(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】基板保持装置および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240806BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/306 R
H01L21/304 644A
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2019226437
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019112675
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083224(JP,A)
【文献】特開2007-250783(JP,A)
【文献】米国特許第04621459(US,A)
【文献】特開2014-216391(JP,A)
【文献】特開2018-15890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
複数のピストンをそれぞれ有する複数のアクチュエータと、
前記複数のピストンにそれぞれ接続された複数の可動台を備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、複数の可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記複数の可動台は、前記複数の可動軸を回転可能に支持する複数の軸受と、前記複数のピストンに固定された複数の連結部材を有し、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動台を介して前記複数の可動軸にそれぞれ連結されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸および前記複数の可動台を一体に、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されている、基板保持装置。
【請求項2】
前記複数の偏心軸は、前記複数の第1軸部と前記複数の第2軸部とを接続する複数の中間軸部をさらに有しており、
前記複数の第1軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第2軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定されている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記複数の電動機を同じ速度かつ同じ位相で回転させる動作制御部をさらに備えている、請求項1または2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向は、前記中心軸線に向かう方向および前記中心軸線から遠ざかる方向である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
複数のアクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、複数の可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸にそれぞれ連結されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記複数のアクチュエータのそれぞれは、
ピストンと、
前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、
前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えており、
前記隔壁膜は、
前記ピストンの端部に接触する中央部と、
前記中央部に接続され、かつ前記ピストンの側面に沿って延びる内壁部と、
前記内壁部に接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部と、
前記折り返し部に接続され、かつ前記内壁部の外側に位置する外壁部とを有する、基板保持装置。
【請求項6】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
複数のアクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、複数の可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸にそれぞれ連結されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記基板保持装置は、
前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの移動距離を測定する少なくとも1つの非接触式の距離センサと、
前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えており、
前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転しているときの前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの位置の平均値である、基板保持装置。
【請求項7】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
複数のアクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、複数の可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸にそれぞれ連結されており、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記基板保持装置は、
前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの移動距離を測定する少なくとも1つの非接触式の距離センサと、
前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えており、
前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転している間の前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの位置の最大値と最小値との差である、基板保持装置。
【請求項8】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
アクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸に連結されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記アクチュエータは、
ピストンと、
前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、
前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えており、
前記隔壁膜は、
前記ピストンの端部に接触する中央部と、
前記中央部に接続され、かつ前記ピストンの側面に沿って延びる内壁部と、
前記内壁部に接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部と、
前記折り返し部に接続され、かつ前記内壁部の外側に位置する外壁部とを有する、基板保持装置。
【請求項9】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
アクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸に連結されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記アクチュエータは、
ピストンと、
前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、
前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えており、
前記基板保持装置は、
前記可動軸の移動距離を測定する非接触式の距離センサと、
前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えており、
前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転しているときの前記可動軸の位置の平均値である、基板保持装置。
【請求項10】
基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、
前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、
前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、
予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、
アクチュエータを備え、
前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、
前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、
前記複数の偏心軸は、可動軸および複数の基準軸から構成されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸に連結されており、
前記アクチュエータは、前記可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、
前記アクチュエータは、
ピストンと、
前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、
前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えており、
前記基板保持装置は、
前記可動軸の移動距離を測定する非接触式の距離センサと、
前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えており、
前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転している間の前記可動軸の位置の最大値と最小値との差である、基板保持装置。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の基板保持装置と、
処理具を基板の第1の面に接触させて該第1の面を処理する処理ヘッドとを備えている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板を保持して回転させる基板保持装置に関する。また、本発明は、そのような基板保持装置を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスを形成する工程においては、微粒子や塵埃などの異物がデバイスに付着することがある。デバイスに付着した異物は、配線間の短絡や回路の不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、デバイスが形成されたウェーハを洗浄して、ウェーハ上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
ウェーハの裏面(ベアシリコン面)にも、上述したような微粒子や粉塵などの異物が付着することがある。このような異物がウェーハの裏面に付着すると、ウェーハが露光装置のステージ基準面から離間したりウェーハ表面がステージ基準面に対して傾き、結果として、パターニングのずれや焦点距離のずれが生じることとなる。このような問題を防止するために、ウェーハの裏面に付着した異物を除去することが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、基板の表面の全体をより効率的に処理することができる装置への要請が高まっている。そこで、複数の偏心軸に連結された複数のローラーによって基板の周縁部を把持し、偏心軸自体の位置は静止したままで各偏心軸をその軸心を中心に回転させることで基板を円運動させながら、基板をその軸心を中心に回転させる基板保持装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
このような基板保持装置を使用した基板処理装置では、ローラーが処理具に接触することなく、処理具は、基板の表面の最外部を含む表面全体を処理することができる。また、このような円運動と基板の軸心を中心とした回転との組み合わせは、基板の表面上の各点での速度を上げることができ、結果として、基板の処理の効率を向上させることができる。
【0007】
このような基板保持装置では、複数の偏心軸の位相を互いに合わせる必要がある。しかしながら、複数の偏心軸の位相を正確に合わせることは難しく、位相ずれにより基板の回転中に、偏心軸に振動が発生することがある。複数の偏心軸のうちの1つに振動が発生した場合、これら偏心軸を支持する共通の支持プレートを介して上記振動が他の偏心軸に伝搬し、基板の保持が不安定になることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、ウェーハなどの基板を円運動させ、かつ基板をその軸心を中心として回転させながら、該基板を安定して保持することができる基板保持装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような基板保持装置を用いて基板の表面を処理するための基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、複数のアクチュエータを備え、前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、前記複数の偏心軸は、複数の可動軸および複数の基準軸から構成されており、前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸にそれぞれ連結されており、前記複数のアクチュエータは、前記複数の可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されている、基板保持装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記複数の偏心軸は、前記複数の第1軸部と前記複数の第2軸部とを接続する複数の中間軸部をさらに有しており、前記複数の第1軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第2軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定されている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記複数の電動機を同じ速度かつ同じ位相で回転させる動作制御部をさらに備えている。
一態様では、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向は、前記中心軸線に向かう方向および前記中心軸線から遠ざかる方向である。
一態様では、前記複数のアクチュエータのそれぞれは、ピストンと、前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えている。
一態様では、前記隔壁膜は、前記ピストンの端部に接触する中央部と、前記中央部に接続され、かつ前記ピストンの側面に沿って延びる内壁部と、前記内壁部に接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部と、前記折り返し部に接続され、かつ前記内壁部の外側に位置する外壁部とを有する。
一態様では、前記基板保持装置は、前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの移動距離を測定する少なくとも1つの非接触式の距離センサをさらに備えている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えている。
一態様では、前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転しているときの前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの位置の平均値である。
一態様では、前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転している間の前記複数の可動軸のうちの少なくとも1つの位置の最大値と最小値との差である。
【0011】
一態様では、基板を円運動させながら、前記基板をその軸心を中心として回転させる基板保持装置であって、前記基板の周縁部に接触可能な複数のローラーと、前記複数のローラーを回転させる複数の電動機と、予め定められた中心軸線の周りに配列された複数の偏心軸と、アクチュエータを備え、前記複数の偏心軸は、複数の第1軸部と、前記複数の第1軸部からそれぞれ偏心した複数の第2軸部を有しており、前記複数のローラーは前記複数の第2軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第1軸部は前記複数の電動機にそれぞれ連結されており、前記複数の偏心軸は、可動軸および複数の基準軸から構成されており、前記アクチュエータは、前記可動軸に連結されており、前記アクチュエータは、前記可動軸を、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向に移動させるように構成されており、前記アクチュエータは、ピストンと、前記ピストンから離れて配置されたハウジングと、前記ピストンと前記ハウジングとの間に圧力室を形成する隔壁膜とを備えている、基板保持装置が提供される。
【0012】
一態様では、前記複数の偏心軸は、前記複数の第1軸部と前記複数の第2軸部とを接続する複数の中間軸部をさらに有しており、前記複数の第1軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定され、前記複数の第2軸部は前記複数の中間軸部にそれぞれ固定されている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記複数の電動機を同じ速度かつ同じ位相で回転させる動作制御部をさらに備えている。
一態様では、前記複数の基準軸に近づく方向および前記複数の基準軸から遠ざかる方向は、前記中心軸線に向かう方向および前記中心軸線から遠ざかる方向である。
一態様では、前記隔壁膜は、前記ピストンの端部に接触する中央部と、前記中央部に接続され、かつ前記ピストンの側面に沿って延びる内壁部と、前記内壁部に接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部と、前記折り返し部に接続され、かつ前記内壁部の外側に位置する外壁部とを有する。
一態様では、前記基板保持装置は、前記可動軸の移動距離を測定する非接触式の距離センサをさらに備えている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記移動距離の測定値、または前記移動距離の複数の測定値から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、前記基板保持装置に異常が生じているか否かを判断するように構成された動作制御部をさらに備えている。
一態様では、前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転しているときの前記可動軸の位置の平均値である。
一態様では、前記指標値は、前記複数のローラーが一回転以上回転している間の前記可動軸の位置の最大値と最小値との差である。
【0013】
一態様では、上記基板保持装置と、処理具を基板の第1の面に接触させて該第1の面を処理する処理ヘッドとを備えている、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の可動軸は、複数のアクチュエータにそれぞれ連結されており、共通の支持プレートには支持されていない。このような構成によれば、基板の回転中に、1つの可動軸に振動が発生した場合でも、振動が他の可動軸に伝搬することを防ぐことができる。結果として、基板保持装置は、基板を安定して保持することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、アクチュエータのハウジングは、ピストンから離れて配置されているため、ピストンとハウジングとの間に摺動抵抗は発生しない。結果として、基板保持装置は、基板に過剰な負荷を与えることなく、安定して基板を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】基板保持装置の一実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4(a)乃至
図4(d)は、基板保持装置がウェーハを受け取る動作を説明する模式図である。
【
図5】アクチュエータの一実施形態を示す模式図である。
【
図6】隔壁膜の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、第1圧力室内の圧力が第2圧力室内の圧力よりも高いときのアクチュエータの状態を示す図であり、
図7(b)は、第2圧力室内の圧力が第1圧力室内の圧力よりも高いときのアクチュエータの状態を示す図である。
【
図8】ウェーハの回転異常が発生しているときの可動軸の位置の一例を示す図である。
【
図9】ウェーハの回転異常が発生しているときの可動軸の位置の他の例を示す図である。
【
図10】距離センサの他の実施形態を示す模式図である。
【
図11】
図1乃至
図10を参照して説明した基板保持装置を備えた基板処理装置の一実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、基板保持装置の一実施形態を模式的に示す平面図であり、
図2は、
図1に示す基板保持装置の側面図であり、
図3は、
図1に示す基板保持装置の底面図である。本実施形態の基板保持装置は、基板の一例であるウェーハWを保持しながら、ウェーハWを円運動させ、かつウェーハWをその軸心を中心に回転させるように構成されている。基板保持装置10は、ウェーハWの周縁部に接触可能な複数のローラー11a,11bと、これら複数のローラー11a,11bを回転させる複数の電動機29a,29bと、複数のローラー11a,11bと複数の電動機29a,29bを連結する複数の偏心軸13a,13bと、複数の電動機29a,29bを同じ速度かつ同じ位相で回転させる動作制御部40を備えている。
【0018】
動作制御部40は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部40は、記憶装置40aと、演算装置40bを備えている。演算装置40bは、記憶装置40aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置40aは、演算装置40bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0019】
ローラー11aは、ウェーハWの周縁部を保持するウェーハ保持面(基板保持面)31aを有しており、ローラー11bは、ウェーハWの周縁部を保持するウェーハ保持面(基板保持面)31bを有している。ローラー11aとローラー11bは同じ構成および同じ大きさを有している。複数の偏心軸13a,13bは、予め定められた基板保持装置10の中心軸線CPの周りに配列されている。
【0020】
本実施形態の基板保持装置10は、2つのローラー11a、2つのローラー11b、2つの偏心軸13a、2つの偏心軸13b、2つの電動機29a、および2つの電動機29bを備えているが、これら構成要素の数は本実施形態に限定されない。
【0021】
複数の偏心軸13aのそれぞれは、第1軸部14aと、第1軸部14aから偏心した第2軸部15aと、第1軸部14aと第2軸部15aとを接続する中間軸部16aを有している。第1軸部14a、第2軸部15a、および中間軸部16aのうちの少なくとも2つは、一体構造物であってもよい。例えば、第1軸部14aと中間軸部16aは一体構造物であってもよい。他の例では、第1軸部14a、第2軸部15a、および中間軸部16aの全体が一体構造物であってもよい。
図2に示す各偏心軸13aはクランク軸の形状を有しているが、各偏心軸13aの形状は、第2軸部15aが第1軸部14aから所定の距離だけ偏心している限りにおいて本実施形態に限定されない。
【0022】
複数のローラー11aは複数の第2軸部15aの一端にそれぞれ固定され、複数の第2軸部15aの他端は複数の中間軸部16aにそれぞれ固定されている。複数の第1軸部14aの一端は、複数のカップリング28aを介して複数の電動機29aにそれぞれ連結され、複数の第1軸部14aの他端は複数の中間軸部16aにそれぞれ固定されている。
【0023】
複数の偏心軸13bのそれぞれは、第1軸部14bと、第1軸部14bから偏心した第2軸部15bと、第1軸部14bと第2軸部15bとを接続する中間軸部16bを有している。第1軸部14b、第2軸部15b、および中間軸部16bのうちの少なくとも2つは、一体構造物であってもよい。例えば、第1軸部14bと中間軸部16bは一体構造物であってもよい。他の例では、第1軸部14b、第2軸部15b、および中間軸部16bの全体が一体構造物であってもよい。
図2に示す各偏心軸13bはクランク軸の形状を有しているが、各偏心軸13bの形状は、第2軸部15bが第1軸部14bから所定の距離だけ偏心している限りにおいて本実施形態に限定されない。
【0024】
複数のローラー11bは複数の第2軸部15bの一端にそれぞれ固定され、複数の第2軸部15bの他端は複数の中間軸部16bにそれぞれ固定されている。複数の第1軸部14bの一端は、複数のカップリング28bを介して複数の電動機29bにそれぞれ連結され、複数の第1軸部14bの他端は複数の中間軸部16bにそれぞれ固定されている。
【0025】
電動機29aは、偏心軸13aをその第1軸部14aを中心に回転させ、電動機29bは、偏心軸13bをその第1軸部14bを中心に回転させるように構成されている。電動機29a,29bは、動作制御部40に接続されている。
【0026】
偏心軸13aの第2軸部15aは、第1軸部14aから距離eだけ偏心している。したがって、電動機29aが作動すると、ローラー11aは、第2軸部15aを中心に回転しながら半径eの円運動を行う。ローラー11aの軸心は、第2軸部15aの軸心と一致している。すなわち、ローラー11aは、その軸心を中心に回転しながら、第1軸部14aの軸心の周りで半径eの円運動を行う。ローラー11aが第1軸部14aの軸心を中心に一回転したとき、ローラー11aは、ローラー11aの軸心を中心に一回転する。
【0027】
同様に、偏心軸13bの第2軸部15bは、第1軸部14bから距離eだけ偏心している。したがって、電動機29bが作動すると、ローラー11bは、第2軸部15bを中心に回転しながら半径eの円運動を行う。ローラー11bの軸心は、第2軸部15bの軸心と一致している。すなわち、ローラー11bは、その軸心を中心に回転しながら、第1軸部14bの軸心の周りで半径eの円運動を行う。ローラー11bが第1軸部14bの軸心を中心に一回転したとき、ローラー11bは、ローラー11bの軸心を中心に一回転する。本明細書において、円運動は、対象物が円軌道上を移動する運動と定義される。
【0028】
電動機29a,29bの動作は動作制御部40によって制御される。上述のように、動作制御部40は全ての電動機29a,29bを同じ速度かつ同じ位相で回転させる。より具体的には、動作制御部40は、電動機29a,29bに指令を出して、全ての電動機29a,29bを同じタイミングで始動させ、かつ全ての電動機29a,29bを同じ方向に回転させる。さらに動作制御部40は、電動機29a,29bの動作中、それぞれの回転速度および位相を同期させる。
【0029】
結果として、全ての偏心軸13a,13bが、第1軸部14a,14bの軸心を中心に、同じ方向に同じ回転速度および同じ位相で回転する。全てのローラー11a,11bは、その軸心を中心に同じ方向に同じ回転速度および同じ位相で回転しながら、第1軸部14a,14bの軸心を中心に円運動する。したがって、ウェーハWがローラー11a,11bによって保持されているとき、動作制御部40が電動機29a,29bを作動させることにより、ウェーハWは、その軸心を中心に回転しながら、半径eの円運動を行う。
【0030】
このように、基板保持装置10は、簡単な構造でウェーハWを円運動させながら、ウェーハWをその軸心を中心に回転させることができる。このような円運動とウェーハWの軸心を中心とした回転との組み合わせは、ウェーハWの表面上の各点での速度を上げることができる。したがって、後述する処理ヘッドをウェーハWの表面に押し付けたときの、処理ヘッドとウェーハWの表面との相対速度が増し、ウェーハWの処理レートを向上させることができる。
【0031】
複数の偏心軸13a,13bにはそれぞれカウンターウェイト17a,17bが固定されている。より具体的には、カウンターウェイト17a,17bは、中間軸部16a,16bにそれぞれ固定されている。カウンターウェイト17aとローラー11aは、第1軸部14aに関して対称に配置されている。カウンターウェイト17aの重さは、偏心軸13aが第1軸部14aを中心に回転しているときに、第1軸部14aからローラー11aに向かって半径方向に発生する遠心力が、カウンターウェイト17aに作用する遠心力よってキャンセルされる重さである。
【0032】
同様に、カウンターウェイト17bとローラー11bは、第1軸部14bに関して対称に配置されている。カウンターウェイト17bの重さは、偏心軸13bが第1軸部14bを中心に回転しているときに、第1軸部14bからローラー11bに向かって半径方向に発生する遠心力が、カウンターウェイト17bに作用する遠心力よってキャンセルされる重さである。このようなカウンターウェイト17a,17bは、偏心軸13a,13bが回転しているときに、重量のアンバランスに起因する偏心軸13a,13bの振動を防止することができる。
【0033】
基板保持装置10は、ベースプレート20と、ベースプレート20の下面に固定された複数の直動ガイド26と、複数の直動ガイド26に支持された複数の可動台21と、複数の可動台21に接続された複数のアクチュエータ18とをさらに備えている。直動ガイド26は、可動台21の動きをベースプレート20の下面に平行な方向への直線運動に制限する。
【0034】
各可動台21は、偏心軸13bを回転可能に支持する軸受24と、アクチュエータ18に連結された連結部材23を有している。複数のアクチュエータ18は、複数の可動台21を介して複数の偏心軸13bにそれぞれ連結されている。複数の軸受24をそれぞれ含む複数の可動台21は、複数の偏心軸13bと一体に、複数のアクチュエータ18によってそれぞれ独立に移動される。
【0035】
アクチュエータ18は、ベースプレート20の下面に固定されている。アクチュエータ18の動作は動作制御部40によって制御される。動作制御部40は、アクチュエータ18をそれぞれ独立して動作させることができる。アクチュエータ18は、可動台21をベースプレート20と平行に移動させるように構成されている。
【0036】
偏心軸13aは、ベースプレート20を貫通して延びている。ローラー11aはベースプレート20の上方に配置され、電動機29aはベースプレート20の下方に配置されている。偏心軸13aは、ベースプレート20に保持された軸受19によって回転可能に支持されている。これら偏心軸13aの位置は固定されている。電動機29aは、電動機支持体27aを介してベースプレート20に固定されている。より具体的には、電動機支持体27aはベースプレート20の下面に固定され、電動機29aは電動機支持体27aに固定されている。
【0037】
偏心軸13bは、可動台21およびベースプレート20を貫通して延びている。ローラー11bはベースプレート20の上方に配置され、電動機29bはベースプレート20の下方に配置されている。偏心軸13bは可動台21の軸受24によって回転可能に支持されている。電動機29bは、電動機支持体27bを介して可動台21に固定されている。より具体的には、電動機支持体27bは可動台21の下面に固定され、電動機29bは電動機支持体27bに固定されている。
【0038】
上述の構成によれば、偏心軸13aは、ベースプレート20に対して移動不可な基準軸であり、偏心軸13bは、ベースプレート20に対して移動可能な可動軸である。以下の説明では、偏心軸13aを基準軸13aと呼び、偏心軸13bを可動軸13bと呼ぶことがある。アクチュエータ18は、可動台21を介して、可動軸13bに連結されている。可動台21は、可動軸13bを回転可能に支持する軸受24と、アクチュエータ18に連結された連結部材23を有する。したがって、可動台21は、アクチュエータ18と可動軸13bとを連結する。
【0039】
アクチュエータ18は、可動軸13bを、可動台21を介して、ベースプレート20と平行に移動させることができる。具体的には、複数のアクチュエータ18は、複数の可動軸13bを、複数の基準軸13aに近づく方向および複数の基準軸13aから遠ざかる方向に移動させるように構成されている。2つの可動軸13bが、2つの基準軸13aに近づく方向に移動すると、ウェーハWは2つのローラー11aおよび2つのローラー11bによって保持される。2つの可動軸13bが、2つの基準軸13aから遠ざかる方向に移動すると、ウェーハWは2つのローラー11aおよび2つのローラー11bから解放される。
【0040】
図3に示すように、本実施形態では、アクチュエータ18および直動ガイド26は、基板保持装置10の中心軸線CPを向いて配置されている。アクチュエータ18は、可動軸13bを
図3の矢印の方向に移動させる。本実施形態では複数の基準軸13aに近づく方向および複数の基準軸13aから遠ざかる方向は、中心軸線CPに向かう方向および中心軸線CPから遠ざかる方向である。可動軸13bを中心軸線CPに向かう方向に移動させると、ローラー11bはウェーハWの中心に向かう把持力でウェーハWを保持することができる。本実施形態の構成によれば、基板保持装置10は、ウェーハWを最小限の力で効率的に保持することができる。一実施形態では、複数のアクチュエータ18および複数の直動ガイド26のそれぞれは、複数の基準軸13aのそれぞれを向いて配置されていてもよい。
【0041】
図4(a)乃至
図4(d)は、基板保持装置10がウェーハWを受け取る動作を説明する模式図である。
図4(a)に示すように、ウェーハWを受け取る前に、各アクチュエータ18(
図2および
図3参照)を作動させ、各ローラー11bを中心軸線CPから離れる方向に移動させる。このときローラー11aおよびローラー11bは、外側に偏心している。
【0042】
次に、
図4(b)に示すように、ウェーハWは、図示しない搬送装置により基板保持装置10に搬送される。さらに、
図4(c)に示すように、ウェーハWがローラー11aとローラー11bとの間に位置した状態で、基準軸13aを180度回転させて、各ローラー11aを内側に偏心させる。そして、
図4(d)に示すように、各アクチュエータ18を作動させ、各ローラー11bがウェーハWに接触するまで各ローラー11bおよび各可動軸13bを各基準軸13aに近づく方向に移動させる。
【0043】
このようにして、ウェーハWの周縁部は、ローラー11aのウェーハ保持面31aとローラー11bのウェーハ保持面31bによって保持される。ウェーハWを基板保持装置10から取り出すときは、
図4(a)乃至
図4(d)に示す工程が逆の順序で行われる。
【0044】
従来の基板保持装置(例えば特許文献1参照)では、複数の可動軸は1つの支持プレートに支持されており、支持プレートに連結された1つのアクチュエータによって、複数の可動軸を支持プレートと一体に移動させることによって、基板を保持するように構成されていた。このような構成によれば、複数の偏心軸間の位相のずれ等により、複数の可動軸のうちの1つに振動が発生した場合、他の可動軸に上記振動が伝搬し、基板の保持が不安定になる。
【0045】
これに対し、上述した実施形態では、2つの可動軸13bは、2つの可動台21にそれぞれ支持されており、さらに2つのアクチュエータ18にそれぞれ連結されている。このような構成によれば、ウェーハWの回転中に、1つの可動軸13bに振動が発生した場合でも、振動が他の可動軸13bに伝搬することを防ぐことができる。結果として、基板保持装置10は、ウェーハWを安定して保持することができる。
【0046】
図5は、アクチュエータ18の一実施形態を示す模式図である。各アクチュエータ18は、アクチュエータ18の長手方向に配置されたピストン51と、ピストン51の外側に配置されたハウジング52a,52bと、ピストン51とハウジング52a,52bとの間に圧力室57a,57bを形成する隔壁膜(ダイヤフラム)55a,55bとを備えている。ピストン51は、
図5の矢印で示す方向(アクチュエータ18の長手方向)に移動可能となっている。ハウジング52a,52bは、ピストン51から離れて配置されている。ハウジング52aは、ピストン51の一端を囲むように配置されており、ハウジング52bは、ピストン51の他端を囲むように配置されている。
【0047】
ピストン51には、可動台21の連結部材23が接続されており、ピストン51は、連結部材23によって支持されている。連結部材23を含む可動台21は、ピストン51と一体に、
図5の矢印で示す方向に移動可能となっている。より具体的には、可動台21は、ピストン51と一体に、基準軸13aに近づく方向および基準軸13aから遠ざかる方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、アクチュエータ18は、基板保持装置10の中心軸線CPを向いて配置されているため(
図3参照)、ピストン51および可動台21の移動方向は、中心軸線CPに向かう方向および中心軸線CPから遠ざかる方向である。
【0048】
ハウジング52a,52bは、ピストン51の側面を囲むように配置されたハウジング本体53a,53bと、ハウジング本体53a,53bに固定された蓋54a,54bとを備えている。隔壁膜55aの縁は、ハウジング本体53aと蓋54aとの間に挟まれている。同様に、隔壁膜55bの縁は、ハウジング本体53bと蓋54bとの間に挟まれている。
【0049】
圧力室57aは、隔壁膜55aとハウジング52aの内面とによって形成されている。同様に、圧力室57bは、隔壁膜55bとハウジング52bの内面とによって形成されている。より具体的には、圧力室57aは、隔壁膜55aと蓋54aの内面とによって形成されており、圧力室57bは、隔壁膜55bと蓋54bの内面とによって形成されている。隔壁膜55a,55bは同一の構成を有している。本実施形態では、ハウジング52a,52bは同一の構成を有しているが、異なる構成を有してもよい。
【0050】
ハウジング52a,52bの蓋54a,54bには、圧縮気体流路59a,59bが形成されている。圧縮気体流路59a,59bは、圧力レギュレータ62a,62bおよび切り替え弁63a,63bを経由して圧縮気体供給源64に接続されている。圧力室57a,57bは、圧縮気体流路59a,59bを通じて圧力レギュレータ62a,62bに連通している。
【0051】
ピストン51を移動させるときは、切り替え弁63a,63bを操作して圧力室57a,57bを圧縮気体供給源64に連通させる。本実施形態では、切り替え弁63a,63bは、動作制御部40に接続されている。切り替え弁63a,63bは、圧力室57a,57bを圧縮気体供給源64または大気に選択的に連通させる弁である。切り替え弁63a,63bとしては三方弁を用いることができる。
【0052】
圧縮空気などの圧縮気体は、圧縮気体供給源64から圧縮気体流路59a,59bを通って圧力室57a,57bに供給される。圧縮気体供給源64の例として、ポンプ、または工場に予め設置されているユーティリティとしての圧縮気体供給ラインが挙げられる。圧力室57a,57b内の圧縮気体の圧力は、圧力レギュレータ62a,62bによって制御される。本実施形態では、圧力レギュレータ62a,62bは、電空レギュレータである。本実施形態の圧力レギュレータ62a,62bは、動作制御部40に接続されている。一実施形態では、圧力レギュレータ62a,62bは、手動で操作する圧力レギュレータであってもよい。この場合、圧力レギュレータ62a,62bは、動作制御部40に接続されない。
【0053】
動作制御部40は、所定の設定圧力値を圧力レギュレータ62a,62bに送信し、圧力レギュレータ62a,62bは、上記設定圧力値に従って、圧力室57a,57b内の圧縮気体の圧力を制御するように構成されている。このような圧力レギュレータ62a,62bの例として、電空レギュレータ、または機械式レギュレータが挙げられる。一実施形態では、圧力レギュレータ62bを電空レギュレータとし、圧力レギュレータ62aを機械式レギュレータとしてもよい。圧力レギュレータ62aを機械式レギュレータとする場合、圧力レギュレータ62aは、動作制御部40に接続されない。
【0054】
ピストン51は、圧力室57a内の圧力と圧力室57b内の圧力との差に応じて移動する。圧力室57a内の圧力を、圧力室57b内の圧力よりも高くすると、ピストン51は基準軸13aから遠ざかる方向(
図3参照)に移動される。圧力室57b内の圧力を、圧力室57a内の圧力よりも高くすると、ピストン51は基準軸13aに近づく方向(
図3参照)に移動される。
【0055】
本実施形態では、ピストン51を移動させるときは、圧力室57a,57bの両方に圧縮気体を導入し、圧力室57aおよび圧力室57bのうちのいずれか一方の内部の圧縮気体の圧力を、他方の内部の圧縮気体の圧力よりも高くする。一実施形態では、ピストン51を移動させるときは、圧力室57aおよび圧力室57bのうちのいずれか一方のみに圧縮気体を導入し、かつ他方を大気に連通させてもよい。
【0056】
図6は、隔壁膜55a,55bの一実施形態を模式的に示す断面図である。隔壁膜55aは、ピストン51の一方の端部に接触する中央部71aと、中央部71aに接続され、かつピストン51の側面に沿って延びる内壁部72aと、内壁部72aに接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部73aと、折り返し部73aに接続され、かつ内壁部72aの外側に位置する外壁部74aとを有している。隔壁膜55aはピストン51の一端に接触している。圧力室57aに圧縮気体が導入されているとき、外壁部74aは、ハウジング本体53aの内面に接触する。
【0057】
本実施形態では、中央部71aは円形である。内壁部72aおよび外壁部74aは円筒形状を有し、内壁部72aはピストン51の側面に接触している。外壁部74aは内壁部72aを囲むように配置されている。
【0058】
同様に、隔壁膜55bは、ピストン51の他方の端部に接触する中央部71bと、中央部71bに接続され、かつピストン51の側面に沿って延びる内壁部72bと、内壁部72bに接続され、かつ湾曲した断面を有する折り返し部73bと、折り返し部73bに接続され、かつ内壁部72bの外側に位置する外壁部74bとを有している。隔壁膜55bはピストン51の他端に接触している。圧力室57bに圧縮気体が導入されているとき、外壁部74bは、ハウジング本体53bの内面に接触する。
【0059】
本実施形態では、中央部71bは円形である。内壁部72bおよび外壁部74bは円筒形状を有し、内壁部72bはピストン51の側面に接触している。外壁部74bは内壁部72bを囲むように配置されている。
【0060】
隔壁膜55a,55bはピストン51に接触しているが、ピストン51に固定されていない。隔壁膜55aの縁を構成する肉厚部75aは、ハウジング本体53aと蓋54aとの間に挟まれている。同様に、隔壁膜55bの縁を構成する肉厚部75bは、ハウジング本体53bと蓋54bとの間に挟まれている。隔壁膜55a,55bは、柔軟な材料から形成されている。隔壁膜55a,55bを構成する材料の例としては、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが挙げられる。耐屈曲疲労性の高いクロロプレンゴムが好ましく用いられる。
【0061】
図7(a)は、圧力室57a(第1圧力室57a)内の圧力が圧力室57b(第2圧力室57b)内の圧力よりも高いときのアクチュエータ18の状態を示す図であり、
図7(b)は、圧力室57b内の圧力が圧力室57a内の圧力よりも高いときのアクチュエータ18の状態を示す図である。
【0062】
図7(a)に示すように、圧力室57a内の圧力が、圧力室57b内の圧力よりも高くなると、圧力室57bに向かう方向の力がピストン51に加わる。結果として、隔壁膜55a,55bが変形しながら、ピストン51、可動台21、および可動軸13bが一体に基準軸13aから遠ざかる方向(
図3参照)に移動する。このとき、折り返し部73aはその形状を保ちながら、内壁部72aの一部は折り返し部73aの一部となり、かつ折り返し部73aの一部は外壁部74aの一部となる。これと共に、折り返し部73bはその形状を保ちながら、外壁部74bの一部は折り返し部73bの一部となり、かつ折り返し部73bの一部は内壁部72bの一部となる。
【0063】
図7(b)に示すように、圧力室57b内の圧力が、圧力室57a内の圧力よりも高くなると、圧力室57aに向かう方向の力がピストン51に加わる。結果として、隔壁膜55bが変形しながら、ピストン51、可動台21、および可動軸13bが一体に基準軸13aに近づく方向(
図3参照)に移動する。このとき、折り返し部73bはその形状を保ちながら、内壁部72bの一部は折り返し部73bの一部となり、かつ折り返し部73bの一部は外壁部74bの一部となる。これと共に、折り返し部73aはその形状を保ちながら、外壁部74aの一部は折り返し部73aの一部となり、かつ折り返し部73aの一部は内壁部72aの一部となる。
【0064】
このような隔壁膜55a,55bの動きにより、ピストン51は隔壁膜55a,55bからの反力をほとんど受けることなく、スムーズに移動することができる。通常のエアシリンダのように、ピストンとハウジングが接触していると、ウェーハの回転中に振動が発生した場合、ピストンとハウジングの間に摺動抵抗が発生する。このような摺動抵抗は、回転中のウェーハに過剰な負荷を与え、ウェーハの保持が不安定となる要因となる。本実施形態では、ハウジング52a,52bは、ピストン51から離れて配置されているため、ピストン51とハウジング52a,52bとの間に摺動抵抗は発生しない。結果として、基板保持装置10は、ウェーハWに過剰な負荷を与えることなく、安定してウェーハWを保持することができる。
【0065】
図5に示すように、基板保持装置10は、可動軸13bの移動距離を測定する非接触式の距離センサ80を備えている。距離センサ80はアクチュエータ18の外側に配置されており、アクチュエータ18および可動台21の近傍に配置されている。可動台21の連結部材23には磁石81が固定されており、距離センサ80は、磁石81に対面している。本実施形態では、距離センサ80は、磁気センサであり、磁石81の距離センサ80に対する相対的な移動距離を測定することができる。
【0066】
距離センサ80の位置は固定されている。一方、可動台21,ピストン51,および可動軸13bは一体に移動可能である。したがって、可動軸13bが基準軸13aに近づく方向および基準軸13aから遠ざかる方向に移動すると、可動台21に固定された磁石81の距離センサ80に対する相対位置が変化する。磁石81の移動距離は、可動軸13bの移動距離に相当する。したがって、距離センサ80は、可動軸13bの移動距離を測定することができる。可動軸13bの移動距離は、予め定められた基準位置に対する可動軸13bの相対的な位置のことである。以下、予め定められた基準位置に対する可動軸13bの相対的な位置を単に可動軸13bの位置と呼ぶことがある。
【0067】
距離センサ80は、動作制御部40に接続されており、距離センサ80は、可動軸13bの移動距離の測定値(可動軸13bの位置の測定値)を動作制御部40に送信する。動作制御部40は、可動軸13bの移動距離の測定値(可動軸13bの位置)と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、基板保持装置10がウェーハWを正しく保持しているか否か(基板保持装置10に異常が生じているか否か)を判断することができる。一実施形態では、動作制御部40は、上記移動距離の測定値(可動軸13bの位置)がしきい値よりも大きいとき、または小さいときに警報信号を発してもよい。さらに一実施形態では、動作制御部40は、上記移動距離の複数の測定値(可動軸13bの位置の複数の測定値)から算出された指標値と、予め設定されたしきい値とを比較することによって、基板保持装置10がウェーハWを正しく保持しているか否か(基板保持装置10に異常が生じているか否か)を判断してもよい。さらに一実施形態では、動作制御部40は、上記指標値がしきい値よりも大きいとき、または小さいときに警報信号を発してもよい。上記指標値の例として、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値、およびローラー11bが一回転以上回転している間の可動軸13bの位置の最大値と最小値との差(可動軸13bの位置の振幅)が挙げられる。
【0068】
可動軸13bを、基準軸13aに近づく方向に移動させたときの可動軸13bの移動距離の測定値がしきい値よりも小さいことの原因としては、ウェーハWが基板保持装置10に正しく保持されていないことが考えられる。上記移動距離の測定値がしきい値よりも大きいことの原因としては、ウェーハWの破損、またはウェーハ外れ(ウェーハWの脱落、掴み損ない)が考えられる。
【0069】
さらに一実施形態では、可動軸13bの移動距離の測定値に対して第1しきい値、および第1しきい値よりも小さい第2しきい値を設けてもよい。具体的には、動作制御部40は、上記移動距離の測定値が第1しきい値よりも大きいときに警報信号を発し、移動距離の測定値が第2しきい値よりも小さいときに警報信号を発するように構成される。第2しきい値から第1しきい値までの範囲は、ローラー11a,11bがウェーハWを正しく保持するために必要な可動軸13bの移動距離の範囲である。
【0070】
ウェーハWの回転中に可動軸13bに振動が発生した場合、可動軸13bの位置(可動軸13bの移動距離の測定値)は振動に従って変化する。したがって、動作制御部40は、ウェーハWの回転中の可動軸13bの位置の変動(可動軸13bの移動距離の測定値の変動)に基づいて可動軸13bの振動を検出することができる。動作制御部40は、可動軸13bの振動に基づいて、基板保持装置10がウェーハWを保持して回転させているときのウェーハWの回転異常を検出することができる。ウェーハWの回転異常が発生する原因としては、ローラー11a,11bのウェーハ保持面31a,31bの摩耗、変形、破損、寸法不良、または複数のローラー11a,11bの回転位相ずれ等が考えられる。
【0071】
一実施形態では、動作制御部40は、可動軸13bの移動距離の測定値(可動軸13bの位置)の振幅と、予め設定されたしきい値とを比較し、上記振幅が上記しきい値よりも大きいときは可動軸13bに振動が発生したと判断してもよい。動作制御部40は、上記振幅が上記しきい値よりも大きいときに警報信号を発してもよい。
【0072】
図8は、ウェーハWの回転異常が発生しているときの可動軸13bの位置の一例を示す図である。図の横軸はローラー11bの回転角度を示し、図の縦軸は可動軸13bの位置を示している。
図8では、可動軸13bの位置を示す値は、可動軸13bが基準軸13aに近づくほど小さくなり、可動軸13bが基準軸13aから遠ざかるほど大きくなる。可動軸13bの位置が0とは、アクチュエータ18の可動範囲内において、可動軸13bが基準軸13aに最も近づく位置のことである。ローラー11bの回転角度が0°とは、ローラー11bの予め定められた基準角度のことである。
図8に示す例では、ウェーハWの回転異常が発生しているとき、可動軸13bは大きく振動し、可動軸13bの位置は大きく変動する。このとき、可動軸13bの位置の振幅は、予め定められた振幅しきい値よりも大きくなる。
図8に示す可動軸13bの位置の変動が発生する原因としては、ローラー11a,11bのウェーハ保持面31a,31bの摩耗、変形、破損、寸法不良、または複数のローラー11a,11bの回転位相ずれが考えられる。
【0073】
動作制御部40は、可動軸13bの位置(可動軸13bの移動距離の測定値)の振幅と、予め定められた振幅しきい値とを比較し、可動軸13bの位置の振幅が振幅しきい値よりも大きいときは、ウェーハWの回転異常が発生したと判断する。本明細書では、可動軸13bの位置の振幅を、可動軸13bの振動の幅と定義する。
図8に示す例では、可動軸13bの振幅は、ローラー11bが一回転以上回転している間の可動軸13bの位置の最大値と、可動軸13bの位置の最小値との差である。一実施形態では、動作制御部40は、ローラー11bの回転時間が第1回転時間を経過してから第2回転時間に到達するまでの時間内における可動軸13bの位置(可動軸13bの移動距離の測定値)の振幅を、予め定められた振幅しきい値と比較してもよい。
【0074】
さらに一実施形態では、動作制御部40は、可動軸13bの位置の振幅が振幅しきい値よりも大きいときに警報信号を発してもよい。さらに一実施形態では、動作制御部40は、可動軸13bの位置の振幅が振幅しきい値よりも大きいときに電動機29a,29bに指令を発して、電動機29a,29bの動作を停止させてもよい。
【0075】
図9は、ウェーハWの回転異常が発生しているときの可動軸13bの位置の他の例を示す図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図8を参照して説明した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。
図9に示す例では、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値は、初期平均値および予め定められた下限しきい値よりも小さい。本実施形態では、初期平均値は、ローラー11a,11bが未使用のときの(摩耗していないときの)、可動軸位置(測定値)の平均値である。
図9に示す可動軸13bの位置の変動が発生する原因としては、ローラー11a,11bのウェーハ保持面31a,31bの摩耗、変形、破損、または寸法不良が考えられる。
図9の点線L1は、ウェーハ保持面31a,31bが減耗しているときのウェーハWの回転中の可動軸13bの位置の平均値を示している。
【0076】
動作制御部40は、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値(可動軸13bの移動距離の測定値の平均値)と、予め定められた下限しきい値とを比較し、可動軸13bの位置の平均値が下限しきい値よりも小さいときは、ウェーハWの回転異常が発生したと判断する。一実施形態では、動作制御部40は、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値(可動軸13bの移動距離の測定値の平均値)と、予め定められた上限しきい値とを比較し、可動軸13bの位置の平均値が上限しきい値よりも大きいときは、ウェーハWの回転異常が発生したと判断してもよい。可動軸13bの位置の平均値が上限しきい値よりも大きくなる原因の一例として、ウェーハWが基板保持装置10に正しく保持されていないことが考えられる。上述した可動軸13bの基準位置の設定によっては、ローラー11a,11bのウェーハ保持面31a,31bの摩耗、変形、破損、または寸法不良を原因として、可動軸13bの位置の平均値が上限しきい値よりも大きくなることがある。
【0077】
一実施形態では、動作制御部40は、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値が下限しきい値よりも小さい(または、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値が上限しきい値よりも大きい)ときに、警報信号を発してもよい。さらに一実施形態では、動作制御部40は、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値が下限しきい値よりも小さい(または、ローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値が上限しきい値よりも大きい)ときに、電動機29a,29bに指令を発して、電動機29a,29bの動作を停止させてもよい。警報信号の一例として、ローラー11a,11bの交換を作業者に促す信号が挙げられる。
【0078】
図9を参照して説明した実施形態によれば、ローラー11a,11bのウェーハ保持面31a,31bが均等に摩耗しているか、偏って摩耗しているかにかかわらず動作制御部40は、ローラー11a,11bの異常を検出することができる。
図8を参照して説明した実施形態と
図9を参照して説明した実施形態は組み合わせてもよい。例えば、動作制御部40は、可動軸13bの位置の振幅が振幅しきい値よりも大きいとき、またはローラー11bが一回転以上回転しているときの可動軸13bの位置の平均値が下限しきい値よりも小さいときに、異常と判断し、警報信号を発してもよい。
【0079】
非接触式の距離センサ80は、可動軸13bが振動している場合でも振動の影響を受けずに正確に可動軸13bの移動距離を測定することができる。本実施形態では、複数の可動軸13bの移動距離をそれぞれ測定する複数の非接触式の距離センサ80が設けられる。一実施形態では、複数の可動軸13bのうちの1つの移動距離を測定する単一の非接触式の距離センサ80が設けられてもよい。
【0080】
一実施形態では、
図10に示すように、距離センサ80は、非接触式の光学式センサであってもよい。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図5、
図8、および
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の距離センサ80は、投光部および受光部(図示せず)を先端に有するセンサヘッド84と、センサヘッド84から発せられる光を集束させる集束レンズ85と、センサヘッド84に投光光ファイバーケーブル92Aおよび受光光ファイバーケーブル92Bにより連結されたアンプ93と、アンプ93に電気的に接続された距離算出器94とを備えている。集束レンズ85は、センサヘッド84の先端に取り付けられている。
【0081】
センサヘッド84は、アクチュエータ18の外側に固定されており、センサヘッド84の先端は可動台21を向いて配置されている。より具体的には、本実施形態では、可動台21にはセンサターゲット88が取り付けられており、センサヘッド84の先端はセンサターゲット88を向いて配置されている。センサターゲット88は、光を反射させる性質を有している。センサターゲット88の一例として、セラミックまたは金属から構成された部材が挙げられる。アンプ93および距離算出器94はアクチュエータ18から離れた位置にある。
【0082】
アンプ93は、光を発する光源93aと、反射光の強度を測定する光強度測定器93bを有している。アンプ93の光源93aから発せられた光は、投光光ファイバーケーブル92Aを通じてセンサヘッド84に伝達される。センサヘッド84は、集束レンズ85を通してセンサターゲット88に光を導き、センサターゲット88からの反射光を受ける。反射光は、受光光ファイバーケーブル92Bを通じてアンプ93に伝達される。アンプ93の光強度測定器93bは、反射光の強度を測定する。アンプ93は、反射光の強度の測定値を距離算出器94に送り、距離算出器94は、反射光の強度の測定値を距離に変換する。距離算出器94によって得られる距離は、可動軸13bの移動距離である。このような構成により、本実施形態の距離センサ80は、可動軸13bの移動距離を測定することができる。距離算出器94は、動作制御部40に接続されており、距離算出器94は、可動軸13bの移動距離の測定値を動作制御部40に送信する。一実施形態では、距離センサ80は、集束レンズ85を備えていなくてもよい。センサヘッド84は、集束レンズ85を通さずにセンサターゲット88に光を導き、かつ集束レンズ85を通さずにセンサターゲット88からの反射光を受けてもよい。
【0083】
上述のように、距離センサ80を構成する要素のうち、センサヘッド84のみがアクチュエータ18に取り付けられている。センサヘッド84は、光を照射し、かつ反射光を受ける機能のみを有するので、センサヘッド84自体は非常にコンパクトである。
【0084】
一実施形態では、センサヘッド84および集束レンズ85は、圧力室57a内(または圧力室57b内)に配置されていてもよい。この場合、センサヘッド84の先端は、隔壁膜55a(または隔壁膜55b)の中央部71a(または中央部71b)を向いて配置され、センサヘッド84は、中央部71a(または中央部71b)に光を導き、隔壁膜55a(または隔壁膜55b)からの反射光を受ける。中央部71a(または中央部71b)に光を反射させる性質を有するセンサターゲットを固定してもよい。さらに一実施形態では、距離センサ80はレーザ変位計であってもよい。
【0085】
図1乃至
図10を参照して説明した実施形態では、基板保持装置10は、中心軸線CPの周りに配列された2つの基準軸13a、2つの可動軸13b、2つのアクチュエータ18、2つの可動台21、および2つの直動ガイド26を備えているが、これら構成要素の数と配置の間隔は本実施形態に限定されない。一実施形態では、基板保持装置10は、適当な間隔で中心軸線CPの周りに配列された1つの可動軸13bおよび2つ以上の基準軸13aを備えていてもよい。この場合、基板保持装置10は、1つのアクチュエータ18、1つの可動台21、および1つの直動ガイド26を備える。
【0086】
さらに一実施形態では、基板保持装置10は、適当な間隔で中心軸線CPの周りに配列された3つ以上の可動軸13bと、3つ以上の基準軸13aを備えていてもよい。この場合、基板保持装置10は、3つ以上のアクチュエータ18、3つ以上の可動台21、および3つ以上の直動ガイド26を備える。さらに一実施形態では、動作制御部40は、記憶装置と演算装置とを備える複数の動作制御部から構成されていてもよい。一例では、複数の動作制御部のうちの1つは電動機29a,29bに接続され、他の1つは距離センサ80に接続されていてもよい。
【0087】
図11は、
図1乃至
図10を参照して説明した基板保持装置10を備えた基板処理装置の一実施形態を模式的に示す平面図であり、
図12は、
図11に示す基板保持装置10の側面図である。本実施形態では、基板処理装置100は、基板保持装置10と、処理具201を基板保持装置10に保持されたウェーハWの第1の面1に接触させてウェーハWの第1の面1を処理する処理ヘッド200を備えている。処理ヘッド200は、基板保持装置10に保持されているウェーハWの下側に配置されており、処理ヘッド200の位置は固定されている。
【0088】
本実施形態では、ウェーハWの第1の面1は、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がないウェーハWの裏面、すなわち非デバイス面である。第1の面1とは反対側のウェーハWの第2の面2は、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である面、すなわちデバイス面である。本実施形態では、ウェーハWは、その第1の面1が下向きの状態で、基板保持装置10に水平に保持される。
【0089】
本実施形態の基板処理装置100の具体的な動作は次の通りである。基板保持装置10は、複数のローラー11a,11bをウェーハWの周縁部に接触させ、複数のローラー11a,11bをそれぞれの軸心を中心に回転させ、かつ複数のローラー11a,11bを円運動させることで、ウェーハWをその軸心を中心に回転させ、かつウェーハWを円運動させながら、処理ヘッド200によって処理具201を回転および円運動するウェーハWの第1の面1に接触させてウェーハWの第1の面1を処理する。
【0090】
本実施形態では、処理具201はウェーハWの半径よりも長く、処理具201の一端はウェーハWの周縁部から外側にはみ出ており、他端は、基板保持装置10の中心軸線CPを越えて延びている。したがって、処理ヘッド200は、処理具201を回転するウェーハWの第1の面1の全体に接触させることができる。結果として、処理具201は、最外部を含むウェーハWの第1の面1の全体を処理することが可能となる。処理ヘッド200は、ウェーハWが円運動しているときに、ローラー11a,11b、および偏心軸13a,13bに接触しない位置に配置されている。
【0091】
本実施形態によれば、基板保持装置10は、簡単な構造でウェーハWを円運動させながら、ウェーハWをその軸心を中心に回転させることができる。このような円運動とウェーハWの軸心を中心とした回転との組み合わせは、ウェーハWの表面上の各点での速度を上げることができる。したがって、処理具201とウェーハWの表面との相対速度が増し、ウェーハWの処理レートを向上させることができる。
【0092】
一実施形態では、処理具201は、ウェーハWを研磨するための研磨具であってもよい。研磨具の一例として、研磨テープや砥石が挙げられる。さらに一実施形態では、処理具201は、ウェーハWをクリーニングするためのクリーニング具であってもよい。クリーニング具の一例として、クリーニングテープが挙げられる。クリーニングテープの一例として、不織布からなるテープが挙げられる。
【0093】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0094】
1 第1の面
2 第2の面
10 基板保持装置
11a,11b ローラー
13a,13b 偏心軸
14a,14b 第1軸部
15a,15b 第2軸部
16a,16b 中間軸部
17a,17b カウンターウェイト
18 アクチュエータ
19 軸受
20 ベースプレート
21 可動台
23 連結部材
24 軸受
26 直動ガイド
27a,27b 電動機支持体
28a,28b カップリング
29a,29b 電動機
31a,31b ウェーハ保持面(基板保持面)
40 動作制御部
51 ピストン
52a,52b ハウジング
53a,53b ハウジング本体
54a,54b 蓋
55a,55b 隔壁膜
57a,57b 圧力室
59a,59b 圧縮気体流路
62a,62b 圧力レギュレータ
63a,63b 切り替え弁
64 圧縮気体供給源
71a,71b 中央部
72a,72b 内壁部
73a,73b 折り返し部
74a,74b 外壁部
75a,75b 肉厚部
80 距離センサ
81 磁石
84 センサヘッド
85 集束レンズ
88 センサターゲット
92A 投光光ファイバーケーブル
92B 受光光ファイバーケーブル
93 アンプ
93a 光源
93b 光強度測定器
94 距離算出器
100 基板処理装置
200 研磨ヘッド
201 処理具