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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 F
H01L21/78 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020188311
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077443
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 智子
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009123(WO,A1)
【文献】特開2004-153193(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142330(WO,A1)
【文献】特開2012-238747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の加工方法であって、
被加工物にテープを貼着して被加工物ユニットを形成するテープ貼着ステップと、
該被加工物ユニットに対して透過性を有する波長のレーザビームを該被加工物ユニットに照射して該テープを該被加工物に密着させる密着ステップと、
該密着ステップを実施した後、該被加工物ユニットのテープ側を保持テーブルで保持し、該被加工物を加工する加工ステップと、を備えた加工方法。
【請求項2】
該被加工物には、分割予定ラインが設定され、
該密着ステップでは、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを照射し、
該加工ステップでは、切削ブレードで被加工物を該分割予定ラインに沿って切削する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
該密着ステップでは、被加工物の外周縁に沿って該レーザビームを照射する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
該密着ステップでは、該レーザビームの照射により該テープを軟化させ被加工物に密着させる、請求項1に記載の加工方法。
【請求項5】
該密着ステップでは、該レーザビームの集光点を、少なくとも該被加工物の一部から該テープの一部へと延在させた状態で該レーザビームを照射して、該被加工物に細孔と該細孔を囲繞する変質領域とを形成するとともに、該テープを軟化させる、請求項1に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物にダイシングや研削、研磨、バイト切削時等、各種の加工を施す際には、被加工物のハンドリングを容易にするためや被加工物を保護するためにテープが広く利用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-307620号公報
【文献】特開平01-297483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、被加工物のチップサイズが小さい場合や、サファイアやSiC等の硬質材で切削時の加工負荷が大きい場合、チップが個片化される際に動き、裏面に大きな欠けが発生することがある。研削においても、硬質材で研削負荷が大きい場合、被加工物が動く等して特に被加工物の外周縁に欠けが生じ易く、薄く研削することが難しい。
【0005】
従来、このような場合には被加工物をサブストレイトにワックスダウン固定することで、サブストレイト上に強固に固定して加工を施していた。しかし、加工後の被加工物をサブストレイトから剥離し、ワックスを洗浄しなくてはならず手間であった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、剥離の際の手間を抑制しながらも加工中の被加工物の破損を抑制することができる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工方法は、被加工物の加工方法であって、被加工物にテープを貼着して被加工物ユニットを形成するテープ貼着ステップと、該被加工物ユニットに対して透過性を有する波長のレーザビームを該被加工物ユニットに照射して該テープを該被加工物に密着させる密着ステップと、該密着ステップを実施した後、該被加工物ユニットのテープ側を保持テーブルで保持し、該被加工物を加工する加工ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記加工方法において、該被加工物には、分割予定ラインが設定され、該密着ステップでは、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを照射し、該加工ステップでは、切削ブレードで被加工物を該分割予定ラインに沿って切削しても良い。
【0009】
前記加工方法において、該密着ステップでは、被加工物の外周縁に沿って該レーザビームを照射しても良い。
【0010】
前記加工方法において、該密着ステップでは、該レーザビームの照射により該テープを軟化させ被加工物に密着させても良い。
【0011】
前記加工方法において、該密着ステップでは、該レーザビームの集光点を、少なくとも該被加工物の一部から該テープの一部へと延在させた状態で該レーザビームを照射して、該被加工物に細孔と該細孔を囲繞する変質領域とを形成するとともに、該テープを軟化させても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加工方法は、剥離の際の手間を抑制しながらも加工中の被加工物の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示された加工方法のテープ貼着ステップ後の被加工物を示す斜視図である。
図4図4は、図2に示された加工方法の密着ステップを模式的に示す斜視図である。
図5図5は、図2に示された加工方法の密着ステップのテープのレーザビームを照射する領域を示す平面図である。
図6図6は、図2に示された加工方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。
図7図7は、実施形態2に係る加工方法の加工ステップを模式的に示す斜視図である。
図8図8は、実施形態2に係る加工方法の密着ステップを模式的に示す斜視図である。
図9図9は、実施形態2に係る加工方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。
図10図10は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法の密着ステップ後の被加工物ユニットの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
実施形態1に係る加工方法は、図1に示された被加工物1の加工方法である。実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物1は、シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)又はサファイア、などを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等である。被加工物1は、表面2の複数の分割予定ライン3によって格子状に区画された各領域にデバイス4が形成されている。このために、被加工物1は、表面2に分割予定ライン3が複数設定されている。デバイス4は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0017】
被加工物1は、分割予定ライン3に沿って分割されて、複数のチップ5に分割される。なお、チップ5は、母材の一部分とデバイス4とにより構成される。実施形態1では、チップ5は、例えば、平面形状が0.3mm×0.3mmの四角形に形成されているが、本発明では、チップ5は、長辺の長さが0.5mm以下でかつ平面形状が四角形の所謂小チップであるのが望ましい。
【0018】
実施形態1において、被加工物1は、母材がSiCにより形成されている。なお、本発明では、被加工物1は、母材がSiC又はサファイアなどのシリコンよりも硬質な材料で構成されているのが望ましい。実施形態1において、被加工物1は、表面2にデバイス4が形成されているが、本発明では、これに限定されずに、表面2にデバイス4が形成されていないものでも良い。
【0019】
実施形態1に係る加工方法は、図2に示すように、テープ貼着ステップ1001と、密着ステップ1002と、加工ステップ1003とを備える。
【0020】
(テープ貼着ステップ)
図3は、図2に示された加工方法のテープ貼着ステップ後の被加工物を示す斜視図である。テープ貼着ステップ1001は、被加工物1にテープ10を貼着して被加工物ユニット11を形成するステップである。
【0021】
実施形態1において、テープ貼着ステップ1001では、外縁部に環状フレーム12が貼着された被加工物1よりも大径のテープ10の糊層10-1の中央に被加工物1の表面2の裏側の裏面6を貼着する。実施形態1において、テープ貼着ステップ1001では、裏面6をテープ10に貼着することで、環状フレーム12の内側の開口13内に被加工物1を支持した被加工物ユニット11を形成する。なお、実施形態1において、テープ10は、可撓性と粘着性とを有する樹脂で構成されかつ被加工物1の裏面6に貼着する糊層10-1と、糊層10-1に積層されかつ可撓性と非粘着性とを有する樹脂で構成された基材層10-2とを備える。
【0022】
(密着ステップ)
図4は、図2に示された加工方法の密着ステップを模式的に示す斜視図である。図5は、図2に示された加工方法の密着ステップのテープのレーザビームを照射する領域を示す平面図である。密着ステップ1002は、被加工物ユニット11に対して透過性を有する波長のレーザビーム24を被加工物ユニット11に照射してテープ10を被加工物1に密着させるステップである。
【0023】
実施形態1において、密着ステップ1002では、レーザ加工装置20が、被加工物ユニット11の被加工物1の表面2側を保持テーブル21の保持面22に吸引保持する。密着ステップ1002では、レーザ加工装置20が、撮像ユニットで被加工物ユニット11を撮像し、被加工物1の分割予定ライン3を検出して、分割予定ライン3とレーザビーム照射ユニット23との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0024】
なお、本発明では、被加工物1の裏面6に金属膜などの赤外線を透過しない膜が形成されていない場合には、被加工物1の裏面6側を撮像ユニットである赤外線撮像カメラで撮像して分割予定ライン3を検出し、被加工物1の裏面6に金属膜などの赤外線を透過しない膜が形成されている場合には、被加工物1の表面2側を保持テーブル21越しに被加工物1の下方から撮像ユニットで撮像して分割予定ライン3を検出するのが望ましい。また、本発明では、被加工物1の裏面6に金属膜などの赤外線を透過しない膜が形成されている場合には、保持テーブル21をガラス等の透光性を有する材料で構成するのが望ましい。
【0025】
実施形態1において、密着ステップ1002では、レーザ加工装置20は、レーザビーム24の集光点をテープ10の被加工物1の裏面6寄りの表層(実施形態1では、糊層10-1の内部)に設定して、レーザビーム照射ユニット23と被加工物1とを分割予定ライン3に沿って相対的に移動させながらレーザビーム照射ユニット23から被加工物1とテープ10との双方に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザビーム24を被加工物ユニット11に照射する。
【0026】
なお、実施形態1において、密着ステップ1002では、被加工物ユニット11のテープ10の被加工物1のデバイス4の外縁部と分割予定ライン3とに重なりかつ分割予定ライン3に沿って直線状に延在した図5に示す領域7のうちのデバイス4の外縁部に重なる位置に分割予定ライン3の長手方向に沿って等間隔にレーザビーム24を照射する。しかしながら、本発明では、領域7のうちの分割予定ライン3の幅方向の両縁部に重なる位置に分割予定ライン3の長手方向に沿って等間隔にレーザビーム24を照射しても良く、領域7全体に等間隔にレーザビーム24を照射しても良く、領域7のうちのデバイス4の角に重なる位置にレーザビーム24を照射しても良い。
【0027】
密着ステップ1002では、テープ10のレーザビーム24の集光点及び集光点の近傍は、部分的に軟化、溶融して、被加工物1の裏面6に密着する。こうして、密着ステップ1002では、レーザビーム24の照射によりテープ10を部分的に軟化させて被加工物1に密着させる。なお、実施形態1において、密着ステップ1002では、レーザ加工装置20は、波長が532nm、エネルギが10μJ、集光点のレーザビーム24のスポット径が5μmのパルス状のレーザビーム24を10μm間隔で照射する。なお、実施形態1において、密着ステップ1002では、パルス状のレーザビーム24をテープ10に照射するが、本発明では、これに限定されることなく、連続波(Continuous Wave)のレーザビーム24をテープ10に照射しても良い。なお、本発明では、密着ステップ1002でのレーザビーム24の照射は、テープ10側から入射させる他、テープ10側を保持テーブル21で保持し被加工物1側からレーザビーム24を照射してもよい。
【0028】
(加工ステップ)
図6は、図2に示された加工方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。加工ステップ1003は、密着ステップ1002を実施した後、被加工物ユニット11のテープ10側を保持テーブル31で保持し、被加工物1を加工するステップである。
【0029】
実施形態1において、加工ステップ1003では、加工装置である切削装置30が、テープ10を介して被加工物1の裏面6側をテープ10を介して保持テーブル31の保持面32に吸引保持し、保持テーブル31の周囲に配置されたクランプ部33で環状フレーム12をクランプする。加工ステップ1003では、切削装置30が図示しない撮像ユニットで被加工物1を表面側を撮像し、分割予定ライン3と切削ユニット34の切削ブレード35との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0030】
加工ステップ1003では、図6に示すように、切削装置30が回転中の切削ブレード35と被加工物1とを分割予定ライン3に沿って相対的に移動させながら、表面2側から被加工物1に切削ブレード35をテープ10に達するまで切り込ませて、被加工物1を切削加工(加工に相当)する。こうして、実施形態1では、加工ステップ1003では、切削ブレード35で被加工物1を分割予定ライン3に沿って切削加工して、被加工物1を個々のチップ5に分割する。
【0031】
加工ステップ1003では、切削装置30が切削ブレード35で全ての分割予定ライン3に沿って被加工物1を切削加工する。なお、実施形態1において、加工ステップ1003では、切削ブレード35をテープ10に達するまで被加工物1に切り込ませて、被加工物1を所謂フルカットしたが、本発明は、フルカットに限定されることなく、加工ステップ1003では、切削ブレード35を被加工物1の厚み方向の中央まで切り込ませて、被加工物1を所謂ハーフカットしても良い。
【0032】
なお、実施形態1において、加工ステップ1003では、切削ブレード35の回転数を30000rpmとし、保持テーブル31の移動速度(即ち、加工送り速度)を100mm/sとしている。
【0033】
以上説明した実施形態1に係る加工方法は、テープ貼着ステップ1001において被加工物1にテープ10を貼着して形成した被加工物ユニット11に、密着ステップ1002において、レーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させる。このために、実施形態1に係る加工方法は、ワックス等を用いて被加工物1にサブストレイトを貼着する必要がないので、被加工物1をサブストレイト等から剥離した際にワックスを洗浄して除去する手間が不要となる。
【0034】
また、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させるので、加工ステップ1003中に、被加工物1がテープ10に対して相対的に位置ずれすることを抑制できる。
【0035】
その結果、実施形態1に係る加工方法は、剥離の際の手間を抑制しながらも加工中の被加工物1及びチップ5の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0036】
また、ホットプレートや加熱テーブルを用いて被加工物ユニット11を加熱する場合、被加工物1全面が加熱されてしまい、テープ10が縮みしわになりやすい。テープ10にしわが生じると、テープ10を介して被加工物1を吸引保持する際に負圧のリークが生じてしまい、加工中に被加工物1が保持テーブル31して移動しやすくなる。しかしながら、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にパルス状のレーザビーム24を部分的に照射し、テープ10と被加工物1を密着させるので、テープ10が縮む量を抑えられ、しわを発生させるおそれがなく、加工中に被加工物1が保持テーブル31して移動することを抑制することができる。
【0037】
また、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002では、分割予定ライン3に沿ってレーザビーム24を照射するので、被加工物1の切削加工中に切削ブレード35が通過する領域をテープ10に密着させることができ、被加工物1の裏面6の裏面チッピング、欠け、クラック等を抑制すること抑えることが可能となる。
【0038】
また、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002では、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射するので、レーザビーム24の照射によってテープ10が加熱され軟化し、溶融されるので、被加工物1の被貼着面である裏面6の微小凹凸にテープ10が倣い、テープ10と被加工物とを密着させることができる。
【0039】
また、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させて、加工ステップ1003中に、被加工物1がテープ10に対して相対的に位置ずれすることを抑制できるので、加工ステップ1003において被加工物1を切削加工する際に、保持テーブル の切削ブレード35に対する移動速度の高速度化を図ることができる。その結果、実施形態1に係る加工方法は、密着ステップ1002において、加工ステップ1003において被加工物1を切削加工する際の加工効率を向上させることができる。
【0040】
また、実施形態1に係る加工方法は、テープ貼着ステップ1001において、被加工物1の裏面6にテープ10を貼着し、密着ステップ1002において、被加工物1の裏面6にテープ10を密着するので、裏面6側のチッピング(所謂欠け)を抑制するのに有効である。このように、本発明の加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物1のテープ10に貼着した面と、テープ10とを密着することができ、チップ5のテープ10に貼着した面のチッピングを抑えるのに有効である。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図7は、実施形態2に係る加工方法の加工ステップを模式的に示す斜視図である。図8は、実施形態2に係る加工方法の密着ステップを模式的に示す斜視図である。図9は、実施形態2に係る加工方法の加工ステップを一部断面で示す側面図である。なお、図7図8及び図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
実施形態2に係る加工方法のテープ貼着ステップ1001では、図7に示すように、被加工物1と同径のテープ10の糊層10-1に被加工物1の表面2を貼着して、被加工物ユニット11を形成する。
【0043】
実施形態2に係る加工方法の密着ステップ1002では、レーザ加工装置20が、被加工物ユニット11の被加工物1の表面2側をテープ10を介して保持テーブル21の保持面22に吸引保持する。密着ステップ1002では、レーザ加工装置20は、レーザビーム24の集光点をテープ10の被加工物1の裏面6寄りの表層(実施形態2では、糊層10-1の内部)に設定して、図8に示すように、レーザビーム照射ユニット23と被加工物1とを被加工物1の外周縁に沿って相対的に移動させながらレーザビーム照射ユニット23から被加工物1とテープ10との双方に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザビーム24を被加工物ユニット11に照射する。
【0044】
なお、実施形態2において、密着ステップ1002では、被加工物ユニット11のテープ10の被加工物1のデバイス4が形成された領域を囲繞しかつデバイス4が形成されていない領域に重なる領域に被加工物1外周縁に沿って等間隔にレーザビーム24を照射する。実施形態1においても実施形態1と同様に、密着ステップ1002では、テープ10のレーザビーム24の集光点及び集光点の近傍は、部分的に軟化、溶融して、被加工物1の表面2に密着する。
【0045】
実施形態2に係る加工方法の加工ステップ1003では、加工装置である研削装置40が、被加工物ユニット11のテープ10側を保持テーブル41の保持面42に吸引保持する。加工ステップ1003では、研削装置40が、図9に示すように、図示しない供給ノズルから被加工物1の裏面6に研削水を供給しながら保持テーブル41を軸心回りに回転させつつ研削ホイール43を軸心回りに回転させて、研削砥石44を被加工物1の裏面6に接触させてから研削砥石44で被加工物1を保持テーブル41に向けて押圧して、被加工物1の裏面6を研削加工(加工に相当)する。加工ステップ1003では、研削装置40が所定の厚みになるまで被加工物1を研削加工して薄化する。
【0046】
なお、実施形態2に係る加工方法は、加工ステップ1003において、被加工物1を研削加工するが、本発明では、研削加工に限定されずに、例えば、被加工物1を研磨加工、又はバイト切削加工しても良い。
【0047】
実施形態2に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させるため、ワックス等を用いて被加工物1にサブストレイトを貼着する必要がないとともに、加工ステップ1003中に、被加工物1がテープ10に対して相対的に位置ずれすることを抑制できる。その結果、実施形態2に係る加工方法は、実施形態1と同様に、剥離の際の手間を抑制しながらも加工中の被加工物1の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0048】
また、実施形態2に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物1の外周縁に沿ってレーザビーム24を照射するので、被加工物1の外周縁に沿った領域をテープ10に密着させることができ、研削加工の際に被加工物1の外周がばたついて欠け等が生じることが防止できる。
【0049】
〔変形例〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法の密着ステップ後の被加工物ユニットの要部の断面図である。なお、図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
変形例に係る加工方法の密着ステップ1002では、加工装置であるレーザ加工装置20が、テープ10を介して被加工物1を保持テーブル21の保持面22に吸引保持し、レーザビーム照射ユニット23の集光レンズ等により集光点を被加工物1の内部からテープ10の糊層10-1の内部へと延在させた状態で、レーザビーム照射ユニット23からパルス状のレーザビーム24を被加工物1に照射する。このように、変形例に係る加工方法の密着ステップ1002では、加工装置であるレーザ加工装置20が、集光レンズで集光されたレーザビーム24に縦収差が生じた状態で、被加工物1にレーザビーム24を照射する。変形例に係る加工方法の密着ステップ1002では、レーザ加工装置20が、被加工物1の内部に図10に示す被加工物1を表面2から裏面6に貫通した細孔81と細孔81を囲繞する円筒状の変質領域82とを有するシールドトンネル8を等間隔に複数形成する。なお、本発明の加工方法は、被加工物1の表面2から裏面6に至る細孔81と変質領域82とを形成する他、細孔81と変質領域82とは少なくとも被加工物1のテープ10に貼着された面側に形成されていればよく、被加工物1のテープ10に貼着された面の背面側には細孔81と変質領域82が形成されていなくても良い。
【0051】
また、変形例に係る加工方法の密着ステップ1002では、レーザ加工装置20が、テープ10の特に糊層10-1のレーザビーム24の集光点及び集光点の近傍を部分的に軟化、溶融して、被加工物1の裏面6に密着させるとともに、溶融した糊層10-1を毛細管現象により細孔81内に侵入させる。
【0052】
なお、変形例において、密着ステップ1002では、レーザ加工装置20は、波長が532nm、エネルギが10μJ、集光点のレーザビーム24のスポット径が5μmのパルス状のレーザビーム24を10μm間隔で照射する。また、変形例において、密着ステップ1002では、レーザ加工装置20は、開口数を被加工物1の屈折率で割った値が0.05以上でかつ0.2以下となる開口数の集光レンズを用いてレーザビーム24を集光する。
【0053】
また、変形例において、密着ステップ1002では、図10に示すように、互いに隣り合うシールドトンネル8の変質領域82同士を間隔あけて(即ち、非連続で)形成したが、本発明では、互いに隣り合うシールドトンネル8の変質領域82同士を連続させて形成しても良い。
【0054】
変形例に係る加工方法は、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させるため、実施形態1等と同様に、剥離の際の手間を抑制しながらも加工中の被加工物1の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0055】
また、変形例に係る加工方法は、密着ステップ1002において、レーザビーム24の照射によって、被加工物1の被貼着面に開口する細孔81が形成されるとともに、テープ10が加熱され軟化し、軟化したテープ10が細孔81内に侵入するので、テープ10と被加工物とを強固に固定することができる。
【0056】
次に、本発明の発明者らは、本発明の効果を確認した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の比較例は、実施形態1に係る加工方法のテープ貼着ステップ1001を実施した後加工ステップ1003を実施して、切削加工により被加工物1を、平面形状が0.3mm×0.3mmの四角形のチップ5に分割した。
【0059】
表1の本発明品は、実施形態1に係る加工方法を実施して、切削加工により被加工物1を平面形状が0.3mm×0.3mmの四角形のチップ5に分割した。
【0060】
比較例及び本発明品ともに、切削加工の際の切削ブレード35の回転数を30000rpmとし、保持テーブル31の移動速度(即ち、加工送り速度)を100mm/sとした。
【0061】
比較例では、100%のチップ5にチッピングが生じるなどの加工不良が生じた。このような比較例に対して、本発明品では、0.1%のチップ5にチッピングが生じるなどの加工不良が生じた。
【0062】
したがって、表1によれば、密着ステップ1002において、被加工物ユニット11にレーザビーム24を照射し、テープ10と被加工物1を密着させることにより、分割後のチップ5のチッピングなどの加工不良を抑制でき、加工中の被加工物1及びチップ5の破損を抑制することができることが明らかとなった。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、テープ10は、柔軟性と非粘着性の熱可塑性樹脂により構成され、粘着性を有する樹脂で構成された糊層10-1を備えないものでも良い。この場合、テープ10は、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーのシートであり、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレン等により構成されるのが望ましい。この場合、テープ10は、被加工物1に密着した状態で融点近傍の温度に加熱され、一部が溶融することで、被加工物1に貼着する。
【0064】
また、本発明では、特に、実施形態1及び実施形態2において、被加工物1に貼着される前のテープ10にレーザビーム24を照射してから特に糊層10-1が軟化したテープ10を被加工物1に貼着しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 被加工物
3 分割予定ライン
10 テープ
11 被加工物ユニット
24 レーザビーム
31 保持テーブル
35 切削ブレード
41 保持テーブル
81 細孔
82 変質領域
1001 テープ貼着ステップ
1002 密着ステップ
1003 加工ステップ
図1
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図10