(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】グリシジルエーテル基含有化合物、硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 59/04 20060101AFI20240806BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08G59/04
C08L63/00 A
B32B27/38
(21)【出願番号】P 2024521708
(86)(22)【出願日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2023017677
(87)【国際公開番号】W WO2023223926
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2022080770
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】大津 理人
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203123(JP,A)
【文献】特開2003-183348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
B32B 27/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグリシジルエーテル基含有化合物。
【化1】
〔式(1)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z
1は下記式(2)、Z
2は下記式(3)、Z
3は下記式(4)表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【化2】
〔式(2)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。Gはグリシジル基又は2-メチルグリシジル基であり、式中のナフタレン環上の-OGは、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【化3】
〔式(3)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
Xは下記式(3-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(3-2)で表される構造単位であり、
【化4】
[式(3-1)(3-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(3-1)で表される構造単位Xと前記式(3-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【化5】
〔式(4)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、ぞれぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
【請求項2】
請求項
1記載のグリシジルエーテル基含有化合物と、グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)が、水酸基含有化合物である請求項
2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)が、可逆結合を有する水酸基含有化合物である請求項
3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記可逆結合を有する水酸基含有化合物が、下記一般式で表される水酸基含有化合物である請求項
4記載の硬化性樹脂組成物。
【化6】
〔式(7)中のArはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を含有する構造であり、式(5-1)(5-2)中のアントラセン由来構造、式(6-1)(6-2)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。式中、m-aは1~10の整数、m-bは1~4の整数、nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z
5は下記式(8)、Z
2は下記式(9)、Z3は下記式(10)、Z
4は下記式(11)、(12)で表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【化7】
〔式(8)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。式中のナフタレン環上の水酸基は、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【化8】
〔式(9)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
Xは下記式(9-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(9-2)で表される構造単位であり、
【化9】
[式(9-1)、(9-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2、は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(9-1)で表される構造単位Xと前記式(9-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【化10】
〔式(10)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、それぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
【化11】
【化12】
〔式(11)、(12)中、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。〕
【請求項6】
さらに、請求項
1記載のグリシジルエーテル基含有化合物以外の、エポキシ当量が100~10,000g/eqのエポキシ樹脂を含む、請求項
2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、下記式(13)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqである請求項
6記載の硬化性樹脂組成物。
【化13】
〔式(13)中、Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
X’は下記式(13-1)で表される構造単位であり、Y’は下記式(13-2)で表される構造単位であり、
【化14】
[式(13-1)、(13-2)中、Arは前記と同じであり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
R
3、R
4、R
7、R
8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
5、R
6、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、
n
1は4~16の整数であり、
n
2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
R
11、R
12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
13、R
14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
15、R
16は水素原子又はメチル基であり、
m3、m4、p1、p2、qは繰り返しの平均値であって、
m3、m4は、それぞれ独立して0~25であり、且つm3+m4≧1であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
qは0.5~5である。
ただし、前記式(13-1)で表される構造単位X’と前記式(13-2)で表される構造単位Y’との結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm3、m4であることを示す。)
【請求項8】
硬化性樹脂組成物中の硬化性成分の合計質量に対する、可逆結合の濃度が、0.10mmol/g以上である請求項
2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項
2に記載の硬化性樹脂組成物が、自己修復性組成物、易解体性組成物又は再成形材料用組成物の何れかである硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項
2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項11】
基材と、請求項
10に記載の硬化物を含む層と、を有する積層体。
【請求項12】
請求項
10に記載の硬化物を含有する耐熱部材。
【請求項13】
請求項1記載の式(1)で表されるグリシジルエーテル基含有化合物を、下記一般式(1)’で表される共役ジエンの中間体と、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物とを用いて
、グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)と硬化する過程で、in situで合成する、
請求項1記載のグリシジルエーテル基含有化合物の製造方法。
【化15】
〔式中、n、Z
2、Z
3は、前記と同じである。〕
【請求項14】
請求項13に記載の式(1)’
で表される共役ジエンの中間体と、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物と
、グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)と、を必須の原料として硬化反応させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有するグリシジルエーテル基含有化合物、それを含有する硬化性樹脂組成物、硬化物、及びその硬化物からなる層を含有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂より得られる硬化物は、耐熱性や機械的強度、電気特性、接着性等に優れ、電気・電子、塗料、接着剤などの様々な分野において必要不可欠な材料である。
【0003】
一方で、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いた硬化物には、長期信頼性の低さが挙げられ、例えば、エポキシ樹脂の硬化物が酸化劣化すると、クラックが発生する場合がある。
【0004】
また、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を一旦硬化させて得られる硬化物は、溶剤に溶解することができず(不溶)、また高温でも溶解しない(不融)ことから、リサイクル性やリユース性に乏しく、使用後の硬化物が廃棄物となるため、廃棄物の削減や環境への負荷軽減を実現することが課題となっている。
【0005】
そこで、エポキシ樹脂などを用いた硬化物には、長寿命化や廃棄物の削減という課題解決が求められており、これらの解決には、硬化物に易解体性や修復性・再成形性の付与が有効と考えられる。
【0006】
このような背景のもと、あらかじめ熱分解性を有する化合物を反応系接着成分に配合しておくことにより、使用後、一定の加熱をすることで接着強度を低下させ、解体可能とする方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、エポキシ樹脂などを用いた封止材に、クラックや剥離が生じた場合であっても、第1熱硬化性樹脂と、第2熱硬化性樹脂前駆物質を内包するマイクロカプセル粒子を用いることで、自己修復可能な封止材とする手法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
上記以外にも、修復性・再成形性を付与するために、硬化物中への動的共有結合や超分子結合等の可逆結合を利用した研究も盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-256557号公報
【文献】特開2017-041496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1で提供されている技術では、解体後の接着剤は廃棄することになり、被接着剤である基材はリサイクル可能ではあるものの、全体としてのリサイクル性が不足する課題がある。また前記特許文献2での技術では、自己修復性を一定程度有するものであるが、リユースといった観点での解決手段ではなく、不要になった際の廃棄物の問題は残されている。また、前記可逆結合に関与する使用原料においては、その分子運動性を担保させる必要があるため、使用原料として、機械的強度に乏しいゲル状の物質の使用に限られる問題があり、いずれにおいても、改良が求められているのが現状である。したがって、本発明の課題は、硬化性樹脂でありながら、硬化物において、易解体性・修復性・再成形性を容易に実現することが可能な化合物、及びそれを用いてなる硬化性樹脂組成物とその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定構造を有するグリシジルエーテル基含有化合物を用い、硬化性樹脂組成物として用いることによって、前記課題を解決できることを見出し、発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下の態様を包含するものである。
〔1〕グリシジルエーテル基を1つ以上有する構造単位Aと、前記Aと異なる構造単位Bとが、A-B-Aで連結してなるグリシジルエーテル基含有化合物であり、
前記構造単位Aがマレイミド構造を含み、前記構造単位Bがフラン構造を含み、
前記構造単位Aと前記構造単位BとがDiels-Alder反応による可逆結合で結合してなることを特徴とするグリシジルエーテル基含有化合物。
〔2〕前記構造単位Bが、アルキレン鎖又はアルキレンエーテル鎖を有するものである前記〔1〕記載のグリシジルエーテル基含有化合物。
〔3〕前記アルキレン鎖の炭素原子数が4~16である前記〔2〕記載のグリシジルエーテル基含有化合物。
〔4〕前記構造単位B中に、更に構造単位Aと構造単位Bとの連結部位であるDiels-Alder反応による可逆結合と同じ可逆結合をさらに有するものである前記〔1〕~〔3〕の何れかに記載のグリシジルエーテル基含有化合物。
〔5〕下記一般式(1)で表されるグリシジルエーテル基含有化合物。
【0013】
【化1】
〔式(1)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z
1は下記式(2)、Z
2は下記式(3)、Z
3は下記式(4)表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【0014】
【化2】
〔式(2)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。Gはグリシジル基又は2-メチルグリシジル基であり、式中のナフタレン環上の-OGは、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【0015】
【化3】
〔式(3)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
Xは下記式(3-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(3-2)で表される構造単位であり、
【0016】
【化4】
[式(3-1)(3-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(3-1)で表される構造単位Xと前記式(3-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【0017】
【化5】
〔式(4)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、ぞれぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
〔6〕前記〔1〕~〔5〕の何れか1項記載のグリシジルエーテル基含有化合物と、グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物。
〔7〕前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)が、水酸基含有化合物である前記〔6〕記載の硬化性樹脂組成物。
〔8〕前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)が、可逆結合を有する水酸基含有化合物である前記〔6〕又は〔7〕記載の硬化性樹脂組成物。
〔9〕前記可逆結合を有する水酸基含有化合物が、下記一般式で表される水酸基含有化合物である前記〔8〕記載の硬化性樹脂組成物。
【0018】
【0019】
〔式(7)中のArはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を含有する構造であり、式(5-1)(5-2)中のアントラセン由来構造、式(6-1)(6-2)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。式中、m-aは1~10の整数、m-bは1~4の整数、nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z5は下記式(8)、Z2は下記式(9)、Z3は下記式(10)、Z4は下記式(11)、(12)で表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
【化7】
〔式(8)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。式中のナフタレン環上の水酸基は、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【0021】
【0022】
〔式(9)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
Xは下記式(9-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(9-2)で表される構造単位であり、
【0023】
【化9】
[式(9-1)、(9-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2、は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(9-1)で表される構造単位Xと前記式(9-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【0024】
【化10】
〔式(10)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、それぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
【0025】
【0026】
【化12】
〔式(11)、(12)中、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。〕
〔10〕さらに、前記〔1〕~〔5〕の何れか1項記載のグリシジルエーテル基含有化合物以外の、エポキシ当量が100~10,000g/eqのエポキシ樹脂を含む、前記〔6〕~〔9〕の何れかに記載の硬化性樹脂組成物。
〔11〕前記エポキシ樹脂が、下記式(13)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqである前記〔10〕記載の硬化性樹脂組成物。
【0027】
【化13】
〔式(13)中、Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
X’は下記式(13-1)で表される構造単位であり、Y’は下記式(13-2)で表される構造単位であり、
【0028】
【化14】
[式(13-1)、(13-2)中、Arは前記と同じであり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
R
3、R
4、R
7、R
8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
5、R
6、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、
n
1は4~16の整数であり、
n
2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
R
11、R
12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
13、R
14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
15、R
16は水素原子又はメチル基であり、
m3、m4、p1、p2、qは繰り返しの平均値であって、
m3、m4は、それぞれ独立して0~25であり、且つm3+m4≧1であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
qは0.5~5である。
ただし、前記式(13-1)で表される構造単位X’と前記式(13-2)で表される構造単位Y’との結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm3、m4であることを示す。)
〔12〕硬化性樹脂組成物中の硬化性成分の合計質量に対する、可逆結合の濃度が、0.10mmol/g以上である前記〔6〕~〔11〕の何れかに記載の硬化性樹脂組成物。
〔13〕前記〔6〕~〔12〕の何れかに記載の硬化性樹脂組成物が、自己修復性組成物、易解体性組成物又は再成形材料用組成物の何れかである硬化性樹脂組成物。
〔14〕前記〔6〕~〔13〕の何れかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
〔15〕基材と、前記〔14〕に記載の硬化物を含む層と、を有する積層体。
〔16〕前記〔14〕に記載の硬化物を含有する耐熱部材。
〔17〕前記式(1)で表されるグリシジルエーテル基含有化合物を、下記一般式(1)’で表される共役ジエンの中間体と、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物とを用いて、前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)と硬化する過程で、in situで合成する、グリシジルエーテル基含有化合物の製造方法。
【0029】
【化15】
〔式中、n、Z
2、Z
3は、前記と同じである。〕
〔18〕前記式(1)’と、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物と、前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)と、を必須の原料として硬化反応させて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物からなる硬化物に、易解体性、修復性や再成形性を付与することができ、硬化物自体の長寿命化や廃棄物の削減に貢献することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0032】
本発明の一形態としてのグリシジルエーテル基含有化合物は、グリシジルエーテル基を1つ以上有する構造単位Aと、前記Aと異なる構造単位Bとが、A-B-Aで連結してなるグリシジルエーテル基含有化合物であり、前記構造単位Aがマレイミド構造を含み、前記構造単位Bがフラン構造を含み、前記構造単位Aと前記構造単位BとがDiels-Alder反応による可逆結合で結合してなることを特徴とする。なお、本発明におけるグリシジルエーテル基とは、置換基を有さないグリシジルエーテル基のみを示すものではなく、炭素原子上に置換基を有するものも含む。
【0033】
このような構成を有することによって、グリシジルエーテル基含有化合物は、そのグリシジルエーテル基に基づく硬化反応によって架橋構造に取り込まれる。一方で、硬化物となった後においても可逆性を有することにより、特に構造単位Bは、当該架橋構造から離れて存在することが可能であることより、硬化物中でも高い分子運動性を有する。このことから、硬化物が衝撃を受け、クラックが発生したり、粉砕されたりするような場合、前記可逆結合部分で切断され易く、易解体性を発現するとともに、一方で、一方で、前記可逆結合は、室温を含む低温領域においても、可逆的に結合が再成形され、修復性や再成形性といった機能を発揮できる。前記構造単位Bは架橋構造から離れて存在することから特に高い分子運動性を発現し、低温修復性や低温再成形を示す。例えば、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物を用いてなる硬化物を粉砕した場合であっても、室温を含む低温や加温・加熱状態に置くことで、可逆結合に基づき、硬化物の修復が容易であり、又硬化物を粉砕させた後にこれを再成形することも可能である。
【0034】
前記Diels-Alder反応によるフラン型の付加型構造(可逆結合)を化合物中に導入するためには、環上に反応性の官能基を有するフランと、反応性官能基を有するマレイミドとを用いる方法が、製法が簡便である点から好ましい。具体的な可逆結合部分構造は下記化学式で表すことが出来る。マレイミド由来構造中の下記式中のR部分や、フラン由来構造の環上の種々の反応性官能基をもとにして他の構造単位と結合させることにより、化合物中に可逆結合を導入することが出来る。
【0035】
【0036】
Diels-Alder反応は、共役ジエンと親ジエンとが付加反応して6員環を形成する。Diels-Alder反応は平衡反応であるため、所定の温度でRetro-Diels-Alder反応が生じて解離(解架橋)する。得られる硬化物に傷や外力などの機械エネルギーを与えた場合には、Diels-Alder反応ユニットのC-C結合は、通常の共有結合に比べて結合エネルギーが低いことにより、Diels-Alder反応ユニットのC-C結合が優先的に切断されることになる。このことから、硬化物は易解体性を発現する。また、Diels-Alder反応ユニットのC-C結合は、解離温度よりも低い温度領域では、結合方向に平衡が移動するため、再び付加体(Diels-Alder反応ユニット)を形成し、傷の修復や再成形が可能になると考えられる。
【0037】
Diels-Alder反応による可逆結合において、例えば、アントラセン構造及びマレイミド構造からなるDiels-Alder反応ユニットは、解離温度が250℃以上と高く、少なくとも200℃程度では解離しない。一方で、フラン構造およびマレイミド構造とのDiels-Alder反応による可逆結合は、120℃付近でRetro-Diels-Alder反応が生じて解離(解架橋)する。そのため、硬化物が易解体性を発現するために必要な加熱温度が低減可能であり、高温加熱が適さない用途への易解体性に優れる。
【0038】
前述の可逆結合は、目的とするグリシジルエーテル基含有化合物中に少なくとも2か所存在することになるが、より分子運動性の高い構造を得ることが出来る点、硬化物の機械的強度等の物性調整が容易になる点等の観点より、構造単位B中にも前述の可逆結合を複数有することが好ましい。
【0039】
また、前記と同様の理由により、構造単位Bとしての分子量は一定の大きさ以上を有することが好ましく、例えば、その平均分子量(Mw)が28以上であることが好ましい。構造単位B中に可逆結合を有する場合には、可逆結合間の分子量が、28以上であることが好ましい。なお構造単位B中に構造単位A中のグリシジルエーテル基と同様の架橋性の官能基が存在してもよいが、本発明の効果をより容易に発現させる観点からは、架橋性(硬化性)の官能基は有さない方が好ましい。
【0040】
前記構造単位B中には、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物を例えば構造用接着剤として使用する場合等に、硬化物により柔軟性、あるいは、基材への追従性をより発現可能である観点から、アルキレン鎖又はアルキレンエーテル鎖を有することが好ましく、この時アルキレン鎖としては、炭素原子数が2~30であることがより好ましく、特に炭素原子数が4~16であることが最も好ましい。前記アルキレンエーテル鎖としても特に限定されるものではないが、炭素原子数が2~12のアルキレンエーテル鎖であることが好ましく、その繰り返し数の平均値が2~30の範囲であることが好ましい。
【0041】
前記構造単位A中のグリシジルエーテル基としては、他の官能基と容易に反応可能であればいずれであってもよいが、原料の入手容易性や硬化性の観点化からは、炭素原子上に置換基を有さないグリシジルエーテル基であることが好ましい。又、前記構造単位A中のグリシジルエーテル基の数としては特に限定されるものではないが、原料の工業的入手容易性の観点、硬化物としたときの架橋密度の調整が容易である等の観点から、1~3の範囲であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。
【0042】
前記グリシジルエーテル基含有化合物の平均分子量(Mw)としては、特に限定されるものではないが、硬化物としたときの機械的強度、柔軟性、並びに易解体性と修復・再成形性の両立の観点からは、500以上であることが好ましく、50000以下であることが好ましい。また、可逆結合をA-B間以外、例えば構造単位B中に複数有する場合には、可逆結合1つあたりの分子量が、300~10000の範囲であることが、硬化物の易解体性・再成形性等の観点からより好ましい。
【0043】
本発明の一形態としてのグリシジルエーテル基含有化合物は、下記一般式で表される化合物である。
【0044】
【0045】
式(1)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z1は下記式(2)、Z2は下記式(3)、Z3は下記式(4)表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【0046】
【化18】
〔式(2)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。Gはグリシジル基又は2-メチルグリシジル基であり、式中のナフタレン環上の-OGは、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【0047】
【化19】
〔式(3)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
Xは下記式(3-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(3-2)で表される構造単位であり、
【0048】
【化20】
[式(3-1)(3-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(3-1)で表される構造単位Xと前記式(3-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【0049】
【化21】
〔式(4)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、ぞれぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
【0050】
前記一般式(1)は、分子内、末端に、フラン構造とマレイミド構造とが形成する可逆結合を有する。一般式(1)中の末端のマレイミド構造に、前記一般式(2)で表される何れかの構造であるZ1を有するものであり、このグリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基は後述する硬化性樹脂組成物において、硬化反応に寄与する。
【0051】
式中のZ1は、前記一般式(2)で表される、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基を有する構造単位であるが、これらの中でも、原料入手容易性と反応性の観点より、下記構造式のものが好ましい。Gはグリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基である。
【0052】
【0053】
前記一般式(1)において、フラン由来構造を連結する部位がZ2であり、マレイミド由来構造を連結する部位はZ3であり、それぞれ、前記一般式(3)、(4)で表される何れかの構造である。
【0054】
式中のZ2は、前記一般式(3)で表されるものであるが、これらの中でも、原料入手容易性と反応性、得られる化合物の強靭性と柔軟性のバランスの観点より、下記構造式のものが好ましい。
【0055】
【化23】
〔式中Ar、R、m1、m2、n1、n2、k1、p1、p2、X、Yは前記と同じである〕
【0056】
前記一般式(1)中のnは繰り返し数の平均値であって、0~10であり、0~5の範囲であることが好ましい。
【0057】
前記構造式中におけるArは置換基を有していてもよい芳香環であり、特に限定されるものではない。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環が挙げられる。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。Ar上の置換基は、後の硬化性樹脂組成物として用いた際に、硬化反応を起こさないものであることが、本発明の効果がより発現されやすいため好ましい。
【0058】
これらの中でも、Arとしては、下記構造式で表される何れかの構造であることが好ましい。
【0059】
【化24】
〔式中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。〕
【0060】
又、以下のような式で表される構造もArとして挙げられる。
【0061】
【化25】
(式中、芳香環は置換又は無置換であってよく、n
6=1~4であり、*は結合点を表す。)
【0062】
前記Arの構造としては以下のものが特に好ましい。*は結合点を表す。
【0063】
【0064】
前記一般式(3)、(3-1)中の、繰り返し単位n1は、2~16の整数である。n1が4以上であることで、硬化物としたときの変形モードが弾性変形となりやすい。又、n1が16以下であることで、架橋密度の低下を抑制できる。好ましくは4~15であり、さらに好ましくは6~12である。
【0065】
前記一般式(3)、(3-1)中の、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。これらの中でも、水素原子であることが好ましい。
【0066】
前記一般式(3)、(3-2)中の、n2は繰り返し単位の平均値で2~30である。この範囲であると、グリシジルエーテル基含有化合物の粘度と得られる硬化物の架橋密度のバランスが良好となる点から好ましい。好ましくは2~25であり、さらに好ましくは4~20である。
【0067】
前記一般式(3)、(3-2)中の、R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基である。この範囲であると、接着力が向上するうえ、硬化物の変形モードが弾性変形となりやすい。好ましくはR’が炭素原子数2~6の2価の炭化水素基である。
【0068】
前記2価の炭化水素基としては、特に限定されず、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基(アルキレン基及びアリーレン基を有する2価の基)などを挙げることができる。
【0069】
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。アルケニレン基としては、ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、原料入手容易性、得られるグリシジルエーテル基含有化合物の粘度、硬化物としたときの柔軟性のバランスの観点から、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基であることが好ましい。
【0071】
前記一般式(3)、(3-2)中の、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。これらの中でも、水素原子であることが好ましい。
【0072】
前記一般式(3)中のm1、m2はそれぞれ前述の構造単位X、構造単位Yの繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であって、かつm1+m2≧1である。好ましくは、m1、m2はそれぞれ0.5~10の範囲である。
【0073】
又、前記一般式(3)中のk1は繰り返し数の平均であって0.5~5の範囲であり、0.5~2の範囲であることが好ましい。
【0074】
前記一般式(4)中のn3、n5は繰り返し数の平均値であって、それぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。これらの中でも、原料入手容易性、得られる硬化物の機械的物性等の観点より、n3は0.5~10、n5は2~3の範囲であることが好ましく、n4は1~8の整数であることが好ましく、R”は水素原子であることが好ましい。
【0075】
本発明のグリシジルエーテル基含有化合物としては、例えば、以下で表されるものを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0076】
【化27】
〔式中のR’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、nは繰り返し単位の平均数で0~10であり、n1は4~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、k1は0.5~5である。〕
【0077】
本発明の一実施形態であるグリシジルエーテル基含有化合物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、目的の構造によって、段階的に、公知の反応を用いて製造すればよく、又原料としても市販のものを適宜組み合わせることによって得ることが出来る。以下、代表的な合成方法について記載する。
【0078】
前記一般式(1)は、可逆結合として、フラン構造及びマレイミド構造からなるDiels-Alder反応によって形成される付加反応部であるDiels-Alder反応ユニットを分子内に2つ有し、且つ、一般式(1)中、Z1の構造を有するマレイミド化合物を用いることによって得ることが出来る。
【0079】
フラン構造などの共役ジエンと、マレイミド構造などの親ジエンとが付加反応して6員環を形成するいわゆるDiels-Alder反応は平衡反応であり、付加反応が進行する温度よりも、さらに高温では、付加反応部が解離して、元の共役ジエンと親ジエンに戻る逆反応である、retro-Diels-Alder反応が進行することは広く知られている。
【0080】
前記Z1の構造を有するマレイミド化合物の前駆体である水酸基を有するマレイミド化合物としては、下記式に列挙される化合物のいずれかを挙げることができる。これらの中でも、ヒドロキシフェニルマレイミドが、硬化性において好ましく、モノヒドロキシフェニルマレイミドが反応性と硬化物物性、及び修復性や再成形性のバランスのうえで特に好ましい。モノヒドロキシフェニルマレイミドの中では、耐熱性の観点からパラヒドロキシフェニルマレイミドが特に好ましい。化合物中の水酸基は、例えば、実施例中に記載のような公知の方法によってグリシジルエーテル基とすることが出来る。
【0081】
【0082】
なお、上記マレイミド化合物の構造は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を置換基として有しているものを含む。また、上記式に列挙される化合物の構造において、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基及びアリール基は、それらが有する炭素原子にさらに種々の置換基が結合したものも含む。
【0083】
当該Diels-Alder反応は既知の方法を用いればよい。例えば、共役ジエン化合物と親ジエン化合物を等モル、場合によっては一方の成分を過剰に混合し、加熱溶融または溶媒に溶解して、室温~110℃の温度で1~24時間撹拌し、そのまま精製することなく濾別や溶媒留去で得ることもできるし、再結晶、再沈殿及びクロマトグラフィーなどの、通常用いられる単離精製方法によって得ることもできる。
【0084】
可逆結合以外の部位の合成については、既知の方法にて合成可能である。例えば、脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルまたは脂肪族系ジビニルエーテルと、芳香族系ヒドロキシ化合物とを反応させて、末端にヒドロキシ基を有する化合物を得た後、フルフリルグリシジルエーテルと反応させることにより、末端にフラン構造を導入する、更に、前記に従い、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物とDiels-Alder反応を行うことによって、前記一般式(1)で表される化合物を得ることが出来る。
【0085】
または、末端にヒドロキシ基を有する化合物を得た後、これをエポキシ化して、末端をグリシジルエーテル基にする、その後、フルフリルアルコール等と反応させることにより、末端にフラン構造を導入する、更に、前記に従い、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物とDiels-Alder反応を行うことによって、前記一般式(1)で表される化合物を得ることが出来る。
【0086】
または、芳香族系ジヒドロキシ化合物と、ジハロゲン化アルキル化合物またはジハロゲン化アラルキル化合物とを反応させて、末端にハロゲン化アルキル基を有する化合物を得た後、フルフリルアルコール等と反応させることにより、末端にフラン構造を導入する、更に、前記に従い、グリシジルエーテル基を有するマレイミド化合物とDiels-Alder反応を行うことによって、前記一般式(1)で表される化合物を得ることが出来る。
【0087】
前記脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルとしては、特に限定されるものではなく、例えば1,11-ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールジグリシジルエーテル、1,15-ペンタデカンジオールジグリシジルエーテル、1,16-ヘキサデカンジオールジグリシジルエーテル、2-メチル-1,11-ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、3-メチル-1,11-ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、2,6,10-トリメチル-1,11-ウンデカンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられ単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0088】
これらの中でも、得られる硬化物の柔軟性と耐熱性のバランスに優れる点から炭素数12~14のアルキレン鎖の両末端にエーテル基を介してグリシジル基が連結した構造である化合物であることが好ましく、1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールジグリシジルエーテルを用いることが最も好ましい。
【0089】
前記脂肪族系ジビニルエーテルとしては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジビニルエーテル、1,3-ブチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9-ノナンジオールジビニルエーテル、1,10-デカンジオールジビニルエーテル等の直鎖状アルキレン基のジビニルエーテル、及びネオペンチルグリコールジビニルエーテル等の分岐状アルキレン基のジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル等が挙げられ単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0090】
これらの中でも、得られる硬化物の柔軟性と靭性のバランスに優れる点からポリエーテル構造または炭素数9~10の直鎖状アルキレン鎖のジビニルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジビニルエーテル、、1,9-ノナンジオールジビニルエーテル、1,10-デカンジオールジビニルエーテルを用いることが最も好ましい。
【0091】
前記芳香族系ヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のジヒドロキシベンゼン類、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン等のトリヒドロキシベンゼン類、4,4,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン等のトリフェニルメタン型フェノール類、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、及び2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、ジヒドロキシナフタレン類をカップリング反応させた、1,1’-メチレンビスー(2,7-ナフタレンジオール)、1,1’-ビナフタレン-2,2’,7,7’-テトラオール、1,1’-オキシビスー(2,7-ナフタレンジオール)等の4官能フェノール類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等のビスフェノール類、2,2’―ビフェノール、4,4’-ビフェノール、(1,1’-ビフェニル)-3,4-ジオール、3,3’-ジメチルー(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3-メチルー(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3,3’、5,5’-テトラメチルビフェニル-2,2’-ジオール、3,3’、5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール、5-メチル-(1,1’-ビフェニル)-3,4’ジオール、3’-メチル-(1,1’-ビフェニル)-3,4’ジオール、4’-メチル-(1,1’-ビフェニル)-3,4’ジオール等のビフェノール類、フェノールとジシクロペンタジエンとの重付加物、及びフェノールとテルペン系化合物との重付加物等の脂環式構造含有フェノール類、ビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン、及びビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)プロパン等のナフトール類、フェノールとフェニレンジメチルクロライド又はビフェニレンジメチルクロライドとの縮合反応生成物である所謂ザイロック型フェノール樹脂が挙げられ、単独でも、2種以上を併用して用いても良い。更に、上記の各化合物の芳香核に置換基としてメチル基、t-ブチル基、又はハロゲン原子が置換した構造の2官能性フェノール化合物も挙げられる。尚、前記脂環式構造含有フェノール類や、前記ザイロック型フェノール樹脂は、2官能成分のみならず、3官能性以上の成分も同時に存在し得るが、そのまま用いてもよく、又、カラム等の精製工程を経て、2官能成分のみを取り出して用いても良い。
【0092】
これらの中でも、硬化物にした際の柔軟性と強靭性のバランスに優れる点からビスフェノール類が好ましく、特に靱性付与の性能が顕著である点からビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。又、硬化物の耐湿性を重視する場合には、脂環式構造を含有するフェノール類を用いることが好ましい。
【0093】
前記脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応比率は、前者/後者が1/1.01~1/5.0(モル比)の範囲で反応させることが好ましく、得られる硬化物の柔軟性と耐熱性をバランスよく兼備する点から、(a1)/(a2)が1/1.02~1/3.0(モル比)であることが好ましい。
【0094】
前記脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては、種々のものが使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、DMP-30、DMAP、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ベンジルトリブチルホスホニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド等の4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらは2種以上の触媒を併用しても構わない。なかでも反応が速やかに進行すること、および不純物量の低減効果が高い点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリフェニルホスフィン、DMP-30が好ましい。これら触媒の使用量は特に限定されるものではないが、前記芳香族系ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基1モルに対し0.0001~0.01モル用いるのが好ましい。これら触媒の形態も特に限定されず、水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0095】
また、前記脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応は、無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いうる有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホキシド、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどが挙げられる。有機溶剤の使用量としては、仕込んだ原料の総質量に対して通常50~300質量%、好ましくは100~250質量%である。これらの有機溶剤は単独で、あるいは数種類を混合して用いることが出来る。反応を速やかに行うためには無溶媒が好ましく、一方、最終生成物の不純物を低減できる点からはジメチルスルホキシドの使用が好ましい。
【0096】
前記反応を行う場合の反応温度としては、通常50~180℃、反応時間は通常1~10時間である。最終生成物の不純物を低減できる点からは反応温度は100~160℃が好ましい。また、得られる化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6-ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0097】
前記反応の終了後、反応混合物のpH値が3~7、好ましくは5~7になるまで中和あるいは水洗処理を行うこともできる。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば塩基性触媒を用いた場合は塩酸、第一リン酸水素ナトリウム、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、必要時には減圧加熱下で溶剤を留去し生成物の濃縮を行い、化合物を得ることが出来る。
【0098】
前記脂肪族系ジビニルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応比率は、前者/後者が1/1.01~1/5.0(モル比)の範囲で反応させることが好ましく、得られる硬化物の柔軟性と耐熱性をバランスよく兼備する点から、(a1)/(a2)が1/1.02~1/3.0(モル比)であることが好ましい。
【0099】
前記脂肪族系ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応は、触媒を用いなくとも十分反応は進行するが、原料の選択や反応速度を 高める点から適宜使用することができる。ここで使用し得る触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗ホウフェノール錯などのルイス酸等が挙げられる。触媒の使用量は、通常、ジビニルエーテル化合物の質量に対して10ppm~1重量%の範囲である。この際、芳香環に対するビニル基の核付加反応を起こさないように、その種類や使用量を選択することが好ましい。
【0100】
また、前記脂肪族系ジビニルエーテルと前記芳香族系ヒドロキシ化合物との反応は、無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールノルマルブタノールなどのアルコール系有機溶媒等が挙げられる。有機溶剤の使用量としては、仕込んだ原料の総質量に対して通常50~300質量%、好ましくは100~250質量%である。これらの有機溶剤は単独で、あるいは数種類を混合して用いることが出来る。
【0101】
前記反応を行う場合の反応温度としては、通常50~150℃、反応時間は通常0.5~10時間である。この際、ビニルエーテル基の自己重合を防止するため、酸素雰囲気下での反応の方が好ましい。
【0102】
前記反応の終了後、有機溶媒を使用した場合は、減圧加熱下でそれを除去し、触媒を使用した場合は、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去することで、化合物を得ることが出来る。
【0103】
このようにして得られた末端に水酸基を有する化合物に対して、フルフリルグリシジルエーテル等を反応させる。この時、触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等を使用することが出来、また、溶剤としては、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等を使用してもよい。反応温度としては、室温~200℃、反応時間としては、1~24時間である。その後触媒をろ過等にて取り除き、抽出、溶媒除去等によって、目的の化合物を得ることが出来る。この化合物に対してのでDiels-Alder反応は前述のとおりである。
【0104】
前記脂肪族系ヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、2-メチル-1,11-ウンデカンジオール、3-メチル-1,11-ウンデカンジオール、2,6,10-トリメチル-1,11-ウンデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコ―ルジグリシジルエーテル等が挙げられ単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0105】
これらの中でも、得られる硬化物の柔軟性と耐熱性のバランスに優れる点からポリエーテル構造または炭素数12~14の直鎖状アルキレン鎖のジヒドロキシ化合物を用いることが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールを用いることが最も好ましい。
【0106】
前記ジハロゲン化アルキル化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,4-ジクロロブタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン、1,7-ジクロロヘプタン、1,8-ジクロロオクタン、1,9-ジクロロノナン、1,10-ジクロロデカン、1,11-ジクロロウンデカン、1,12-ジクロロドデカン、、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモヘキサン、1,7-ジブロモヘプタン、1,8-ジブロモオクタン、1,9-ジブロモノナン、1,10-ジブロモデカン、1,11-ジブロモウンデカン、1,12-ジブロモドデカン、等が挙げられる、単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0107】
前記ジハロゲン化アラルキル化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジクロロキシレン、ジクロロメチルビフェニル、ジブロモキシレン、ジブロモメチルビフェニル等が挙げられ、単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0108】
前記芳香族系ジヒドロキシ化合物と、ジハロゲン化アルキル化合物またはジハロゲン化アラルキル化合物との反応比率は、前者/後者が1/1.01~1/5.0(モル比)の範囲で反応させることが好ましく、得られる硬化物の柔軟性と耐熱性をバランスよく兼備する点から、(a1)/(a2)が1/1.02~1/3.0(モル比)であることが好ましい。
【0109】
前記芳香族系ジヒドロキシ化合物と、ジハロゲン化アルキル化合物またはジハロゲン化アラルキル化合物との反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては、種々のものが使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。これらは2種以上の触媒を併用しても構わない。なかでも反応が速やかに進行すること、および不純物量の低減効果が高い点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムが好ましい。これら触媒の使用量は特に限定されるものではないが、前記芳香族系ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基1モルに対し0.0001~10モル用いるのが好ましい。これら触媒の形態も特に限定されず、水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0110】
また、前記芳香族系ジヒドロキシ化合物と、ジハロゲン化アルキル化合物またはジハロゲン化アラルキル化合物との反応は、無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いうる有機溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。有機溶剤の使用量としては、仕込んだ原料の総質量に対して通常50~300質量%、好ましくは100~1000質量%である。これらの有機溶剤は単独で、あるいは数種類を混合して用いることが出来る。
【0111】
前記反応を行う場合の反応温度としては、通常室温~150℃、反応時間は通常1~24時間である。最終生成物の不純物を低減できる点からは反応温度は室温~100℃が好ましい。
【0112】
このようにして得られた末端にハロゲン化アルキル基を有する化合物に対して、フルフリルアルコール等を反応させる。この時、触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等を使用することが出来、また、溶剤としては、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等を使用してもよい。反応温度としては、室温~200℃、反応時間としては、1~24時間である。その後触媒をろ過等にて取り除き、抽出、溶媒除去等によって、目的の化合物を得ることが出来る。この化合物に対してのDiels-Alder反応は前述のとおりである。
【0113】
Diels-Alder反応を行う前の共役ジエンの中間体は、以下の一般式(1)’で表すことが出来る。
【0114】
【化29】
〔式中、n、Z
2、Z
3は、前記と同じである。〕
【0115】
本発明のグリシジルエーテル基含有化合物は、グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)を併用することで、硬化性樹脂組成物とすることができる。硬化性樹脂組成物は、接着剤や塗料、フォトレジスト、プリント配線基板、半導体封止材料等の各種の電気・電子部材用途に好適に用いることが出来る。
【0116】
前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)としては、例えば、アミン化合物、酸無水物、アミド化合物、フェノ-ル性水酸基含有化合物、カルボン酸系化合物、チオール化合物などの各種の公知のエポキシ樹脂用の硬化剤が挙げられる。前記硬化剤としては、目的とする硬化物の物性により適宜選択することが出来るが、特に機械的強度や基材との密着性等の観点からは水酸基含有化合物を用いることが好ましい。
【0117】
前記アミン化合物としては、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、α-メチルベンジルメチルアミン等の脂肪族アミン化合物;
【0118】
ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0119】
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピリジン、ピコリン等の芳香族アミン化合物;
【0120】
エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素-ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体等の変性アミン化合物等が挙げられる。
【0121】
前記酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸ポリプロピレングリコール、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0122】
前記フェノ-ル性水酸基含有化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等のビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0123】
前記アミド系化合物としては、例えばジシアンジアミドやポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンは、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と、脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものが挙げられる。
【0124】
前記カルボン酸化合物としては、カルボン酸末端ポリエステル、ポリアクリル酸、マレイン酸変性ポリプロピレングリコール等のカルボン酸ポリマ等が挙げられる。
【0125】
前記チオール化合物としては、2分子中に2個以上のチオール基を含有するものであることが好ましい。例えば、3,3’-ジチオジプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオールなどが挙げられる。
【0126】
これらの硬化剤を用いる場合、硬化剤は1種類のみで用いてもよく、2種以上を混合してもよい。尚、アンダーフィル材等の用途や一般塗料用途においては、前記アミン系化合物、カルボン酸系化合物、及又は酸無水物系化合物を用いることが好ましい。又、接着剤やフレキシブル配線基板用途においてはアミン系化合物、特にジシアンジアミドが作業性、硬化性、長期安定性の点から好ましい。又、半導体封止材料用途においては硬化物の耐熱性の点から固形タイプのフェノール系化合物が好ましい。また、バッテリー用途においては、脂肪族アミンやチオール化合物が低温硬化の点から好ましい。
【0127】
また、本発明の効果をより一層発現可能である観点からは、前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)が、可逆結合を有する水酸基含有化合物であることが好ましい。
【0128】
前記可逆結合を有する水酸基含有化合物としては、水酸基を1つ以上有する構造単位A’と前記A’とは異なる構造単位B’とが、A’-B’-A’で連結してなり、前記構造単位A’と前記構造単位B’とが、可逆結合で結合してなる水酸基含有化合物が挙げられる。
【0129】
前記可逆結合としては、本発明における、グリシジルエーテル基含有化合物中の可逆結合と同様のものを挙げることが出来る。
【0130】
前記可逆結合を有する水酸基含有化合物としては、例えば、以下の式で表されるものを挙げることが出来る。
【0131】
前記可逆結合を有する水酸基含有化合物としては、例えば、以下の式で表されるものを挙げることが出来る。これらの中でも、可逆結合の解離温度の観点から、下記式(6-1)、(6-2)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0132】
【0133】
式(7)中のArはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を含有する構造であり、式(5-1)(5-2)中のアントラセン由来構造、式(6-1)(6-2)中のフラン由来構造には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
式中、m-aは1~10の整数、m-bは1~4の整数、nは繰り返し数の平均値で0~10である。Z5は下記式(8)、Z2は下記式(9)、Z3は下記式(10)、Z4は下記式(11)、(12)で表される構造の何れかであり、1分子中に複数あるそれぞれは同一でも異なっていてもよい。
【0134】
【化31】
〔式(8)中の芳香環は置換又は無置換であってよく、*は結合点を表す。式中のナフタレン環上の水酸基は、いずれの箇所に結合されていてもよいことを示す。〕
【0135】
【0136】
式(9)中、
Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
Rは水素原子又はメチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
n1は2~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、
k1は繰り返し数の平均であって0.5~10の範囲であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、Xは下記式(9-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(9-2)で表される構造単位であり、
【0137】
【化33】
[式(9-1)、(9-2)中、Ar、R、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである。]
m1、m2、は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1である。
ただし、前記式(9-1)で表される構造単位Xと前記式(9-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2である。〕
【0138】
【化34】
〔式(10)中、n3、n5は繰り返し数の平均値であって、ぞれぞれ0.5~10であり、n4は1~16の整数であり、R
”はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基である。〕
【0139】
【0140】
【化36】
〔式(11)、(12)中、R
1、R
2、R’、n1、n2は前記と同じである〕
【0141】
前記の可逆結合を有する水酸基含有化合物としては、例えば、以下の構造式で表されるものを具体的に示すことが出来る。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【化42】
〔式中のR’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、nは繰り返し単位の平均数で0~10であり、n1は4~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30であり、k1は0.5~5である。〕
【0148】
これらの水酸基含有化合物中、フラン-マレイミド型の可逆結合を有する化合物は、前述の本発明のグリシジルエーテル基含有化合物の中間体(前駆体)に相当する。アントラセン-マレイミド型の可逆結合を有する化合物は、フラン化合物のかわりにアントラセン化合物を用いることで得ることが出来る。
【0149】
前記一般式(7)で表される可逆結合としてジスルフィド結合を有する化合物の製法としても特に限定されるものではない。
【0150】
前記ジスルフィド結合を有する化合物の原料として使用できる化合物としては以下のものを列記することが出来る。
【0151】
【0152】
【0153】
当該ジスルフィド結合を有する化合物は既知の方法を用いればよい。例えば、チオール基を有する化合物を酸化的に結合させる。酸化剤としては、ヨウ素や過酸化水素等が一般的に用いられる。加熱溶融または溶媒に溶解して、室温~200℃の温度で1~24時間撹拌し、そのまま精製することなく濾別や溶媒留去で得ることもできるし、再結晶、再沈殿及びクロマトグラフィーなどの、通常用いられる単離精製方法によって得ることもできる。
【0154】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物以外のその他のエポキシ樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0155】
前記その他のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、単独でも、2種以上を併用してもよく、目的とする用途や硬化物の物性等に応じて種々選択して用いることが好ましい。
【0156】
これらの中でも、エポキシ当量が100~10,000g/eqのエポキシ樹脂を併用することが、硬化性と得られる硬化物の架橋密度のバランスに優れる観点から好ましく、特に、下記式(13)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqであるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0157】
【化45】
〔式(13)中、Arはそれぞれ独立して、無置換又は置換基を有する芳香環を有する構造であり、
X’は下記式(13-1)で表される構造単位であり、Y’は下記式(13-2)で表される構造単位であり、
【0158】
【化46】
[式(13-1)、(13-2)中、Arは前記と同じであり、
R
1、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
R
3、R
4、R
7、R
8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
5、R
6、R
9、R
10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、
n
1は4~16の整数であり、
n
2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
R
11、R
12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
13、R
14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基又は2-メチルグリシジルエーテル基であり、
R
15、R
16は水素原子又はメチル基であり、
m3、m4、p1、p2、qは繰り返しの平均値であって、
m3、m4は、それぞれ独立して0~25であり、且つm3+m4≧1であり、
p1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
qは0.5~5である。
ただし、前記式(13-1)で表される構造単位X’と前記式(13-2)で表される構造単位Y’との結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm3、m4であることを示す。)
【0159】
前記一般式(13)で表されるエポキシ樹脂は、これを単独で組み合わせて硬化性樹脂組成物としてもよいが、より一層、硬化物への柔軟性を付与させて易解体性を容易に発現させられる観点より、更にエポキシ当量が100~300g/eqのエポキシ樹脂を併用することも好ましいものである。
【0160】
前記の併用できるエポキシ樹脂としては、そのエポキシ当量が100~300g/eqの範囲であればよく、その構造としては限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、単独でも、2種以上を併用してもよく、目的とする用途や硬化物の物性等に応じて種々選択して用いることが好ましい。
【0161】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂のうちエポキシ当量が100~300g/eqであるエポキシ樹脂を用いることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂のうちエポキシ当量が100~300g/eqであるエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。
【0162】
前記一般式(13)で表されるエポキシ樹脂と前記エポキシ当量が100~300g/eqであるエポキシ樹脂との使用割合としては、特に限定はないが、硬化物中で相分離しやすい観点から、前者と後者との質量比率が97:3~3:97であり、好ましくは10:90~90:10、特に好ましくは80:20~20:80である。硬化物中で相分離することで、海島構造となり、硬化物の接着性と応力緩和能が両立され、特に広い温度領域で高い接着力を発揮し、且つ、樹脂組成物の加熱硬化前後における成形収縮率を低減する効果を有する。
【0163】
本発明の硬化性樹脂組成物中における可逆結合の濃度は、硬化性樹脂組成物における硬化性成分の合計質量に対して0.10mmol/g以上が好ましい。このような構成によれば、硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の易解体性・修復性及び再成形性がいずれも更に良好となる。前述の可逆結合の濃度は、0.10~3.00mmol/gであるのがより好ましく、0.15~2.00mmol/gであるのが更により好ましい。又、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物中に、複数の可逆結合を有する場合や、硬化剤として、前述の可逆結合を有する水酸基含有化合物を単独で、あるいは他の硬化剤と併用して用いる場合には、当該可逆結合の合計としての濃度が、硬化性樹脂組成物中における硬化性成分の合計質量に対して、0.10mmol/g以上であるのが好ましく、0.10~3.00mmol/gであるのがより好ましく、0.15~2.00mmol/gであるのが更により好ましい。なお、可逆結合の濃度は、目的とする硬化物の動的粘弾性測定器(DMA)のtanδピークトップで定義されるガラス転移温度等により適宜選定することができる。例えば、ガラス転移温度を目安とする場合、硬化物のガラス転移温度が室温付近のものであれば、好ましい範囲の低濃度側でも、十分な修復性及び再成形性機能が発現されやすくなる。一方、目的とする硬化物のガラス転移温度が目安として100℃を超えるものであれば、好ましい範囲の高濃度側で機能が発現されやすくなる。ただし、DMAより測定されたガラス転移温度を超える温度領域では、一般的に分子運動性が高く、グリシジルエーテル基含有化合物の濃度が低くとも十分な修復性及び再成形性機能が発現されやすくなることから、例えば、修復のためのエージング温度や、再成形のための加熱温度を適時調整することでも、修復性及び再成形性機能の発現効果は調整可能である。このように、硬化物のガラス転移温度と可逆結合の濃度の関係は、これらに限定されるものではない。
【0164】
本発明の硬化性樹脂組成物中の、グリシジルエーテル基の合計と、このグリシジルエーテル基と反応可能な活性基の合計との比率としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、樹脂組成物中のグリシジルエーテル基の合計1当量に対して、グリシジルエーテル基と反応可能な活性基が0.4~1.5当量になる量が好ましい。
【0165】
又、硬化性樹脂組成物中には、硬化促進剤を含んでいてもよい。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、ウレア化合物、リン化合物、第3級アミン、イミダゾール、イミダゾリン、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。接着剤用途として使用する場合には、作業性、低温硬化性に優れる点から、ウレア化合物、特に3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)が好ましい。半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセンが好ましい。
【0166】
前記リン化合物としては、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン等が挙げられる。
【0167】
前記イミダゾールとしては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる
【0168】
前記イミダゾリン化合物は、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0169】
前記ウレア化合物としては、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0170】
又、本発明の硬化性樹脂組成物は、その他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲で併用しても良い。
【0171】
その他の熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン構造を有する樹脂、活性エステル樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。前記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、硬化性樹脂組成物100質量部中1~50質量部の範囲であることが好ましい。
【0172】
前記シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0173】
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0174】
ベンゾオキサジン構造を有する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F-a型ベンゾオキサジン樹脂)やジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P-d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0175】
前記活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。前記活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂等が挙げられる。
【0176】
活性エステル樹脂として、具体的にはジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。
【0177】
更に、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び各種のビニル重合体を併用してもよい。
【0178】
前記各種のノボラック樹脂は、より具体的には、フェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とを酸触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0179】
前記各種のビニル重合体は、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル化合物の単独重合体或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0180】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0181】
これらその他の樹脂を用いる場合、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物とその他の樹脂との配合割合は、用途に応じて任意に設定することが出来るが、本発明が奏する修復性や再成形性を阻害しない観点から、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物100質量部に対し、その他の樹脂が0.5~100質量部となる割合であることが好ましい。
【0182】
又、本発明の硬化性樹脂組成物に高い難燃性が求められる用途に用いる場合には、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0183】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、又、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0184】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0185】
又、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0186】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0187】
これらリン系難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合には0.1質量部~2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を用いる場合には同様に0.1質量部~10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5質量部~6.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0188】
又前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0189】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0190】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(1)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(2)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類及びホルムアルデヒドとの共縮合物、(3)前記(2)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(4)前記(2)、(3)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0191】
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0192】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05~10質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1質量部~5質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0193】
又前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0194】
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05~20質量部の範囲で配合することが好ましい。又前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0195】
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0196】
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0197】
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0198】
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0199】
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0200】
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0201】
前記低融点ガラスは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2-MgO-H2O、PbO-B2O3系、ZnO-P2O5-MgO系、P2O5-B2O3-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V2O5-TeO2系、Al2O3-H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0202】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05質量部~20質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5質量部~15質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0203】
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0204】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.005質量部~10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0205】
本発明の硬化性樹脂組成物には、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
【0206】
無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ダイヤモンド等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、ルテニウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。又、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0207】
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。
【0208】
又、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0209】
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD等が挙げられる。
【0210】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状のものを用いることができる。又一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。
【0211】
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。又、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP-25、テイカ(株)製ATM-100等を挙げることができる。又、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD-701等が挙げられる。
【0212】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に繊維質基質を含有してもよい。前記繊維質基質は、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
【0213】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0214】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0215】
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、一種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0216】
前記繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。又、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。又、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
【0217】
本発明の硬化性樹脂組成物は、樹脂組成物の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
【0218】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0219】
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0220】
本発明の樹脂組成物は、その他の配合物を有していてもかまわない。例えば、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤等が挙げられる。
【0221】
本発明の樹脂組成物を硬化させることで、硬化物を得ることができる。硬化させる場合には、常温又は加熱による硬化をおこなえばよい。熱硬化を行う場合、1回の加熱で硬化させてもよいし、多段階の加熱工程を経て硬化させてもかまわない。
【0222】
又、本発明の硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線にて硬化させることも可能である。その際には、重合開始剤として光カチオン重合開始剤を用いればよい。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができる。
【0223】
光カチオン重合開始剤としては、アリール-スルフォニウム塩、アリール-ヨードニウム塩等が挙げられ、具体的には、アリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、アリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロ)ホウ酸塩、トリ(アルキルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等を用いることができる。光カチオン重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0224】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述の各成分を均一に混合すればよく、その方法として特に限定されるものではない。例えば、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0225】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述の本発明のグリシジルエーテル基含有化合物及び前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)、更に必要に応じて前述の併用可能な硬化剤、フィラー、繊維質基質、分散媒、前述の各種化合物以外の樹脂を、前述の有機溶剤等の分散媒に溶解する。溶解後は溶媒を留去し、真空オーブン等により減圧乾燥することで硬化性樹脂組成物を得ることができる。又、本発明の硬化性樹脂組成物は、前述の構成材料を均一混合した状態のものであってもよい。このとき、混合器等で均一に混合することが好ましい。各構成材料の配合割合は、所望する硬化物の機械的強度、耐熱性、修復性及び再成形性等の特性に応じて適宜調製することができる。又、硬化性樹脂組成物の作製において、具体的な構成材料の混合順としては特に限定されるものではない。
【0226】
本発明の硬化物は、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物によって、前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)を硬化してなる。硬化方法は、用いる前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)の性質によって公知の方法を適宜選択して採用できる。
【0227】
本発明の硬化物は、上述のように本発明のグリシジルエーテル基含有化合物によって硬化されているため、適度な架橋密度を発現させることにより、良好な機械的強度を維持することができる。又、本発明の硬化物に傷や外力などの機械エネルギーを与えた場合には、可逆結合が切断されるが、結合方向に平衡が移動するため、再び付加体を形成し、傷の修復や再成形が可能になると考えられる。
【0228】
得られた硬化物の構造は、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)等を用いた赤外線吸収(IR)スペクトル法、元素分析法、X線散乱法等により確認することができる。
【0229】
本発明の一実施形態である硬化物は、前述のように、本発明のグリシジルエーテル基含有化合物を硬化性樹脂組成物の一成分として用いることによって得ることが出来るが、グリシジルエーテル基含有化合物の中間体である、前述の共役ジエンの中間体を用い、これにDiels-Alder反応による付加反応可能な化合物を併用して、硬化の過程で、当該グリシジルエーテル基含有化合物を形成しながら(in situで合成しながら)硬化物とすることも出来る。
【0230】
例えば、前記式(1)’で表される表される化合物と、グリシジルエーテル基を有するマレイミドと、前記グリシジルエーテル基含有化合物と反応性を有する化合物(I)と、を必須の原料として硬化反応を行うと、硬化反応の過程において、前記式(1)で表されるグリシジルエーテル基含有化合物を得ることが出来、更に硬化反応の進行の伴って、硬化物を得ることが出来る。この時使用できるグリシジルエーテル基を有するマレイミドは、前記と同じである。
【0231】
本発明の硬化性樹脂組成物及び当該硬化性樹脂組成物によって作製される硬化物は、耐熱性及び修復性の両方に優れ、且つ再成形性を有しており、以下の用途に有用である。
【0232】
本発明の硬化性樹脂硬化物は基材と積層することで積層体とすることができる。積層体の基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、積層体の形状であってもよく、平板、シート状、あるいは三次元構造を有していてもよく、立体状であってもよい。全面に又は一部に曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってもよい。又、基材の硬度、厚み等にも制限はない。又、第一の基材、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層、第二の基材の順に積層されてなる多層積層体としてもよい。本実施形態の硬化性樹脂組成物は接着性に優れるため、第一の基材と第二の基材とを接着させる接着剤として好適に使用可能である。又、本発明の硬化性樹脂硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層してもよい。
【0233】
又、本発明の硬化性樹脂硬化物は、応力を緩和することができることから、特に異種素材の接着に好適に利用可能である。例えば、基材が金属及び/又は金属酸化物であって、第2基材がプラスチック層のような異種素材での積層体であっても、本発明の硬化物の応力緩和能力から接着力が維持される。
【0234】
本発明の硬化物と基材とを積層してなる積層体において、硬化物を含む層は、基材に対し直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させてもかまわない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。成形された組成物を積層する場合、未硬化又は半硬化された組成物層を積層してから硬化させてもよいし、組成物を完全硬化した硬化物を含む層を基材に対し積層してもよい。又、本発明の硬化物に対して、基材となり得る前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、基材となり得る前駆体又は本発明の組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。基材となり得る前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0235】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、金属及び/又は金属酸化物に対する接着性が特に高いため、金属用のプライマーとして特に良好に使用可能である。金属としては銅、アルミ、金、銀、鉄、プラチナ、クロム、ニッケル、錫、チタン、亜鉛、各種合金、及びこれらを複合した材料が挙げられ、金属酸化物としてはこれら金属の単独酸化物及び/又は複合酸化物が挙げられる。特に鉄、銅、アルミに対しての接着力に優れるため、鉄、銅、アルミ用の接着剤として良好に使用可能である。
【0236】
本発明の硬化性樹脂組成物は、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。当該接着剤は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。又、当該接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、蓄電池のセルやモジュールやケース用などの接着剤としても使用でき、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤として使用することができる。
【0237】
本発明の硬化性樹脂組成物が繊維質基質を有し、当該繊維質基質が強化繊維の場合、繊維質基質を含有する硬化性樹脂組成物は、繊維強化樹脂として用いることができる。組成物に対し繊維質基質を含有させる方法は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、繊維質基質と組成物とを、混練、塗布、含浸、注入、圧着等の方法で複合化する方法が挙げられ、繊維の形態及び繊維強化樹脂の用途によって適時選択することができる。
【0238】
繊維強化樹脂を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。又フィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。又、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて硬化物を製造することができる。特に、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂の主成分とする場合には、成形材料をプリプレグ化してプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられ、この他にもRTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vacuum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形等が挙げられる。
【0239】
本発明の硬化性樹脂組成物は、それを用いた硬化物が、耐熱性及び修復性のいずれも良好であり、且つ再成形性を有しているので、大型ケースやモーターハウジング、ケース内部の注型材、ギアやプーリー等の成形材料に使用することができる。これらは樹脂単独の硬化物でもよく、ガラスチップなどの繊維強化された硬化物でもよい。
【0240】
繊維強化樹脂は、未硬化あるいは半硬化のプリプレグと呼ばれる状態を形成することができる。プリプレグの状態で製品を流通させた後、最終硬化をおこなって硬化物を形成してもよい。積層体を形成する場合は、プリプレグを形成した後、その他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成できるため、好ましい。このとき用いる組成物と繊維質基質の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0241】
本発明の硬化物は、耐熱性及び修復性のいずれも良好であり、且つ再成形性を有しており、耐熱材料及び電子材料として使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。又、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0242】
中でも、硬化物における柔軟性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。本発明の接着剤は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。又、本発明の接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、蓄電池のセルやモジュールやケース用などの接着剤としても使用でき、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤などが挙げられる。
【0243】
以下、代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0244】
1.半導体封止材料
本発明の樹脂組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記樹脂組成物、及び硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などの高充填化、又は溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0245】
2.半導体装置
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で2~10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
【0246】
3.プリント回路基板
本発明の組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0247】
4.フレキシルブル基板
本発明の架橋性樹脂組成物からフレキシルブル基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、樹脂成分や有機溶剤等を配合した架橋性樹脂組成物を、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する工程であり、第2の工程は、加熱機を用いて60~170℃で1~15分間の間、架橋性樹脂組成物が塗布された電気絶縁性フィルムを加熱し、電気絶縁性フィルムから溶剤を揮発させて、架橋性樹脂組成物をB-ステージ化する工程であり、第3の工程は、架橋性樹脂組成物がB-ステージ化された電気絶縁性フィルムに、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着(圧着圧力は2~200N/cm、圧着温度は40~200℃が好ましい)する工程である。なお、上記3つの工程を経ることで、十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全接着性能が必要な場合は、さらに100~200℃で1~24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の樹脂組成物層の厚みは、5~100μmの範囲が好ましい。
【0248】
5.ビルドアップ基板
本発明の組成物からビルドアップ基板を得る方法は、例えば以下の工程が挙げられる。まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程(工程1)。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程(工程2)。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程(工程3)。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。又、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0249】
6.ビルドアップフィルム
本発明の組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、基材である支持フィルム(Y)の表面に、上記組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0250】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、又、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0251】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における上記組成物の層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0252】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。又保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0253】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する硬化性樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0254】
上記のようにして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。又必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm2(9.8×104~107.9×104N/m2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0255】
7.導電ペースト
本発明の組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例】
【0256】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。本発明はこれにより限定されるものではない。
【0257】
1Hおよび13C-NMR、FD-MSスペクトル、GPCは以下の条件にて測定した。
【0258】
1H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒 :CDCl3,DMSO-d6
試料濃度:30質量%
【0259】
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒 :DMSO-d6
試料濃度:30質量%
【0260】
FD-MS:日本電子株式会社製「JMS-T100GC AccuTOF」
測定範囲 :m/z=50.00~2000.00
変化率 :25.6mA/min
最終電流値 :40mA
カソード電圧:-10kV
【0261】
GPC:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+「TSK-GEL G3000HXL」+「TSK-GEL G4000HXL」
検出器 :RI(示差屈折率計)
測定条件:40℃
移動相 :テトラヒドロフラン
流速 :1ml/min
標準 :東ソー株式会社製「PStQuick A」「PStQuick B」「PStQuick E」「PStQuick F」
【0262】
合成したエポキシ樹脂のエポキシ当量については、JIS K7236に則って測定を行ない、エポキシ当量(g/eq)を算出した。
【0263】
繰り返し単位数の算出方法としては、GPC分子量測定や、FD-MS、NMR等の適切な各種の機器分析結果からの算出が例示できる。
【0264】
合成例1
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(四日市合成株式会社製:エポキシ当量210g/eq)420g(2.0当量)とビスフェノールA(水酸基当量114g/eq)456g(4.0当量)を仕込み、140℃まで30分間要して昇温した後、4%水酸化ナトリウム水溶液4.0gを仕込んだ。その後、30分間要して150℃まで昇温し、さらに150℃で6時間反応させた。その後、中和量のリン酸ソーダを添加し、ヒドロキシ化合物(Ph-1)を858g得た。このヒドロキシ化合物(Ph-1)は、マススペクトルで下記構造式(Ph-1)中のm=1の理論構造に相当するM+=771のピークが得られたことから、目的物であるヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph-1)のGPCより算出した水酸基当量は388g/eqであり、繰り返し単位mの平均値は0.8であった。
【0265】
【0266】
合成例2
合成例1における1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(エポキシ当量210g/eq)420g(2.0当量)を、ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製「デナコールEX-991L」:エポキシ当量442g/eq)884g(2.0当量)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、ヒドロキシ化合物(Ph-2)を1313g得た。このヒドロキシ化合物(Ph-2)は、マススペクトルで下記構造式(Ph-2)中のm=1、n2=11の理論構造に相当するM+=1380のピークが得られたことから、目的物であるヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph-2)のGPCより算出した水酸基当量は600g/eqであり、繰り返し単位mの平均値は0.8であった。
【0267】
【0268】
合成例3
合成例1における1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(エポキシ当量210g/eq)420g(2.0当量)を、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製「デナコールEX-931」:エポキシ当量481g/eq)962g(2.0当量)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、ヒドロキシ化合物(Ph-3)を1390g得た。このヒドロキシ化合物(Ph-3)は、マススペクトルで下記構造式(Ph-3)中のm=1、n2=11の理論構造に相当するM+=1226のピークが得られたことから、目的物であるヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph-3)のGPCより算出した水酸基当量は593g/eqであり、繰り返し単位mの平均値は0.8であった。
【0269】
【0270】
合成例4
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例1で得られたヒドロキシ化合物(Ph-1)388g(水酸基当量388g/eq)、エピクロルヒドリン1110g(12.0モル)、n-ブタノール300gを加え、溶解させた。その後、65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122.4g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。
次に、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn-ブタノール110gとを加え、溶解した。
更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20.0gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。
次に、共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ化合物(Ep-1)を399g得た。得られたエポキシ化合物(Ep-1)のエポキシ当量は488g/eqであった。当該エポキシ樹脂は、マススペクトルで下記構造式(Ep-1)中のm=1、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=883のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-1)を含有することが確認された。得られたエポキシ化合物(Ep-1)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を20.5%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0271】
【0272】
合成例5
合成例4におけるヒドロキシ化合物(Ph-1)388g(水酸基当量388g/eq)を、ヒドロキシ化合物(Ph-2)600g(水酸基当量600g/eq)に変えた以外は合成例4と同様に反応し、エポキシ化合物(Ep-2)を591g得た。得られたエポキシ化合物(Ep-2)のエポキシ当量は722g/eqであった。当該エポキシ樹脂は、マススペクトルで下記構造式(Ep-2)中のm=1、n2=11、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=1492のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-2)を含有することが確認された。得られたエポキシ化合物(Ep-2)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を17.2%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0273】
【0274】
合成例6
合成例4におけるヒドロキシ化合物(Ph-1)388g(水酸基当量388g/eq)を、ヒドロキシ化合物(Ph-3)593g(水酸基当量593g/eq)に変えた以外は合成例4と同様に反応し、エポキシ化合物(Ep-3)を584g得た。得られたエポキシ化合物(Ep-3)のエポキシ当量は714g/eqであった。当該エポキシ化合物は、マススペクトルで下記構造式(Ep-3)中のm=1、n2=11、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=1336のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-3)を含有することが確認された。得られたエポキシ化合物(Ep-3)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を16.8%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0275】
【0276】
合成例7
J.Network Polym.,Jpn.,Vol.29,208;2008の文献に記載の方法に従って、エポキシ化合物(Ep-4)を合成した。得られたエポキシ(化合物Ep-4)のエポキシ当量は450g/eqであった。
【0277】
【0278】
合成例8
Bull.Korean.Chem.Soc.Vol.31 No.8,2272-2278;2010,の文献に記載の方法に従って、以下構造のフェノール性水酸基含有マレイミド化合物、4-グリシジルオキシフェニルマレイミド(Ep-M-1)を合成した。
【0279】
【0280】
合成例9
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例4で得られたエポキシ樹脂(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)、フルフリルアルコール19.6g(0.2モル)を加え、溶解させた。その後、トリエチルアミン0.7g(0.007モル)を加え、30分間要して70℃まで昇温し、さらに70℃で9時間反応させた。その後、150℃まで昇温させ、減圧下にて過剰のフルフリルアルコールを留去し、フラン化合物(F-1)を53g得た。このフラン化合物(F-1)のGPCで測定した分子量は、Mn=1600、Mw=4900であった。このフラン化合物(F-1)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は575g/eqであった。得られたフラン化合物(F-1)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を18.2%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0281】
【0282】
合成例10
温度計、撹拌機、冷却管を取り付けたフラスコに、合成例9で得られたフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29g、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製 BMI-THM)5.3g、トルエン50gを仕込み、窒素置換後、60℃で20時間反応させた。その後、減圧化でトルエンを減圧留去し、フラン化合物(F-2)を34g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2000、Mw=7900であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は2043g/eqであった。得られたフラン化合物(F-2)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を1.9%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。なお、以下2行以上にわたる化学式において、*は、次の行の*の位置と直接結合していることを示すものである。
【0283】
【0284】
実施例1
温度計、撹拌機、冷却管を取り付けたフラスコに、合成例10で得られたフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34g、合成例8で得られた4-グリシジルオキシフェニルマレイミド(Ep-M-1)4.1g、トルエン50gを仕込み、窒素置換後、60℃で12時間反応させた。その後、減圧化でテトロヒドロフランを減圧留去し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-1)を34g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2300、Mw=8200であった。また、1H-NMRより算出したエポキシ当量は2288g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-1)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を1.2%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0285】
【0286】
合成例11
合成例9におけるエポキシ樹脂(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)を、エポキシ樹脂(Ep-2)72.2g(エポキシ当量722g/eq)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、フラン化合物(F-3)を74g得た。このフラン化合物(F-3)のGPCで測定した分子量は、Mn=2400、Mw=8100であった。このフラン化合物(F-3)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は804g/eqであった。得られたフラン化合物(F-3)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を16.5%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0287】
【0288】
合成例12
合成例10におけるフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29gを、フラン化合物(F-3、フラン当量804g/eq)40gに変えた以外は実施例2と同様に反応し、フラン化合物(F-4)を45g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2800、Mw=12100であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は2730g/eqであった。得られたフラン化合物(F-4)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を1.8%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0289】
【0290】
実施例2
実施例1におけるフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34gを、フラン化合物(F-4、フラン当量2730g/eq)45gに変えた以外は実施例3と同様に反応し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-2)を44g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=3100、Mw=13200であった。また、1H-NMRより算出した水酸基当量は2975g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-2)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を1.4%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0291】
【0292】
合成例13
合成例9におけるエポキシ樹脂(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)を、エポキシ樹脂(Ep-3)71.4g(エポキシ当量714g/eq)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、フラン化合物(F-5)を73g得た。このフラン化合物(F-5)のGPCで測定した分子量は、Mn=1900、Mw=5100であった。このフラン化合物(F-5)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は796g/eqであった。得られたフラン化合物(F-5)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を14.7%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は1.1であった。
【0293】
【0294】
合成例14
合成例10におけるフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29gを、フラン化合物(F-5、フラン当量796g/eq)40gに変えた以外は合成例10と同様に反応し、フラン化合物(F-6)を46g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2300、Mw=9000であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は2706g/eqであった。得られたフラン化合物(F-6)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を2.9%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0295】
【0296】
実施例3
実施例1におけるフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34gを、フラン化合物(F-6、フラン当量2706g/eq)45gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-3)を44g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2800、Mw=10500であった。また、1H-NMRより算出した水酸基当量は2951g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-3)はn=0、q=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0、q=0の化合物を1.2%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、繰り返し単位qの平均値は0.8であった。
【0297】
【0298】
合成例15
合成例9におけるエポキシ化合物(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)を、1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(四日市合成株式会社製:エポキシ当量210g/eq)21gに変えた以外は合成例9と同様に反応し、フラン化合物(F-7)を29g得た。当該フラン化合物は、マススペクトルで下記構造式(F-7)の理論構造に相当するM+=510のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-3)を含有することが確認された。このフラン化合物(F-7)のGPCで測定した分子量は、Mn=800、Mw=1300であった。このフラン化合物(F-5)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は302g/eqであった。
【0299】
【0300】
合成例16
合成例10におけるフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29gを、フラン化合物(F-7、フラン当量302g/eq)15gに変えた以外は合成例10と同様に反応し、フラン化合物(F-8)を20g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=1500、Mw=2100であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は1224g/eqであった。得られたフラン化合物(F-8)はn=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0の化合物を1.9%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1、であった。
【0301】
【0302】
実施例4
実施例1におけるフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34gを、フラン化合物(F-8、フラン当量1224g/eq)20gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-4)を22g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=1700、Mw=2500であった。また、1H-NMRより算出した水酸基当量は1469g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-3)はn=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中n=0の化合物を1.2%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1であった。
【0303】
【0304】
合成例17
合成例9におけるエポキシ樹脂(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)を、エポキシ樹脂(Ep-4)45.0g(エポキシ当量450g/eq)に変えた以外は合成例9と同様に反応し、フラン化合物(F-9)を49g得た。このフラン化合物(F-9)のGPCで測定した分子量は、Mn=1100、Mw=1900であった。このフラン化合物(F-9)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は537g/eqであった。得られたフラン化合物(F-9)はm=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中m=0の化合物を20.1%の割合で含有するものであった。
【0305】
【0306】
合成例18
合成例10におけるフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29gを、フラン化合物(F-9、フラン当量537g/eq)27gに変えた以外は合成例10と同様に反応し、フラン化合物(F-10)を32g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2000、Mw=3900であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は1929g/eqであった。得られたフラン化合物(F-10)はm=0、n=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中m=0、n=0の化合物を2.1%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1であった。
【0307】
【0308】
実施例5
実施例1におけるフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34gを、フラン化合物(F-10、フラン当量1929g/eq)32gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-5)を33g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=2300、Mw=4800であった。また、1H-NMRより算出した水酸基当量は2174g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-5)はm=0、n=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中m=0、n=0の化合物を1.7%の割合で含有するものであり、繰り返し単位nの平均値は1.1であった。
【0309】
【0310】
合成例19
合成例9におけるエポキシ樹脂(Ep-1)48.8g(エポキシ当量488g/eq)を、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂「E-850S」(DIC株式会社製)18.8g(エポキシ当量188g/eq)に変えた以外は合成例9と同様に反応し、フラン化合物(F-11)を26g得た。このフラン化合物(F-11)のGPCで測定した分子量は、Mn=800、Mw=1300であった。このフラン化合物(F-11)の1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は286g/eqであった。得られたフラン化合物(F-11)はm=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中p1=0の化合物を66.1%の割合で含有するものであり、繰り返し単位p1の平均値は0.1であった。
【0311】
【0312】
合成例20
合成例10におけるフラン化合物(F-1、フラン当量575g/eq)29gを、フラン化合物(F-11、フラン当量286g/eq)14gに変えた以外は合成例10と同様に反応し、フラン化合物(F-12)を19g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=1500、Mw=2400であった。また、1H-NMRより算出したフラン構造1モル当たりの分子量は1158g/eqであった。得られたフラン化合物(F-12)はp1=0、n=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中p1=0、n=0の化合物を7.0%の割合で含有するものであり、繰り返し単位p1の平均値は0.1、繰り返し単位nの平均値は1.1であった。
【0313】
【0314】
実施例6
実施例1におけるフラン化合物(F-2、フラン当量2043g/eq)34gを、フラン化合物(F-12、フラン当量1158g/eq)19gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、グリシジルエーテル基含有化合物(D-6)を21g得た。GPCで測定した分子量は、Mn=1800、Mw=2700であった。また、1H-NMRより算出した水酸基当量は1403g/eqであった。得られたグリシジルエーテル基含有化合物(D-6)はm=0、n=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中m=0、n=0の化合物を1.7%の割合で含有するものであり、繰り返し単位p1の平均値は0.1、繰り返し単位nの平均値は1.1であった。
【0315】
【0316】
合成例21
合成例1における1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(エポキシ当量210g/eq)420g(2.0当量)を、798g(3.8当量)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、ヒドロキシ化合物(Ph-4)を1207g得た。このヒドロキシ化合物(Ph-4)は、マススペクトルで下記構造式(Ph-4)中のm=1の理論構造に相当するM+=771のピークが得られたことから、目的物であるヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph-4)のGPCより算出した水酸基当量は2000g/eqであり、繰り返し単位mの平均値は6.9であった。
【0317】
【0318】
合成例22
合成例1における1,12-ドデカンジオールのジグリシジルエーテル(エポキシ当量210g/eq)420g(2.0当量)を、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製「デナコールEX-931」:エポキシ当量481g/eq)1603g(3.3当量)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、ヒドロキシ化合物(Ph-5)を2012g得た。このヒドロキシ化合物(Ph-5)は、マススペクトルで下記構造式(Ph-5)中のm=1、n2=11の理論構造に相当するM+=1226のピークが得られたことから、目的物であるヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物(Ph-5)のGPCより算出した水酸基当量は1802g/eqであり、繰り返し単位mの平均値は3.4であった。
【0319】
【0320】
合成例23
合成例4におけるヒドロキシ化合物(Ph-1)388g(水酸基当量388g/eq)を、ヒドロキシ化合物(Ph-4)2000g(水酸基当量2000g/eq)に変えた以外は合成例4と同様に反応し、エポキシ化合物(Ep-5)を2120g得た。得られたエポキシ化合物(Ep-5)のエポキシ当量は2320g/eqであった。当該エポキシ樹脂は、マススペクトルで下記構造式(Ep-5)中のm=1、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=883のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-5)を含有することが確認された。得られたエポキシ化合物(Ep-1)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を0.7%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は6.3であった。
【0321】
【0322】
合成例24
合成例4におけるヒドロキシ化合物(Ph-1)388g(水酸基当量388g/eq)を、ヒドロキシ化合物(Ph-5)1802g(水酸基当量1802g/eq)に変えた以外は合成例4と同様に反応し、エポキシ化合物(Ep-6)を1851g得た。得られたエポキシ化合物(Ep-6)のエポキシ当量は1895g/eqであった。当該エポキシ化合物は、マススペクトルで下記構造式(Ep-6)中のm=1、n2=11、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=1336のピークが得られたことから、目的物であるエポキシ化合物(Ep-6)を含有することが確認された。得られたエポキシ化合物(Ep-6)はq=0の化合物を含んでおり、GPCで確認したところ該混合物中q=0の化合物を2.8%の割合で含有するものであり、繰り返し単位qの平均値は3.1であった。
【0323】
【0324】
組成物及び硬化物の作製
表1~表4に従った配合(表中の数字は質量基準)で、各化合物を用い、混合機(株式会社シンキー製「あわとり練太郎ARV-200」)にて均一混合して、硬化性樹脂組成物を得た。この硬化性樹脂組成物を、シリコンチューブをスペーサーとしてアルミニウム鏡面板(株式会社エンジニアリングテストサービス製「JIS H 4000 A1050P」)にて挟み込み、所定条件で加熱硬化を行い、厚さ0.7mmの硬化物を得た。
【0325】
<引張伸び率>
得られた硬化物を打抜き刃にてダンベル形状(JIS K 7161-2-1BA)に打ち抜き、これを試験片とした。この試験片の引張試験を引張試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-IS」)を用いて、JIS K 7162-2に従って行ない、測定環境23℃における破断点伸び率を評価した(試験速度:2mm/min)。
【0326】
<再成形試験>
作製した硬化物を凍結粉砕した。粉砕した硬化物0.07gを10mm角、厚さ0.5mmの型枠に入れて150℃/4時間/10MPaの条件で真空プレスを行ったのち、60℃/24時間のエージングを行った。得られた硬化物の外観を目視で観察した。判断基準は下記のとおりである。
A:継ぎ目が消失し、硬化物が一体化した。
B:継ぎ目が一部目視で確認できるが、硬化物が一体化した。
C:固まった形状をしており、軽い力を加えるとバラバラになった。
【0327】
<修復試験>
作製した硬化物を剃刀で切断し、生じた破断面を接触させた後、乾燥機内にて130℃/30min+60℃/24時間のエージングを行った。乾燥機から取り出した後、硬化物の断面同士の接合の有無を目視にて確認した。判断基準は下記のとおりである。
A:接合し、硬化物を90°折曲げても接合部が解離しない
B:接合し、硬化物を曲げると接合部が解離する。
C:接合しなかった。
【0328】
<解体性試験>
表1~4に従った配合(表中の数字は質量基準)で、各化合物を用い、混合機(株式会社シンキー製「あわとり練太郎ARV-200」)にて均一混合して、硬化性樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、2枚の冷間圧延鋼板(TP技研株式会社製「SPCC-SD」、1.0mm×25mm×100mm)のうち1枚に塗布し、スペーサーとしてガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製「J-80」)を添加し、もう1枚のSPCC-SDを貼り合わせた(接着面積:25mm×12.5mm)。これを表1~3に従った温度で加熱硬化を行い、試験片を得た。この試験片を、120℃の乾燥機内に吊り下げ、基材の一方に500gの分銅により荷重をかけた。この状態で30min静置させ、基材の接着状態を評価した。判断基準は下記のとおりである。
A:接着部分のずれが生じ、荷重をかけた側の接着基材が落下した。
B:接着部分のずれが生じた。
C:基材の変化が生じなかった。
【0329】
【0330】
【0331】
【0332】
【0333】
なお、表中に示した各配合物は以下の通りである。
E-850S:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エポキシ当量188g/eq)
BMI-TMH:1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、 PMI:フェニルマレイミド(関東化学製)
DICY:ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製“DICY7”)
DCMU:3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)(DIC株式会社製 “B-605-IM”)
DTA:ジエチレントリアミン(関東化学製)
【0334】
比較例3および比較例4は、加熱による硬化が行えなかった。「共役ジエン中間体+ビスマレイミド化合物+マレイミド化合物」からなる可逆結合含有化合物がグリシジルエーテル基を有していないため、併用するエポキシ樹脂及び硬化剤との架橋が形成されなかったためと考えられる。