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特許7534049保持部材、上部電極アセンブリ、及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】保持部材、上部電極アセンブリ、及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240806BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240806BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021007414
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111772
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】氏家 智也
(72)【発明者】
【氏名】仙田 孝博
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501412(JP,A)
【文献】特開2011-137228(JP,A)
【文献】特開平10-235651(JP,A)
【文献】特開2015-065472(JP,A)
【文献】特開2016-094279(JP,A)
【文献】実開昭56-021451(JP,U)
【文献】特開平05-310291(JP,A)
【文献】国際公開第2020/145207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極プレートを保持プレートに保持させる際に用いる保持部材であって、
雌ねじ部を有する軸部と、前記軸部よりも拡大して形成される係止部と、を有する、第1部材と、
前記軸部を挿通し、一の方向に延びる長穴部を有する第2部材と、を備え、
前記第2部材に対して、前記第1部材はスライド可能に構成される、
保持部材。
【請求項2】
前記係止部及び前記第2部材は、平面視して長手方向及び短手方向を有し、
前記第1部材は、前記短手方向にスライド可能に構成される、
請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記第2部材と前記第1部材の前記係止部との係止面は、
前記長手方向を軸とする円筒面に形成される、
請求項2に記載の保持部材。
【請求項4】
前記係止部及び前記第2部材は、上面から底面に向かって細くなる、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の保持部材。
【請求項5】
前記係止部及び前記第2部材は、長円錐台形状を有する、
請求項4に記載の保持部材。
【請求項6】
貫通孔を有する電極プレートと、
収容部を有する保持プレートと、
前記電極プレートを前記保持プレートに固定する固定部材と、を備える、上部電極アセンブリであって、
前記収容部は、
前記電極プレートの表面に開口する開口部と、
前記開口部と連通し前記開口部よりも少なくとも一の方向に拡大する拡大部と、を有し、
固定部材は、
前記収容部に収容される請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の保持部材と、
前記保持部材の前記雌ねじ部と螺合して、前記電極プレートを前記保持プレートに固定するボルト部材と、を有する、上部電極アセンブリ。
【請求項7】
固定部材は、
前記保持部材の軸部と、前記開口部との間に配置される環状部材を更に有する、
請求項6に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項8】
前記ボルト部材は、
前記保持部材の前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部、軸部、頭部を有するボルトと、
前記軸部に配置される弾性部材と、
前記軸部に配置される球面座と、を有する、
請求項6または請求項7に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項9】
前記拡大部の長手方向は、前記電極プレートの周方向に向いて配置される、
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の上部電極アセンブリを備える、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持部材、上部電極アセンブリ、及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンからなる電極プレート及びその他の材質からなる保持プレートを組み合わせで形成される上部電極アセンブリを用いた基板処理装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、円板状のプラズマエッチング用電極において、単結晶シリコンからなる電極中央部と、その他の材質からなる電極外周部を有してなるプラズマエッチング用電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-162940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外周部を固定された単結晶シリコン電極は、エッチングプロセス中に高温になり、温度の不均一に起因する変形が生じ、電極プレートを取り付けている保持プレートとの間に隙間ができる。この隙間によりさらなる温度不均一や反応複製生物の堆積などの不具合が生じる。また、プラズマ処理装置のRF信号(RF電力)の高出力化や処理時間の増加によって、プラズマから上部電極アセンブリへの入熱が増大し、熱応力や熱膨張量が増大する。
【0006】
一の側面では、本開示は、電極プレートを保持プレートに吊り下げて保持することを可能とする保持部材、上部電極アセンブリ、及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、電極プレートを保持プレートに保持させる際に用いる保持部材であって、雌ねじ部を有する軸部と、前記軸部よりも拡大して形成される係止部と、を有する、第1部材と、前記軸部を挿通し、一の方向に延びる長穴部を有する第2部材と、を備え、前記第2部材に対して、前記第1部材はスライド可能に構成される、保持部材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、電極プレートを保持プレートに吊り下げて保持することを可能とする保持部材、上部電極アセンブリ、及びプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図。
図2】プラズマ処理チャンバの天部の部分拡大断面図の一例。
図3】電極プレートの上面図の一例。
図4】電極プレートのA-A断面図の一例。
図5】上部電極アセンブリにおけるA-A断面図の一例。
図6】ブッシュの第1部材の斜視図の一例。
図7】ブッシュの第2部材の斜視図の一例。
図8】固定部材を説明する図の一例。
図9】電極プレートの凹部にブッシュ及び円環部材を取り付ける取り付け方法を説明する断面図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、一実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図である。
【0012】
プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口10eとを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0013】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0014】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0015】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0016】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0017】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0018】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0019】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0021】
次に、プラズマ処理チャンバ10の天部の構成について、図2を用いて更に説明する。図2は、プラズマ処理チャンバ10の天部の部分拡大断面図の一例である。
【0022】
プラズマ処理チャンバ10の天部は、上部電極アセンブリ200と、円環部材250,260,270,280と、を有する。
【0023】
上部電極アセンブリ200は、電極プレート210と、保持プレート220が積層されて構成される。電極プレート210は、例えばシリコン等で形成される。保持プレート220は、例えばアルミニウム等の導電性部材で形成される。このように、電極プレート210と保持プレート220とは、材質が異なっている。
【0024】
また、電極プレート210の上面には、凹部(収容部)211が形成されている。保持プレート220には、電極プレート210の凹部211と対応する位置に座ぐり穴221が形成されている。また、電極プレート210と保持プレート220とは、凹部211及び座ぐり穴221に配置される固定部材300によって固定される。
【0025】
上部電極アセンブリ200とプラズマ処理チャンバ10の側壁10aとの間には、円環部材250,260,270,280が配置されている。円環部材250は、上部電極アセンブリ200を支持する。円環部材250は、例えばアルミナ等の非導電性部材で形成される。円環部材260は、上部電極アセンブリ200の外周部を覆う。円環部材260は、例えば石英等で形成される。円環部材270は、円環部材250,260を支持する。円環部材270は、例えばアルミニウム等で形成される。円環部材280は、円環部材270、円環部材260及び上部電極アセンブリ200の外周部を覆う。円環部材280は、例えばシリコン等で形成される。
【0026】
電極プレート210の凹部211について、図3及び図4を用いて更に説明する。図3は、電極プレート210の上面図の一例である。図4は、電極プレート210のA-A断面図の一例である。なお、電極プレート210には板厚方向に貫通するガス導入口13c(図1参照)が形成されているが、図3においては図示を省略している。
【0027】
凹部211は、開口部212と、拡大部213とを有する。開口部212は、電極プレート210の上面に開口して形成される。開口部212は、例えば平面視して円形に形成される。拡大部213は、開口部212の下に開口部212と連通して形成される。拡大部213は、平面視して少なくとも一の方向(長手方向)に開口部212よりも拡大して形成される。開口部212は、例えば平面視して長円形(トラック形状)に形成される。開口部212の内周面と拡大部213の内周面との間には、拡大部213の天面(係止面)214(図4参照)を有する。
【0028】
図3に示すように、凹部211は、電極プレート210の径方向及び周方向に複数配置されている。図3に示す例において、例えば、一点鎖線で示す外周側の円に沿って8つの凹部211が形成され、一点鎖線で示す内周側の円に沿って8つの凹部211が形成され、電極プレート210の中心に凹部211が形成される。
【0029】
凹部211は、拡大部213の長手方向が電極プレート210の周方向を向くように配置される。これにより、凹部211を電極プレート210の外周側に近づけて配置することができる。なお、拡大部213の長手方向は、電極プレート210の周方向を向く場合に限られるものではなく、電極プレート210の径方向を向いてもよく、その他の方向を向いてもよい。
【0030】
次に、固定部材300による電極プレート210と保持プレート220との固定構造について、図5を用いて説明する。図5は、上部電極アセンブリ200におけるA-A断面図の一例である。なお、前述した図2はブッシュ310の短手方向の断面図(上部電極アセンブリ200の径方向の断面図)を示し、図5はブッシュ310の長手方向の断面図を示す。
【0031】
固定部材300は、ブッシュ(保持部材)310と、円環部材(環状部材)320と、ボルトアセンブリ(ボルト部材)330と、を有する。
【0032】
ブッシュ310は、電極プレート210の凹部211(開口部212、拡大部213)に収容され、天面(係止面)214と係止する部材である。ブッシュ310は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属、ポリイミド等の樹脂で形成される。また、ブッシュ310は、第1部材410と、第2部材420と、を有する。なお、ブッシュ310(第1部材410と、第2部材420)の形状については、図6から図8を用いて後述する。
【0033】
円環部材320は、電極プレート210の凹部211(開口部212)収容され、ブッシュ310(後述する軸部411の外周面)と開口部212の内周面との間に配置される部材である。円環部材320は、例えばポリイミド等の樹脂で形成される。
【0034】
ボルトアセンブリ330は、ボルト331と、弾性部材332と、球面座333と、を有する。ボルト331、弾性部材332及び球面座333は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属で形成される。
【0035】
ボルト331は、雄ねじ部331aと、軸部331bと、頭部331cと、を有する。雄ねじ部331aは、ブッシュ310(後述する軸部411の雌ねじ部411a)と螺合する。
【0036】
弾性部材332は、例えば、皿バネ座金(スプリングワッシャ)であって、ボルト331の頭部331cと球面座333との間で圧縮されるように配置される。なお、弾性部材332の構成はこれに限られるものではなく、皿バネ座金とワッシャとをボルト331の軸方向に複数重ねて構成されていてもよい。
【0037】
球面座333は、ワッシャ334と、ワッシャ335と、を備える。ワッシャ334は、ボルト331の軸部331bが挿通される。ワッシャ334の上面は、弾性部材332と当接する。ワッシャ335は、ボルト331の軸部331bが挿通される。ワッシャ335の下面は、座ぐり穴221の座面222と当接する。また、ワッシャ334の下面には凸球面が形成され、ワッシャ335の上面には凹球面が形成される(図2及び図5の二点鎖線参照)。ワッシャ334の凸球面とワッシャ335の凹球面とは、摺動面となる。
【0038】
このような構成により、ボルト331は、ボルト331の軸方向の向きを球面座333の球面(図2及び図5の二点鎖線参照)に沿って、傾けることができるように、支持されている。即ち、ボルト331は、図2に示すように、上部電極アセンブリ200の径方向に揺動することができる。また、ボルト331は、図5に示すように、上部電極アセンブリ200の周方向に揺動することができる。また、ボルト331は、弾性部材332によって、ボルト331の軸方向に移動可能なように支持されている。
【0039】
なお、ボルト331の軸部331bには、ボルトアセンブリ330をブッシュ310から取り外した際、ボルト331の軸部331bから弾性部材332及び球面座333が脱落することを防止するためのゴムリング(図示せず)等の保持部材が設けられていてもよい。例えば、保持部材の内径は雄ねじ部331aよりも小さく、保持部材の外径はワッシャ335の穴径よりも大きくなっている。これにより、ボルトアセンブリ330を座ぐり穴221に挿入する際や抜去する際の作業性を向上させることができる。
【0040】
次に、ブッシュ310について、図6から図8を用いて更に説明する。図6は、ブッシュ310の第1部材410の斜視図の一例である。(a)は上方から見た斜視図であり、(b)は下方から見た斜視図である。
【0041】
第1部材410は、軸部411と、係止部412と、を有する。
【0042】
軸部411は、円柱形状の部材である。軸部411の中央には、ボルト331の雄ねじ部331aと螺合する雌ねじ部411aが形成されている。また、軸部411の外周面には、係止部412の長手方向と垂直な平面部411bが二面(併せて図8(c)参照)形成されている。また、軸部411の直径よりも平面部411bの二面幅は、短く形成されている。
【0043】
係止部412は、略長円錐台を上下反転した形状を有している。即ち、係止部412は、平面視して、軸部411よりも少なくとも一の方向に拡大して形成され、長手方向及び短手方向を有する長円形状を有している。また、係止部412は、側面視して、上辺が底辺よりも長い略台形形状(図2,5参照)を有している。係止部412の上面は、第2部材420の底面420cと係止する係止面412aとなる。また、係止面412aは、係止部412の長手方向を軸とする凸の円柱面(後述する図8(b)の二点鎖線参照)に形成されている。
【0044】
また、係止部412は、テーパ面412b及び底面412cが形成されている。テーパ面412bは、係止部412の上面(係止面412a)から係止部412の底面412cに向かって窄まるように形成される。底面412cは、係止部412の上面(係止面412a)よりも小さな長円形状に形成される。
【0045】
図7は、ブッシュ310の第2部材420の斜視図の一例である。(a)は上方から見た斜視図であり、(b)は下方から見た斜視図である。
【0046】
第2部材420は、略長円錐台を上下反転した形状を有している。即ち、第2部材420は、平面視して、少なくとも一の方向に拡大して形成され、長手方向及び短手方向を有する長円形状を有している。また、第2部材420は、側面視して、上辺が底辺よりも長い略台形形状(図2,5参照)を有している。第2部材420の上面は、天面214(図4,5参照)と係止する係止面420aとなる。
【0047】
また、第2部材420は、テーパ面420b及び底面420cが形成されている。テーパ面420bは、第2部材420の上面(係止面420a)から第2部材420の底面420cに向かって窄まるように形成される。底面420cは、第2部材420の上面(係止面420a)よりも小さな長円形状に形成される。また、底面420cの短手方向中央は、第2部材420の長手方向を軸とする凹の円柱面(後述する図8(b)の二点鎖線参照)に形成されている。また、底面420cの短手方向両側は、平面となっていてもよい。
【0048】
また、第2部材420の中央には、上面(係止面420a)から底面420cに向かって貫通し、一の方向(第2部材420の短手方向)に延びる略矩形の長穴部421が形成されている。長穴部421には、第1部材410の軸部411が挿通され、係止部412が第2部材420の底面420cと当接する。長穴部421は、一対の平面部421aと、一対の平面部421bと、を有する。一対の平面部421aは、第2部材420の短手方向と垂直な面である。一対の平面部421bは、第2部材420の長手方向と垂直な面である。なお、平面部421aと平面部421bとの角部は、角丸め(フィレット)されていてもよい。
【0049】
一対の平面部421aの幅は、第1部材410の軸部411の直径よりも長く形成されている。一対の平面部421bの幅は、第1部材410の軸部411の直径よりも短く形成され、また、平面部411bの二面幅よりも僅かに長く形成されている。
【0050】
図8は、固定部材300を説明する図の一例である。図8(a)は、固定部材300(ブッシュ310,ボルトアセンブリ330)の斜視図の一例である。図8(b)は、ブッシュ310のB-B断面図の一例である。図8(c)は、ブッシュ310のC-C断面図の一例である。
【0051】
第1部材410の係止部412の長手方向と第2部材420の長手方向とが平行となるようにして、第2部材420の長穴部421に第1部材410の軸部411が挿入され、ブッシュ310を形成する。以下、第1部材410の係止部412の長手方向及び第2部材420の長手方向をブッシュ310の長手方向ともいう。また、第1部材410の係止部412の短手方向及び第2部材420の短手方向をブッシュ310の短手方向ともいう。
【0052】
図8(a)及び図8(b)に示すように、第1部材410の中心と第2部材420の中心とを合わせた際、第1部材410の係止部412と第2部材420とで、上下反転した略長円錐台形状を形成する。
【0053】
また、図8(c)に示すように、長穴部421の一対の平面部421bの幅は、平面部411bの二面幅よりも僅かに長く形成されている。これにより、第1部材410は、第2部材420に対して、軸部411の中心軸を回転軸とする回転が規制される。これにより、ボルト331を回転させる際、第1部材410が共回りすることを係止する。
【0054】
また、図8(b)に示すように、長穴部421の一対の平面部421aの幅は、軸部411の直径よりも長く形成されている。これにより、第1部材410は、第2部材420に対して、ブッシュ310の短手方向(上部電極アセンブリ200の径方向)にスライド可能に構成されている。
【0055】
また、図8(b)に示すように、第1部材410の上面(係止面412a)は、ブッシュ310の長手方向を軸とする凸の円柱面(二点鎖線参照)に形成されている。また、第2部材420の底面420cは、ブッシュ310の長手方向を軸とする凹の円柱面(二点鎖線参照)に形成されている。このような構成により、ブッシュ310は、軸部411の軸方向の向きを円柱面(二点鎖線参照)に沿って、傾けることができる。即ち、軸部411は、上部電極アセンブリ200の径方向に揺動することができる。
【0056】
ここで、プラズマ処理装置1において、基板Wに処理を施す際、プラズマの熱が上部電極アセンブリ200(電極プレート210、保持プレート220)に入熱する。電極プレート210と保持プレート220との材質が異なることにより、電極プレート210と保持プレート220との熱膨張差によって、電極プレート210の凹部(収容部)211の中心と保持プレート220の座ぐり穴221の中心との位置関係がズレるおそれがある。
【0057】
図8(d)に示すように、固定部材300は、ボルトアセンブリ330の球面座333及び第1部材410の係止面412aと第2部材420の底面420cとの円筒面形状によって、ボルト331を傾けて上部電極アセンブリ200を支持することができる。また、固定部材300は、ボルトアセンブリ330の弾性部材332によって、熱膨張量を吸収することができる。また、固定部材300は、第2部材420の長穴部421内で第1部材410の軸部411がブッシュ310の短手方向(上部電極アセンブリ200の径方向)に摺動することで、熱膨張量を吸収することができる。
【0058】
次に、固定部材300を用いて、電極プレート210を保持プレート220に固定する固定方法について、図9及び図5を用いて説明する。図9は、電極プレート210の凹部211にブッシュ310及び円環部材320を取り付ける取り付け方法を説明する断面図の一例である。
【0059】
ここで、電極プレート210の開口部212の直径は、第2部材420(係止面420a)の短手方向長さよりも大きく、第2部材420(係止面420a)の長手方向長さよりも小さくなっている。また、拡大部213の短手方向長さは第2部材420(係止面420a)の短手方向長さよりも大きく、拡大部213の長手方向長さは第2部材420(係止面420a)の長手方向長さよりも大きく、凹部211の拡大部213にブッシュ310の第2部材420及び第1部材410の係止部412が収容可能に形成されている。
【0060】
作業者は、図9(a)に示すように、ブッシュ310の長手方向を傾けた状態で凹部211に挿入し、長手方向の一方の係止面420aが天面214の下に配置するように移動させる。そして、作業者は、ブッシュ310を凹部211内で回転(図9(a)において時計回り)させる。これにより、図9(b)に示すように、凹部211内にブッシュ310を配置する。この状態において、ブッシュ310を上方に引き上げた場合、ブッシュ310の係止面420aが天面214と当接することで、電極プレート210を吊り上げることができる。
【0061】
次に、作業者は、軸部411の外周面と開口部212の内周面との間に円環部材320を挿入する。図9(c)は、円環部材320を挿入した後の図である。これにより、ブッシュ310は、水平方向の移動及び水平方向を回転軸とする回転が規制される。これにより、ブッシュ310が凹部211から抜けることを防止する。
【0062】
次に、作業者は、電極プレート210と保持プレート220とを重ね合わせ、ボルトアセンブリ330を座ぐり穴221に挿入し、雄ねじ部331aと雌ねじ部411aとを螺合させる。これにより、図5に示すように、電極プレート210が保持プレート220に固定される。なお、凹部211内に配置されたブッシュ310は、長円形状の凹部211の拡大部213の内周面に長円形状のブッシュ310の第2部材420が当接することで、垂直方向を回転軸とする回転が規制される。また、第2部材420の長穴部421の平面部421bに第1部材410の軸部411平面部411bが当接することで、垂直方向を回転軸とする回転が規制される。
【0063】
以上、本実施形態に係る固定部材300を用いた電極プレート210と保持プレート220との固定方法によれば、図3に示すように、電極プレート210の径方向及び周方向の複数個所で固定することができるので、電極プレート210と保持プレート220との間に隙間が生じて抜熱性能が低下することを防止することができる。これにより、プラズマ処理空間10s内のプラズマからの入熱が電極プレート210の中心に集中することで、熱応力により電極プレート210が破損することを防止することができる。
【0064】
また、吊り下げ構造とすることにより、電極プレート210と保持プレート220との熱膨張差を吸収することができる。ここで、ボルト331の頭部331cは、弾性部材332及び球面座333を介して、座ぐり穴221の座面222に支持されている。弾性部材332の弾性力及び球面座333によって、ボルト331の傾きが許容される。また、ボルト331の雄ねじ部331aはブッシュ310の雌ねじ部411aと螺合している。第1部材410及び第2部材420によって、ボルト331の傾きが許容される。電極プレート210と保持プレート220との熱膨張差によって、凹部211の中心位置と座ぐり穴221の中心位置とが位置ずれをした場合、ボルト331が傾くことで熱膨張差(位置ずれ)を吸収することができる。
【0065】
以上、プラズマ処理システムの実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 プラズマ処理装置
200 上部電極アセンブリ
210 電極プレート
211 凹部(収容部)
212 開口部
213 拡大部
214 天面(係止面)
220 保持プレート
221 座ぐり穴
222 座面
300 固定部材
310 ブッシュ(保持部材)
320 円環部材(環状部材)
332 弾性部材
330 ボルトアセンブリ(ボルト部材)
331 ボルト
332 弾性部材
333 球面座
410 第1部材
411 軸部
411a 雌ねじ部
411b 平面部
412 係止部
412a 係止面
412b テーパ面
412c 底面
420 第2部材
420a 係止面
420b テーパ面
420c 底面
421 長穴部
421a 平面部
421b 平面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9