(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240806BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2020014638
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】栗林 明宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 里駆
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0061684(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070814(US,A1)
【文献】特開昭60-126821(JP,A)
【文献】特表2017-522730(JP,A)
【文献】特表2017-527980(JP,A)
【文献】特開2009-128200(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029466(WO,A1)
【文献】特開2015-084350(JP,A)
【文献】特開2018-157234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電電極が内蔵された基体に吸着対象物を載置し、前記吸着対象物を吸着保持する静電チャックと、前記静電チャックが搭載されたベースプレートと、を有する基板固定装置であって、
前記基体はセラミックス製であり、
前記ベースプレートには、前記基体の前記ベースプレート側の面を露出する複数の貫通孔が形成され、
各々の前記貫通孔に、レーザ光が伝搬する光ファイバーが配置され、
前記基体の前記ベースプレート側の面には、前記貫通孔と連通する凹部が設けられ、
前記凹部の底面及び側面には、前記基体を構成するセラミックスが露出し、
前記凹部の底面及び側面に
露出するセラミックスに、前記光ファイバーを伝搬する前記レーザ光が照射される基板固定装置。
【請求項2】
前記基体には、独立に温度制御可能な複数の領域が画定され、
前記ベースプレートにおいて、各々の前記領域に対応する位置には、前記光ファイバーが少なくとも1つ配置される請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記基体はアルミナを主成分とし、前記レーザ光の波長帯域は赤外域である請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記静電チャックは、接着層を介して、前記ベースプレートの一方の面に搭載され、
前記貫通孔は、前記ベースプレートから前記接着層に連通し、
前記光ファイバーの先端は、前記貫通孔の前記ベースプレートに形成された部分に位置している請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記基体は、外部から電圧を印加することで発熱する発熱体を内蔵している請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際に使用される成膜装置やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックによりウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0003】
基板固定装置の一例として、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものが挙げられる。この基板固定装置では、例えば、発熱体として抵抗体を静電チャックに内蔵させ、抵抗体に電力を付加することで加熱する方法や、発熱体として発光ダイオードを用い、発光ダイオードを固定数の行及び列を有する規則的アレイとして配列したり、外側の同心円が内側の同心円より多数の発光ダイオードを有するように円の直径に関連させて配列したりすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板固定装置において複数の領域を独立に温度制御するためには、制御用の多数の電線等を静電チャックの外部に引き出す必要がある。又、静電チャックの外部に引き出された電線等は、ベースプレートに形成された貫通孔を通して外部に引き出す必要があるため、電線等が増えると貫通孔も増える。つまり、電線等の多数化によりベースプレートにおける貫通孔の専有面積が大きくなり、ベースプレートの設計自由度が低下する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、複数の領域を独立に温度制御する場合でも、ベースプレートの設計自由度の低下を抑制可能な基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本基板固定装置は、静電電極が内蔵された基体に吸着対象物を載置し、前記吸着対象物を吸着保持する静電チャックと、前記静電チャックが搭載されたベースプレートと、を有する基板固定装置であって、前記基体はセラミックス製であり、前記ベースプレートには、前記基体の前記ベースプレート側の面を露出する複数の貫通孔が形成され、各々の前記貫通孔に、レーザ光が伝搬する光ファイバーが配置され、前記基体の前記ベースプレート側の面には、前記貫通孔と連通する凹部が設けられ、前記凹部の底面及び側面には、前記基体を構成するセラミックスが露出し、前記凹部の底面及び側面に露出するセラミックスに、前記光ファイバーを伝搬する前記レーザ光が照射される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、複数の領域を独立に温度制御する場合でも、ベースプレートの設計自由度の低下を抑制可能な基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【
図2】基体に画定された温度制御領域を例示する平面図である。
【
図3】温度制御領域を加熱するための光ファイバーの配置を模式的に示す平面図である。
【
図4】基体固定装置の外部に配置するレーザ照射装置を例示する模式図である。
【
図5】比較例に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【
図6】第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置における光ファイバーの周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図7】第1実施形態の変形例2に係る基板固定装置における光ファイバーの周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図8】第1実施形態の変形例3に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30と、光ファイバー80とを有している。基板固定装置1は、ベースプレート10の一方の面に搭載された静電チャック30により吸着対象物である基板(ウェハ等)を吸着保持する装置である。
【0012】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~40mm程度である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用できる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着された基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0013】
ベースプレート10及び接着層20には、基体31のベースプレート10側の面を露出する複数の貫通孔10xが形成されている。各々の貫通孔10xには、レーザ光が伝搬する光ファイバー80が配置されている。光ファイバー80は接着剤等により貫通孔10xに固定してもよいし、ベースプレート10の下面にソケットを設けることでベースプレート10に固定してもよい。
【0014】
ベースプレート10の内部に、静電チャック30上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス供給路が設けられてもよい。基板固定装置1の外部からガス供給路に、例えば、HeやAr等の不活性ガスが導入され、静電チャック30上に吸着された基板の裏面に不活性ガスが供給されると、基板を冷却できる。
【0015】
ベースプレート10の内部に、冷媒流路が設けられてもよい。冷媒流路は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。基板固定装置1の外部から冷媒流路に、例えば、冷却水やガルデン等の冷媒が導入される。冷媒流路に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着された基板を冷却できる。
【0016】
静電チャック30は、吸着対象物である基板を吸着保持する部分である。静電チャック30の平面形状は、例えば、円形である。静電チャック30の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8、12、又は18インチである。
【0017】
なお、平面視とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0018】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10の上面10aに設けられている。接着層20は、例えば、シリコーン系接着剤である。接着層20の厚さは、例えば、0.1~2.0mm程度である。接着層20は、ベースプレート10と静電チャック30を接着すると共に、セラミックス製の静電チャック30とアルミニウム製のベースプレート10との熱膨張率の差から生じるストレスを低減させる効果を有する。
【0019】
静電チャック30は、主要な構成要素として、基体31と、静電電極32とを有している。基体31の上面は、吸着対象物が載置される載置面31aである。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0020】
基体31は誘電体であり、基体31としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いる。基体31は、助剤として、例えば、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、及びイットリウム(Y)から選択される2種以上の元素の酸化物を含んでもよい。基体31の厚さは、例えば、5~10mm程度、基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度である。
【0021】
静電電極32は、例えば薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック30の基体31の載置面31a上にウェハを吸着保持できる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いる。
【0022】
図2は、基体に画定された温度制御領域を例示する平面図である。
図2に示すように、基体31には、平面視において、独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定されている。
図2の例では、30個の温度制御領域31eが画定されているが、温度制御領域31eは100から200個程度にすることも可能である。又、温度制御領域31eの平面形状は任意であり、必ずしも略同心円状に区切る必要はなく、例えば、略格子状に区切ってもよい。
【0023】
図3は、温度制御領域を加熱するための光ファイバーの配置を模式的に示す平面図である。光ファイバー80には、レーザ光が伝搬される。光ファイバー80を伝搬したレーザ光が基体31に照射されると、基体31が加熱される。
【0024】
図3に示すように、ベースプレート10において、各々の温度制御領域31eに対応する位置には、光ファイバー80が少なくとも1つ配置されている。各々の温度制御領域31eに配置された光ファイバー80を伝搬するレーザ光の強度を変えることで、各々の温度制御領域31eの発熱量を独立に変えることができる。このように、基体31に独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定され、各々の温度制御領域31eに1つずつ光ファイバー80が配置されることで、基体31の載置面31aを均一に加熱できる。
【0025】
図4は、基体固定装置の外部に配置するレーザ照射装置を例示する模式図である。
図4に示すように、レーザ照射装置100は、レーザ光源110と、ミラー120と、光走査装置130と、制御回路140とを有している。レーザ光源110としては、例えば、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ等を用いることができる。基体31がアルミナを主成分とする場合には、レーザ光源110から出射されるレーザ光の波長帯域はアルミナが吸収し易い赤外域であることが好ましい。レーザ光源110から出射されるレーザ光の出力は、数kW~数10kW程度であることが好ましい。
【0026】
光走査装置130としては、例えば、2枚のミラーをモータによって制御するガルバノスキャナや、MEMSで形成された光走査装置や、デジタルミラーデバイス等を用いることができる。制御回路140の指令に基づいてレーザ光源110から出射されたレーザ光Lは、ミラー120で光路を変えられ、光走査装置130に入射する。光走査装置130に入射したレーザ光Lは、制御回路140の指令に基づいて光走査装置130に走査され、所定の光ファイバー80に入射し、基体31の下面に至る。
【0027】
制御回路140の指令に基づいて光走査装置130が走査を繰り返し、各々の光ファイバー80に順次レーザ光を入射することで、基体31を加熱できる。加熱温度は、レーザ光が同じ光ファイバー80に入射している時間により制御できる。光ファイバー80を伝搬したレーザ光により、例えば、基体31の載置面31aの温度を200℃程度まで加熱できる。
【0028】
なお、
図4のレーザ照射装置100を用いる代わりに、光ファイバー80と同数のレーザ光源を準備し、各々の光ファイバー80毎にレーザ光を入射する構成としてもよい。又、光ファイバー80の出射側の端部に低反射ミラー、入射側の端部に高反射ミラーを設置し、光ファイバー80の入射側の端部から励起光を入射させるファイバーレーザを用いてもよい。
【0029】
ここで、比較例を交えながら、基板固定装置1を構成する静電チャック30の奏する効果について説明する。
【0030】
図5は、比較例に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図5を参照すると、基板固定装置1Xは、静電チャック30が静電チャック30Xに置換された点が、基板固定装置1(
図1等参照)と相違する。
【0031】
静電チャック30Xは、主要な構成要素として、基体31と、静電電極32と、発熱体33と、配線36を有している。基体31には、
図2と同様に、平面視において、独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定されている。又、発熱体33は、
図3の光ファイバー80の場合と同様に、各々の温度制御領域31eに1つずつ配置されている。各々の温度制御領域31eに配置された発熱体33同士は互いに絶縁されており、電流値を変えることで、独立に発熱量を変えることができる。
【0032】
各々の発熱体33の一端は、配線36により相互に接続された後、入出力用の電線65(IN1)に接続され、電線65(IN1)は基板固定装置1Xの外部に引き出されている。各々の発熱体33の他端は、入出力用の電線66(IN2)に接続され、電線66(IN2)は、基板固定装置1Xの外部に引き出されている。電線65と電線66の合計は、発熱体33の個数+1本となる。例えば、発熱体33が100個あれば、電線65と電線66の合計は101本となる。
【0033】
例えば、電線65(IN1)と電線66(IN2)の一方はGNDに接続され、他方は電源に接続される。各々の発熱体33の発熱量は、電線65(IN1)と電線66(IN2)を介して各々の発熱体の両端に印加される電圧の値により可変できる。或いは、電線65(IN1)と電線66(IN2)を介して各々の発熱体の両端に一定の電圧(パルス電圧)を供給し、電圧を供給する時間を変化させることで、発熱体33の発熱量を可変してもよい。
【0034】
電線65(IN1)と電線66(IN2)には、発熱体33の発熱に必要な比較的大きな電流が流れ、プラズマ制御用の高周波電力が印加されるベースプレートと強固な絶縁を必要とするため、電線65及び66が配置されるベースプレート10の貫通孔の径は、例えば、φ5mmである。又、電線65及び66の径は、例えば、φ4mmである。そのため、電線65と電線66の合計の本数が増えるにつれて、ベースプレート10における貫通孔の専有面積が無視できないほど大きくなる。
【0035】
例えば、
図5に示す比較例に係る基板固定装置1Xのような構造の場合、温度制御領域31eを100個にすると、基板固定装置と外部との電気的な接続が100本以上となる。つまり、100本以上の電線をベースプレート10に形成された貫通孔を通して外部に引き出す必要がある。この場合、前述のようにベースプレート10における貫通孔の専有面積が無視できないほど大きくなり、ベースプレート10の設計自由度が大幅に低下する。
【0036】
基板固定装置1の場合も、温度制御領域31eと同数の光ファイバー80が必要になる。しかしながら、前述のように、基板固定装置1Xにおいて電線65及び66が配置される貫通孔の径がφ5mm程度であるのに対し、基板固定装置1において光ファイバー80が配置される貫通孔10xの径はφ0.5mm程度であり、電線65及び66が配置される貫通孔の径の1/10程度である。
【0037】
そのため、ベースプレート10に光ファイバー80が配置される多数の貫通孔10xを設ける場合であっても、電線65及び66が配置される同数の貫通孔を設ける場合に比べて、ベースプレート10における貫通孔10xの専有面積が大幅に低減される。すなわち、基板固定装置1は、ベースプレート10に多数の貫通孔10xを設けた場合でも、ベースプレート10の設計自由度の低下を抑制可能である。
【0038】
又、基板固定装置1では、発熱に関する部分では、基板固定装置1と外部との電気的な接続はないため、外部接続に必要な部品の低減によりコストを抑制できる。又、基板固定装置1と外部との電気的な接続に必要なはんだが不要であるため、はんだ付け箇所の大幅な低減等に伴うアッセンブリー難易度の飛躍的な低下により、歩留り及び信頼性の向上が期待できる。静電チャック30は消耗部品であるため、歩留り改善によるコスト低減効果は大きい。
【0039】
又、光ファイバー80は、ベースプレート10との電気的な絶縁が不要となるため、貫通孔10x内には絶縁材等が不要となり、この点でもコスト削減に繋がる。
【0040】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、光ファイバーの先端の位置を下方に後退させる例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0041】
図6は、第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置における光ファイバーの周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【0042】
図1では、光ファイバー80の先端は、ベースプレート10から接着層20に連通する貫通孔10xの接着層20に形成された部分に位置していた。これに対し、
図6の基板固定装置1Aでは、光ファイバー80の先端は、ベースプレート10から接着層20に連通する貫通孔10xのベースプレート10に形成された部分に位置しており、貫通孔10xの接着層20に形成された部分には入り込んでいない。
【0043】
一般に、ベースプレート10と基体31の熱膨張係数の違いにより、温度条件によってはベースプレート10に対して基体31が水平方向に変位する。このとき、接着層20も変位するため、光ファイバー80の先端が接着層20内に入り込んでいると、光ファイバー80の先端が劣化等のダメージを負う場合がある。
図6のように、光ファイバー80の先端が貫通孔10xのベースプレート10に形成された部分に位置しており、接着層20に形成された部分に入り込んでいない構造とすることで、光ファイバー80の先端が劣化等のダメージを負うことを回避できる。ベースプレート10に対する基体31の変位量は基体31の外周側に行くほど大きくなるため、ベースプレート10の外周側に配置された貫通孔10xにおいて、特に顕著な効果を奏する。
【0044】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、光ファイバーからレーザ光が照射される位置に凹部を設ける例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0045】
図7は、第1実施形態の変形例2に係る基板固定装置における光ファイバーの周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
図7に示すように、基板固定装置1Bでは、基体31のベースプレート10側の面には、光ファイバー80を伝搬するレーザ光が照射される凹部31xが形成されている。凹部31xは、貫通孔10xと連通している。但し、凹部31xと貫通孔10xとは異なる径でもよい。
【0046】
図7では、光ファイバー80から出たレーザ光Lは、凹部31xの底面及び側面に照射される。例えば円形に開口する凹部31xを形成することで、
図1や
図6の場合に比べてレーザ光Lが照射される面積が増えるため、基体31を加熱し易くできる。
【0047】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、基体31に、外部から電圧を印加することで発熱する発熱体を内蔵した静電チャックを備えた基板固定装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0048】
図8は、第1実施形態の変形例3に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図8を参照すると、基板固定装置1Cは、静電チャック30が静電チャック30Cに置換された点が、基板固定装置1(
図1等参照)と相違する。又、静電チャック30Cは、発熱体40と、電線68(IN1)と、電線69(IN2)が追加された点が、静電チャック30(
図1等参照)と相違する。
【0049】
静電チャック30Cに内蔵された発熱体40は、例えば、厚さ方向において静電電極32よりもベースプレート10側に配置できる。発熱体40は、例えば、渦巻き状のパターン等に形成された1本の抵抗体であり、複数の温度制御領域31eに跨って基体31の載置面31aの全体を加熱できるように配置されている。発熱体40の材料としては、例えば、タングステン(W)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等を用いることができる。発熱体40の厚さは、例えば、20~100μm程度である。
【0050】
発熱体40の一端は、入出力用の電線68(IN1)に接続され、電線68(IN1)は基板固定装置1Cの外部に引き出されている。発熱体40の他端は、入出力用の電線69(IN2)に接続され、電線69(IN2)は、基板固定装置1Cの外部に引き出されている。電線68と電線69は、1本ずつである。
【0051】
例えば、電線68(IN1)と電線69(IN2)の一方はGNDに接続され、他方は電源に接続される。発熱体40の発熱量は、電線68(IN1)と電線69(IN2)を介して発熱体40の両端に印加される電圧の値により可変できる。或いは、電線68(IN1)と電線69(IN2)を介して発熱体40の両端に一定の電圧(パルス電圧)を供給し、電圧を供給する時間を変化させることで、発熱体40の発熱量を可変してもよい。
【0052】
このように、発熱体40を基体31に内蔵してもよい。例えば、発熱体40に電流を流して基体31の載置面31aを加熱し、不均一になる部分のみを光ファイバー80を経由して照射されたレーザ光による加熱で補うことで、基体31の載置面31aの全体を均一に加熱できる。
【0053】
なお、上記では、発熱体40を1本の抵抗体であるとしたが、発熱体40を独立した複数の抵抗体とし、複数の領域を独立に温度制御可能としてもよい。
【0054】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示できる。
【符号の説明】
【0056】
1、1A、1B、1C 基板固定装置
10 ベースプレート
10a 上面
30、30C 静電チャック
31 基体
31a 載置面
31e 温度制御領域
31x 凹部
32 静電電極
33、40 発熱体
36 配線
65、66、68、69 電線