(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物並びにそれらの用途
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20240806BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20240806BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240806BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240806BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240806BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240806BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240806BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J11/00
C09J183/05
C09J183/04
C09J4/00
C09J7/38
C09J7/35
B32B27/00 101
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2020563294
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050558
(87)【国際公開番号】W WO2020138055
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018240917
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 一裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119153(JP,A)
【文献】特開2001-081436(JP,A)
【文献】特開2006-274007(JP,A)
【文献】国際公開第2007/055176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08L
C08G
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
(C)
熱可塑性ポリカーボネート樹脂のTgが100~
150℃未満の範囲であるヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性
ポリカーボネート樹脂微粒子、
(D)分子内にR
3SiO
1/2(式中、Rは互いに独立して一価有機基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)及び、SiO
4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂 (A)成分、(B)成分、(D)成分の質量の総和の55質量%~90質量%
を含み、
(B)成分の含有量が、組成物中の全脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5モル以上となる量であり、且つ、
組成物全体に占める固体粒子の含有量が0.50質量%以下であり、
硬化反応前の状態において粘着性を有し、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有する、一液型又は単一の組成物である、硬化性反応性シリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
(D)成分の少なくとも一部が、分子内に(Alk)R’
2SiO
1/2(式中、Alkは互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を表し、R’は互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)、及び、SiO
4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を少なくとも含む硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂である、請求項1に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
組成物を硬化させて得られる厚み200μmの粘着層を、SUS板に対して貼り合わせ、JIS Z0237に準じて180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて測定された粘着力が、0.1gf/inch以上である、請求項1に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物から少なくともなる部材、部品、又は、シート。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる加熱溶融性粘着材。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を150℃未満の温度条件において成型後、150℃以上に加熱して硬化させる工程を含む、請求項6記載の硬化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物からなる粘着材。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる層又は部材を備える、積層体。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物からなる層又は部材を備える、積層体。
【請求項11】
剥離層を備えたシート状部材を少なくとも一部に含む、請求項9又は10記載の積層体。
【請求項12】
表示装置、電子部品又は太陽電池モジュールから選ばれる少なくとも1種である、請求項9又は10記載の積層体。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を80℃以上に加熱して溶融させ、溶融物を成型乃至充填する工程を含む、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を部材間に挟んで積層する工程、及び、前記硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物により前記部材を圧着する工程を含む、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物、並びに、当該組成物又はその硬化物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン材料は耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等の優れた性能を有することから、種々の用途に用いられている。シリコーン材料はプラスチック、金属、ガラス、セラミック、紙、木材等の様々な基材上に形成することができ、用途も日用品、医療用品、電子製品等多岐に渡る。シリコーン材料は通常、オルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られる。特に、加熱によりヒドロシリル化反応を用いて架橋されるシリコーン系粘着剤は広く知られている。ヒドロシリル化反応は室温でも反応が進行するため、ヒドロシリル化反応触媒を添加した直後から系全体が硬化ないしゲル化して取り扱いが困難となる。このため、通常は、ヒドロシリル化反応触媒を硬化反応の直前に液状のシリコーン組成物中に添加して均一に混合しており、また、塗布作業までの取扱作業時間(数時間程度)を確保するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を事前に当該組成物中に添加しておくことが一般的である。しかしながら、ヒドロシリル化反応抑制剤を添加しても、比較的短時間でゲル化や硬化反応が進行するため、長期間の保存は困難である。
【0003】
一方、白金系触媒を熱可塑性樹脂を用いて微粒子化する技術が知られている。たとえば、特許文献1には、白金系触媒含有熱可塑性樹脂微粒子を含有するヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物について開示されている。しかし、特許文献1には粘着性組成物に関しての記載はない。また、特許文献2の実施例等には、白金系触媒を含む熱可塑性樹脂微粒子を用いるシリコーン感圧接着剤が開示されているが、当該シリコーン系感圧接着剤には、チクソ性を付与するためシリカ粒子が相当量使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-231173公報
【文献】特開2001-081436公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーン系粘着剤について、新たな課題を見出した。すなわち、ヒドロシリル化反応は、上記のとおり、触媒添加直後から進行するため、混合後の組成物のポットライフが短く、室温でも比較的短時間で増粘、ゲル化するなど、取扱作業性に問題を抱えている。この問題を解決するために、上記のとおり、ヒドロシリル化反応抑制剤が使用されているが、従来のヒドロシリル化反応抑制剤により得られる保存安定性、取扱作業性は改善の余地がある。また、部分的にでも増粘ないしゲル化した状態で硬化した場合、組成物の架橋状態が不均一になりやすく、最終的な粘着性シートの状態において、本来の粘着性が実現できなくなる場合がある。
【0006】
また、白金系触媒を含む熱可塑性樹脂微粒子を使用すると、ヒドロシリル化反応を比較的長期間抑制することが可能となり、シリコーン系粘着剤の保存安定性及び取扱作業性が改善するが、当該シリコーン系粘着剤にチクソ性付与等のためにシリカ等の固体粒子成分を所定量添加すると最終的に得られる粘着性が低下する場合がある。
【0007】
更に、近年、表示装置等の製造において、部材上の凹凸や間隙を充填して、部材間の仮固定や永久接着を行う、加熱溶融性のシリコーン粘着剤組成物やその成型物であるホットメルト性粘着シートが求められているが、このような加熱溶融性粘着材は、25℃で非流動性であるので、液状のシリコーン組成物と異なり、ヒドロシリル化反応触媒を硬化反応の直前に室温で添加し、機械力で均一に組成物中に分散させることがその性質上、困難である。このため、ヒドロシリル化反応触媒を均一に添加するためには、組成物を加熱溶融する工程が必要となるが、ヒドロシリル化反応は加熱条件下で進行しやすいので、当該ヒドロシリル化反応触媒の添加のための加熱溶融段階で組成物全体の硬化反応が進行しやすく、得られた加熱溶融性粘着材が十分な硬化反応性や成型性を維持できない場合がある。同様の問題は成型時にも発生しうるため、成型した加熱溶融性粘着材(例えば、ホットメルト性粘着シート)においても、数日の保管後に、成型した組成物全体が完全に硬化して硬化反応性や加熱溶融性を失い、加熱溶融性粘着材として使用できない結果となる場合がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、室温で液状又は非流動性(ホットメルト性を含む)であり、単一組成物の形態であっても、その保存安定性、取扱作業性、及び、成型性に優れ、且つ、高温で加熱することにより速やかに硬化して、高い接着強度を得ることが可能な硬化反応性シリコーン粘着剤組成物、及び、圧着により高い接着力が得られるその硬化物を提供することをその目的とする。更に、本発明は、前記硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物の用途である粘着材を提供することを目的とする。同様に、本発明は、前記硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる層を備える積層体及び当該積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、
(A)一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子、
を含み、
(B)成分の含有量が、組成物中の全脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5モル以上となる量であり、且つ、組成物全体に占める固体粒子の含有量が0.50質量%以下である、硬化性反応性シリコーン粘着剤組成物によって達成される。
【0010】
(C)ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子を構成する熱可塑性樹脂のTgが75℃以上であるであることが好ましい。
【0011】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、(D)分子内にR3SiO1/2(式中、Rは互いに独立して一価有機基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)及び、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂を更に含むことが好ましい。
【0012】
(D)成分の少なくとも一部が、分子内に(Alk)R’2SiO1/2(式中、Alkは互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を表し、R’は互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)、及び、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を少なくとも含む硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂であることが好ましい。
【0013】
(D)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和の0.1質量%から90質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、(E)不飽和脂肪族炭化水素を更に含んでもよい。
【0015】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、(F)硬化遅延剤を更に含んでもよい。
【0016】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、(G)溶剤を更に含んでもよい。
【0017】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、一液型又は単一の組成物であることが好ましい。
【0018】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、組成物全体として、25℃において流動性であってよい。
【0019】
上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、組成物を硬化させて得られる厚み50μmの粘着層を、SUS板に対して貼り合わせ、JIS Z0237に準じて180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて測定された粘着力が、0.1gf/inch以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、組成物全体として、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有してもよい。更に、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、硬化反応前の状態において、当該組成物が粘着性を有するものであってよい。
【0021】
上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、組成物を硬化させて得られる厚み200μmの粘着層を、SUS板に対して貼り合わせ、JIS Z0237に準じて180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて測定された粘着力が、0.1gf/inch以上であることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物(好適には、組成物全体として、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有するもの)から、少なくともなる部材、部品、又は、シートにも関する。
【0023】
ここで、非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点が、25℃~150℃までの間にある状態を示す。
【0024】
同様に、本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物(好適には、組成物全体として、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有するもの)からなる加熱溶融性粘着材にも関する。
【0025】
本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物にも関する。
【0026】
本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を150℃未満の温度条件において塗布又は成型後 、150℃以上に加熱して硬化させる工程を含む、前記硬化物の製造方法にも関する。
【0027】
本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物からなる粘着材にも関する。
【0028】
本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる層又は部材を備える、積層体にも関する。同様に、本発明は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物からなる層又は部材を備える、積層体にも関する。
【0029】
これらの積層体は、剥離層を備えたシート状部材を少なくとも一部に含むものであってよく、例えば、上記の組成物又はその硬化物から少なくともなる部材、部品又はシートは、剥離層を備えたシート状部材と対向するように配置され、使用時に剥離層から引き剥がすことで、上記の組成物又はその硬化物を粘着材として使用する、剥離性の積層体であってよい。
【0030】
また、これらの積層体は、表示装置、電子部品又は太陽電池モジュールから選ばれる少なくとも1種であってよく、例えば、液晶ディスプレイ、又は、有機ELディスプレイである表示装置であってよい。また、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物は、LED、マイクロLED等の電子部品の封止材として用いられてもよい。
【0031】
好適には、本発明の積層体は、少なくとも1つの基板と共に各種の物品に使用することができる。例えば、前記基板は、画像表示パネル、タッチパネル、光学フィルム、又は、表面若しくは裏面保護シートであってもよい。この場合、前記物品は表示装置(ディスプレイ)であることが好ましい。そして、前記表示装置が、液晶ディスプレイ、又は、有機ELディスプレイであることが更に好ましい。また、前記基板は、太陽電池セル、封止材層、又は、表面若しくは裏面保護シートであってもよい。この場合、前記物品は太陽電池モジュールであることが好ましい。
【0032】
本発明は、これらの積層体の製造方法にも関する。これらの製造方法で得られる積層体は、剥離性粘着材シート等の中間材であってもよく、粘着材層を備えた表示装置等の最終製品又はその前駆体であってもよい。
【0033】
本発明の積層体の製造方法は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を80℃以上に加熱して溶融させ、溶融物を成型乃至充填する工程を含むものであってよい。
【0034】
本発明の積層体の製造方法は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を少なくとも1つの部材上又は部材間に配置した後又は配置と同時に、当該硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を150℃以上に加熱する工程を含むものであってよい。
【0035】
本発明の積層体の製造方法は、上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を部材間に挟んで積層する工程、及び、当該硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物により当該部材を圧着する工程を含むものであってよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、室温で液状又は非流動性(ホットメルト性を含む)であり、単一組成物の形態であっても、その保存安定性、取扱作業性、及び、成型性に優れ、且つ、高温で加熱することにより速やかに硬化して、高い接着強度を得ることが可能な硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を提供することができる。また、圧着により高い接着力が得られるその硬化物を提供することができる。更に、本発明により、前記硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物の用途である粘着材を提供でき、且つ、前記硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる層を備える積層体及び当該積層体の製造方法を提供することができる。
【0037】
特に、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物が液状組成物の形態である場合、ヒドロシリル化反応触媒を含む一液型組成物であっても短時間で増粘乃至ゲル化することがなく、長期間保管することができるので、貯蔵安定性及び保存安定性に優れ、且つ、取扱作業性に優れる。更に、50℃程度の比較的高温となる保管条件であっても、短期間で増粘乃至ゲル化しないため、高温条件における保存安定性及び取扱作業性に優れる。
【0038】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を使用することで、上記の一液型組成物が設計可能であるが、このような組成物は、使用時に成分を混合する必要がないので、ユーザーにおける組成物の調製工程が不要であり、且つ、当該混合の際に混合・分散不良の問題を生じることがないという利点を有する。更に、上記の一液型組成物を使用することで、仕込みミス等で成分量比の誤りに起因する、工程上のエラーを本質的に回避できるため、簡易なプロセスで安定的に使用することができ、製品としての取扱作業性、工業的生産性及び得られる接着剤の品質を大幅に改善できる利点がある。
【0039】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は硬化により優れた接着力を備える感圧接着層を形成することができ、また、被着体から当該感圧接着層を剥離する際に当該感圧接着層の凝集破壊が生じにくい。好ましくは、前記感圧接着層は被着体から界面剥離可能である。
【0040】
また、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有し、加熱溶融性を備えてもよい。本発明の組成物において、ヒドロシリル化触媒の添加乃至組成物の成型時の加熱溶融によって硬化反応が進行することが抑制されるため、本発明により、十分な硬化反応性や成型性を有する、加熱溶融性の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその成型物を提供することができる。したがって、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は加熱により柔軟化乃至流動可能である。これにより、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は溶融状態で部材上の凹凸に良好に追従して段差を充填することができ、ギャップフィル性に優れている。また、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は加熱溶融性を有することができるので、溶融状態の流動体をシート状等の所望の形状に成型することができる。硬化反応前の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなるシート等の成型物はそれ自体が加熱溶融性、粘着性及び硬化反応性を有しているので、粘着力を利用して所望の部位に配置して加熱溶融することで、その流動物を基材の凹凸に流入せしめてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態の積層体を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の積層体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】加熱溶融工程を含む積層体の製造方法の概念図である。
【
図4】本発明の物品の一実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
【
図5】本発明の物品の一実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
【
図6】本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
【
図7】本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す分解斜視図である。
【
図8】本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明者らは鋭意検討の結果、(A)一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを所定の条件で組み合わせて含む硬化反応性シリコーン粘着剤組成物に(C)白金系触媒含有熱可塑性樹脂微粒子を配合し、且つ、組成物全体に占める固体粒子の含有量が0.50質量%以下である硬化性反応性シリコーン粘着剤組成物によって単一組成物の形態であっても比較的短時間で増粘することがなく、貯蔵安定性が高く、また、粘着特性に優れる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を提供可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0043】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、25℃において流動性を有する液状組成物であってもよく、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有する、ホットメルト性の組成物であってもよい。ホットメルト性の組成物として設計する場合、組成物全体が、加熱により柔軟化乃至流動可能である。柔軟化乃至流動化する温度は、50~150℃であるのが好ましく、60℃~130℃がより好ましく、80℃~120℃が更により好ましい。
【0044】
以下、本発明の各態様について、更に詳細に説明する。
【0045】
まず、本発明に係る硬化反応性シリコーン粘着剤組成物について説明する。なお、本明細書中において「質量%」は「重量%」と同義であり、その基準は、特記しない限り、本発明の組成物等の全質量(全重量)である。
【0046】
[硬化反応性シリコーン粘着剤組成物]
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子、
を含み、
(B)成分の含有量が、組成物中の全脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5モル以上となる量であり、且つ、組成物全体に占める固体粒子の含有量が0.50質量%以下である。更に、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、(D)分子内にR3SiO1/2(式中、Rは互いに独立して一価有機基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)及び、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂を含んでもよい。
【0047】
(A)成分
(A)成分は本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の主要な成分の1つである。(A)成分は単一のオルガノポリシロキサンであってもよく、2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物でもよい。
(A)成分を使用することにより、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物は、十分な粘着力を備え、且つ、その接着モードにおいて、被着体からの剥離時に凝集破壊が生じにくい粘着材層を形成することもできる。なお、被着体との永久接着が必要であれば、剥離時に粘着材層の凝集破壊が生じる高い接着力を備える組成物も設計可能である。
【0048】
(A)成分は、一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。特に、シロキサン重合度が80以上であることが好ましい。重合度が前記以下であると、粘着力を得るのが困難になる。
【0049】
脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基としては、アルケニル基、アルケニルオキシアルキル基、アクリロキシアルキル基又はメタクリロキシアルキル基であることが好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。ビニル基が特に好ましい。また、これらの基の一部はハロゲン原子等によって置換されていてもよい。
【0050】
(B)成分が直鎖状の場合は、脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基は分子鎖末端及び分子鎖側鎖のいずれに存在してもよく、或いは、これらの両方に存在してもよい。
【0051】
脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基はケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0052】
脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基の含有量は、(A)成分の重量に対して0.001~10重量%が好ましく、0.005~5重量%が好ましい。
【0053】
(A)成分は、脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基に加えて脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基を有してもよい。脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基は、既述した、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の他にシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルスチリル基及び2-フェニルエチル基等が挙げられる。脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基はアルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。また、これらの基の一部はハロゲン原子等によって置換されていてもよい。
【0054】
(A)成分としては、下記平均組成式(1)を有するものが好ましい。
【0055】
R1
aR2
bSiO(4-a-b)/2 (1)
【0056】
平均組成式(1)中、R1は炭素数2~12のアルケニル基である。具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が挙げられ、これらのうちでもビニル基、アリル基又はヘキセニル基が好ましい。R2は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価飽和炭化水素基、水酸基及びアルコキシ基から選択される基である。炭素数1~12の一価飽和炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい。炭素数1~12の一価飽和炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基等のアラルキル基、及び、これらのアリール基又はアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
【0057】
a及びbは次の条件:1≦a+b≦3及び0.0001≦a/(a+b)≦0.33を満たす数であり、好ましくは、次の条件:1.5≦a+b≦2.5及び0.0002≦a/(a+b)≦0.2を満たす数である。これは、a+bが1以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、一方a+bが3以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからである。また、a/(a+b)が0.0001以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、一方0.33以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0058】
このような(A)成分としては、一般式:
R6
3SiO(R6
2SiO)m1SiR6
3
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。ただし、(A)成分は、その一部に、R6SiO3/2又はSiO4/2で表される分岐シロキサン単位を含んでよく、分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよい。
【0059】
式中、各R6は独立に、置換又は非置換の、一価炭化水素基であり、既述した一価不飽和炭化水素基及び一価飽和炭化水素基が例示される。但し、一分子中、少なくとも2個のR6は一価不飽和炭化水素基、好ましくはアルケニル基、より好ましくはビニル基である。前記平均組成式(1)を有するオルガノポリシロキサンの室温における性状はオイル状又は生ゴム状であってもよく、(A)成分の粘度は25℃において50mPa・s以上、特に100mPa・s以上であることが好ましい。
【0060】
(B)成分
(B)成分は本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の主要な成分の1つであり、架橋剤として機能する。(B)成分は単一のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物でもよい。
【0061】
(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分は、(A)成分、或いは、後述する(E)成分が脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を有する場合は(A)成分と(E)成分の脂肪族不飽和炭素-炭素結合に付加するヒドロシリル基(-SiH)を含有する。
【0062】
(B)成分としては、下記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0063】
HcR3
dSiO(4-c-d)/2 (2)
【0064】
平均組成式(2)中、R3は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基、ヒドロキシル基及びアルコキシ基から選択される基である。炭素数1~12の一価炭化水素基は、その水素原子の一部がハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい。炭素数1~12の一価炭化水素基は、の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基等のアラルキル基、及び、これらのアリール基又はアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、オクタノキシ基等が挙げられる。
【0065】
c及びdは次の条件:1≦c+d≦3及び0.002≦c/(c+d)≦0.5を満たす数であり、好ましくは、次の条件:1.5≦c+d≦2.5及び0.01≦c/(c+d)≦0.5を満たす数である。これは、c+dが1以上であると、硬化物の柔軟性が高くなるからであり、一方3以下であると、硬化物の機械強度が高くなるからである。また、c/(c+d)が1.5以上であると、硬化物の機械強度が高くなるからであり、一方2.5以下であると、硬化物の柔軟性が高くなるからである。
【0066】
前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンの粘度は限定されないが、25℃における粘度が0.5~10,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、1~1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0067】
前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1-(3-グリシドキシプロピル)-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジ(3-グリシドキシプロピル)-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-(3-グリシドキシプロピル)-5-トリメトキシシリルエチル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、及び、これらの2種以上の混合物が例示される。
【0068】
前記平均組成式(2)を有するオルガノポリシロキサンとして、更に次のようなオルガノポリシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、m2は1~100の整数であり、n2は1~50の整数であり、b2、c2、d2、e2はそれぞれ正の数であり、ただし、一分子中のb2、c2、d2、e2の合計は1である。
HMe2SiO(Ph2SiO)m2SiMe2H
HMePhSiO(Ph2SiO)m2SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m2(MePhSiO)n2SiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m2(Me2SiO)n2SiMePhH
(HMe2SiO1/2)b2(PhSiO3/2)c2
(HMePhSiO1/2)b2(PhSiO3/2)c2
(HMePhSiO1/2)b2(HMe2SiO1/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMe2SiO1/2)b2(Ph2SiO2/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMePhSiO1/2)b2(Ph2SiO2/2)c2(PhSiO3/2)d2
(HMePhSiO1/2)b2(HMe2SiO1/2)c2(Ph2SiO2/2)d2(PhSiO3/2)e2
【0069】
(B)成分は、更に下記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0070】
(HR4
2SiO1/2)e(R4
3SiO1/2)f(HR4SiO2/2)g(R4
2SiO2/2)h(HSiO3/2)i(R4SiO3/2)j(SiO4/2)k(R5O1/2)l (3)
【0071】
前記平均組成式(3)中、R4は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価飽和炭化水素基、ヒドロキシル基及びアルコキシ基から選択される基である。炭素数1~12の一価飽和炭化水素基、ヒドロキシル基及びアルコキシ基については、前記と同様である。R5は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が例示される。e,f、g、h、i、j、k及びlは次の条件:e+f+g+h+i+j+k=1、0≦l≦0.1、0.01≦e+g+i≦0.2、0≦e≦0.6、0≦g≦0.6、0≦i≦0.4、0.01≦e+f≦0.8、0.01≦g+h≦0.8、0≦i+j≦0.6を満たす数である。
【0072】
なお、前記の「HR4
2SiO1/2」、「R4
3SiO1/2」、「HR4SiO2/2」、「R4
2SiO2/2」、「HSiO3/2」、「R4SiO3/2」及び「SiO4/2」の各構成単位は、それぞれMH単位,M単位、DH単位、D単位、TH単位、T単位、Q単位と呼ばれるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの部分構造の単位であり、「R5O1/2」は、D単位、DH単位、T単位、TH単位、又はQ単位中の酸素原子と結合する基であり、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水酸基(Si―OH)或いはオルガノポリシロキサン製造中に未反応で残った珪素原子結合アルコキシ基を意味する。MH単位は主にオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖末端に存在し、DH単位はオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖中に存在する。
【0073】
(B)成分の含有量は、組成物中の全脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5モル以上となる量であり、組成物中の全脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5~100モルとなる量が好ましく、0.5~60モルとなる量がより好ましく、0.5~40モルとなる量が更により好ましい。
【0074】
(C)成分
(C)成分はヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子である。(C)成分は、本発明の組成物のヒドロシリル化反応による硬化を促進するための触媒であり、白金系触媒等のヒドロシリル化反応用触媒が熱可塑性樹脂の中に溶解又は分散している微粒子、或いは、熱可塑性樹脂の殻の中に白金系触媒等のヒドロシリル化反応用触媒が核として含有されている構造のマイクロカプセル微粒子のいずれであってもよい。(C)成分中に含まれるヒドロシリル化反応用触媒は単一種類であってもよく、2種以上のヒドロシリル化反応用触媒の混合物でもよい。
【0075】
(C)成分中のヒドロシリル化反応用触媒の例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、イリジウム系触媒、ルテニウム系触媒及び鉄系触媒が挙げられ、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示され、特に白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0076】
(C)成分中のヒドロシリル化反応用触媒は比較的低温でも活性を示すものが好ましい。具体的には、0~200℃の温度範囲において組成物中で活性を示し、ヒドロシリル化反応を促進するものが好ましい。
【0077】
(C)成分を構成する、熱可塑性樹脂は白金系触媒等のヒドロシリル化反応用触媒を包摂する壁材であり、上記の微粒子又はマイクロカプセル微粒子の形態をとることで、低温下ではヒドロシリル化反応用触媒が当該壁材により、系中に分散しないように不活性化されているが、高温下では壁材である熱可塑性樹脂が溶融して、ヒドロシリル化反応用触媒が系中に分散されて、活性化し、ヒドロシリル化反応に基づく硬化反応が進行する。
【0078】
熱可塑性樹脂は白金系触媒等のヒドロシリル化反応用触媒を少なくとも貯蔵中には実質的に透過させず、且つ、本発明の組成物中のオルガノポリシロキサン等の成分に実質的に溶解しなければ特に限定されないが、好ましくは、シリコーン樹脂、ポリシラン樹脂、アクリル樹脂、メチルセルロース、ポリカーボネート樹脂が例示される。これらの熱可塑性樹脂はガラス転移点(Tg)が75℃以上であることが好ましく、更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは100~250℃未満の範囲である。このような熱可塑性樹脂は、単独でも複数でもよいが、本発明の(C)成分は、その少なくとも一部がポリカーボネート樹脂であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移点が75℃未満であると、本発明の組成物の貯蔵安定性が著しく低下する傾向があり、また、ホットメルト形状に触媒を添加する際の加熱溶融状態時や、本組成物を加熱溶融成形する際に、硬化が進行してしまう場合がある。なお、熱可塑性樹脂のガラス転移点が250℃以上であると、本発明の組成物を硬化させるために、全体を250℃を超える高温で加熱しないと、十分な加熱硬化速度が得られなくなる傾向があり、工業生産の効率の見地からは、(C)成分を構成する熱可塑性樹脂は、そのガラス転移点は250℃未満であることが好ましい。また、本発明組成物を150℃で硬化させたい場合には、(C)成分を構成する熱可塑性樹脂として、150℃未満のガラス転移点を有する材料を選択することが可能であり、且つ、実施上、好ましい。
【0079】
ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径は限定されないが、好ましくは0.1~500μmの範囲内であり、より好ましくは0.3~100μmの範囲内である。これは、平均粒子径が上記範囲の下限未満であるヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子を調製することが困難であるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、硬化性シリコーンレジン組成物中への分散性が低下するからである。
【0080】
ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子を調製する方法は限定されず、従来公知の界面重合法やin-situ重合法などの化学的方法、コアセルベーション法や液中乾燥法などの物理的・機械的方法が例示される。特に、狭い粒径分布のマイクロカプセル微粒子が比較的容易に得られることから、液中乾燥法と気相乾燥法が望ましい。これらの方法によって得られた微粒子は、そのまま用いることもできるが、これを適切な洗浄溶剤によって洗浄してその表面に付着した白金系触媒を除去することが、貯蔵安定性に優れた硬化性シリコーンレジン組成物を得るためには望ましい。ここで適切な洗浄溶剤とは、熱可塑性樹脂を溶解しないが、ヒドロシリル化反応用触媒を溶解する性質を有するものである。このような洗浄溶剤として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、ヘキサメチルジシロキサンなどの低分子量オルガノポリシロキサン類などが挙げられる。ヒドロシリル化反応用触媒の熱可塑性樹脂に対する比率は、粒状物の製造方法により大きく変わるので、特に限定することはできないが、熱可塑性樹脂に対するヒドロシリル化反応用触媒の含有量が0.01質量%以上となることが好ましい。
【0081】
(C)成分の存在により、本発明の組成物は、低温における貯蔵安定性が高まり、且つ、加温により他の成分を軟化乃至溶融状態としても、ヒドロシリル化反応用触媒の活性化を抑制し、硬化反応を進行させることなく、組成物中に(C)成分を均一に分散し、且つ、組成物を成型することができる。一方、高温で加熱することによりヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子が溶融し、微粒子から放出されるヒドロシリル化反応用触媒がヒドロシリル化反応を促進するので、急速な硬化が可能である。このような(C)成分を選択的に利用することで、単一組成物の形態であっても、その保存安定性、取扱作業性、及び、成型性に優れる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を設計可能である。
【0082】
(C)成分の含有量は特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化反応用触媒が白金系触媒の場合は、本発明の組成物に対して微粒子中の白金金属が質量単位で0.1~200ppmの範囲内となる量であり、0.1~150ppm、0.1~100ppmの範囲内であってもよい。
【0083】
(D)成分
本発明の組成物は、(D)分子内にR3SiO1/2(式中、Rは互いに独立して一価有機基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)及び、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂を更に含むことができる。(D)成分は単一のオルガノポリシロキサン樹脂であってもよく、2種以上のオルガノポリシロキサン樹脂の混合物でもよい。
【0084】
(D)成分は、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物に、感圧接着性を付与する成分であり、各種の基体又は基板への高密着力を付与することができる。(D)成分は、分子内に(a)R3SiO1/2(式中、Rは、互いに独立して一価有機基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)、及び、(b)SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含むオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0085】
(a)M単位と(b)Q単位のモル比はM単位:Q単位=0.50:1.00~1.50:1.00の範囲にあることが好ましく、0.55:1.00~1.20:1.00の範囲がより好ましく、0.60:1.00~1.10:1.00が更により好ましい。上記モル比は、29Si核磁気共鳴によって容易に測定することができる。
【0086】
(D)成分は一般単位式:(R3SiO1/2)a(SiO4/2)b(式中、Rは互いに独立して一価有機基であり、a及びbはそれぞれ正数であり、a+b=1、a/b=0.5~1.5である)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂であることが好ましい。
【0087】
(D)成分は(a)M単位と(b)Q単位のみから構成されてもよいが、R2SiO2/2単位(D単位)、及び/又は、RSiO3/2単位(T単位)を含んでもよい。なお、式中、Rは、互いに独立して一価有機基を表す。(E)成分中の(a)M単位と(b)Q単位の合計含有量は好ましくは50重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上であり、特に好ましくは100重量%である。
【0088】
一価有機基は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基、及び、脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基に分けることができる。
【0089】
脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基、及び、脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基には、それぞれ、一価不飽和炭化水素基及び酸素原子含有一価不飽和炭化水素基、並びに、一価飽和炭化水素基及び酸素原子含有一価飽和炭化水素基が含まれる。
【0090】
一価不飽和又は飽和炭化水素基としては、例えば、炭素原子数2~12の、好ましくは炭素原子数2~8の、より好ましくは炭素原子数2~6の、置換若しくは非置換の、一価不飽和炭化水素基、並びに、炭素原子数1~12の、置換若しくは非置換の、一価飽和炭化水素基が挙げられる。
【0091】
炭素原子数2~12の、好ましくは炭素原子数2~8の、より好ましくは炭素原子数2~6の、非置換一価不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。炭素原子数2~12の、好ましくは炭素原子数2~8の、より好ましくは炭素原子数2~6の、置換一価不飽和炭化水素基としては、例えば、これらの一価不飽和炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)等によって置換されたものが挙げられる。
【0092】
炭素原子数1~12の非置換一価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、α-メチルスチリル基及び2-フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。炭素原子数1~12の置換一価飽和炭化水素基としては、例えば、これらの一価不飽和炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)等によって置換されたものが挙げられる。具体的には、フッ化一価飽和炭化水素基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロルブチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等のパーフロロアルキル基;塩素化一価飽和炭化水素基、例えば3-クロロプロピル基のようなクロロアルキル基、ジクロロフェニル基のようなクロロフェニル基が挙げられる。
【0093】
一価飽和炭化水素基としては、炭素原子数1~12の置換若しくは非置換のアルキル基が好ましい。炭素原子数1~12の置換若しくは非置換のアルキル基としてはメチル基が好ましい。一価不飽和炭化水素基としては、炭素原子数2~12の置換若しくは非置換のアルケニル基が好ましい。炭素原子数2~12の置換若しくは非置換のアルケニル基としてはビニル基が好ましい。
【0094】
酸素原子含有一価不飽和又は飽和炭化水素基としては、例えば、炭素原子数2~12の、置換若しくは非置換の、酸素原子含有一価不飽和炭化水素基、並びに、炭素原子数1~12の、置換若しくは非置換の、酸素原子含有一価飽和炭化水素基が挙げられる。
【0095】
炭素原子数2~12の、置換若しくは非置換の酸素原子含有一価不飽和炭化水素基としては、例えば、アルケニルオキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、メタクリロキシアルキル基等が挙げられる。
【0096】
アルケニルオキシアルキル基としては、例えば、アリルオキシメチル基、3-アリルオキシプロピル基等が挙げられる。アクリロキシアルキル基としては、例えば、アクリロキシメチル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。メタクリロキシアルキル基としては、例えば、メタクリロキシメチル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。
【0097】
炭素原子数1~12の、置換若しくは非置換の、酸素原子含有一価飽和炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~12のアルコキシ基等が挙げられる。
【0098】
炭素原子数1~12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0099】
これらの基の一部はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)等によって置換されていてもよい。
【0100】
(D)成分のオルガノポリシロキサン樹脂には、ケイ素原子に結合した水酸基が少量含まれていてもよい。水酸基の含有量は、全ケイ素原子1モルに対して、0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下が更に好ましい。
【0101】
なお、(D)成分のオルガノポリシロキサン樹脂が、メトキシ基、エトキシ基等のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含む場合、その含有量は、全ケイ素原子1モルに対して、0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下が更に好ましい。
【0102】
((D1)硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂)
本発明の一態様では、(D)成分の少なくとも一部が、(D1)分子内に(Alk)R’2SiO1/2(式中、Alkは互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基を表し、R’は互いに独立して脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基を表す)で表されるシロキサン単位(M単位)、及び、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を少なくとも含む硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂であってもよい。
【0103】
上記の態様では、Alkである脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基は、既述した、アルケニル基、アルケニルオキシアルキル基、アクリロキシアルキル基又はメタクリロキシアルキル基であることが好ましい。また、R’である脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基は、既述した、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましい。また、これらの基の一部はハロゲン原子等によって置換されていてもよい。工業的見地からは、Alkである脂肪族不飽和炭素-炭素結合含有基は、ビニル基、アリル基又はヘキセニル基であってよく、R’である脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基はメチル基、フェニル基等であることが好ましい。
【0104】
上記の態様において、(D1)硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂以外の(D)成分が存在する場合は当該(D)成分は非硬化反応性であることが好ましい。この場合、非硬化反応性(D)成分のRは既述した脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基であることが好ましく、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であることがより好ましい。また、これらの基の一部はハロゲン原子等によって置換されていてもよい。工業的見地からは、Rである脂肪族不飽和炭素-炭素結合不含基はメチル基、フェニル基等であることが好ましい。
【0105】
(D)成分に占める(D1)硬化反応性オルガノポリシロキサン樹脂の割合は特に限定されるものではないが、本発明の組成物又はその硬化物に粘着材として適度な硬さを実現するためには、(D)成分全体を100質量%とした場合、(D)成分の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更により好ましい。好適には、(D)成分中に占める(D1)成分の含有量は、0~20質量%の範囲であり、0~15質量%の範囲が特に好ましく、本発明の組成物又はその硬化物からなる粘着材が、表示装置や太陽電池モジュール等の接着層として適度な硬さと柔軟性を備えることができる。
【0106】
このような(D)成分として、例えば、
(Me3SiO1/2)0.45(SiO4/2)0.55(HO1/2)0.05
(Me3SiO1/2)0.40(SiO4/2)0.60(HO1/2)0.10
(Me3SiO1/2)0.52(SiO4/2)0.48(HO1/2)0.01
(Me3SiO1/2)0.40(Me2ViSiO1/2)0.05 (SiO4/2)0.55(HO1/2)0.05
(Me3SiO1/2)0.45(SiO4/2)0.55(MeO1/2)0.10
(Me3SiO1/2)0.25(Me2PhSiO1/2)0.20(SiO4/2)0.55(HO1/2)0.05
(Me3SiO1/2)0.40(Me2SiO2/2)0.05(SiO4/2)0.55(HO1/2)0.05
(Me3SiO1/2)0.40(MeSiO3/2)0.05(SiO4/2)0.55(HO1/2)0.05
(Me3SiO1/2)0.40(Me2SiO2/2)0.05(MeSiO3/2)0.05(SiO4/2)0.50(HO1/2)0.05
(Me:メチル基、Ph:フェニル基、Vi:ビニル基、MeO:メトキシ基、HO:ケイ素原子結合水酸基。なお、ケイ素原子に対する水酸基の相対量を表すために、ケイ素原子含有単位の添字の合計量を1としており、(HO)1/2単位の添字が当該相対量を示す)
を挙げることができる。
【0107】
(D)成分は、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物に感圧接着性を付与し、且つ、加熱溶融性を付与する成分であるので、その配合量は所望により選択することができる。例えば、(D)成分は、(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和に対して、0.1質量%から90質量%の範囲であってよい。なお、(D)成分の配合量が前記上限を超えると、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物が硬くなりすぎるため、特に粘着材としての使用に適さない場合がある。
【0108】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物が液状であり、その硬化物が微粘着性~中程度の粘着力を有するように設計する場合には、(D)成分は、(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和に対して、0.1質量%から40質量%の範囲であることが好ましく、0.1質量%から30質量%の範囲であってよい。ただし、微粘着性の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物においては、(D)成分の配合量を、上記の(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和に対して、0.1質量%以下に設計してもよく、且つ、好ましい。(D)成分をまったく含まなくても、硬化物は微粘着性の粘着層として使用できるためである。
【0109】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物が、ある程度強い粘着力と感圧接着性を有するように設計する場合、(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和に対して、35質量%~90質量%の範囲であることが好ましい。一方、(E)成分の配合量が90質量%を超えると、組成物全体のガラス転移点(Tg)が増大し、組成物全体が過度に硬質となって、粘着剤としての取扱作業性が困難になる場合があり、好ましくない。
【0110】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物に十分な粘着力と加熱溶融性を付与し、組成物全体として、25℃において非流動性であり、25℃~150℃までの間に軟化点を有するように設計する場合には、(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の質量の総和に対して、55質量%~90質量%の範囲であることが好ましく、60~85質量%の範囲が特に好ましい。なお、25℃において非流動性の組成物を調製する場合、後述する溶媒を使用しないことが好ましい。(D)成分の配合量が上記範囲内であれば、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、硬化反応前の状態において、仮固定を行う程度であれば十分な粘着力を有し、且つ、硬化反応により部材間の永久接着が可能な程度の接着力を有する硬化物を与えるように設計することが可能である。
【0111】
(E)成分
本発明の組成物は、(E)不飽和脂肪族炭化水素を更に含んでもよい。不飽和脂肪族炭化水素は、ヒドロシリル化反応等に関与する脂肪族不飽和結合を含有するため、硬化反応時の架橋成分としても、前記の溶媒としても機能する、反応性稀釈剤として利用することができる。より具体的には、不飽和脂肪族炭化水素は、炭素原子数8~18の炭素原子を有し、分子内に少なくとも1つの脂肪族不飽和部分を有する炭化水素化合物である。当該不飽和脂肪族炭化水素は直鎖又は分岐鎖状であってよく、該脂肪族不飽和部分は途中にあっても、又は、末端にあってもよく、分子内に2以上の脂肪族不飽和部分である炭素-炭素二重結合を有することが特に好ましい。このような不飽和脂肪族炭化水素は、分子鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数8~18のアルケン、好適には、炭素原子数12~14のアルケンを含み、特に、反応性稀釈剤として使用する場合、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、及び、オクタデセンが例示され、テトラデセンが好ましく例示される。
【0112】
(E)成分の使用量は、特に制限されるものではないが、上記の(A)~(D)成分の和を100質量部とした場合、0.1~10質量部、好適には0.1~7.5質量部の範囲である。
【0113】
(F)成分
本発明の組成物は(F)硬化遅延剤を更に含むことができる。(F)硬化遅延剤は、ヒドロシリル化反応を抑制し、硬化反応を遅らせることができる。(F)成分は単一の硬化遅延剤であってもよく、2種以上の硬化遅延剤の混合物でもよい。なお、本発明は前記の(C)成分を使用しているので、(F)成分を用いることなく、実用上十分に長い保存安定性及び取扱時のポットライフを実現できる利点があるが、(F)硬化遅延剤を併用することで、一液型組成物として、より安定した保存安定性等を実現できる場合がある。
【0114】
(F)硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシラン;ベンゾトリアゾール:1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等のホスフィン系化合物が例示される。
【0115】
(F)硬化遅延剤を含む場合、本発明の組成物はポットライフが更に向上し、取扱性をより高めることができる。
【0116】
(F)硬化遅延剤の含有量は特に限定されないが、例えば、組成物中のヒドロシリル化反応用金属系触媒中の金属原子1モルに対して、0.01~1,000モルとなる量であることが好ましくは、特に、0.1~500モルとなる量であることが好ましい。なお、本発明においては、前記の(C)成分の使用により、単一組成物(たとえば、一液型組成物等)の形態であっても、(E)硬化遅延剤の含有量は、組成物中のヒドロシリル化反応用金属系触媒中の金属原子1モルに対して、0.1モル未満であってもよく、且つ、好ましい。
【0117】
(固体粒子の含有量)
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、それ自体又はその硬化物の粘着力を改善する見地から、組成物中の固体粒子の含有量が0.50質量%未満であることを特徴とする。特に、組成物中の固形分((A)~(D)成分を含み、硬化反応により不揮発性の硬化物を形成する成分)対する固体粒子の含有量が0.50質量%未満であることが好ましく、0.40質量%以下、0.30質量%以下であることが特に好ましい。固体粒子成分の含有量が前記上限未満であると、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物の粘着力を維持することができる。
【0118】
本発明における「固体粒子」には、上記の(C)成分であるヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子及びその構成成分は含まれない。本発明における固体粒子とは、室温で固体である粒子成分であって、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末、蛍光体、顔料等が例示される。これらの成分を多量含有すると、硬化物の粘着力が著しく悪化し、十分な粘着力を実現できなくなる場合がある。
【0119】
(G)成分
本発明の組成物は、前記の通り、無溶媒型の組成物や加熱溶融型の組成物として設計することも可能であるが、本発明の技術的効果を損なわない範囲で、任意で、(G)溶剤を含むものであってよい。溶剤の使用により、組成物全体の粘度及びチキソトロピー性を低下させて、取扱作業性や塗工性を改善できるほか、少量の有機溶剤の使用により、組成物の基材に対する濡れ性を改善できる場合があり、本発明にかかる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を様々なプロセスに適用できるように調製することができる。特に、本発明の組成物を薄膜状にしたり、印刷により所望のパターンに塗布したりするために、本発明の組成物に溶剤を加えて使用することができ、且つ、好ましい。
【0120】
本発明において、(G)溶剤を選択する際には、(C)成分を構成する熱可塑性樹脂を溶解したり、壁材中に浸透してヒドロシリル化反応触媒を溶出させたりしない溶剤であることが必要である。(C)成分を構成する熱可塑性樹脂に対して溶解性、浸透性が高い溶剤を使用すると、本発明の技術的効果が十分に発揮できなくなる場合がある。
【0121】
一方、(C)成分を構成する熱可塑性樹脂が当該溶剤に対して不溶性であれば、(G)溶剤は、本発明の組成物を溶解し、均一な溶液を与えるものであれば限定されない。たとえば、低分子シロキサン溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。特に、好適には、有機溶媒の使用が好ましく、ノルマルヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエステル類が例示される。
【0122】
(G)溶剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記の(A)~(F)成分の和を100質量部とした場合、0~9900質量部の範囲で使用することが一般的であり、基材及び塗膜の厚み等の塗工条件に応じて、溶剤の使用量は適宜、設計可能である。 なお、溶剤をいわゆる分散媒として使用し、組成物全体粘度を低減して塗工性を改善する場合、上記の(A)~(F)成分の和を100質量部に対して、たとえば50質量部以上の溶剤を使用してもよいが、溶剤を濡れ性向上等の目的で使用する場合には、たとえば、20質量部以下の、比較的少量の溶剤を使用することも可能であり、且つ、好ましい。
【0123】
その他の成分
本発明の組成物は、必要に応じて、他のオルガノポリシロキサン、接着性付与剤、耐熱剤、染料、難燃性付与剤等を含むことができる。これらの任意成分の添加量及びその方法は、当業者に公知である。
【0124】
[製造方法]
本発明の組成物は、(A)~(C)成分、必要に応じて(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分及び/又は他の任意成分を混合することによって製造することができる。本発明の組成物は使用時に混合して調製してもよいが、使用前に、予め混合して調製しておくことが好ましい。
【0125】
本発明の組成物は、(C)成分の使用により、(C)成分中のヒドロシリル化反応用触媒が(A)、(B)成分等と共存しても、室温~加熱溶融時にその硬化反応が抑制されるため、単一組成物の形態であっても、混合操作中に硬化反応が進行して増粘乃至ゲル化したり、混合物や成型物が数時間~数日程度で硬化反応性を喪失してしまうことが効果的に防止される。このため、簡便な工程で、本組成物又はその成型物を安定して製造することが可能である。
【0126】
本発明の組成物は、25℃において液状又は非流動性であってよく、その調製方法は特に制限されるものではないが、以下の方法で調製してよい。
【0127】
本発明の組成物が、25℃において流動性を有する液状組成物の場合、機械力により、それぞれの成分を均質に混合することによって行われる。必要に応じて溶剤を加えてもよく、公知の攪拌機又は混練機を用いて、0~150℃未満の温度で混合して調製してもよい。
【0128】
本発明の組成物が、25℃において非流動性であり、加熱溶融性を有する組成物の場合、例えば、(A)、(B)、(D)成分を80℃~120℃の温度範囲で加熱混練しながら、(C)成分を、添加混合することによって調製することができる。前記温度範囲では、組成物全体が軟化し、(C)成分を全体に均一分散することができるので、特に、シート等の成型時に硬化不良及び接着時の部分的な凝集破壊を回避できる実益がある。一方、温度が前記下限未満では、軟化が不十分となって、機械力を用いても(C)成分を全体に均一分散することが困難となる場合がある。逆に、温度が前記上限を超えると、(C)成分を構成する熱可塑性樹脂(壁材)の溶融温度によっては、(C)成分が混合時に反応して、全体が著しい増粘又は硬化して加熱溶融性を失う場合があるため、好ましくない。本製造方法で用いる混合機は限定されず、加熱・冷却機能を備えたニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、2ロールミル、3ロールミル、ロスミキサー、ラボプラストミル等の回分(バッチ)式、加熱・冷却機能を備えた単軸押出機、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置であればよく、特に限定されないが、処理時間の効率とせん断発熱の制御能力に応じて選択される。処理時間の点で考えると、単軸押出機、2軸押出機等連続式であってもよく、ラボプラストミル等のバッチ式の混合機であってもよい。
【0129】
[組成物の使用]
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、25℃で流動性を有する場合、基材上に塗工することによって塗膜を形成させ、加熱することによって硬化物とすることができる。塗工方法としては、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、及びコンマコートが例示される。塗工時の温度は特に制限されるものではないが、150℃未満の温度で塗工することが好ましい。
【0130】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物が、25℃で非流動性であり、加熱溶融性を備える場合、所望の形状に成型して使用することができる。このような成型物は、例えば、(D)成分の含有量に応じて、仮固定程度であれば十分な接着力を有するように設計することが可能であり、特定の被着体上に配置することで、加熱溶融性粘着材として使用することができる。
【0131】
本発明の組成物は、好適には80℃以上且つ150℃未満の温度で加熱溶融した後に冷却することで、さまざまな形状の物体に加工することができ、例えば、厚さが5μm~5mmのシート状、粉体状、若しくは、タブレット状とすることができる。具体的には、本発明の組成物は、加熱、押出し機能を有する装置を用いて加熱溶融し、所望の形状の物体に加工することができる。なお、150℃以上に加熱して硬化反応を開始させない限り、当該物体は、硬化反応性と加熱溶融性を維持しているため、加熱溶融性粘着材として、部材、部品又はシート等の形態で利用することが特に好ましい。
【0132】
上記のとおり、本発明の組成物は例えば(D)成分の含有量に応じて、仮固定程度であれば十分な接着力を有するように設計することができ、加熱溶融性粘着材として使用できるが、当該組成物を、150℃以上に加熱して硬化反応を行うことによって、粘着性の硬化物(半硬化物を含む)を形成することができる。このため、本発明の組成物は、各種のポッティング剤、封止剤、接着剤・粘着剤として有用であり、好ましくは光学粘着剤・接着剤として有用であり、特に、ディスプレイ用光学粘着剤・接着剤として有用である。特に、本発明の組成物は、硬化反応前の状態において、仮固定には十分な粘着力を備え、加熱溶融性であることから、被着体の凹凸や間隙に容易に追従する、ギャップフィル性に優れた粘着材層を形成可能である。更に、その硬化物は高温又は高温・高湿下で着色が少なく、濁りを生じにくいことから、表示装置(ディスプレイ)や太陽電池モジュール等の積層体を構成する部材間の固定層、接着層として極めて有用である。
【0133】
(硬化物)
本発明の組成物は硬化物となることができる。硬化物は、本発明の組成物について(更に)ヒドロシリル化反応を行い本発明の組成物を(完全に又は最終的に)硬化させることによって得られる。例えば、150℃以上の温度で前記組成物を加熱し、ヒドロシリル化反応を行うことによって硬化させることができる。加熱時間は組成物中の各成分の種類及び配合量にもよるが、通常0.2~4時間、好ましくは0.5~2時間である。
【0134】
本発明の硬化物は、種々の材料として用いることができる。ここで、硬化物とは200℃以上に加熱しても流動しないことを意味する。この硬化物の硬さは特に限定されないが、通常針入度が70以下のゲル状から、ショアD硬さが80のレジンまでである。
【0135】
好ましくは、本発明の硬化物は光透過性であり、より好ましくは透明である。光透過性、特に透明の硬化物は光学用途に好適に使用することができる。
【0136】
本発明の硬化物は感圧接着性を有することができる。硬化物の粘着力は特には限定されないが、JIS Z0237に準じた方法で、以下の通り測定可能である。
【0137】
<25℃で液状組成物の場合>
組成物を硬化させて得られる厚み50μmの粘着層を、SUS鋼板に対して貼り合わせ、180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて測定した粘着力(20mm幅での測定を表示単位gf/インチに換算)が、0.1gf/inch以上であることが好ましく、0.1gf/インチ~10kgf/インチであることが特に好ましく、0.2gf/インチ~10kgf/インチであることが更に好ましい。ただし、これらの粘着力は、微粘着~強粘着乃至永久接着まで、所望の範囲で設計可能であることは言うまでもない。
【0138】
<25℃で非流動性の加熱溶融性組成物の場合>
組成物を硬化させて得られる厚み200μmの粘着層を、SUS鋼板に対して貼り合わせ、180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて測定した粘着力(20mm幅での測定を表示単位gf/インチに換算)が、0.1gf/inch以上であることが好ましく、0.1gf/インチ~10kgf/インチであることが特に好ましく、0.2gf/インチ~10kgf/インチであることが更に好ましい。ただし、これらの粘着力は、微粘着~強粘着乃至永久接着まで、所望の範囲で設計可能であることは言うまでもない。
【0139】
本発明の硬化物は、一定の伸縮性若しくは柔軟性を有することができる。したがって、本発明の硬化物を弾性粘着部材として使用することができる。
【0140】
(粘着剤)
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物は粘着材として利用することができる。
【0141】
本発明の粘着材は、高い接着力を備えることができ、各種の被着体と良好に粘着又は接着可能である。また、本発明の粘着材は、被着体からの剥離時に凝集破壊が生じにくい粘着層を形成可能であるが、用途によってはこの限りではなく、凝集破壊を伴うものであってもよい
【0142】
したがって、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物及びその硬化物粘着材層を被着体から剥離する際の挙動は用途の応じて好ましく制御することが可能である。例えば、(感圧)粘着剤としての作用が期待される用途においては、被着体表面の残留物が無いか、若しくは、あっても僅かとすることができる。一方、用途のよっては凝集破壊を示すような高接着性を示すことも問題とはならない
【0143】
(加熱溶融性粘着材としての使用)
例えば、上記の(D)成分の配合量により、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、組成物全体として、25℃において非流動性且つホットメルト性の組成物として設計可能である。この場合、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、硬化反応前においては、加熱溶融性粘着材として、成形性、ギャップフィル性及び粘着力に優れる粘着材として使用することができる。また、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物は、加熱溶融性と硬化反応性を実質的に失うが、粘着力に優れる粘着材として使用することができる。このため、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる粘着材は、部材を仮固定したり、凹凸や間隙に対するギャップフィル性を生かした粘着材層を被着体に形成して、被着体間の仮固定、配置、及び、貼り合わせを行ったうえで、当該硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる粘着材を150℃以上に加熱して、被着体間に硬化物からなる粘着材を形成させてもよい。また、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物からなる粘着材は、それ自体が感圧接着材として使用することができるため、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の加熱溶融性を利用してシート状等に成型してから硬化させ、所望の形状を有する粘着部材として単独で取り扱ってもよい。
【0144】
(硬化物からなる粘着材としての使用)
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、150℃以上で加熱することで、粘着性の硬化物(硬化反応物)を形成することができる。当該硬化物は、粘着層、接着層、特に感圧接着層(PSA層)として、圧着により部材間を接合する粘着材として利用することができる。後述するように、硬化物は、単独で粘着材として使用することができるため、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物の硬化物を粘着性フィルム又は感圧接着性フィルムとして単独で取り扱ってもよく、液状又は上記の加熱溶融性粘着材の形態で部材上に配置した後又は配置と同時に、当該硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を150℃以上に加熱して硬化させ、粘着材を形成してもよい。なお、硬化前の状態が25℃において流動性を有する液状組成物であっても、25℃において非流動性のホットメルト性の組成物であっても、その硬化物は、粘着材(特に粘着層)として使用可能である。
【0145】
[積層体]
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる層又は当該組成物の硬化物からなる層又は部材を備える積層体を提供することができる。前記積層体は、特に制限されるものではないが、粘着性シート(接着性シート感圧接着(PSA)性シートを含む)、それらが剥離層を備えたシート状部材に積層された剥離性の積層体であってよい。
【0146】
(粘着性シート)
次に、本発明に係る積層体の一種である粘着性シートについて説明する。
【0147】
本発明の粘着性シートは、
少なくとも1つのシート状基材、
前記シート状基材上に形成された少なくとも1つの粘着性層
を備えており、
前記粘着性層が上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を含む。
【0148】
(未硬化状態の粘着性シート)
本発明の粘着性シートの粘着性層に含まれる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は未硬化物であってもよい。このような粘着性シートは、25℃において非流動性のホットメルト性の組成物を用いることで容易に得ることができる。
【0149】
本発明の粘着性シートは、例えば、シート状基材上に、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を加熱溶融状態で塗布して所定の厚みの粘着性層を形成し、必要に応じて、当該粘着性層を半硬化させることによって製造することができる。
【0150】
シート状基材の種類は特には限定されるものではなく、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等を適宜使用することができる。シート状基材は非多孔性であることが好ましい。
【0151】
シート状基材への塗布方法としては、オフセットコート、オフセットグラビア、オフセット転写ロールコーター等を用いたロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンフローコーター等を用いたカーテンコート、コンマコート、マイヤーバー、その他公知の、層を形成する目的で使用される方法が制限なく使用できる。
【0152】
本発明の粘着性シートでは、シート状基材が少なくとも1つの剥離層を備えており、当該剥離層が粘着材層と接触していることが好ましい。これにより、粘着材層をシート状基材から容易に剥離することができる。剥離層は剥離ライナー、セパレーター、離型層或いは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、又は、フルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる接着材層と付着しにくい基材それ自体であってもよい。特に本発明の積層体においては、剥離層として、フルオロシリコーン系剥離剤を硬化させてなる剥離層の使用が好ましい。
【0153】
本発明の粘着性シートは、例えば、粘着性層を被着体に適用後に、当該未硬化状態の粘着性シートを、シート状基材から剥離することにより使用することができる。なお、後述するように、粘着性シートを150℃以上に加熱して硬化物を形成させてから剥離して使用してもよい。
【0154】
本発明の粘着性シートが、25℃において非流動性のホットメルト性の組成物の成型物である、ホットメルト型の粘着性シートの場合、当該粘着性シートを被着体に適用後、最終硬化前に、粘着性シートを加熱することで、粘着性シートは柔軟化乃至流動化し、例えば、被着体の被着面に凹凸があっても、隙間なく粘着性層を充填することができる。粘着性シートの加熱手段としては、例えば各種の恒温槽や、ホットプレート、電磁加熱装置、加熱ロール等を用いることができる。より効率的に貼合と加熱を行うためには、例えば電熱プレス機や、ダイアフラム方式のラミネータ、ロールラミネータなどが好ましく用いられる。
【0155】
この際、ホットメルト型の粘着性シートの軟化温度が50℃以上であれば、加工特性や常温での保管特性を十分にすることができる。一方、粘着性層の軟化温度が100℃以下であれば、画像表示パネル等に対する熱損傷を抑制することができるばかりか、粘着性層が流動し過ぎてはみだしたりするのを防ぐことができる。よって、ホットメルト型の粘着性シートの軟化温度は、50~100℃であるのが好ましく、中でも55℃以上或いは95℃以下、その中でも60℃以上或いは90℃以下であるのが更に好ましい。
【0156】
(硬化物を含む粘着性シート)
本発明の粘着性シートの粘着性層に含まれる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は硬化物であってもよい。このような粘着性シートは、25℃において流動性の組成物を塗布して所定の厚みの粘着性層を形成し、150℃以上の温度で加熱硬化させて得ることができる。また、このような粘着性シートは、上記のホットメルト型の粘着性シートを150℃の温度で加熱硬化させて得ることができる。なお、シート状基材への塗布方法及び剥離層を備えたシート状基材の使用は上記同様である。
【0157】
本発明の粘着性シートは、例えば、粘着性層を被着体に適用後に加熱等により当該粘着性層に含まれる硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を硬化させ、シート状基材から未硬化状態の粘着性層を剥離することにより使用することができる。
【0158】
粘着性層については、厚みを薄くすることで、薄肉化要求に応えることができる一方、厚みを薄くし過ぎると、たとえば被着面に凹凸部あった場合に充分に凹凸に追従できなかったり、十分な接着力を発揮できなかったりする可能性がある。かかる観点から、粘着性層の厚みは5~10000μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは8000μm以下、その中でも20μm以上或いは5000μm以下であるのが特に好ましい。
【0159】
(感圧接着シート)
次に、上記粘着性シートの一種である感圧接着シートについて説明する。
【0160】
本発明の感圧接着シートは、
少なくとも1つのシート状基材、
前記シート状基材上に形成された少なくとも1つの感圧接着層
を備えており、
前記感圧接着層が上記の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を含む。
【0161】
硬化は、例えば、150℃以上での加熱等により、本発明の組成物においてヒドロシリル化反応を行うことで実施することができる。
【0162】
本発明の感圧接着シートは、例えば、シート状基材上に、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を塗布して所定の厚みの層を形成し、当該層を硬化させて感圧接着層とすることによって製造することができる。
【0163】
シート状基材の種類は特には限定されるものではなく、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等を適宜使用することができる。シート状基材は非多孔性であることが好ましい。
【0164】
シート状基材への塗布方法としては、オフセットコート、オフセットグラビア、オフセット転写ロールコーター等を用いたロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンフローコーター等を用いたカーテンコート、コンマコート、マイヤーバー、その他公知の、層を形成する目的で使用される方法が制限なく使用できる。
【0165】
本発明の感圧接着シートでは、シート状基材が少なくとも1つの剥離層を備えており、当該剥離層が感圧接着層と接触していることが好ましい。これにより、感圧接着層をシート状基材から容易に剥離することができる。剥離層に含まれる剥離剤は特には限定されるものではなく、上記の剥離剤を挙げることができる。
【0166】
本発明の感圧接着シートの一態様では、シート状基材は2つであってもよい。
【0167】
例えば、本発明の感圧接着シートは、
第1のシート状基材、
第2のシート基材、
第1のシート基材及び第2のシート基材の間に形成された少なくとも1つの感圧接着層
を備え、
前記感圧接着層が前記第1のシート基材及び前記第2のシート基材に接触する形態であってもよい。
【0168】
上記の形態の感圧接着シートは、例えば、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を第1のシート状基材及び第2のシート状基材に挟み、加熱しつつ、プレス又はロールで一定の厚みに成形した後、前記組成物を硬化させることによって製造することができる。
【0169】
第1のシート基材は第1の剥離層を備えていてもよく、或いは、第1のシート基材自体が剥離性を備えるものであってもよい。同様に、第2のシート基材は第2の剥離層を備えていてもよく、或いは、第2のシート基材自体が剥離性を備えるものであってもよい。第1のシート基材及び/又は第2のシート基材が第1の剥離層及び/又は第2の剥離層を備える場合は、感圧接着層は第1の剥離層及び/又は第2の剥離層に接触することが好ましい。
【0170】
剥離性を有するシート基材としては、例えば、フッ素樹脂製フィルム等の剥離性を有する材質からなるシート基材、或いは、ポリオレフィンフィルム等の剥離性がないか若しくは低い材質にシリコーン、フッ素樹脂等の剥離剤を添加したものからなるシート基材が挙げられる。一方、剥離層を備えるシート基材としては、例えば、シリコーン、フッ素樹脂等の剥離剤をコーティングしたポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
【0171】
本発明の感圧接着シートは、例えば、感圧接着層を被着体に適用後に、シート状基材から感圧接着層を剥離することにより使用することができる。
【0172】
感圧接着層の厚みは、5~10000μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは8000μm以下、その中でも20μm以上或いは5000μmであるのが特に好ましい。
【0173】
(粘着テープとしての使用)
例えば、本発明の積層体は、粘着テープであってよく、上記の合成樹脂フィルム・シート、金属箔、織布、不織布、紙等の繊維製品からなるシート状部材と上記の粘着層を備えることを特徴とする。このような粘着テープの種類は、特に制限されるものではなく、絶縁テープ、耐熱テープ、ハンダマスキングテープ、マイカテープバインダー、仮止めテープ(シリコーンゴム部品等の仮止めテープを特に含む)、スプライシングテープ(シリコーン剥離紙用スプライシングテープを特に含む)があげられる。
【0174】
絶縁テープとしては、例えば、ポリ塩化ビニル等の絶縁性を備える合成樹脂からなるテープ(基体)に本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を粘着層として備えるものを挙げることができる。そのような絶縁テープは、例えば、電線の絶縁被覆の補修等の電気絶縁性が求められる用途に好適に使用することができる。
【0175】
耐熱テープとしては、例えば、ポリイミド等の耐熱性を有する合成樹脂からなるテープ(基体)に本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を粘着層として備えるものを挙げることができる。そのような耐熱テープは、例えば、自動車等のマフラーの補修等の耐熱性が求められる用途に好適に使用することができる。本発明の粘着テープの粘着層はシリコーン系であるので耐熱性に優れている。
【0176】
ハンダマスキングテープは絶縁テープ又は耐熱テープの一種であり、プリント基板のはんだ付け工程でのマスキングに使用することができる。
【0177】
マイカテープは絶縁テープ又は耐熱テープの一種であり、マイカ(雲母)製シート(基体)に適量のバインダーを含浸させて必要に応じて加熱圧縮して得ることができ、また、これを更にガラスクロスシート等の補強材と貼り合わせてテープ状に加工してもよい。本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を上記バインダーとして使用することができる。更に、マイカテープは粘着層を備えていてもよく、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を当該粘着層として使用してもよい。
【0178】
仮止めテープは、各種の仮止め用途に使用されるテープであり、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着層を備える。前記粘着層は優れた粘着性及び剥離性を備えるので本発明の仮止めテープは仮止めに好適である。前記粘着層はシリコーン系であるのでシリコーンゴム製の部品に対する親和性に優れており、シリコーンゴム製の部品の仮止めに特に好適に使用することができる。
【0179】
スプライシングテープはフィルム等の接続に使用されるテープであり、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着層を備える。前記粘着層は優れた粘着性を備えるので本発明のスプライシングテープはフィルム等の接続に好適である。前記粘着層はシリコーン系であるのでシリコーン剥離処理された面にも接着性を備えており、シリコーン剥離紙の接続に特に好適に使用することができる。
【0180】
(物品)
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材は様々な物体の接着に使用することができる。
【0181】
斯くして、本発明は、
少なくとも1つの基体、
少なくとも1つの粘着材部品
を備える物品であって、
前記粘着材部品が本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を含む、物品にも関する。
【0182】
前記基体及び前記粘着材部品の形状は任意であり、各種の三次元形状とすることができる。前記粘着材の性質は上記のとおりである。
【0183】
前記粘着材部品は基体上又は基体中に存在することができる。好ましくは、前記基体の少なくとも一部が前記粘着材部品と接着する。
【0184】
前記粘着材部品は、粘着力を備えており、他の各種の基体と良好に接着することができる。更に、前記粘着材部品により他の基体に永久接着してもよく、また、前記粘着材部品を他の基体から剥離する際には凝集破壊が生じず、界面剥離となる接着モードに設計することも可能である。
【0185】
同様に、本発明は、
少なくとも1つの基板、
少なくとも1つの粘着材層
を備える積層体を含む物品であって、
前記粘着材層が本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を含む、物品にも関する。
【0186】
前記基板の形状はシート状又はフィルム状であり、また、前記粘着材層の形状は層状である。好ましくは、前記基板の表面の少なくとも一部が前記粘着材層と接着する。前記粘着材の性質は上記のとおりである。
【0187】
前記基体又は前記基板は複数存在することができる。この場合、前記粘着材層は複数の基体又は基板の間に存在することができ、好ましくは、複数の基体又は基板を相互に接合する。
【0188】
前記基体又は前記基板は多孔性又は非多孔性のいずれでもよい。
【0189】
多孔性基体又は多孔性基板としては、例えば、織布、不織布、紙等の繊維製品、延伸等により多孔化した合成樹脂フィルム・シート、これらの組合せが挙げられる。繊維としては、天然繊維、合成繊維又はこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0190】
多孔性基体又は多孔性基板を備える本発明の物品では、当該基体又は基板の少なくとも一部の孔内に本発明の粘着材が存在可能である。この場合、例えば、布又は紙等の多孔性の基体又は基板に本発明の組成物を含浸(加熱溶融状態における含浸及び冷却を含む)して、必要に応じて更に紫外線等の高エネルギー線を照射して硬化させることにより、そのような物品を製造することができる。
【0191】
非多孔性基体又は非多孔性基板としては、例えば、合成樹脂フィルム・シート、金属箔、これらの組合せが挙げられる。
【0192】
特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロポリオレフィン、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、PVA、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN又はこれらの混合物等の透明材料が好適である。
【0193】
前記基板の厚さは特に制限されず、用途に応じて所望の厚さで設計することができる。また、基板と感圧接着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された基板を用いてもよい。更に、基板の感圧接着層接触面と反対側の面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止等の表面処理がされてもよい。
【0194】
前記粘着材部品又は前記粘着剤層は複数存在することができる。複数の粘着材部品又は粘着剤層を使用することによって、接着に求められる各種の特性をバランスよく発揮することができる。
【0195】
前記粘着材部品又は前記粘着材層は各種の電子機器又は電気的装置の部材として有用である。特に、前記粘着材部品又は前記粘着材層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲(0.02~0.90MPaの範囲がより好ましく、0.03~0.80MPaの範囲が更により好ましく、0.04~0.70MPaの範囲が更により好ましい)にある場合、前記粘着材部品又は前記粘着材層は、弾性粘着部品又は弾性粘着層として、電子部品又はトランスデューサー用部材(センサ、スピーカー、アクチュエーター及びジェネレーター用を含む)として有用である。
【0196】
前記粘着材は不透明又は透明のいずれであってもよい。
【0197】
不透明乃至低光透過性の粘着材は、透明性が要求されず、前記部品又は層自体に一定の伸縮性若しくは柔軟性が求められるセンサ、スピーカー、アクチュエーター等に用いられるフィルム状又はシート状部材の用途に有用である。また、リチウムイオン電池等の二次電池、又は、燃料電池に使用される封止材又は接着材としても有用である。
【0198】
本粘着材は光学装置用途に使用してもよく、前記基板は、画像表示パネル、タッチパネル、偏光フィルム、位相差フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート等の光学フィルム、又は、表面若しくは裏面保護シートであってもよい。
【0199】
表面若しくは裏面保護シートの材質は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、又は、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の非環状オレフィン系樹脂等のプラスチック若しくはこれらのプラスチックの混合物が挙げられる。
【0200】
表面保護シートは、タッチパネルが一体化したものであってもよく、例えば、タッチオンレンズ(TOL)型やワンガラスソリューション(OGS)型であってもよい。また、表面保護シートは、その周縁部に枠状に印刷された印刷段差部を有していてもよい。
【0201】
例えば、携帯電話の表示画面等では、一般に、タッチパネル等の機能性フィルム上に粘着シートを介して表面保護シートを積層する構成が採用されているところ、該保護シートの裏面には、周縁部に隠蔽用印刷部(厚さ5μm~80μm程度)が付設され、隠蔽用印刷部の縁に形成される段差部の入隅部内にまで粘着剤が十分に入り込まないと、気泡が残留して画面の視認性が低下することになる。また、段差近傍でフィルム部材が屈曲して外観不良となったり、フィルムの屈曲による残留歪が起点となって、積層した部材間に発泡や剥離が起こったりするおそれがあった。本発明の組成物は、このような5μm~20μm程度の段差はもちろん、50μm~80μm程度の段差があっても、段差の隅々まで充填して気泡を残留させることなく貼着することができる。しかも、たとえ被着体の一方が屈曲性をもつフィルム部材であったとしても、本発明の組成物をホットメルトさせることで、表面を歪みなく平滑に均すことが可能であるため、フィルム部材に歪や変形を生じさせずに、部材を貼合一体化することができる、
【0202】
タッチパネルは、特に限定されるものではなく、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式又はこれらの組み合わせ等のいずれであってもよい。タッチパネルは、少なくとも1つの、カバーフィルム、ITO又はATO膜等の透明電極層、又は、ガラス基板を備えるものが好ましい。なお、タッチパネルは装飾フィルム等を更に含んでもよい。
【0203】
画像表示パネルは、画像情報を表示するものであれば特には限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイの場合、偏光フィルム、位相差フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート等の光学フィルム、液晶材料、透明基板及びバックライトシステムから構成される(通常、粘着材の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。また、画像表示パネルは、タッチパネル機能をTFT-LCD内に内蔵したインセル型であっても、偏光板とカラーフィルタを設けたガラス基板の間にタッチパネル機能を内蔵したオンセル型であってもよい。一方、有機ELディスプレイの場合、画像表示パネルは有機EL素子基板或いは有機EL素子基板とその他の光学フィルム等の積層体から構成される。
【0204】
この場合、本発明の物品は、ディスプレイであることが好ましく、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)がより好ましく、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイであることが更により好ましい。
【0205】
ディスプレイの画像表示面はフラット(平面)でもよく、曲面乃至湾曲した形状でもよい。
【0206】
本発明のディスプレイは、例えば、携帯電話、固定電話等の通信機器;タブレット端末、デスクトップ端末、ノート型端末等のコンピュータ機器;TV;プリンタ;ATM(現金自動預け払い機);車載用モニター又はナビゲーションシステム;デジタルカメラ;ビデオカメラ;医療機器;PDA(モバイル端末);時計;電子ペーパー;CD、DVD又はBlue-rayディスクプレーヤー;SSMやHD等の固体電子記録媒体再生機;電子書籍機器;携帯ゲーム機器、固定ゲーム機器等の遊戯機器;POSシステム;魚群探知機;自動券売機;計器盤等の用途に適用される。
【0207】
一方、前記基体又は前記基板は、太陽電池セル、封止材層、表面若しくは裏面保護シートであることができる。したがって、前記感圧接着層は、例えば、表面保護シート及び太陽電池セル、裏面保護シートと太陽電池セル、表面保護シートと封止材層、裏面保護シートと封止材層、封止材層と太陽電池セルを接合することができる。
【0208】
この場合、本発明の物品は、太陽電池モジュールであることが好ましい。
【0209】
以下、本発明の具体的な利用例について更に説明する。
【0210】
[表示パネル又はディスプレイ用の部材]
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材は、感圧接着性を備えることから、積層タッチスクリーン又はフラットパネルディスプレイの構築及び利用に使用することができ、その具体的な使用方法としては、感圧接着剤層(特に、シリコーンPSA)の公知の使用方法を特に制限なく用いることができる。
【0211】
[積層体の製造及び構造]
図1は、本発明の一実施形態の積層体を示す断面図である。本発明の一実施形態の積層体1は、第1の部材20と、第2の部材21と、2つの部材20、21の間に配置された本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材15と、を備えている。積層体1では、2つの部材20、21が粘着材15により接着されている。これらの光学部材は透明であっても、不透明であってもよく、一方又は両方の部材が、単独の基材であってもよく、バックライトユニットのようにそれ自体が独立した積層体である光学部材であってもよい。なお、本発明の積層体を構成する部材は、平面状の広がりを有する板状部分を備えていることが一般的であり、当該板状部分又は部材自身が湾曲していてもよく、部材の用途に由来する三次元的な凹凸を備えていてもよい。
【0212】
2つの光学部材20、21は、任意で組み合わせることができる。2つの光学部材20、21は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0213】
好適には、部材20、21は、光学ディスプレイの構成部材として一般的に使用されるものである。より具体的には、部材20、21は光学部材であり、例えば、レンズ(樹脂製又はガラス製であってよい)、光学シート状部材(カラーフィルタ、偏光板、位相差板、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート、透明導電性フィルムを含む)、透明であってもよい光学保護材(透明保護材(透明保護フィルム)等であり、ガラス製、樹脂製又は樹脂コーティング層)、前面表示パネル、タッチパネル(ガラス製又は樹脂製)、ITO又はATO膜等の透明電極層であり得る。いうまでもなく、表示パネル又はタッチパネル表面には、光学保護材を更に備えてもよい。また、光学部材は、後述する発光層及び表示面(表示パネル)を含むバックライトユニットそれ自体であってもよく、光学部材全体が独立した積層部材からなる部品又はタッチパネル等の表示装置内のモジュールであってもよく、当該光学部材内に、本硬化物からなる接着層15を更に有していてもよい。すなわち、光学部材の概念には、後述する画像表示パネル、光学パネル、前面パネル、バックライトユニット、タッチパネルユニット等が、包含される。
【0214】
部材20、21の材質は、上記の用途で一般的に使用されるものであれば特に制限されないが、ガラス、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)等の無機光学材料、又は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シクロポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂又はこれらの混合物等の有機光学材料が例示される。
【0215】
特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂又はこれらの混合物等であり得る。
【0216】
一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、PVA樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂、PEN樹脂又はこれらの混合物等であり得る。
【0217】
部材20、21は、光学ディスプレイの構成部材として一般的に施される表面処理が行われていてもよい。表面処理は、例えばプライマー処理又はコロナ処理等であり得る。
【0218】
2つの部材が互いに異なる場合、例えば2つの部材の熱膨張率差に起因して2つの光学部材が接着界面で剥がれることがある。しかしながら、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は部材間で加熱溶融して部材上のギャップや凹凸に追従した上で、硬化させることができ、また、その硬化物は柔軟性を有するので、熱膨張率差の影響を小さくすることができ、互いに異なる2つの部材20、21を良好に接着することができる。したがって、本発明又はその硬化物からなる粘着材は、互いに異なる部材の接着、特に熱膨張率差の大きい有機材料と無機材料との接着に好適に使用することができる。
【0219】
なお、
図1に示す積層体1は、2つの部材を備えているが、複数の部材、特に光学部材を備えていれば部材の数は特に制限されない。
【0220】
また、
図1に示す粘着材15は、2つの部材20、21の間に全体にわたって形成されているが、2つの部材20、21の間の一部、例えば、一又は複数の点状に形成されていてもよい。また、
図1に示す粘着材15は、2つの部材20、21の間に形成されているが、部材20の接着面20aの反対側の面20bにも形成されていてもよく、部材21の接着面21bの反対側の面21aにも形成されていてもよく、両方の面20b及び21aに形成されていてもよい。
【0221】
以下、本発明の一実施形態における積層体の製造方法について説明する。
【0222】
図2は、本発明の一実施形態の積層体の製造方法を示すフローチャートである。本発明の一実施形態の積層体の製造方法は、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を二つの部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、当該二つの部材を当該硬化性シリコーン粘着剤組成物を介して貼り合わせる配置及び貼り合わせ工程S1、並びに、紫外線等の高エネルギー線の照射によりヒドロシリル化反応を開始させ、当該組成物を硬化させる硬化工程S2を含む。
【0223】
上記の配置工程S1では、例えば上述した塗工方法を用いて本発明の組成物を部材上に配置する。上記の配置工程S1では、一方の部材の一面に本発明の組成物を配置してもよい。また、部材の両面に配置された本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物であって他の光学部材との貼り合わせに使用されない粘着材は、接着面として剥離層や他の部材への接合に用いてもよい。
【0224】
また、別の実施形態において、上記の配置工程S1では、二つの部材のそれぞれの一面に本発明の組成物を配置してもよい。
【0225】
上記の実施形態において、「一面」とは、他方の光学部材と対向する面である。
【0226】
更に、別の実施形態において、上記の配置工程S1では、上記の一面とは反対側に位置する他面にも本発明の組成物を配置してもよい。
【0227】
図3は加熱溶融工程を含む積層体の製造方法の概念図である。上記の配置工程S1において、部材21が凹凸を有し、且つ、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物をシート状等の形状に成型して粘着材15として使用する場合、
図3(A)のように部材21上に加熱溶融前の本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる粘着材15Aを配置した後に、80℃以上に加熱して溶融させ、溶融物を部材21の凹部に対応する特定の形状等に成型したり、或いは、図示を省略する部材21の間隙に充填する等して、平滑な表面を有する粘着材15Bとする工程(
図3(B)参照)を採用してもよい。本発明の粘着材は加熱溶融性であるため、容易にシート状等の所望の形状に成型でき、かかる工程を有することで、必要に応じて、部材上の凹凸や間隙を充填して、追従性に優れ、且つ、必要に応じて平坦な粘着面を形成できる利点がある。特に、部材の材質、凹凸や間隙に由来して難接着性となっている部材であっても、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を加熱溶融して配置することで、容易に接着でき、且つ、後述する硬化工程により、更に強度の高い粘着材層を形成できる場合がある。
【0228】
本発明の実施形態における積層体の製造方法は、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を当該硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を介して貼り合わせる配置工程S1、及び高温で加熱することにより当該組成物のヒドロシリル化反応を進行させて当該組成物を硬化させる硬化工程S2を含む。
【0229】
上記の硬化工程S2では、好適には、150℃以上の高温で加熱することり、本発明の組成物を硬化させた硬化物を得る。
【0230】
[光学ディスプレイ]
図4は、本発明の物品の一実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の一実施形態としての光学ディスプレイ200は、上記の積層体1と、画像表示パネル201と、を備えている。
【0231】
積層体1と、画像表示パネル201とは接着剤層(図示なし)を介して接着されている。この接着剤層は、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物で構成されていてもよい。
【0232】
図4に示す光学ディスプレイ200では、積層体1の第2の光学部材21が接着剤層に接している。
図4に示す光学ディスプレイ200において、例えば積層体1の第1の光学部材20は偏光フィルムであり、第2の光学部材21は位相差フィルムであり得る。また、別の実施形態においては、例えば積層体1の第1の光学部材20は偏光フィルムであり、第2の光学部材21は表面保護フィルムであり得る。
【0233】
画像表示パネル201は、画像情報を表示するものであれば特には限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の場合、偏光フィルム、位相差フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート等の光学フィルム、液晶材料、透明基板及びバックライトシステムから構成される(通常、感圧接着部品又は感圧接着層の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。また、画像表示パネル201は、タッチパネル機能をTFT-LCD内に内蔵したインセル型であっても、偏光板とカラーフィルタを設けたガラス基板の間にタッチパネル機能を内蔵したオンセル型であってもよい。一方、有機ELディスプレイの場合、画像表示パネル201は有機EL素子基板又は有機EL素子基板とその他の光学フィルム等の積層体から構成される。
【0234】
光学ディスプレイ200は、ブラウン管(Cathode Ray Tube、CRT)ディスプレイ、又はフラットパネルディスプレイ(FPD)であり得る。FPDとしては、例えば、LCD、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等の受光型表示装置、又は有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の電界発光ディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)等の電界放出型ディスプレイ(FED)、LEDディスプレイ等の発光型表示装置が挙げられる。
【0235】
図5は、本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の別の実施形態としての光学ディスプレイ300Aは、画像表示パネル301と、光学部材20と、画像表示パネル301と光学部材20との間に配置された本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる接着層15と、を備えている。
【0236】
画像表示パネル301は、
図4の画像表示パネル201について例示したものであり得る。
【0237】
光学ディスプレイ300Aは、例えば、光学部材20を画像表示パネル301の一方の面301aに、必要に応じて加熱溶融させた本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる硬化性層を介して配置した後、当該硬化性層を高温で加熱することにより硬化させることにより得ることができる。
【0238】
図5に示す本発明の物品の実施形態の光学ディスプレイは、例えば、必要に応じて加熱溶融させた本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物からなる硬化性層を、光学部材20の一方の面20aに形成させた後、光学部材20を画像表示パネル301の一方の面301aに当該硬化性層を介して配置し、更に、硬化性層を加熱することにより硬化させることにより得ることができる。
【0239】
図6は、本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の別の実施形態としての光学ディスプレイ300Bは、画像表示パネル301と、タッチパネル302と、画像表示パネル301とタッチパネル302との間に配置された本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる接着層15と、を備えている。
【0240】
タッチパネル302は、特に制限されるものではなく、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式又はこれらの組み合わせ等のいずれであってもよい。タッチパネル302は、少なくとも1つの、カバーフィルム、ITO又はATO膜等の透明電極層、又は、ガラス基板を備えるものが好ましい。なお、タッチパネルは装飾フィルム等を更に含んでもよい。
【0241】
図6に示す本発明の物品の実施形態の光学ディスプレイでは、液晶・有機EL等の表示部と、タッチパネル、カバーレンズ等のディスプレイ形成部材との間、或いは、ディスプレイ形成部材間を、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物により接着若しくは粘着することにより、光学ディスプレイの視認性を向上させることができる。
【0242】
本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物は、十分な粘着性を備え、加熱溶融により部材の凹凸に対する高い追従性を実現でき、且つ、150℃以上の高温下で速やかに硬化する性質を備える、このため、本発明の光学ディスプレイでは、熱に不安定な材料の変形や劣化が抑制され、更には、高温高湿下に曝されても硬化物に濁りや着色を生じ難いので、光学ディスプレイとしての信頼性を向上させることができる。
【0243】
本発明の物品の実施形態の光学ディスプレイは、更に、
前面パネルの表示面に対向する面に設けられ、透明導電膜が形成された面を有するシールド基板を更に備え、
前記透明導電膜とベゼルとが導電性材料を介して電気的に接続された構造を備えた表示装置であってよい。
【0244】
例えば、表示装置において、表示モジュールと前面パネルとの間に、更に、片面に導電層を備えた電磁妨害(Electro-Magnetic Interference、EMI)基板等のシールド基板を挿入することができる。このようなシールド基板は電磁波遮蔽機能を有するので、表示モジュールから放射される電磁波によって前面パネルが誤動作することを防ぐ。また、前記シールド基板の片面には、ITO等の透明導電膜からなる導電層が一様に又はメッシュ状に形成されている。そして、前記導電層の電位を表示モジュールのGNDに設定するため、ベゼルの外周に配置する接着部材等を、例えばAgペースト等の導電性接着部材で形成することもできる。なお、表示モジュールのベゼルは、金属製であり、表示モジュール内でGND接続されている。ここで、接着部材を導電性材料とすることで、金属製のベゼルと前記のシールド基板の導電層とを確実にGND接続できるため、電磁波耐性の強い表示装置を提供することができる。
【0245】
図7は、本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す分解斜視図である。また、
図8は、本発明の物品の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。
【0246】
図7及び
図8に示すように、本発明にかかる表示装置400(光学ディスプレイ)は、表示面111を有する表示パネル110と、枠部121と枠部121の内側の開口端122とを有し、表示パネル110の表示面111側の周縁を枠部121で覆うベゼル120と、表示パネル110の表示面111側にベゼル120を挟んだ状態で設けられた前面パネル130と、ベゼル120の開口端122の直下であって、ベゼル120と表示面111との重なり部位に生じた間隙172を表示面111に対して垂直方向に空隙を有さずに充填する樹脂部材140と、表示面111と前面パネル130との間に充填されたOCR150と、を備えている。ここで、表示面111とは、表示パネル110の前面パネル130側の面全域を指す。
【0247】
図8において、ベゼル120上に更にダム(樹脂部材)140を設け、前面パネル130との空間173を本硬化物からなるOCR150で充填した構造、いわゆる二段ダム構造が示されている。なお、ベゼル下の樹脂部材140は図と異なり上段又は下段のみであってもよい。バックライトユニット171上に表示パネル110が搭載され、ベゼル120とバックライトユニット171とが嵌合構造(図示せず)により固定されることにより、表示モジュール170が構成されている。表示モジュール170とタッチパネル等の前面パネル130とは、OCR150を介して全面が貼り合されている。
【0248】
図7及び
図8に示す本発明の物品の実施形態では、前面パネル130の内層、OCR150、ベゼル下の樹脂部材140(上段及び下段のいずれであってもよい)等に本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物を適用可能である。なお、これらの用途に限定されず、
図7及び
図8に示す各部材内又は各部材間の接合に及び充填に本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の硬化反応性のシリコーン(オルガノポリシロキサン)組成物、それを硬化してなる硬化物の用途としては、上記に開示した他に何ら制約はなく、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を備えてなる粘着性シートはテレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車等の計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、車載用表示装置、車載用透過型スクリーン等、文字や記号、画像を表示するための種々の表示装置に利用可能である。このような表示装置の表面形状は、平面ではなく曲面状ないし湾曲した形状であってもよく、各種フラットパネルディスプレイ(FPD)のほか、自動車(電気自動車含む)や航空機等に利用される曲面ディスプレイ又は曲面透過型スクリーンが例示される。更に、これらの表示装置は、スクリーンやディスプレイ上に機能又はプログラムを実行するためのアイコンや、電子メール・プログラム等の通知表示、カーナビゲーション装置、スピーカー用のメンブレン、オーディオ装置、空調装置等の各種装置の操作ボタンを表示することができ、これらのアイコンや通知表示、操作ボタンに指を触れることで、入力操作が可能となるタッチパネル機能が付加されていてもよい。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)等の表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。また、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材は、接着性と粘弾性特性に優れるため、スピーカー用のメンブレン等のトランスデューサー用部材(センサ、スピーカー、アクチュエーター、及び、ジェネレーター用を含む)であるフィルム又はシート状部材として利用できるほか、更に、二次電池、燃料電池又は太陽電池モジュールに用いる封止層又は接着剤層として利用することができる。
【0250】
なお、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる粘着材を備えた透明なフィルム状基材を、これらの、ディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止等の目的で使用してもよい。
【実施例】
【0251】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0252】
[非流動性組成物の実験例]
実施例1及び2、並びに、比較例1及び2は、25℃において非流動性であり、加熱溶融性(ホットメルト性)を有することを意図して設計した硬化反応性シリコーン粘着剤組成物に関する実験例であり、その組成(質量部)、未硬化物及び硬化物の粘着力等を表1に示す。なお、表中、組成物中のアルケニル基の総量1モルに対するケイ素原子結合水素原子のモル量の比率を「SiH/Vi比」として記載した。
【0253】
[液状組成物の実験例]
実施例3及び4、及び、比較例3~5は、25℃において液状である硬化反応性シリコーン粘着剤組成物に関する実験例であり、その組成(質量部)、粘度、硬化物の粘着力等を表2に示す。比較例4及び5は、実施例3と類似組成において、比較成分g(シリカ)を配合した場合の実験例である。なお、表中、組成物中のアルケニル基の総量1モルに対するケイ素原子結合水素原子のモル量の比率を、「SiH/Vi比」として記載した。
【0254】
以下に本実施例で用いた成分を示す。各構造式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基である。
(A)成分として、次の成分を用いた。
a-1: ViMe2SiO(SiMe2O)830SiMe2Vi
a-2: ViMe2SiO(SiMe2O)150SiMe2Vi
(B)成分として、次の成分を用いた。
b-1: Me2HSiO(SiMe2O)24SiMe3H
b-2: Me3SiO(SiMe2O)30(SiMeHO)30SiMe3
b-3: Me3SiO(SiMe2O)5(SiMeHO)5SiMe3
(C)成分、及び比較成分として、次の成分を用いた。
c: 下記の参考例に示す方法によって調製した白金触媒含有微粒子を含むマスターバッチ(白金金属濃度は0.16質量%)
c’: 白金(0価)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属濃度は4重量%)
(D)成分及び比較成分として、それぞれ、次の成分を用いた。
d-1: (Me3SiO1/2)0.46(SiO4/2)0.54(HO1/2)0.05
d-2: (Me3SiO1/2)0.48(SiO4/2)0.52(HO1/2)0.04
d-3: (ViMe2SiO1/2)0.046(Me3SiO1/2)0.394(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.05
(E)成分として、次の成分を用いた。
e: エチニルシクロヘキサノール
(F成分)として、次の成分を用いた。
f-1: 1-テトラデセン
比較成分として、次の成分を用いた。
g: 乾式シリカ(比表面積が200m2/g)
【0255】
〔参考例(白金触媒含有微粒子を含むマスターバッチの調製)〕
攪拌機付フラスコにビスフェノールA型の熱可塑性ポリカーボネート樹脂(ガラス転移温度(Tg)145℃)900gとトルエン500gとジクロロメタン4600gを投入し均一に混合した。これに白金(0価)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属濃度は5質量%)44.4gを加えて混合し、均一な溶液を得た。この溶液を、窒素ガスを熱気流としたスプレードライヤーを用いて噴霧・乾燥することで、球状の白金触媒含有微粒子(平均粒子径は1.1μm)、450gを得た。
次に、上記の白金触媒含有微粒子40質量部と、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度350mPa・s、ビニル基含有量0.47質量% のジメチルポリシロキサン60質量部を混合し、白金触媒含有微粒子を含むマスターバッチを調製した。前記マスターバッチ中の白金金属の濃度は0.16質量%であった。
【0256】
また、実施例中の測定、評価は次のようにして行った。
〔粘度の測定〕
JIS K7117-1に準拠した回転粘度計を用いて、「粘度(mPa・s)」を測定した。
〔粘着力の測定〕
引張試験機(オリエンテック社製RTC-1210)を用い、JIS Z0237に準じた180°引き剥がし試験方法で、300mm/minの引張速度で引き剥がし「粘着力(gf/inch)」を測定した。ここで、測定は25℃で行った。
【0257】
〔実施例1〕
表1に示す実施例1の各成分を均一に混合した。混合はラボプラストミル(東洋精機製)を使用し、80℃、100rpmの条件で10分間、加熱・攪拌することで行った。混合中の回転トルクは1分程度で一定値を示し、それ以降は変化しなかった。混合物を取り出して冷却し、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物1を調製した。
【0258】
調製直後の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物1をポリエチレンテレフタレートフィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm)と剥離フィルム(ニッパ株式会社製、FSC-6)とではさみ、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサにして、70℃でプレス成型し、厚さ200μmの未硬化シート1-1を調製した。
前記シートは、70℃に加熱することで、厚み調整を含む再加工が可能であった。
前記シートを幅20mm、長さ300mmに切断し、剥離フィルムを分離して粘着面を露出させ、2kgのゴムローラーを用いて、その粘着層面をステンレス板(SUS304、50x120x2mm)上に圧着・貼り合わせて粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表1の「未硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した未硬化シート>」の欄に示す。
【0259】
次に、未硬化シート1-1を150℃で5分間加熱・硬化し、硬化シート1-1を作成した。これを幅20mm、長さ300mmに切断し、剥離フィルムを分離して粘着面を露出させ、2kgのゴムローラーを用いて、その粘着層面をステンレス板(SUS304、50x120x2mm)上に圧着・貼り合わせて粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表1の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0260】
一方、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物1を、25℃で24時間保管後、上記と同様の方法で未硬化シート1-2を作成した。
前記シートは、70℃に加熱することで、厚み調整を含む再加工が可能であった。
次に、未硬化シート1-2を150℃で5分間加熱・硬化し、硬化シート1-2を作成した。これを幅20mm、長さ300mmに切断し、剥離フィルムを分離して粘着面を露出させ、2kgのゴムローラーを用いて、その粘着層面をステンレス板(SUS304、50x120x2mm)上に圧着・貼り合わせて粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表1の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、25℃で24時間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0261】
硬化シート1-1と硬化シート1-2の間で粘着力に差異は見られず、共に良好な粘着性を有していた。
【0262】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、表1に示す実施例2の各成分を均一に混合した。混合中の回転トルクは1分程度で一定値を示し、それ以降は変化しなかった。混合物を取り出して冷却し、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物2を調製した。
【0263】
実施例1と同様に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物2を用いて厚さ200μmの未硬化シート2-1を調製した。
前記シートは、70℃に加熱することで、厚み調整を含む再加工が可能であった。
実施例1と同様に、未硬化シート2-1の粘着力を測定した。結果を表1の「未硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した未硬化シート>」の欄に示す。
【0264】
次に、実施例1と同様に、未硬化シート2-1を150℃で5分間加熱・硬化し、硬化シート2-1を作成し、粘着力を測定した。結果を表1の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0265】
一方、実施例1と同様に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物2を、25℃で24時間保管後、上記と同様の方法で未硬化シート2-2を作成した。
前記シートは、70℃に加熱することで、厚み調整を含む再加工が可能であった。
次に、実施例1と同様に、未硬化シート2-2を150℃で5分間加熱・硬化し、硬化シート2-2を作成し、粘着力を測定した。結果を表1の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、25℃で24時間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0266】
硬化シート2-1と硬化シート2-2の間で粘着力に差異は見られず、共に良好な粘着性を有していた。
【0267】
〔比較例1及び比較例2〕
表1に示す各成分を、均一に混合すべく、ラボプラストミル(東洋精機製)を使用し、80℃、100rpmの条件で加熱・攪拌を行ったところ、攪拌直後から回転トルクが上昇し、目的とするシリコーン組成物を得ることができなかった。
【0268】
〔実施例3〕
表2に示す実施例3の各成分を均一に混合し、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物3を調製した。混合は、25℃でバッチミキサーを使用して行った。調製後、直ちに前記組成物の25℃での粘度を測定した。また、前記組成物を50℃で5日間保管後、25℃での粘度を測定した。結果を表2の「シリコーン組成物の粘度<調製直後>」及び「シリコーン組成物の粘度<調製後、50℃で5日間保管後>」の欄にそれぞれ示す。表2から明らかなように、経時での粘度上昇は見られなかった。
【0269】
次に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物3を、調製後直ちにポリエチレンテレフタレートフィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm)上に、アプリケーターで塗工し、150℃で5分間加熱することにより、硬化させた。更に、25℃で1日間保管し、硬化シート3-1を作成した。ここで、組成物の塗工量は、硬化後のシリコーン層の厚みが50μmとなるように調整した。
前記シートを幅20mm、長さ300mmに切断し、2kgのゴムローラーを用いて、その粘着層面をステンレス板(SUS304、50x120x2mm)上に圧着・貼り合わせて粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0270】
更に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物3を、50℃で5日間保管後、上記と同様の方法で硬化シート3-2を作成し、更に粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、50℃で5日間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0271】
両者の粘着力にほぼ差異は見られず、共に良好な粘着性を有していた。
【0272】
〔実施例4〕
実施例3と同様に、表2に示す実施例4の各成分を均一に混合し、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物4を調製した。調製後、直ちに前記組成物の25℃での粘度を測定した。また、前記組成物を50℃で5日間保管後、25℃での粘度を測定した。結果を表2の「シリコーン組成物の粘度」<調製直後>」及び「シリコーン組成物の粘度<調製後、50℃で5日間保管後>」の欄にそれぞれ示す。表2から明らかなように、経時での粘度上昇は見られなかった。
【0273】
次に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物4を調製後、直ちにヘプタン(溶剤)を加え(該組成物100部に対し、5質量部)、均一に混合し、得られた混合物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm)上に、アプリケーターで塗工し、150℃で5分間加熱することにより、溶媒除去・硬化させた。更に、25℃で1日間保管し、硬化シート4-1を作成した。ここで、組成物の塗工量は、溶剤除去・硬化後のシリコーン層の厚みが50μmとなるように調整した。
前記シートを幅20mm、長さ300mmに切断し、2kgのゴムローラーを用いて、その粘着層面をステンレス板(SUS304、50x120x2mm)上に圧着・貼り合わせて粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0274】
更に、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物4を、50℃で5日間保管後、上記と同様の方法で硬化シート4-2を作成し、更に粘着力測定用試験片を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、50℃で5日間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0275】
両者の粘着力に差異は見られず、保護材料としての使用に適した粘着力を有していた。
【0276】
〔比較例3〕
実施例3と同様に、表2に示す各成分を均一に混合し、比較用シリコーン組成物3を調製した。調製後、直ちに前記組成物の25℃での粘度を測定した。結果を表2の「シリコーン組成物の粘度<調製直後>」の欄に示す。
【0277】
また、実施例3と同様に、比較用硬化シート3-1を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0278】
一方、比較用シリコーン組成物3を50℃で5日間保管したところ、試料全体がゲル化し、粘度の測定や粘着力の測定は出来なかった。
【0279】
〔比較例4〕
実施例3と同様に、表2に示す各成分を均一に混合し、比較用シリコーン組成物4を調製した。調製後、直ちに前記組成物の25℃での粘度を測定した。また、前記組成物を50℃で5日間保管後、25℃での粘度を測定した。結果を表2の「シリコーン組成物の粘度<調製直後>」及び「シリコーン組成物の粘度<調製後、50℃で5日間保管後>」の欄にそれぞれ示す。
【0280】
次に、実施例3と同様に、比較用硬化シート4-1を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0281】
更に、実施例3と同様に、比較用硬化シート4-2を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、50℃で5日間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0282】
比較用硬化シート4-1及び4-2の粘着力は、それぞれ、実施例3で得られた硬化シート3-1及び3-2に比べて大きく低下し、粘着剤としての機能を損なうものであった。比較成分gの配合による悪影響であることは明らかである。
【0283】
〔比較例5〕
実施例3と同様に、表2に示す各成分を均一に混合し、比較用シリコーン組成物5を調製した。調製後、直ちに前記組成物の25℃での粘度を測定した。また、前記組成物を50℃で5日間保管後、25℃での粘度を測定した。結果を表2の「シリコーン組成物の粘度<調製直後>」及び「シリコーン組成物の粘度<調製後、50℃で5日間保管後>」の欄にそれぞれ示す。
【0284】
次に、実施例3と同様に、比較用硬化シート5-1を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製直後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0285】
更に、実施例3と同様に、比較用硬化シート5-2を作成し、粘着力を測定した。結果を表2の「硬化シートの粘着力<組成物調製後、50℃で5日間保管後に調製した硬化シート>」の欄に示す。
【0286】
比較用硬化シート5-1及び5-2の粘着力は、それぞれ、実施例3で得られた硬化シート3-1及び3-2に比べて大きく低下し、粘着剤としての機能を損なうものであった。この結果より、実施例3と類似組成であっても、比較成分g(シリカ)を配合した場合、粘着特性が大きく損なわれることが確認された。
【0287】
【0288】
【0289】
[総括]
加熱溶融性(ホットメルト性)を有することを意図して設計した硬化反応性シリコーン粘着剤組成物において、ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子(c)を使用し、且つ、固体粒子成分を使用しないことで、実施例1及び2において、実際にホットメルト性の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を調製することができ、且つ、当該組成物は保存安定性に優れ、当該組成物から作製されたシートの粘着特性並びに150℃における硬化性及び硬化後の粘着特性においていずれも優れていることが確認された。
【0290】
一方、通常のヒドロシリル化反応用触媒(c’)を使用した比較例1及び比較例2では、ホットメルト性の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を調製しようとしたところ、加熱・攪拌に伴って硬化反応が進行し、目的とするホットメルト性組成物を実現できなかった。
【0291】
液状の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物に関する実施例3及び4において、ヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子(c)を使用し、且つ、固体粒子成分を使用しないことで、保存安定性、並びに、当該組成物から作製されたシートの150℃における硬化性及び硬化後の粘着特性において優れる組成物を実現することができた。これにより、貯蔵安定性及び粘着特性に優れる一液型の液状の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物が設計可能である。なお、実施例3は粘着力が強い組成設計であり、実施例4は微粘着の組成設計である。
【0292】
一方、通常のヒドロシリル化反応用触媒(c’)を使用した比較例3では、保存後にゲル化してしまい、貯蔵安定性及び粘着特性に優れる一液型の液状の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物を得ることはできなかった。更に、実施例3に類似した組成でヒドロシリル化反応用触媒含有熱可塑性樹脂微粒子(c)を使用した場合であっても、シリカ成分(g)を使用する(比較例4及び5)と、実施例3と類似組成であるにもかかわらず、その粘着力が大きく劣り、十分な粘着力を実現できないものであった。このため、固体粒子量を制御しないと、硬化反応性シリコーン粘着剤組成物における硬化後の粘着特性が大きく損なわれ、特に高粘着性の処方設計において重大な障害となることが確認できた。