(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20240806BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
(21)【出願番号】P 2021509369
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012623
(87)【国際公開番号】W WO2020196370
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019058621
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】土屋 公亮
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0244639(US,A1)
【文献】国際公開第2015/187820(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061365(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150856(WO,A1)
【文献】特開平11-188614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの仕上げポリシング工程で用いられる研磨用組成物であって、
砥粒と、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水と、を含み、
前記水溶性高分子として、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびマレイン酸型構造単位含有ポリマーを含
み、
酸化剤を実質的に含有しない、研磨用組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系ポリマーと前記マレイン酸型構造単位含有ポリマーとの含有量の比は、重量基準で50:50~99:1である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系ポリマーの重量平均分子量は10×10
4未満である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記マレイン酸型構造単位含有ポリマーの重量平均分子量は10×10
4未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
砥粒と、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水と、を含み、
前記水溶性高分子として、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびマレイン酸型構造単位含有ポリマーを含み、前記マレイン酸型構造単位含有ポリマーとして、一分子内にマレイン酸型構造単位とポリオキシアルキレン構造とを含有するポリマーを含
む、研磨用組成物。
【請求項6】
シリコンウェーハの仕上げポリシング工程で用いられる、請求項
5に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤として、ポリオキシアルキレン構造を含有する界面活性剤を含む、請求項
7に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記砥粒はシリカ粒子である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物に関する。
本出願は、2019年3月26日に出願された日本国特許出願2019-058621に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
金属や半金属、非金属、その酸化物等の材料表面に対して、研磨用組成物を用いた精密研磨が行われている。例えば、半導体装置の構成要素等として用いられるシリコンウェーハの表面は、一般に、ラッピング工程(粗研磨工程)とポリシング工程(精密研磨工程)とを経て高品位の鏡面に仕上げられる。上記ポリシング工程は、典型的には、予備ポリシング工程(予備研磨工程)と仕上げポリシング工程(最終研磨工程)とを含む。シリコンウェーハ等の半導体基板を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物に関する技術文献として、特許文献1および2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許出願公開昭63-272459号公報
【文献】日本国特許出願公開平2-158684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕上げポリシング工程(特に、シリコンウェーハ等の半導体基板その他の基板の仕上げポリシング工程)に用いられる研磨用組成物には、研磨後において高品質の表面を実現する性能が求められる。かかる用途向けの研磨用組成物は、砥粒および水に加えて、研磨対象物表面の保護や濡れ性向上等の目的で水溶性高分子を含むものが多い。
【0005】
水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーを用いることにより、研磨後の表面の濡れ性を好適に向上させ得る。一方、近年では、研磨後の表面品質に対する要求がさらに高くなってきている。そこで本発明は、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーを含み、研磨後の研磨対象物の表面品質を向上させることのできる研磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書により提供される研磨用組成物は、砥粒と、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水と、を含み、前記水溶性高分子として、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびマレイン酸型構造単位含有ポリマーを含む。マレイン酸型構造単位含有ポリマーの使用により、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびマレイン酸型構造単位含有ポリマーを含む研磨用組成物による研磨後の研磨対象物の表面品質を向上させることができる。例えばヘイズを改善することができる。
【0007】
なお、本明細書において「マレイン酸型構造単位」(以下、「MA単位」ともいう。)とは、マレイン酸またはその誘導体由来の構造部分をいう。ここに開示される研磨用組成物における「マレイン酸型構造単位含有ポリマー」(以下、「MA単位含有ポリマー」ともいう。)としては、その繰返し単位としてMA単位を含む水溶性有機物(典型的には水溶性高分子)が用いられる。
【0008】
ここに開示される研磨用組成物のいくつかの態様において、上記ポリビニルアルコール系ポリマーと上記MA単位含有ポリマーとの含有量の比は、重量基準で50:50~99:1であることが好ましい。かかる研磨用組成物によると、研磨後の研磨対象物表面のヘイズを効果的に改善することができる。
【0009】
上記ポリビニルアルコール系ポリマーとしては、重量平均分子量(Mw1)が10×104未満のものを好ましく採用し得る。かかるMw1を有するポリビニルアルコール系ポリマーを用いることは、洗浄性の観点から好ましい。
【0010】
上記MA単位含有ポリマーとしては、重量平均分子量(Mw2)が10×104未満のものを好ましく採用し得る。かかるMw2を有するMA単位含有ポリマーを用いることは、洗浄性の観点から好ましい。
【0011】
ここに開示される研磨用組成物のいくつかの態様において、上記MA単位含有ポリマーとして、一分子内にMA単位とポリオキシアルキレン構造とを含有するポリマーを含む。ポリビニルアルコール系ポリマーとMA単位含有ポリマーとの組合せ使用によるヘイズの改善効果は、かかる態様においてより好適に発揮され得る。
【0012】
ここに開示される研磨用組成物のいくつかの態様において、該研磨用組成物は、界面活性剤をさらに含む。かかる研磨用組成物の構成において、研磨後の研磨対象物表面のヘイズをさらに効果的に改善することができる。
【0013】
好ましい一態様に係る研磨用組成物は、上記界面活性剤として、ポリオキシアルキレン構造を含有する界面活性剤を含む。かかる態様においてヘイズをより好適に改善することができる。
【0014】
上記砥粒としては、シリカ粒子が好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系ポリマーとMA単位含有ポリマーとの組合せ使用によるヘイズの改善効果は、砥粒としてシリカ粒子を用いる研磨において好適に発揮される。
【0015】
ここに開示される研磨用組成物は、シリコンウェーハの仕上げポリシング工程に好ましく用いられ得る。上記研磨用組成物を用いて仕上げポリシングを行うことにより、ヘイズを改善し、高品質のシリコンウェーハ表面を好適に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒と、水溶性高分子と、塩基性化合物と、水と、を含む。上記研磨用組成物は、前記水溶性高分子として、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびマレイン酸型構造単位含有ポリマーを含む。以下、ここに開示される研磨用組成物の含有物を説明する。
【0018】
<砥粒>
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒を含む。砥粒は、研磨対象物の表面を機械的に研磨する働きをする。砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。後述するシリコンウェーハ等のようにシリコンからなる表面を有する研磨対象物の研磨(例えば仕上げポリシング)に用いられ得る研磨用組成物では、砥粒としてシリカ粒子を採用することが特に有意義である。ここに開示される技術は、例えば、上記砥粒が実質的にシリカ粒子からなる態様で好ましく実施され得る。ここで「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上(好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上であり、100重量%であってもよい。)がシリカ粒子であることをいう。
【0020】
シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。研磨後において表面品位に優れた研磨面が得られやすいことから、コロイダルシリカの使用が特に好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば、イオン交換法により水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカや、アルコキシド法コロイダルシリカ(アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたコロイダルシリカ)を好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
砥粒構成材料(例えば、シリカ粒子を構成するシリカ)の真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の上限は特に限定されないが、典型的には2.3以下、例えば2.2以下である。砥粒(例えばシリカ粒子)の真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0022】
砥粒(典型的にはシリカ粒子)のBET径(平均一次粒子径)は特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、上記BET径は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒のBET径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。より低ヘイズの表面を得やすくする観点から、いくつかの態様において、砥粒のBET径は、35nm以下でもよく、32nm未満でもよく、30nm未満でもよい。
【0023】
なお、本明細書においてBET径とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、BET径(nm)=6000/(真密度(g/cm3)×BET値(m2/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、BET径(nm)=2727/BET値(m2/g)によりBET径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0024】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、粒子の多くがピーナッツ形状または繭型形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0025】
特に限定するものではないが、砥粒の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、原理的に1.0以上であり、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨能率が実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0026】
砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
【0027】
<水溶性高分子>
ここに開示される研磨用組成物は、水溶性高分子を含む。水溶性高分子は、研磨対象物表面の保護や、研磨後の研磨対象物表面の濡れ性向上等に役立ち得る。
【0028】
(ポリビニルアルコール系ポリマー)
ここに開示される研磨用組成物は、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーを含む。ポリビニルアルコール系ポリマーとしては、その繰返し単位としてビニルアルコール単位を含む水溶性有機物(典型的には水溶性高分子)が用いられる。ここで、ビニルアルコール単位(以下「VA単位」ともいう。)とは、次の化学式:-CH2-CH(OH)-;により表される構造部分である。ポリビニルアルコール系ポリマーは、繰返し単位としてVA単位のみを含んでいてもよく、VA単位に加えてVA単位以外の繰返し単位(以下「非VA単位」ともいう。)を含んでいてもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位と非VA単位とを含むランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体であってもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーは、一種類の非VA単位のみを含んでもよく、二種類以上の非VA単位を含んでもよい。
【0029】
ここに開示される研磨用組成物に使用されるポリビニルアルコール系ポリマーは、変性されていないポリビニルアルコール(非変性PVA)であってもよく、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)であってもよい。ここで非変性PVAとは、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより生成し、酢酸ビニルがビニル重合した構造の繰返し単位(-CH2-CH(OCOCH3)-)およびVA単位以外の繰返し単位を実質的に含まないポリビニルアルコール系ポリマーをいう。上記非変性PVAのけん化度は、例えば60%以上であってよく、水溶性の観点から70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上でもよい。いくつかの態様において、けん化度が95%以上または98%以上である非変性PVAを水溶性高分子化合物として好ましく採用し得る。
【0030】
変性PVAに含まれ得る非VA単位としては、例えば後述するN-ビニル型のモノマーやN-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位、エチレンに由来する繰返し単位、アルキルビニルエーテルに由来する繰返し単位、炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルに由来する繰返し単位、等が挙げられるが、これらに限定されない。上記N-ビニル型のモノマーの一好適例として、N-ビニルピロリドンが挙げられる。上記N-(メタ)アクリロイル型のモノマーの一好適例として、N-(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。上記アルキルビニルエーテルは、例えばプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等の、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテルであり得る。上記炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルは、例えばプロパン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル等の、炭素原子数3以上7以下のモノカルボン酸のビニルエステルであり得る。
【0031】
ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位と、オキシアルキレン基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、水酸基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エーテル基、エステル基、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1つの構造を有する非VA単位とを含む変性PVAであってもよい。また、ポリビニルアルコール系ポリマーは、ポリビニルアルコール系ポリマーに含まれるVA単位の一部がアルデヒドでアセタール化された変性PVAであってもよい。上記アルデヒドとしては、例えばアルキルアルデヒドを好ましく用いることができ、炭素原子数1以上7以下のアルキル基を有するアルキルアルデヒドが好ましく、なかでもn-ブチルアルデヒドが好ましい。ポリビニルアルコール系ポリマーとして、第四級アンモニウム構造等のカチオン性基が導入されたカチオン変性ポリビニルアルコールを使用してもよい。上記カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、N-(メタ)アクリロイルアミノアルキル-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性基を有するモノマーに由来するカチオン性基が導入されたものが挙げられる。
【0032】
ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば5%以上であってよく、10%以上でもよく、20%以上でもよく、30%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位のモル数の割合は、50%以上であってよく、65%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上(例えば95%以上、または98%以上)でもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位の実質的に100%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコール系ポリマーに非VA単位を含有させないことをいい、典型的には全繰返し単位のモル数に占める非VA単位のモル数の割合が2%未満(例えば1%未満)であり、0%である場合を包含する。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば95%以下であってよく、90%以下でもよく、80%以下でもよく、70%以下でもよい。
【0033】
ポリビニルアルコール系ポリマーにおけるVA単位の含有量(重量基準の含有量)は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位の含有量は、50重量%以上(例えば50重量%超)であってよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上(例えば90重量%以上、または95重量%以上、または98重量%以上)でもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100重量%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位として非VA単位を含有させないことをいい、典型的にはポリビニルアルコール系ポリマーにおける非VA単位の含有量が2重量%未満(例えば1重量%未満)であることをいう。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーにおけるVA単位の含有量は、例えば95重量%以下であってよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよい。
【0034】
ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位の含有量の異なる複数のポリマー鎖を同一分子内に含んでいてもよい。ここでポリマー鎖とは、一分子のポリマーの一部を構成する部分(セグメント)を指す。例えば、ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位の含有量が50重量%より高いポリマー鎖Aと、VA単位の含有量が50重量%より低い(すなわち、非VA単位の含有量が50重量%より多い)ポリマー鎖Bとを、同一分子内に含んでいてもよい。
【0035】
ポリマー鎖Aは、繰返し単位としてVA単位のみを含んでいてもよく、VA単位に加えて非VA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Aを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。
【0036】
ポリマー鎖Bは、繰返し単位として非VA単位のみを含んでいてもよく、非VA単位に加えてVA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に100重量%が非VA単位であってもよい。
【0037】
ポリマー鎖Aとポリマー鎖Bとを同一分子中に含むポリビニルアルコール系ポリマーの例として、これらのポリマー鎖を含むブロック共重合体やグラフト共重合体が挙げられる。上記グラフト共重合体は、ポリマー鎖A(主鎖)にポリマー鎖B(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよく、ポリマー鎖B(主鎖)にポリマー鎖A(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよい。一態様において、ポリマー鎖Aにポリマー鎖Bがグラフトした構造のポリビニルアルコール系ポリマーを用いることができる。
【0038】
ポリマー鎖Bの例としては、N-ビニル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、オキシアルキレン単位を主繰返し単位とするポリマー鎖等が挙げられる。なお、本明細書において主繰返し単位とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる繰返し単位をいう。
【0039】
ポリマー鎖Bの一好適例として、N-ビニル型のモノマーを主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわちN-ビニル系ポリマー鎖が挙げられる。N-ビニル系ポリマー鎖におけるN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
【0040】
この明細書において、N-ビニル型のモノマーの例には、窒素を含有する複素環(例えばラクタム環)を有するモノマーおよびN-ビニル鎖状アミドが含まれる。N-ビニルラクタム型モノマーの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルモルホリノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。N-ビニル鎖状アミドの具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド、N-ビニル酪酸アミド等が挙げられる。ポリマー鎖Bは、例えば、その繰返し単位の50重量%超(例えば70重量%以上、または85重量%以上、または95重量%以上)がN-ビニルピロリドン単位であるN-ビニル系ポリマー鎖であり得る。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に全部がN-ビニルピロリドン単位であってもよい。
【0041】
ポリマー鎖Bの他の例として、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわち、N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖におけるN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
【0042】
この明細書において、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
【0043】
ポリマー鎖Bの他の例として、オキシアルキレン単位を主繰返し単位として含むポリマー鎖、すなわちオキシアルキレン系ポリマー鎖が挙げられる。オキシアルキレン系ポリマー鎖におけるオキシアルキレン単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bに含まれる繰返し単位の実質的に全部がオキシアルキレン単位であってもよい。
【0044】
オキシアルキレン単位の例としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等が挙げられる。このようなオキシアルキレン単位は、それぞれ、対応するアルキレンオキサイドに由来する繰返し単位であり得る。オキシアルキレン系ポリマー鎖に含まれるオキシアルキレン単位は、一種類であってもよく、二種類以上であってもよい。例えば、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを組み合わせて含むオキシアルキレン系ポリマー鎖であってもよい。二種類以上のオキシアルキレン単位を含むオキシアルキレン系ポリマー鎖において、それらのオキシアルキレン単位は、対応するアルキレンオキシドのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体であってもよい。
【0045】
ポリマー鎖Bのさらに他の例として、アルキルビニルエーテル(例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテル)に由来する繰返し単位を含むポリマー鎖、モノカルボン酸ビニルエステル(例えば、炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステル)に由来する繰返し単位を含むポリマー鎖、VA単位の一部がアルデヒド(例えば、炭素原子数1以上7以下のアルキル基を有するアルキルアルデヒド)でアセタール化されたポリマー鎖、カチオン性基(例えば、第四級アンモニウム構造を有するカチオン性基)が導入されたポリマー鎖、等が挙げられる。
【0046】
ここに開示される研磨用組成物におけるポリビニルアルコール系ポリマーとしては、非変性PVAを用いてもよく、変性PVAを用いてもよく、非変性PVAと変性PVAとを組み合わせて用いてもよい。非変性PVAと変性PVAとを組み合わせて用いる態様において、研磨用組成物に含まれるポリビニルアルコール系ポリマー全量に対する変性PVAの使用量は、例えば95重量%未満であってよく、90重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、30重量%以下でもよく、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、ポリビニルアルコール系ポリマーとして一種または二種以上の非変性PVAのみを用いる態様で好ましく実施され得る。
【0047】
ここに開示される研磨用組成物に使用されるポリビニルアルコール系ポリマーの重量平均分子量(Mw1)は、特に限定されない。ポリビニルアルコール系ポリマーのMw1は、通常、100×104以下が適当であり、30×104以下が好ましく、20×104以下でもよい。洗浄性の観点から、いくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーのMw1は、15×104以下でもよく、10×104以下(例えば、10×104未満)でもよい。また、ポリビニルアルコール系ポリマーのMw1は、通常は2×103以上であることが適当であり、5×103以上であってもよく、1×104以上であってもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーのMw1の増大につれて、研磨対象物の保護や濡れ性向上の効果は高まる傾向にある。かかる観点から、ここに開示される研磨用組成物に使用されるポリビニルアルコール系ポリマーのMw1は、5×103以上であることが好ましく、より好ましくは1×104以上であり、2×104以上でもよく、5×104以上でもよく、6×104以上でもよく、6.5×104以上でもよい。
【0048】
なお、本明細書において、水溶性高分子および後述する界面活性剤の重量平均分子量(Mws)としては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。GPC測定装置としては、東ソー株式会社製の機種名「HLC-8320GPC」を用いるとよい。測定は、例えば下記の条件で行うことができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
[GPC測定条件]
サンプル濃度:0.1重量%
カラム:TSKgel GMPWXL
検出器:示差屈折計
溶離液:100mM 硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=10~8/0~2
流速:1mL/分
測定温度:40℃
サンプル注入量:200μL
【0049】
研磨用組成物におけるポリビニルアルコール系ポリマーの含有量(二種以上のポリビニルアルコール系ポリマーを含む場合にはそれらの合計量)は、特に限定されない。研磨性能や表面品質向上等の観点から、いくつかの態様において、上記含有量は、例えば0.0001重量%以上であってよく、通常は0.00025重量%以上とすることが適当であり、好ましくは0.0004重量%以上、例えば0.0005重量%以上である。ポリビニルアルコール系ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、例えば0.05重量%以下とすることができる。濃縮液段階での安定性や研磨レート、洗浄性等の観点から、いくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーの含有量は、好ましくは0.035重量%以下、より好ましくは0.025重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.015重量%以下、例えば0.0125重量%以下、典型的には0.01重量%以下である。
【0050】
ポリビニルアルコール系ポリマーの含有量(二種以上のポリビニルアルコール系ポリマーを含む場合にはそれらの合計量)は、砥粒との相対的関係によっても特定され得る。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対するポリビニルアルコール系ポリマーの含有量は、例えば0.01重量部以上とすることができ、ヘイズ低減等の観点から0.1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上である。また、砥粒100重量部に対するポリビニルアルコール系ポリマーの含有量は、例えば50重量部以下であってもよく、30重量部以下でもよい。研磨用組成物の分散安定性等の観点から、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対するポリビニルアルコール系ポリマーの含有量は、15重量部以下とすることが適当であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下であり、7重量部以下でもよい。
【0051】
(マレイン酸型構造単位含有ポリマー)
ここに開示される研磨用組成物は、水溶性高分子として、MA単位含有ポリマーを含む。MA単位含有ポリマーは、その繰返し単位として一種類のMA単位のみを含んでいてもよく、二種類以上のMA単位を含んでもよい。また、MA単位に加えて、その繰返し単位として非MA単位を含んでいてもよい。ここに開示される研磨用組成物におけるMA単位含有ポリマーとしては、典型的にはMA単位と非MA単位とを含む共重合体が用いられる。MA単位含有ポリマーは、MA単位と非MA単位とを含むランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体であってもよい。このとき、一種類の非MA単位のみを含んでもよく、二種類以上の非MA単位を含んでもよい。
【0052】
ここでいう非MA単位としては、例えばスチレン型構造単位、オレフィン型構造単位、アクリル酸型構造単位、メタクリル酸型構造単位、および酢酸ビニル型構造単位等からなる群より選択される。MA単位と非MA単位とを含む共重合体の水溶性高分子の具体的な例として、スチレン-マレイン酸共重合体またはその塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレンスルホン酸-マレイン酸共重合体またはその塩、スチレンスルホン酸塩とマレイン酸との共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体、マレイン酸-酢酸ビニル共重合体またはその塩、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、N-フェニルマレイミド-酢酸ビニル共重合体、マレイン酸-イソブチレン共重合体またはその塩、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体、N-フェニルマレイミド-イソブチレン共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体またはその塩、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。例えば、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩、マレイン酸-イソブチレン共重合体のナトリウム塩等を好ましく採用し得る。前記共重合体の水溶性高分子は、疎水基と親水基が独立しているため、研磨対象物に作用しやすく、研磨対象物の保護に好適である。前記共重合体の水溶性高分子は、例えば、マレイン酸またはその誘導体と、それ以外の単量体とをラジカル共重合させることにより製造できる。共重合体を使用する場合に、共重合体におけるMA単位と非MA単位との共重合比は、特に制限されないが、研磨対象物の保護や濡れ性向上の観点から、10:1以下であることが好ましく、5:1以下であることがさらに好ましく、1:1以下であることが特に好ましい。また、前記共重合比は、特に制限されないが、親水性の観点から、1:10以上であることが好ましく、1:5以上であることがさらに好ましく、1:3以上であることが特に好ましい。
【0053】
ここに開示される研磨用組成物は、前記MA単位含有ポリマーとして、一分子内にMA単位とポリオキシアルキレン構造とを含有するポリマーを含んでいてもよい。ここでポリオキシアルキレン構造とは、次の式:(AO)n(ここで、nは2以上の整数(典型的には2~100)であり、Aは炭素原子数2~4(好ましくは2~3)のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。);により表される構造部分である。前記一分子内にマレイン酸型構造単位とポリオキシアルキレン構造とを含有するポリマー中における(AO)n構造の位置は、特に限定されない。前記一分子内にマレイン酸型構造単位とポリオキシアルキレン構造とを含有するポリマーは、例えば、(AO)n構造を含む側鎖を有していてもよく、あるいは主鎖または側鎖に(AO)n鎖を有し、その末端が例えば水酸基あるいはアミノ基であってもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーと組み合わせて用いるMA単位含有ポリマーにポリアルキレンオキシド構造が含まれていると、ヘイズの改善効果がより好適に発揮され得る。
【0054】
また、前記MA単位含有ポリマーとしては、その無水マレイン酸の一部が例えば末端水酸基のポリアルキレングリコールまたは末端アミノ基のポリアルキレングリコール等で変性されたポリマーを含んでいてもよい。前記ポリアルキレングリコール等において、ポリエチレングリコール鎖とポリプロピレングリコール鎖のモル比率は特に限定されないが、例えば6/4~8/1であってもよい。前記ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mwo)は特に限定されないが、例えば500~3000であってもよい。
【0055】
ここに開示される研磨用組成物に使用されるMA単位含有ポリマーの重量平均分子量(Mw2)は、特に限定されない。MA単位含有ポリマーのMw2は、通常、100×104以下が適当であり、30×104以下が好ましく、20×104以下でもよい。洗浄性の観点から、いくつかの態様において、MA単位含有ポリマーのMw2は、10×104以下(例えば、10×104未満)でもよく、5×104以下でもよく、3×104以下でもよい。また、MA単位含有ポリマーのMw2は、通常は5×102以上であることが適当であり、1×103以上であってもよく、2×103以上であってもよい。
【0056】
MA単位含有ポリマーの重量平均分子量(Mw2)は、ポリビニルアルコール系ポリマーの(Mw1)との相対的関係によっても特定され得る。特に限定されるものではないが、Mw1は、通常、Mw2の100倍以下が適当であり、50倍以下でもよい。Mw1に対してMw2が小さくなると、研磨対象物の保護や濡れ性向上の効果は高まる傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、Mw1は、Mw2の30倍以下が好ましく、さらに好ましくは25倍以下である。また、Mw1は、通常、Mw2の0.5倍以上であることが適当であり、1倍以上であってもよく、2倍以上であってもよい。
【0057】
研磨用組成物におけるMA単位含有ポリマーの含有量は、特に限定されない。ポリビニルアルコール系ポリマーとの共存下における研磨対象物の保護や濡れ性向上の観点等の観点から、いくつかの態様において、上記含有量は、例えば0.00005重量%以上であってよく、通常は0.00025重量%以上とすることが適当であり、好ましくは0.0005重量%以上、例えば0.0007重量%以上である。MA単位含有ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、例えば0.005重量%以下とすることができる。濃縮液段階での安定性や研磨レート、洗浄性等の観点から、いくつかの態様において、MA単位含有ポリマーの含有量は、好ましくは0.0035重量%以下、より好ましくは0.0025重量%以下、さらに好ましくは0.002重量%以下、特に好ましくは0.0015重量%以下である。
【0058】
MA単位含有ポリマーの含有量は、砥粒との相対的関係によっても特定され得る。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対するMA単位含有ポリマーの含有量は、例えば0.01重量部以上とすることができ、ヘイズ低減等の観点から0.1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上である。また、砥粒100重量部に対するMA単位含有ポリマーの含有量は、例えば30重量部以下であってもよく、10重量部以下でもよい。研磨用組成物の分散安定性等の観点から、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対するMA単位含有ポリマーの含有量は、5重量部以下とすることが適当であり、好ましくは3重量部以下であり、1重量部以下でもよい。
【0059】
MA単位含有ポリマーの含有量は、ポリビニルアルコール系ポリマーとの相対的関係によっても特定され得る。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、研磨用組成物中の前記ポリビニルアルコール系ポリマーと前記MA単位含有ポリマーとの含有量の比は、親水性の観点から、重量基準で、10:90以上であることが好ましく、15:85以上であることがさらに好ましく、50:50以上であることが特に好ましい。また、前記ポリビニルアルコール系ポリマーと前記MA単位含有ポリマーの含有量の比は、特に限定するものではないが、ヘイズ改善効果の観点から、重量基準で、99:1以下であることが好ましく、95:5以下であることがさらに好ましく、90:10以下であることが特に好ましい。
【0060】
(その他の水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、その他の水溶性高分子、すなわちポリビニルアルコール系ポリマーおよびMA単位含有ポリマー以外の水溶性高分子を、必要に応じてさらに含有していてもよい。その他の水溶性高分子は、研磨用組成物の分野において公知の水溶性高分子から適宜選択することができる。その他の水溶性高分子の例としては、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー等の合成ポリマー;セルロース誘導体やデンプン誘導体等の天然物由来のポリマー;等が挙げられる。
【0061】
オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド(PEO)や、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)またはブチレンオキサイド(BO)とのブロック共重合体、EOとPOまたはBOとのランダム共重合体等が例示される。そのなかでも、EOとPOのブロック共重合体またはEOとPOのランダム共重合体が好ましい。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO-PPO-PEO型トリブロック体およびPPO-PEO-PPO型トリブロック体が含まれる。なかでも、PEO-PPO-PEO型トリブロック体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
【0062】
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N-アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N-アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N-アセチルエチレンイミン、N-プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN-ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。例えば、N-ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。
【0063】
セルロース誘導体は、主繰返し単位としてβ-グルコース単位を含むポリマーであり、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース、等が挙げられる。また、デンプン誘導体は、主繰返し単位としてα-グルコース単位を含むポリマーであり、例えばアルファ化デンプン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0064】
ここに開示される技術において、その他の水溶性高分子の分子量は特に限定されない。その他の水溶性高分子の重量平均分子量(Mw3)は、例えば100×104以下であってよく、洗浄性等の観点から通常は60×104以下が適当であり、40×104以下であってもよく、好ましくは20×104以下、例えば10×104以下、典型的には8×104以下であってもよい。また、研磨対象物の保護性の観点から、その他の水溶性高分子のMw3は、例えば2000以上であってもよく、通常は5000以上であることが好ましい。いくつかの態様において、Mw3は1.0×104以上が適当であり、好ましくは1.5×104以上、より好ましくは2×104以上、さらに好ましくは3×104以上、例えば4×104以上、典型的には5×104以上である。
【0065】
その他の水溶性高分子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。特に限定するものではないが、研磨用組成物中のポリビニルアルコール系ポリマーおよびMA単位含有ポリマーの合計量と、その他の水溶性高分子との使用量の関係は、重量比で、例えば5:95~95:5であってよく、10:90~90:10でもよく、25:75~75:25でもよい。いくつかの態様において、上記重量比(ポリビニルアルコール系ポリマーおよびMA単位含有ポリマーの合計含有量:その他の水溶性高分子の含有量)は、例えば50:50~100:0であってよく、80:20~100:0でもよく、90:10~100:0でもよい。
【0066】
凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、その他の水溶性高分子としてはノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。また、化学構造や純度の制御容易性の観点から、その他の水溶性高分子として合成ポリマーを好ましく採用し得る。ここに開示される研磨用組成物は、その他の水溶性高分子として天然物由来のポリマーを実質的に使用しない態様で好ましく実施され得る。また、ここに開示される研磨用組成物は、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびMA単位含有ポリマー以外の水溶性高分子を実質的に使用しない態様で好ましく実施され得る。ここで、実質的に使用しないとは、ポリビニルアルコール系ポリマー100重量部に対する使用量が、典型的には3重量部以下、好ましくは1重量部以下であることをいい、0重量部または検出限界以下であることを包含する。
【0067】
(水溶性高分子の含有量)
研磨用組成物における水溶性高分子の含有量(二種以上を含む場合にはそれらの合計量)は、特に限定されない。研磨性能や表面品質向上等の観点から、いくつかの態様において、上記含有量は、例えば0.0005重量%以上であってよく、通常は0.0025重量%以上とすることが適当であり、好ましくは0.005重量%以上、例えば0.0075重量%以上である。水溶性高分子の含有量の上限は特に限定されず、例えば0.05重量%以下とすることができる。濃縮液段階での安定性や研磨レート、洗浄性等の観点から、いくつかの態様において、水溶性高分子の含有量は、好ましくは0.035重量%以下、より好ましくは0.025重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.015重量%以下、例えば0.0125重量%以下、典型的には0.01重量%以下である。
【0068】
水溶性高分子の含有量(二種以上を含む場合にはそれらの合計量)は、砥粒との相対的関係によっても特定され得る。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、例えば0.01重量部以上とすることができ、ヘイズ低減等の観点から0.1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上である。また、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、例えば50重量部以下であってもよく、30重量部以下でもよい。研磨用組成物の分散安定性等の観点から、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、20重量部以下とすることが適当であり、好ましくは15重量部以下、より好ましくは13重量部以下であり、12重量部以下でもよい。
【0069】
<塩基性化合物>
ここに開示される研磨用組成物は、塩基性化合物を含有する。本明細書において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、リンを含む塩基性化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含む塩基性化合物の例としては、第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン(好ましくは水溶性アミン)等が挙げられる。リンを含む塩基性化合物の例としては、第四級ホスホニウム化合物が挙げられる。このような塩基性化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等の水酸化第四級ホスホニウムが挙げられる。
【0071】
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム塩、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩(典型的には強塩基)を好ましく用いることができる。かかる第四級アンモニウム塩におけるアニオン成分は、例えば、OH-、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BH4
-等であり得る。なかでも好ましい例として、アニオンがOH-である第四級アンモニウム塩、すなわち水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウムおよび水酸化テトラヘキシルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム;水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリンともいう。)等の水酸化ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム;等が挙げられる。
【0072】
これらの塩基性化合物のうち、例えば、アルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウムおよびアンモニアから選択される少なくとも一種の塩基性化合物を好ましく使用し得る。なかでも水酸化テトラアルキルアンモニウム(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム)およびアンモニアがより好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0073】
<界面活性剤>
ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて、界面活性剤を含有させることができる。研磨用組成物に界面活性剤を含有させることにより、研磨後の研磨対象物表面のヘイズをよりよく低減し得る。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれのものも使用可能である。通常は、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤を好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン誘導体(例えば、ポリオキシアルキレン付加物);複数種のオキシアルキレンの共重合体(例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン構造を含有する界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
ポリオキシアルキレン構造を含有するノニオン性界面活性剤の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体(ジブロック型共重合体、PEO(ポリエチレンオキサイド)-PPO(ポリプロピレンオキサイド)-PEO型トリブロック体、PPO-PEO-PPO型のトリブロック共重合体等)、EOとPOとのランダム共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。なかでも好ましい界面活性剤として、EOとPOとのブロック共重合体(特に、PEO-PPO-PEO型のトリブロック共重合体)、EOとPOとのランダム共重合体およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンデシルエーテル)が挙げられる。
【0075】
界面活性剤の重量平均分子量(Mws)は、典型的には2000未満であり、濾過性や洗浄性等の観点から1900以下(例えば1800未満)であることが好ましい。また、界面活性剤のMwsは、界面活性能等の観点から、通常、200以上であることが適当であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上(例えば300以上)であることが好ましい。界面活性剤のMwsのより好ましい範囲は、該界面活性剤の種類によっても異なり得る。例えば、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いる場合、そのMwsは、1500以下であることが好ましく、1000以下(例えば500以下)であってもよい。また、例えば界面活性剤としてPEO-PPO-PEO型のトリブロック共重合体を用いる場合、そのMwsは、例えば500以上であってよく、1000以上であってもよく、さらには1200以上であってもよい。
【0076】
ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲であれば特に制限はない。通常は、洗浄性等の観点から、砥粒100重量部に対する界面活性剤の含有量を20重量部以下とすることが適当であり、15重量部以下が好ましく、10重量部以下(例えば6重量部以下)がより好ましい。界面活性剤の使用効果をよりよく発揮させる観点から、砥粒100重量部に対する界面活性剤含有量は、0.001重量部以上が適当であり、0.005重量部以上が好ましく、0.01重量部以上でもよく0.05重量部以上でもよい。
【0077】
ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、ポリビニルアルコール系ポリマーの含有量w1と界面活性剤の含有量wsとの重量比(w1/ws)は特に制限されず、例えば0.01~200の範囲とすることができ、通常は0.05~100の範囲が好ましく、0.1~70の範囲がより好ましい。また、MA単位含有ポリマーの含有量w2と界面活性剤の含有量wsとの重量比(w2/ws)は特に制限されず、例えば0.01~100の範囲とすることができ、通常は0.05~50の範囲が好ましく、0.1~20の範囲がより好ましい。さらに、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびMA単位含有ポリマーの合計含有量wtと界面活性剤の含有量wsとの重量比(wt/ws)は特に制限されず、例えば0.01~200の範囲とすることができ、通常は0.05~100の範囲が好ましく、0.1~70の範囲がより好ましい。
あるいは、組成の単純化等の観点から、ここに開示される研磨用組成物は、界面活性剤を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0078】
<水>
ここに開示される研磨用組成物に含まれる水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
【0079】
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、例えば有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウェーハの仕上げポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の例としては、有機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の例としては、無機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が挙げられる。有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0080】
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、例えばシリコンウェーハの研磨において、該シリコンウェーハの表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより所要研磨時間が長くなってしまうためである。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H2O2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量(例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。
【0081】
<pH>
ここに開示される研磨用組成物のpHは、典型的には8.0以上であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上である。研磨用組成物のpHが高くなると、研磨能率が向上する傾向にある。一方、砥粒(例えばシリカ粒子)の溶解を防いで機械的な研磨作用の低下を抑制する観点から、研磨用組成物のpHは、通常、12.0以下であることが適当であり、11.0以下であることが好ましく、10.8以下であることがより好ましく、10.5以下であることがさらに好ましい。
【0082】
pHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F-23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。
【0083】
<研磨液>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物の表面上に供給され、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。
【0084】
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は特に限定されず、例えば、体積換算で2倍~100倍程度とすることができ、通常は5倍~50倍程度(例えば10倍~40倍程度)が適当である。
このような濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨液(ワーキングスラリー)を調製し、該研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
【0085】
上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば25重量%以下とすることができる。研磨用組成物の分散安定性や濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、濃縮液における砥粒の含有量は、例えば0.1重量%以上とすることができ、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。
【0086】
<研磨用組成物の調製>
ここに開示される技術において使用される研磨用組成物は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨用組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分の少なくとも一部を含むパートBとを混合し、これらを必要に応じて適切なタイミングで混合および希釈することにより研磨液が調製されるように構成されていてもよい。
【0087】
研磨用組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物を構成する各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0088】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、種々の材質および形状を有する研磨対象物の研磨に適用され得る。研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。
【0089】
ここに開示される研磨用組成物は、シリコンからなる表面の研磨(典型的にはシリコンウェーハの研磨)に特に好ましく使用され得る。ここでいうシリコンウェーハの典型例はシリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。
【0090】
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)のポリシング工程に好ましく適用することができる。研磨対象物には、ここに開示される研磨用組成物によるポリシング工程の前に、ラッピングやエッチング等の、ポリシング工程より上流の工程において研磨対象物に適用され得る一般的な処理が施されていてもよい。
【0091】
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)の仕上げ工程またはその直前のポリシング工程に用いることが効果的であり、仕上げポリシング工程における使用が特に好ましい。ここで、仕上げポリシング工程とは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。
【0092】
<研磨>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0093】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウェーハの仕上げ研磨を行う場合、典型的には、ラッピング工程を経たシリコンウェーハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウェーハの研磨対象面に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウェーハの研磨対象面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
【0094】
上記研磨工程に使用される研磨パッドは、特に限定されない。例えば、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。各研磨パッドは、砥粒を含んでもよく、砥粒を含まなくてもよい。通常は、砥粒を含まない研磨パッドが好ましく用いられる。
【0095】
ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨された研磨対象物は、典型的には洗浄される。洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC-1洗浄液(水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と水(H2O)との混合液)、SC-2洗浄液(塩酸(HCl)とH2O2とH2Oとの混合液)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば室温(典型的には約15℃~25℃)以上、約90℃程度までの範囲とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃~85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
【実施例】
【0096】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0097】
<研磨用組成物の調製>
(実施例1~6)
砥粒、水溶性高分子1、水溶性高分子2、塩基性化合物、界面活性剤および脱イオン水を混合して、各例に係る研磨用組成物を調製した。砥粒としてはコロイダルシリカ(平均一次粒子径:25nm)を使用し、その含有量を0.18%とした。水溶性高分子1としては、重量平均分子量が約70000、けん化度が98%以上の、表1に示す量のポリビニルアルコール(非変性PVA)を使用した。さらに水溶性高分子2としては、表1に示す種類および量のMA単位含有ポリマーを使用した。塩基性化合物としてはアンモニアを使用し、その含有量を0.005%とした。界面活性剤としては、エチレンオキサイド付加モル数5のポリオキシエチレンデシルエーテル(C10EO5)を使用し、その含有量を0.00015%とした。
【0098】
(比較例1)
実施例1の組成からMA単位含有ポリマーを除いた他は実施例1と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0099】
(比較例2および3)
表1に示す量の界面活性剤を使用した他は比較例1と同様にして、比較例2および3に係る研磨用組成物を調製した。
【0100】
(比較例4~7)
水溶性高分子2として、MA単位含有ポリマーに代えて表1に示す種類および量の水溶性高分子を使用した他は実施例1と同様にして、比較例4~7に係る研磨用組成物を調製した。
【0101】
(実施例7)
砥粒、水溶性高分子、塩基性化合物および脱イオン水を混合して、本例に係る研磨用組成物を調製した。砥粒としてはコロイダルシリカ(平均一次粒子径:25nm)を使用し、その含有量を0.18%とした。水溶性高分子としてのポリビニルアルコール系ポリマーとして、重量平均分子量が約70000、けん化度が98%以上のポリビニルアルコール(非変性PVA)を使用し、その含有量を0.0074%とした。さらに水溶性高分子としてのMA単位含有ポリマーとして、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、この無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコールによって変性された、重量平均分子量が約12000の水溶性高分子を使用し、その含有量を0.0013%とした。塩基性化合物としてはアンモニアを使用し、その含有量を0.005%とした。
【0102】
(比較例8)
本例では、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーの含有量を0.0088%とし、MA単位含有ポリマーを使用しなかった。その他の点は実施例7と同様にして、本例に係る研磨用組成物を調製した。
【0103】
<シリコンウェーハの研磨>
研磨対象物として、ラッピングおよびエッチングを終えた直径200mmの市販シリコン単結晶ウェーハ(伝導型:P型、結晶方位:<100>、COP(Crystal Originated Particle:結晶欠陥)フリー)を下記の研磨条件1により予備ポリシングしたシリコンウェーハを用意した。予備ポリシングは、脱イオン水中に砥粒(BET径が35nmのコロイダルシリカ)1.0%および水酸化カリウム0.068%を含む研磨液を使用して行った。
【0104】
[研磨条件1]
研磨装置:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨装置 型式「PNX-322」
研磨荷重:15kPa
定盤の回転速度:30rpm
ヘッド(キャリア)の回転速度:30rpm
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製 製品名「FP55」
予備研磨液の供給レート:550mL/min
予備研磨液の温度:20℃
定盤冷却水の温度:20℃
研磨時間:3min
【0105】
上記で調製した各例に係る研磨用組成物を研磨液として使用し、上記予備ポリシング後のシリコンウェーハを下記の研磨条件2により研磨した。
【0106】
[研磨条件2]
研磨装置:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨装置 型式「PNX-322」
研磨荷重:15kPa
定盤の回転速度:30rpm
ヘッド(キャリア)の回転速度:30rpm
研磨パッド:フジボウ愛媛株式会社製 製品名「POLYPAS27NX」
研磨液の供給レート:400mL/min
研磨液の温度:20℃
定盤冷却水の温度:20℃
研磨時間:4min
【0107】
研磨後のシリコンウェーハを研磨装置から取り外し、NH4OH(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:1:12(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC-1洗浄)。具体的には、第1および第2の2つの洗浄槽を用意し、それらの洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持した。研磨後のシリコンウェーハを第1の洗浄槽に5分浸漬し、超純水に浸漬して超音波を付与するリンス槽を経て、第2の洗浄槽に5分浸漬した後、超純水に浸漬して超音波を付与するリンス槽を経てスピンドライヤーを用いて乾燥させた。
【0108】
<ヘイズ測定>
洗浄後のシリコンウェーハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置、商品名「Surfscan SP2XP」を用いて、DWOモードでヘイズ(ppm)を測定した。得られた結果を、比較例2についてのヘイズ値を100%とする相対値(ヘイズ比)に換算して表1に、比較例8についてのヘイズ値を100%とする相対値(ヘイズ比)に換算して表2に示した。ヘイズ比が100%未満であれば、へイズ改善効果が有意に確認できるといえる。
【0109】
【0110】
表1に示されるように、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーとMA単位含有ポリマーを用いた実施例1~6では、比較例2に対して有意なヘイズ改善効果が確認された。一方、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーのみを使用しMA単位含有ポリマーを用なかった比較例1および3では、比較例2に対してヘイズを改善する効果は認められなかった。さらに、水溶性高分子としてMA単位含有ポリマーに代えてMA単位を有しない水溶性高分子を用いた比較例4~7でも、比較例2に対してヘイズを改善する効果は認められなかった。
【0111】
【0112】
また、表2に示されるように、界面活性剤を用いない組成においてもポリビニルアルコール系ポリマーとMA単位含有ポリマーの併用による有意なヘイズ改善効果が確認された。
【0113】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。