IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝マテリアル株式会社の特許一覧

特許7534171セラミックス封着部品およびその製造方法
<>
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図1
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図2
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図3
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図4
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図5
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図6
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図7
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図8
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図9
  • 特許-セラミックス封着部品およびその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】セラミックス封着部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20240806BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C04B37/02 B
B23K1/19 B
B23K1/19 J
B23K1/19 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020161894
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054717
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】星野 政則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-310879(JP,A)
【文献】特開平01-111784(JP,A)
【文献】特開平05-286777(JP,A)
【文献】特開平08-253373(JP,A)
【文献】特開平03-103385(JP,A)
【文献】特開2001-220253(JP,A)
【文献】特開2001-220254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
B23K 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と金属部品を接合するセラミックス封着部品において、セラミックス部品と金属部品の中間にある金属固定板が、セラミックス部品とは活性金属層により接合されており、金属部品とはろう材により接合されており、前記面取り部に活性金属層があることを特徴とするセラミックス封着部品。
【請求項2】
前記面取り部の形状がC面取りまたはR面取りであり、面取りの大きさが0.1~2mmであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス封着部品。
【請求項3】
前記セラミックス部品がアルミナであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス封着部品。
【請求項4】
前記活性金属層が、銅およびチタンを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス封着部品。
【請求項5】
前記金属固定板が、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス封着部品。
【請求項6】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と、金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品端面および面取り部に活性金属からなるペーストを印刷乾燥し、印刷面に金属固定板を設置し、金属部品と金属固定板の間にろう材を設置した後に加熱処理をすることによりセラミックス部品と金属部品を接合することを特徴とするセラミックス封着部品の製造方法。
【請求項7】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と、金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品端面および面取り部に活性金属からなるペーストを印刷乾燥し、印刷面に金属固定板を設置し加熱することによりセラミックス部品と金属固定板を接合した後、金属部品と金属固定板の間にろう材を設置して加熱処理をすることによりセラミックス部品と金属部品を接合することを特徴とするセラミックス封着部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、おおむね、電力管などに用いられるセラミックス部品と金属部品を接合したセラミックス封着部品(以下セラミックス封着部品)に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン、電力管、電子管用のセラミックス封着部品として、モリブデン(Mo)やタングステン(W)などの高融点金属を主成分とするメタライズ層を、アルミナ(酸化アルミニウム:Al )などのセラミックス部品本体表面に形成したセラミックス部品が使用されている。セラミックス封着部品は、セラミックスと金属を接合させ外気を遮断して気密封止をすることにより、内部を外部の環境条件から保護しセラミックスにより電気絶縁をすることが可能である。たとえば、図1に示すようなセラミックス封着部品は、アルミナ焼結体からなる円筒状のセラミックス部品本体の上端面および下端面のリング部に、モリブデンを主成分とするメタライズ層が形成される。このメタライズ層の上面には、他の金属部品との接合強度を向上させ、封着を行うために所定厚さのニッケル層が形成される。このニッケル部分と円筒状の金属部品が銀ろう(たとえばBAg-8)により接合されている。
【0003】
この種のセラミックス封着部品として、たとえば、特願平1-46978号公報(特許文献1)には、セラミックス円筒体にモリブデンによる金属面を形成し鉄金属円筒体をろう材にて接合した真空気密封着構造を有する電子管がある。また、特開2001-220253号公報(特許文献2)には、モリブデンなどの高融点金属を使用せずに活性金属によりセラミックスにニッケル(Ni)系合金を接合した真空スイッチ外管がある。さらに、特開平8-253373号公報(特許文献3)には、接合金属と活性金属とを含む粒子および繊維を三次元的に任意形状の設置した真空気密容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願平1-46978号公報
【文献】特開2001-220253号公報
【文献】特開平8-253373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックス表面をモリブデンなどの高融点金属を使用してメタライズする場合は、1400℃以上の高温に加熱するため高温処理が可能な炉が必要であり、かつ高温で処理を行うためにコストがかかっていた。また、形成されたメタライズ層はそのままろう付けすることが難しく、ニッケルなどのめっき処理を行う必要があり工程が複雑であった。また、活性金属法を用いた場合には、活性金属ペーストの有機バインダーの分解ガスを防止するために、活性金を箔形状など複雑な形状に加工することが必要であった。さらには金属部品との接合をエッジシールとした場合は接合面積が小さくなるためペーストで形成された活性金属層では十分な真空度が保てずにリーク不良が発生する可能性があった。
【0006】
実施形態は、このような問題を解決するものであり、封着部品に使用されるセラミックス封着部品に関して、リーク不良の発生を抑制し生産性の高いセラミックス封着部品およびその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と金属部品を接合するセラミックス封着部品において、セラミックス部品と金属部品の中間にある金属固定板が、セラミックス部品とは活性金属層により接合されており、金属部品とはろう材で接合されており、前記面取り部に活性金属層があることを特徴とするセラミックス封着部品を提供する。
【0008】
前記面取り部の形状がC面取りまたはR面取りであり、面取りの大きさが0.1~2mmであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス封着部品を提供する。
【0009】
前記セラミックス部品がアルミナであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス封着部品を提供する。
【0010】
前記活性金属層が、銅およびチタンを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス封着部品を提供する。
【0011】
前記金属固定板が、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス封着部品を提供する。
【0012】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品端面および面取り部に活性金属部材を印刷乾燥し、印刷面に金属固定板を設置し、金属部品と金属固定板の間にろう材を設置した後に加熱処理をすることによりセラミックス部品と金属部品を接合することを特徴とするセラミックス封着部品の製造方法を提供する。
【0013】
端面に面取り部を有する円筒型または角筒型のセラミックス部品と金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品端面および面取り部に活性金属部材を印刷乾燥し、印刷面に金属固定板を設置し加熱することによりセラミックス部品と金属固定板を接合した後、金属部品と金属固定板の間にろう材を設置して加熱処理をすることによりセラミックス部品と金属部品を接合することを特徴とするセラミックス封着部品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかるセラミックス封着部品の一例を示す図
図2】実施形態にかかるセラミックス封着部品の断面図の一例を示す図
図3】実施形態にかかるセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図4】実施形態にかかるセラミックス封着部品の接合端部の断面の一例を示す図
図5】実施例2のセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図6】比較例1のセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図7】比較例2のセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図8】比較例3のセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図9】比較例3のセラミックス封着部品の接合端部の断面の一例を示す図
図10】高融点金属層を使用したセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態にかかるセラミックス封着部品とは、セラミックス部品と金属部品の中間にある金属固定板が、セラミックス部品とは活性金属層により接合されており、金属部品とはろう材により接合されていることを特徴とするものである。
図1に実施形態にかかるセラミックス封着部品の一例を示した。3は円筒型のセラミックス部品、2は円筒型の金属部品である。図1では、上側端面および下側(反対側)端面に金属部品3を接合した例を示したものである。実施形態は、このような形に限定されるものではなく、角筒型のセラミックス部品や金属部品でもよく、下側底面がセラミックス部品であり上側(片側)だけ金属部品に接合された形態、片方の面に2以上の開口部をもったセラミックス部品に金属部品を接合しても良いものとする。
【0016】
実施形態にかかるセラミックス封着部品は、たとえば円筒形状のアルミナからなるセラミックス本体部と、このセラミックス本体部の一部の表面上に設けられた活性金属を含む活性金属層があり、活性金属層の表面に円盤状のたとえば銅からなる金属固定板があり、この金属固定板の上に、たとえば銀ろうおよび円筒形状の金属部品があることを特徴とするセラミックスと金属が接合された形状であることを特徴とするものである。
図2に実施形態にかかるセラミックス封着部品の断面図の一例を示す。1はセラミックス封着部品、2は金属部品、3はセラミックス部品である。
【0017】
セラミックス部品は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、ジルコニア添加アルミナ(アルジル)のいずれか1種であることが好ましい。ジルコニア添加アルミナは、アルミナと酸化ジルコニウムを混合した焼結体である。絶縁封着部品としてコストパフォーマンスが良いアルミナおよびジルコニア添加アルミナのいずれか1種であることが好ましい。また、アルミナには焼結助剤を添加してもよい。これは添加した焼結助剤がガラス相からなる粒界相を形成してアルミナ焼結体を緻密化するためである。焼結助剤としては、マンガン(Mn)、けい素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などが挙げられ、これらを、Mn、Si、MgおよびCaの少なくとも1種以上を金属元素単体換算で合計1~10wt%添加することが好ましい。
【0018】
セラミックス部品と接合する金属部品2の材質は、鉄(Fe)および鉄系合金、銅(Cu)および銅系合金、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、42アロイ(Ni42wt%、Mn0.8wt%以下、残Fe)、コバール(Ni29wt%、Co17wt%、残Fe)などが挙げられる。コストパフォーマンスに優れているのは鉄であり、鉄による金属部品を形成することが好ましい。金属部品はプレスなどにより所定の形状にし。耐食性や濡れ性の向上のためにニッケルなどのめっきを行うことが可能である。
【0019】
図3図2のA部の拡大図を示す。4は活性金属層、5は金属固定板、6はろう材である。セラミックス部品3と金属固定板5の間には接合層である活性金属層4がある。
活性金属層4は、Ti(チタン)などの活性金属を用いたものである。Ti以外にも、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)が挙げられる。活性金属層としては、Tiと銅(Cu)の混合物が挙げられる。Tiは0.1~10wt%、Cuは残部である。また、他の活性金属層として、Ti、Ag、Cuの混合物が挙げられる。Tiは0.1~10wt%、Cuは10~60wt%、Agは残部である。また、接合時の活性金属層の拡散により銅回路板中の粒径を制御する場合には、必要に応じ、インジウム(In)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、けい素(Si)、炭素(C)、マグネシウム(Mg)から選ばれる1種以上を1~15wt%添加してもよい。活性金属層では、セラミックス部品表面に活性金属ペーストを印刷乾燥し、その上に金属固定板を配置する。
【0020】
金属固定板5の材質は、鉄および鉄系合金、銅および銅系合金、タングステン、モリブデン、42アロイ(Ni42wt%、Mn0.8wt%以下、残Fe)、コバール(Ni29wt%、Co17wt%、残Fe)などが挙げられる。このうち銅や銅系合金は展延性に優れており接合時や使用時の熱応力を緩和できるため、銅および銅系合金により金属固定板を形成することが好ましい。
【0021】
金属固定板5と金属部品2はろう材6により接合される。ろう材はろう付け温度で溶融し金属部品とセラミックス部品を接合する。ろう材には、銀ろう、金ろうなどのろう材があるが、金属の接合に多く使用されている銀ろう、さらにはBAg-8(Ag72wt%、Cu28wt%)が好ましい。
【0022】
セラミックス部品3と金属固定板5は活性金属層4で接合されている。接合前の活性金属層はたとえば活性金属ペーストをセラミックス端面に印刷することで形成することが可能である。平面であるセラミックス端面に印刷で形成されることにより接合前の活性金属層は略平面であり、金属固定板を上に重ねることが可能である。
金属固定板を重ねた状態で加熱することにより活性金属層を介してセラミックスと金属固定板を接合することが可能である。
金属固定板はセラミックス部品と端面で接合することに接合面積が大きくなり、セラミックスと金属封着部品の内外部間での気密に必要な距離を得ることと接合強度を向上させることが可能である。
【0023】
図6に金属固定板を使用しないセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す。活性金属層と金属部品を接合することは可能であるが、活性金属層は金属部品上に濡れ広がらないためにろう材によるメニスカス形状を形成することが難しい。このため金属固定板を使用せずに接合するとセラミックス部品と金属部品の熱膨張差による応力により接合部分直下のセラミックス部分にクラックが入りやすい。
このため金属固定板を使用することにより、セラミックス部品に対する応力を緩和することも可能である。
【0024】
円筒形状のセラミックス部品に接合する金属固定板の外径はセラミックス部品の面取り部を除いた平面部よりも小さく、内径はセラミックス部品の面取り部を除いた内径よりも大きいことが好ましい。これは、金属部品の外径よりも大きく、内径よりも小さくしても気密と接合強度向上に効果がないためである。また、金属部品の幅(外径と内径の差)は、セラミックス部品の幅(内径と外径と差)の1/2以上であることが好ましい。1/2よりも小さいと十分な気密と接合強度を得られない可能性がある。また、組み立てが難しくオフセンターの状態になりやすいためである。金属固定板の厚さは、0.05~1.0mmが、さらには0.1~0.5mmが好ましい。厚さが0.05mm未満であると金属固定板としての強度が弱く作業性が劣るためである。1.0mmよりも厚いとセラミックスとの熱膨張差により接合部分にクラックが入りやすいためである。
【0025】
金属固定板5と金属部品2はろう材6で接合されている。ろう材を箔状やワイヤー状に加工して、金属固定板と金属部品の間に挟むか金属固定板上で金属部品の近くに置き、加熱することによりろう付けを行う。
金属部品の厚さはセラミックス部品よりも薄いこと、さらにはセラミックス部品の厚さの1/2以下の厚さであることが好ましい。これは、金属部品が薄い方が、セラミックス部品と金属部品の熱膨張差を吸収するためである。
【0026】
セラミックス部品と金属固定板を接合した後に金属部品をろう付けしても、セラミックス部品と金属固定板と金属部品を同時に接合しても良い。
前者は活性金属の接合条件とろう付けの接合条件を合わせるための調整が不要であり、後者は接合が一度で可能である。
【0027】
活性金属を用いた活性金属接合法は、セラミックス部品に活性金属ペーストを印刷し、その上に金属固定板を配置する。これを700~900℃で加熱して接合するものである。
【0028】
次に、実施形態にかかるセラミックス封着部品の製造方法について説明する。セラミックス封着部品は前述の構成を有していれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、歩留まり良く得るための方法として次のものが挙げられる。
【0029】
実施形態にかかるセラミックス部品の一例は略円柱形状であり、たとえば、外径50mm、内径40mm、高さ50mmである。セラミックス部品は熱膨張率の異なる金属と高温で接合するため、発生する膨張差によりセラミックス角部や活性金属層の端部にクラックが発生しやすい。このため外周および内周に面取り加工をしておくことが好ましい。面取りの形状はたとえばC面取りやR面取りがあり、面取りの大きさは0.1~2mmであることが好ましい。
【0030】
活性金属層は、活性金属ペーストをセラミックス部品にスクリーン印刷法などで印刷し、大気雰囲気中で乾燥させた後、真空中などで焼成することにより形成する。このとき、図4に示すように、面取り部には活性金属層が形成されることが好ましい。これは、活性金属層を面取り部まで形成することにより、活性金属層端部における熱応力がかかる方向を変化させ、クラックを防止することができるためである。活性金属ペーストは、活性金属粉末または活性金属粉末に他の金属粉末を混合したものに、有機バインダーと有機溶剤を加えたものである。有機バインダーは乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはエチルセルロースが挙げられる。有機溶剤は乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはテレピネオールやブチルカルビトールが挙げられる。活性金属ペーストは、たとえば活性金属粉末と金属粉末とを解砕混合をした後、有機バインダーおよび有機溶剤と混合して調製されたものである。また、活性金属粉末の比率は0.1~100wt%、好ましくは0.5~10wt%である。ペーストの印刷厚さは10~40μmが好ましい。印刷厚さが10μm未満であると活性金属層の厚さにばらつきができ接合強度を低下させる。一方、40μmを越えるとそれ以上の効果が得られない。また、乾燥温度は大気雰囲気中50~100℃、好ましくは50~80℃である。また、乾燥時間は5~30分、好ましくは10~20分である。ペースト乾燥後に金属固定板をペースト面上に設置して活性金属接合を行う。活性金属接合温度は600~1000℃、好ましくは700~900℃である。また、活性金属接合時間は接合温度に到達した状態で5分~1時間の範囲が好ましい。活性金属接合雰囲気は必要に応じ、真空中や非酸化性雰囲気で行うものとする。また、真空中で行う場合は、1×10-2Pa以下であることが好ましい。また、非酸化性雰囲気は窒素雰囲気やアルゴン雰囲気が挙げられる。真空中または非酸化性雰囲気とすることにより、接合層が酸化されるのを抑制することができる。これにより、接合強度の向上が図られる。
【0031】
実施形態にかかる金属部品の一例は略円筒形状であり、たとえば、外径46mm、内径44mm、高さ20mmである。金属部品の材質は、鉄および鉄系合金、銅および銅系合金、タングステン、モリブデン、42アロイ、コバールなどが挙げられる。コストパフォーマンスに優れているのは鉄および鉄系合金であり、鉄および鉄系合金による金属部品を形成することが好ましい。金属部品はプレスなどにより所定の形状にし。耐食性や濡れ性の向上のためにNiめっきを行うことが可能である。
【0032】
ろう材6はろう付け温度で溶融し金属部品とセラミックス部品を接合する。ろう材には、銀ろう、金ろうなどのろう材があるが、金属とセラミックスの接合に多く使用されている銀ろう、さらにはBAg-8が好ましい。銀ろうの形態は、シート、ワイヤー、ペーストなどがある。ペーストは含まれている有機成分を接合の過程で除去する必要があるためシートやワイヤーが好ましい。ろう材の量は少なすぎると未接合箇所であるろう切れが発生し、多すぎるとろう溜まりが起こり応力破壊の原因となるため、メタライズ面積、ろう付け面積にあわせて使用するろう材の量を調整する。
【0033】
ろう付けは、金属固定板と金属部品の間にろう材を設置して加熱することにより行う。ろう付けの雰囲気は、水素、窒水素、真空、アルゴンなどの不活性ガス中などで行われる。ろう付けに使用する炉は連続炉やバッチ炉が使用される。量産性において優れているのは連続炉である。上記の雰囲気で部品を所定時間加熱することによりろう付けが行われる。
【0034】
金属部品は熱膨張率の異なるセラミックスと高温で接合するため、発生する膨張差による応力を金属部品形状で緩和する必要がある。金属部品は変形することで、ろう付けで発生する応力を緩和する。図3では金属部品の先端部分は平坦部である。図5では金属部品の先端をナイフエッジ等の先細形状断面としている。先細形状にすることにより金属固定板と線で接することが可能になり隙間ができにくくなる。また、先細形状によりろう材がメニスカス形状になり接合強度の向上が図れる。
【0035】
以上ではセラミックス部品に金属固定板を接合した後に金属部品を接合しているが、セラミックス部品と金属固定部品と金属部品を同時に接合することも可能である。同時に接合する場合は、セラミックス部品に活性金属ペーストを印刷乾燥後に、活性金属ペースト面に金属固定部品、ろう材、金属部品を積層して加熱することにより接合する。
【0036】
図10に参考として高融点金属層(高融点金属メタライズ)を使用したセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す。高融点金属メタライズを行うには還元雰囲気において1400℃以上で熱処理をすることが必要である。このため高温雰囲気加熱炉が必要であり、また、高温で熱処理をするためのエネルギーコストがかかる。また、高融点金属はMoやWであり、メタライズ表面に直接ろう付けすることはできないため、高融点金属の表面にはNiなどのめっきが必要である。めっきをするためには、めっき薬剤やめっき治具などが必要である。また、めっき処理のためのエネルギーコストがかかる。
【0037】
以上本発明の実施形態におけるセラミックス封着部品の製造方法によれば、封着部品としての機密性能を保持したまま、コストパフォーマンスに優れたセラミックス封着部品を得ることができる。
【0038】
(実施例1)
92wt%アルミナに酸化マンガン(MnO )、酸化ケイ素(シリカ:SiO )、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)を合計で8wt%の助剤を加えた組成を有するアルミナ造粒粉をプレスで成型し1500℃大気中で焼結することにより、外径50mm、内径40mm、高さ50mm、外径C面取り1mm、内径C面取り1mmの円筒状のセラミックス部品を得た。
【0039】
活性金属ペーストに用いた金属粉末は、Ti2wt%、Sn10wt%、Cu30wt%、Ag残部、とした。活性金属ペーストは、金属粉末に有機成分を混合することによりペースト化した。セラミックス部品端部表面に、100メッシュのスクリーンメッシュを用いて厚さ20μmになるように活性金属ペーストを印刷した。次にペーストを印刷した部品本体を空気中て100℃で乾燥してペースト層を硬化せしめた。反対側の端面についても同様にしてペースト層を形成した。金属固定板として外径48mm、内径42mm、厚さ0.5mmの銅板を上下ペースト面に配置し、接合温度850℃、接合時間10分間、真空中(1×10 -2 Pa以下)で加熱接合を行った。
【0040】
金属部品は、外径46mm、内径44mm、高さ20mmの鉄製のリング形状とした。ろう材は0.2mmφのAgろう(BAg-8)を45mmφに巻いて一ヵ所が切れている略円周形状に切断した後に高さ方向(平面方向)にプレス加工したものを使用した。
治具に金属部品、ろう材、セラミックス部品、ろう材、金属部品の順に設置して、接合温度820℃、接合時間10分間、窒水素雰囲気で加熱してろう付けしセラミックス封着部品を得た。
【0041】
セラミックス封着部品の金属部品上端部にシリコーンを塗布してバイトンゴム製の円形治具で蓋をして下部をヘリウムリークディテクターに固定した。ヘリウムリーク試験をおこなったところ不良率は0%であった。次に上下の金属部品をンストロン引張試験機に固定して垂直方向に引張試験を行ったところ、接合強度は50kN/mm であった。引張試験の破壊箇所は、セラミックス部品と金属固定板の間であり接合箇所全面にわたって破壊していた。
【0042】
(実施例2)
図5のように金属部品の接合側先端1mmは先細形状とし、活性金属ペーストに用いた金属粉末をTi5wt%、Sn20wt%、Cu残部とした以外は、実施例1と同じ工程でセラミックス封着部品を得た。ヘリウムリーク試験の結果は不良率0%、接合強度は45kN/mm であった。引張試験の破壊箇所は、セラミックス部品と金属固定板の間であり接合箇所全面にわたって破壊していた。
【0043】
(比較例1)
図6のように金属固定板を使わずに金属部品を直接上下ペースト面に配置して接合温度850℃、接合時間10分間、真空中(1×10 -2 Pa以下)で加熱接合した以外は実施例1と同じ工程でセラミックス封着部品を得た。ヘリウムリーク試験の結果は不良率0%、接合強度は25kN/mm であった。引張試験の破壊箇所は、セラミックス部品と金属部品の間であり、金属部品が接合している個所が破壊していた。
【0044】
(比較例2)
図7のように金属固定板を使わずに(実施例2)で使用した接合側先端1mmは先細形状の金属部品を使用した以外は(比較例2)と同じ工程でセラミックス封着部品を得た。ヘリウムリーク試験の結果は不良率80%、接合強度は10kN/mm であった。引張試験の破壊箇所は、セラミックス部品と金属部品の間であり、金属部品が接合している個所が破壊していた。
【0045】
(比較例3)
図8のようにC面取りを行わないセラミックス部品を使用した以外は(実施例1)と同じ工程でセラミックス封着部品を得た。ヘリウムリーク試験の結果は不良率5%、接合強度は35kN/mm であった。引張試験の破壊箇所は、大部分はセラミックス部品と金属固定板の間であったが、セラミックス部品の外周部から破壊している個所が存在した。破壊箇所を確認したところ金属治具が外周部寄りに接合されていることが確認された。



【0046】
上記に示す結果から明らかなように、実施例は比較例と比べて、リーク特性および接合強度での信頼性の向上が認められた。
【0047】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…セラミックス封着部品
2…金属部品
3…セラミックス部品
4…活性金属層
5…金属固定板
6…ろう材
7…面取り
8…高融点金属層
9…めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10