(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】CMPにおける温度及びスラリ流量の制御
(51)【国際特許分類】
B24B 37/015 20120101AFI20240806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240806BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20240806BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B24B37/015
H01L21/304 622R
B24B49/14
B24B55/02 B
H01L21/304 621D
(21)【出願番号】P 2022544269
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2021039007
(87)【国際公開番号】W WO2022005884
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ハオション
(72)【発明者】
【氏名】タン, チエンショー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ブライアン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】シェン, シーハル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ショウ-サン
(72)【発明者】
【氏名】サウンダララジャン, ハリ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232366(JP,A)
【文献】特開2018-030181(JP,A)
【文献】特表2002-540611(JP,A)
【文献】特開2013-022664(JP,A)
【文献】特開平10-156708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/015
H01L 21/304
B24B 49/14
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテン、
前記研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、
研磨液を前記研磨パッド上に供給するためのポートと、前記ポートへの前記研磨液の流量を制御するための、前記ポートと研磨液供給部との間のフローラインにおける液体流コントローラとを含む、研磨液供給システム、
液体源から前記研磨液以外の加熱流体又は冷却流体を前記研磨パッド上に供給するための少なくとも1つの開口を有する、前記プラテン上に延在するアームと、前記少なくとも1つの開口と前記液体源とを制御可能に接続及び接続解除するための、前記少なくとも1つの開口と前記液体源との間の流体ラインにおけるバルブとを含む温度制御システム、並びに
前記液体流コントローラ及び前記バルブに連結された制御システム、を備え、前記制御システムが、
ベースライン除去速度値を取得することと、
ベースライン温度値及びベースライン研磨液流量値を取得することと、
除去速度を研磨液流量及び温度に関連付ける関数を保存することと、
結果として得られる除去速度値が前記ベースライン除去速度値と等しくなるか又はそれを上回るように、前記関数を使用して、減少した研磨液流量値及び調整された温度値を決定することと、
前記減少した研磨液流量値で前記研磨液を供給するために、前記液体流コントローラを制御し、研磨処理温度が前記調整された温度値に達するように、前記加熱流体又は前記冷却流体の流れを制御するために、前記バルブを制御することと、
前記関数を使用して、修正された温度
での前記ベースライン研磨液流量値に対する修正除去速度を最大化するように、前記修正された温度を決定することと
、
前記ベースライン温度値を前記修正された温度まで上昇させることと
、
を行うように構成された、
化学機械研磨システム。
【請求項2】
前記研磨パッドの温度を測定するように位置付けされた温度センサを備え、前記制御システムが、温度測定値を受信して、前記調整された温度値を達成するように前記加熱流体又は前記冷却流体の流量を制御するように構成されている、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項3】
前記制御システムが、減少した研磨流量を決定することと、前記関数に基づいて、前記減少した研磨流量から生じる除去速度の低下を計算することと、前記関数に基づいて最小温度変化を計算して、前記除去速度の低下を埋め合わせすることとを行うように構成されている、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項4】
前記制御システムが、除去速度の低下率を計算することによって、前記除去速度の低下を計算するように構成されている、請求項3に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項5】
前記制御システムが、前記修正された温度での前記ベースライン研磨液流量値に対する前記除去速度の増加を最大化することの後に、結果として生じた除去速度の低下が、前記修正された温度から生じる前記除去速度の増加を超えないように、前記関数に基づいて、最大流量減少を計算するようにさらに構成されている、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項6】
前記制御システムが、除去速度の増加率を計算することによって、前記除去速度の増加を計算するように構成されている、請求項5に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項7】
前記関数が、温度の上昇と共に除去速度が単調に増加する温度範囲を含む、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項8】
前記関数が、温度の上昇と共に除去速度が単調に低下する温度範囲を含む、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項9】
前記関数が、ルックアップテーブルに保存された値を含む、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項10】
前記制御システムが、前記ルックアップテーブルの前記値間の線形補間によって除去速度の変化を計算するように構成されている、請求項9に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項11】
温度制御システムが、加熱された流体を前記研磨パッド上に供給するように構成された加熱システムを備えている、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項12】
前記加熱された流体が蒸気を含む、請求項11に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項13】
温度制御システムが、冷却剤を前記研磨パッド上に供給するように構成された冷却システムを備えている、請求項1に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項14】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテン、
前記研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、
研磨液を前記研磨パッド上に供給するためのポートと、前記ポートへの前記研磨液の流量を制御するための、前記ポートと研磨液供給部との間のフローラインにおける液体流コントローラとを含む、研磨液供給システム、
液体源から前記研磨液以外の加熱流体又は冷却流体を前記研磨パッド上に供給するための少なくとも1つの開口を有する、前記プラテン上に延在するアームと、前記少なくとも1つの開口と前記液体源とを制御可能に接続及び接続解除するための、前記少なくとも1つの開口と前記液体源との間の流体ラインにおけるバルブとを含む温度制御システムであって、前記少なくとも1つの開口が、
収縮-拡散ノズルを備え、前記
収縮-拡散ノズルは、前記加熱流体又は冷却流体が前記
収縮-拡散ノズルを通過するときに前記加熱流体又は冷却流体の温度を低下させるように構成されている、温度制御システム、並びに
前記液体流コントローラ及び前記バルブに連結された制御システム、を備え、前記制御システムが、
ベースライン除去速度値を取得することと、
ベースライン温度値及びベースライン研磨液流量値を取得することと、
除去速度を研磨液流量及び温度に関連付ける関数を保存することと、
結果として得られる除去速度値が前記ベースライン除去速度値と等しくなるか又はそれを上回るように、前記関数を使用して、減少した研磨液流量値及び調整された温度値を決定することと、
前記減少した研磨液流量値で前記研磨液を供給するために、前記液体流コントローラを制御し、研磨処理温度が前記調整された温度値に達するように、前記加熱流体又は前記冷却流体の流れを制御するために、前記バルブを制御することと、
を行うように構成された、
化学機械研磨システム。
【請求項15】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテン、
前記研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッド、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータ、
研磨液を前記研磨パッド上に供給するためのポートと、前記ポートへの前記研磨液の流量を制御するための、前記ポートと研磨液供給部との間のフローラインにおける液体流コントローラとを含む、研磨液供給システム、
前記研磨パッドの温度を制御するための温度制御システム、及び
前記液体流コントローラに連結された制御システム、を備え、前記制御システムが、
ベースライン除去速度値を取得することと、
ベースライン温度値及びベースライン研磨液流量値を取得することと、
除去速度を研磨液流量及び温度に関連付ける関数を保存することと、
結果として得られる除去速度値が前記ベースライン除去速度値と等しくなるか又はそれを上回るように、前記関数を使用して、減少した研磨液流量値及び調整された温度値を決定することと、
前記減少した研磨液流量値で前記研磨液を供給するために、前記液体流コントローラを制御し、研磨処理温度が前記調整された温度値に達するように前記温度制御システムを制御することと、
前記関数を使用して、修正された温度
での前記ベースライン研磨液流量値に対する修正除去速度を最大化するように、前記修正された温度を決定することと
、
前記ベースライン温度値を前記修正された温度まで上昇させることと
、
を行うように構成された、
化学機械研磨システム。
【請求項16】
前記温度制御システムが、加熱システムを備えている、請求項15に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項17】
前記加熱システムが、前記プラテン内の抵抗加熱器、前記研磨パッド上へ熱を誘導するように位置付けされた加熱ランプ、又は前記研磨液以外の加熱された流体を前記研磨パッド上に供給するためのディスペンサのうちの1つ又は複数を備えている、請求項16に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項18】
前記温度制御システムが、冷却システムを備えている、請求項15に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項19】
前記冷却システムが、前記プラテンを貫通する冷却剤チャネル、前記プラテン上の熱電冷却器、又は前記研磨液以外の冷却剤流体を前記研磨パッド上に供給するためのディスペンサのうちの1つ又は複数を備えている、請求項18に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項20】
前記研磨パッドの温度を測定するように位置付けされた温度センサを備え、前記制御システムが、温度測定値を受信し、前記温度制御システムを制御して、前記調整された温度値を達成するように構成されている、請求項15に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項21】
前記制御システムが、減少した研磨流量を決定することと、前記関数に基づいて、前記減少した研磨流量から生じる除去速度の低下を計算することと、前記関数に基づいて最小温度変化を計算して、前記除去速度の低下を埋め合わせすることとを行うように構成されている、請求項15に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項22】
前記制御システムが、修正された温度を決定することと、前記関数に基づいて、前記修正された温度から生じる除去速度の増加を計算することと、結果として生じた除去速度の低下が、前記修正された温度から生じる前記除去速度の増加を超えないように、前記関数に基づいて、最大流量減少を計算することとを行うように構成されている、請求項15に記載の
化学機械研磨システム。
【請求項23】
命令を有する非一過性のコンピュータ可読媒体を備えたコンピュータプログラム製品であって、前記命令は、1つ又は複数のプロセッサに、
研磨処理のためのベースライン除去速度値を取得することと、
前記研磨処理のためのベースライン温度値及びベースライン研磨液流量値を取得することと、
除去速度を研磨液流量及び温度に関連付ける関数を保存することと、
結果として得られる除去速度値が前記ベースライン除去速度値と等しくなるか又はそれを上回るように、前記関数を使用して、減少した研磨液流量値及び調整された温度値を決定することと、
前記減少した研磨液流量値で研磨液を研磨パッド上に供給するために、液体流コントローラを制御し、研磨処理温度が前記調整された温度値に達するように温度制御システムを制御することと、
前記関数を使用して、修正された温度
での前記ベースライン研磨液流量値に対する修正除去速度を最大化するように、前記修正された温度を決定することと
、
前記ベースライン温度値を前記修正された温度まで上昇させることと
、
を実行させる、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)における研磨パッドの温度及び研磨液(例えば、スラリ)の流量の複合制御に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、半導体ウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を連続して堆積させることによって、基板上に形成される。種々の製造プロセスでは、基板上の層の平坦化が必要とされる。例えば、ある製造工程には、非平坦表面の上に充填層を堆積させ、その充填層を、パターニングされた層の上面が露出するか又は所望の厚さの層が残るまで、研磨することが伴う。平坦化は、後続のフォトリソグラフィ工程を可能にするためにも使用可能である。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、認められた平坦化方法のうちの1つである。この平坦化方法では、通常、キャリアヘッド上に基板を設置することが必要になる。基板の露出表面は、通常、回転式研磨パッドに対して配置される。キャリアヘッドは、基板に対して制御可能な荷重を加え、基板を研磨パッドに押し付ける。通常、研磨粒子を有するスラリなどの研磨液が、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
研磨処理における除去速度は、温度に対して敏感であり得る。研磨中に温度を制御するために、様々な技法が提案されている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、化学機械研磨システムは、研磨パッドを支持するためのプラテンと、研磨パッドと接触するように基板を保持するためのキャリアヘッドと、プラテンとキャリアヘッドとの間の相対的運動を発生させるモータと、研磨液を研磨パッド上に供給するためのポート、及びポートへの研磨液の流量を制御するための、ポートと研磨液供給部との間のフローラインにおける液体流コントローラを含む、研磨液供給システムと、研磨パッドの温度を制御するための温度制御システムと、液体流コントローラ及びバルブに連結された制御システムとを含む。制御システムは、ベースライン除去速度値を取得することと、ベースライン温度値及びベースライン研磨液流量値を取得することと、除去速度を研磨液流量及び温度に関連付ける関数を保存することと、結果として得られる除去速度値がベースライン除去速度値と等しくなるか又はそれを上回るように、前記関数を使用して、減少した研磨液流量値及び調整された温度値を決定することと、減少した研磨液流量値で研磨液を供給するために、液体流コントローラを制御し、研磨処理温度が調整された温度値に達するように温度制御システムを制御することとを行うように構成されている。
【0006】
諸実装態様は、以下のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0007】
温度制御システムは、加熱システム、例えば、プラテン内の抵抗加熱器、研磨パッド上へ熱を誘導するように位置付けされた加熱ランプ、又は研磨液以外の加熱された流体を研磨パッド上に供給するためのディスペンサのうちの1つ又は複数であってもよい。温度制御システムは、冷却システム、例えば、プラテンを貫通する冷却剤チャネル、プラテン上の熱電冷却器、又は研磨液以外の冷却剤流体を研磨パッド上に供給するためのディスペンサのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0008】
可能性のある利点には、以下のうちの1つ又は複数が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0009】
研磨パッドへの研磨液(例えば、スラリ)の流量は、除去速度を維持する間に減少させることができる。研磨液の使用が少ないほど、消耗品のコスト及びオペレーションの全体的コストが削減される。
【0010】
1つ又は複数の実装形態の詳細は、添付図面及び以下の記載において明記される。その他の態様、特徴、及び利点は、これらの記載及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】研磨装置の研磨ステーションの一例の概略断面図である。
【
図1B】化学機械研磨装置の例示的な研磨ステーションの概略上面図である。
【
図2】除去速度を低速度及び温度の関数として示す実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
化学機械研磨システムの総所有コストは、研磨ツールの初期資本コストと、研磨処理で使用される消耗品(例えば、研磨液)のコストとの両方に依存する。特に、CMPに使用される研磨液(例えば、研磨スラリ)は、全体のコストに特に大部分を占める場合がある。しかしながら、研磨液の流量を単に恣意的に減少させることはできない。なせなら、それは除去速度を低下させ、スループットを低下させる場合があるからだ。例えば、幾つかの金属研磨処理では、スラリ流量を30%減少させると、結果的に除去速度が10%低下し、ひいてはスループットが約10%低下する。
【0013】
化学機械研磨は、基板、研磨液、及び研磨パッドの間の界面における機械的研磨とケミカルエッチングとの組み合わせによって作用する。化学機械研磨は部分的に化学反応に依存するので、研磨処理は温度に依存する処理である。したがって、CMPプロセスにおけるほとんどの薄膜材料の除去速度は、処理温度に関連する。
【0014】
所望のスループットを維持しながらも研磨液の消費を低減するために使用することができる技法は、研磨液の流量の減少に起因する除去速度の低下を相殺するか又は埋め合わせように、研磨処理の温度を修正することである。
【0015】
図1A及び
図1Bは、化学機械研磨システムの研磨ステーション20の一例を示す。研磨ステーション20は、研磨パッド30が置かれる回転可能な円盤形状のプラテン24を含む。プラテン24は、軸25の周りを回転するように動作可能である(
図1Bの矢印A参照)。例えば、モータ22は、プラテン24を回転させるために駆動シャフト28を回すことができる。研磨パッド30は、外側研磨層34及びより柔らかいバッキング層32を備えた2層式研磨パッドであり得る。
【0016】
研磨ステーション20は、ポート54を介して研磨パッド30上に研磨スラリなどの研磨液52を供給する研磨液供給システム50を含み得る。研磨液供給システム50は、プラテン24の上に延在するようにベース58によって支持されたアーム56を含み得る。ポート54は、アーム56の端部にあってもよい。ポート54は、液体流コントローラ60を介して、研磨液供給部62(例えば、研磨液を保持するリザーバ又はタンク)に連結し得る。研磨液は、研磨スラリであり得る。
【0017】
キャリアヘッド70は、基板10を研磨パッド30に対して保持するように動作可能である。キャリアヘッド70は、支持構造体72(例えば、カルーセル又はトラック)から吊り下げられ、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に接続され、これにより、キャリアヘッド70は軸71の周りで回転することができる。あるいは、キャリアヘッド70は、トラックに沿った移動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、例えば、カルーセル上のスライダ上で、側方に振動することができる。
【0018】
キャリアヘッド70は、基板10の裏側に接触する基板装着面を有する可撓性膜80、及び基板10の種々のゾーン(例えば、種々の径方向ゾーン)に種々の圧力を加える複数の加圧可能チャンバ82を含み得る。キャリアヘッド70は、基板を保持する保持リング84を含み得る。
【0019】
プラテンは、動作中、その中心軸25の周りを回転し、キャリアヘッドは、その中心軸71の周りを回転し(
図1Bの矢印B参照)、研磨パッド30の上面にわたって側方に移動する(
図1Bの矢印C参照)。
【0020】
研磨ステーション20は、パッドコンディショナ90をさらに含み得、パッドコンディショナ90では、コンディショナディスク92がコンディショナアーム94の端部においてコンディショナヘッド93によって保持されている。コンディショナディスク92は、研磨パッド30の表面粗さを維持するために使用することができる。
【0021】
幾つかの実装形態では、研磨ステーション20は、研磨ステーション内の温度、又は研磨ステーションの構成要素若しくは研磨ステーション内の構成要素の温度(例えば、研磨パッド上の研磨パッド30及び/又はスラリ38の温度)をモニタリングするための温度センサ64を含む。例えば、温度センサ64は、研磨パッド30の上方に位置付けされ、かつ研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を測定するように構成された赤外線(IR)センサ(例えば、IRカメラ)であってもよい。特に、温度センサ64は、半径方向の温度プロファイルを生成するために、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントで温度を測定するように構成され得る。例えば、IRカメラは、研磨パッド30の半径に跨がる視野を有し得る。
【0022】
幾つかの実装形態では、温度センサは、非接触型センサではなく接触型センサである。例えば、温度センサ64は、プラテン24の上又はその中に位置付けされた熱電対又はIR温度計であってもよい。さらに、温度センサ64は、研磨パッドと直接接触することができる。
【0023】
幾つかの実装形態では、研磨パッド30の半径に沿った複数のポイントにおいて温度を提供するために、研磨パッド30にわたって種々の半径方向位置に複数の温度センサを離間させてもよい。この技法は、IRカメラの代わりに、又はIRカメラに加えて使用することができる。
【0024】
図1Aでは、温度センサ64は、研磨パッド30の、及び/又はパッド30上のスラリ38の温度をモニタリングするよう位置付けされているように示されているが、基板10の温度を測定するためにキャリアヘッド70の内部に位置付けされてもよい。温度センサ64は、基板10の半導体ウエハと直接接触してもよい(すなわち、接触型センサであってもよい)。幾つかの実装形態では、例えば、研磨ステーションの種々の構成要素又は研磨ステーション内の種々の構成要素の温度を測定するために、複数の温度センサが研磨ステーション22内に含まれる。
【0025】
研磨システム20は、研磨パッド30及び/又は研磨パッド上のスラリ38の温度を制御するための温度制御システム100をさらに含む。温度制御システム100は、温度制御された媒体を研磨パッド30の研磨表面36(又は研磨パッド上に既に存在する研磨液)上に供給することによって動作する。温度制御システムは、加熱システム102及び/又は冷却システム104であり得る。加熱システム102は、高温流体、例えば、熱湯又は蒸気を供給することによって動作する。冷却システム102は、冷却剤、例えば、冷水又は空気を供給することによって動作する。
【0026】
媒体は、例えば、供給アーム上の1つ又は複数のノズルによって設けられた孔又はスロットなどの開孔を通流することによって、供給され得る。開孔は、加熱媒体の供給源に接続されたマニホールドによって設けることができる。
【0027】
例示的な加熱システム102は、研磨パッド30の端部から、研磨パッドの中心まで、又は少なくともその近く(例えば、研磨パッドの全半径の5%以内)まで、プラテン24及び研磨パッド30の上を延在するアーム110を含む。アーム110はベース112によって支持することができ、ベース112は、プラテン24と同じフレーム40上で支持され得る。ベース112は、1つ又は複数のアクチュエータ、例えば、アーム110を上昇又は下降させるための線形アクチュエータ、及び/又は、プラテン24の上でアーム110を側方に揺動させるための回転式アクチュエータを含み得る。アーム110は、他のハードウェア構成要素(例えば、研磨ヘッド70、パッドコンディショニングディスク92、研磨液供給アーム56、及び冷却剤供給アーム130)との衝突を回避するように配置される。
【0028】
アーム110の底面には、複数の開口114が形成されている。各開口部114は、加熱流体、例えば、ガス又は蒸気、例えば、スチームを研磨パッド30上に誘導するように構成されている。開口は、加熱流体をスプレー118状に研磨パッド30に誘導するノズル116であり得る。
【0029】
様々な開口114は、研磨パッド30上の種々の径方向ゾーン上に加熱流体を誘導することができる。互いに隣接する径方向ゾーンは重なり合うことができる。あるいは、開口1144のうちの幾つかは、当該開口からのスプレーの中心軸が研磨面36に対して斜角になるように配向することができる。加熱流体は、プラテン24の回転によって引き起こされる衝突領域において研磨パッド30の運動方向と反対の方向に水平方向成分を有するように、開口141のうちの1つ又は複数から誘導され得る。
【0030】
図1Bは、開口114が等間隔で離隔されていることを示しているが、これは必須ではない。ノズル116は、半径方向、角度方向、又はその両方に不均一に分配されてもよい。例えば、開口114は、研磨パッド30の中心に向かってより密にクラスタ化されてもよい。別の例として、開口114は、スラリ供給アーム39によって研磨液39が研磨パッド30に供給される半径に対応する半径においてより密にクラスタ化され得る。さらに、
図1Bは9つの開口部を示しているが、開口の数がより多くてもよいし、又はより少なくてもよい。
【0031】
開口114が研磨パッド30から間隙によって分離されるように、アーム110をベース112によって支持することができる。この間隙は、0.5から5mmであり得る。特に、加熱流体が研磨パッドに到達する前に流体の熱が著しく消散しないように、間隙を選択することができる。例えば、開口から放出された蒸気が研磨パッドに到達する前に凝縮しないように、間隙を選択することができる。
【0032】
加熱システム104は、高温流体の供給源120を含むことができ、供給源120は、制御可能なバルブ122を貫通する流体通路によってアーム110に接続することができる。供給源120は、蒸気発生器(例えば、水を沸騰させて蒸気ガスを発生させる容器)であり得る。通路は、中実体を通るチューブ、パイプ、又はチャネルのうちの1つ又は複数によって設けられ得る。
【0033】
加熱流体を別の気体(例えば、空気)若しくは液体(例えば、加熱水)と混合させることができ、又は加熱流体は実質的に純粋な蒸気であってもよい。幾つかの実装形態では、他の化学物質が加熱流体に加えられる。
【0034】
蒸気が使用されると仮定すると、(例えば、液体源120内で)蒸気が発生した場合、蒸気の温度は90から200℃であってもよい。例えば、通過中の熱損失のために、蒸気が開口116を通して分配される場合、蒸気の温度は90~150℃であり得る。幾つかの実装態様では、蒸気は、70から100℃(例えば、80から90℃)の温度で開口116によって供給される。幾つかの実装形態では、ノズルによって供給される蒸気は、過熱される(すなわち、沸点を超える温度となる)。
【0035】
研磨システム20は、冷却システム104をさらに含み得る。冷却システム104は、上述の加熱システム102と同様に構成することができ、アーム130がベース132によって支持され、開口134、供給源140、及び供給源140を制御可能なバルブ142を介してアームに接続する流体通路を有する。しかしながら、供給源140は、冷却流体の供給源であり、冷却システム104は、例えばスプレー138状に冷却流体を研磨パッド30上に供給する。
【0036】
冷却流体は、液体(例えば、20℃以下の水)、20℃以下の気体、又は液体と気体との混合物であってもよい。例えば、冷却流体は、エアロゾル化された水滴を有する空気であり得る。開口は、ノズルによって設けることができ、ノズルは、冷却流体がノズルを通流することによってさらに冷却されるように、収縮-拡散ノズルであり得る。幾つかの実装形態では、液体成分は、ノズルを通した温度降下によって固化される。例えば、冷却液は、研磨パッドに噴霧されるときに氷結晶を含み得る。
【0037】
研磨システムは、高圧リンスシステム、例えば、リンス液を研磨パッド上に噴霧するノズルを有するアーム、及び研磨パッド30にわたって研磨液38を均一に分配するワイパーブレード又はワイパー体を含み得る。
【0038】
研磨システム20は、様々な構成要素(例えば、研磨液供給システム50及び温度制御システム100)の動作を制御するためのコントローラ200をさらに含む。コントローラ200は、温度センサ64から温度測定値を受信するように構成され得る。コントローラ200は、測定された温度を目標温度と比較し、バルブ122及び/又は142を制御して、目標温度を達成するように、研磨パッド30への加熱流体及び/又は冷却剤の流量を制御することができる。
【0039】
研磨液の消費を低減しながら、所望の除去速度を達成するために、研磨液の所望の温度及び流量を共に設定することができる。
【0040】
適切な温度を判断するため、除去速度を研磨液の流量及び温度に関連付けるデータが取得される。例えば、1つ又は複数のテスト基板を様々な研磨液の流量及び温度で研磨することができ、各条件のペアでの除去速度が(他の研磨パラメータを一定に保持しつつ)測定される。このデータをルックアップテーブル(LUT)に保存することができ、除去速度は、流量(例えば、列)と温度(例えば、行)の両方の関数である。
【0041】
図2は、テスト基板の研磨からの実験結果を示す。グラフ線202によって接続された点は、温度制御システムによって温度が調節されず、(摩擦によって発生した熱によって)約40から50℃の温度に達した場合、テスト基板の金属層の研磨中に幾つかのスラリ流量で測定された除去速度を示す。グラフ線204によって接続された点は、温度が約65℃になるように温度制御システムによって調節された場合、テスト基板の金属層の研磨中に様々なスラリ流量で測定された除去速度を示す。一例として、250cc/分の流量速度で、温度を調節して65℃まで上昇させると、除去速度は約7200Å/分から約8500Å/分に増加した。
【0042】
破線208により示されるように、研磨処理が約45℃で行われ、流量速度が350cc/分であった場合、研磨処理の温度を65℃まで上昇させると、同一の除去速度を維持しつつ、流量速度を200cc/分に減少させることが可能となる(すなわち、スラリの消費量の約43%減少させる)。
【0043】
図2は、2つの温度と3つの流量のみを示しているが、より多くの数の温度及び/又は流量を試験して、除去速度を流量及び温度に関連付けるデータを提供することができる。このデータは、関数に変換されるか、又は関数を提供する。この関数では、除去速度が、2つの変数、すなわち、温度及び流量の関数である。例えば、このデータは、コントローラのLUT内に維持することができ、3つの値(例えば、温度及び流量、又は温度及び除去速度、又は流量及び除去速度)のうちの2つを与えられる。コントローラは、最も近いデータ点同士の間で線形補間を実行して、第3の値を計算することができる。あるいは、関数(例えば、多変数多項式)をデータに適合させることができる。
【0044】
概して、化学反応の速度は温度と共に増加するので、多くの研磨工程において除去速度は温度と共に増加する。例えば、典型的な金属研磨処理では、除去速度は温度と共に増加する。したがって、コントローラに保存された関数は、温度が上昇するにつれて除去速度が増加する(例えば、単調に増加する)範囲を含み得る。したがって、温度と共に増加する除去速度を利用する、以下に記載される技法は、金属層(例えば、銅、タングステン、コバルト等)の研磨に使用することができる。その一方で、温度と共に除去速度が減少する研磨処理(例えば、一部の酸化物材料の研磨)がある。したがって、コントローラに保存された関数は、温度が上昇するにつれて除去速度が減少する(例えば、単調に減少する)範囲を含み得る。したがって、温度と共に減少する除去速度を利用する、以下に記載される技法は、酸化物層(例えば、酸化ケイ素)の研磨に使用することができる。
【0045】
図1A及び1Bに戻ると、制御システム200は、研磨レシピを保存又は受信することができる。研磨レシピは、ベースライン除去速度、ベースライン温度、ベースライン研磨液流量、及びベースライン研磨時間のうちの1つ又は複数を表すデータを含む。通常動作モードでは、制御アルゴリズムは、研磨システムが研磨工程全体にわたってベースライン温度及びベースライン流量で動作するように、機械制御パラメータを設定することができる。例えば、制御システム200は、温度センサからのフィードバックを使用して、バルブ122又は142を制御し、ベースライン温度を達成するように、研磨パッドへの加熱流体又は冷却流体の供給速度を制御することができる。同様に、制御システム200は、ベースライン流量で研磨液を供給するように、液体流コントローラ60を制御することができる。必要に応じて、制御システム200は、ベースライン研磨速度及び/又はベースライン研磨時間を達成するために、他の機械パラメータ(例えば、キャリアヘッドによって加えられる圧力)を修正することができる。
【0046】
しかしながら、制御システム200は、研磨液流量がベースライン流量から減少する研磨工程の少なくとも一部を選択するように構成されてもよいが、結果として発生する除去速度がベースライン除去速度と等しい値を維持するか、又はベースライン除去速度より増加するように、温度を変更することになる。幾つかの実装形態では、研磨工程の一部は、バルク研磨工程、すなわち、下位の層の露出の前段階に実質的に対応する。幾つかの実装形態では、選択された部分は、研磨の開始後の設定点(予想総研磨時間の設定時間又は設定割合のいずれか)で開始する。あるいは、選択された部分は、研磨工程が開始するときに開始してもよい。幾つかの実装形態では、選択された部分は、予想される研磨終点の前の設定点(予想総研磨時間の設定時間又は設定割合のいずれか)で終了する。予想される終点の決定には、以下に説明する調整された研磨速度及び研磨時間が考慮されることがある。あるいは、選択された部分は、例えば、時間によって、又はインシトゥモニタリングシステムに基づく終点検出によって決定される、工程の終了まで延長してもよい。
【0047】
修正された温度及び流量を決定するために、制御システム200は、修正された温度TCONTROLを選択することができる。特に、上述の多変数関数を使用して、コントローラ200は、修正温度TMODを見つけることができる。修正温度TMODは、現在のベースライン流量FR0において、除去速度をベースライン除去速度RR0から修正除去速度RRT-MODへ増加させる。例えば、コントローラは、ベースライン流量FR0に対する除去速度の最大化を試みることができる。これには、様々な制約(例えば、オペレータの安全性、又は温度制御システムの温度範囲)があり得る。コントローラは、修正された温度TCONTROLから発生する除去速度の増加を計算することができる。除去速度の増加は、1から100%の範囲であり得る。
【0048】
次いで、制御システム200は、結果として生じる除去速度の低下が、修正された温度から生じる除去速度の増加を超えないように、最大流量減少を計算することができる。上述の多変数関数を使用して、制御システムは、結果として得られる除去RRT,FR-MODがベースライン除去速度RR0と等しくなるか又はそれを上回る減少した研磨液流量FRT-MODを見つけることができる。研磨液流量の減少は、1から99%(例えば、15から60%)の範囲であり得る。
【0049】
同じ目標量の層を除去するために、総ベースライン研磨時間を、例えば、TMOD=T0*RR0/RRT-MOD(研磨工程全体に温度制御が適用されると仮定)に調整することができる。
【0050】
温度制御されたCMPプロセスにおける総スラリ消費量(SCMOD)は、FRT-MOD*TMODであり、これは、ベースラインスラリ消費量SC0=FR0*T0よりも低い。温度制御されたCMPプロセスによってもたらされる総スラリ節約の割合は、SCMOD/SC0である。
【0051】
場合によっては、温度制御されたCMPプロセスの除去速度は、(i)温度制御されたプロセスにおける総スラリ消費量が依然としてベースラインスラリ消費量よりも低く、かつ(ii)CMPツール全体のスループットが悪影響を受けないという条件で、ベースライン除去速度よりも低くすることができる。
【0052】
修正された温度及び流量を決定するための代替的なアプローチとして、制御システムは、減少した研磨流量を決定することと、第2の関数に基づいて、減少した研磨流量から生じる除去速度の低下を計算することと、第1の関数に基づいて最小温度変化を計算して、除去速度の低下を埋め合わせすることとを行うことができる。
【0053】
制御システム200及びその機能的動作は、デジタル電子回路、有形に具現化されたコンピュータソフトウェア若しくはファームウェア、コンピュータハードウェア、又はこれらのうちの1つ若しくは複数の組合せにおいて実装することができる。コンピュータソフトウェアは、1つ又は複数のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置のプロセッサによる実行のために、又はデータ処理装置のプロセッサの動作を制御するために、有形の非一過性の記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールとして実装することができる。電子回路及びデータ処理装置は、汎用のプログラム可能な、プログラム可能なデジタルプロセッサ、及び/又は複数のデジタルプロセッサ若しくはコンピュータを含むことができ、かつ、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)であってもよい。
【0054】
制御システムが特定の動作又はアクションを実行するように「構成されている(configured to)」とは、動作中、システムに動作又はアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせがシステムにインストールされていることを意味する。1つ又は複数のコンピュータプログラムが特定の動作又はアクションを実行するように構成されているとは、1つ又は複数のプログラムが、データ処理装置によって実行されると、装置に動作又はアクションを実行させる命令を含むことを意味する。
【0055】
数々の実施形態が説明されてきた。しかし、様々な修正を行うことができることを理解すべきである。したがって、他の実施形態も下記の特許請求の範囲内にある。