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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】VIG組立体用の特殊被覆ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20240806BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240806BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240806BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20240806BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20240806BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240806BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240806BHJP
   E06B 3/67 20060101ALI20240806BHJP
   E06B 3/677 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C03C17/36
B32B7/023
B32B7/027
B32B9/00 A
B32B15/04 B
B32B17/06
C03C27/06 101H
C23C14/06 N
C23C14/34 M
E06B3/67 A
E06B3/677
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021559791
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2020060322
(87)【国際公開番号】W WO2020208228
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】19168858.9
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ベン トラド, アブデッラゼク
(72)【発明者】
【氏名】マヒュー, スタイン
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-229381(JP,A)
【文献】特表2010-536707(JP,A)
【文献】米国特許第04790922(US,A)
【文献】特表2011-504450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00-17/44,27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
low-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインであって、前記low-eコーティングは:
a)n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列であって、
a.それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、前記誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
b.それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及び前記バリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、交互配列と、
b)任意選択的に、1つ以上の誘電体層を任意選択的に含む保護トップコートと;
c)任意選択的に、誘電体層を任意選択的に含み、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触するシーディング層と;
を含み、
それぞれの赤外線反射機能層及び前記バリア層以外の少なくとも1つの層は、前記誘電体コーティング、前記シーディング層、及び/又は前記保護トップコートの中から選択される誘電体層であり、貴ガス含有雰囲気下で堆積される前記誘電体層の全幾何学的厚さは少なくとも30nmであり、かつ120nm以下であり;
10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の、前記被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満である、被覆ガラスペイン。
【請求項2】
10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後、前記被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの前記放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.0×10-6mbar.cm未満、好ましくは被覆ガラスペイン1mm当たり0.5×10-6mbarcm未満である、請求項1に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項3】
貴ガス含有雰囲気下で堆積された前記誘電体層の全幾何学的厚さが、少なくとも45nm、或いは少なくとも60nmである、請求項1又は2に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項4】
前記low-eコーティングの全幾何学的厚さが、70~300nm、好ましくは80~250nm、最も好ましくは90~190nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項5】
前記赤外線反射機能層が、銀を含むか、又は銀からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項6】
前記low-eコーティングが、前記ガラス基材から外側に向かってa)酸化亜鉛スズ層;b)酸化亜鉛ベースの層;c)銀層;d)バリア層;e)誘電体コーティングを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項7】
前記low-eコーティングが、前記ガラス基材から外側に向かってa)酸化亜鉛スズ層を含む誘電体コーティング;b)酸化亜鉛ベースの層を含むシーディング層;c)銀の赤外線反射機能層;d)バリア層;e)誘電体コーティング、f)酸化亜鉛ベースの層;g)第2の銀の赤外線反射機能層;h)第2のバリア層;i)誘電体コーティングを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項8】
少なくとも1つのバリア層が、金属、その酸化物、又は窒化物であり;前記金属が、チタン、亜鉛、ニッケル、クロム、又はそれらの中の1つを含むいずれかの合金からなるリストから選択され、特に、酸化亜鉛である、請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項9】
少なくとも1つ誘電体コーティングが、チタン、ケイ素、亜鉛、スズ、ジルコニウム、又はそれらの混合物の酸化物又は窒化物のいずれかを含む1つ又は複数の誘電体層コーティングである、請求項1~8のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項10】
アルゴンを含む雰囲気中で堆積される誘電体層の全厚さが100nm以下、好ましくは90nm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の被覆ガラスペイン。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の被覆ガラスペインを製造するための方法であって、前記方法は、ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置に供給し、減圧における陰極スパッタリングによってガラス基材上に前記層を堆積することを含み、
i)前記赤外線反射機能層及び前記バリア層のみは、95%~100%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積され;
ii)金属ターゲットからの金属酸化物誘電体層は、95%~100%の酸素を含む雰囲気中で堆積され;
iii)その他の誘電体層は、ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下となる雰囲気中で堆積されることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記被覆ガラスペインが、300℃より高い、好ましくは400℃より高い、より好ましくは480℃より高い温度で熱処理される、請求項1~10のいずれか一項に記載の被覆ガラスペインの製造方法。
【請求項13】
前記熱処理が、1bar以下、好ましくは10mbar以下、より好ましくは1mbar以下、最も好ましくは0.1mbar以下の圧力で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
加熱時間が、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも6時間である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの被覆ガラスペインを含む真空断熱グレージングユニット。
【請求項16】
1.00W/mK以下、より好ましくは0.90W/mK以下、最も好ましくは0.80W/mK以下のU値を特徴とする請求項15に記載の真空断熱グレージングユニット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンスパッタリングされたコーティング、例えばlow-eコーティングで被覆されたガラスシート(又はペイン)に関する。本発明の被覆ガラスシートは、真空断熱グレージングユニット(Vacuum Insulated Glazing Unit)(VIG又は真空IG)の一部として特に適している。VIGは、典型的には2つのガラスシートから作られており、それらの2つのガラスシートの間の内部空間の方に向かうガラスシートの主面の少なくとも1つに、マグネトロンスパッタリングによる堆積などのコーティングが設けられる。例えば、建造物の窓割り用途(窓及びドア)、乗り物、及び冷蔵庫のドアにVIGを使用することができる。
【背景技術】
【0002】
真空断熱グレージングユニットは高い断熱能力を有し、予想される熱貫流率Uは1.2W/mK未満である。この性能は、真空中の低い熱伝導の直接的な結果であり、したがってこの真空の品質及びその安定性によって左右される。
【0003】
VIGの組み立ては、離間したスペーサー(又はピラー)によって離れて維持される2つの気密封止されたガラスペインの間に形成された安定な真空空隙を有するという同じ目的を追求する種々の周知の方法によって実現することができる。真空空隙は0.1mbar以下の圧力レベルを有する。
【0004】
様々な種類の封着材及び様々な種類のスペーサーは当技術分野において周知である。VIGの典型的な封止手段は、ガラスフリット(ソルダーガラスとも呼ばれる)、並びに金属又はセラミックのはんだである。最も新しい封止手段の1つは、ガラスよりも低い融点を有するソルダーガラスに基づくものである。にもかかわらず、ソルダーガラスを使用すると、ソルダーガラスの付与に必要な熱サイクルによって劣化しないもの、すなわち任意選択的に250℃又はさらに高くなる温度に耐えることができるものに、low-eコーティングの選択が制限される。金属シール、例えば軟質スズ合金はんだ又は銅ベースのはんだが代案の1つであり、これらは部分的に変形し、そのため、VIGの厚さにわたる温度勾配にさらされた場合に、第1及び第2のペインの間の膨張の差を部分的に吸収するという利点も有する。
【0005】
さらに、2つのガラスペインの間に、離間したスペーサー(又はピラー)の配列を配置し、両方のペインを互いから安定な距離に維持することが必要である。離間したスペーサーは、円筒形、球形、糸状、砂時計形、C字型、十字形、角柱形などの種々の形状を有することができる。小さなピラー、すなわち、一般に、その外周を境界とするガラスペインとの接触面が、5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下であるピラーを使用することが好ましい。これらの値によって、審美的に離間されながら良好な機械抵抗を有することができる。
【0006】
離間したスペーサーは、典型的には、ガラスペインの表面によって生じる圧力に耐えるのに十分な強度を有し、燃焼及び焼き付けなどの高温プロセスに耐えることができ、VIGが封止された後のガスの放出がわずかである材料から作られている。このような材料は、好ましくは、硬質金属材料、石英ガラス、又はセラミック材料である。特に、これは、鉄、タングステン、ニッケル、クロム、チタン、モリブデン、炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、マンガン鋼、クロムマンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ケイ素鋼、ニクロム、ジュラルミンなどの金属材料であってよいし、又はコランダム、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などのセラミック材料であってよい。
【0007】
真空を長時間維持するために、VIG中にゲッターが配置される。一般に、このようなゲッターは、例えばジルコニウム、鉄、コバルト、及び/又はアルミニウムをベースとするもののような金属合金をベースとする。ゲッターは、薄層の形態又はブロックの形態で、2つのガラスペインの間の気密封止された空間内に配置される。その活性化の後、ゲッターは、VIGの寿命中に放出されるガスを吸収して真空を維持する。
【0008】
VIGを組み立てるための種々の方法が存在する。欧州特許出願公開第2851351A1号明細書(その内容全体が参照により本明細書に援用される)に記載の組み立て方法は、部分的に重なってもよい3つの主要な工程を含む。最初に、第1のガラスペインを水平に配置し、ガラスフリットを堆積し、ピラーを配置し、第2のペインペインを最上部に配置し、450℃までの第1の加熱期間によって、両方のガラスペインをそれらの外側端部で気密封止して、その間に空間を残すことができる。第2の工程は、0.1mbar以下の残留圧力まで内部のガスをポンプによって送り出すことである。ガラスユニットの内部空間内の真空の形成に関して、一般に、内部空間を外部に接続する中空ガラス管が、一方のガラスシートの主面上に設けられる。このように、ガラス管の外端に接続されたポンプによって、内部空間野の中に存在するガスを送り出すことによって、内部空間内に真空が形成される。実際には、欧州特許出願公開第2851351A1号明細書の製造方法には:(a)ガラスパネルの間で気密封止して閉じられた空間を形成するために、あらかじめ決定された距離で互いに向かい合って配置される対のガラスパネルの周囲を気密接合部材で気密接合する工程と;(b)上記空間を減圧状態にするために、出口を介して上記空間から空気を排出する工程と;(c)領域形成部材によって上記空間を、出口を含む出口領域と、出口領域以外の減圧領域とに分割する工程とを含む、真空断熱グレージングの製造方法が記載されている。領域形成部材は、空間が形成されるときに出口領域と減圧領域とを相互接続する通気道を含む。空間が減圧状態になった後、通気道を閉じることによって空間が出口領域と減圧領域とに分割され;これによって領域形成部材の端部は、気密接合部材に接続され、気密接合部材とともに出口を取り囲む。気密接合部材及び領域形成部材は、同じ低融点ガラスフリットを使用することによって形成される。欧州特許出願公開第2 851 351A号明細書は、図1~4及び6に示されるようなVIG組立体の第1の製造方法が記載される[0034]~[0054]にさらに言及しており、これは、図5中に示されるように、ガラスパネルの周囲を気密接合させるための450℃の温度における第1の溶融プロセス;真空を形成するための、炉の温度をガラスフリットの434℃の融点温度より低下させる排気プロセスを含み;465℃における第2の溶融プロセスによって、空気の排気、及び排気孔の閉鎖が終了する。[0056]~[0079]及び図7においては、第1の溶融プロセス後にペイン組立体の温度を室温まで低下させる、上記製造方法の変形形態が記載されている。
【0009】
例えば欧州特許出願公開第1506945A1号明細書には、一方のガラスシートの主面に設けられた貫通孔中の適切な位置に溶接されるこのようなガラス管の使用が記載されている。この第2の工程中、温度がある程度低下し、ガラスペインは、自由空間を画定するピラーに到達するまでさらに接近する。2つのガラスペインの間の最終空間は2mm以下である。第3の工程は、465℃までの第2の加熱期間を含み、これによってピラーをガラスペインに接着することができ、気密封止を完了することもできる。この技術では、1つのガラスシートの表面上に目に見える突出部が形成されないので、ガラスパネルの美的外観が低下する。
【0010】
VIGの断熱能力をさらに改善する別の可能性は、VIG組立体中に使用されるガラスペインの1つ以上の面上に太陽光制御又はlow-eコーティングを使用することである。好ましくは、太陽光制御又はlow-eコーティングは、VIGの真空空間の方に向かうガラスペインの面上に堆積される。高温の封止手段及びさらなる実行され得る処理のために、高温処理に耐性のあるコーティングが必要である。例えば、米国特許第5657607A号明細書には、VIG用のlow-eコーティングが開示されているが、そのlow-eコーティングと組み立て条件との適合性については記載されていない。第2の例の米国特許第1001219B2号明細書には、VIGユニット中に組み込むように設計されるlow-eコーティングとしてITO、酸化スズ、又は薄い金属層が言及されているが、この特許の目的は、このVIGユニットの組み立てをより低い温度で行うことである。米国特許第1001219B2号明細書には、VIGが気密封止された後の再加熱プロセスの場合の真空安定性は示されていない。
【0011】
本発明者らは、2つのガラスペインであって、その1つにlow-eコーティングがコーティングされるガラスペインを組み立てるために、欧州特許出願公開第2851351A1号明細書に記載のものと類似のVIG組み立てプロセスを行う場合、幾つかの新しい予期せぬ問題が発生することを確認した。最終封止工程が完了した後、目標の真空に到達したにもかかわらず、VIGユニットの性能が変化した。驚くべきことに、本発明者らは、この問題が、low-eコーティング中に含まれておりVIG封止後に放出される貴ガスの存在に関係していることを見出した。この貴ガスは、low-eコーティングの堆積プロセスに由来し、貴ガス、一般にアルゴンを含むlow-eコーティングが得られることが分かった。結果として、特にVIGの場合、製造プロセス中に、真空ポンプを使用してVIG組立体を封止した後、依然として存在する高温によってさらにガスが放出され、それによってVIGユニット中の最終残留圧力に影響が生じ、結果としてVIGユニットの熱的性能に影響が生じることが分かった。このような状況において、グレージングの製造プロセス中及び/又は寿命中に貴ガスが放出される場合があることが分かった。さらに、貴ガスの場合、真空断熱グレージングの空隙内部に配置されるゲッターは、それを捕捉して真空レベルを維持するには不十分であることが分かった。
【0012】
この研究は、特にVIG組立体中での使用が指定される場合に、ガラスペイン上に堆積されるlow-eコーティング中に存在できる最大貴ガス濃度を特定する必要があることを示している。同時に、アルゴンは、特定の材料のスパッタリング堆積には必要であり、効率的で経済的なプロセスのために重要となることが多い。
【0013】
これは、特定のコーティング条件であって、low-eコーティング中、特に、機能層、すなわち一般に金属放射線反射機能層及び上記機能層上に堆積された保護バリア以外のlow-eコーティングの層中の最大貴ガス濃度に関連する上記条件を満たすlow-eコーティングのスパッタリング堆積を可能にする上記条件を規定する必要があることも示している。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、low-eコーティング中の最大貴ガス濃度を特徴とする、スパッタリングされたlow-eコーティングで被覆されたガラス基材(ガラスシート又はガラスペインとも呼ばれる)に関する。この被覆ガラスシートは、特定の真空条件下での貴ガスの放出が、上記放出された貴ガスの全モル量に直接相関するある特定の量を超えないような被覆ガラスシートである。
【0015】
したがって、その第1の実施形態では、本発明は、被覆ガラスペインであって、後述の「ガス放出貴ガス測定」(outgassing noble gas measurement)(ONGM)によって測定して、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後、被覆ガラスペインの被覆表面積1mm当たり1.5×10-6mbar・cm未満の被覆ガラスペインの放出可能な貴ガスの含有量を含むという点において、low-eコーティングが貴ガスの閾値量を超えない、被覆ガラスペインに関する。
【0016】
したがって、その第1の実施形態では、本発明は、n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列を含むlow-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインであって、low-eコーティングが、
それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、
被覆ガラスペインに関する。
【0017】
low-eコーティングは、任意選択的に1つ以上の誘電体層を含む保護トップコートをさらに含むことができる。low-eコーティングは、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触する、任意選択的に誘電体層を含むシーディング層をさらに含むこともできる。
【0018】
本発明の被覆ガラスペインのlow-eコーティングでは、それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は、保護トップコートの中から選択される誘電体層である。貴ガス含有雰囲気下で堆積された誘電体層の全幾何学的厚さは、少なくとも30nmであり、かつ120nm以下である。
【0019】
本発明の被覆ガラスペインは、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後、被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満であることを特徴とする。
【0020】
この目的を実現するために、本発明は、前述の貴ガス量閾値を満たすことができる、ガラスペイン上にlow-eコーティングを堆積するためのスパッタリング条件を規定する。したがって、一実施形態では、本発明は、被覆ガラスペインの製造方法に関し、前記方法は、ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置中に供給し、減圧における陰極スパッタリングによってガラス基材上に層を堆積することを含み、
i)赤外線反射機能層及びバリア層のみは、95%~100%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積され;
ii)金属ターゲットからの金属酸化物誘電体層は、95%~100%の酸素を含む雰囲気中で堆積され;
iii)その他の誘電体層は、ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下となる雰囲気中で堆積される。
【0021】
別の一実施形態では、本発明はまた、被覆ガラスシートがVIGユニット中に組み立てられる前に、被覆ガラスが前述の貴ガス量閾値条件を満たすような方法で、low-eコーティング中に存在する過剰の貴ガスを除去する手段に関する。この実施形態の手段は、low-e被覆ガラスのプリベークプロセスを含む。これによって、その堆積条件がどのように行われたとしても、low-e被覆ガラスは貴ガス量閾値条件を守る。このプロセス中、被覆ガラスの加熱を、好ましくは真空下で行うことによって、あらゆる過剰の貴ガスを除去することができる。この実施形態では、被覆ガラスペインは、300℃より高い、好ましくは400℃より高い、より好ましくは480℃より高い温度で熱処理される。
【0022】
本発明はさらに、前述のいずれかの方法によって得られる被覆ガラスペインに関する。本発明はまた、真空断熱グレージングを製造するための被覆ガラスペインの使用に関し、最後に本発明は、そのような被覆ガラスペインを含む真空断熱グレージングに関する。
【0023】
本発明は、特に真空断熱グレージング中に使用するための被覆ガラスペインの提供及び機能の技術的問題に対処する。貴ガスは、マグネトロンスパッタリングプロセスにおいて使用する場合に費用対効果が高く効率的な堆積ガスとして見なされており、したがって被覆ガラスペインの製造において一般的に使用されている。しかし驚くべきことに、low-eコーティングの1つ以上の層が貴ガス下で堆積されている被覆ガラスペインは、グレージング組立体中、特に真空断熱グレージング中に組み込まれる場合に、要求される熱的性能が得られないことが分かった。したがって、本発明は、このような被覆ガラスペインによって放出される貴ガスの量を制限することに基づいている。
【0024】
本発明によると、low-eコーティングは、少なくとも1つのマグネトロンスパッタリングされたコーティング層を含む。本発明の一実施形態では、被覆ガラスペインのlow-eコーティングは、n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列を含み、それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは誘電体材料の1つ以上の層を含み、それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護される。nは1以上の正の整数(n≧1)である。好ましくはnは3以下の正の整数であり(n≦3)、より好ましくは、nは1又は2である。このような限定された数の交互配列によって、被覆ガラスペインが組み込まれるグレージング組立体の熱的性能と、このような被覆ガラスペインの製造コストとの間で適切な釣り合いが得られることが分かった。
【0025】
本明細書に記載されるように、誘電体コーティングは、本明細書では以降「誘電体層」と呼ばれる場合がある誘電体材料から作られた1つ以上の層から作られている。誘電体コーティングは、「誘電体膜」と呼ばれる場合もある。被覆ガラスペインは、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触する、任意選択的に1つ以上の誘電体層を含む保護トップコート;及び/又は任意選択的に誘電体層を含むシーディング層をさらに含むことができる。したがって、それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は保護トップコートから由来する誘電体層であってよい。
【0026】
したがって、n=1の場合、本発明のガラス基材上に堆積されるlow-eコーティングは、ガラス基材の表面から始まる順序で:
1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;
赤外線反射機能層;
バリア層;
1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング、
を少なくとも含む交互配列である。
【0027】
したがって、n=2の場合、本発明のガラス基材上に堆積されるlow-eコーティングは、ガラス基材の表面から始まる順序で:
1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;
赤外線反射機能層;
バリア層;
1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;
赤外線反射機能層;
バリア層;
1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング、
を少なくとも含む交互配列である。
【0028】
特に、本発明の一実施形態によると、本発明のガラス基材上に堆積されるlow-eコーティングは、ガラス基材の表面から始まる順序で:
20~40nmの幾何学的厚さを有する、1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;
2~10nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはZnOを含む任意選択のシーディング層;
8~18nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはAgを含む赤外線反射機能層;
1nm~12nm、好ましくは2nm~8nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはZnOを含むバリア層;
40nm~100nm、好ましくは60~100nmの幾何学的厚さを有する、1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;
2~10nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはZnOを含む任意選択のシーディング層;
8~18nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはAgを含む赤外線反射機能層;
1nm~12nm、好ましくは2~8nmの幾何学的厚さを有する、好ましくはZnOを含むバリア層;
10~45nmの幾何学的厚さを有する、1つ以上の誘電体層から作られた誘電体コーティング;及び
1つ以上の誘電体層を含み、1~10nmの厚さを有する、任意選択の保護トップコート、
を少なくとも含む交互配列である。
【0029】
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む。これは例えば、シーディング層及び/又は保護トップコートからの誘電体コーティングの1つの層であってよい。実際には、費用対効果の高い工業的マグネトロンスパッタリングプロセスにおいて、できる限り多くの層を貴ガス含有雰囲気中で堆積するべきである。
【0030】
このような層が貴ガス雰囲気下で堆積される場合、実際に、一部の貴ガスが対応するlow-eコーティング中に閉じ込められることが分かった。このような被覆ガラスペインが、製造プロセスに高温を必要とするグレージング組立体中に使用される場合、貴ガスはコーティングを通過して拡散して放出されることがある。
【0031】
本発明の被覆ガラスペインでは、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満である。
【0032】
本発明の一実施形態では、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.0×10-6mbar.cm未満であり、好ましくは被覆ガラスペイン1mm当たり0.5×10-6mbar.cm未満である。
【0033】
別の一実施形態では、本発明の被覆ガラスペインの貴ガス含有雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは、少なくとも35nm、或いは少なくとも40nm、或いは少なくとも45nm、或いは少なくとも60nmである。別の一実施形態では、アルゴンを含む雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは、100nm以下、より好ましくは90nm以下である。
【0034】
したがって、貴ガス、特にアルゴンを含む雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さ(TGT)は、30nm~120nm(30nm≦TGT≦120nm)である。本発明の好ましい一実施形態では、貴ガスを含む雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さ(TGT)は、35nm~120nm(35nm≦TGT≦120nm)、好ましくは40nm~100nm(40nm≦TGT≦100nm)、より好ましくは45nm~100nm(45nm≦TGT≦100nm)、最も好ましくは60nm~90nm(60nm≦TGT≦90nm)である。貴ガス、特にアルゴンを含む雰囲気中で堆積される誘電体のこのように限定された厚さによって、被覆ガラスペインが組み込まれるグレージング組立体の性能と、このような被覆ガラスペインの製造コストとの間で適切な釣り合いが得られることが分かった。
【0035】
本発明の別の一実施形態では、low-eコーティングの赤外線反射機能層は、銀を含む、又は銀からなる。本発明の別の好ましい一実施形態では、好ましくはAgを含むlow-eコーティングの赤外線反射機能層の幾何学的厚さは、8~18nm、好ましくは8~16nm、最も好ましくは10~14nmである。
【0036】
本発明の別の好ましい一実施形態では、low-eコーティングの最後の誘電体コーティングの最後の誘電体層は、貴ガス、好ましくはアルゴンを含み、1~30nm、好ましくは10nm~30nm、より好ましくは20nm~30nmの幾何学的厚さを有する。
【0037】
本発明の別の一実施形態では、被覆ガラスペインは、ガラス基材から外側に向かってa)酸化亜鉛スズ層;b)酸化亜鉛ベースの層;c)銀層;d)バリア層;e)誘電体膜(誘電体コーティング)を含む。したがってこの実施形態では、正の整数nは1である(n=1)。
【0038】
本発明の別の一実施形態では、被覆ガラスペインは、ガラス基材から外側に向かってa)酸化亜鉛スズ層;b)酸化亜鉛ベースの層;c)銀層;d)バリア層;e)誘電体膜(誘電体コーティング)f)酸化亜鉛ベースの層;g)第2の銀層;h)バリア層;i)誘電体膜(誘電体コーティング)を含む。したがって、この実施形態では、正の整数nは2である(n=2)。
【0039】
本発明の別の一実施形態では、low-eコーティングのバリア層は、金属又は金属合金、及び/又はこの金属又は金属合金の酸化物及び/又は窒化物を含む。金属又は金属合金は、チタン、亜鉛、ニッケル、クロム、ニオブ、及びこれらの金属の1つを含むあらゆる合金からなるリストから選択することができる。特に、バリアは、酸化亜鉛ベースのバリア、特にアルミニウムドープ酸化亜鉛層又は本質的に純粋な酸化亜鉛層である。
【0040】
本発明の別の一実施形態では、誘電体膜又は誘電体コーティングは、チタン、ケイ素、亜鉛、スズ、ジルコニウム、又はそれらの混合物の酸化物又は窒化物のいずれかを含む1つの層又は複数の誘電体層を含む。
【0041】
本発明の別の一実施形態では、low-eスタックの上に保護トップコートを設けることができる。実際には、保護トップコートは、基材表面から最も離れたlow-eコーティングの最後の層である。保護トップコートは、low-eコーティングにさらなる機械的及び/又は化学的保護機能を付与する。保護トップコートは、任意の典型的な誘電体層、金属層からなる群から選択される1つ以上の層を含むことができ、最終的には、加熱中に失われる炭素層又は一時的な保護層と組み合わせることができる。
【0042】
典型的な誘電体層又は金属層の形態で存在する場合、このような保護トップコートの厚さは、貴ガス含有雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さを計算する場合に考慮されるべきである。
【0043】
本発明の別の一態様では、本発明の被覆ガラスペインは、ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置中に供給し、減圧におけるマグネトロンスパッタリングによってガラス基板上に層を堆積することを含む方法により製造され、堆積条件は、
i)赤外線反射金属層及びバリア層のみは、95%~100%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積され;
ii)金属ターゲットから堆積される金属酸化物誘電体層は、95%~100%の酸素を含む雰囲気中で堆積され;
その他の誘電体層は、ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下となる雰囲気中で堆積されることを特徴とする。
【0044】
言い換えると、赤外線反射機能層及びバリア層のみは、95%~100%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積される。
a)金属ターゲットからの誘電体層は、それらが金属酸化物層である場合、95%~100%の酸素を含む雰囲気中で堆積され;
b)それらが金属酸化物層ではない場合、ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下となる雰囲気中で堆積される。
【0045】
したがって、このような製造方法において:赤外反射金属層及びバリア層は、95%~100%の体積比の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積される。これは、貴ガス、好ましくはアルゴンの体積を全ガス雰囲気の体積で割ったものが、95%~100%であることを意味する(95%≦[貴ガスの体積/全ガス雰囲気の体積]≦100%)。好ましくは、貴ガスの体積比は、97%~100%であり、好ましくは100%が貴ガスである。非常に限定された量の酸素及び/又は窒素は許容される。
【0046】
誘電体コーティング中、金属ターゲットからスパッタリングされる金属酸化物誘電体層は、特に、95%~100%の体積比の酸素を含む雰囲気中で堆積され、好ましくは100%が酸素である。これは、酸素の体積を全ガス雰囲気の体積で割ったものが、95%~100%であることを意味する(95%≦[酸素の体積/全ガス雰囲気の体積]≦100%)。
【0047】
誘電体コーティング中に含まれることができ、金属ターゲットから形成された金属酸化物誘電体層ではないその他の層は、全ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下である雰囲気中で堆積される。これは、貴ガス、好ましくはアルゴンの体積を全ガス雰囲気の体積で割ったものが90%以下であることを意味する([貴ガスの体積/全ガス雰囲気の体積]≦90%)。
【0048】
驚くべきことに、このような堆積条件が満たされる場合、本発明の被覆ガラスペインを形成するためにガラス基材上に設けられるlow-eコーティングは、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満となるlow-eコーティングであることが分かった。したがって本発明は、このような方法によって製造された被覆ガラスペインを含む。特に、本発明はさらに、low-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインであって、このようなlow-eコーティングが:
a)n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列であって、
a.それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
b.それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、交互配列と、
b)任意選択的に、1つ以上の誘電体層を任意選択的に含む保護トップコートと;
c)任意選択的に、誘電体層を任意選択的に含み、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触するシーディング層と;
を含み、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は保護トップコートの中から選択される誘電体層であり、貴ガス含有雰囲気下で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは少なくとも30nmであり、かつ120nm以下であり;
10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満であり;
このような被覆ガラスペインが、ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置中に供給し、減圧におけるマグネトロンスパッタリングによってガラス基板上に層を堆積することを含む方法によって製造され、その堆積条件は以下の通りであり:
1)赤外反射金属層及びバリア層のみは、95%~100%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含む雰囲気中で堆積され;
2)金属ターゲットから堆積される金属酸化物誘電体層は、95%~100%の酸素を含む雰囲気中で堆積され;
3)その他の誘電体層は、ガス雰囲気中の貴ガスの体積比が90%以下となる雰囲気中で堆積される、
被覆ガラスペインに関する。
【0049】
好ましい一実施形態では、本発明は、このような方法によって製造された被覆ガラスペインであって、貴ガス含有雰囲気中で堆積される層の全幾何学的厚さが、35nm~120nm(35nm≦TGT≦120nm)、より好ましくは40nm~100nm(40nm≦TGT≦100nm)、最も好ましくは45nm~100nm(45nm≦TGT≦100nm)、さらにより好ましくは60nm~90nm(60nm≦TGT≦90nm)である、被覆ガラスペインを含む。
【0050】
好ましい一実施形態では、本発明はさらに、前述の被覆ガラスペインであって、low-eコーティングの最後の層、好ましくは最後の誘電体コーティングの最後の誘電体層が、1~50%、好ましくは1%~45%、より好ましくは5%~40%の貴ガス、好ましくはアルゴンを含むガス雰囲気下で堆積される被覆ガラスペインに関する。これは、貴ガスの体積を全ガス雰囲気の体積で割ったものが、1%~50%(1%≦[貴ガスの体積/全ガス雰囲気の体積]≦50%)、好ましくは1%~45%(1%≦[貴ガスの体積/全ガス雰囲気の体積]≦45%)、より好ましくは5%~40%(5%≦[貴ガスの体積/全ガス雰囲気の体積]≦40%)であることを意味する。
【0051】
本発明の別の一態様では、本発明の被覆ガラスペインは、順に、ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置中に供給し、減圧におけるマグネトロンスパッタリングによってガラス基材上に層を堆積し、300℃より高い、好ましくは400℃より高い、より好ましくは480℃より高い温度で熱処理することを含む方法により製造される。このようなプロセスは焼き付けプロセスと呼ばれる場合がある。
【0052】
或いは、熱処理は、1bar未満、好ましくは10mbar以下、より好ましくは1mbar以下、最も好ましくは0.1mbar以下の圧力で行うことができる。熱処理は、使用温度及び圧力により左右されるが、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも6時間、温度を維持することによって行うことができる。
【0053】
したがって、本発明は、このような方法によって製造された被覆ガラスペインを含む。特に、本発明は、low-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインであって、このようなlow-eコーティングが:
a)n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列であって、
それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、交互配列と、
b)任意選択的に、1つ以上の誘電体層を任意選択的に含む保護トップコートと;
c)任意選択的に、誘電体層を任意選択的に含み、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触するシーディング層と;
を含み、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は保護トップコートの中から選択される誘電体層であり、貴ガス含有雰囲気下で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは少なくとも30nmであり、かつ120nm以下であり;
10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満であり;
このような被覆ガラスペインが、順に:
ガラス基材をマグネトロンスパッタリング装置中に供給し、
減圧におけるマグネトロンスパッタリングによってガラス基材上に層を堆積し、
300℃より高い温度(Temp>300℃)、好ましくは400℃より高い温度(Temp>400℃)、より好ましくは480℃より高い温度(Temp>480℃)で熱処理すること、
を含む方法によって製造される、被覆ガラスペインにも関する。
【0054】
好ましい一実施形態では、本発明は、このような方法によって製造された被覆ガラスペインであって、貴ガス含有雰囲気中で堆積される層の全幾何学的厚さが、35nm~120nm(35nm≦TGT≦120nm)、より好ましくは40nm~100nm(40nm≦TGT≦100nm)、最も好ましくは45nm~100nm(45nm≦TGT≦100nm)、さらにより好ましくは60nm~90nm(60nm≦TGT≦90nm)である、被覆ガラスペインを含む。
【0055】
このような方法では、熱処理は、1bar未満、好ましくは10mbar未満、より好ましくは1mbar未満、最も好ましくは0.1mbar未満の圧力で行うことができる。このような方法では、熱処理は、使用温度及び圧力により左右されるが、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも6時間、温度を維持することによって行うことができる。
【0056】
本発明の一実施形態では、特定のスパッタリングプロセスの堆積条件は、本発明の被覆ガラスペインを製造するための焼き付けプロセスの加熱工程と組み合わせることができる。
【0057】
本発明の別の一態様では、被覆ガラスペインは、真空断熱グレージングの一部として使用され、low-eコーティングはVIGユニットの真空空間に面する。したがって、本発明は、low-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインを含む真空断熱グレージングであって、このようなlow-eコーティングが:
a)n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列であって、
それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、交互配列と、
b)任意選択的に、1つ以上の誘電体層を任意選択的に含む保護トップコートと;
c)任意選択的に、誘電体層を任意選択的に含み、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触するシーディング層と;
を含み、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は保護トップコートの中から選択される誘電体層であり、貴ガス含有雰囲気下で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは少なくとも30nmであり、かつ120nm以下であり;
10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満である、真空断熱グレージングを含む。
【0058】
本発明の一態様では、本発明の少なくとも1つ被覆ガラスペインが組み込まれた真空断熱グレージングユニットは、1.00W/mK以下、より好ましくは0.90W/mK以下、最も好ましくは0.80W/mK以下のU値を特徴とする。
【0059】
実際に、本発明の被覆ガラスペインが組み込まれたVIGユニットの組み立てによって、真空空間の最終的な封止に高温が必要であるにもかかわらず、良好な真空への到達が可能となる。さらに、本発明の被覆ガラスペインのため、いかなるさらなる作業又は曝露が行われるとしても、VIG中で良好な真空安定性が得られる。本発明の被覆ガラスペインが組み込まれるVIGは、過酷な環境、例えば、典型的には高い使用温度、並びに衝撃及び振動、湿度、汚染物質放射線、及び/又は同様のものへの曝露を特徴とする環境に耐えることができる。例えば、天空光中、グレージングシステムは、極端な温度(150℃)、並びに風荷重に関連する衝撃及び振動荷重にさらされる。
【0060】
本発明はさらに、low-eコーティングであって:
a)n個の赤外線反射機能層及びn+1個の誘電体コーティング(ここでn≧1である)の交互配列であって、
それぞれの赤外線反射機能層は誘電体コーティングで取り囲まれ、誘電体コーティングは1つ以上の誘電体層を含み、
それぞれの赤外線反射機能層は、そのすぐ上にあり、かつそれと接触するバリア層によって保護され、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層が貴ガス、好ましくはアルゴンを含む、交互配列と、
b)任意選択的に、1つ以上の誘電体層を任意選択的に含む保護トップコートと;
c)任意選択的に、誘電体層を任意選択的に含み、少なくとも1つの赤外線反射機能層の下にあり、かつそれと接触するシーディング層と;
を含み、
それぞれの赤外線反射機能層及びバリア層以外の少なくとも1つの層は、誘電体コーティング、シーディング層、及び/又は保護トップコートの中から選択される誘電体層であり、貴ガス含有雰囲気下で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さは少なくとも30nmであり、かつ120nm以下であり;
真空断熱グレージング内で、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満である、low-eコーティングが設けられたガラス基材を含む被覆ガラスペインの使用に関する。
【0061】
多くのlow-eコーティングが当技術分野において周知である。このようなコーティングの選択は、放射率、光透過及び/又は反射、美的特徴(色、ヘイズなど)、熱処理に対する耐性、機械的抵抗性、耐久性などの多くの性質の妥協点に依存する。
【0062】
本発明の被覆ガラスペインは、最終製品に期待される熱的、光学的、及び審美的基準を満たす必要がある。当業者は、所望の光学的及び熱的性質を有する所望のlow-eコーティングを製造する方法を知っている。ここで本発明は、VIG組立体中に使用すると好都合となるように調整されたlow-eコーティングを製造するための解決策を提供する。
【0063】
本発明の被覆ガラスペインがVIGユニットの一部として使用される場合、本発明の被覆ガラスペインが組み込まれた上記ユニットは、断熱能力に関して高性能であることが判明した。実際、本発明の被覆ガラスペインを含む真空断熱グレージングの優れた熱的性能は、though製造条件及び/又は過酷な環境条件にもかかわらず、真空断熱グレージングの寿命にわたって維持できることが分かった。本発明の被覆ガラスペインは、熱的性能と製造コストとの間で非常に興味深いバランスが得られることがさらに分かった。熱貫流率U値、及び放射率εを有するlow-eコーティングの寄与で表されるVIGの性能に関する目標は表1にまとめられる。
【0064】
【0065】
本発明の別の一態様では、VIGユニットは、例えばガラスペインの間の一方又は両方の内部空間が低圧である三重グレージングユニットのようなより複雑な断熱グレージングユニット(IGU)の一部であってよい。このより複雑なグレージングユニットは、2つ以上のガラスペインを有することができ、例えばポリマーフィルムのような非ガラスペインを含むことができる。IGUは、本発明のlow-eを有する2つ以上の被覆面を有することができ、又は別の種類のコーティングを有することができる。
【0066】
本発明の被覆ガラスペインのガラス基材は、透明フロートガラス、超透明フロートガラス、又は色ガラスから選択することができる。本明細書において、「ガラス」という用語は、あらゆる種類のガラス又は同等の透明材料、例えば無機ガラス又は有機ガラスを意味するものと理解される。使用される無機ガラスは、ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩、又はホウケイ酸塩の、結晶性及び多結晶性のガラスなどの1つ以上の周知の種類のガラスであってよい。ガラスペインは、フロート法、引き上げ法、圧延法、又は溶融ガラス組成物から開始してガラスペインを製造することが知られているあらゆる他の方法によって得ることができる。ガラスペインは、任意選択的にエッジ研磨することができる。エッジ研磨によって、鋭利なエッジが滑らかなエッジとなり、これによって真空断熱グレージングユニット、特にグレージングのエッジに接触する可能性がある人々がはるかに安全になる。好ましくは、本発明によるガラスペインは、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、又はホウケイ酸ガラスである。好ましくは、より低い製造コストが理由で、ガラスペインは、ソーダ石灰シリカガラスのペインである。典型的には、本発明のガラスペインは、アニールガラスペインである。
【0067】
本発明は、以上の説明及び請求項に記載の特徴、実施形態、及び態様のあらゆる可能な組み合わせに関することが留意される。
【0068】
これら及びその他の特徴及び利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を図面とともに参照することによって、より良くより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】Ex.1及びEx.2に対応する例示的low-eスタックのアルゴン濃度のグラフ表現である。
図2】Ex.1及びEx.2に対応する例示的low-eスタックの時間の関数としての、加熱条件下での真空中のアルゴン放出の定性的グラフ表現である。
図3】従来の真空断熱グレージングユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
定義:一貫させるために、一例が規定され番号が付けられると(例えばEx.1)、その番号は、すべての段落及び表中で同じ例(同じlow-eコーティング)にそのまま使用される。室温は23°の温度として理解されるべきである。熱貫流率UはISO 19916-1に準拠して求められ、W/mKの単位で表される。放射率εはEN 12898に準拠して測定される。
【0071】
本明細書において、low-eコーティングは、low-eスタック、層スタック、又はスタックと呼ばれる場合もある。本明細書において、第1及び第2のガラスペインと離間したスペーサーの組とによって画定され、気密接合封止によって閉じられ、0.1mbar未満の圧力の絶対真空が存在する内部真空容積は、真空空間又は低圧空間/間隙又は排気された低圧空間/空隙と呼ばれる。VIG中の残留ガスは、残留ガス分析(RGA)によって分析されている。RGA分析器は、VIG内部に含まれるガスを抽出することができ、高感度四重極質量分析計によって、それらの分圧を測定するシステムである。この方法は、N.Ng,R.E.Collins and L.So,Journal of Vacuum Science & Technology A 21,1776(2003)に記載されている。
【0072】
low-eスタックの種々の層に存在するアルゴンは、X線光電子分光法(XPS)及びX線蛍光分光法(XRF)を用いて求められている。これらの技術によって、コーティング中の深さと直接相関する、コーティング中に存在する元素の画像が得られる。
【0073】
一般的な方法では、太陽光制御コーティングは、少なくともある特定の波長範囲を吸収及び/又は反射し、全体的にグレージングの光エネルギー的性質を変化させる。このようなコーティングの個別の層を構成する材料は、被覆ガラスペインの所望の最終的な性質によって選択され、金属若しくはケイ素、又は少なくとも2つの金属の混合物、又は金属とケイ素との混合物の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、酸炭窒化物などの典型的には誘電体層を含む。
【0074】
これらの誘電体層中に多用されるものは、ケイ素、及び/又はチタン、ジルコニウム、ビスマス、ニオブ、スズ、亜鉛などの金属である。コーティングは典型的には、例えば銀、ニッケル、クロム、タングステン、金、パラジウム、チタン、又はそれらの混合物を含む金属層をも含む。
【0075】
特に、ここでlow-eコーティングは、ガラス基材上にスパッタリングされ、例えば、銀、金、パラジウム、又は赤外線を反射することができるあらゆる金属のような少なくとも1つの赤外線反射機能層を含み、上記機能層が誘電体コーティングによって取り囲まれる、薄層の任意のスタックとして理解すべきである。
【0076】
誘電体層は、ケイ素及び/又はチタン、亜鉛、スズ、ジルコニウムなど並びにそれらの混合物又は合金から選択される金属の酸化物、窒化物、酸窒化物として理解すべきである。実際には、誘電体層は、任意選択的に金属酸化物の混合物である。例えば、酸化亜鉛スズは、10重量%~90重量%の亜鉛及び90重量%~10重量%のスズの比率で亜鉛及びスズを含むことができる。一部の層はドープして、透明導電性酸化物、例えばフッ素ドープ酸化スズ、インジウムスズ酸化物、又はアルミニウム、ガリウム、若しくはホウ素がドープされた酸化亜鉛を形成することができる。ケイ素の酸化物又は窒化物は、最大10重量%のアルミニウムを含むことができる。酸化亜鉛は、金属としての亜鉛をベースとする酸化物として理解すべきであるが、この酸化物は、例えばアルミニウムのような別の金属がドープされることが多い。
【0077】
より一般的な方法では、本発明のlow-eコーティングは、8nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上、及び45nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の厚さを有する酸化亜鉛スズ層を含む第1の誘電体コーティングを含む。第1の誘電体コーティングは、8nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上、及び45nm以下、好ましくは35nm以下、より好ましくは25nm以下の厚さを有する酸化チタン、酸化ジルコニウム、又はそれらの混合物を含むこともできる。第1の誘電体の上及び銀層のすぐ下に、シーディング層を堆積することができる。この層は、銀層の付着の改善、その放射率を低下させることよる銀層の品質の改善、及び銀層の保護などの複数のさらなる目的を有する。このシーディング層は有利には酸化亜鉛ベースの層である。酸化亜鉛ベースの層によって、酸化亜鉛が例えばアルミニウムのような別のドーピング金属元素を含むことができるものと理解すべきである。存在し、誘電体層の形態である場合、このようなシーディング層の厚さは、貴ガス含有雰囲気中で堆積される誘電体層の全幾何学的厚さを計算する場合に考慮されるべきである。
【0078】
銀層の上には、保護バリア層が堆積される。限定するものではないが、好ましくはこのバリア層は、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛であり、銀層の酸素による汚染を防止するために100%アルゴン雰囲気下でセラミックターゲットから周知の方法で堆積される。或いは、バリア層は、チタン、ニッケル、クロム、又はそれらの1つを含む合金から選択される金属であってよい。バリア層は、1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上及び12nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは9nm以下の厚さを有する。最後の銀層の上の最後の誘電体コーティングは、有利には多層コーティングである。最後の誘電体コーティングの多層コーティングは、有利には、酸化亜鉛ベースの層、酸化亜鉛スズ層、窒化ケイ素層、酸化ジルコニウムチタン層、酸化チタン層の1つ以上の層を含む。
【0079】
一般的な現代のマグネトロンスパッタリング方法は当技術分野において周知であり、当業者は取り扱い方法を熟知している。すなわち、この方法は、アルゴン、クリプトン、ヘリウム、二酸化炭素から選択されるイオン化ガスを用いたターゲットのスパッタリングを含む。堆積させる層が酸化物又は窒化物である場合、ガスは、反応性ガスとしての酸素又は窒素を含む又はからなることもできる。例えば、銀層又は銀を保護するバリア層のような金属層の劣化の回避が必要な場合、雰囲気は好ましくは純アルゴンである。アルゴンを選択する理由は、これが不活性であり、十分な質量を有し、あまり高価でないからである。しかし、一態様では、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後の、得られた被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満となるような方法で、ガラス基材上に堆積されたlow-eコーティングが形成されるように、典型的なガス雰囲気スパッタリング条件が注意深く計画されている、被覆ガラスペインを本発明は対象とする。
【0080】
本発明のlow-eコーティングは、熱的性能、耐久性、審美的光学的特性に関して特定の性質を有し、VIGの耐久性の要求を満たすように設計される。幾つかの実施形態では、low-eコーティングは、熱処理が可能であるとも予想され、これは、それらの性質を低下させることなく、650℃までの高さの温度で熱処理が可能であることを意味する。
【0081】
本発明を限定するものでは決してないが、例として、low-eコーティングを有する幾つかの被覆ガラスペインを作製した。表2は、それらのlow-eスタックの構造を示している。後述するように、Ex.2は本発明の比較例である。
【0082】
【0083】
ZSO5は、52.4重量%の亜鉛の亜鉛/スズ比を有する酸化亜鉛スズ層を意味する。本発明の実施形態によると、酸化亜鉛スズは、90/10~10/90の範囲内の亜鉛/スズ重量比を有することができる。ZnO:Alは、反応性スパッタリング酸素雰囲気中で、ドープされた亜鉛金属カソードから堆積したアルミニウムドープ酸化亜鉛である。AZOは、不活性雰囲気中でセラミックカソードから堆積したアルミニウムドープ酸化亜鉛である。堆積方法とは無関係に、アルミニウムドープ酸化亜鉛層は、2~10原子%の間で構成されるアルミニウムドーピングパーセント値を有することができる。SiNは、シリコンカソードから堆積され、好ましくはアルミニウムがドープされる窒化ケイ素である。TZOは、65/35のTiO/ZrO重量比のTiO及びZrOの酸化物の混合層である。本発明の実施形態によると、酸化ジルコニウムチタンは、90/10~50/50の範囲内のTiO/ZrO重量比を有することができる。Agは、Ag金属カソードから堆積した銀金属の層であり、Tiは、金属Tiカソードから堆積したチタン金属の層である。TiOは、金属Tiカソードから堆積した二酸化チタンの層である。
【0084】
表2中に示されるそれぞれの被覆ガラスペインは、VIG組立体中で、被覆面が真空ユニットの内部に面するように組み立てられている。それぞれのVIGユニットは、VIG ex.1及びVIG ex.2と名付けられ、それぞれEx.1及びEx.2に記載のlow-eコーティングを有する1つの被覆ガラスペインを用いて作製される。
【0085】
図3の例示的VIGユニット(1)は、排気された低圧空間/空隙(6)が間に閉じ込められるような方法で互いに気密封止された、2つの間隔を開けて配置される実質的に平行のガラス基材(2)、(3)を含む。ガラスペイン又は基材(2)、(3)は、周辺端部シール(4)によって互いに連結され、基材(2)、(3)の間に存在する低圧空間/間隙(6)を考慮して、VIGユニット(1)の基材(2)、(3)の間隔を維持するために、ガラス基材(2)、(3)の間に一連の支持ピラー/スペーサー(5)が含まれる。本発明のlow-eコーティング(7)は、真空断熱グレージングユニットの内側部分に存在する。明確にするため、図3のVIGユニットは実際の縮尺通りではない。
【0086】
実施例1及び2の被覆ガラスペインを用いてVIGを組み立てた後、得られたVIGの性能を熱貫流率及び放射率特性の測定によって評価した。結果を表3中に示す。
【0087】
【0088】
表3は、熱的性能に関するlow-eコーティングの間の大きな差を示している。被覆ガラスペインを用いて組み立てたVIG(VIG Ex.1)は、高い熱貫流率(U=1.5W/mK)を示す比較例(VIG Ex.2)よりもはるかに低い熱貫流率(U=0.76W/mK)を示す。両方のVIGユニットについて第2の分析を行った:ユニット内部の残留ガスを排出させ、RGA方法によって分析した。この分析の結果を表4中に示す。ガス濃度は、ガスの総量における比率、すなわち特定のガスの体積を全ガス雰囲気の体積で割ったもので表される。
【0089】
【0090】
0.5%未満であるので、ヘリウムの体積比は重要ではない。表4からすぐに明らかとなることは、閉じた後の比較例VIG ex.2のVIGユニットの真空空間中に存在する残留ガス中に見られた多量のアルゴンである。この多量のアルゴンは、ガラス表面上に堆積されたlow-eコーティングのみに由来しうることが分かった。
【0091】
VIG ex.1中、放出されたガス組成物中の大部分がアルゴンである貴ガスの量は、アルゴン量が67.97%に到達する比較例VIG ex.2中よりもはるかに少なく、すなわち15.21%である。VIG ex.1中、ガス組成物は、残留ガス分析(RGA)の分析の条件下でゲッターから放出される窒素が優勢である。窒素は、VIGの断熱性能に関して問題とはならないが、その理由はこのガスはゲッターによって捕捉されるからである。したがって、RGA分析中に検出される窒素は考慮されない。
【0092】
貴ガス下、好ましくはアルゴン下でのガラス基材上へのlow-eコーティングの堆積は、効率及び製造コストの理由で非常に推奨される。したがって、本発明は、コーティングがグレージングの内側に面し、このようなコーティングが、貴ガス雰囲気下で堆積された層を含む少なくとも1つの被覆ガラスペインを含むグレージング、特にVIGの持続性及び熱的性能には、グレージングの製造中及び/又は経時により過剰に放出されるのが回避されるように、このような貴ガスの量が注意深く制限されることが重要であるという驚くべき技術的発見に基づいている。実際、貴ガスは、スパッタリング中にコーティング中に取り込まれ、後に高温においてコーティングから拡散し、それによってグレージング内部、特に、真空空間内に放出され得ることが分かった。一部のlow-eコーティングが、より多い量のアルゴンが取り込まれることを示すだけでなく、low-eコーティングを通過する貴ガスの拡散動力学が温度に大きく依存することもさらに分かった。したがって、一実施形態では、本発明は、このような被覆ガラスペインがグレージング中、特にVIG中に組み立てられるときに、グレージング、特に真空空間の内部の貴ガス放出量が制限されるように堆積条件が特に計画される、ガラス基材へのlow-eコーティングの堆積方法に関する。別の一実施形態では、本発明は、グレージング中に組み立てられる前に300℃を超える温度で熱処理された被覆ガラスペインに関する。
【0093】
以下の表5(a)及び(b)は、例1及び2のガラス基材から外側に向かって堆積したlow-eのコーティングスタックの組成及び厚さ、並びに異なる層のスパッタリング堆積中に存在する貴ガス濃度のアルゴンを示している。
【0094】
以下のすべての表において、赤外線反射機能層は「IR層」と記載される。
【0095】
【0096】
【0097】
SiN(窒化ケイ素)の場合、スパッタリングガスは、SiNがSiの完全に窒化された層となるように窒素比が調整される窒素及びアルゴンの混合物である。この例では、アルゴン量は全ガス体積の約40%である。
【0098】
表5(a)及び(b)中に示されるように、本発明者らは、スパッタリングされるlow-eコーティングが、スパッタリングガスの混合物中に存在する貴ガスとともに堆積される場合、得られる層は、後にVIG組立体に対して重要となり得る程度で上記貴ガスで汚染されることを発見した。したがって本発明者らは、貴ガス放出量、特にアルゴン放出量が制限されるように、low-eコーティングを形成する種々の層の堆積条件を調節することが重要であることを見出しており、対応する被覆ガラスペインがVIGユニット中に組み立てられる。このことは、表2の2つの異なるlow-eスタックのXPS分析を示す図1中により良く示されている。この図は、上記貴ガス、すなわちアルゴンの原子濃度が、実施例2の方が高く、より低く比較的一定である実施例1のlow-eコーティングのアルゴン濃度とは対照的であることを明確に示している。
【0099】
第2の分析は、図2中に示され、真空下で試料を暖かく維持しながらアルゴン放出を追跡するために例の同じ2つの被覆ガラスペイン(Ex.1及びEx.2)に対して行った。図2は、アルゴン放出は、Ex.1の試料ではある限度まで急速に減少し、他方の試料(Ex.2)の場合は同じレベルに到達するまである程度長い時間を要することを示している。実際、このアルゴンレベルに到達するためにEx.1では2時間を要し、Ex.2ではほぼ6時間を要した。アルゴン量は、高感度四重極質量分析計を用いて監視した。したがって、図2は、真空排気段階中の製造プロセスの温度プロファイルを模倣する温度プロファイルに曝露した場合の経時によるアルゴン放出を示している。被覆ガラスペインは、温度を450℃まで上昇させ、400℃までわずかに低下させ、次に脱気が開始するまで維持した。図2は、例2の被覆ガラスペインの経時によるアルゴン放出が、例1の被覆ガラスペインの場合よりもはるかに遅いことを示している。したがって、本発明は、low-eコーティングの場合に放出される全アルゴン量だけを注意深く監視すべきなのではなく、low-eコーティングを通過するアルゴンの拡散動力学も考慮すべきであるという驚くべき技術的効果に基づいている。図2は、例2の被覆ガラスペインの場合、アルゴンを放出するためにはるかに長い時間が必要であることを示している。したがって、一実施形態では、本発明は、貴ガス放出量、特にアルゴン放出量が制限するための、low-eコーティングを形成する種々の層の堆積条件の調節の重要性に基づいており、対応する被覆ガラスペインがVIGユニット中に組み立てられる。第2の実施形態では、本発明は、貴ガス放出動力学の重要性に基づいており、したがってグレージング中での組み立て前のある特定の時間の間、被覆ガラスペインを高温に曝露することを教示する。この独立した加熱工程によって、VIG組立体プロセス中の不必要な長時間の脱気が回避され、これによって対応するVIG組立体の製造コストが適正に維持される。
【0100】
本発明者らは、low-eコーティングの十分に画定されたガス放出、及びRGA分析方法による放出されたガスの測定を含むStatic Outgassing Technicによって本発明のlow-eコーティングの特性決定を行うことにした。本明細書において実施した方法は、「ガス放出貴ガス測定」(ONGM)として区別され、以下のように規定される。この方法では、アルゴン放出がlow-eコーティング中に存在するアルゴン量と直接関連することを示され、これによって本発明のlow-eコーティングの特性決定が可能となる。
【0101】
放出可能なアルゴンの含有量を求めるために、20mm×30mmの被覆されたガラス試料を気密封止されるフラスコ中に導入する。フラスコを真空ポンプに接続し、終夜ポンプを使用してフラスコの雰囲気を真空にして、10-6mbar未満の残留圧力に到達させる。次にフラスコを完全に分離し、このフラスコに対して以下の温度プロファイルに適合する加熱プログラムを実施する:室温から460℃まで100分間で加熱、460℃で20分間維持、460℃から室温まで100分間冷却。この脱気プロトコルの終了後、放出ガス種の総量を収集し、サンプリングし、23℃の温度において周知のRGA方法によって四重極質量分析計による分析を行った。放出ガス種の量は、mbar.cmの単位で表され、したがって試料中に存在するガスの量を直接表している。この量(ガスのモル量に正比例する)を分析を行った試料の全表面(mmの単位で表される)で割って、被覆ガラス1mm当たりのmbar.cmの単位で表される。
【0102】
Ex.1及びEx.2の被覆ガラスペインの2つのlow-e層スタックに対してONGM方法を行い、結果を表6に示している。
【0103】
【0104】
比較例であるEx.2中の貴ガス量は、Ex.1の量の約10倍となることが分かり、この特性が機能するVIGを得るために重要な特徴であることを裏付けている。被覆ガラスペインを含み、そのようなコーティングが貴ガス雰囲気下で堆積された層を含む、グレージングユニットの性能及び持続性、特にそのような被覆ガラスペインを含むVIGの性能及び持続性を維持するために、経時による過度で長い放出が回避されるように、このような貴ガスの量を注意深く制限する必要があることが分かった。したがって、本発明の被覆ガラスペインは、10-6mbar未満の圧力において、室温から460℃まで100分間で加熱し、460℃で20分間維持し、460℃から23℃まで100分間で冷却した後、被覆ガラスペインの被覆表面積当たりの放出可能な貴ガスの含有量が、被覆ガラスペイン1mm当たり1.5×10-6mbar.cm未満となる必要がある。
【0105】
本発明によって規定される貴ガスの閾値を満たすマグネトロンスパッタリングプロセスを用いてlow-eコーティングを堆積できる別の方法も可能である。本発明の説明が目的であって、限定するものでは決してないが、本発明者らは、本発明に適合するスタックを得るために、従来のlow-eコーティングから出発して、以下の幾つかの調整された条件を規定している。
【0106】
実際には、保護コート層と見なすことができる最後のTZO層を除去したことを除けばEx.2のものと類似のlow-eコーティングであって、そのスタックを修正したスパッタリング条件によって作製した。
【0107】
典型的には、堆積には、真空堆積チャンバー、基材用コンベヤ、電源、及びガス入口ロックが使用される。各堆積チャンバーは、マグネトロンスパッタリングカソード、ガス入口、及び排気出口を含む。各堆積チャンバーは、それ自体の雰囲気を特徴とする。カソードは、金属材料又はセラミック材料から形成することができる。フロートガラスシートは、洗浄して、スパッタリング装置中に導入される。ガラスペインはターゲットに面し、要求されるスパッタリング雰囲気としての操作条件は、各スパッタリングチャンバー中で調整される。
【0108】
表7中に、本発明者らは、修正しない堆積プロセスを用いる例ex.2及び修正した堆積プロセスを用いる新しいex.3)のスパッタリング条件をまとめた。保護コート層TZOの除去に加えて、例2の被覆ガラスペインの製造に使用した典型的なスパッタリング条件を、本発明の特定の被覆ガラスペインを製造するために例3により修正した。このプロセスの場合、すべてのスパッタリングチャンバー中で、絶対圧力は5~7mTorr(6.6mbar~9.3mbar)であり、このプロセスは室温で行われる。
【0109】
【0110】
別の一例では、例Ex.2の被覆ガラスペインを、480℃の温度で8時間、標準大気圧下で熱処理した。この手順によって、本発明者らは新しい試料Ex.4。を得た。上記の条件は単なる一例である。より低い温度を用いて、より長い加熱時間又はより低い圧力、又はその両方で、同様の結果に到達することができる。別の条件を以下の表8中に示す。
【0111】
【0112】
例2~4の得られたコーティングのそれぞれについて、ONGM方法によって評価を行い、結果を表9中に示している。
【0113】
【0114】
ONGM基準を満たす被覆ガラスペインを用いて組み立てたVIGユニットが、1.00W/mK以下の熱係数U値を特徴とする高い熱的性能にも到達できることを確認するために、本発明者らはEx.3及びEx.4の被覆ガラスペインをVIGユニット中に組み込んだ。得られたVIGユニットは、それぞれVIG ex.3及びVIG ex.4と名付けられる。得られたVIGユニットの性能を評価し、比較例VIG ex.2と比較するために表10中に示している。
【0115】
【0116】
VIG例のEx.3及びEx.4は本発明に適合する。前出の表9中に示されるように、被覆ガラスペイン例3及び4についてONGM方法で測定されるアルゴンレベルは、規定の試験条件において1.5×10-6mbar.cm/mm未満、さらには1.0×10-6mbar.cm/mm未満である。対照的に、例2の比較用被覆ガラスペインについてONGM方法で測定されるアルゴンレベルは、1.5×10-6mbar.cm/mm被覆ガラスペインの限度を超える。これらのlow-e被覆ガラスペインが組み込まれるVIGユニットは、良好な熱的性能を示す。対照的に、アルゴンレベルが高すぎる、すなわち2.5×10-6mbar.cm/mmである被覆ガラスペインを用いて作製した比較例Ex.2は、断熱試験に不合格となることが判明し、それらの断熱性能を考慮すると無視される。実際に、グレージングユニットの熱的性能は、グレージングユニット内の伝導、対流、及び放射の現象を考慮する熱貫流率Uの計算によって評価される。グレージングユニット内にlow-eコーティングの存在は、熱貫流率への放射への寄与を減少させることができ、これは放射率によって測定される。実際に、表10は、試験した3つのlow-eコーティングが同様の放射率性能であるにも関わらず、VIG ex.2の熱的性能が非常に高いことを示している。このような悪い熱的性能は、真空空間中に貴ガスが存在し、これによって熱貫流率における対流の寄与が実質的に増加するためである。
【0117】
以下の表に、本発明の被覆ガラスペインの組成及びスパッタリング条件のさらなる例を示す(ex.5及びex.6)
【0118】
【0119】
図1
図2
図3