(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】パターニング応用のための選択的堆積スキーム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20240806BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L21/28 Z
C23C28/00 E
(21)【出願番号】P 2019541354
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 US2018015709
(87)【国際公開番号】W WO2018144381
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バス, アタシ
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0190060(US,A1)
【文献】登録実用新案第3208344(JP,U)
【文献】特開平9-237926(JP,A)
【文献】Fatemeh Sadat Minaye Hashemi,Chaiya Prasittichai,and Stacey F.Bent,”A New Resist for Area Selective Atomic and Molecular Layer Deposition on Metal-Dielectric Patterns”,The Journal of Physical Chemistry C,米国,American Chemical Society,2014年05月02日,Vol.118,Issue 20,p.10957-10962
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/28-29/51
C23C16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的堆積方法であって、
第1の金属
膜表面及び第1の誘電体
膜表面を有する基板を提供すること、
前記第1の誘電体
膜表面が、パッシベーション化されていない状態で、前記第1の金属
膜表面に第2の金属膜を選択的に堆積させて、第2の金属
膜表面を形成すること、
SAM前駆体に前記基板を曝露して、5から20個の範囲の炭素原子を含む架橋自己組織化単層を形成することによって前記第2の金属
膜表面をパッシベーション化して、パッシベーション層を形成すること、
前記第2の金属
膜表面に前記パッシベーション層が形成された後、前記第1の誘電体
膜表面が形成されてから前記パッシベーション層が形成されるまで露出したままの前記第1の誘電体
膜表面に、第2の誘電体膜を選択的に堆積させて、第2の誘電体
膜表面を形成すること、及び
前記第2の金属
膜表面から前記パッシベーション層を除去すること
を含む、方法。
【請求項2】
選択的堆積方法であって、
(a)金属
膜及び誘電体
膜を有する基板を提供すること、
(b)
前記基板上の露出している金属
膜表面を架橋自己組織化単層でパッシベーション化して、パッシベーション層を形成することであって、前
記金属
膜表面のパッシベーション化は、自己組織化単層を形成するヘッド基、炭素鎖、及びテール基を有するSAM前駆体に前記基板を曝露することを含み、前記炭素鎖は5から20個の範囲の炭素原子を有し、前記テール基は疎水性部分を含む、パッシベーション層を形成すること、
(c)前記金属
膜表面に前記パッシベーション層が形成された後、
前記基板上の誘電体
膜表面が形成されてから前記パッシベーション層が形成されるまで露出したままの前記誘電体
膜表面に、
新たな誘電体膜を選択的に堆積させて、
新たな誘電体
膜表面を形成すること、
(d)前記パッシベーション層を除去すること、
(e)前記
新たな誘電体
膜表面がパッシベーション化されていない状態で、前
記金属
膜表面に
新たな金属膜を選択的に堆積させて、
新たな金属
膜表面を形成すること、及び
(f)(b)から(e)を繰り返して
、所定の厚さの誘電体膜及び所定の厚さの金属膜を形成すること
を含む、方法。
【請求項3】
前記架橋自己組織化単層を形成することが、前記SAM前駆体及び架橋プロセスに前記基板を曝露することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記SAM前駆体が、ヘッド基及びテール基を有する組成物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘッド基が、シリル基、リン酸基、又はチオール基のうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SAM前駆体が、次のうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の方法:
[式中、Aはヘッド基である]。
【請求項7】
前記ヘッド基が、
パッシベーション化される金属膜表面に比較的迅速に吸着する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記テール基が、比較的遅いファンデルワールス相互作用を介して会合する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋プロセスが、化学反応、UV光、電子ビーム、又は熱のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の金属
膜表面に
新たな金属膜を選択的に堆積させて、前記
基板上に形成される金属膜の厚さを成長させること、
前記
新たな金属膜の新たな金属
膜表面をパッシベーション化して、パッシベーション層を形成すること、
前記第2の誘電体
膜表面に
新たな誘電体膜を選択的に堆積させて、前記
基板上に形成される誘電体膜の厚さを成長させること、及び
前記新たな金属膜表面に形成された前記パッシベーション層を除去すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板上の露出している金属膜表面に更なる金属膜を堆積させること、前記
更なる金属膜の更なる金属
膜表面をパッシベーション化
して、パッシベーション層を形成すること、
前記基板上の露出している誘電体膜表面に更なる誘電体膜を堆積させること、及び
前記更なる金属膜表面に形成された前記パッシベーション層を除去
することを繰り返して、前記基板上に所定の厚さ
の金属膜及び所定の厚さ
の誘電体膜を
形成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記
新たな金属膜
の金属が、
前記基板上に備えられた前記
金属膜の金属とは異なる、請求項2又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記
新たな誘電体膜
の誘電体が、
前記基板上に備えられた前記
誘電体膜の誘電体とは異なる、請求項2、11又は12に記載の方法。
【請求項14】
選択的堆積方法であって、
第1の金属表面を有する第1の金属と第1の誘電体表面を有する第1の誘電体とを有する基板を提供すること、
前記第1の誘電体表面が、パッシベーション化されていない状態で、前記第1の金属表面に、前記第1の金属とは異なる第2の金属の膜を選択的に堆積させて、第2の金属表面を有する第2の金属膜を形成すること、
SAM前駆体に前記基板を曝露して、5から20個の範囲の炭素原子を有する炭素鎖を含む架橋自己組織化単層を形成することによって前記第2の金属表面をパッシベーション化して、パッシベーション層を形成することであって、前記架橋自己組織化単層が、前記SAM前駆体と、化学反応、UV光、電子ビーム、又は熱のうちの1つ以上を含む架橋プロセスとに前記基板を曝露することによって形成される、パッシベーション層を形成すること、
前記第2の金属表面に前記パッシベーション層が形成された後、前記第1の誘電体表面が形成されてから前記パッシベーション層が形成されるまで露出したままの前記第1の誘電体表面に、前記第1の誘電体とは異なる第2の誘電体の膜を選択的に堆積させて、第2の誘電体表面を有する第2の誘電体膜を形成すること、及び
前記第2の金属表面から前記パッシベーション層を除去すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、概して、膜を選択的に堆積させる方法に関する。より詳細には、本開示の実施態様は、自己組織化単層及び任意選択的な処理反応物を使用して膜を選択的に堆積させる方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
選択的堆積プロセスは、主に半導体のパターニング応用の必要性の理由から、躍進を遂げている。従来、マイクロエレクトロニクス業界でのパターニングは、さまざまなリソグラフィ及びエッチングプロセスを使用して達成されてきた。しかしながら、リソグラフィは指数関数的に複雑かつ高価になってきていることから、特徴の堆積に選択的堆積を使用することは、非常に魅力的になってきている。選択的堆積の別の潜在的な応用は、ギャップ充填である。ギャップ充填では、充填膜はトレンチの底部から上部に向かって選択的に成長する。選択的堆積は、膜がフィンの側面に成長する選択的側壁堆積などの他の用途にも使用できる。これにより、複雑なパターニング工程を必要とせずに、側壁スペーサの堆積が可能になる。
【0003】
したがって、当技術分野では、異なる表面に対し、ある表面に膜を選択的に堆積させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の1つ以上の実施態様は、第1の金属表面及び第1の誘電体表面を有する基板を提供することを含む、選択的堆積方法を対象とする。第2の金属膜は、第1の金属表面に選択的に堆積されて、第2の金属表面を形成する。第2の金属表面は、約5から約20個の範囲の炭素原子を含む架橋自己組織化単層を形成することによってパッシベーション化されて、パッシベーション層を形成する。第2の誘電体膜は、第1の誘電体表面上に選択的に堆積されて、第2の誘電体表面を形成する。パッシベーション層は第2の金属表面から除去される。誘電体表面は、第2の金属膜の堆積中にパッシベーション化されない。
【0005】
本開示のさらなる実施態様は、(a)金属表面及び誘電体表面を有する基板を提供すること、(b)架橋自己組織化単層で金属表面をパッシベーション化して、パッシベーション層を形成することであって、金属表面のパッシベーション化は、自己組織化単層を形成するヘッド基、炭素鎖、及びテール基を有する化合物に金属表面を曝露することを含み、炭素鎖は約5から約20個の範囲の炭素原子を有し、テール基は疎水性部分を含む、形成すること、(c)第1の誘電体表面に第2の誘電体膜を選択的に堆積させて、第2の誘電体表面を形成すること、(d)パッシベーション層を除去すること、(e)第1の金属表面に第2の金属膜を選択的に堆積させて、第2の金属表面を形成すること、及び、(f)(b)から(e)を繰り返して第2の誘電体膜と第2の金属膜を成長させて、所定の厚さの第2の誘電体膜と所定の厚さの第2の金属膜とを形成することを含む、選択的堆積方法を対象とする。誘電体表面は、第2の金属膜の堆積中にパッシベーション化されない。
【0006】
本開示のさらなる実施態様は、第1の金属表面を有する第1の金属と第1の誘電体表面を有する第1の誘電体とを有する基板を提供することを含む、選択的堆積方法を対象とする。第2の金属の膜は、第1の金属表面に選択的に堆積されて、第2の金属表面を有する第2の金属膜を形成する。第2の金属は、第1の金属とは異なる。第2の金属表面は、約5から約20個の範囲の炭素原子を有する炭素鎖を含む架橋自己組織化単層を形成することによってパッシベーション化されて、パッシベーション層を形成する。架橋自己組織化単層は、基板を、SAM前駆体と、化学反応、UV光、電子ビーム、又は熱のうちの1つ以上を含む架橋プロセスとに曝露することによって形成される。第2の誘電体の膜は、第1の誘電体表面に選択的に堆積されて、第2の誘電体表面を有する第2の誘電体膜を形成する。第2の誘電体は、第1の誘電体とは異なる。パッシベーション層は第2の金属表面から除去される。誘電体表面は、第2の金属膜の堆積中にパッシベーション化されない。
【0007】
本発明の上述の特徴を詳しく理解できるように、先に簡単に要約した本発明のより具体的な説明が、実施態様を参照することによって得られ、その幾つかが添付の図面に示されている。しかしながら、本発明は他の等しく有効な実施態様も許容しうることから、添付の図面は、この発明の典型的な実施態様のみを示しており、したがって本発明の範囲を限定するとみなすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の1つ以上の実施態様による処理方法を示す図
【
図2】本開示の1つ以上の実施態様による処理方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「基板」及び「ウエハ」という用語はいずれも、処理が行われる表面又は表面の一部分を指すために、交換可能に用いられる。基板についての言及は、文脈上他のことが明示されない限り、基板の一部分のみを指すこともありうることもまた、当業者に理解されよう。さらには、基板上への堆積についての言及は、むき出しの基板と、1つ以上の膜又は特徴がその上に堆積又は形成された基板の両方を意味しうる。
【0010】
本書で用いられる場合、「基板」とは、製造プロセス中に表面に膜処理が行われる、任意の基板、又は、基板上に形成された任意の材料表面のことを指す。例えば、その上で処理が行われうる基板表面は、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、歪みシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、炭素ドープされた酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、例えば金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電体などの任意の他の材料を含む。基板は、限定はしないが、半導体ウエハを含む。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化(又は他の方法で化学機能を付与するために目的化学部分を生成又はグラフト)、アニール、及び/又は焼くために、前処理プロセスに曝露されうる。基板自体の表面に直接膜処理することに加えて、本開示では、開示された任意の膜処理工程は、以下により詳細に開示されるように、基板上に形成された下層にも行うことができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、こうした下層を含むことが意図されている。したがって、例えば基板表面に膜/層又は部分膜/部分層が堆積している場合には、新たに堆積した膜/層の露出面が基板表面になる。所与の基板表面が何を含むかは、どの膜が堆積されるか、並びに使用される特定の化学物質に応じて決まる。1つ以上の実施態様では、第1の基板表面は、金属、金属酸化物、又はH終端SixGe1-xを含んでよく、第2の基板表面は、Si含有誘電体を含んでよく、又はその逆もありうる。幾つかの実施態様では、基板表面は、ある特定の官能性(例えば、-OH、-NH等)を含みうる。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「反応性ガス」、「前駆体」、「反応物」等の用語は、基板表面と反応する種を含むガスを意味するように、交換可能に用いられる。例えば、第1の「反応性ガス」は、単に基板の表面に吸着され、第2の反応性ガスとのさらなる化学反応に利用することができる。
【0012】
本開示の実施態様は、第2の表面に対し、ある表面に選択的に膜を堆積させる方法を提供する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「別の表面に対し、ある表面に膜を選択的に堆積させる」などの用語は、第1の量の膜が第1の表面に堆積し、第2の量の膜が第2の表面に堆積することを意味し、ここで、第2の量の膜は第1の量の膜より少ないか、あるいは第2の表面には膜が堆積されていない。これに関して用いられる「~に対し」という用語は、別の表面の上にある一の表面の物理的配向を意味するのではなく、別の表面と比較した、一の表面との化学反応の熱力学的又は動力学的特性の関係を意味する。例えば、誘電体表面に対して、銅表面にコバルト膜を選択的に堆積するとは、コバルト膜が銅表面上に堆積し、誘電体表面上にはコバルト膜はほとんど又は全く堆積しないこと、あるいは、銅表面上のコバルト膜の形成が、誘電体表面上のコバルト膜の形成と比較して熱力学的又は動力学的に好ましいことを意味する。
【0013】
ここ数十年間、半導体コミュニティは、リソグラフィの工程を、低コスト、処理時間の短縮、及びフィーチャーサイズの縮小につながる代替物に置き換えることによって、集積回路(IC)処理の改善を試みてきた。これらの代替物の多くは、「選択的堆積」の包括的なカテゴリーに分類される。一般的に、選択的堆積とは、他の基板材料と比較して目的の基板材料の正味堆積速度が高く、他の基板材料上への堆積が無視できる程度で、目的の基板材料上に所望の膜厚が達成されるプロセスを指す(「無視できる」はプロセスの制約によって定められる)。
【0014】
選択的堆積を達成するための1つの戦略は、ブロッキング層を使用するものである。理想的には、この戦略には、(1)目的の基板材料にほとんど影響を与えずに、堆積を回避すべき基板材料上にブロッキング層を形成すること、(2)目的の基板材料上に堆積すること(他の基板材料上への堆積がブロッキング層によって「ブロック」される)、及び(3)堆積した膜に正味の悪影響を与えずに、ブロッキング層を除去することが含まれる。
【0015】
本開示の実施態様は、自己組織化単層(SAM)と呼ばれるブロッキング層を組み込む。自己組織化単層(SAM)は、表面に吸着した自発的に組織化された有機分子の規則正しい配列で構成される。これらの分子は、典型的には、基板に親和性のある1つ以上の部分(ヘッド基)と、比較的長く不活性な直鎖炭化水素部分(テール基)で構成される。
【0016】
この事例では、SAMの形成は、表面における分子ヘッド基の速い吸着と、ファンデルワールス相互作用を介した分子テール基の互いに対する遅い会合によって起こる。SAM前駆体は、ヘッド基が堆積中にブロックされる基板材料と選択的に反応するように選択される。次に、堆積が行われ、SAMは、典型的には、熱分解(副生成物の脱着を伴う)又は集積適合型(integration-compatible)の灰化処理によって除去される。この理想的な形成とSAMの使用による選択的堆積の成功は、多くのシステムで実証されているが、成功は本質的にSAM形成のための溶液ベースのアプローチに限定される(すなわち、湿式機能化)。湿式機能化アプローチは、減圧をベースとした集積スキームと適合しないだけでなく、物理吸着SAM前駆体を排除するためにSAM形成後の超音波処理も必要とする。これは、(別の基板に対し、ある基板上での)成功した選択的SAM形成が、物理吸着をせずに全体的な選択的化学吸着の結果を得るのに、機能化プロセスだけに依拠することができないことを示唆している。
【0017】
図1を参照すると、本開示の1つ以上の実施態様は、選択的堆積のための処理方法100を対象とする。基板105には、第1の誘電体膜110及び第1の金属膜120が設けられている。第1の金属膜120は第1の金属表面122を有し、第1の誘電体膜110は第1の誘電体表面112を有している。
【0018】
第2の金属膜125は、第1の金属膜120の第1の金属表面122に選択的に堆積されて、第2の金属表面127を形成する。幾つかの実施態様では、第2の金属膜125は、第1の金属膜120とは異なる金属である。幾つかの実施態様では、第2の金属膜125は、第1の金属膜120と同じ金属である。
【0019】
幾つかの実施態様によれば、第2の金属膜125は、第1の誘電体膜110又は第1の誘電体表面112のパッシベーション又は保護なしに、第1の金属膜120上に選択的に堆積される。幾つかの実施態様では、第1の誘電体膜110又は第1の誘電体表面112は、第2の金属膜125の堆積前に、パッシベーション化又保護化される。
【0020】
第2の金属膜125の形成後、第2の金属表面127はパッシベーション化される。パッシベーション層130は架橋自己組織化単層(SAM)である。架橋自己組織化単層は、SAM前駆体及び架橋プロセスに基板を曝露することによって形成される。SAM前駆体は、自己組織化単層130を形成するための単一化合物であるか、又は連続曝露でありうる。例えば、第2の金属表面127は、表面上に規則正しく又は半規則的に集合する単一化合物に曝露されうる。幾つかの実施態様では、自己組織化単層130は、第1のSAM前駆体及び自己組織化単層130を生成する反応物に表面を曝露することによって形成される。
【0021】
幾つかの実施態様のSAM前駆体は、ヘッド基及びテール基を有する組成物を含む。この態様で用いられる場合、「ヘッド基」は、第2の金属表面127と会合する化学的部分であり、「テール基」は、第2の金属表面127から離れて延びる化学的部分である。幾つかの実施態様では、ヘッド基は、シリル基(SiR3)、リン酸基(-PO3H)、又はチオール基(-SH)のうちの1つ以上を含む。シリル基は、ハロゲン化シリル、例えば、トリメチルシリルでありうる。幾つかの実施態様のヘッド基は、第2の金属表面127に比較的迅速に吸着する。
【0022】
幾つかの実施態様の自己組織化単層130及び/又は架橋自己組織化単層135は、約5から約20個の範囲の炭素原子を有する。炭素鎖は、分岐であっても非分岐であってもよく、あるいは、置換されていても置換されていなくてもよい。幾つかの実施態様では、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個超の炭素原子が存在する。幾つかの実施態様では、約6から約18個の範囲の炭素原子、又は約7から約17個の範囲の炭素原子、又は約8から約16個の範囲の炭素原子、又は約9から約15個の範囲の炭素原子、又は約10から約14個の範囲の炭素原子が存在する。幾つかの実施態様では、テール基は、比較的遅いファンデルワールス相互作用を介して互いに会合する。同種又は異種のSAMを形成できるように、テール基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
幾つかの実施態様では、SAM前駆体は、基板表面に化学吸着することができる1つより多いヘッド基を含む。幾つかの実施態様では、少なくとも1つのヘッド基は、基板表面に化学吸着せず、共反応物との反応に利用可能である。1つ以上の実施態様では、SAM前駆体に基板を曝露することは、共反応物に基板を曝露して自己組織化単層を形成することをさらに含む。共反応物は、SAM前駆体と一緒にプロセスチャンバ内に共流入することができ、プロセスチャンバの前に又はプロセスチャンバ内で混合する。幾つかの実施態様では、共反応物及びSAM前駆体は、SAM前駆体と共反応物との気相混合がないか、又はほとんどなくなるように、基板表面に連続的に曝露される。
【0024】
幾つかの実施態様では、SAM前駆体は、次のうちの1つ以上を含む:
式中、Aはヘッド基であり、nは約1から約20の範囲、又は約2から約15の範囲である。
【0025】
幾つかの実施態様では、SAM前駆体は、次のうちの1つ以上を含む:
式中、nは、約4から約20の範囲、又は約5から約15の範囲である。
【0026】
形成されると、自己組織化単層130は、架橋プロセスに曝露されて、架橋自己組織化単層135を形成することができる。架橋プロセスは、化学反応、UV光曝露、電子ビーム曝露、及び/又は熱を含むがこれらに限定されない、任意の適切なプロセスでありうる。架橋反応の例がスキームI及びIIに示されている。
【0027】
架橋自己組織化単層135の形成後、第2の誘電体膜115は、第2の金属膜125に対し、選択的に第1の誘電体膜110の第1の誘電体表面112上に堆積される。架橋自己組織化単層135は保護基を提供して、第1の金属膜又は第2の金属膜又は表面への第2の誘電体膜115の堆積を防ぐか又は最小限に抑える。幾つかの実施態様では、第2の誘電体膜115は、第1の誘電体膜110とは異なる金属である。幾つかの実施態様では、第2の誘電体膜115は、第1の誘電体膜110と同じ誘電体である。
【0028】
第1の誘電体膜110上への第2の誘電体膜115の選択的堆積後、架橋自己組織化単層135パッシベーション層は、第2の金属表面から除去される。幾つかの実施態様では、架橋自己組織化単層135は、酸化によって表面から除去される。幾つかの実施態様では、架橋自己組織化単層135は、表面からエッチングされる。幾つかの実施態様では、架橋自己組織化単層135は、適切な溶媒(例えばエタノール)に溶解される。
【0029】
幾つかの実施態様では、プロセスは、第2の金属表面127への追加の第2の金属膜125の堆積を繰り返し、第2の金属膜の厚さを所定の量まで成長させる。別の言い方をすれば、幾つかの実施態様は、追加の第2の金属膜の堆積を繰り返すこと、第2の金属表面をパッシベーション化すること、追加の第2の誘電体膜を堆積すること、及びパッシベーション層を除去して、所定の厚さの第2の金属膜及び所定の厚さの第2の誘電体膜を成長させることをさらに含む。
【0030】
幾つかの実施態様では、第2の金属膜の最終的な厚さは、約1nmから約1000nmの範囲、又は約10nmから約500nmの範囲、又は約50nmから約250nmの範囲内である。幾つかの実施態様では、プロセスは、第2の誘電体表面117に追加の第2の誘電体膜115を堆積させることを繰り返し、所定の厚さの第2の誘電体膜115を形成する。幾つかの実施態様では、第2の誘電体膜115の最終的な厚さは、約1nmから約1000nmの範囲、又は約10nmから約500nmの範囲、又は約50nmから約250nmの範囲内である。
【0031】
第2の金属膜125及び第2の誘電体膜115の堆積の各サイクルによって、適切な厚さの層を形成することができる。幾つかの実施態様では、第2の金属膜125及び/又は第2の誘電体膜115の各サイクルは、約1nmから約100nmの範囲、又は約5nmから約50nmの範囲、又は約10nmから約50nmの範囲の厚さを有する膜の堆積をもたらす。
【0032】
図2は、選択的堆積方法200の別の実施態様を示している。金属表面122及び誘電体表面112を有する基板105が提供される。金属表面122は、架橋されて架橋自己組織化単層135を形成する自己組織化単層130によってパッシベーション化されて、パッシベーション層を形成する。金属表面のパッシベーション化は、自己組織化単層130を形成するヘッド基、炭素鎖、及びテール基を有する化合物に金属表面を曝露することを含む。幾つかの実施態様の炭素鎖は、約5から約20個の範囲の炭素原子を有し、テール基は疎水性部分を含む。炭素鎖は、直鎖、分岐鎖、置換、又は非置換でありうる。
【0033】
第2の誘電体膜115は、第1の誘電体膜110の第1の誘電体表面112に選択的に堆積されて、第2の誘電体表面117を形成する。その後、パッシベーション層は第1の金属表面122から除去され、第2の金属膜125が、第2の誘電体表面117又は第2の誘電体膜115に対して、第1の金属表面122に選択的に堆積される。第2の金属膜125は第2の金属表面127を有する。パッシベーション層の形成、第2の誘電体膜の堆積、パッシベーション層の除去、及び第2の金属膜の堆積を繰り返して、第2の誘電体膜及び第2の金属膜の厚さを成長させ続けることができる。
【0034】
本明細書では発明は特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施態様は本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置にさまざまな修正及び変形をなしうることは、当業者にとって明らかであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図されている。