(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】2つのデバイス間でサンプルを移送するための搬送装置および方法、ならびにサンプル操作のためのシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20240806BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01J37/20 C
G01N1/00 101B
H01J37/20 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020011283
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】トマス クラトフヴィール
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-000939(JP,U)
【文献】特表2001-501077(JP,A)
【文献】特開昭63-262325(JP,A)
【文献】特公昭55-025034(JP,B2)
【文献】米国特許第04805761(US,A)
【文献】特開2009-115677(JP,A)
【文献】特表2005-508085(JP,A)
【文献】国際公開第2008/075616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-37/00
H01L 21/68
B65G 51/04-51/46
B65G 54/00-54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのデバイス間でサンプルを移送するための搬送装置であって、
-サンプルを保持するためのキャリアを備えた搬送管であって、前記搬送管は
円筒形状の内部空間を有し、前記キャリアが、円筒形状であって前記搬送管内でその長さに沿って移動可能である、搬送管と、
-前記搬送管に
隣接して延在するアクチュエータ管であって、前記アクチュエータ管が、
円筒形状の内部空間を有するとともに、前記アクチュエータ管内でその長さに沿って移動可能な円筒形状の磁気アクチュエータ要素を備え、前記アクチュエータ管は、前記搬送管から分離された別個の管である、アクチュエータ管と、を含み、
-前記磁気アクチュエータ要素が第1の磁石部分を含み、前記キャリアが第2の磁石部分を備え、前記第1の磁石部分および前記第2の磁石部分は、前記搬送管を通る前記キャリアの移動が前記アクチュエータ管を通る前記磁気アクチュエータ要素の移動とリンクされるように設けられる、搬送装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ管が空気圧アクチュエータ管である、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送管が減圧搬送管、
又は真空搬送管である、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記キャリアが、搬送される前記サンプルを受け入れるための受け入れスペースを備える
円筒形のキャリア本体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第2の磁石部分が、
-
円筒形のキャリア本体の前端面に設けられた前部磁石アセンブリ、および/または
-
円筒形のキャリア本体の後端面に設けられた後部磁石アセンブリを、含む、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記前部磁石アセンブリがおよび/または後部磁石アセンブリが、第1の磁気要素、および前記第1の磁気要素と前記キャリア本体との間に設けられた第2の磁気要素を含み、前記第1の磁気要素および前記第2の磁気要素の反対の極は互いに向かい合っている、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
サンプル操作のためのシステムであって、
-サンプルを操作するために配置された第1のデバイスと、
-サンプルを操作するために配置された第2のデバイスと、
-前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスに接続された、請求項1~6のいずれか一項に記載の搬送装置と、を含む、システム。
【請求項8】
前記第1のデバイスがサンプル調製デバイスであり、前記第2のデバイスがサンプル調査デバイスである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のデバイスおよび/または前記第2のデバイスが荷電粒子顕微鏡を含む、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のデバイスが集束イオンビームデバイスであり、かつ/または前記第2のデバイスが電子顕微鏡である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のシステムでサンプルを移送する方法であって、
-請求項7~10のいずれか一項に記載のシステムを提供するステップと、
-前記第1のデバイス内にサンプルを提供するステップと、
-前記サンプルをキャリア本体に移送するステップと、
-前記磁気アクチュエータ要素と磁気的にリンクされた前記キャリア本体を移動させるために前記アクチュエータ管内の前記磁気アクチュエータ要素を移動させ、それにより、前記サンプルを前記第1のデバイスから前記第2のデバイスに移動させるステップと、
-前記サンプルを前記キャリア本体から前記第2のデバイスに移送するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本発明は、2つのデバイス間でサンプルを移送するための搬送装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、そのような搬送デバイスを含むサンプル操作のためのシステムに関する。
【0003】
本発明はまた、そのようなシステムでサンプルを移送する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2つのデバイス間でサンプルを移送することは一般的なタスクである。多くの場合、サンプルはサンプル調製デバイスを使用して調製され、調製デバイスから離れた場所にある分析デバイスで調査される。移送は手動で行われ得る。ユーザーは、調製デバイスでサンプルを収集し、分析デバイスに持ち込み、そこで当該分析デバイスに挿入する。2つのデバイス間の移送中にサンプルが危険にさらされる可能性があり、これは望ましくない。
【0005】
高品質の分析を得るためには、サンプルを可能な限り調製された状態で保存し、損傷および/または変質を可能な限り防止することが重要である。
【0006】
このことは、所望の品質を得るためにサンプルの状態が重要である、荷電粒子顕微鏡(CPM)において間違いなく重要である。電子顕微鏡のような、荷電粒子顕微鏡は、周知であり、微視的対象物を撮像するために、ますます重要になっている技術である。これまで、基本的な種類の電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、および走査透過電子顕微鏡(STEM)のような、いくつかの周知の装置類に進化してきており、さらには、例えばイオンビームミリングまたはイオンビーム誘導蒸着(IBID)のような支援作用を可能にする「機械加工」集束イオンビーム(FIB)をさらに採用した、いわゆる「デュアルビーム」装置(例えば、FIB-SEM)のような様々な補助装置類に進化してきている。
【0007】
(S)TEMで観察される試料は、一般に、電子が十分に透過できるように、非常に薄くなければならない(例えば、数百nm以下程度の厚さ)。このタイプの薄い(フレーク状の)試料は、従来、ラメラと呼ばれ、一般にFIB-SEMなどのデュアルビーム装置でより大きな(「バルク」)サンプルから切り取られる。調製後、ラメラをFIBリフトアウトグリッドなどのラメラサポートに固定し、(S)TEM(または他のタイプのCPM)で使用するために必要な向きに慎重に配置する。このサンプル(ラメラサポート付きラメラ)の移送は、サンプルが破損しないことを確実にするために慎重に行う必要がある。
【0008】
Cryo-EMを使用した生体サンプルの調製および調査は、サンプルの移送をさらに複雑にする。Cryo-EMにおいて、サンプルは、ガラス化技術を使用した急速凍結により保存され、cryo-TEMで観察される。さらに、サンプルを凍結切片化するために、凍結FIB技術を使用してもよい。したがって、生物学的サンプルの調査は、あるデバイスから別のデバイスへの低温サンプルの移送を含んでもよい。
【発明の概要】
【0009】
上記から、2つのデバイス間でサンプルを安全かつ信頼できる方法で移送するための搬送装置の必要性が存在することになる。
【0010】
この目的のために、本発明は、2つのデバイス間でサンプルを移送するための搬送装置を提供する。当該搬送装置は、サンプルを保持するためのキャリアを備えた搬送管を含み、当該キャリアは、当該搬送管内でその長さに沿って移動可能である。搬送装置は、当該搬送管に実質的に隣接して延在するアクチュエータ管をさらに含み、当該アクチュエータ管は、当該アクチュエータ管内で移動可能なアクチュエータ要素を備える。当該アクチュエータ要素は、第1の磁石部分を含む。当該サンプルキャリアは、第2の磁石部分を備え、当該第1の磁石部分および当該第2の磁石部分は、当該搬送管を通るサンプルキャリアの移動がアクチュエータ管を通る磁気アクチュエータ要素の移動とリンクされるように設けられる。このようにして、磁気アクチュエータ要素を移動させることができ、サンプルキャリアは、第2の磁石部分が第1の磁石部分とリンクされているため、磁気アクチュエータ要素の移動に従う。したがって、サンプルの移送は信頼できる。移動中、サンプルキャリアは周囲の環境に対して搬送管によって遮断される。したがって、サンプルの損傷が防止される。これにより、2つのデバイス間での改善されたサンプルの移送が得られる。
【0011】
本発明の実施形態およびさらなる利点を以下に説明する。
【0012】
一実施形態では、当該アクチュエータ管は空気圧アクチュエータ管である。空気圧アクチュエータ管を使用すると、搬送装置の信頼性が高まり、制御が容易になり、比較的安価になる。当該空気圧アクチュエータ管は、正圧を使用してアクチュエータ要素をアクチュエータ管の所望の端部に向かって押す圧力管であってもよい。あるいは、当該空気圧アクチュエータ管は、例えば、管内に生成された真空を使用してアクチュエータ要素をアクチュエータ管の所望の端部に引き寄せ、それによりサンプルキャリアを搬送の所望の端部に移動させる吸引管であってもよく、-したがって、所望のデバイスである。当該空気圧アクチュエータ管は、上述の吸引管と圧力管とを単一のアクチュエータ管に組み合わせる組み合わせ管であってもよい。このようにして、空気圧アクチュエータ管内のアクチュエータ要素の引き抜きと押し込みの組み合わせが可能になり、アクチュエータ要素の制御の改善とより信頼性の高い搬送装置につながる。
【0013】
当該アクチュエータ管内に所望の流速および/またはプロファイルを提供することにより、アクチュエータ要素が制御されると考えられる。例えば、アクチュエータ要素は、アクチュエータ管の内径よりわずかに小さくてもよく、当該アクチュエータ管内に流れを提供することにより移送されてもよい。
【0014】
一実施形態では、当該搬送管は、減圧搬送管、特に真空搬送管である。したがって、サンプルを保持するためのキャリアは、真空搬送管に設けられる。これにより、cryo-EMサンプルなどのガラス化サンプルをデバイス間で安全に搬送できる。
【0015】
一実施形態では、当該キャリアは、搬送される当該サンプルを受け入れるための受け入れスペースを備える実質的に円筒形のキャリア本体を含む。円筒形のキャリア本体により、搬送管をスムーズに搬送できる。キャリア本体の受け入れスペースは、搬送中のサンプルの追加保護を可能にし、例えばキャリア本体への/からのサンプルの搭載/取り出し中のサンプルの改善された取り扱いを可能にする。
【0016】
当該第2の磁石部分は、当該キャリア本体に設けられてもよい。特に、当該第2の磁石部分は、キャリア本体の前部分および/または後部分に設けられてもよい。ここで、「前部」および「後部」という用語は、移動方向を指すために使用され得、前部は進行方向に面し、後部は進行方向から離れて面することに留意されたい。「前部」および「後部」という用語は、ここでは主にキャリア本体の2つの外端を容易に区別するために使用されるため、限定的に解釈されるべきではない。
【0017】
一実施形態では、当該第2の磁石部分は、実質的に円筒形のキャリア本体の前端面に設けられた前部磁石アセンブリを含む。
【0018】
一実施形態では、当該第2の磁石部分は、実質的に円筒形のキャリア本体の後端面に設けられた後部磁石アセンブリを含む。
【0019】
当該前部磁石アセンブリおよび当該後部磁石アセンブリは、同極がサンプルに向けられるように設けられてもよい。前部磁石アセンブリはN極およびS極を有し、当該後部磁石アセンブリも同様にN極とおよび極を有する。この実施形態では、前部磁石アセンブリのN極はキャリア本体に面しており、後部磁石アセンブリのN極も同様にキャリア本体に面している。あるいは、前部磁石アセンブリのS極および後部磁石アセンブリのS極は、キャリア本体に面していてもよい。上記の機能を使用して、サンプル領域の磁場を低減できる。
【0020】
一実施形態では、当該前部および/または後部磁石アセンブリはそれぞれ、第1の磁気要素および第2の磁気要素を含む。第2の磁気要素は、当該第1の磁気要素と当該キャリア本体との間に設けられる。当該第1の磁気要素および当該第2の磁気要素の反対の極は、互いに向かいあっている。言い換えると、第1の磁気要素および第2の磁気要素は、第1の磁気要素が第2の磁気要素を引き付けるように設けられている。上記の機能を使用して、サンプル領域の磁場を低減できる。
【0021】
一態様によれば、サンプル操作のためのシステムであって、
-サンプルを操作するために配置された第1のデバイスと、
-サンプルを操作するために配置された第2のデバイスと、
-上述の、当該第1のデバイスおよび当該第2のデバイスに接続された搬送装置と、を含むシステムが提供される。
【0022】
当該第1のデバイスはサンプル調製デバイスであってもよく、当該第2のデバイスはサンプル調査デバイスまたは分析デバイスであってもよい。
【0023】
当該第1のデバイスおよび/または当該第2のデバイスは、本文書の導入部に記載されたように、荷電粒子顕微鏡を含んでいてもよい。例えば、第1のデバイスは集束イオンビームデバイスであり得、および/または第2のデバイスは電子顕微鏡であり得る。
【0024】
本明細書に記載のサンプル操作システムを使用すると、異なるデバイス間で安全で信頼性の高いサンプル移送が可能である。搬送管を介したサンプルの搬送により、サンプルに対する一定量の保護が確保される。さらに、ユーザーは搬送中にサンプルに接触する必要はない。サンプルのサンプルキャリアへの搭載および取り出しを、安全で信頼できる方法で実行できる。一実施形態では、第1のデバイスおよび/または第2のデバイスは、サンプルを搬送装置、例えばキャリア本体の受け入れスペースに容易に配置できるように、搭載デバイスおよび/または取り出しデバイスを備えてもよい。
【0025】
一態様によれば、上述のシステムなどのシステム内でサンプルを移送する方法が提供される。この態様による方法は、
-上述のサンプル操作のためのシステムを提供するステップと、
-第1のデバイスにサンプルを提供するステップと、
-当該サンプルをキャリア本体に移送するステップと、
-当該アクチュエータ要素と磁気的にリンクされたキャリア本体を移動させるためにアクチュエータ管内のアクチュエータ要素を移動させ、それにより、当該サンプルを当該第1のデバイスから当該第2のデバイスに移動させるステップと、
-サンプルをキャリア本体から第2のデバイスに移送させるステップと、を含む。
【0026】
したがって、この方法では、磁気アクチュエータ要素を移動させることができ、サンプルキャリアは、第2の磁石部分が第1の磁石部分とリンクされているため、磁気アクチュエータ要素の移動に従う。前に説明したように、これによりサンプルの移送の信頼性が向上するが、サンプルキャリアは搬送中に搬送管によって遮断されるため、サンプルの安全性も向上する。したがって、サンプルの損傷が防止される。これにより、2つのデバイス間でサンプルを移送する改良された方法が得られる。
【0027】
次に、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本明細書に開示される移送装置を含む、サンプル操作のためのシステムの概略図。
【
図2】一実施形態による、本明細書に開示される移送装置の一部の概略図。
【
図3】本明細書に開示される移送装置のさらなる実施形態の概略図。
【
図4】
図3に示す移送装置で使用されるサンプルキャリアの一部の断面図。
【
図5】移送装置をサンプル操作デバイスに接続するための接続部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、サンプル操作のためのシステム100の概略図を示している。システム100は、サンプルを操作するために配置された第1のデバイス101と、当該サンプルを操作するために配置された第2のデバイス201とを含む。第1のデバイス101は、例えば、サンプル調製室102を有するサンプル調製デバイスであってもよい。第2のデバイス201は、サンプル分析室202を有するサンプル分析デバイスであってもよい。第1のデバイスは、荷電粒子顕微鏡、特にサンプルを調製するための集束イオンビームデバイスであり得る。そのようなデバイスはそれ自体当業者に知られている。第2のデバイスは、荷電粒子顕微鏡、特に(S)TEMなどの電子顕微鏡であってもよい。当該第2のデバイス201は、当該第1のデバイス101から距離を置いて配置されている。第1のデバイス101および第2のデバイス201は、本明細書で記載する搬送装置1によって互いに接続される。
【0030】
図1に示される搬送装置1は、当該第1のデバイス101および当該第2のデバイス201に接続された搬送管11を含む。搬送装置1はまた、当該第1のデバイス101および当該第2のデバイス201に接続されたアクチュエータ管12を含む。デバイス101、201への接続は、接続部111、211により確立される。これらの接続部111、211は、それぞれサンプル操作室102、202に接続されており、移送装置1を介して、第1のデバイス101のサンプル操作室102からサンプルを(ライン112、212を介して)第2のデバイス201のサンプル操作室202に移送することができる。接続部111、211の詳細は、
図5および
図6に関して後述する。
【0031】
一般的に、そして例として、
図1に示されるシステムは、サンプルを調製室102のTEMサンプルホルダーに取り付け、集束イオンビーム(FIB)デバイス101を使用して薄くすることを可能にする。次いで、サンプルを、搬送装置1を使用してTEMまたはSTEMデバイス201に搬送し、そこで当該デバイス201の一部である電子ビームでそれを画像化できる。FIBを使用するサンプルを調製し、(S)TEMを使用してサンプルを画像化するこのプロセスは、当業者に知られており、簡潔さの理由でこれ以上説明しない。ただし、ここで開示する搬送装置は、FIBおよび(S)TEMデバイス間の搬送中にサンプルが周囲環境から保護されるため、調製と画像化プロセスを改善し、次に説明するように、サンプル条件をより簡単に維持できる。
【0032】
ここで
図2を参照すると、搬送装置1の詳細が概略的に示されている。ここで、搬送管11には、サンプル4を保持するためのキャリア本体14を有するキャリア2が設けられていることが分かる。キャリア2は、その長さLに沿って当該搬送管11内で移動可能である。アクチュエータ管12は、当該搬送管11に実質的に隣接して延在する。アクチュエータ要素3は、当該アクチュエータ管12内に設けられ、当該アクチュエータ管12内で移動可能である。図示の実施形態では、アクチュエータ要素3は第1の磁石部15を含み、当該サンプルキャリアは第2の磁石部16を備えている。磁石部分15、16は、当該搬送管11を通るサンプルキャリア2の移動が、アクチュエータ管12を通る磁気アクチュエータ要素3の移動とリンクされるように設けられている。磁石部分15、16の極N、Sは、アクチュエータ要素3とキャリア要素2との間に磁気結合が生じるように配置される。言い換えると、アクチュエータ要素3がアクチュエータ管12を通って移動すると、サンプルキャリア2も搬送管11に磁気的に押し進められ、制御可能で、安全で信頼できる方法で、第1のデバイス101から第2のデバイス102へのサンプル4の移送が可能になる。
【0033】
図1および
図2では、搬送管11およびアクチュエータ管12は剛体管として示されているが、可撓管の使用も可能であり、いくつかのデバイス間の容易な接続を提供する。
【0034】
一実施形態では、アクチュエータ管12は空気圧アクチュエータ管であってもよいことが留意される。管12は、圧力の相対的な差を利用して、アクチュエータ要素を移動させることができる。これは、真空および/または正圧を使用して、アクチュエータ管12を通してアクチュエータ要素3を、および/またはこれにより搬送管11を通してサンプルキャリア2を引くおよび/または押すことを含み得る。
【0035】
ここで
図3を参照すると、搬送装置1(の一部)のさらなる実施形態が示されている。ここで、サンプルキャリア2は、搬送される当該サンプル4を受け入れるための受け入れスペース40を備えた実質的に円筒形のキャリア本体14を含むことが分かる。サンプルキャリアに設けられた磁石部分16、17(第2の磁石部分16と呼ばれる)は、実質的に円筒形のキャリア本体の前端面に設けられた前部磁石アセンブリ16と、実質的に円筒形のキャリア本体14の後端面に設けられた後部磁石アセンブリ17を含む。当該前部および後部磁石アセンブリ16、17はそれぞれ第1の磁気要素16a、17aおよび第2の磁気要素16b、17bを含む。第2の磁気要素は、当該第1の磁気要素と当該キャリアとの間に設けられる。当該第1の磁気要素および当該第2の磁気要素の反対の極は、互いに向けられている。
図3に模式的に示されているように、各磁気要素は、N極(円周方向のマークで示されている)およびS極を有する。前部磁石アセンブリ16の第1の磁気要素16aはN極が外向きに面しており、第2の磁気要素16bのN極は第1の磁気要素16aのS極に向けられている。後部磁石アセンブリ17も同様の構造を有し、同じくN極が外向きに面している。したがって、事実上、前部磁石アセンブリ16および後部磁石アセンブリ17の磁極は反対方向に向けられ、これはサンプル4上の磁場を減少させる。アクチュエータ要素3は、この実施形態では合計2つの磁石要素15a~15bを含むが、原則として、アクチュエータは、例えば1つ、3つ、4つ、またはそれ以上など、他の任意の数の磁石要素でも機能することができる。
【0036】
図3および
図4に見られるように、受け入れスペース40は溝41を含む。これにより、サンプル4(
図4に模式的に示すようにサンプルホルダー42に提供される)を簡単かつ再現可能に、(第1の)デバイス101からキャリア要素2に搭載し、キャリア要素2から(第2の)デバイス201に取り出すことが可能にする。サンプル4(すなわちサンプルホルダー42)を溝にロックするため、ネジなどの固定要素32でキャリア本体に取り付けられたバネ要素31が設けられ、これは搬送管を介した搬送中にサンプル4(すなわちサンプルホルダー42)を固定する。
図4に示されているサンプルキャリアは、FIBによって作成されたラメラを保持するようになっている、いわゆるEMグリッドである。もちろん、半月形格子など、ラメラまたは他の種類のサンプル4を保持するための他の格子を使用することも考えられる。ラメラとは別に、搬送装置は他のタイプのサンプルを移送するのにも適している。
【0037】
図5および
図6は、接続部111を斜視図および断面図でそれぞれ示している。接続部111は、搬送装置1の終止点ステーションとして機能し、それぞれのデバイス101、102内のサンプル4の搭載/取り出しが行われるのを可能にする。接続部111は、搬送管(11、図示せず)およびアクチュエータ管(12、図示せず)が接続可能な搬送接続部131とアクチュエータ接続部132とを含む。これらの搬送接続部131およびアクチュエータ接続部132は、それぞれ搬送孔141およびアクチュエータ孔142内に延在する。サンプルキャリア2およびアクチュエータ3は、それぞれ穴141、142内に移動することができ、そこでそれぞれのストップ151、152に接触する。ストップ151、152は、サンプルキャリア2およびアクチュエータ3の端部位置を正確に決定するために調整可能であってもよい。特に、サンプルがそれぞれのデバイス101、201から搭載/取り出しされ得るように、サンプルキャリア2の位置は、サンプルが接続部111に設けられた凹部115と一直線になるような位置である。このようにして、接続部111、112は、搬送装置1と各デバイス101、102との間のインターフェースを提供する。接続部111、112は、アクチュエータ要素3およびキャリア要素2(サンプル4を有する、図示せず)の端部位置での正確な位置決めを提供するので、搭載/取り出しが行われ、さらなるまたは後続の搬送ステップが行われ得る。ガイド(図示せず)を設けて、キャリア要素2(サンプル4を有する)の回転位置を所望の位置にガイドし、キャリア要素2へのサンプルの取り出しおよび/または配置が可能になるようにしてもよい。
【0038】
示された実施形態では、接続部は、アクチュエータ要素3の空気圧動作を可能にするために、アクチュエータ接続部と流体接触するさらなる接続部133を有する。
【0039】
搬送孔141および搬送接続部131を有する接続部111により、搬送管を閉鎖システムにすることができる。したがって、搬送管11は、減圧搬送管11、特に真空搬送管であり得る。これにより、例えば、低温サンプル4を、特に荷電粒子顕微鏡の第1および第2のデバイス間で安全かつ信頼できる方法で移送することができる。
【0040】
上記では、本発明をいくつかの実施例によって説明してきた。所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。