつm+nは~50を満足する正数である。)
(E)下記式(2)で表される無官能性ジメチルポリシロキサン:1~25質量部、及び
【化2】
(式中、Meはメチル基であり、pは2~600の整数である。)
(F)下記一般式(3)
【化3】
[式中、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R5は炭素数1~15の1価炭化水素基又は下記式(4)で表される基である。
【化4】
(式中、R6は-(CH2L-Si(OR73であり、R7は炭素数1~4のアルキル基又はSiR8 3基(R8は炭素数1~4のアルキル基)であり、Lは1~6の整数である。*は結合点を示す。)]
で表されるベンゾトリアゾール誘導体:(C)成分の白金族金属原子1molに対し、2~100mol
を含むオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
さらに、(G)補強性シリカ粉末を(A)成分100質量部に対して5~100質量部含む請求項1記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
上記シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の、圧縮率25%、150℃で70時間圧縮後の圧縮永久歪(JIS-K6262:2013に準拠)が40%以下である、請求項1又は2記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
上記シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物を225℃で72時間加熱した後の切断時伸び(JIS K6249:2003に準拠)の、初期切断時伸びに対する低下率が30%以下である、請求項1~3のいずれか1項記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を向上させ、圧縮永久歪が低いシリコーンゴム硬化物を与えることができるオイルブリード性シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンゴムはその優れた耐熱性、耐候性、耐久性、電気特性から建築材料、電気・電子部品、自動車部品、OA機器部品等様々な分野で広く使われている。その中で、自動車部品としての普及は目覚ましく、オイルシール、ワイヤーコネクター部のパッキンやゴム栓、O-リング等、ダイヤフラム、ディストリビューター用グロメット等に使用されており、特にコネクタ、ディストリビューター用グロメットの分野においては、組立時の作業性、装着後の密閉性、防水性、絶縁性を追求した結果、成形品表面にオイルがブリードするオイルブリード性シリコーンゴムが有効であると認められ、かかるオイルブリード性シリコーンゴムが広く使われている。
【0003】
また近年、自動車エンジンの小型化、高出力化に伴い、エンジン周りの部品には高い耐熱性が要求されている。シリコーン組成物の耐熱性をさらに上げる方法として、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物を耐熱性向上剤として添加することが挙げられる、これにより、さらに高い温度条件下においても物性変化が小さいシリコーンゴム硬化物を得ることができる。
【0004】
また、上記オイルブリード性シリコーンゴムをO-リングやパッキン等のガスケットとして使用する場合、シール漏れ予防のために低い圧縮永久歪が求められる。通常、圧縮永久歪を低くするためには、加熱硬化して成形したゴムをさらに高温下で長時間二次加硫する必要がある。
【0005】
特許文献1(特表2016-518461号公報)、特許文献2(特開2014-031408号公報)等では、金属酸化物(前報では酸化チタン、酸化鉄、後報では含水酸化セリウム、含水酸化ジルコニウム)を含有するシリコーン組成物が記載されている。該金属酸化物の添加により、シリコーンゴム組成物の耐熱性を向上させることができると報告されている。
しかしながら、特許文献1、特許文献2記載の組成物は、金属酸化物を含むことにより、得られる硬化物が着色され、その他の色を所望しても色付けすることが困難になってしまった。
【0006】
特許文献3(特開平7-130424号公報)には、シリコーンゴム組成物に、白金系触媒と非シリコーン系熱可塑性樹脂とから構成されるヒドロシリル化反応用触媒を含有するオイルブリード性のコネクタ防水用シール部品が開示されている。上記の触媒は成型加工時間の短縮とコスト的に優位にしたにすぎず、耐熱性に関しては耐熱剤(希土類酸化物、セリウムシラノレート、セリウム脂肪酸塩等)を別途添加しなければならなかった。
【0007】
特許文献4(特開平6-32983号公報)には、シリコーンゴム組成物に、電気接点障害を発生させないオイルとしてフタル酸エステルを添加し、シリコーンゴム本来の耐熱性を有するオイルブリード性シリコーンゴム成型品が開示されている。しかしながら、フタル酸エステルはシリコーンゴム本来の耐熱性を維持しているにすぎず、シリコーンゴム組成物の物性、耐熱性を向上させているわけではなかった。
【0008】
特許文献5(特開2000-118361号公報)には、撥水剤としてシリコーンオイルを含むシリコーンゴム組成物の成形体でなる機能性ワイパーブレードが、従来のワイパーブレードと比較して耐熱性に優れることが記載されている。しかしながら、具体的な耐熱性の試験はなく、ワイパーブレードに求められる耐熱性は本発明が求める耐熱性(例えば200℃以上)としては不十分である。またブリードアウトするシリコーンオイルは撥水剤としての使用にすぎない。
【0009】
特許文献6(特開平6-93186号公報)には、2種類のブリードオイル(即ち、フェニルシリコーンオイルとフェニル基含有低分子量シリコーンオイル)を含有するオイルブリード性シリコーンゴム組成物が記載されている。該2種類のブリードオイルの組み合わせにより、ブリード効果を得ながら粘着性を抑制することができ、ロール作業性が改善されることが報告されているが、耐熱性については言及されていない。
【0010】
特許文献7(特開平2-242854号公報)には、トリアゾール系化合物を添加した付加硬化性シリコーンゴム組成物が、二次加硫せずに圧縮永久歪を低くできることが記載されている。しかしながら、耐熱性については議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2016-518461号公報
【文献】特開2014-031408号公報
【文献】特開平7-130424号公報
【文献】特開平6-32983号公報
【文献】特開2000-118361号公報
【文献】特開平6-93186号公報
【文献】特開平2-242854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属酸化物や酸化防止剤等の耐熱性を向上させる従来の添加剤を添加することなく、硬化物の耐熱性を向上させ、かつ圧縮永久歪を低下させるオイルブリード性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、後述する(A)~(C)成分を必須成分とする付加硬化型シリコーンゴム組成物に対し、所定の(D)フェニル基含有オルガノポリシロキサン、(E)無官能性ジメチルポリシロキサン及び(F)ベンゾトリアゾール誘導体を添加することで、硬化物のオイルブリード性を付与すると共に耐熱性を向上させ、圧縮永久歪を低下させることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記のオイルブリード性シリコーンゴム組成物を提供する。
1.(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子と結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.2~20質量部、
(C)白金族金属系触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~500ppm、
(D)下記式(1)で表されるフェニル基含有オルガノポリシロキサン:1~10質量部、
【化1】
(式中、R3は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、少なくとも1つはフェニル基である。また、mは0~3の正数、nは3~50の正数で、かつm+nは3~50を満足する正数である。)
(E)下記式(2)で表される無官能性ジメチルポリシロキサン:1~25質量部、及び
【化2】
(式中、Meはメチル基であり、pは2~600の整数である。)
(F)下記一般式(3)
【化3】
[式中、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R5は炭素数1~15の1価炭化水素基又は下記式(4)で表される基である。
【化4】
(式中、R6は-(CH2L-Si(OR73であり、R7は炭素数1~4のアルキル基又はSiR8 3基(R8は炭素数1~4のアルキル基)であり、Lは1~6の整数である。*は結合点を示す。)]
で表されるベンゾトリアゾール誘導体:(C)成分の白金族金属原子1molに対し、2~100mol
を含むオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
2.さらに、(G)補強性シリカ粉末を(A)成分100質量部に対して5~100質量部含む1記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
3.上記シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の、圧縮率25%、150℃で70時間圧縮後の圧縮永久歪(JIS-K6262:2013に準拠)が40%以下である、1又は2記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
4.上記シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物を225℃で72時間加熱した後の切断時伸び(JIS K6249:2003に準拠)の、初期切断時伸びに対する低下率が30%以下である、1~3のいずれかに記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
5.上記式(1)におけるmが1~3の正数、nは3~49の正数で、かつm+nは4~50を満足する正数である1~4のいずれかに記載のオイルブリード性シリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オイルブリード性を付与する成分だけで、金属酸化物等の耐熱性向上用の従来の添加剤を配合しなくても、オイルブリード性シリコーンゴム硬化物の耐熱性を向上させることができ、さらに、トリアゾール誘導体の添加により圧縮永久歪を低くすることができる。また、本発明のシリコーンゴム組成物によれば金属酸化物等の耐熱性向上用の従来の添加剤を必要としないため、その硬化物は無色~乳白色のものとなり、顔料等の着色剤によって容易に所望の色に着色することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るオイルブリード性シリコーンゴム組成物、ならびにオイルブリード性シリコーンゴム硬化物の耐熱性を向上する方法の一実施の形態における構成について説明する。なお、数値の範囲として「A~B」の表記は、その両端の数値を含むものであり、A以上B以下を意味する。
【0017】
[オイルブリード性シリコーンゴム組成物]
本発明のオイルブリード性シリコーンゴム組成物は、以下の(A)~(F)成分を含有し、好適には、225℃72時間加熱後の切断時伸び(JIS K6249:2003に準拠)の初期の切断時伸びに対する低下率が30%以下、好ましくは25%以下であり、圧縮率25%、150℃・70時間の圧縮永久歪測定(JIS-K6262:2013に準拠)において、圧縮永久歪が40%以下である硬化物を与えるものである。
【0018】
〔(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン〕
(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであって、本組成物の主剤(ベースポリマー)である。この(A)成分としては、下記平均組成式(5)で表されるものを用いることができる。
1 aSiO(4-a)/2 (5)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5~2.8の正数、好ましくは1.8~2.5の正数、より好ましくは1.95~2.05の正数である。)
【0019】
ここで、R1で示される炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90mol%以上、特にはアルケニル基を除く全てのR1がメチル基であることが好ましい。
【0020】
また、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2~8のものが好ましく、さらに好ましくは2~6である。)であることが必要であり、好ましくはビニル基である。
なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中、1.0×10-6~5.0×10-3mol/gが好ましく、1.0×10-5~2.0×10-3mol/gとすることがより好ましい。アルケニル基の含有量が1.0×10-6~5.0×10-3mol/gであれば、ゴム状物質を得ることができる。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0021】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的に分岐状の構造、環状構造等を有してもよい。
【0022】
上記式(5)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0023】
分子量については、平均重合度(数平均重合度Mn、以下同様)は1,500以下が好ましく、100~1,500がより好ましく、150~1,000がさらに好ましい。平均重合度が100~1,500であれば、ゴム状物質が得られ、成形性が良好になる。この平均重合度は、通常、トルエンを展開溶媒として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算値として求めることができる(以下、同じ。)。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は特に限定されないが、組成物の取扱作業性、得られる硬化物の強度が良好となる点から、25℃における粘度が200~150,000mPa・sであることが好ましく、400~100,000mPa・sであることがより好ましい。なお、粘度は、回転粘度計により測定することができ、ロータや回転数は粘度に応じて適宜選定される(以下、同じ。)。
【0025】
なお、(A)成分としては、分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであれば、分子構造や重合度の異なる1種又は2種以上のものを併用することができる。
【0026】
〔(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、分子中のSiH基が前記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤(架橋剤)として作用するものである。
【0027】
この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(6)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは3~100個、特に好ましくは4~50個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
2 bcSiO(4-b-c)/2 (6)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。また、bは0.7~2.1の正数、cは0.001~1.0の正数で、かつb+cは0.8~3.0を満足する正数である。)
【0028】
ここで、R2の1価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。
【0029】
また、bは0.7~2.1の正数、好ましくは0.8~2.0の正数であり、cは0.001~1.0の正数、好ましくは0.01~1.0の正数であり、b+cは0.8~3.0を満足する正数、好ましくは1.0~2.5を満足する正数であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。
【0030】
なお、SiH基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.0005~0.020mol/g、特に0.001~0.017mol/gとすることが好ましい。SiH基の量が0.0005mol/gより少ないと架橋が不十分となってしまう場合があり、また0.020mol/gより多いとオルガノハイドロジェンポリシロキサンが不安定な物質となる場合がある。
【0031】
この場合、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2~300個、特に3~150個、とりわけ4~100個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中(非末端)のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0032】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基等で置換したもの等が挙げられる。
【0033】
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、上記で例示した化合物等において、分子を構成するシロキサン骨格(-Si-O-Si-)の一部(通常、シロキサン結合を形成する酸素原子の位置の一部)に、通常2~4価の、芳香族環含有の炭化水素骨格(例えば、フェニレン骨格、ビスフェニレン骨格、ビス(フェニレン)エーテル骨格、ビス(フェニレン)メタン骨格、2,2-ビス(フェニレン)プロパン骨格、2,2-ビス(フェニレン)ヘキサフルオロプロパン骨格等)を含有する、多価芳香族環含有のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。
【0034】
(B)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分の合計100質量部に対して0.2~20質量部であり、好ましくは0.3~10質量部である。また、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)と、(A)及び(B)成分中の(特には、(A)成分中の)ケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(SiH基/アルケニル基)は0.8~10が好ましく、1.0~5となる量であることがより好ましい。この比が0.8より小さいと硬化(架橋密度)が不十分になり、べたついたゴムになってしまうおそれがあり、10より大きいと、シリコーンゴム成型物に発泡が見られたり、金型からの離型が困難になったりしてしまうおそれがある。
【0035】
〔(C)白金族金属系触媒〕
(C)成分としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金族金属系触媒が挙げられる。(C)成分の白金族金属系触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、この白金族金属系触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、(A)及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~500ppmであり、1~200ppmが好ましい。
【0036】
〔(D)フェニル基含有オルガノポリシロキサン〕
(D)成分のフェニル基含有オルガノポリシロキサンは、本組成物の耐熱性向上方法において(A)~(C)成分を含有するシリコーンゴム組成物に対し、(E)成分の無官能性ジメチルポリシロキサンと共に添加することで硬化物にオイルブリード性を付与すると共に耐熱性を向上させる成分であり、下記一般式(1)で表されるものである。
【0037】
【化5】
(式中、R3は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、少なくとも1つはフェニル基である。また、mは0~3の正数、nは3~50の正数で、かつm+nは3~50を満足する正数である。)
【0038】
上記式(1)中、R3は互いに独立に、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくはフェニル基以外が1~3の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、そのうち少なくとも1つはフェニル基である。また、R3が脂肪族不飽和結合、特にはアルケニル基を有さない点で(A)成分と区別される。なお、本発明において、各シロキサン単位の結合順序は、下記に制限されるものではない(以下、同様)。
【0039】
脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基やこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換したものを挙げることができ、好ましくはメチル基、フェニル基である。また、式中のR3のうち少なくとも1つはフェニル基であり、ジオルガノシロキサン単位において2つがフェニル基であるか、1つがフェニル基でもう1つがメチル基であることが好ましい。さらに、フェニル基の含有量は、全R3の3mol%以上が好ましく、10~50mol%がより好ましく、15~40mol%がさらに好ましい。
【0040】
上記式(1)において、mとnは、0≦m≦3、好ましくは1≦m≦3を満たす正数であり、3≦n≦50、好ましくは3≦n≦49、より好ましくは3≦n≦30を満たす正数であり、かつ3≦m+n≦50であり、好ましくは4≦m+n≦50、より好ましくは4≦m+n≦40、さらに好ましくは4≦m+n≦31、特に好ましくは4≦m+n≦30である。ここで、m+nが3未満(例えば、m=0、n<3の場合)だと、(D)成分がベースポリマー((A)成分)中に溶解し、ブリード性が得られなくなる。一方、m+nが50を超えると、ベースポリマー((A)成分)と(D)成分の絡み合いが優先的になり、ブリード性が低下することとなる。このように、m+nを上記範囲内にすることで、(D)成分とベースポリマー((A)成分)とがバランスよく非相溶となり、反発力によりオイルブリード性(オイルの滲み度合いや滲み出しやすさ)を向上することができる。なお、mは0であってもよいが、1以上が好ましく、それにより式(1)の構造において分岐構造を有することになり、硬化物のオイルブリード性を変えることができ、具体的には成形初期に成型品(硬化物)から滲みだすオイルの量やオイルが滲み出す時間を制御することができる。また、mを1以上とすることにより、硬化物の耐熱性をさらに改善することができる。
【0041】
(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して1~10質量部であり、3~8質量部とすることが好ましい。配合量が上記下限値未満であると、オイルブリードが十分に表れず、また、上記上限値を超えると、得られる硬化物の物性や、耐熱性が低下したり、成形時に金型汚れを引き起こしたりするおそれがある。
【0042】
上記式(1)で表されるフェニル基含有オルガノポリシロキサン(シリコーンオイル)としては、例えば、下記式(1-1)、(1-2)の化合物が挙げられる。
【化6】
(フェニル基19mol%)
【化7】
(フェニル基35mol%)
(上記式中、Meはメチル基、Phはフェニル基である。)
【0043】
〔(E)無官能性ジメチルポリシロキサン〕
(E)成分の無官能性ジメチルポリシロキサンは、下記一般式(2)で表されるものであり、本発明の組成物及び耐熱性向上方法において(A)~(C)成分を含有するシリコーンゴム組成物に対し、(D)成分と共に添加することで硬化物にオイルブリード性を付与すると共に耐熱性を向上させる成分である。
【化8】
(式中、Meはメチル基であり、pは2~600の整数である。)
【0044】
上記式(2)においてp(平均重合度)は2~600の整数であり、好ましくは10~550の整数である。pが2未満であると、揮発しやすく、系外に抜けてしまうため、有効成分として機能しない。pが600を超えると、少量の配合でもシリコーンゴム硬化物の表面にベタツキが生じ、金属板からの離形時の負荷が大きくなる。
【0045】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~25質量部であり、好ましくは1~23質量部であり、より好ましくは2~21質量部である。上記配合量が1質量部未満の場合、ブリード性が悪くなるだけではなく耐熱性の効果が十分に得られず、25質量部を超える場合には硬化物のゴム物性や耐熱性が著しく低下してしまう。
【0046】
(D)成分と(E)成分の合計配合量は、(A)成分100質量部に対して、2~35質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましく、3~25質量部がさらに好ましく、5~25質量部が特に好ましい。上記配合量が35質量部を超える場合には、硬化物のゴム物性や耐熱性が著しく低下してしまうことや、金型汚れを引き起こすおそれがある。(D)成分と(E)成分の合計配合量における配合質量率(D)/((D)+(E))×100%は、2~98%が好ましく、4~96%がより好ましい。
【0047】
(E)成分の鎖長を特定の範囲内にし、(D)成分と併用することで、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物が優れたオイルブリード性及び耐熱性を示す。また、金属酸化物等の添加剤を含まなくても目的の効果が得られるため、低硬度にすることができる。
【0048】
[(F)ベンゾトリアゾール誘導体]〕
(F)成分は、下記一般式(3)
【化9】
[式中、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基、R5は炭素数1~15の1価炭化水素又は下記式(4)で表される基である。
【化10】
(式中、R6は-(CH2L-Si(OR73であり、R7は炭素数1~4のアルキル基又はSiR8 3基(R8は炭素数1~4のアルキル基)であり、Lは1~6の整数である。*は結合点を示す。)]
で示されるベンゾトリアゾール誘導体であり、硬化後のシリコーンゴムの圧縮永久歪を低下させ、作業するのに十分なポットライフを得ることができる。また、上述した(C)成分の白金族金属系触媒と相互作用することにより、特に白金族金属系触媒の量が多い場合には、耐熱性を向上させることができる。(F)成分のベンゾトリアゾール誘導体は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
ここで、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、炭素数1~6の1価炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。これらの内、合成上の面から水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0050】
5は炭素数1~15の1価炭化水素又は上記式(4)で表される基である。具体的なベンゾトリアゾール誘導体の例を下記に示す。
【0051】
【化11】
(式中、Lは1~6の整数であり、R7はアルキル基又はトリアルキルシリル基である。)
これらのうち、最も好適なものを下記式で示す。
【化12】
【化13】
【0052】
(F)成分の配合量は、(C)成分の白金族金属原子1molに対し、2~100molであり、5~75molが好ましく、10~50molがより好ましい。配合量が2mol未満だと、十分に圧縮永久歪を低下させることができず、作業するのに十分なポットライフが得られない。100molを超えると硬化性が低下する。
【0053】
(その他成分)
〔(G)補強性シリカ粉末〕
本発明のシリコーンゴム組成物としては、さらに(G)成分として補強性シリカ粉末を含むことが好ましく、補強性シリカ微粉末が好ましい。(G)成分の補強性シリカ粉末は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。(G)成分の補強性シリカ粉末は、シリカの種類に特に限定はなく、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、焼成シリカ、沈降性シリカ(湿式シリカ)等が例示され、通常シリコーンゴムの補強剤として使用されるものであればよいが、シリコーンゴム強度を向上することからヒュームドシリカが好適である。補強性シリカ粉末としては、従来のシリコーンゴム組成物に使用されているものを使用できるが、BET法による比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ粉末が好ましい。特にBET法による比表面積が50~400m2/g、とりわけ100~350m2/gの補強性シリカ粉末が好適に使用される。また、上記補強性シリカ粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)有機ケイ素化合物等の表面処理剤で、表面が疎水化処理されてもよい。その場合、該シリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により直接、表面疎水化処理されたものでもよいし、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものでもよい。
【0054】
表面処理法としては、周知の技術により表面処理することができ、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と表面処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温あるいは熱処理(加熱下)にて混合処理する。場合により、触媒(加水分解促進剤等)を使用して表面処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより表面処理シリカ微粉末を製造し得る。表面処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。
【0055】
表面処理剤としては、具体的には、へキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられ、これらで表面処理し、疎水性シリカ微粉末として用いる。表面処理剤としては、特にシラン系カップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0056】
(G)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分の合計100質量部に対して5~100質量部が好ましく、5~80質量部がより好ましく、5~60質量部がさらに好ましい。配合量が5質量部未満だと、補強効果が得られないおそれがあり、100質量部を超えるとシリコーンゴム組成物の粘度が高くなりすぎて作業性、加工性が悪くなるおそれがある。
【0057】
本発明のオイルブリード性シリコーンゴム組成物には、その他の成分として、必要に応じて、エチニルシクロヘキサノール等の反応制御剤、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤や、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、接着性付与剤(特には、分子中にアルケニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等から選ばれる少なくとも1種の官能性基を含有すると共に、分子中にSiH基を含有しないアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物等)、チクソ性付与剤、顔料等の着色剤、ベンゾトリアゾール誘導体等を配合することは任意とされる。
【0058】
なお、本発明のオイルブリード性シリコーンゴム組成物には、耐熱性向上剤、具体的には、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物を配合することなく、耐熱性を向上させることができるため、これらの配合量を組成物中20質量%以下、好適には無配合にすることができる。
【0059】
本発明のオイルブリード性シリコーンゴム組成物は、上述した(A)~(F)の必須成分及びその他の所定成分を適宜混合することにより調製することができ、配合の順序は特に制限されない。しかし、まず、上記の(A)成分に、(B)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分を一緒に又は別々に配合することが好ましい。ここで一緒にとは3成分を同時に配合することである。また、別々にとは(B)成分、(D)成分、(E)成分、及び(F)成分を順不同に順番に配合することである。そして、最後に(C)成分を添加し混合する。こうして得られた組成物から得られた硬化物は使用時においてオイルブリード性及び耐熱性に優れる。
【0060】
このようにして得られたオイルブリード性シリコーンゴム組成物は、金属酸化物等の添加剤を含むことを要しないため、無色透明~乳白色となり、顔料等の着色剤によって容易に所望の色を着色することができる。なお、「無色~乳白色」とは、無色透明から徐々に透明感がなくなって白っぽくなり(無色半透明)、最終的に乳白色(透明感なし)となるまでの白濁の程度の変化を意味する。
【0061】
このオイルブリード性シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法としては、常法を採用し得るが、成形法として射出成形、トランスファー成形、注入成形、圧縮成形等から目的にあった最適な手段を選択することが可能である。硬化条件としては、40~230℃で3秒~160分間程度の加熱処理(一次加硫)条件を採用し得る。またさらに、必要に応じて任意に、40~230℃で10分~24時間程度の二次加硫(ポストキュア)を行ってもよい。
【0062】
このようにして得られたオイルブリード性シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)は、硬さ(JIS K 6249:2003、デュロメーターA硬度計による)は10以上が好ましく、10~70がより好ましく、20~60がさらに好ましい。このシリコーンゴム硬化物の硬さは、該シリコーンゴム硬化物を大気雰囲気中で225℃、72時間加熱した後においてもほとんど変化がないことが好ましい。例えば、大気雰囲気中で225℃・72時間加熱した後のデュロメーターA硬さの初期のデュロメーターA硬さに対する変化率が±7度以内であることが好ましく、±5度以内であることがより好ましい。
【0063】
また、このシリコーンゴム硬化物は、オイルブリード性を有する。ここでいうオイルブリード性とは、時間経過と共にシリコーンゴム硬化物表面にその硬化物に含まれるシリコーンオイルが滲み出す(ブリードする)ことをいう。ここでは、単にブリード性というときもある。
【0064】
さらに、このシリコーンゴム硬化物は、耐熱性に優れる。シリコーンゴム硬化物を大気雰囲気中、225℃で72時間加熱した後の切断時伸び(JIS K6249:2003に準拠)の初期の切断時伸びに対する低下率は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
この低下率は、シリコーンゴム硬化物の初期の切断時伸びを基準とした切断時伸びの低下の割合であり、以下の式から求められる。
低下率={(初期の切断時伸び)-(225℃・72時間加熱後の切断時伸び)}/(初期の切断時伸び)×100(%)
【0065】
また、このようにして得られたオイルブリード性シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)は、圧縮率25%、150℃で70時間圧縮後の圧縮永久歪(JIS-K6262:2013に準拠)が40%以下であることが好ましく、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。圧縮永久歪が40%以下であると、O-リングやパッキンの材料として好ましい。圧縮永久歪は以下の式から求められる。
圧縮永久歪={(初期の試験片の厚さ)-(150℃・70時間加熱後の試験片の厚さ)}/(初期の試験片の厚さ)×100(%)
【0066】
[オイルブリード性シリコーンゴム硬化物の耐熱性を向上、圧縮永久歪を低くする方法]
本発明に係るオイルブリード性シリコーンゴム硬化物の耐熱性を向上、又は圧縮永久歪を低くする方法は、
下記(A)~(C)成分
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子と結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.2~20質量部、
(C)白金族金属系触媒:(A)及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~500ppm
を含むシリコーンゴム組成物に、下記(D)~(F)成分
(D)下記式(1)で表されるフェニル基含有オルガノポリシロキサン:1~10質量部、
【化14】
(式中、R3は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、少なくとも1つはフェニル基である。また、mは0~3の正数、nは3~50の正数で、かつm+nは3~50を満足する正数である。)
(E)下記式(2)で表される無官能性ジメチルポリシロキサン:1~25質量部、及び
【化15】
(式中、Meはメチル基であり、pは2~600の整数である。)
(F)下記一般式(3)
【化16】
[式中、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R5は炭素数1~15の1価炭化水素基又は下記式(4)で表される基である。
【化17】
(式中、R6は-(CH2L-Si(OR73であり、R7は炭素数1~4のアルキル基又はSiR8 3基(R8は炭素数1~4のアルキル基)であり、Lは1~6の整数である。*は結合点を示す。)]
で表されるベンゾトリアゾール誘導体:(C)成分の白金族金属原子1molに対し、2~100mol
を配合し、このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるオイルブリード性シリコーンゴム硬化物の耐熱性を向上し、圧縮永久歪を低くする方法である。
【0067】
また、上記シリコーンゴム組成物が、さらに、(G)成分として補強性シリカ粉末を(A)成分100質量部に対して5~100質量部含有することが好ましい。ここで、(A)~(G)成分は、上述した本発明のオイルブリード性シリコーンゴム組成物における各成分と同じであり、耐熱性の向上(切断時伸び)及び圧縮永久歪を低くする効果の確認は上記と同じである。
【実施例
【0068】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、下記例にて、部は質量部を意味する。また、室温は25℃を意味する。また、以下の構造式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。下記に記載の(D)成分のフェニル基量とは、式(1)中のR3の合計モル数に対する、フェニル基のモル数の割合(mol%)である。
なお、下記例で、粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。
【0069】
[調製例1]
粘度が約30,000mPa・sであり、平均重合度Mnが750である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)(ビニル基含有量3.6×10-5mol/g)60部、BET法による比表面積が約300m2/gである微粉末シリカ(G)(商品名:アエロジル300、日本アエロジル社製)40部、表面処理剤としてヘキサメチルジシロキサン8部及び水2部を、ニーダー中で1時間混合した。その後、ニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。次いで、温度を100℃まで降温した後、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに30部添加し、均一になるまで混合した。該混合物をベースコンパウンド(I)と称す。
【0070】
[実施例1]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに6.54部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖(即ち、主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位)中のケイ素原子に結合した1価の基又は原子の5mol%がビニル基である平均重合度Mn200のジメチル・メチルビニルポリシロキサン共重合体(A2)(ビニル基含有量6.5×10-4mol/g)1.54部、架橋剤として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.15部、下記式(1-1)で表されるフェニル基量19mol%のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(D1)3.85部、
【化18】
(フェニル基19mol%)
平均重合度Mnが216である分子鎖両末端にトリメチルシロキシ基を有する無官能性ジメチルポリシロキサン(E1)16.15部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、下記式(3-1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体(F1)
【化19】
を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Aを得た。得られた組成物Aの外観(目視)は無色半透明であった。
この組成物Aを2mm厚とし、150℃で10分間プレスキュアを行うことによってシリコーンゴム硬化物の試験片を作製し、以下の試験を行った。
【0071】
(オイルブリード性)
得られた硬化物を15mm×35mmのシート片にカットし、該サンプルを、室温(25℃)で1日間放置した。その後、サンプル表面に滲み出たオイルの有無を指触にて評価した。
【0072】
(デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪)
得られた硬化物について、JIS K 6249:2003に準拠して試験用シートを作製し、これを用いてデュロメーターA硬さ、切断時伸び(%)の初期値を測定した。また、該試験用シートを225℃の乾燥機に72時間(3日間)入れた後に、同様にデュロメーターA硬さ、切断時伸び(%)を測定した。また、その測定値から以下の式よりデュロメーターA硬さの変化率と切断時伸びの低下率を求めた。
デュロメーターA硬さの変化率={(225℃・72時間加熱後のデュロメーターA硬さ)-(初期のデュロメーターA硬さ)}/(初期のデュロメーターA硬さ)×100(%)
切断時伸びの低下率={(初期の切断時伸び)-(225℃・72時間加熱後の切断時伸び)}/(初期の切断時伸び)×100(%)
【0073】
得られた硬化物について、JIS-K6262:2013に準拠して、圧縮永久歪試験用試験片(29.0mmφ×12.5mm厚)を作製し、これを用いて初期厚さを測定した。試験片を25%圧縮し、150℃の乾燥機に70時間入れた後に、同様に試験片の厚さを測定した。また、その測定値から以下の式より圧縮永久歪を求めた。
圧縮永久歪={(初期の試験片の厚さ)-(150℃・70時間加熱後の試験片の厚さ)}/(初期の試験片の厚さ)×100(%)
【0074】
[実施例2]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに18.85部、架橋剤として上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)0.98部、上記式(1-1)で表されるフェニル基量19mol%のシリコーンオイル(D1)3.85部、平均重合度Mnが517である分子鎖両末端にトリメチルシロキシ基を有する無官能性ジメチルポリシロキサン(E2)1.54部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、ベンゾトリアゾール誘導体(F1)を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Bを得た。得られた組成物Bの外観(目視)は無色半透明であった。
得られた組成物Bについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。
【0075】
[実施例3]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに6.54部、上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖(即ち、主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位)中のケイ素原子に結合した1価の基又は原子の5モル%がビニル基である平均重合度Mn200のジメチルポリシロキサン(A2)(ビニル基含有量6.5×10-4mol/g)1.54部、架橋剤として上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.15部、下記式(1-2)で表されるフェニル基量35mol%のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(D2)3.85部、
【化20】
(フェニル基35mol%)
平均重合度Mnが216である分子鎖両末端にトリメチルシロキシ基を有する無官能性ジメチルポリシロキサン(E1)16.15部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、ベンゾトリアゾール誘導体(F1)を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Cを得た。得られた組成物Cの外観(目視)は無色半透明であった。
得られた組成物Cについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。
【0076】
[比較例1]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに18.8部、架橋剤として上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.06部、上記式(1-1)で表されるフェニル基量19mol%のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(D1)5.38部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、ベンゾトリアゾール誘導体(F1)を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Dを得た。得られた組成物Dの外観(目視)は無色半透明であった。
得られた組成物Dについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。
【0077】
[比較例2]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに22.9部、架橋剤として上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.02部、平均重合度Mnが216である分子鎖両末端にトリメチルシロキシ基を有する無官能性ジメチルポリシロキサン(E1)2.31部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、ベンゾトリアゾール誘導体(F1)を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Eを得た。得られた組成物Eの外観(目視)は無色透明であった。
得られた組成物Eについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。
【0078】
[比較例3]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに18.8部、架橋剤として上記分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.06部、上記式(1-1)で表されるフェニル基量19mol%のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(D1)5.38部、耐熱性向上剤として酸化鉄(三酸化二鉄)1.63部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、ベンゾトリアゾール誘導体(F1)を0.03部(ベンゾトリアゾール誘導体/Pt原子=24モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Fを得た。得られた組成物Fの外観(目視)は赤褐色であった。
得られた組成物Fについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。
【0079】
[比較例4]
上記で得たベースコンパウンド(I)100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)をさらに6.54部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖(即ち、主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位)中のケイ素原子に結合した1価の基又は原子の5mol%がビニル基である平均重合度Mn200のジメチル・メチルビニルポリシロキサン共重合体(A2)(ビニル基含有量6.5×10-4mol/g)1.54部、架橋剤として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B1)(重合度38、SiH基量0.00694mol/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)1.15部、フェニル基量19mol%のフェニル基含有オルガノポリシロキサン(D1)3.85部、平均重合度Mnが216である分子鎖両末端にトリメチルシロキシ基を有する無官能性ジメチルポリシロキサン(E1)16.15部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部(アセチレン/Pt原子=38モル/モル)を添加し、15分間撹拌した。
次いで白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体のトルエン溶液(C1)(白金原子1質量%)0.08部を添加し、30分間撹拌して均一なシリコーンゴム組成物Gを得た。得られた組成物Gの外観(目視)は無色半透明であった。
得られた組成物Gについて、実施例1と同様にしてオイルブリード性、デュロメーターA硬さ、切断時伸び、圧縮永久歪について評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
なお、これまで本発明を、上記実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。