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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光学レンズ及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/02 20060101AFI20240807BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20240807BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240807BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240807BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240807BHJP
【FI】
G02B3/02
G02B17/08
F21S2/00 100
F21V5/00 510
F21Y115:30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020212900
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099124
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北原 和
(72)【発明者】
【氏名】有賀 貴紀
【審査官】南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022943(JP,A)
【文献】特開2008-171687(JP,A)
【文献】特開2013-157618(JP,A)
【文献】特開2012-190677(JP,A)
【文献】特開2004-152764(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01826475(EP,A1)
【文献】国際公開第15/003851(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110469824(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
G02B 17/00-17/08
F21S 2/00
F21V 5/00
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの狭角光が入射する第1光入射部と、
前記光源からの広角光が入射する第2光入射部と、
前記第1光入射部から入射した光を全反射する第1全反射部と、
前記第2光入射部から入射した光を全反射する第2全反射部と、
前記第2全反射部で全反射された光が出射する光出射部と、を有し、
前記第2全反射部は、前記第1全反射部で全反射された光を透過させる光学レンズ。
【請求項2】
前記第1全反射部は、前記光学レンズのレンズ中心軸に沿って前記光源から遠ざかるほど前記レンズ中心軸から遠ざかる面を含む請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記第2全反射部を透過した光が入射する第3光入射部と、
前記第3光入射部から入射した光を全反射する第3全反射部と、をさらに有し、
前記第3全反射部により全反射された光は、前記光出射部を通って出射する請求項1又は2に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記第2全反射部を透過した前記光を遮光する透過光遮光部をさらに有する
請求項1又は2に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記光出射部に対して窪んだ出射側凹部を有し、
前記出射側凹部は、側面部と、境界部を介して前記側面部より前記光源側に設けられた底面部と、を含み、
前記第1全反射部は、前記底面部に設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学レンズ。
【請求項6】
前記光学レンズのレンズ中心軸に沿う前記第1全反射部の範囲は、前記レンズ中心軸に沿う前記第2全反射部の範囲内に含まれている請求項1乃至5の何れか1項に記載の光学レンズ。
【請求項7】
前記第2光入射部で反射された光の光強度を減衰させる反射光減衰部をさらに有する
請求項1乃至6の何れか1項に記載の光学レンズ。
【請求項8】
前記光出射部に対して窪んだ出射側凹部を有し、
前記出射側凹部は、側面部と、境界部を介して前記側面部より前記光源側に設けられた底面部と、を含み、
前記反射光減衰部は、前記第2光入射部で反射された前記光を拡散させる反射光拡散部を前記側面部に含む請求項7に記載の光学レンズ。
【請求項9】
前記光出射部に対して窪んだ出射側凹部を有し、
前記反射光減衰部は、前記第2光入射部で反射された前記光を吸収する光吸収部を前記出射側凹部の内部に含む請求項7又は8に記載の光学レンズ。
【請求項10】
前記光出射部は、前記光出射部から出射する前記光を拡散させる出射光拡散部を含む
請求項1乃至9の何れか1項に記載の光学レンズ。
【請求項11】
前記光学レンズにおける前記光出射部とは反対側のレンズ端部に設けられ、前記光学レンズに入射する光の光強度を減衰させる入射光減衰部をさらに有する
請求項1乃至10の何れか1項に記載の光学レンズ。
【請求項12】
以下の(1)式を満足する請求項1乃至11の何れか1項に記載の光学レンズ。
≦H≦H ・・・(1)
(Hは、前記光学レンズにおける前記光出射部とは反対側のレンズ端部から、前記光学レンズのレンズ中心軸に直交する方向における前記第1光入射部の端部まで、の前記レンズ中心軸に沿う方向での距離を表し、Hは、前記レンズ端部から、前記レンズ中心軸に直交する方向における前記第2全反射部の端部まで、の前記レンズ中心軸に沿う方向での距離を表し、Hは、前記レンズ端部から、前記レンズ中心軸と前記第1全反射部とが交差する交点まで、の前記レンズ中心軸に沿う方向での距離を表す。)
【請求項13】
前記第1全反射部は、前記光学レンズのレンズ中心軸に沿って前記光源から遠ざかるほど前記レンズ中心軸から遠ざかる面を含み、
以下の(2)式を満足する請求項1乃至12の何れか1項に記載の光学レンズ。
sin(π/2-θ)≧n2 /n1 ・・・(2)
(θは、前記レンズ中心軸を含む平面内で、前記レンズ中心軸と、前記第1全反射部と、がなす角度を表し、πは円周率を表し、nは、前記光学レンズの屈折率を表し、nは、前記第1全反射部を界面とした前記光学レンズとは反対側の媒質の屈折率を表す。)
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の光学レンズと、前記光源と、を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学レンズ及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から入射した光を反射する反射部と、光源から入射した光が出射する光出射部とを有する光学レンズが知られている。また、光源に対向する対向部域へ向かう光の一部が、対向部域より外側で光源に対向しない周辺部域から出射する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-278309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、光学レンズが大型化する場合がある。
【0005】
本開示は、光学レンズの大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る光学レンズは、光源からの狭角光が入射する第1光入射部と、前記光源からの広角光が入射する第2光入射部と、前記第1光入射部から入射した光を全反射する第1全反射部と、前記第2光入射部から入射した光を全反射する第2全反射部と、前記第2全反射部で全反射された光が出射する光出射部と、を有し、前記第2全反射部は、前記第1全反射部で全反射された光を透過させる。
【0007】
また、本開示の一実施形態に係る照明装置は、上記光学レンズと、上記光源とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、光学レンズの大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る照明装置の全体構成例を示す側面図である。
図2】実施形態に係る照明装置が有する発光部の上面図である。
図3図2のIII-III切断線に沿う断面図である。
図4】実施形態に係る光学レンズの構成例を示す図であり、図4(a)は光入射側から視た斜視図、図4(b)は光出射側から視た斜視図である。
図5】実施形態に係る光学レンズの構成例を示す図であり、図5(a)は光入射側から視た平面図、図5(b)は図5(a)のVB-VB切断線に沿う断面図である。
図6】凹凸形状による迷光の低減例を示す図である。
図7】凹凸形状の構成例を示す図である。
図8】光学レンズの各部の位置関係例の図であり、図8(a)は図5(a)のVB-VB切断線に沿う断面図、図8(b)は図8(a)の領域Fの部分拡大図である。
図9】第1全反射部を示す図であり、図9(a)は第1全反射部が円錐面の場合の図、図9(b)は第1全反射部が曲面の場合の図である。
図10】実施形態に係る光学レンズによる導光例を示す図である。
図11】比較例に係る光学レンズによる導光例を示す図である。
図12】比較例に係る照明装置による光出射例の図であり、図12(a)は光出射方向の交差方向側から視た図、図12(b)は図12(a)の領域Cの部分拡大図、図12(c)は光出射方向側から視た図である。
図13】実施形態に係る照明装置による光出射例の図であり、図13(a)は光出射方向の交差方向側から視た図、図13(b)は図13(a)の領域Dの部分拡大図、図13(c)は光出射方向側から視た図である。
図14】照明装置からの距離ごとでの照射光のパターン例を示す図である。
図15】出射光拡散部の構成例を示す図であり、図15(a)はフライアイレンズを示す図、図15(b)はシボ面を示す図である。
図16】遮光部材の構成例を示す図である。
図17】光吸収部材の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明では、複数の図面に表れる同一符号の部分は、同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0011】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための光学レンズ及び照明装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
以下に示す図でX軸,Y軸,Z軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係る光学レンズの光軸に交差する平面内での所定方向を示し、Y軸に沿うY方向は、該平面内でX方向に直交する方向を示し、Z軸に沿うZ方向は、光軸に沿う方向を示すものとする。
【0013】
またX方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。実施形態では、光学レンズは一例として+Z方向側に光を出射するものとする。但し、このことは、光学レンズ及び照明装置の各使用時における向きを制限するわけではなく、光学レンズ及び照明装置の向きは任意である。
【0014】
以下では、光学レンズを有する照明装置を一例として実施形態を説明する。
【0015】
<照明装置1の構成>
(全体構成例)
まず、図1を参照して、実施形態に係る照明装置1の全体構成を説明する。図1は、照明装置1の全体構成の一例を説明する側面図である。図1に示すように、照明装置1は、発光部11と、光学レンズ12とを有する。
【0016】
発光部11は、駆動回路2に電気的に接続している。駆動回路2はDC(Direct Current)アダプタ3から直流電圧を供給され、発光部11に駆動電圧を印加する。発光部11は、印加された駆動電圧に応答して光を発する光源の一例である。
【0017】
発光部11は、略円形状に広がる光を発する。発光部11が発する光の中心軸が光学レンズ12の中心軸である光軸Eに略一致するように、発光部11と光学レンズ12の配置が調整されている。ここで、光軸Eはレンズ中心軸の一例である。
【0018】
光学レンズ12は、全反射を利用したTIR(Total Internal Reflection)レンズである。光学レンズ12は、光軸E周りに略軸対称に形成されている。一例として、光軸Eに沿う光学レンズ12の全長Lは25[mm]、光軸Eに直交する光学レンズ12の最大幅Wは35[mm]である。但し、光学レンズ12の寸法はこれに限定されるものではない。
【0019】
発光部11が発した光は、レンズ端部121側から光学レンズ12の内部に入射し、光学レンズ12の内部を導光されて、光学レンズ12の光軸Eに略平行なコリメート光(平行光)に変換される。コリメート光は、レンズ端部121の反対側に設けられた光出射部122を通って光学レンズ12から出射する。照明装置1は、光軸Eに略平行なコリメート光を光軸Eに沿う方向に照射することができる。
【0020】
照明装置1は、例えば建物の壁又は天井に固定され、建物の内部又は外部の空間を照明する用途で使用される。或いは店舗施設の壁又は天井に固定され、店舗施設を空間演出するためのダウンライトやスポットライト、間接照明等の用途で使用できる。また商品又は展示物等の対象物の周囲に設けられ、対象物を照明する用途等でも使用できる。光学レンズ12は、発光部11が発する光をコリメートして局所的に照射(スポット照射)する用途に特に好適である。
【0021】
(発光部11の構成例)
次に、図2及び図3を参照して、発光部11の構成を説明する。図2は発光部11の上面図であり、図3図2のIII-III切断線に沿う断面図である。
【0022】
図2及び図3に示すように、発光部11は、基体50と、半導体レーザ素子111と、サブマウント113と、光反射部21と、蛍光部112と、遮光部40とを有する。
【0023】
半導体レーザ素子111は、基体50の上面に配置されたサブマウント113の上面に配置され、光反射部21に向けてレーザ光を発する。半導体レーザ素子111としては、発光ピーク波長が320[nm]乃至530[nm]の範囲内、典型的には430[nm]乃至480[nm]の範囲内にあるものを使用できる。例えば、窒化物半導体を含む材料を用いることが好ましく、GaN、InGaN及びAlGaNの少なくとも1つを含むものが挙げられる。サブマウント113は、例えば窒化アルミニウム、または炭化ケイ素を用いることができる。
【0024】
光反射部21は、基体50の上面に配置され、半導体レーザ素子111が発するレーザ光を+Z方向に向けて反射する。光反射部21としては、主材が石英若しくはBK7等のガラス、又はアルミニウム等の金属等の熱に強い材料からなり、光反射面が金属、誘電体多層膜等の反射率の高い材料からなるものを使用できる。
【0025】
蛍光部112は、レーザ光が照射される下面と、光取出し面となる上面とを有する。蛍光部112は蛍光体を含み、レーザ光が照射されることにより励起されて蛍光を発する。蛍光体としては、YAG蛍光体、LAG蛍光体、αサイアロン蛍光体等が挙げられる。
【0026】
遮光部40は蛍光部112の側方を取り囲むように設けられ、蛍光部112の上面以外から光が出ることを低減する。遮光部40としては、酸化アルミニウムの他に窒化アルミニウム等を用いてもよい。
【0027】
半導体レーザ素子111が発する光はレーザ光であり、コヒーレント性の高い光であるが、レーザ光で励起されて蛍光部112が発する光は空間的コヒーレンスおよび時間的コヒーレンスが失われているため、インコヒーレント光となる。よって、発光部11は、蛍光部112が発した蛍光をインコヒーレント光として+Z方向に発することができる。
【0028】
(光学レンズ12の構成例)
次に、図4及び図5を参照して、光学レンズ12の構成を説明する。図4及び図5は、光学レンズ12の構成の一例を説明する図である。図4(a)は光入射側から視た光学レンズ12の斜視図、図4(b)は光出射側から視た光学レンズ12の斜視図である。また図5(a)は光入射側から視た光学レンズ12の平面図、図5(b)は図5(a)のVB-VB切断線に沿う光学レンズ12の断面図である。
【0029】
図4及び図5に示すように、光学レンズ12は、全体として略円筒状に形成されている。光軸Eと円筒軸は略一致している。また光学レンズ12は、第1導光部140と、第2導光部150と、コバ部160とを有する。
【0030】
光学レンズ12は、例えば、発光部11が発する光に対して光透過性を有する樹脂材料を射出成形して製造できる。第1導光部140、第2導光部150及びコバ部160は、射出成形により一体に形成できる。樹脂材料には光透過性が高いアクリル樹脂(Polymethyl methacrylate;PMMA)等が好適である。
【0031】
但し、光学レンズ12の製造方法及び材質はこれらに限定されるものではない。射出成形法以外の製造法を適用してもよいし、発光部11が発する光に対して光透過性があれば、アクリル樹脂以外の樹脂材料又はガラス等の樹脂以外の材料を用いてもよい。
【0032】
コバ部160は、光出射部122の外周に沿って、ハットのつば状の形状に形成されている。コバ部160は、光学レンズ12を鏡胴等に固定する際に接着領域として用いることができる部分である。コバ部160を必ずしも設けなくてもよいが、コバ部160を設けると、鏡胴等に接着するための領域を確保でき、また光学レンズ12を通って照射される光が接着剤等に干渉することを防止できるため、より好適である。
【0033】
第1導光部140は、レンズ端部121側に突き出た凸状で、光軸E周りに略軸対称に形成されている。第1導光部140は、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射した広角光を導光し、光出射部122から出射させる。
【0034】
図5に示すように、第1導光部140は、レンズ端部121と、第1光入射部123と、第2光入射部124と、第1全反射部131と、第2全反射部125とを有する。
【0035】
第1導光部140のレンズ端部121側には、レンズ端部121に対して+Z方向側に窪んだ入射側凹部120が形成されている。入射側凹部120は、略円形状の断面形状を有する孔であり、略円形状の断面の中心を通る入射側凹部120の中心軸は、光軸Eに略一致している。第1光入射部123は入射側凹部120の底面側に設けられ、第2光入射部124は入射側凹部120の側面側に設けられている。
【0036】
レンズ端部121は、発光部11が発する光が入射する側における光学レンズ12の端部である。レンズ端部121の表面には、発光部11が発する光の波長と同程度以上の幅及び高さで、位置により幅及び高さがランダムに異なる凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、レンズ端部121を通って第1導光部140に入射する光を拡散させ、減衰させる入射光減衰部の一例である。なお、この凹凸形状については、図7を用いて別途図示する。
【0037】
第1光入射部123は、光軸E周りに略軸対称の曲面を含む。第1光入射部123は、発光部11の+Z方向側で、発光部11からの狭角光が入射可能な位置に設けられている。
【0038】
ここで、狭角光は発光部11が発する光のうち、より内側、つまり光軸Eに近い位置を通過する光を意味する。狭角光は、第1光入射部123を通って第1導光部140の内部に入射する。
【0039】
第2光入射部124は、光軸Eに沿って発光部11から遠ざかるほど光軸Eに近づく光軸E周りに略軸対称のテーパ面を含む。第2光入射部124は、発光部11の+Z方向側で、発光部11からの広角光が入射可能な位置に設けられている。
【0040】
ここで、広角光は発光部11からの光のうち、より外側、つまり光軸Eから離れた位置を通過する光を意味する。広角光は、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射する。
【0041】
なお、狭角光における「狭角」は、広角光と比較して光の広がり角度が相対的に狭いことを意味し、一般に「狭角」と呼ばれる角度に限定されるものではない。同様に、広角光における「広角」は、狭角光と比較して光の広がり角度が相対的に広いことを意味し、一般に「広角」と呼ばれる角度に限定されるものではない。
【0042】
また、本実施形態では、第1光入射部123が光軸E周りに軸対称な曲面を含み、第2光入射部124が光軸E周りに軸対称なテーパ面を含む構成を例示するが、これに限定されるものではない。例えば、第1光入射部123が光軸E周りに軸対称なテーパ面を含み、第2光入射部124が光軸E周りに軸対称な曲面を含む構成にすることもできる。
【0043】
第1導光部140では、広がり角が所定角度未満の光が第1光入射部123を通って第1導光部140の内部に入射するように、発光部11に対する第1光入射部123の位置及び大きさが定められている。また、広がり角が所定角度以上の光が第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射するように、発光部11に対する第2光入射部124の位置及び大きさが定められている。広がり角における所定角度は、照明装置1の用途等に応じて適宜選択可能である。
【0044】
第1全反射部131は、光軸Eに沿って発光部11から遠ざかるほど光軸Eから遠ざかる、光軸E周りに略軸対称に形成された略円錐状の面を含む。第1全反射部131は、第1光入射部123を通って第1導光部140の内部に入射した光を全反射する。
【0045】
第1全反射部131の形状は、第1光入射部123を通って第1導光部140の内部に入射した狭角光が全反射されるように定められている。なお、狭角光のうちの全部が全反射されなくてもよいが、照明装置1による照射光の利用効率を上げるために、狭角光のうちのより多くが全反射されるように第1全反射部131の形状を定めることが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態では、第1全反射部131が略円錐状に形成された構成を例示するが、第1全反射部131は光軸E周りに略軸対称の曲面状に形成されてもよい。
【0047】
第2全反射部125は、光軸E周りに略軸対称の曲面を含み、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射した光を全反射する。第2全反射部125の形状は、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射した広角光が全反射されるように定められている。
【0048】
なお、広角光のうちの全部が全反射されなくてもよいが、照明装置1による照射光の利用効率を上げるために、広角光のうちのより多くが全反射されるように、第2全反射部125の形状を決定することが好ましい。
【0049】
本実施形態では、第1全反射部131で全反射された光が第2全反射部125を透過するように、第2全反射部125又は第1全反射部131の少なくとも一方の形状が定められている。また、本実施形態では、光軸Eに沿う第1全反射部131の範囲hは、光軸Eに沿う第2全反射部125の範囲hの範囲内に含まれるように、第1全反射部131と第2全反射部125の配置が定められている。
【0050】
第2導光部150は、第1導光部140の外側を囲うようにして、光軸E周りに略軸対称に略円筒状に形成されている。第1全反射部131で全反射され、第2全反射部125を透過した狭角光は第2導光部150の内部に入射する。第2導光部150は、内部に入射した狭角光を導光し、光出射部122から出射させる。
【0051】
図5に示すように、第2導光部150は、第3光入射部126と、第3全反射部127とを有する。
【0052】
第3光入射部126は、略円筒状の第2導光部150の内側面における輪状で帯状の一部である。第1全反射部131で全反射され、第2全反射部125を透過した狭角光は、第3光入射部126を通って第2導光部150の内部に入射する。
【0053】
第3全反射部127は、光軸Eに沿って発光部11から遠ざかるほど、光軸Eから遠ざかる光軸E周りに略軸対称の面を含む。第3全反射部127は、第3光入射部126を通って第2導光部150の内部に入射した狭角光を光出射部122に向けて全反射する。
【0054】
光出射部122は略平坦に形成された面を含む。第1導光部140及び第2導光部150のそれぞれの内部を導光された光は、光出射部122を通って光学レンズ12から外部に出射する。
【0055】
光学レンズ12の光出射部122側には、光出射部122に対して-Z方向側に窪んだ出射側凹部130が設けられている。出射側凹部130は、略円形状の断面形状を有する孔であり、略円形状の断面の中心を通る出射側凹部130の中心軸は、光軸Eに略一致している。
【0056】
出射側凹部130は、側面部132と、境界部133を挟んで側面部132より発光部11側に設けられた底面部とを含む。第1全反射部131は、出射側凹部130の底面部に設けられている。境界部133は、側面部132の面と第1全反射部131の面のつなぎ目となる環状の部分である。
【0057】
側面部132は、発光部11から遠ざかるほど光軸Eから遠ざかる、光軸E周りに略軸対称の曲面を含む。側面部132の表面には、発光部11が発する光の波長と同程度以上の幅及び高さで、位置により幅及び高さがランダムに異なる凹凸形状が形成されている。
【0058】
ここで、発光部11からの広角光のうちの一部は、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射せず、第2光入射部124で反射される場合がある。第2光入射部124で反射された広角光は、照明装置1による照明に寄与しない迷光となる。
【0059】
側面部132に設けられた凹凸形状は、このような第2光入射部124で反射された広角光を拡散させる反射光拡散部の一例であり、第2光入射部124で反射された広角光の光強度を減衰させる反射光減衰部の一例である。
【0060】
図6は、凹凸形状による迷光の低減の一例を説明する図である。図6に示すように、出射側凹部130の側面部132には、凹凸形状61が設けられている。また迷光62は、第2光入射部124で反射された広角光に起因して生じる迷光を示している。図6に示すように、迷光62は、側面部132に到達し、側面部132に設けられた凹凸形状61により拡散されて光強度が減衰する。
【0061】
図7は、側面部132に設けられた凹凸形状の構成の一例を示す図である。図7に示すように、凹凸形状61は、位置により幅61a及び高さ61bがランダムに異なる凹凸形状である。また凹凸形状61の幅61a及び高さ61bは、発光部11が発する光の波長に対して同程度以上である。幅61a及び高さ61bが光の波長に対して同程度以上で、位置によりランダムに異なれば、凹凸形状61は任意の形状であってもよい。
【0062】
このような凹凸形状61は、例えば光学レンズ12の射出成形に用いる金型の側面部132に対応する領域に凹凸形状61の反転形状を形成しておき、射出成型時に光学レンズ12に転写することで形成できる。
【0063】
凹凸形状61は、発光部11が発する光を拡散させるため、第2光入射部124で反射され、出射側凹部130の側面部132に到達した広角光を拡散させて、光強度を減衰させる。これにより、第2光入射部124で反射された広角光に起因する迷光を抑制できるようになっている。
【0064】
なお、レンズ端部121に設けられた凹凸形状も、図7における凹凸形状61と同様の形状を有する。レンズ端部121に凹凸形状61と同様の凹凸形状を設けることで、レンズ端部121から光学レンズ12に入射する光の光強度を減衰させ、迷光を抑制する作用が得られる。レンズ端部121への凹凸形状の形成方法にも、側面部132への凹凸形状61の形成方法と同様の方法を適用可能である。
【0065】
(光学レンズ12における各部の位置関係例)
次に図8及び図9を参照して、光学レンズ12における各部の位置関係の詳細について説明する。図8は、光学レンズの各部の高さの関係の一例を説明する図である。図8(a)は図5(a)のVB-VB切断線に沿う断面図、図8(b)は図8(a)の領域Fの部分拡大図である。なお、「高さ」は光軸Eに沿う方向での距離を意味する。
【0066】
図8において、高さHは、レンズ端部121から、光軸Eに直交する方向(Y方向)における第1光入射部123の端部まで、の光軸Eに沿う方向での距離を表す。また高さHは、レンズ端部121から、光軸Eに直交する方向(Y方向)における第2全反射部125の端部まで、の光軸Eに沿う方向での距離を表す。また高さHは、レンズ端部121から、光軸Eと第1全反射部131とが交差する交点Pまで、の光軸Eに沿う方向での距離を表す。
【0067】
本実施形態では、高さH、H及びHは、以下の(1)式を満足する。
≦H≦H ・・・(1)
【0068】
また、図9は、第1全反射部131を示す図である。図9(a)は第1全反射部131が円錐面である場合を示す図、図9(b)は第1全反射部131が曲面である場合を示す図である。
【0069】
図9において、角度θは、光軸Eを含む平面内で、光軸Eと第1全反射部131とがなす角度を表す。角度θは、第1光入射部123から入射した狭角光が第1全反射部131に入射する方向に沿う軸と、第1全反射部131に直交する軸とがなす角度を表す。
【0070】
また、屈折率nは、光学レンズ12の屈折率を表し、屈折率nは、第1全反射部131を界面とした光学レンズ12とは反対側の媒質の屈折率を表す。例えば、光学レンズ12の材質がアクリルである場合には、屈折率nは1.49乃至1.53である。また第1全反射部131を界面とした光学レンズ12とは反対側の媒質が空気である場合には、屈折率nは略1である。
【0071】
本実施形態では、角度θは、以下の(2)式を満足する。
sin(π/2-θ)≧n2 /n1 ・・・(2)
但し、πは円周率を表す。
【0072】
(1)式及び(2)式を満たすことで第1光入射部123から第1導光部140の内部に入射した光が第1全反射部131で効率よく全反射し、発光部11の光源パターンが照射像に反映されてしまう照明品質の低下を低減することが可能となる。
【0073】
<光学レンズ12による導光例>
次に図10を参照して、光学レンズ12による導光の一例を説明する。図10は、光学レンズ12による導光の様子の一例を説明する図である。
【0074】
図10に一点鎖線で示した狭角光Uは、発光部11が発する光のうちの狭角光を示している。また図10に破線で示した広角光Uは、発光部11が発する光のうちの広角光を示している。
【0075】
図10に示すように、狭角光Uは、第1光入射部123を通って第1導光部140の内部に入射し、第1導光部140の内部を導光される。その後、第1光入射部123の+Z方向側に設けられた第1全反射部131に到達し、第1全反射部131で全反射される。
【0076】
第1全反射部131で全反射された狭角光Uは、第1導光部140の内部を導光され、第2全反射部125に到達して第2全反射部125を透過する。その後、第3光入射部126を通って第2導光部150の内部に入射する。第2導光部150の内部に入射した狭角光Uは、第3全反射部127により光出射部122に向けて全反射され、第2導光部150の内部を導光された後、光出射部122を通って、光学レンズ12の外部に出射する。
【0077】
一方、広角光Uは、第2光入射部124を通って第1導光部140の内部に入射し、第1導光部140の内部を導光される。その後、第2全反射部125に到達し、第2全反射部125で全反射される。
【0078】
第2全反射部125で全反射された広角光Uは、第1導光部140の内部を導光された後、光出射部122を通って光学レンズ12の外部に出射する。
【0079】
このようにして、光学レンズ12は、発光部11が発する光を導光し、コリメート(平行化)した光を出射させることができる。
【0080】
<光学レンズ12の作用>
次に、光学レンズ12の作用について説明する。
【0081】
(比較例に係る光学レンズ12Xによる導光例)
まず、光学レンズ12の作用の説明に先立ち、比較例に係る光学レンズ12Xについて説明する。
【0082】
図11は、光学レンズ12Xによる導光の様子の一例を説明する図である。なお、実施形態に係る光学レンズ12と比較しやすいように、光学レンズ12の構成部に対応する構成部には、便宜的に同じ部品名称を付して説明する。
【0083】
図11に示すように、光学レンズ12Xは、第1光入射部123Xと、第2光入射部124Xと、全反射部125Xと、光出射部122Xとを有する。
【0084】
第1光入射部123Xは、発光部11Xが発する光のうち、狭角光UXを入射可能な位置に設けられている。発光部11Xが発する狭角光UXは、第1光入射部123Xを通って光学レンズ12Xの内部に入射する。
【0085】
狭角光UXは、光学レンズ12Xの内部を導光された後、光出射部122Xを通って光学レンズ12Xの外部に出射する。
【0086】
第2光入射部124Xは、発光部11Xが発する光のうち、広角光UXを入射可能な位置に設けられている。発光部11Xが発する広角光UXは、第2光入射部124Xを通って光学レンズ12Xの内部に入射する。
【0087】
広角光UXは、光学レンズ12Xの内部を導光されて全反射部125Xに到達し、全反射部125Xで全反射される。全反射部125Xで全反射された光は、光学レンズ12Xの内部を導光された後、光出射部122Xを通って光学レンズ12Xの外部に出射する。
【0088】
このようにして、光学レンズ12Xは、発光部11Xが発する光を導光し、コリメート(平行化)した光を出射させる。
【0089】
(比較例に係る照明装置1Xによる光出射例)
次に図12は、比較例に係る光学レンズ12Xを有する照明装置1Xによる光出射の一例を説明する図である。図12は、照明装置1Xから出射された光を撮影した画像であり、黒い領域が背景で、白い領域が光である。白い領域の輝度が高いほど光が明るい(輝度が高い)ことを示す。図12(a)は光出射方向の交差方向側から撮影した図、図12(b)は図12(a)の領域Cの部分拡大図、図12(c)は光出射方向側から撮影した図である。
【0090】
図12(a)及び図12(b)に示すように、照明装置1Xから出射された光には、照明装置1Xの近傍に、輝度が高い高輝度領域91が帯状に発生している。高輝度領域91の光は、照明装置1Xによる照射光には寄与しない不要な迷光であり、照射光の品質低下の要因になる。
【0091】
また図12(c)に示すように、照明装置1Xから出射した光のパターン90を照射方向側(正面)から視ると、円形形状が崩れてやや長方形状になっている。水平方向92におけるパターン90の広がり角と、対角方向93におけるパターン90の広がり角は表1に示すようになり、方向による広がり角の差が大きい。
【0092】
【表1】
【0093】
発光部11Xの発光パターンが光学レンズ12Xにより投影されること等が、パターン90において、方向による広がり角の差が大きくなる要因になっていると考えられる。なお、発光部の発光パターンとは、光軸Eと直交する平面内における蛍光部112の略長方形形状(図2参照)等の発光部形状に沿うパターンをいう。パターン90が長方形状になると、照度が不均一になり照射光の品質が低下する。
【0094】
(実施形態に係る照明装置1による光出射例)
次に図13は、実施形態に係る照明装置1による光出射の一例を説明する図である。図13(a)は光出射方向の交差方向側から撮影した図、図13(b)は図13(a)の領域Dの部分拡大図、図13(c)は光出射方向側から撮影した図である。図13の見方は図12と同様である。
【0095】
図13(a)及び図13(b)に示すように、照明装置1から出射された光には、照明装置1Xで観察されたような高輝度領域が発生していない。
【0096】
また図13(c)に示すように、照明装置1から出射した光のパターン100を照射方向側(正面)から視ると、略円形形状が得られている。水平方向102におけるパターン100の広がり角と、対角方向103におけるパターン100の広がり角は表2に示すようになり、方向による広がり角の差が表1の比較例に対して小さくなっている。
【0097】
【表2】
【0098】
このように照明装置1では、高輝度な迷光を抑え、また略円形形状のパターン100を形成することができる。これにより照射光の品質が向上する。
【0099】
(照明装置1による照射光のパターン例)
次に図14を参照して、照明装置1による照射光のパターンについて説明する。図14は、照明装置からの距離ごとでの出射光のパターン例を示す図である。図14に示す表の一番上の行は照明装置からの距離を示し、紙面の左側に向かうほど照明装置に近づき、紙面の右側に向かうほど照明装置から遠ざかることを表している。最も遠い場合の距離は、図14の例では5[m]である。
【0100】
また表の2行目は比較例に係る照明装置1Xによる照射光のパターンを示し、表の3行目は本実施形態に係る照明装置1による照射光のパターンを示している。照射光のパターンは、光出射方向側(+Z方向側)から視た距離ごとでのものである。
【0101】
照明装置1Xの近距離におけるパターン201Xでは、狭角光UXによるパターンと広角光UXによるパターンが分離している。照明装置1Xから遠ざかるにつれてパターン202X及び203Xのように両者が近づいていき、照明装置1Xから5[m]の位置では、両者が一体化して1つのスポット状のパターン204Xになっている。
【0102】
例えば、パターン203Xでは、狭角光UXによるパターンは、発光部11Xの発光パターンのアスペクト比を保ったまま、長方形状のパターンの略コリメート光となる。換言すると、狭角光UXにより、発光部11Xの発光パターンが投影される。
【0103】
略円形形状の広角光UXによるパターンと、長方形状の狭角光UXによるパターンが重なる結果、照明装置1Xに対して5[m]離れた位置でも、発光部11Xの発光パターンを含む長方形状のパターン204Xになる。
【0104】
一方、実施形態に係る照明装置1の近距離におけるパターン201では、狭角光Uによるパターンは、広角光Uによるパターンの外側に観察されている。パターン201の中央部は、光が存在しないため、暗くなっている。
【0105】
照明装置1から遠ざかるにつれてパターン202及び203のように、狭角光Uによるパターンと広角光Uによるパターンが近づくとともに中央の暗部は小さくなっていく。照明装置1に対して5[m]離れた位置では、狭角光Uによるパターンと広角光Uによるパターンが一体化して、1つのスポット状のパターン204になっている。
【0106】
光学レンズ12の光軸Eの近傍(近軸領域)に入射した狭角光Uは、光学レンズ12の外側にある第2導光部150を導光されるため、近軸領域の結像作用が抑えられ、発光部11の発光パターンの投影が抑制される。この結果、照明装置1に対して5[m]離れた位置では、発光部11の発光パターンの投影を抑制した略円形形状のパターン204が得られる。
【0107】
なお、本実施形態では、狭角光Uを光学レンズ12の外側にある第2導光部150により導光する構成を例示するが、これに限定されるものではない。例えば、光学レンズ12が第2導光部150を有さない構成では、光学レンズ12による照射光に狭角光Uがそもそも含まれなくなるため、発光部11の発光パターンの投影を抑制した略円形形状のパターン204を得ることができる。
【0108】
<光学レンズ12の効果>
次に、光学レンズ12の効果について説明する。
【0109】
従来、光源から入射した光を反射する反射部と、光源から入射した光が出射する光出射部とを有する光学レンズが知られている。しかしながら、従来の構成では、光学レンズの光軸の近傍に入射した光を導光することで、光源の発光パターンが投影され、照射光の照度が不均一になる場合がある。また光学レンズに入射する光が光学レンズの面で反射すること等に起因して迷光が発生し、照射光の品質を低下させる場合がある。
【0110】
また、光源から入射した光を反射する反射部と、光源から入射した光が出射する光出射部とを有する光学レンズで、光源に対向する対向部域へ向かう光の一部が、対向部域より外側で光源に対向しない周辺部域から出射する構成が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この構成では、光源に対向しない周辺部域から出射させるために、反射部を回避する光路を確保するため、光学レンズの中心軸(光軸)に沿う方向における光学レンズの全長が長くなる。
【0111】
本実施形態では、光学レンズ12は、発光部11(光源)からの狭角光が入射する第1光入射部123と、発光部11からの広角光が入射する第2光入射部124とを有する。また光学レンズ12は、第1光入射部123から入射した光を全反射する第1全反射部131と、第2光入射部124から入射した光を全反射する第2全反射部125と、第2全反射部125で全反射された光が出射する光出射部122とを有し、第2全反射部125は、第1全反射部131で全反射された光を透過させる。
【0112】
例えば、第1全反射部131は、光軸Eに沿って発光部11から遠ざかるほど光軸Eから遠ざかる円錐状の面等の面を含む。
【0113】
光学レンズ12の光軸E(レンズ中心軸)の近傍に入射した狭角光Uは、第1全反射部131で全反射された後、第2全反射部125を透過することで、光学レンズ12による照射光に含まれなくなる。これにより、発光部11の発光パターンの投影を抑え、略円形形状の均一な照射光を得ることができる。
【0114】
また、第1全反射部131で全反射された狭角光Uは第2全反射部125を透過するため、第2全反射部125を回避する光路を確保しなくてもよい。これにより光軸Eに沿う方向における光学レンズ12の全長を短くし、光学レンズ12の大型化を抑制できる。
【0115】
また、第1全反射部131は、狭角光Uを全反射し、透過させないため、第1全反射部131を透過する狭角光Uによる迷光を防止できる。
【0116】
このようにして、本実施形態では、照射光の品質を向上しつつ、光学レンズ12の大型化を抑制できる。
【0117】
また、本実施形態では、光学レンズ12は、第2全反射部125を透過した光が入射する第3光入射部126と、第3光入射部126から入射した光を全反射する第3全反射部127とをさらに有する。第3全反射部127により全反射された光は、光出射部122を通って出射する。
【0118】
第1全反射部131が狭角光Uを全反射することで、光学レンズ12の近軸領域での結像作用を抑え、発光部11の発光パターンの投影を抑制できる。また第1全反射部131が全反射した光を、第3光入射部126及び第3全反射部127を介して光出射部122から出射させることで、光学レンズ12による照射光に含めることができる。これにより発光部11からの光の利用効率を上げることができる。
【0119】
また本実施形態では、光学レンズ12は、光出射部122に対して窪んだ出射側凹部130を有し、出射側凹部130は側面部132と、境界部133を介して側面部132より発光部11側に設けられた底面部とを含む。第1全反射部131は、出射側凹部130の底面部に設けられている。
【0120】
これにより、光軸Eに沿う第1全反射部131の範囲hが、光軸Eに沿う第2全反射部125の範囲h内に含まれるようにすることができ、光軸Eに沿う方向における光学レンズ12の全長を短くし、光学レンズ12の大型化を抑制できる。
【0121】
また本実施形態では、光学レンズ12は、第2光入射部124で反射された広角光Uの光強度を減衰させる反射光減衰部をさらに有する。例えば、光学レンズ12は、光出射部122に対して窪んだ出射側凹部130を有し、出射側凹部130は、側面部132と、側面部132より発光部11側に設けられた底面部とを含み、反射光減衰部は、第2光入射部124で反射された光を拡散させる凹凸形状61(反射光拡散部)を側面部132に含む。
【0122】
凹凸形状61は、第2光入射部124で反射され、出射側凹部130の側面部132に到達した広角光を拡散して、光強度を減衰させる。これにより、第2光入射部124で反射された広角光Uに起因する迷光を抑制する。例えば、照明装置1の近傍で帯状に発生する高輝度領域等の迷光を抑え、迷光による照射光の品質低下を抑制することができる。
【0123】
また本実施形態では、光学レンズ12は、光学レンズ12に入射する光の光強度を減衰させる凹凸形状61(入射光減衰部)をレンズ端部121に設けている。これにより、レンズ端部121を通って光学レンズ12の内部に入射する光を拡散して、光強度を減衰させることで、迷光等の発生を抑制することができる。
【0124】
また本実施形態では、上述した(1)式及び(2)式を満足する。これにより、第1光入射部123から第1導光部140の内部に入射した光が第1全反射部131で効率よく全反射し、発光部11の光源パターンが照射像に反映されてしまう照明品質の低下を低減することが可能となる。
【0125】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0126】
例えば、発光部11が発する光として、インコヒーレント光を例示したが、LED(Light Emitting Diode)やフィラメントが発する光等の他のインコヒーレント光であってもよい。
【0127】
また光学レンズも変形が可能である。以下に光学レンズの各種変形例を示す。
【0128】
<変形例>
例えば、光学レンズ12は、光出射部122から出射する光を拡散させる出射光拡散部を光出射部122に設けることができる。図15は、出射光拡散部の構成の一例を示す図であり、図15(a)はフライアイレンズ141を示す図、図15(b)はシボ面142を示す図である。フライアイレンズ141及びシボ面142は、それぞれ出射光拡散部の一例である。
【0129】
光学レンズ12の射出成形で用いられる金型の光出射部122に対応する領域に、フライアイレンズ141及びシボ面142の反転形状を形成し、これを射出成形時に転写することで、光学レンズ12にフライアイレンズ141及びシボ面142を形成できる。
【0130】
或いは、光学レンズ12とは別に製作したフライアイレンズ141又はシボ面142が形成された部材を光学レンズ12の光出射部122に取り付けることで光学レンズ12にフライアイレンズ141又はシボ面142を設けることもできる。また光学レンズ12を射出成形後に、光出射部122にサンドブラスト加工等を施すことで、シボ面142を形成することもできる。
【0131】
光出射部122を出射する光を出射光拡散部により拡散させることで、光学レンズ12を出射した光をぼかし、より広い範囲に光を照射することができる。また、照射光の指向性を抑えてぎらつきを抑制した光を照射することができる。
【0132】
次に図16は、第1変形例に係る光学レンズ12aの構成の一例を説明する図である。図16に示すように、光学レンズ12aは遮光部材128を有する。
【0133】
遮光部材128は、第1全反射部131で全反射され、第2全反射部125を透過した狭角光Uを遮光する透過光遮光部の一例である。遮光部材128は、例えば発光部11が発する光に対して遮光性を有するアクリル樹脂等を含んで構成された部材である。
【0134】
遮光部材128は、第2全反射部125を透過した狭角光Uを遮光可能な位置に配置され、光学レンズ12aを保持する鏡胴等に固定される。第2全反射部125を透過した狭角光Uを遮光可能な位置に配置できれば、遮光部材128の形状に特段の制限はない。
【0135】
遮光部材128が光吸収性を有すると、遮光部材128で反射された光に起因する迷光を抑制できるため、より好適である。また、発光部11が発する光を長時間遮光すると、遮光部材128が発熱したり、破損したりする場合がある。遮熱作用を有する遮光部材128を用いると、このような発熱又は破損等を防止できるため、さらに好適である。
【0136】
なお、図16では、光学レンズ12aが第2導光部150を備える構成を例示したが、遮光部材128を備える場合には、光学レンズ12aは第2導光部150を備えない構成であってもよい。光学レンズ12aは第2導光部150を備えない構成では、遮光部材128がないと第2全反射部125を透過した狭角光Uが光学レンズ12aを保持する鏡胴等に入射して、鏡胴等が発熱する場合がある。遮光部材128を設けると、このような発熱を防止する効果も得られる。
【0137】
次に図17は、第2変形例に係る光学レンズ12bの構成の一例を説明する図である。図17に示すように、光学レンズ12bは、光吸収部材129を有する。
【0138】
光吸収部材129は、第2光入射部124で反射された広角光Uを吸収する光吸収部の一例である。また光吸収部材129は、第2光入射部124で反射された広角光Uに起因して発生する迷光62の光強度を減衰させる反射光減衰部の一例である。
【0139】
光吸収部材129は、出射側凹部130の内部に設けられている。光吸収部材129は、第2光入射部124で反射され、出射側凹部130の側面部132又は第1全反射部131の少なくとも一方を通過した迷光62を吸収する。これにより、第2光入射部124で反射された広角光Uに起因する迷光62を低減することができる。
【0140】
光吸収部材129は、例えば発光部11が発する光に対して吸収性を有する黒色の樹脂等の材料を含んで構成される。光吸収部材129を側面部132に固定して設けることができる。或いは発光部11が発する光に対して吸収性を有するフィルムを側面部132に貼り付けて、光吸収部材129を設けてもよい。
【0141】
側面部132に形成した凹凸形状(反射光拡散部)と光吸収部材129とを適宜組み合わせることもできる。例えば、光拡散性の凹凸形状を側面部132の表面に設けたうえで光吸収部材129を設け、両者の組合せにより迷光62の光強度を減衰させることができる。或いは、光拡散性の凹凸形状を側面部132の表面に設ける代わりに光吸収部材129を設けてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 照明装置
11 発光部(光源の一例)
111 半導体レーザ素子
112 蛍光部
113 サブマウント
12 光学レンズ
120 入射側凹部
121 レンズ端部
122 光出射部
123 第1光入射部
124 第2光入射部
125 第2全反射部
126 第3光入射部
127 第3全反射部
128 遮光部材(透過光遮光部の一例)
129 光吸収部材(光吸収部の一例)
130 出射側凹部
131 第1全反射部
132 側面部
133 境界部
140 第1導光部
141 フライアイレンズ(出射光拡散部の一例)
142 シボ面(出射光拡散部の一例)
150 第2導光部
160 コバ部
2 駆動回路
3 DCアダプタ
61 凹凸形状(反射光減衰部の一例、反射光拡散部の一例)
E 光軸(レンズ中心軸の一例)
L 全長
W 最大幅
狭角
広角光
θ、θ 角度
、H、H 高さ
、h 範囲
、n 屈折率
図1
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図3
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図17