(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】トリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20240806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B24B53/00 K
H01L21/304 601B
(21)【出願番号】P 2020049676
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】星野 由紀子
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142890(JP,A)
【文献】特開2019-123058(JP,A)
【文献】特開2016-159402(JP,A)
【文献】特開2012-187692(JP,A)
【文献】特開2017-019075(JP,A)
【文献】米国特許第06361412(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリミング用ブレードのブレード本体の外周部に配置される切れ刃をドレッシングするドレッシングプレートであって、
板状のプレート本体を備え、
前記プレート本体は、前記プレート本体の板厚方向を向く一対の板面のうち、板厚方向一方側を向く一方の板面から板厚方向他方側に窪む溝部を有し、
前記溝部は、前記溝部の内壁の一部を構成し、前記一方の板面から板厚方向他方側へ向かうに従い前記溝部の溝幅方向
一方側へ向けて傾斜し、板厚方向一方側
かつ前記溝幅方向一方側を向く傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記傾斜面上に分散されるドレッシング砥粒を有し、
前記溝部は、前記溝幅方向に互いに間隔をあけて複数設けら
れ、
前記切れ刃のテーパ部と前記傾斜面とを互いに接触させた状態で、前記トリミング用ブレードと前記ドレッシングプレートとを、前記溝部の延在方向に相対的に移動させることで前記切れ刃がドレッシングされる、
トリミング用ブレードのドレッシングプレート。
【請求項2】
前記トリミング用ブレードは、ウェーハの外周部にエッヂトリミング加工を施すエッヂトリミング用ブレードであり、
前記溝部の延在方向と垂直な断面視で、前記傾斜面が前記溝幅方向に対して傾斜する傾斜角は、20°以上70°以下である、
請求項1に記載のトリミング用ブレードのドレッシングプレート。
【請求項3】
前記プレート本体は、
前記プレート本体の前記板厚方向において互いに反対側を向く一対の板面間の前記板厚方向の寸法が4mm以下である、
請求項1または2に記載のトリミング用ブレードのドレッシングプレート。
【請求項4】
トリミング用ブレードのブレード本体の外周部に配置される切れ刃を、請求項1から3のいずれか1項に記載のトリミング用ブレードのドレッシングプレートによりドレッシングするトリミング用ブレードのドレッシング方法であって、
前記ブレード本体は、中心軸を中心とする円板状であり、
前記切れ刃は、前記ブレード本体の外周面に配置されるテーパ部を有し、
前記テーパ部は、前記中心軸の軸方向一方側へ向かうに従い径方向外側へ向けて傾斜し、
前記テーパ部の傾斜の向きと、前記傾斜面の傾斜の向きとを互いに合わせて、前記テーパ部を前記傾斜面に接触させる、
トリミング用ブレードのドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造分野ではウェーハの薄膜化が進んでいる。ウェーハは、表面が半導体素子の形成面とされており、裏面を研削すること(以下、バックグラインドと呼ぶ)により、薄膜化される。バックグラインド前のウェーハの外周部は、ウェーハの中心軸に沿う断面視で、径方向外側に突出する凸曲線状に形成されている。このため、バックグラインドの際、ウェーハの厚さが薄くなるに従い外周部が尖り、この外周部から欠けが生じてウェーハが破損するおそれがある。
【0003】
そこで特許文献1のウェーハの加工方法では、特許文献1の
図3に示されるように、ウェーハの外周部に、表面側から切削ブレードを所定の深さまで切り込ませて、外周部の一部を除去するエッヂトリミングを施している。エッヂトリミングを施した後、特許文献1の
図5に示されるように、ウェーハにバックグラインドを施すことにより、ウェーハの外周部が尖ることを抑制できる。
【0004】
また特許文献2には、エッヂトリミングにより切削ブレードの切れ刃が摩耗した場合に、切れ刃をドレスボード(ドレッシングプレート)でドレッシングして、切れ刃形状を修正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-217461号公報
【文献】特開2016-2623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の
図8および
図9に示すように、エッヂトリミング後に、ウェーハWの裏面101b側からバックグラインドを施す際、ウェーハWの外周部に切り残し部102が生じる場合がある。切り残し部102は、ウェーハWから離脱されるときにウェーハWの外周部に欠損を生じさせるなど、不具合の原因となるため好ましくない。
【0007】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、切り残し部の発生を抑えるために、トリミング用ブレードの切れ刃にテーパ部を設けることが有効であるという知見を得た。しかしながら、従来のドレッシングプレートでは、切れ刃のテーパ部を安定してドレッシングすることができない。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、切れ刃にテーパ部を有するトリミング用ブレードであっても、安定してドレッシングすることができるトリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトリミング用ブレードのドレッシングプレートの一つの態様は、トリミング用ブレードのブレード本体の外周部に配置される切れ刃をドレッシングするドレッシングプレートであって、板状のプレート本体を備え、前記プレート本体は、前記プレート本体の板厚方向を向く一対の板面のうち、板厚方向一方側を向く一方の板面から板厚方向他方側に窪む溝部を有し、前記溝部は、前記溝部の内壁の一部を構成し、前記一方の板面から板厚方向他方側へ向かうに従い前記溝部の溝幅方向一方側へ向けて傾斜し、板厚方向一方側かつ前記溝幅方向一方側を向く傾斜面を有し、前記傾斜面は、前記傾斜面上に分散されるドレッシング砥粒を有し、前記溝部は、前記溝幅方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、前記切れ刃のテーパ部と前記傾斜面とを互いに接触させた状態で、前記トリミング用ブレードと前記ドレッシングプレートとを、前記溝部の延在方向に相対的に移動させることで前記切れ刃がドレッシングされる。
また、本発明の一つの態様は、トリミング用ブレードのブレード本体の外周部に配置される切れ刃を、上述のトリミング用ブレードのドレッシングプレートによりドレッシングするトリミング用ブレードのドレッシング方法であって、前記ブレード本体は、中心軸を中心とする円板状であり、前記切れ刃は、前記ブレード本体の外周面に配置されるテーパ部を有し、前記テーパ部は、前記中心軸の軸方向一方側へ向かうに従い径方向外側へ向けて傾斜し、前記テーパ部の傾斜の向きと、前記傾斜面の傾斜の向きとを互いに合わせて、前記テーパ部を前記傾斜面に接触させる。
【0010】
本発明のトリミング用ブレードのドレッシングプレート(以下、単にドレッシングプレートと呼ぶ)は、トリミング用ブレードの切れ刃の偏芯を除去し切れ刃の形状を整えるツルーイングや、切れ刃の砥粒の目立てを行うドレッシング等(以下、単にドレッシングと呼ぶ)に用いられる。
本発明によれば、ドレッシングプレートが傾斜面を有する。このため、トリミング用ブレードの切れ刃が、トリミング用ブレードの中心軸に対して傾斜するテーパ部を有していても、このテーパ部を傾斜面により安定してドレッシングすることができる。
【0011】
また、ドレッシングプレートは、トリミング用ブレードとともに、ダイシング装置(ダイサー)の装置内に実装される。ドレッシングプレートは、例えば、ダイシング装置内のテーブル上に固定される。ドレッシングプレートを装置内部に配置することで、トリミング用ブレードの切れ刃のドレッシングを自動化できる。
本発明によれば、プレート本体が板状であり、板厚方向の寸法が小さく抑えられているため、ドレッシングプレートをダイシング装置内のテーブル上に、省スペースでコンパクトに配置できる。このため、ドレッシングプレートを装置内に配置しても、別の部材のレイアウト上の制約になりにくい。また、溝部の延在方向に沿って延びる傾斜面が、溝幅方向に複数並んで配置されることにより、傾斜面の総面積が大きく確保されている。このため、トリミング用ブレードをドレッシングする回数を増やすことができ、ドレッシングプレートを長期にわたり使用することができて、ドレッシングプレートの工具寿命が延長される。
また、前記トリミング用ブレードは、ウェーハの外周部にエッヂトリミング加工を施すエッヂトリミング用ブレードであり、前記溝部の延在方向と垂直な断面視で、前記傾斜面が前記溝幅方向に対して傾斜する傾斜角は、20°以上70°以下であることとしてもよい。
【0014】
上記トリミング用ブレードのドレッシングプレートにおいて、前記プレート本体は、前記プレート本体の前記板厚方向において互いに反対側を向く一対の板面間の前記板厚方向の寸法が4mm以下であることが好ましい。
【0015】
この場合、ダイシング装置のテーブルに対向して配置される顕微鏡部材の焦点深度(被写界深度)の数値範囲内に、プレート本体の板厚方向の寸法をおさめることができる。テーブルと顕微鏡部材とが、プレート本体の板厚方向と垂直な方向に相対移動しても、顕微鏡部材とプレート本体との接触は抑えられる。このため、テーブル上にドレッシングプレートを配置するレイアウトの自由度が高められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様のトリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法によれば、切れ刃にテーパ部を有するトリミング用ブレードであっても、安定してドレッシングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態のトリミング用ブレードを示す平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のトリミング用ブレードを示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のウェーハの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、ウェーハの製造方法のエッヂトリミング工程を説明する図である。
【
図5】
図5は、ウェーハの製造方法のバックグラインド工程を説明する図である。
【
図6】
図6は、トリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、トリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法を説明する側面図である。
【
図8】
図8は、従来のウェーハの製造方法のバックグラインド工程を説明する図である。
【
図9】
図9は、従来のウェーハの製造方法のバックグラインド工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態のウェーハWの製造システム、トリミング用ブレード10、トリミング用ブレード10のドレッシングプレート50(以下、単にドレッシングプレート50と呼ぶ)、ウェーハWの製造方法、および、トリミング用ブレード10のドレッシング方法について、図面を参照して説明する。
なお図面には、必要に応じて、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。本実施形態では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。X軸方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方と直交する方向である。Y軸方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0019】
図4に示すように、ウェーハWは、中心軸Oを中心とする円板状である。ウェーハWの表面101aには、半導体素子が配置される。つまり表面101aは、半導体素子の形成面とされる。ウェーハWの裏面101bは、中心軸Oの軸方向において、表面101aとは反対側を向く。ウェーハWの外周部には、中心軸Oに沿う断面視で、径方向外側に突出する凸曲線状の面取り部101cが形成されている。面取り部101cは、ウェーハWの外周部に設けられる凸曲面状の部分である。後述するダイシング装置100において、面取り部101cのうち中心軸Oの軸方向に沿う一部は、表面101a側からトリミング(エッヂトリミング)される。
【0020】
特に図示しないが、ウェーハWには、表面101aから窪む分割溝が、複数形成されている。また表面101aには、図示しないテープが貼着されている。テープは、分割溝により区画される複数のチップ予定部に跨って配置される。
なお以下の説明では、後述するトリミング用ブレード10の中心軸Cの軸方向と区別して、ウェーハWの中心軸Oの軸方向を、「厚さ方向」と呼ぶ場合がある。
【0021】
まず、ウェーハWの製造システムについて説明する。
図4および
図5に示すように、本実施形態のウェーハWの製造システムは、ダイシング装置(ダイサー)100と、研削装置200と、を備える。
【0022】
図4に示すように、ダイシング装置100は、ウェーハWの外周部すなわち面取り部101cに、トリミング用ブレード10により表面101a側からエッヂトリミング加工を施す。このためダイシング装置は、エッヂトリミング装置と言い換えてもよい。またトリミング用ブレード10は、ウェーハWのエッヂトリミング用ブレードと言い換えてもよい。ダイシング装置100でウェーハWが処理される際、ウェーハWの中心軸Oは、Z軸方向に沿って配置される。ウェーハWの表面101aは、上側を向き、裏面101bは、下側を向く。
【0023】
図5に示すように、研削装置200は、図示しない研削ホイールにより、ウェーハWを裏面101b側から研削加工(バックグラインド加工)して、ウェーハWの厚さ方向の寸法を所定値まで減少させる。研削装置200でウェーハWが処理される際、ウェーハWの中心軸Oは、Z軸方向に沿って配置される。ウェーハWの表面101aは、下側を向き、裏面101bは、上側を向く。
特に図示しないが、研削装置200は、ウェーハWを研削加工する前記研削ホイールと、ウェーハWを保持するチャックテーブルと、を有する。研削ホイールの中心軸とチャックテーブルの中心軸とは、互いに平行であり、本実施形態では各中心軸がZ軸方向(つまり鉛直方向)に延びる。研削ホイールおよびチャックテーブルは、各中心軸回りに、それぞれ回転可能である。研削ホイールとチャックテーブルとは、各中心軸と垂直な方向(つまり水平方向)に、相対的に移動可能である。
【0024】
研削装置200で処理するよりも前、つまりバックグラインド加工前のウェーハWの厚さ方向の寸法は、例えば数百μmであり、本実施形態の例では350μmである。バックグラインド加工前のウェーハWの厚さ方向の寸法は、例えば、表面101aに半導体素子を形成する際のウェーハWの熱変形を抑制するために必要な寸法等に設定される。特に図示しないが、研削装置200で処理した後、つまりバックグラインド加工後のウェーハWの厚さ方向の寸法(上記所定値)は、例えば数十μmであり、本実施形態の例では50μmである。
【0025】
図4、
図6および
図7に示すように、ダイシング装置100は、トリミング用ブレード10と、トリミング用ブレード10をその中心軸C回りに回転させ、少なくともZ軸方向に移動させるスピンドル(図示省略)と、ウェーハWを中心軸O回りに回転可能に保持する保持部(図示省略)を有し、Z軸と垂直な方向(水平方向)に移動可能なテーブルTと、テーブルT上に固定されるドレッシングプレート50と、テーブルTに対向して配置され、テーブルTのアライメント(位置合わせ)等に用いられる顕微鏡部材Mと、を備える。トリミング用ブレード10、スピンドル、テーブルT、ドレッシングプレート50および顕微鏡部材Mは、ダイシング装置100の装置内に配置される。
【0026】
トリミング用ブレード10は、図示しないスピンドルに着脱可能に装着される。スピンドルに装着されたトリミング用ブレード10の中心軸Cは、水平方向に延び、スピンドルの中心軸と同軸に配置される。
図4に示すように、本実施形態では、スピンドルに取り付けられたトリミング用ブレード10の中心軸Cが、X軸方向に沿って延びる。
【0027】
図1、
図2および
図4に示すように、トリミング用ブレード10は、中心軸Cを中心とする円板状のブレード本体1を備える。詳しくは、ブレード本体1は、中心軸Cを中心とする円環板状である。すなわち、本実施形態でいう円板状には、円板の中央に貫通孔を有する円環板状が含まれる。ブレード本体1は、中心軸Cの軸方向において互いに反対側を向く一対の板面1a,1bを有する。なお板面1a,1bは、側面1a,1bと言い換えてもよい。
【0028】
本実施形態では、ブレード本体1の中心軸Cが延びる方向を、軸方向と呼ぶ。本実施形態では、軸方向がX軸方向に相当する。軸方向のうち、一方の板面1aから他方の板面1bへ向かう方向を軸方向一方側(+X側)と呼び、他方の板面1bから一方の板面1aへ向かう方向を軸方向他方側(-X側)と呼ぶ。
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0029】
ブレード本体1は、ビトリファイドボンド相2と、砥粒3と、切れ刃4と、取付孔5と、フィラーと、を有する。
【0030】
ビトリファイドボンド相2は、三次元架橋構造の多孔質状であり、砥粒3を保持する。ビトリファイドボンド相2は、セラミック等を含むガラス質の結合材からなる三次元架橋構造を有する多孔質体のボンド相である。詳しくは、ビトリファイドボンド相2は、例えば、Al2O3やSiO2を含む(例えば、主成分とする)非導電性(絶縁性)のガラス質を材料とする結合材(ガラス状結合相)からなり、砥粒3同士を繋ぐ三次元架橋構造(三次元網目構造)に形成されることにより、内部に連続的な多数(複数)の気孔を有する。
つまり、本実施形態のトリミング用ブレード10は、ビトリファイドブレードである。
【0031】
砥粒3は、ビトリファイドボンド相2に分散される。つまり砥粒3は、ブレード本体1に分散される。砥粒3は、例えばダイヤモンド砥粒やcBN砥粒等である。
【0032】
切れ刃4は、ビトリファイドボンド相2の外周部に配置される。つまり切れ刃4は、ブレード本体1の外周部に配置される。切れ刃4は、中心軸Cを中心とする円形リング状である。切れ刃4は、軸方向の寸法つまり刃幅が、1~5mmであり、好ましくは、2~3mmである。本実施形態では切れ刃4の刃幅が、ブレード本体1の軸方向の寸法つまりブレード厚に相当する。すなわち、ブレード本体1は、軸方向の寸法が、1~5mmであり、好ましくは、2~3mmである。
【0033】
切れ刃4は、ビトリファイドボンド相2の外周面に配置されるテーパ部4aを有する。つまり切れ刃4は、ブレード本体1の外周面に配置されるテーパ部4aを有する。テーパ部4aは、軸方向一方側(+X側)へ向かうに従い径方向外側へ向けて傾斜する。テーパ部4aは、軸方向一方側へ向かうに従い拡径するテーパ面状である。本実施形態ではテーパ部4aが、ブレード本体1の外周面の軸方向全域にわたって配置される。
【0034】
図2に示すように、中心軸Cに沿う断面視において、テーパ部4aは、中心軸Cに対して傾斜して延びる。この断面視で、テーパ部4aは直線状に延びる。この断面視で、テーパ部4aと中心軸Cとの間に形成される傾斜角θ1は、例えば、0°を超え70°以下であり、好ましくは、20°以上60°以下である。
【0035】
取付孔5は、ブレード本体1を軸方向に貫通する。取付孔5は、中心軸Cを中心とする円孔状である。
特に図示しないが、フィラーは、ビトリファイドボンド相2に分散される。つまりフィラーは、ブレード本体1に分散される。フィラーの硬度は、砥粒3の硬度よりも低い。フィラーの平均粒径は、砥粒3の平均粒径よりも小さい。フィラーは、例えば、SiC粒子等である。なおブレード本体1は、フィラーを有していなくてもよい。
【0036】
特に図示しないが、ブレード本体1は、金属被覆ビトリファイドボンド相を有していてもよい。この場合、金属被覆ビトリファイドボンド相は、ビトリファイドボンド相2の軸方向の外側に配置され、ブレード本体1の軸方向を向く一対の板面1a,1bのうち少なくともいずれかに露出される。つまり金属被覆ビトリファイドボンド相は、ブレード本体1の軸方向の端部に配置される。金属被覆ビトリファイドボンド相は、ブレード本体1の軸方向の両端部に、一対設けられていてもよい。この場合、軸方向において、一対の金属被覆ビトリファイドボンド相間に、ビトリファイドボンド相2が配置される。金属被覆ビトリファイドボンド相は、外周部が切れ刃4に露出され、内周部が取付孔5に露出される。金属被覆ビトリファイドボンド相には、砥粒3およびフィラーが分散される。
【0037】
金属被覆ビトリファイドボンド相は、上述のビトリファイドボンド相2とは異なる第2のビトリファイドボンド相と、第2のビトリファイドボンド相の三次元架橋構造および砥粒3に付着する金属被覆膜と、第2のビトリファイドボンド相に、金属被覆膜に塞がれることなく形成される連続的な多数(複数)の気孔と、を有する。第2のビトリファイドボンド相は、上述のビトリファイドボンド相2と同様の構造を有する。金属被覆膜は、導電性を有し、第2のビトリファイドボンド相に、例えばNiめっきにより形成される。なお金属被覆膜は、Ni以外の例えばAu、Ag、Cu、Co、Al等により形成されてもよい。また金属被覆膜は、めっきに限らず、蒸着等により形成されてもよい。金属被覆ビトリファイドボンド相は、金属被覆膜を備えたことにより、通電性を有する。
【0038】
ドレッシングプレート50は、トリミング用ブレード10の切れ刃4の偏芯を除去し切れ刃4の形状を整えるツルーイングや、切れ刃4の砥粒3の目立てを行うドレッシング等(以下、単にドレッシングと呼ぶ)に用いられる。
【0039】
図6および
図7に示すように、ドレッシングプレート50は、ダイシング装置100のテーブルTに着脱可能に装着される。ドレッシングプレート50は、板状のプレート本体51を備える。プレート本体51は、例えば、鋼製である。プレート本体51は、プレート本体51の板厚方向において互いに反対側を向く一対の板面51a,51bを有する。
【0040】
本実施形態では、プレート本体51の板厚方向が、Z軸方向に相当する。つまりプレート本体51の板厚方向は、鉛直方向に相当する。一対の板面51a,51bのうち、一方の板面51aは上側を向き、他方の板面51bは下側を向く。以下の説明では、板厚方向のうち、他方の板面51bから一方の板面51aへ向かう方向を板厚方向一方側(+Z側)と呼び、一方の板面51aから他方の板面51bへ向かう方向を板厚方向他方側(-Z側)と呼ぶ。本実施形態では、板厚方向一方側が上側であり、板厚方向他方側が下側である。
【0041】
プレート本体51は、板厚方向の寸法Hが4mm以下であり、好ましくは3mm以下である。プレート本体51は、板厚方向一方側を向く一方の板面51aから板厚方向他方側に窪む溝部52を有する。溝部52は、板厚方向一方側(つまり上側)から見て、所定方向に沿って直線状に延びる。
以下の説明では、溝部52が延びる方向、すなわち板厚方向から見た前記所定方向を、溝部52の延在方向または単に延在方向と呼ぶ。本実施形態では、延在方向がY軸方向に相当する。また、溝部52の延在方向と直交する幅方向、すなわち板厚方向から見て前記所定方向と直交する方向を、溝部52の溝幅方向または単に溝幅方向と呼ぶ。本実施形態では、溝幅方向がX軸方向に相当する。溝部52の溝幅方向は、トリミング用ブレード10の中心軸Cの軸方向と同じ方向である。溝部52の溝幅方向のうち、溝幅方向一方側(+X側)は、中心軸Cの軸方向一方側に相当し、溝幅方向他方側(-X側)は、中心軸Cの軸方向他方側に相当する。
【0042】
溝部52は、溝部52の延在方向の端部が、プレート本体51の延在方向を向く端面51cに開口する。本実施形態では、溝部52の延在方向の両端部が、プレート本体51の延在方向を向く一対の端面51cにそれぞれ開口する。
溝部52は、溝幅方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では、複数の溝部52が、溝幅方向に等ピッチで配列する。各溝部52は、互いに同じ形状を有する。
【0043】
溝部52は、一対の壁面52a,52bと、底面52cと、を有する。
一対の壁面52a,52bは、溝部52の溝幅方向の両端部に位置する。一対の壁面52a,52bは、溝幅方向において互いに対向する。一対の壁面52a,52bのうち、一方の壁面52aは、溝幅方向一方側(+X側)を向き、他方の壁面52bは、溝幅方向他方側(-X側)を向く。
【0044】
一方の壁面52aは、傾斜面52dを有する。つまり溝部52は、傾斜面52dを有する。本実施形態では傾斜面52dが、一方の壁面52aの全域にわたって配置される。傾斜面52dは、溝部52の内壁の一部を構成する。傾斜面52dは、一方の板面51aから板厚方向他方側へ向かうに従い溝部52の溝幅方向へ向けて傾斜し、板厚方向一方側に露出される。具体的に、傾斜面52dは、一方の板面51aから板厚方向他方側(-Z側)へ向かうに従い、溝幅方向一方側(+X側)へ向けて傾斜する。このため傾斜面52dは、板厚方向一方側(+Z側)かつ溝幅方向一方側(+X側)を向く。傾斜面52dは、板厚方向および溝幅方向に対して傾斜する平面状であり、延在方向に沿って延びる。
【0045】
図7に示すように、溝部52の延在方向と垂直な断面視で、傾斜面52dが溝幅方向(つまりX軸方向)に対して傾斜する傾斜角θ2は、例えば、0°を超え70°以下であり、好ましくは、20°以上60°以下である。なお傾斜角θ2は、上述した傾斜角θ1と同じ値である。
【0046】
傾斜面52dは、ドレッシング砥粒52eを有する。ドレッシング砥粒52eは、傾斜面52d上に分散される。ドレッシング砥粒52eは、傾斜面52d上の全域にわたって配置される。ドレッシング砥粒52eは、例えばダイヤモンド砥粒やcBN砥粒等である。
【0047】
底面52cは、溝部52の板厚方向他方側(-Z側)の端部に位置する。底面52cは、板厚方向一方側(+Z側)を向く。底面52cは、板厚方向(Z軸方向)と垂直な方向に拡がる平面状である。
【0048】
顕微鏡部材Mは、テーブルTの上側に配置される。顕微鏡部材Mは、テーブルTに上側から対向する。テーブルTに対する顕微鏡部材Mの焦点深度(被写界深度)は、プレート本体51の板厚方向の寸法Hよりも大きく、例えば3mmを超え5mm以下である。言い換えると、プレート本体51の板厚方向の寸法Hは、顕微鏡部材Mの焦点深度よりも小さい。
【0049】
次に、ウェーハWの製造方法について説明する。
図3に示すように、本実施形態のウェーハWの製造方法は、ウェーハ第1保持工程S1と、エッヂトリミング工程S2と、ウェーハ第2保持工程S3と、バックグラインド工程S4と、を含む。ウェーハ第1保持工程S1およびエッヂトリミング工程S2は、ダイシング装置100で行われ、ウェーハ第2保持工程S3およびバックグラインド工程S4は、研削装置200で行われる。
【0050】
ウェーハ第1保持工程S1では、ダイシング装置100において、テーブルT上の図示しない保持部により、ウェーハWを裏面101b側から保持する。具体的に、ウェーハWは、表面101aが上側を向く姿勢で、下側を向く裏面101bが保持部により保持される。
【0051】
エッヂトリミング工程S2では、
図4に示すようにダイシング装置100において、トリミング用ブレード10により、ウェーハWの外周部に、ウェーハWの表面101a側からウェーハWの厚さ方向の所定深さまでエッヂトリミング加工を施す。エッヂトリミング工程S2では、テーブルTの保持部によりウェーハWを中心軸O回りに回転させつつ、スピンドルによりトリミング用ブレード10を中心軸C回りに回転させて、切れ刃4でウェーハWの外周部を全周にわたってエッヂトリミング加工する。
【0052】
具体的に、エッヂトリミング工程S2では、トリミング用ブレード10のテーパ部4aにより、ウェーハWの外周部つまり面取り部101cに、ウェーハWの径方向外側へ向かうに従い、厚さ方向の表面101aから裏面101b側(つまり下側)へ向けて傾斜するテーパ面101dを形成する。テーパ面101dは、ウェーハWの外周部に全周にわたって形成される。
【0053】
ウェーハ第2保持工程S3では、
図5に示すように研削装置200において、図示しないチャックテーブルにより、ウェーハWを表面101a側から保持する。具体的に、ウェーハWは、裏面101bが上側を向く姿勢で、下側を向く表面101aがチャックテーブルにより保持される。
【0054】
バックグラインド工程S4では、研削装置200において、図示しない研削ホイールにより、ウェーハWを裏面101b側から研削加工し、ウェーハWの厚さ方向の寸法を減少させる。特に図示しないが、バックグラインド工程S4では、チャックテーブルによりウェーハWを中心軸O回りに回転させつつ、研削ホイールを研削ホイールの中心軸回りに回転させて、研削ホイールの下面、すなわち研削ホイールの研削砥石が配置される面を、ウェーハWの裏面101bに接触させる。またこのとき、チャックテーブルおよびウェーハWと、研削ホイールとを、中心軸Oと垂直な方向つまり水平方向に、相対移動させる。これにより、ウェーハWの裏面101b全体が均等にバックグラインド加工される。バックグラインド加工は、ウェーハWの厚さ方向の寸法が所定値(本実施形態の例では50μm)になるまで行う。バックグラインド加工により、ウェーハWの面取り部101cはすべて除去される。
上記各工程を経て、ウェーハWが製造される。
【0055】
次に、トリミング用ブレード10のドレッシング方法について説明する。トリミング用ブレード10のドレッシング方法は、トリミング用ブレード10のブレード本体1の外周部に配置される切れ刃4を、ドレッシングプレート50によりドレッシングする方法である。
【0056】
図7に示すように、本実施形態のトリミング用ブレード10のドレッシング方法では、切れ刃4のテーパ部4aの傾斜の向きと、溝部52の傾斜面52dの傾斜の向きとを互いに合わせて、テーパ部4aを傾斜面52dに接触させる。具体的には、トリミング用ブレード10を図示しないスピンドルにより中心軸C回りに回転させ、傾斜面52dの上側に位置するトリミング用ブレード10をスピンドルとともに下側へ移動させて、テーパ部4aと傾斜面52dとを接触させる。また
図6に示すように、テーパ部4aと傾斜面52dとを互いに接触させた状態で、トリミング用ブレード10とドレッシングプレート50とを、溝部52の延在方向(Y軸方向)に相対的に移動させる。
これにより、トリミング用ブレード10の切れ刃4がドレッシングされ、切れ刃4が所定の形状に整えられる。
【0057】
以上説明した本実施形態のトリミング用ブレード10およびウェーハWの製造方法によれば、下記の作用効果が得られる。
本実施形態のトリミング用ブレード10は、ウェーハWの製造方法におけるエッヂトリミング工程S2に用いられる。ウェーハWのエッヂトリミング工程S2では、トリミング用ブレード10の切れ刃4のテーパ部4aが、ウェーハWの外周部に、表面101aから所定深さに位置するテーパ面101dを形成する。これにより、エッヂトリミング後のバックグラインド工程S4において、ウェーハWの外周部に、
図9に示すような切り残し部102が発生することが抑制される。切り残し部102が発生しないため、切り残し部102の離脱に起因してウェーハWの外周部に欠損が生じるなどの不具合が抑えられる。したがって、本実施形態によれば、ウェーハWの外周部を精度よく高品位に形成できる。
【0058】
また本実施形態では、トリミング用ブレード10が、ビトリファイドブレードである。ビトリファイドブレードは、ウェーハWの加工に適している。また、ビトリファイドブレードは、切れ刃4の偏芯を除去し切れ刃4の形状を整えるツルーイングや、切れ刃4の砥粒3の目立てを行うドレッシング等が容易に行える。すなわち、ビトリファイドブレードは、切れ刃4を径方向に数十μmドレッシングして形状を整えることが容易であり、ドレッシングの作業性がよい。このため、トリミング用ブレード10が実装されるダイシング装置100の装置内において、トリミング用ブレード10の切れ刃4のドレッシングを自動化することが容易である。これにより、ウェーハWの製造効率を向上できる。
【0059】
また本実施形態では、切れ刃4の軸方向の寸法が、1~5mmである。
この場合、エッヂトリミング前にウェーハWの外周部に設けられている凸曲面状の部分、つまり面取り部101cの径方向の寸法に合わせて、トリミング用ブレード10の切れ刃4の刃幅を適宜選択しエッヂトリミング加工できる。
【0060】
具体的には、切れ刃4の軸方向の寸法が1mm以上であるので、一度のエッヂトリミング加工により、ウェーハWにテーパ面101dを付与できる。すなわち、トリミング用ブレード10をウェーハWに対して中心軸Cの軸方向に移動させることなく、ウェーハWにテーパ面101dを簡単に形成できる。なお好ましくは、切れ刃4の軸方向の寸法は、2mm以上である。
【0061】
また、切れ刃4の軸方向の寸法が5mm以下であるので、エッヂトリミング加工時に、切れ刃4のうち軸方向一方側(+X側)の端部が、ウェーハWの外周部からウェーハの径方向外側に突出する量を小さく抑えられる。これにより、テーパ部4aに摩耗による大きな段差が生じること、つまり大きな偏摩耗が生じることが抑制されて、トリミング用ブレード10の切れ刃4のドレッシングが効率よく行える。なお好ましくは、切れ刃4の軸方向の寸法は、3mm以下である。
【0062】
また本実施形態では、中心軸Cに沿う断面視で、テーパ部4aと中心軸Cとの間に形成される傾斜角θ1が、0°を超え70°以下である。
傾斜角θ1が70°以下であるので、切れ刃4の先端(外周端)が鋭利になり過ぎることが抑えられ、ウェーハWのエッヂトリミング加工時などに、切れ刃4が破損することを抑制できる。
なお好ましくは、傾斜角θ1は、20°以上60°以下である。
傾斜角θ1が20°以上であると、ウェーハWのバックグラインド加工時に、ウェーハWの外周部に切り残し部102が発生することをより安定して抑制できる。
傾斜角θ1が60°以下であると、ウェーハWのエッヂトリミング加工時などに、切れ刃4が破損することをより安定して抑制できる。
【0063】
また本実施形態において、トリミング用ブレード10のブレード本体1が、金属被覆ビトリファイドボンド相を有する場合には、トリミング用ブレード10に通電性が付与される。
この場合、ダイシング装置100のスピンドルにトリミング用ブレード10を装着して、ウェーハWをエッヂトリミング加工する際に、電気的な接点をとって(つまり電気式手法で)切れ刃4のZ軸方向の位置を正確に管理することができる。
【0064】
また、本実施形態のドレッシングプレート50およびトリミング用ブレード10のドレッシング方法によれば、下記の作用効果が得られる。
本実施形態によれば、ドレッシングプレート50が傾斜面52dを有する。このため、トリミング用ブレード10の切れ刃4が、トリミング用ブレード10の中心軸Cに対して傾斜するテーパ部4aを有していても、このテーパ部4aを傾斜面52dにより安定してドレッシングすることができる。
【0065】
また、ドレッシングプレート50は、トリミング用ブレード10とともに、ダイシング装置100の装置内に実装される。ドレッシングプレート50を装置内部に配置することで、トリミング用ブレード10の切れ刃4のドレッシングを自動化できる。
本実施形態によれば、プレート本体51が板状であり、板厚方向の寸法Hが小さく抑えられているため、ドレッシングプレート50をダイシング装置100内のテーブルT上に、省スペースでコンパクトに配置できる。このため、ドレッシングプレート50を装置内に配置しても、別の部材のレイアウト上の制約になりにくい。また、溝部52の延在方向に沿って延びる傾斜面52dが、溝幅方向に複数並んで配置されることにより、傾斜面52dの総面積が大きく確保されている。このため、トリミング用ブレード10をドレッシングする回数を増やすことができ、ドレッシングプレート50を長期にわたり使用することができて、ドレッシングプレート50の工具寿命が延長される。
【0066】
また本実施形態では、溝部52の延在方向の端部が、プレート本体51の延在方向を向く端面51cに開口する。
この場合、傾斜面52dが、プレート本体51の延在方向の端部まで配置され、トリミング用ブレード10のドレッシングに用いられる領域が拡大する。すなわち、各傾斜面52dの面積つまりドレッシングの使用可能領域が、より大きく確保される。トリミング用ブレード10と傾斜面52dとの、溝部52の延在方向に沿う相対移動可能な距離が大きくなり、ドレッシング効率が高められる。
【0067】
また本実施形態では、プレート本体51の板厚方向の寸法Hが、4mm以下である。
この場合、ダイシング装置100のテーブルTに対向して配置される顕微鏡部材Mの焦点深度(被写界深度)の数値範囲内に、プレート本体51の板厚方向の寸法Hをおさめることができる。テーブルTと顕微鏡部材Mとが、プレート本体51の板厚方向と垂直な方向(つまり水平方向)に相対移動しても、顕微鏡部材Mとプレート本体51との接触は抑えられる。このため、テーブルT上にドレッシングプレート50を配置するレイアウトの自由度が高められる。
【0068】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0069】
前述の実施形態では、ドレッシングプレート50の溝部52が、底面52cを有する例を挙げたが、これに限らない。溝部52は、底面52cを有さなくてもよい。この場合、一対の壁面52a,52bの各下端部同士が直接接続され、溝部52は、延在方向に垂直な断面視で上側に開口するV字状をなす。
【0070】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のトリミング用ブレードのドレッシングプレート、およびトリミング用ブレードのドレッシング方法によれば、切れ刃にテーパ部を有するトリミング用ブレードであっても、安定してドレッシングすることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0072】
1…ブレード本体、4…切れ刃、4a…テーパ部、10…トリミング用ブレード、50…トリミング用ブレードのドレッシングプレート、51…プレート本体、51a,51b…板面、51c…端面、52…溝部、52d…傾斜面、52e…ドレッシング砥粒、C…中心軸、H…寸法