(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ガスバリア用組成物、コーティング剤および積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20240806BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240806BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20240806BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20240806BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240806BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240806BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240806BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L75/04
B32B27/18 Z
B32B27/40
B65D65/42 A
C08K3/10
C08K5/00
C09D7/61
C09D167/00
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2024513230
(86)(22)【出願日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2023038626
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022180188
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】林 正憲
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/061705(WO,A1)
【文献】特開2005-139435(JP,A)
【文献】特開2015-208924(JP,A)
【文献】特開2015-016657(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005767(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103994(WO,A1)
【文献】特開2007-112114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B32B
C09D
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤とを含むガスバリア用組成物であって、
組成物中のポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)の酸価が20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である
ことを特徴とする、ガスバリア用組成物。
【請求項2】
前記2価金属化合物(B)が、亜鉛化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のガスバリア用組成物。
【請求項3】
前記2価金属化合物(B)が、平均粒子径が500nm以下の微粒子である請求項1に記載のガスバリア用組成物。
【請求項4】
前記2価金属化合物(B)の固形分が、組成物中の全固形分の合計質量に対して20~90質量%である、請求項1に記載のガスバリア用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、ガスバリア性コーティング剤。
【請求項6】
基材と、請求項5に記載のコーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体を有する包装材料。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を含有するガスバリア性コーティング剤であって、前記ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)及びトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含む組成物(CA)と、
前記2価金属化合物(B)及びトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含む組成物(CB)との2液型であることを特徴とするガスバリア性コーティング剤。
【請求項9】
基材と、請求項8に記載の組成物(CA)を塗工して得られるコート層(CA)と、請求項8に記載の組成物(CB)を塗工して得られるコート層(CA)とを有する積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の積層体を有する包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する組成物を提供するものである。また、該ガスバリア用組成物を含有するコーティング剤、および該コーティング剤を塗工して得られる積層体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に酸素による酸化を防止する事が求められている。この要求に対し、従来、比較的酸素バリア性が高いとされる樹脂で構成されるバリア性フィルムや、当該バリア性フィルムをフィルム基材として用いた積層体(積層フィルム)が用いられている。
従来、酸素バリア性樹脂としては、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールに代表される分子内に親水性の高い水素結合性基を含有する樹脂が用いられてきた。これらの樹脂からなる包装材料は乾燥条件下において非常に優れた酸素バリア性を示す。一方、高湿度下においては樹脂の親水性に起因して酸素バリア性が大きく低下する問題があった。
【0003】
これらの問題を解決する為、基材上にポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層を隣接させて積層し、2層間で反応させる事によりポリカルボン酸の多価金属塩を生成し、ガスバリア性包装材料を調整する方法が知られている。しかし、この様なガスバリア性包装材料は製造に際し、複数種の塗液が必要で、塗工を複数回行う必要があり、手間が必要となる。
【0004】
塗工工程を少なくした上で高いバリア性を発揮するガスバリア用組成物として、本出願人らは先に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸やイタコン酸等の酸価の高い単量体の単独重合体や共重合体であるカルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、アルコール(C)とを含有し当該組成物中におけるアルコール(C)の含有量が85~98wt%であって、組成物中における水分量が1%以下であるガスバリア用組成物を見出している(例えば特許文献2参照)。当該組成物は高いガスバリア性を示し組成物そのものの保存安定性は良好であったが、コーティング剤として使用する際の塗工適性や安定性にやや劣るといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-112114号公報
【文献】WO20/203766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、塗工工程を少なくした上で高いバリア性を発揮し、且つ、コーティング剤として使用する際の塗工適性や安定性に優れたガスバリア用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カルボキシル基を有する樹脂として、引用文献2に開示された、酸価の高いアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸やイタコン酸等の酸価の高い単量体の単独重合体や共重合体が、コーティング剤として塗工中、溶媒が蒸発するに従い部分的なゲル化が生じ、それが塗工適性を低下させていることを見出し、これに代わる樹脂として、酸価が150mgKOH/g以下であるポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物と、有機溶剤とを含有する特定のガスバリア用組成物が、前記課題を解決可能であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、有機溶剤とを含むガスバリア用組成物であって、組成物中のポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)の酸価が150mgKOH/g以下であるガスバリア用組成物を提供する。
【0009】
また本発明は、前記記載の組成物を含有するガスバリア性コーティング剤を提供する。
【0010】
また本発明は、基材と、前記記載のコーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体を提供する。
【0011】
また本発明は、前記組成物を含有するガスバリア性コーティング剤であって、前記ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)及び有機溶剤を含む組成物(CA)と、前記2価金属化合物(B)及び有機溶剤を含む組成物(CB)との2液型であるガスバリア性コーティング剤を提供する。
【0012】
また本発明は、基材と、前記記載の組成物(CA)を塗工して得られるコート層(CA)と、請求項8に記載の組成物(CB)を塗工して得られるコート層(CA)とを有する積層体を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の積層体を有する包装材料を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスバリア用組成物は、酸価が150mgKOH/g以下であるポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物と、有機溶剤と組み合わせた組成物であり、コーティング剤として塗工中、溶媒が蒸発しても、部分的なゲル化が生じにくく塗工適性を低下させない。更に本発明のガスバリア用組成物は、組成物を全て含有する1液型のコーティング剤としても使用できるし、前記ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)及び有機溶剤を含む組成物(CA)と、前記2価金属化合物(B)及び有機溶剤を含む組成物(CB)との2液型のコーティング剤としても使用でき、いずれの方法であっても高いバリア性を発揮することが可能であり、ガスバリア用コーティング剤として好適に使用可能である。
また、当該組成物を基材に塗工して得られる積層体は、ガスバリア性に優れることから、包装材料、特に食品・日用品・電子材料・医療用等のバリア性を必要とする包装材料として好適に使用可能である。
さらには耐熱性・耐湿熱性にも優れることから、ボイルやレトルトといった加熱殺菌用の包装材料としても好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ガスバリア用組成物>
本発明のガスバリア用組成物は、150mgKOH/g以下の酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、有機溶剤とを含む組成物である。
【0016】
<酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)>
本発明で使用する酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)(以後樹脂(A)と称する場合がある。)は、酸価が150mgKOH/g以下であることが特徴である。好ましくは120mgKOH/g以下で、より好ましくは100mgKOH/g以下である。なお下限は10mgKOH/g以上であればよく、20mgKOH/g以上がなお好ましい。
【0017】
(酸価測定方法)
酸価とは、試料1g中に存在する酸分を、中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。具体的には、秤量した試料を試料が溶解する適当な溶媒、例えば体積比でトルエン/メタノール=70/30の溶媒に溶かし、1%フェノールフタレインアルコール溶液を数滴滴下しておき、そこに0.1mol/Lの水酸化カリウムアルコール溶液を滴下して、変色点を確認する方法により測定することができ、下記の計算式で求めることができる。
【0018】
酸価測定方法-1
酸価(mgKOH/g)=(V×F×5.61)/S
V:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の使用量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の力価
S:試料の採取量(g)
5.61:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液1mL中の水酸化カリウム相当量(mg)
【0019】
試料が樹脂溶液の場合は、下記の計算式で樹脂酸価(mgKOH/g)を求めることができる。
【0020】
樹脂酸価(mgKOH/g)=樹脂溶液の酸価(mgKOH/g)/NV(%)×100
NV:不揮発分(%)
【0021】
また、有機溶媒への試料の溶解性が低く、析出などをして、測定困難な場合は、以下の方法でも酸価を測定することができる。
【0022】
酸価測定方法-2
酸価(mgKOH/g-resin)とは、FT-IR(日本分光社製、FT-IR4200)を使用し、無水マレイン酸のクロロホルム溶液によって作成した検量線から得られる係数(f)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン溶液における無水マレイン酸の無水環の伸縮ピーク(1780cm-1)の吸光度(I)とマレイン酸のカルボニル基の伸縮ピーク(1720cm-1)の吸光度(II)を用いて下記式により算出した値である。
酸価(mgKOH/g-regin)=[(吸光度(I)×(f)×2×水酸化カリウムの分子量×1000(mg)+吸光度(II)×(f)×水酸化カリウムの分子量×1000(mg))/無水マレイン酸の分子量]
無水マレイン酸の分子量:98.06、水酸化カリウムの分子量:56.11
【0023】
本発明で使用する樹脂(A)の分子量は、特に限定はないが、数平均分子量が300~1,200,000であることが塗膜成形性の観点から好ましい。特に好ましくは500~1、000,000である。
前記樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)の方法で測定を行うことで算出することができる。
【0024】
(酸価を有するポリエステルポリオール樹脂)
【0025】
本発明で使用する酸価を有するポリエステルポリオール樹脂としては、特に限定なく公知の樹脂を使用することができる。例えば、多価カルボン酸と、多価アルコールとを公知の方法で重縮合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0026】
本発明で使用するポリエステルポリオール樹脂(A)の酸価の制御は、特に限定されず公知の方法で行うことができる。例えばエステル化の重縮合反応が開始した後、サンプリングを行って酸価を測定しながら多価カルボン酸の残存量を確認し、目標酸価に到達した所で反応を停止する方法等が挙げられる。
【0027】
多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸、オルトフタル酸又はその酸無水物(無水フタル酸)、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその酸無水物等のオルト配向性多価カルボン酸が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
これらの多価カルボン酸は、1種または2種以上を併用することができる。
【0028】
多価アルコールとしては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等の三価以上の多価アルコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。これらの多価アルコールは1種または2種以上を併用することができる。
【0029】
ポリエステルポリオールが3個以上の水酸基を有する場合、水酸基の一部を酸基で変性してもよく、このようなポリエステルポリオールは、例えば予め多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得たポリエステルポリオールに、更に多価カルボン酸またはその酸無水物を反応させて得られる。多価カルボン酸で変性する水酸基の割合は、ポリエステルポリオールが備える水酸基の1/3以下とすることが好ましい。
【0030】
(酸価を有するポリウレタンポリオール樹脂(A))
【0031】
本発明で使用する酸価を有するポリウレタンポリオール樹脂としては、特に限定なく公知の樹脂を使用することができる。例えば、多価アルコールとイソシアネート化合物とを公知の方法で重縮合して得られるポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0032】
多価アルコールとしては、前述のポリエステルポリオールで述べた多価アルコールを使用することができる。また前述のポリエステルポリオールをそのままポリオールとして使用してもよい。この場合は、ポリエステルポリウレタンポリオールとなる。
【0033】
本発明で使用するポリウレタンポリオール樹脂(A)の酸価の制御は、特に限定されず公知の方法で行うことができる。例えば、目標酸価の範囲内であるポリエステルポリオールやカルボキシル基を有する多価アルコール等を選定し、イソシアネート化合物とのウレタン化反応を行う等の方法で得ることができる。
【0034】
カルボキシル基を有する多価アルコールとしては、例えば、カルボキシル基を1つ有するジオールである2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロール酪酸、及び2,2’-ジメチロール吉草酸等や、カルボキシル基を2つ以上有するジオールである酒石酸等が挙げられる。
【0035】
イソシアネート化合物としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。ポリエステルポリオールとジイソシアネート化合物とを、水酸基とイソシアネート基の比率をイソシアネート過剰で反応させて得られるポリエステルポリイソシアネートを用いてもよい。これらは1種または2種以上を併用することができる。
【0036】
イソシアネート化合物としてブロック化イソシアネートを用いてもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0037】
<2価金属化合物(B)>
本発明で使用する金属化合物(B)は、2価金属化合物であることを特徴とする。
2価金属化合物(B)とは、2価金属の化合物である。2価金属化合物(B)としては、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物等が挙げられ、特に好ましくは亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物である。これらの金属化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。
【0038】
2価金属化合物(B)としては、2価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩であることが好ましいく、これらの混合物であっても構わない。
2価金属化合物(B)の具体的な化合物として、好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムであり、特に好ましくは酸化亜鉛と酸化マグネシウムである。
【0039】
2価金属化合物(B)としては、粒子状であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径が500nm以下10nm以上の微粒子である。特に好ましくは20nm~300nmの微粒子である。
ここでの平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置、例えばLB-500(堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0040】
<有機溶剤>
本発明で使用する有機溶剤は、特に限定なく通常有機溶媒として使用する溶剤を使用することができる。例えば、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ペンタノール等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。
【0041】
<ガスバリア用組成物>
本発明のガスバリア用組成物は、前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)と、有機溶剤とを含有することを特徴とする。
固形分は特に限定はないが、好ましくは組成物中の5~20質量%である。
また全固形分中、前記2価金属化合物(B)の固形分は、全固形分の合計質量に対して20~90質量%であることが好ましい。より好ましくは60~80質量%である。
前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)との合計量は5~40質量%であることが好ましい。特に好ましくは5~20質量%である。
これらの範囲において、特にガスバリア性を十分に発揮することができる。
【0042】
また、前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)の比率としては、前記樹脂(A)と前記2価金属化合物(B)の合計量に対し、前記2価金属化合物(B)が20~90質量%であることが好ましい。この範囲であると、ガスバリア性と塗工性が良好に両立できる。特に好ましくは60~80質量%である。
【0043】
本発明のガスバリア用組成物は、前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)と、有機溶剤以外の材料を含有していても構わない。
【0044】
(添加剤)
本発明のガスバリア用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、カップリング剤、シラン化合物、リン酸化合物、有機フィラー、無機フィラー、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤、酸素捕捉剤(酸素捕捉機能を有する化合物)、粘着付与剤等が例示できる。これらの各種添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0045】
カップリング剤としては公知慣用のものが挙げられ、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミカップリング剤等が挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤としては公知慣用のものを用いればよく、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0048】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0049】
アルミカップリグ剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0050】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラザンとしてはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサンとしては加水分解性基含有シロキサン等が挙げられる。
【0051】
添加剤のうち、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、樹脂、鉱物等の無機物及びこれらの複合物が挙げられる。無機フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、チタン、ジルコニア、銅、鉄、銀、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、粘土鉱物等が挙げられる。
【0052】
酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0053】
粘着付与剤としては、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を添加することで塗布直後の各種基材に対する粘着性を向上させることができる。粘着性付与剤の添加量は樹脂組成物全量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
【0054】
<ガスバリア性コーティング剤>
本発明のガスバリア性コーティング剤は、前述のガスバリア用組成物を構成する、前記樹脂(A)、2価金属化合物(B)と、有機溶剤とが1液となった、1液型のガスバリア性コーティング剤としても使用できるし、前記ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)及び有機溶剤を含む組成物(CA)と、前記2価金属化合物(B)及び有機溶剤を含む組成物(CB)との2液型のガスバリア性コーティング剤としても使用でき、いずれの方法であっても高いバリア性を発揮する。
【0055】
(1液型のガスバリア性コーティング剤と、それを使用する積層体)
本発明の1液型のガスバリア性コーティング剤は、前記樹脂(A)、2価金属化合物(B)と、有機溶剤とを混合することで得ることができる。1液型のガスバリア性コーティング剤は、そのまま基材に塗工し乾燥させるのみで、ガスバリア性を有するコート層を得ることができる。本発明の積層体は、基材と、1液型のガスバリア性コーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体である。
【0056】
本発明のガスバリア用組成物をコーティングしたコート層は、前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)とがイオン結合を形成している。コーティング剤を基材に塗工すると、揮発分が除外され、それにより前記樹脂(A)と2価金属化合物(B)がイオン結合を形成し、その架橋構造によりバリア性が発揮される。
従って、1液型のガスバリア性コーティング剤は、塗工し乾燥させるのみでガスバリア性を発揮し、コート層内部で3次元的に架橋が伸長することから、より高いガスバリア性が発揮できているものと推測される。
【0057】
本発明の1液型のガスバリア性コーティング剤は、ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)の酸価が150mgKOH/g以下であり、有機溶剤が揮発しても2価金属化合物(B)とのゲル化を生じにくく、塗工適性が保たれる。
【0058】
(基材)
本発明で使用される基材は、本発明の効果が得られる範囲においてその材料や製造方法、形状が特に限定されるものではないが、多くはフィルム形状(シートとも称される場合があるが本発明においてはフィルムと称す。)のものが使用される。これらの基材の材料としては、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、セルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(NY)、バイオマス由来成分を含有する材料が挙げられる。特にオレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂からなるフィルムであれば特に限定なく使用することができる。オレフィン系樹脂としては具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、α-オレフィン重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、環状オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂;オレフィン樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸で変性した変性オレフィン系樹脂が挙げられる。
【0059】
前記基材は、特に限定はなく通常食品や日用品、医薬品等の包装に用いられる厚さの基材であればよい。成型性や透明性の観点から、1μm~500μmの範囲のフィルムであればよく、好ましくは1μm~300μm、より好ましくは1μm~100μmの範囲である。1μmを下回ると強度が不足し、500μmを超えると剛性が高くなり過ぎ、加工が困難になる恐れがある。
これらの基材の製造方法としては特に限定されるものではなく溶融押出成形法、溶液キャスティング成形法、カレンダー成形法等各種成膜法を用いて製造することができ、これらを更に二軸延伸、一軸延伸処理したものを用いても良い。また、必要に応じて各種表面処理を施したフィルムを用いても良い。
【0060】
前記基材の少なくとも片面に無機層が形成されていてもよい。これら無機層を形成する無機物としては、本発明の効果が得られる範囲において特に限定されるものではないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム等の金属及び金属酸化物から選択される一種以上を用いることが好ましく、バリア性が良好に発揮されることから酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムから選択される一種以上を用いることが特に好ましい。無機層を形成する方法としては本発明の効果が得られる範囲において特に限定されるものではないが、蒸着処理、スパッタリング処理、CVD処理、塗工処理により形成することができ、無機層を均一に形成できることから特に蒸着処理、スパッタリング処理を用いることが好ましい。
【0061】
勿論上記以外の、木材、金属、金属酸化物、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材も使用可能である。これらの基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。
【0062】
本発明の1液型ガスバリア性コーティング剤の前記基材への塗工方法としては、特に限定はなく、公知慣用の塗工方法を用いることができる。例えばスプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられる。
【0063】
本発明の1液型ガスバリア性コーティング剤を塗工することで得られるコート層は、塗工後に乾燥させることでよりコート層内のイオン結合が密になりガスバリア性が高まる。よって、塗工後に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程としては、常温乾燥でもよく、加熱、減圧、送風といった強制乾燥を行ってもよい。
【0064】
(その他の層)
本発明の積層体には、他の基材層、印刷層、機能性を有するコーティング層、接着層等を各種組み合わせてもよい。
【0065】
(他の基材層)
他の基材層は、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、セルロースエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(NY)、バイオマス由来成分を含有する材料が挙げられる。特にオレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂からなるフィルムであれば特に限定なく使用することができる。オレフィン系樹脂としては具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、α-オレフィン重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、環状オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂;オレフィン樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸で変性した変性オレフィン系樹脂が挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に得られることから、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂を使用することが好ましく、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が最も好ましい。
【0066】
また、例えば木材、金属、金属酸化物、前記層(A)で示した樹脂以外の樹脂フィルム、紙、シリコン又は変性シリコン等や、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明に係る積層体を包装材料として用いる場合、紙、プラスチック、金属、金属酸化物等を基材として用いてもよい。
(印刷層)
印刷層は、文字、図形、記号、その他所望の絵柄等が印刷された層である。印刷方法や印刷インキには特に限定されず、公知の印刷方法や印刷インキを用いることができる。前記の基材として使用するフィルムに多用されるのは、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法、平版オフセット印刷方法、インクジェット記録印刷方法等を使用した印刷インキが多い。またこれらの印刷方法と、紫外線(UV)や、LED、電子線(EB)等の活性エネルギー線で硬化させる方法や、熱で硬化させる方法等を組み合わせた印刷インキも使用される。また、使用する溶剤により、水性インキ、有機溶剤型インキという言い方をする場合もある。
【0067】
具体的には、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(業界により、グラビア印刷インキとフレキソ印刷インキをリキッドインキと称することがある)、平版オフセット印刷用紫外線硬化型インキ、平版オフセット印刷用電子線硬化型インキ、インクジェット記録印刷用紫外線硬化型インキ、インクジェット記録印刷用電子線硬化型インキ、等が挙げられる。
【0068】
これらのインキを用いて印刷された印刷層が設けられる位置は任意であり、前記第一の基材上に設けられていてもよいし、別途印刷層が設けられた基材が本発明の積層体の構成成分の1つとなっていてもよく、位置は任意である。またインキは、樹脂、着色剤、溶剤を必須の成分として含むものであってもよいし、樹脂と溶剤を含み、着色剤を実質的に含まない、いわゆるクリアインキであってもよい。
以下、フィルムへの印刷に最もよく使用されるリキッドインキについて説明する。
【0069】
リキッドインキに用いられる樹脂は特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン‐マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用できる。好ましくはポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種、あるいは2種以上である。
【0070】
リキッドインキに用いられる着色剤としては、酸化チタン、弁柄、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの無機顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料当の有機顔料、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料が挙げられる。
【0071】
リキッドインキに用いられる有機溶剤は、芳香族炭化水素系有機溶剤を含まないことが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤などが挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0072】
(機能性を有するコーティング層)
機能性を有するコーティング層としては、例えば各種添加剤を添加したコーティング剤等が挙げられる。添加剤としては、例えば、改質剤、カップリング剤、シラン化合物、リン酸化合物、有機フィラー、無機フィラー、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤、酸素捕捉剤(酸素捕捉機能を有する化合物)、粘着付与剤等が例示できる。これらの各種添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0073】
改質剤としては公知慣用のものが挙げられ、例えば、ジオール、アミン化合物、カルボジイミドやイソシアネート等の各種化合物を添加して用いて良い。
【0074】
カップリング剤としては公知慣用のものが挙げられ、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミカップリング剤等が挙げられる。
【0075】
シランカップリング剤としては公知慣用のものを用いればよく、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0076】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0077】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0078】
アルミカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0079】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラザンとしてはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサンとしては加水分解性基含有シロキサン等が挙げられる。
【0080】
添加剤のうち、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、樹脂、鉱物等の無機物及びこれらの複合物が挙げられる。無機フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、チタン、ジルコニア、銅、鉄、銀、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、粘土鉱物等が挙げられる。
【0081】
酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0082】
粘着付与剤としては、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を添加することで塗布直後の各種基材に対する粘着性を向上させることができる。粘着性付与剤の添加量は樹脂組成物全量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
【0083】
(接着層)
接着層としては、本発明の積層体とその他の基材等とラミネートする目的で、汎用のラミネート法に使用可能な接着剤を使用することができる。ラミネート法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との2液硬化型接着剤を用いることができる。前記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアオフセットロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
【0084】
また、各種の粘着剤を使用することもでき、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの、或いは、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が-20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤などを挙げることができる。
【0085】
(2液型のガスバリア性コーティング剤と、それを使用する積層体)
本発明の2液型のガスバリア性コーティング剤は、前記ポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)及び有機溶剤を混合した組成物(CA)と、前記2価金属化合物(B)及び有機溶剤を混合した組成物(CB)とで構成される。2液型のコーティング剤は、基材に例えば組成物(CA)を塗工し乾燥させて組成物(CA)のコート層(CA)を得た後、コート層(CA)上に組成物(CB)を塗工し乾燥させコート層(CB)を得ることができる。
【0086】
また、本発明の積層体は、基材と、2液型のガスバリア性コーティング剤の組成物(CA)を塗工して得られるコート層(CA)と、2液型のガスバリア性コーティング剤の組成物(CB)を塗工して得られるコート層(CB)とを有する積層体である。
積層体の順序は、基材/コート層(CA)/コート層(CB)の順の他、、基材//コート層(CB)/コート層(CA)の順であってもよいが、コート層(CA)とコート層(CB)とは接していることが必要となる。
即ち本発明のガスバリア用組成物をコーティングしたコート層は、前記樹脂(A)と、前記2価金属化合物(B)とがイオン結合を形成することでその架橋構造によりバリア性が発揮されるため、2液型のガスバリア性コーティング剤は、コート層(CA)とコート層(CB)は接していることが必要となり、各々の層が接することでガスバリア性を発現する。
【0087】
本発明の2液型ガスバリア性コーティング剤を使用した積層体において、基材や塗工方法等は、前述の、基材上に本発明の1液型ガスバリア性コーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体と同様の基材や方法を使用することができる。
コート層(CA)とコート層(CB)を積層させるタイミングは、先に設けたコート層(CA)あるいはコート層(CB)を完全に乾燥させてから、次に設けるコート層(CA)あるいはコート層(CB)を塗工してもよいし、完全に乾燥させずに塗工してもよい。
【0088】
また、各種組み合わせてもよい他の基材層、印刷層、機能性を有するコーティング層、接着層等も、前述の、基材上に本発明の1液型ガスバリア性コーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体と同様のものを組み合わせることができる。
【0089】
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明の積層体が遮断できるガスとしては、酸素の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、リモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等を例示することができる。
【0090】
<包装材料、および加熱殺菌用包装材料>
本発明の積層体はガスバリア性に優れることから、ガスバリア性が要求される包装材料として好適に使用可能である。特に食品・日用品・電子材料・医療用等は高いバリア性を必要とすることから、本発明の包装材料を好適に使用可能である。
さらには耐熱性・耐湿熱性にも優れることから、ボイルやレトルトといった加熱殺菌用の包装材料としても好適に使用可能である。
充填される内容物として、例えば食品としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類が挙げられる。
また非食品としては、タバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、化粧水や乳液等の化粧品、真空断熱材、電池等、様々な包装材料としても使用され得る。
【0091】
(リサイクルプラスチック)
本発明の積層体や包装材料を、そのまま各種公知のリサイクルプラスチック加工方法で加工しリサイクルプラスチックを製造することもできる。具体的態様の一例としては、本発明の積層体を各々の基材に分離した回収物、あるいは本発明の積層体や包装材料を破砕する工程と、破砕したフィルム片を溶融混錬する工程と、溶融混錬した混錬物をペレット化する工程と、を有する製造方法により、リサイクルプラスチックを得ることができる。
【0092】
破砕(粉砕)の際に使用する破砕機は公知の粉砕機を使用すればよく特に限定はない。
粉砕した後のフィルム片は、溶融混練、溶媒キャストブレンド、ラテックスブレンド、ポリマーコンプレックス等で物理的にブレンドする。特に溶融混練法が一般的である。混練するための装置としては、タンブラ、ヘンシェルミキサ、ロータリーミキサ、スーパーミキサ、リボンタンブラ、Vブレンダ等が挙げられる。このような混練装置によって溶融混練した上で、ペレット化する。溶融混練ペレット化には単軸、または多軸押出機を用いるのが一般的で、フィルム片のまま投入しても、加熱または非加熱で圧縮減容処理した後に投入してもよい。更にこれら押出機以外に、バンバリーミキサ、ローラ、コ・ニーダ、ブラストミル、プラベンダーブラウトグラフ等を用いることもでき、これらは回分的、または連続的に運転される。また、溶融混練はせずに、成形用樹脂として使用し成形機加熱筒内で溶融混練する方法でもよい。
【実施例】
【0093】
本発明は以下の実施例を持って説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に記述のない場合、単位は重量換算である。
【0094】
(製造例1 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸100.0部、エチレングリコール5.0部、グリセロール90.0部、酢酸エチル85.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が40~50mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリオール樹脂:PEs1の酢酸エチル溶液を得た。PEs1の酸価は50mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0095】
(製造例2 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、無水フタル酸200.0部、エチレングリコール5.0部、グリセロール90.0部、酢酸エチル125.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が90~100mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量4000のポリエステルポリオール樹脂:PEs2の酢酸エチル溶液を得た。PEs2の酸価は100mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0096】
(製造例3 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、テレフタル酸100.0部、エチレングリコール5.0部、グリセロール90.0部、酢酸エチル85.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が40~50mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリオール樹脂溶液:PEs3の酢酸エチル溶液を得た。PEs3の酸価は50mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0097】
(製造例4 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、テレフタル酸200.0部、エチレングリコール5.0部、グリセロール90.0部、酢酸エチル125.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が90~100mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量4000のポリエステルポリオール樹脂:PEs4の酢酸エチル溶液を得た。PEs4の酸価は100mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0098】
(製造例5 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、無水フタル酸100.0部、グリセロール95.0部、酢酸エチル85.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が40~50mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリオール樹脂PEs5の酢酸エチル溶液を得た。PEs5の酸価は50mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0099】
(製造例6 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、無水フタル酸200.0部、グリセロール100.0部、酢酸エチル85.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.30部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が90~100mg/KOH/gの範囲となったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリオール樹脂:PEs6の酢酸エチル溶液を得た。PEs6の酸価は100mg/KOH/g固形分濃度は60%であった。
【0100】
(製造例7 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂の製造方法)
製造例1に於いて、仕込む原料を無水フタル酸150.0部、テレフタル酸150.0部、アジピン酸140.0部、エチレングリコール50.0部、ジエチレングリコール110.0、ネオペンチルグリコール100.0部、酢酸エチル300.0部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.60部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が2mg/KOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量6000のポリエステルポリオール樹脂:PEs7の酢酸エチル溶液を得た。PEs7の酸価は1mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0101】
(製造例8 酸価を有するポリウレタンポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、DMPA(2,2-ジメチロールプロパン酸)90.0質量部、メチルエチルケトン54.0質量部、テトラヒドロフラン81質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌した。次いで、XDI(キシリレンジイソシアネート)56.0質量部を仕込み、60℃に昇温した。1時間撹拌した後、40℃以下まで温度を下げてから、更にXDI56.0質量部を仕込み、再度60℃に昇温した。赤外分光法でイソシアネート基の消失が確認されるまで反応を継続した。次いで、希釈溶媒としてメタノール148.0質量部を加え、カルボキシル基を含有するウレタン樹脂:Ure1のメチルエチルケトン・テトラヒドロフラン溶液を得た。Ure1の酸価は40mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0102】
(製造例9 酸価を有するポリウレタンポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、無水フタル酸252.8部、エチレングリコール62.0部、ネオペンチルグリコール128.6部、1.6ヘキサンジオール105.8部及び酢酸エチル298.6部を仕込み、エステル化を行った。エステル化が終了した後、イソホロンジイソシアネート18.2g及び酢酸エチル109.6部を仕込んでウレタン化を進行させ、酸価が1mgKOH/g以下になったところでウレタン化反応を終了し、ポリウレタンポリオール樹脂:Ure2の酢酸エチル溶液を得た。Ure2の酸価は1mg/KOH/g、固形分濃度は60%であった。
【0103】
(製造例10 酸価を有さないポリエーテルポリウレタンポリオール樹脂の製造方法)
製造例1の反応容器に於いて、2官能で分子量400のポリプロピレングリコール(以下PPGと省略する事がある)213.7部、2官能で分子量700のPPG225.2部、2官能で分子量2000のPPG69.0部と3官能で分子量430のPPG41.1部を仕込み、撹拌しながらトリレンジイソシアネート152.6部を投入し、90℃到達後、酢酸エチル306.0部を投入し、反応温度を90℃に維持して合成した。NCO(%)が0.1%以下で、B型粘度計での粘度が2000~3000mPaに収まった事を確認し、ポリエーテルポリウレタンポリオール樹脂:Ether1を得た。固形分濃度は60%であった。
【0104】
(製造例11 ポリビニルアルコール溶液(以下PVAと省略する事がある)の製造方法)
クラレ株式会社製:クラレポバール:銘柄:28-98:5gと水:95gを200mlのバイアル瓶中で混合し、80℃で加温撹拌する事でPVA溶液を得た。この溶液の酸価は0mg/KOH/gであった。
【0105】
(製造例12 ポリアクリル酸溶液(以下PAAと省略する事がある)の製造方法)
東亜合成株式会社製:アロンA-10H:2gとイソプロピルアルコール:98gを200mlのバイアル瓶中で混合し、80℃で加温撹拌する事でPAA溶液を得た。この溶液の酸価は748mg/KOH/gであった。
【0106】
(製造例13 2価金属化合物である酸化亜鉛(ZnO)の分散液の製造方法)
一次粒子径20nmのZnO(堺化学工業株式会社製、FINEX-50):200gとメチルエチルケトン:800gを混合し、ビーズミル(寿株式会社製:ウルトラアスペックミルUAM-015)中で直径0.3mmのジルコニアビーズを使って1時間分散処理した後、ビーズをふるい分け、固形分濃度:20%のZnO溶液を得た。この溶液をZnO(MEK分散)と称する。この分散液中のZnOの粒径は150nmであった。
【0107】
(1液型のガスバリア性コーティング剤と、それを使用する積層体の作製、評価方法)
(実施例1~7、比較例1~3)
表1の配合表に従って実施例1~7、比較例1~3のガスバリア用組成物を調整し、これをガスバリア性コーティング剤として使用した。コーティング剤をPETフィルム(厚み:12μm)に塗工し、積層体を得た。酸素透過率、塗工溶液の安定性、塗工外観を評価した。
【0108】
(ガスバリア性コーティング剤の塗工方法)
松尾産業株式会社:K303バー No.1 イエロー/6μm、K303バーNo.2 レッド/12μm、K303 バー No.3 グリーン/24μm、K303 バー No.4 ブラック/40μmを用意し、PETフィルム(東洋紡エステルフィルム社製:E5100:厚み:12μm)にガスバリア性コーティング剤を塗工した後、80℃:1分乾燥させる事でコート層を形成し、積層体を得た。サンプル乾燥時のコート層の重量は約1.0g/m2になるようバーを選択して行った。
【0109】
<積層体のガスバリア性の評価:酸素透過率>
前項で得られた積層体を使用し評価した。酸素透過率(以下OTRと省略する事がある)の測定は、JIS-K7126(等圧法)に準じ、モコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN1/50を用いて、温度23℃、湿度0%RHの雰囲気下、及び、温度23℃、湿度90%RHの雰囲気下で実施した。RHとは相対湿度を表す。OTRの単位は、cc/day・atm・m2で、数値が低いほどバリア性が良好である事を意味する。評価は、以下の通りとした。
5:OTR:20cc以下
4:OTR:20cc~40cc
3:OTR:40cc~60cc
2:OTR:60cc~100cc
1:OTR:100cc以上
【0110】
<塗工溶液の安定性、外観評価>
表1の配合表に記載のガスバリア性コーティング剤の塗工時の平滑性の評価を以下の基準に従って行った。塗工液中に含まれる樹脂成分の重量は同量とし、塗工時の固形分は8%前後で一定になるように調整した。
(塗膜の平滑性評価)
1:平滑な塗膜が得られる
0:溶液の粘度上昇により、均一な塗膜が得られない。ZnOの析出が見られる。
【0111】
結果を表1に示す。
【0112】
【0113】
実施例1~7では優れた酸素バリア性、平滑な塗膜が得られた。これは、塗工溶液がフィルムに塗工されて乾燥された後、樹脂溶液中に存在するカルボキシル基とZnOからイオン化して生じたZn2+がイオン架橋反応を起こし、塗膜内の自由体積を減少させる事で優れた酸素バリア性を発現したものと推測する。溶液を静置した状態ではイオン架橋反応は進まない為、平滑な塗膜が得られたと推測する。比較例1では、平滑な塗膜は得られたものの、酸素バリア性は悪かった。これは、PEs7に酸価が殆んど無い為、イオン架橋反応が進行しなかった為と推測する。比較例2では0%RHでは良好な酸素バリア性が得られたものの、90%RHでは酸素バリア性が悪く、塗膜の平滑性も悪かった。これはPVAが水溶性樹脂で有る為、ZnO(MEK分散)と相溶性が悪い為であると推測する。比較例3では全ての項目での評価が悪かった。PAAは酸価が高くZnO(MEK分散)との反応性が高い為、ゲル物が生じ、均一な塗膜が得られず、酸素バリア性も悪かった。
【0114】
(2液型のガスバリア性コーティング剤と、それを使用する積層体の作製、評価方法)
(実施例8~12、比較例4~5)
表2の配合表に従って実施例8~12、比較例4~5の組成物(CA)と組成物(CB)とを調整し、これらを2液型のガスバリア性コーティング剤として使用した。コーティング剤をPETフィルム(厚み:12μm)に塗工し、積層体を得た。常態及びレトルト後の酸素透過率を評価した。
【0115】
(PETフィルム/コート層(CA)/コート層(CB)の積層体の製造方法)
(1層目の塗工方法)
表2に記載の組成物(CA)を、バーコーターを用いて、PETフィルム(東洋紡エステルフィルム社製:E5100:厚み:12μm)に塗工しコート層(CA)を得た。バーコーターは80℃:1分乾燥した後の重量が約1.0g/m2となる物を選択した。
【0116】
(2層目の塗工方法)
表2に記載の組成物(CB)を、バーコーターを用いて、前記作成したコート層(CA)上に塗工しコート層(CB)を得た。バーコーターは80℃:1分乾燥した後の重量が約1.0g/m2となる物を選択した。
【0117】
(ラミネートフィルムの作製)
前項で得られたPETフィルム/コート層(CA)/コート層(CB)の積層体において、コート層(CB)面にラミネート用接着剤を塗工し、CPPフィルム(東レフィルム加工社製:ZK-93KM、70μm厚)を貼り合わせ、ラミネートフィルムを作製した。ラミネート用接着剤にはDIC株式会社製:ディックドライ:LX-703(ポリオール材料)、ディックドライ:KR-90(ポリイソシアネート材料)を所定の比率で混合した物を用い、塗布量が2.5~3.0g/m2の範囲となるように塗工した。エージングは40℃3日間行った。
【0118】
(ラミネートフィルムのレトルト評価)
前項で得られたラミネートフィルムを、150mm×300mmで切り取り、CPPが内側になるように折り曲げ、1atm、210℃、1秒間でヒートシールしてパウチを作製した。内容物として水を加えた。充填したパウチはスチーム殺菌処理を120℃-30分の条件で実施し、取り出し後、開封して酸素透過性を評価した。
【0119】
【0120】
実施例8~12では常態、レトルト後を問わず優れた酸素バリア性が得られた。1層目に塗工した酸価含有樹脂のカルボキシル基が、2層目に塗工したZnOからイオン化して生じたZn2+とイオン架橋反応を起こし、塗膜内の自由体積を減少させる事で優れた酸素バリア性を発現したものと推測する。レトルト処理を行った際、通常、ラミネートフィルムは虐待される為、バリア性は悪化する。本発明で記載した実施例8~12は、レトルト処理を行う事で2層目に塗工したZnOのイオン化が更に進行し、1層目とのイオン架橋がより強固になる事で、良好な酸素バリア性が保持されたものと推測する。
比較例4は1層目に塗工したPEs7に酸価が殆んど無い為、イオン架橋が進行せず酸素バリア性は得られなかった。比較例5は、PVA溶液は低湿度下では酸素バリア性が良好なものの、高湿度下およびレトルト後は良好な酸素バリア性は得られなかった。
【要約】
【解決手段】 酸価を有するポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、有機溶剤とを含むガスバリア用組成物であって、組成物中のポリエステルポリオール樹脂またはポリウレタンポリオール樹脂(A)の酸価が150mgKOH/g以下であるガスバリア用組成物、前記組成物を含有するガスバリア性コーティング剤、前記記載のコーティング剤を塗工して得られるコート層とを有する積層体及び包装材料。前記2価金属化合物(B)が、亜鉛化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。