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特許7534352レジスト組成物およびレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】レジスト組成物およびレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240806BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20240806BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022071751
(22)【出願日】2022-04-25
(65)【公開番号】P2023161391
(43)【公開日】2023-11-07
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 康夫
(72)【発明者】
【氏名】海保 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】大星 友希
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有し、
前記酸発生剤成分(B)は、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤とを含み、
前記第1の酸発生剤は、下記一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含み、
前記第2の酸発生剤は、下記一般式(b2-2)で表される化合物(b2)を含む、
レジスト組成物。
【化1】
[一般式(b1-1)中、Rb01は、置換基を有さない炭素原子数1~20の直鎖状のアルキル基を表す。
Lb01は、単結合、または置換基を有していてもよい炭素原子数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Lb02は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Rf01及びRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
01は、0または1の整数を表す。
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。]
【化2】
[一般式(b2-2)中、Rf01およびRf02は、フッ素原子を表す。
Rf03およびRf04は、それぞれ独立に、水素原子、またはフッ素原子を表す。
01は、水素原子、フッ素原子またはフッ素化メチル基を表す。
02は、0~20の整数を表し、
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。
ただし、n02が、0を表す場合、W01はフッ素原子を表す。]
【請求項2】
前記一般式(b1-1)における前記Rb01は、置換基を有さない炭素原子数3~15の直鎖状のアルキル基を表し、前記Lb01は、単結合、または置換基を有していてもよい炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基を表し、前記Lb02は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基を表す、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記一般式(b1-1)における前記Rb01は、置換基を有さない炭素原子数3~15の直鎖状のアルキル基を表し、前記Lb01は、単結合、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基を表し、前記Lb02は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基を表し、前記Rf01及び前記Rf02は、それぞれ独立に、フッ素原子を表す、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記基材成分(A)は、下記一般式(a1-1)で表される構成単位(a1)を有する高分子化合物(A1)を含有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化3】
(一般式(a1-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を表す。
Vaは、2価の連結基を表す。
naは、0~2の整数を表す。
Ra031は、アルキル基を表し、Yabは、炭素原子を表す。
Xabは、Yabと共に単環の脂環式炭化水素基を形成する基を表し、
この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部または全部は置換されていてもよい。)
【請求項5】
さらに、下記一般式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表される化合物を含む酸拡散制御剤(d)を含有する、請求項1又は4に記載のレジスト組成物。
【化4】
[一般式(d1-1)~(d1-3)中、Rd~Rdは置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基を表す。但し、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。
Ydは単結合または2価の連結基を表す。
mは1以上の整数を表し、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンを表す。]
【請求項6】
前記酸発生剤成分(B)における、前記第1の酸発生剤と前記第2の酸発生剤との混合比率を示す、前記第1の酸発生剤/前記第2の酸発生剤で表される質量比が20/80~80/20である、請求項1又は4に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
前記一般式(b1-1)または(b2-2)におけるMm+が、下記一般式(b3-1)で表されるカチオンである、請求項1又は4に記載のレジスト組成物。
【化5】
[一般式(b3-1)中、Rb201~Rb202は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Rb203は置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。Rb201~Rb203は相互に結合して一般式(b3-1)中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。]
【請求項8】
前記酸発生剤成分(B)の含有量は、前記基材成分(A)100質量部に対して1~10質量部である、請求項1又は4に記載のレジスト組成物。
【請求項9】
前記高分子化合物(A1)は、さらに、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基を含む構成単位(a2)を有する、請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項10】
支持体上に、請求項1又は4に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。レジスト膜の露光部が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光部が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
【0003】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)のEUV(極紫外線)や、EB(電子線)、X線などについても検討が行われている。
【0004】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0005】
酸発生剤成分としては、これまで多種多様なものが提案されており、たとえばオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤などが知られている。
そして、酸発生剤成分を二種以上組み合わせて用いたレジスト組成物が検討されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5544151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リソグラフィー技術のさらなる進歩、レジストパターンの微細化がますます進むなか、レジスト組成物には、露光光源に対して高い感度、良好なレジストパターン形状が得られ、優れたDOF(Depth of Focus :焦点深度)マージン等のリソグラフィー特性が要求される。
しかしながら、上述の特許文献1及び2のような従来のレジスト組成物においては、高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとの両立には未だ改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立したレジストパターンを形成し得るレジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により、高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立したレジストパターンを形成し得るレジスト組成物およびレジストパターン形成方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、
露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有し、
前記酸発生剤成分(B)は、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤とを含み、
前記第1の酸発生剤は、下記一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含み、
前記第2の酸発生剤は、下記一般式(b2-1)で表される化合物(b2)を含む。
【0012】
【化1】
【0013】
[一般式(b1-1)中、Rb01は、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。
Lb01は、単結合、または置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Lb02は、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Rf01及びRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
01は、0または1の整数を表す。
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。]
【0014】
【化2】
【0015】
[一般式(b2-1)中、Rf01及びRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
Wは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1以上のハロゲン化アルキル基を表す。
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。]
【0016】
本発明の他の実施形態に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、本発明の実施形態に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立したレジストパターンを形成し得るレジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本明細書および本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」または「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基またはアルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0020】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH-COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα0)は、水素原子以外の原子または基であり、例えば炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(Rα0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rα0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルを、α置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0021】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1~5が好ましく、1が最も好ましい。
【0022】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
更に、本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本明細書および本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0023】
〔レジスト組成物〕
本発明の実施態様に係るレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有し、前記酸発生剤成分(B)は、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤とを含み、前記第1の酸発生剤は、前記一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含み、前記第2の酸発生剤は、前記一般式(b2-1)で表される化合物(b2)を含む。
【0024】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、該レジスト膜の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、該レジスト組成物がポジ型の場合はレジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、該レジスト組成物がネガ型の場合はレジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0025】
本明細書においては、レジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物を、ポジ型レジスト組成物といい、レジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物を、ネガ型レジスト組成物という。
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
また、本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0026】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有する。
【0027】
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する(A)成分は、例えば公知のものが挙げられる。
(A)成分は、露光により酸を発生してもよく、その場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、露光により酸を発生する構成単位を有する共重合体を用いることができる。
【0028】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、基材成分(A)は酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するため、アルカリ現像プロセスにおいては、現像時に、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性が高まる。
また、本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有し、酸発生剤成分(B)は、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤とを含み、第1の酸発生剤は、後述する一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含み、第2の酸発生剤は、後述する一般式(b2-1)で表される化合物(b2)を含む。
【0029】
化合物(b1)および化合物(b2)は、いずれも1分子中にフッ素原子を2個以上含み、鎖状構造を含むことにより、レジスト膜における反応を促進し、高感度化に寄与する。また、レジスト組成物が特定構造を有する化合物(b1)および化合物(b2)を含むことにより、各々において分子内の回転の自由度がある程度高く、フレキシブルに移動可能となる。その結果、レジスト膜中での酸の拡散が適度に促進されることにより、高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立したレジストパターンを形成することができる。
【0030】
≪(A)成分≫
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である。
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が増大するものであってもよく、酸の作用により現像液に対する溶解性が減少するものであってもよい。(A)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても、良好な現像コントラストを得ることができる。
【0031】
(A)成分としては、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有する高分子化合物(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含むものがより好ましい。
(A1)成分としては、構成単位(a1)に加えて、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基を含む構成単位(a2)を有する高分子化合物を用いることが好ましい。
【0032】
アルカリ現像プロセスを適用する場合、該(A1)成分を含む基材成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、レジスト膜露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、レジスト膜未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりポジ型レジストパターンが形成される。
【0033】
一方、溶剤現像プロセスを適用する場合、該(A1)成分を含む基材成分(A)は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなり、有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、レジスト膜露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、レジスト膜未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型レジストパターンが形成される。
【0034】
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
<構成単位(a1)>
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(-SOH)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に-OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基がより好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
ここで「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、または、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0036】
構成単位(a1)は、脂環式炭化水素基を有する酸分解性基を含むものが好ましく、より好ましくは、単環式の脂環式炭化水素基を有する酸分解性基を含むものであり、さらに好ましくは、単環式の脂環式炭化水素基を有する酸解離性基を含むものである。
構成単位(a1)における酸分解性基(酸解離性基)は嵩高さが適度であるため、酸の拡散制御と現像液の溶解性とを適度に調節することができ、レジストパターンを形成する際のラフネスを低減させることができる。
構成単位(a1)における酸解離性基としては、これまで化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとして、具体的には、「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」が挙げられる。
【0037】
第3級アルキルエステル型酸解離性基:
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基が挙げられる。
なお、下記式(a1-r-2)で表される酸解離性基のうち、アルキル基により構成されるものを、以下、便宜上「第3級アルキルエステル型酸解離性基」ということがある。
【0038】
【化3】
【0039】
[式中、Ra’~Ra’はそれぞれ炭化水素基であって、Ra’、Ra’は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0040】
Ra’の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、又は、環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、炭素数が1~4がより好ましく、炭素数1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0041】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~10であることが好ましく、炭素数3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0042】
Ra’が環状の炭化水素基(単環式基である脂肪族炭化水素基、多環式基である脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0043】
Ra’の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、炭素数5~20がより好ましく、炭素数6~15がさらに好ましく、炭素数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra’における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、炭素数1~2であることがより好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。
【0044】
Ra’における環状の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、-RP1、-RP2-O-RP1、-RP2-CO-RP1、-RP2-CO-ORP1、-RP2-O-CO-RP1、-RP2-OH、-RP2-CN又は-RP2-COOH(以下これらの置換基をまとめて「Rax5」ともいう。)等が挙げられる。
ここで、RP1は、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基である。また、RP2は、単結合、炭素数1~10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3~20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素数6~30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、RP1及びRP2の鎖状飽和炭化水素基、脂肪族環状飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記脂肪族環状炭化水素基は、上記置換基を1種単独で1つ以上有していてもよいし、上記置換基のうち複数種を各1つ以上有していてもよい。
炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素数6~30の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0045】
Ra’が、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4~7員環が好ましく、4~6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0046】
Ra’における鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素数2~10のアルケニル基が好ましい。
Ra’、Ra’の炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0047】
Ra’とRa’とが互いに結合して環を形成する場合、下記一般式(a1-r2-1)で表される基、下記一般式(a1-r2-2)で表される基、下記一般式(a1-r2-3)で表される基が好適に挙げられる。
一方、Ra’~Ra’が互いに結合せず、独立した炭化水素基である場合、下記一般式(a1-r2-4)で表される基が好適に挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
[式(a1-r2-1)中、Ra031は、アルキル基を表し、Yabは、炭素原子を表す。Xabは、Yabと共に脂環式炭化水素基を形成する基を表し、この脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部または全部は置換されていてもよい。式(a1-r2-2)中、Yaは炭素原子である。Xaは、Yaと共に環状の炭化水素基を形成する基である。この環状の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基及び脂肪族環状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(a1-r2-3)中、Yaaは炭素原子である。Xaaは、Yaaと共に脂肪族環式基を形成する基である。Ra104は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は水素原子である。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra’14は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。*は結合手を示す。]
【0050】
上記の式(a1-r2-1)中、Ra’031は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0051】
Ra’031における、直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~12であり、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~5が特に好ましい。
Ra’031における、分岐鎖状のアルキル基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0052】
Ra’031におけるアルキル基は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基を構成する水素原子の一部が、ハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子(メチレン基など)の一部が、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
ここでいうヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、(-O-)、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。
【0053】
式(a1-r2-1)中、Xab(Yabと共に脂環式炭化水素基を形成する基)は、式(a1-r-2)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基(脂環式炭化水素基)として挙げた基が好ましい。その中でも、単環式の脂環式炭化水素基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましく、シクロペンチル基がさらに好ましい。
【0054】
式(a1-r2-2)中、XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基としては、前記式(a1-r-2)中のRa’における環状の1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基)から水素原子1個以上をさらに除いた基が挙げられる。
XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、上記Ra’における環状の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
式(a1-r2-2)中、Ra101~Ra103における、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
Ra101~Ra103における、炭素数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基等が挙げられる。
Ra101~Ra103は、中でも、合成容易性の観点から、水素原子、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0055】
上記Ra101~Ra103で表される鎖状飽和炭化水素基、又は脂肪族環状飽和炭化水素基が有する置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0056】
Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成することにより生じる炭素-炭素二重結合を含む基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基、シクロへキシリデンエテニル基等が挙げられる。これらの中でも、合成容易性の観点から、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基が好ましい。
【0057】
式(a1-r2-3)中、XaaがYaaと共に形成する脂肪族環式基は、式(a1-r-2)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基として挙げた基が好ましい。
式(a1-r2-3)中、Ra104における芳香族炭化水素基としては、炭素数5~30の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が挙げられる。中でも、Ra104は、炭素数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ベンゼンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
【0058】
式(a1-r2-3)中のRa104が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0059】
式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は水素原子である。Ra’12及びRa’13における、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、上記のRa101~Ra103における、炭素数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
Ra’12及びRa’13は、中でも、水素原子、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記Ra’12及びRa’13で表される鎖状飽和炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0060】
式(a1-r2-4)中、Ra’14は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra’14における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0061】
Ra’14における直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn-ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0062】
Ra’14における分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0063】
Ra’14が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0064】
Ra’14における芳香族炭化水素基としては、Ra104における芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。中でも、Ra’14は、炭素数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
Ra’14が有していてもよい置換基としては、Ra104が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0065】
式(a1-r2-4)中のRa’14がナフチル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、ナフチル基の1位又は2位のいずれであってもよい。
式(a1-r2-4)中のRa’14がアントリル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、アントリル基の1位、2位又は9位のいずれであってもよい。
【0066】
前記式(a1-r2-1)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0067】
【化5】
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
前記式(a1-r2-2)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0071】
【化8】
【0072】
【化9】
【0073】
【化10】
【0074】
前記式(a1-r2-3)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0075】
【化11】
【0076】
前記式(a1-r2-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0077】
【化12】
【0078】
酸解離性基としては、上記一般式(a1-r2-1)~(a1-r2-4)で表される基の中でも、上記一般式(a1-r2-1)で表される基が好ましい。
すなわち、本発明の実施形態に係る基材成分(A)は、上記式(a1-r2-1)で表される酸解離性基を含む構成単位を有する高分子化合物(A1)を含有することが好ましい。
【0079】
構成単位(a1)として、具体的には下記一般式(a1-1)で表される構成単位を挙げることができる。
【0080】
(一般式(a1-1)で表される構成単位(a1))
本発明の実施形態に係るレジスト組成物において、基材成分(A)は、下記一般式(a1-1)で表される構成単位(a1)を有する高分子化合物(A1)を含有することが好ましい。
【0081】
【化13】
【0082】
(一般式(a1-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を表す。
Vaは、2価の連結基を表す。
naは、0~2の整数を表す。
Ra031は、アルキル基を表し、Yabは、炭素原子を表す。
Xabは、Yabと共に脂環式炭化水素基を形成する基を表し、
この単環の脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部または全部は置換されていてもよい。)
【0083】
一般式(a1-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を表す。
Rが表す炭素数1~5のアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0084】
一般式(a1-1)中、Vaは、2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、例えば、エーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。Vaにおける2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0085】
Vaにおける2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、または、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0086】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~4がさらに好ましく、炭素数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~10であることが好ましく、炭素数3~6がより好ましく、炭素数3または4がさらに好ましく、炭素数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0087】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、炭素数3~12であることがより好ましい。
【0088】
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0089】
Vaにおける2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
かかる芳香族炭化水素基は、炭素数が3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
【0090】
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0091】
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0092】
一般式(a1-1)中、naは、0~2の整数であり、0または1であることが好ましく、0がより好ましい。
【0093】
式(a1-r2-1)および式(a1-1)中、Ra031は、アルキル基を表し、炭素数1~12の1価のアルキル基であることが好ましい。また、Ra031は、鎖状のアルキル基であることが好ましい。このアルキル基が有する水素原子の一部または全部はヘテロ原子含有基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。例えば、アルキル基を構成する水素原子の一部が、ハロゲン原子またはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子(メチレン基など)の一部が、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
ここでいうヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、酸素原子(-O-)、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。
【0094】
該炭素数1~12の1価のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状の飽和炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0095】
式(a1-r2-1)および一般式(a1-1)中、Ra031は、上記の中でも、鎖状のアルキル基礎であることが好ましく、炭素数1~3の1価の鎖状のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基がより好ましい。
【0096】
式(a1-r2-1)および一般式(a1-1)中、Yabは、炭素原子を表す。
式(a1-r2-1)および一般式(a1-1)中、Xabは、Yabと共に脂環式炭化水素基を形成する基を表し、
この脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部または全部は置換されていてもよい。
該脂環式炭化水素基としては、単環の脂環式炭化水素基が好ましく、モノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基がより好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~8のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等が挙げられる。
【0097】
構成単位(a1)の具体的を以下に挙げる。
下記の式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0098】
【化14】
【0099】
【化15】
【0100】
【化16】
【0101】
上記例示の中でも、構成単位(a1)は、化学式(a01-1a-01)~(a01-1a-18)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、化学式(a01-1a-01)~(a01-1a-3)、(a01-1a-5)、(a01-1a-9)、(a01-1a-16)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0102】
(A1)成分が有していてもよい構成単位(a1)は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
(A1)成分中、構成単位(a1)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%がさらに好ましい。
構成単位(a1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることにより、高感度化、解像性、ラフネス改善等のリソグラフィー特性が向上する。また、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0103】
(構成単位(a2))
(A1)成分は、さらに、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基を含む構成単位(a2)(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)を有するものであってもよい。
構成単位(a2)のラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高める上で有効なものである。また、構成単位(a2)を有することで、例えば酸拡散長を適切に調整する、レジスト膜の基板への密着性を高める、現像時の溶解性を適切に調整する等の効果により、リソグラフィー特性等が良好となる。
【0104】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数えて、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0105】
【化17】
【0106】
[一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、またはSO2-含有環式基であり;A”は酸素原子(-O-)もしくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数であり、m’は0または1である。*は結合手を示す。]
【0107】
前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0108】
Ra’21における-COOR”、-OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、または-SO-含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素数は1~15が好ましい。
【0109】
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1~10であることが好ましく、炭素数1~5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3~15であることが好ましく、炭素数4~12であることがさらに好ましく、炭素数5~10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0110】
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
R”におけるカーボネート含有環式基としては、後述のカーボネート含有環式基と同様であり、具体的には一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
R”における-SO-含有環式基としては、後述の-SO-含有環式基と同様であり、具体的には一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0111】
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1~6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0112】
前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中、A”における炭素数1~5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に-O-または-S-が介在する基が挙げられ、例えば-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A”としては、炭素数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0113】
下記に一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0114】
【化18】
【0115】
【化19】
【0116】
「-SO-含有環式基」とは、その環骨格中に-SO-を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、-SO-における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に-SO-を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。-SO-含有環式基は、単環式基であってもよく多環式基であってもよい。
-SO-含有環式基は、特に、その環骨格中に-O-SO-を含む環式基、すなわち-O-SO-中の-O-S-が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
-SO-含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0117】
【化20】
【0118】
[一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)中、Ra’51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、またはSO-含有環式基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数である。]
【0119】
前記一般式(a5-r-1)~(a5-r-2)中、A”は、前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中のA”と同様である。
Ra’51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0120】
【化21】
【0121】
【化22】
【0122】
【化23】
【0123】
「カーボネート含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-O-を含む環(カーボネート環)を含有する環式基を示す。カーボネート環をひとつ目の環として数え、カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。カーボネート含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
カーボネート環含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0124】
【化24】
【0125】
[式中、Ra’x31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、またはSO-含有環式基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、p’は0~3の整数であり、q’は0または1である。*は結合手を示す。]
【0126】
前記一般式(ax3-r-2)~(ax3-r-3)中、A”は、前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中のA”と同様である。
Ra’X31におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0127】
【化25】
【0128】
構成単位(a2)としては、なかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a2)は、下記一般式(a2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0129】
【化26】
【0130】
[一般式(a2-1)中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya21は単結合または2価の連結基である。La21は-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-またはCONHCS-であり、R’は水素原子またはメチル基を示す。ただしLa21が-O-の場合、Ya21は-CO-にはならない。Ra21はラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、またはSO-含有環式基である。]
【0131】
前記式(a2-1)中、Rは前記と同じである。Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0132】
前記式(a2-1)中、Ya21における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適に挙げられる。
【0133】
・置換基を有していてもよい2価の炭化水素基:
Ya21が置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。
【0134】
・・Ya21における脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、または構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0135】
・・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~4がさらに好ましく、炭素数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~10であることが好ましく、炭素数3~6がより好ましく、炭素数3または4がさらに好ましく、炭素数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0136】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0137】
・・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
該構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、炭素数3~12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0138】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0139】
・・Ya21における芳香族炭化水素基
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、炭素数5~20がより好ましく、炭素数6~15がさらに好ましく、炭素数6~12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、炭素数1~2であることがより好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。
【0140】
前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0141】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基:
Ya21がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
【0142】
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記Ya21における2価の連結基としての説明で挙げた(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0143】
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0144】
上記の中でも、Ya21としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、またはこれらの組合せであることが好ましい。
【0145】
前記式(a2-1)中、Ra21はラクトン含有環式基、-SO-含有環式基またはカーボネート含有環式基である。
Ra21におけるラクトン含有環式基、-SO-含有環式基、カーボネート含有環式基としてはそれぞれ、前述した一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基、一般式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基、一般式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)でそれぞれ表される基が好適に挙げられる。
【0146】
前記式(a2-1)中、Ra21は、上記の中でも、ラクトン含有環式基が好ましく、前記一般式(a2-r-1)、(a2-r-2)、(a2-r-6)または(a5-r-1)でそれぞれ表される基がより好ましく、前記一般式(a2-r-1)または(a2-r-2)でそれぞれ表される基がさらに好ましい。
具体的には、前記化学式(r-lc-1-1)~(r-lc-1-7)、(r-lc-2-1)~(r-lc-2-18)、(r-lc-6-1)でそれぞれ表される基が好ましく、前記化学式(r-lc-1-1)または(r-lc-2-1)でそれぞれ表される基がさらに好ましい。
【0147】
(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
構成単位(a2)の割合を好ましい下限値以上とすると、前述した効果によって、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0148】
≪その他構成単位≫
(A1)成分は、上述した構成単位(a1)、構成単位(a2)以外のその他構成単位を有していてもよい。
その他構成単位としては、例えば、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(a3)、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a4)、ヒドロキシスチレン骨格を含む構成単位(a6)、酸非解離性の脂肪族環式基を含む構成単位(a8)、などが挙げられる。構成単位(a3)~(a8)は、構成単位(a1)または構成単位(a2)に該当するものを除き、レジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
【0149】
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、高感度化、解像性、ラフネスなどの種々のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンが形成されやすくなる。
【0150】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0151】
≪(B)成分≫
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、上述した(A)成分に加えて、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう)とを含有し、前記酸発生剤成分(B)は、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤とを含み、第1の酸発生剤(以下「(B1)成分」ともいう)は、一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含み、第2の酸発生剤(以下「(B2)成分」ともいう)は、一般式(b2-1)で表される化合物(b2)を含む。
【0152】
(第1の酸発生剤((B1)成分))
本実施形態において、第1の酸発生剤は、下記一般式(b1-1)で表される化合物(b1)を含む。
【0153】
【化27】
【0154】
[一般式(b1-1)中、Rb01は、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。
Lb01は、単結合、または置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Lb02は、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Rf01およびRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
01は、0または1の整数を表す。
mは、1以上の整数を表し、Mmはm価の有機カチオンを表す。]
【0155】
[アニオン部(Rb01-(C=O)-O-Lb02-(O-(C=O))n01-Lb01-C(Rf01)(Rf02)-SO )]
一般式(b1-1)中、Rb01は、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。
Rb01における直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数としては、1~20であることが好ましく、3~20であることがより好ましく、3~15であることが特に好ましい。
【0156】
Rb01における直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、3~12がさらに好ましく、3~10が特に好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0157】
Rb01における分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が特に好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0158】
Rb01が置換基を有する場合としては、例えば、該Rb01を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該Rb01を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
ヘテロ原子としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、例えばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基(以下、ヘテロ原子含有置換基ということがある。)は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
【0159】
前記Rb01を構成する炭素原子の一部を置換していてもよいヘテロ原子含有置換基としては、例えばO-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。-NH-である場合、そのHを置換していてもよい置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数1~8であることがさらに好ましく、炭素数1~5であることが特に好ましい。これらの置換基を環骨格中に含まれていてもよい。
【0160】
前記Rb01を構成する水素原子の一部または全部を置換する置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、-C(=O)-R80[R80はアルキル基である。]、-COOR81[R81は水素原子またはアルキル基である。]、-OC(=O)-R82[R82は水素原子またはアルキル基である。]、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、オキソ基(=O)、硫黄原子、スルホニル基(SO)等が挙げられる。
当該置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
当該置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
【0161】
当該置換基としての-C(=O)-R80、-COOR81、-OC(=O)-R82において、R80~R82におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。その炭素数は1~30が好ましい。該アルキル基が直鎖状または分岐鎖状である場合、その炭素数は1~20であることが好ましく、1~17であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましく、1~10が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。該アルキル基が環状である場合(シクロアルキル基である場合)、その炭素数は、3~30であることが好ましく、3~20がより好ましく、3~15がさらに好ましく、炭素数4~12であることが特に好ましく、炭素数5~10が最も好ましい。該アルキル基は単環式であってもよく、多環式であってもよい。具体的には、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等を例示できる。前記モノシクロアルカンとして、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、前記ポリシクロアルカンとして、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0162】
当該置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が特に好ましい。
当該置換基としてのハロゲン化アルコキシ基としては、前記アルコキシ基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルコキシ基としては、フッ素化アルコキシ基が好ましい。
当該置換基としてのヒドロキシアルキル基としては、前記置換基としてのアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基が有する水酸基の数は、1~3が好ましく、1が最も好ましい。
【0163】
Rb01としては、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3~10の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、またはデシル基がより好ましい。また、Rb01は置換基を有さないことが好ましい。
【0164】
Lb01は、単結合、または置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Lb02は、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
Lb01およびLb02における直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
【0165】
Lb01およびLb02は、直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、またはエチレン基がさらに好ましい。
【0166】
Lb01およびLb02が置換基を有する場合の置換基としては、Rb01が置換基を有する場合の置換基と同様のものを挙げることができる。
【0167】
Rf01およびRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。Rf01およびRf02は、それぞれフッ素原子を表すことが好ましい。
【0168】
Rf01およびRf02が表すフッ素化アルキル基は、それぞれ独立に、鎖状であっても環状であってもよく、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。当該フッ素化アルキル基の炭素数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がフッ素原子により置換された基や、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がフッ素原子により置換された基が挙げられる。
また、Rf01およびRf02が表すフッ素化アルキル基は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素原子、水素原子以外の原子、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含有していてもよい。
なかでも、Rf01およびRf02が表すフッ素化アルキル基としては、直鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換された基(パーフルオロアルキル基)であることが好ましい。
【0169】
すなわち、(B1)成分におけるアニオン部が分岐や環状構造を含まない直鎖状の構造であることが好ましい。
【0170】
(B1)成分におけるアニオン部の具体例を以下に挙げる。式中、kは7~12の整数を表す。尚、(B1)成分におけるアニオン部は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0171】
【化28】
【0172】
【化29】
【0173】
【化30】
【0174】
【化31】
【0175】
[カチオン部:(Mm+1/m
前記式(b1)中、Mm+は、m価の有機カチオンを表す。
m+における有機カチオンとしては、オニウムカチオンが好ましく、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンがより好ましい。mは、1以上の整数である。
【0176】
好ましいカチオン部((Mm+1/m)として、下記の式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表される有機カチオンが挙げられる。
【0177】
【化32】
【0178】
[式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R207は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表し、R201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、R210は置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはSO-含有環式基であり、L201は-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。]
【0179】
201~R207におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207におけるアルキル基としては、鎖状または環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
201~R207におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
201~R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、アリールチオ基、下記式(ca-r-1)~(ca-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
置換基としてのアリールチオ基におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましい。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基が挙げられる。
【0180】
【化33】
【0181】
[式中、R’201はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、鎖状のアルキル基、または鎖状のアルケニル基である。]
【0182】
R’201が表す置換基を有していてもよい環式基としては、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
芳香族炭化水素基としては、芳香族炭化水素環、または2以上の芳香環を含む芳香族化合物から水素原子を1つ除いたアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基が挙げられ、アダマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。
【0183】
R’201が表す置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0184】
R’201が表す置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基としては、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0185】
R’201が表す、置換基を有していてもよい環式基または置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基としては、上記式(a1-r-2)で表される酸解離性基と同様のものも挙げられる。
【0186】
R’201が表す環式基、鎖状のアルキル基、または鎖状のアルケニル基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0187】
201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環、チオキサニウム環等が挙げられる。
【0188】
208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合相互に結合して環を形成してもよい。
【0189】
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状または環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
210における、置換基を有していてもよい-SO-含有環式基において、「-SO-含有環式基」とは、その環骨格中に-SO-を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、-SO-における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に-SO-を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。-SO-含有環式基は、単環式基であってもよく多環式基であってもよい。
-SO-含有環式基は、特に、その環骨格中に-O-SO-を含む環式基、すなわち-O-SO-中の-O-S-が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
210における、置換基を有していてもよい-SO-含有環式基としては、上記式(a5-r-1)で表される基が好ましい。
210が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、アリールチオ基等が挙げられる。
【0190】
式(ca-1)で表されるカチオンとしては、下記一般式(b3-1)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0191】
【化34】
【0192】
[一般式(b3-1)中、Rb201~Rb202は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Rb203は置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。Rb201~Rb203は相互に結合して一般式(b3-1)中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。]
【0193】
Rb201~Rb202が表す置換基を有していてもよいアリール基は、上記R201~R207としての置換基を有していてもよいアリール基と同義であり、好ましい例も同様である。
Rb203が表す置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基としては、上記R201~R207としての置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基と同義であり、好ましい例も同様である。
【0194】
一般式(b3-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-1-1)~(ca-1-67)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0195】
【化35】
【0196】
【化36】
【0197】
【化37】
【0198】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1~5の整数であり、g2は0~20の整数であり、g3は0~20の整数である。]
【0199】
【化38】
【0200】
[式中、R”201は水素原子または置換基であって、置換基としては前記R201~R207が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0201】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0202】
【化39】
【0203】
(B1)成分は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分中の(B1)成分の割合は、(B)成分の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、500~80質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
また、(B1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
(B1)成分の割合が好ましい下限値以上であると、ラフネス低減、真円性向上等のリソグラフィー特性がより向上する。一方、上限値以下であると、(B2)成分との配合バランスをとりやすくなり、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立しやすくなる。
【0204】
(第2の酸発生剤((B2)成分))
本実施形態において、第2の酸発生剤は、下記一般式(b2-1)で表される化合物(b2)を含む。
【0205】
【化40】
【0206】
[一般式(b2-1)中、Rf01およびRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
Wは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1以上のハロゲン化アルキル基を表す。
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。]
【0207】
一般式(b2-1)におけるRf01およびRf02としては、一般式(b1-1)におけるRf01およびRf02と同様のものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
【0208】
Wは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1以上のハロゲン化アルキル基を表し、ハロゲン原子または炭素数1以上のハロゲン化アルキル基を表すことが好ましく、炭素数1以上のハロゲン化アルキル基を表すことがより好ましい。
ハロゲン原子および炭素数1以上のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0209】
Wが表すハロゲン化アルキル基は、それぞれ独立に、鎖状であっても環状であってもよく、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。当該ハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~5がよりさらに好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がハロゲン原子により置換された基や、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基等の分岐鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子により置換された基が挙げられる。
【0210】
Wが表すハロゲン化アルキル基は、直鎖状のハロゲン化アルキル基が好ましく、直鎖状のフッ素化アルキル基がより好ましい。
また、Wが表すハロゲン化アルキル基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素原子、水素原子以外の原子、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含有していてもよいが、フッ素以外の置換基を有さないことが好ましい。
【0211】
本発明の実施形態において、一般式(b2-1)は、Rf01およびRf02が、それぞれフッ素原子を表し、Wは、フッ素原子または直鎖状の炭素数1~5のフッ素化アルキル基を表すことが好ましい。また、フッ素以外の置換基を有さないことが好ましい。すなわち、(B2)成分におけるアニオン部が分岐や環状構造を含まない直鎖状の構造であることが好ましい。
【0212】
本発明の実施形態においては、(B1)成分におけるアニオン部および(B2)成分におけるアニオン部がいずれも分岐や環状構造を含まない直鎖状の構造を有することにより、各々において分子内の回転の自由度がある程度高く、フレキシブルに移動可能となる。その結果、レジスト膜中での酸の拡散が適度に促進されることにより、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立しやすくなるため、更に好ましい。
【0213】
一般式(b2-1)におけるカチオン部((Mm+1/m)としては、上記一般式(b1-1)おけるカチオン部((Mm+1/m)と同様のものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
すなわち、本発明の実施形態に係るレジスト組成物は、一般式(b1-1)または(b2-1)におけるMm+が上記一般式(b3-1)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0214】
一般式(b2-1)で表される化合物(b2)は、下記式(b2-2)で表される化合物(b2’)であることが好ましい。
【0215】
【化41】
【0216】
[一般式(b2-2)中、Rf01およびRf02は、それぞれ独立に、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
Rf03およびRf04は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表す。
01は、水素原子、フッ素原子またはフッ素化メチル基を表す。
02は、0以上の整数を表し、
mは、1以上の整数を表し、Mm+はm価の有機カチオンを表す。
ただし、n02が、0を表す場合、W01はフッ素原子を表す。]
【0217】
一般式(b2-2)におけるRf01およびRf02としては、一般式(b2-1)におけるRf01およびRf02と同様のものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
【0218】
Rf03およびRf04は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはフッ素化アルキル基を表し、水素原子、またはフッ素原子を表すことが好ましい。また、Rf03およびRf04が共にフッ素原子を表す、またはRf03およびRf04の一方がフッ素原子を表し、もう一方が水素原子を表すことが好ましい。
【0219】
01は、水素原子、フッ素原子またはフッ素化メチル基を表し、フッ素原子またはフッ素化メチル基を表すことが好ましい。
【0220】
02は、0以上の整数を表し、0~20の整数が好ましく、0~10の整数が好ましく、0~5の整数であることがより好ましい。
【0221】
本発明の実施形態において、一般式(b2-2)中、Rf01およびRf02がそれぞれフッ素原子を表し、Rf03およびRf04が水素原子、またはフッ素原子を表し、n02が、0~5の整数を表し、W01がフッ素原子を表すことが好ましい。すなわち、上記したとおり、(b2)成分におけるアニオン部が分岐や環状構造を含まない直鎖状の構造であることが好ましい。
【0222】
一般式(b2-2)におけるにおけるカチオン部((Mm+1/m)としては、上記一般式(b1-1)おけるカチオン部((Mm+1/m)と同様のものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
【0223】
(B2)成分におけるアニオン部の具体例を以下に挙げる。式中、k2は0~5の整数を表す。尚、(B2)成分におけるアニオン部は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0224】
【化42】
【0225】
【化43】
【0226】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、(B2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(B2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
(B2)成分の割合が好ましい下限値以上であると、ラフネス低減、真円性向上等のリソグラフィー特性がより向上する。一方、上限値以下であると、(B1)成分との配合バランスをとりやすくなり、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立しやすくなる。
(B2)成分の含有量を上記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0227】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、酸発生剤成分(B)における、前記第1の酸発生剤((B1)成分)と前記第2の酸発生剤((B2)成分)との混合比率を示す、前記第1の酸発生剤/前記第2の酸発生剤で表される質量比が20/80~80/20であることが好ましい。
レジスト組成物における(B1)成分と(B2)成分の混合比率を上記の範囲とすることで、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立する効果がより得やすくなる。
【0228】
・(B3)成分について
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(B1)成分および(B2)成分以外の酸発生剤成分(以下「(B3)成分」という)を含有していてもよい。
(B3)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
【0229】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、(B3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(B3)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(B3)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、1~40質量部がより好ましい。
(B3)成分の含有量を上記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0230】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、酸発生剤成分(B)の含有量は、基材成分(A)100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
レジスト組成物における酸発生剤成分(B)の含有量を上記範囲とすることで、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立する効果がより得やすくなる。
【0231】
<任意成分>
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、上述した(A)成分および(B)成分以外の成分(任意成分)をさらに含有していてもよい。
かかる任意成分としては、例えば、以下に示す(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分などが挙げられる。
【0232】
≪(D)成分≫
本実施形態におけるレジスト組成物は、(A)成分および(B)成分に加えて、さらに、塩基成分(以下「(D)成分」という。)を含有していてもよい。(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分は、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)であってもよく、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)であってもよいが、(D1)成分であることが好ましい。
(D)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させることができる。
【0233】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1-1)で表される化合物(以下「(d1-1)成分」という。)、下記一般式(d1-2)で表される化合物(以下「(d1-2)成分」という。)および下記一般式(d1-3)で表される化合物(以下「(d1-3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1-1)~(d1-3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、レジスト膜の未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0234】
【化44】
【0235】
[式中、Rd~Rdは置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Ydは単結合または2価の連結基である。mは1以上の整数であって、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0236】
{(d1-1)成分}
・アニオン部
式(d1-1)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記R’201と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rdとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、ラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、またはこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、下記式(y-al-1)~(y-al-5)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
【0237】
【化45】
【0238】
[式中、V’101は、単結合又は炭素数1~5のアルキレン基であり、V’102は、炭素数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0239】
上記式中、V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素数1~30のアルキレン基であることが好ましい。V’102におけるアルキレン基としは、炭素数1~30のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がさらに好ましい。
【0240】
101としては、エステル結合を含む2価の連結基、又はエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記一般式(y-al-1)~(y-al-6)でそれぞれ表される連結基がより好ましい。
【0241】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビシクロオクタン骨格を含む多環構造(ビシクロオクタン骨格とこれ以外の環構造とからなる多環構造)が好適に挙げられる。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0242】
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子またはフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有していてもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
Rdとしては、直鎖状のアルキル基を構成する一部または全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが特に好ましい。
【0243】
以下に(d1-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0244】
【化46】
【0245】
・カチオン部
式(d1-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、前記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-67)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0246】
{(d1-2)成分}
・アニオン部
式(d1-2)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
但し、Rdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1-2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rdとしては、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rdの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1-1)のRdにおける炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0247】
以下に(d1-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0248】
【化47】
【0249】
・カチオン部
式(d1-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0250】
{(d1-3)成分}
・アニオン部
式(d1-3)中、Rdは置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、または鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rdのフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0251】
式(d1-3)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
なかでも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rdにおけるアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rdのアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rdにおけるアルコキシ基は、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0252】
Rdにおけるアルケニル基は、前記R’201におけるアルケニル基と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基が好ましい。これらの基はさらに置換基として、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0253】
Rdにおける環式基は、前記R’201における環式基と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、または、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rdが脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rdが芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0254】
式(d1-3)中、Ydは、単結合または2価の連結基である。
Ydにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
これらはそれぞれ、上記一般式(a2-1)中のYa21における2価の連結基についての説明のなかで挙げた、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
Ydとしては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基またはこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基またはエチレン基であることがさらに好ましい。
【0255】
以下に(d1-3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0256】
【化48】
【0257】
【化49】
【0258】
・カチオン部
式(d1-3)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0259】
(D1)成分は、上記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2.5~10質量部がさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性およびレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0260】
(D1)成分の製造方法:
前記の(d1-1)成分、(d1-2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1-3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012-0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0261】
・(D2)成分について
酸拡散制御剤成分としては、上記の(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有していてもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンまたは芳香族アミンが好ましく、芳香族アミンがより好ましい。
【0262】
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1~12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)または環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ-n-オクタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5~10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ-n-ペンチルアミンまたはトリ-n-オクチルアミンが特に好ましい。
【0263】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6~10のものが好ましく、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0264】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0265】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N-tert-ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0266】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0267】
≪(E)成分:有機カルボン酸並びにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物≫
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸並びにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
【0268】
(E)成分は、上記の中でも、有機カルボン酸が好ましく、芳香族カルボン酸がより好ましい。具体的には、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、サリチル酸がより好ましい。
【0269】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部がさらに好ましい。
【0270】
≪(F)成分:フッ素添加剤成分≫
本実施形態におけるレジスト組成物は、疎水性樹脂として、フッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という)を含有していてもよい。(F)成分は、レジスト膜に撥水性を付与するために使用され、(A)成分とは別の樹脂として用いられることでリソグラフィー特性を向上させる。
(F)成分としては、例えば、特開2010-002870号公報、特開2010-032994号公報、特開2010-277043号公報、特開2011-13569号公報、特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記一般式(f1-1)で表される構成単位(f11)または下記一般式(f1-2)で表される構成単位(f12)を有する重合体が挙げられる。
【0271】
下記一般式(f1-1)で表される構成単位(f11)を有する重合体としては、下記式(f1-1)で表される構成単位(f11)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f11)と前記構成単位(a1)との共重合体;該構成単位(f11)とアクリル酸またはメタクリル酸から誘導される構成単位と前記構成単位(a1)との共重合体であることが好ましい。ここで、該構成単位(f11)と共重合される前記構成単位(a1)としては、前記式(a1-r2-1)で表される酸解離性基を含む構成単位が好ましい。
【0272】
下記一般式(f1-2)で表される構成単位(f12)を有する重合体としては、下記一般式(f1-2)で表される構成単位(f12)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f12)と前記構成単位(a1)との共重合体等が挙げられる。その中でも該構成単位(f12)と前記構成単位(a1)との共重合体であることが好ましい。
【0273】
【化50】
【0274】
[式中、Rは前記と同様である。Rf102およびRf103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf102およびRf103は同じであっても異なっていてもよい。nfは0~5の整数であり、Rf101はフッ素原子を含む有機基である。Rf11~Rf12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のフッ素化アルキル基である。Rf13は、フッ素原子または炭素数1~4のフッ素化アルキル基である。Rf14は、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素数1~4の直鎖状のフッ素化アルキル基である。]
【0275】
一般式(f1-1)中、α位の炭素原子に結合したRは、前記と同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
一般式(f1-1)中、Rf102およびRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf102およびRf103の炭素数1~5のアルキル基としては、上記Rの炭素数1~5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf102およびRf103の炭素数1~5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。なかでもRf102およびRf103としては、水素原子、フッ素原子、または炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基が好ましい。
一般式(f1-1)中、nf1は1~5の整数であり、1~3の整数が好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0276】
一般式(f1-1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素数は1~20であることが好ましく、炭素数1~15であることがより好ましく、炭素数1~10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf101としては、炭素数1~6のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、-CH-CF、-CH-CF-CF、-CH(CF、-CH-CH-CF、-CH-CH-CF-CF-CF-CFがさらに好ましく、-CH-CFが特に好ましい。
【0277】
一般式(f1-2)中、α位の炭素原子に結合したRは、前記と同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
前記一般式(f1-2)中、Rf11~Rf12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のフッ素化アルキル基である。
Rf11~Rf12における炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基が好適なものとして挙げられ、エチル基が特に好ましい。
Rf11~Rf12における炭素数1~4のフッ素化アルキル基は、炭素数1~4のアルキル基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されている基である。当該フッ素化アルキル基において、フッ素原子で置換されていない状態のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよく、上記「Rf11~Rf12における炭素数1~4のアルキル基」と同様のものが挙げられる。
上記のなかでも、Rf11~Rf12は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、Rf11~Rf12の一方が水素原子でかつ他方が炭素数1~4のアルキル基であることが特に好ましい。
【0278】
前記一般式(f1-2)中、Rf13は、フッ素原子または炭素数1~4のフッ素化アルキル基である。
Rf13における炭素数1~4のフッ素化アルキル基は、上記「Rf11~Rf12における炭素数1~4のフッ素化アルキル基」と同様のものが挙げられ、炭素数1~3であることが好ましく、炭素数が1~2であることがより好ましい。
Rf13のフッ素化アルキル基においては、当該フッ素化アルキル基に含まれるフッ素原子と水素原子との合計数に対するフッ素原子の数の割合(フッ素化率(%))が、30~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましい。該フッ素化率が高いほど、レジスト膜の疎水性が高まる。
上記のなかでも、Rf13は、フッ素原子であることが好ましい。
【0279】
前記一般式(f1-2)中、Rf14は、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素数1~4の直鎖状のフッ素化アルキル基であり、炭素数1~4の直鎖状のアルキル基、炭素数1~4の直鎖状のフッ素化アルキル基であることが好ましい。
Rf14におけるアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
Rf14におけるフッ素化アルキル基として具体的には、例えば、-CH-CF、-CH-CH-CF、-CH-CF-CF、-CH-CF-CF-CFが好適なものとして挙げられ、その中でも-CH-CH-CFが特に好まし
い。
【0280】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5が最も好ましい。
【0281】
本実施形態におけるレジスト組成物において、(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.5~10質量部の割合で用いられる。
【0282】
≪(S)成分:有機溶剤成分≫
本実施形態におけるレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
本実施形態におけるレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
上記の中でも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、EL、シクロヘキサノンが好ましく、PGMEA、PGME、シクロヘキサノンがより好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELまたはシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:ELまたはシクロヘキサノンの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましく
は2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEAおよびELの中から選ばれる少なくとも1種と、γ-ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートの中から選ばれる少なくとも一種との混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0283】
本実施形態におけるレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0284】
本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、上述した(A)成分および(B)成分と、必要に応じて前記の任意成分と、を含有するものである。
例えば、(A)成分と、(B)成分と、(D)成分と、を含有するレジスト組成物が好適に挙げられる。さらに、(A)成分と、(B)成分と、(D)成分と、(F)成分と、を含有するレジスト組成物が好適に挙げられる。
【0285】
以上説明したように本発明の実施形態にかかるレジスト組成物は、上述した高分子化合物(A1)及び酸発生剤成分(B)を含む。レジスト組成物における酸発生剤成分(B)は、特定構造を有する化合物(b1)および化合物(b2)を含むことにより、各々において分子内の回転の自由度が高く、フレキシブルに移動可能となる。その結果、レジスト膜中での酸の拡散が促進されることにより、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立できる、と推測される。
【0286】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、上述した実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する方法である。
かかるレジストパターン形成方法の一実施形態としては、例えば以下のようにして行うレジストパターン形成方法が挙げられる。
【0287】
まず、上述した実施形態のレジスト組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは50~90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えば電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは50~90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0288】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0289】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極端紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0290】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよいが、液浸露光であることが好ましい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
液浸媒体としては、水が好ましく用いられる。
【0291】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤は、構造中にC-C(=O)-CまたはC-C(=O)-Hを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC-C(=O)-O-CまたはH-C(=O)-O-Cを含む有機溶剤である。アルコール系溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤である。「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は、構造中にC-O-Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中のアルコール系溶剤、エーテル系溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上記の中でも、極性溶剤が好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤等が好ましい。
【0292】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0293】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。
【0294】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系および/またはシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0295】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0296】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。
【0297】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、例えば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0298】
上述した実施形態のレジスト組成物、および、上述した実施形態のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子またはリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、200ppb以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
【0299】
以上説明した本発明の実施形態にかかるレジストパターン形成方法においては、上述した本発明の実施形態に係るレジスト組成物が用いられているため、レジストパターン形成における高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立することができる。
【実施例
【0300】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0301】
下記に示す構造単位を表1に示す組成比で含む高分子化合物(A1-1)~(A1-6)、(A2-1)および(A2-2)を合成した。
得られた高分子化合物について、13C-NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分散度(Mw/Mn)を表1に併記した。
【0302】
【化51】
【0303】
【表1】
【0304】
<レジスト組成物の調製>
(実施例1~15、比較例1~7)
表2に示す各成分を混合して溶剤:S-1に溶解し、各例のレジスト組成物をそれぞれ調製した。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート490質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテル325質量部との混合溶媒
【0305】
【表2】
【0306】
表2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。
A1-1~A1-6:上記の高分子化合物A1-1~A1-6。
A2-1~A2-2:上記の高分子化合物A1-2~A2-2。
B1-1~B1-3:下記化学式B1-1~B1-3で表される化合物からなる酸発生剤。
B2-1~B2-5:下記化学式B2-1~B2-5で表される化合物からなる酸発生剤。
B3-1~B3-2:下記化学式B3-1~B3-2で表される化合物からなる酸発生剤。
D-1~D-2:下記化学式D-1~D-2で表される化合物からなる酸拡散制御剤。
F-01:下記構造単位を含む疎水性樹脂F-1(組成比(モル比):l/m=80/20、Mw:25000、Mw/Mn:1.75)。
【0307】
【化52】
【0308】
【化53】
【0309】
【化54】
【0310】
<レジストパターンの形成>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(ブリューワサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚85nmの有機系反射防止膜を形成した。
【0311】
反射防止膜上にレジスト組成物を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚500nmのレジスト膜を形成した。
【0312】
ArF露光装置NSR-S308F[ニコン社製;NA(開口数)=0.75,Conventional,Sigma0.6]により、フォトマスク(6%ハーフトーン)を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。その後、100℃で60秒間のPEB処理を行った。
【0313】
次いで、23℃にて2.38質量%のTMAH水溶液(商品名:NMD-3、東京応化工業株式会社製)で15秒間のアルカリ現像を行い、その後、純水を用いて15秒間の水リンスを行い、振り切り乾燥を行った。その結果、いずれの例においてもライン寸法140nm、ピッチ280nm(マスクサイズ140nm)のラインアンドスペースパターン(以下LSパターンという)がそれぞれ形成された。
【0314】
[感度(最適露光量)の評価]
測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:CG5000、日立ハイテクノロジーズ社製)により測定を行った。上記<レジストパターンの形成>におけるラインサイズを観察し、ライン寸法140nm、ピッチ240nmのLSパターンが形成される最適露光量を感度(mJ/cm)として表2に示した。
【0315】
[焦点深度マージン(DOFマージン)の評価]
上記<レジストパターンの形成>により形成されたLSパターンにおいて、測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧500V、商品名:CG5000、日立ハイテクノロジーズ社製)により、焦点深度(DOF)を変化させていった際のライン幅を測定し、そのライン寸法がセンター値140nmから±10%の範囲に収まるDOFをDOFマージンとしてカウントした。その結果を表2に示す。この値が大きいほど焦点深度の変化に対する寸法安定性が高いことを示す。
【0316】
[パターン形状の評価]
上記<レジストパターンの形成>で形成されたLSパターンの断面形状を、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加圧電圧8kV、商品名:SU-8000、日立ハイテクノロジー社製)により観察し、レジストパターン上部の線幅(Lt)と中間の線幅(Lm)を測定した。「Lt/Lm」の値を、「形状」として表2に示した。断面形状におけるLt/Lmの値が1に近いほど矩形性が高く、良いパターン形状であることを示す。
【0317】
表2に示す結果から、本発明を適用した実施例のレジスト組成物によれば、レジストパターンの形成において高感度化と、良好なレジストパターン形状と、優れたDOFマージンとを両立したレジストパターンを形成できることが確認できた。